(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887674
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】落下防止具
(51)【国際特許分類】
B65G 1/14 20060101AFI20210603BHJP
A47B 96/02 20060101ALI20210603BHJP
A47B 96/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
B65G1/14 J
A47B96/02 B
A47B96/02 G
A47B96/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-129023(P2017-129023)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-11178(P2019-11178A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】501359412
【氏名又は名称】株式会社リンテック21
(74)【代理人】
【識別番号】100144277
【弁理士】
【氏名又は名称】乙部 孝
(72)【発明者】
【氏名】田上 貴也
(72)【発明者】
【氏名】富田 真次
【審査官】
板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−139644(JP,U)
【文献】
特開昭61−090628(JP,A)
【文献】
特開2014−068996(JP,A)
【文献】
特開平08−266353(JP,A)
【文献】
実開昭51−087530(JP,U)
【文献】
実開昭59−010640(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/14
A47B 96/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚板に取り付けられる取り付け部材と、該取り付け部材の回動支持部材に支えられる回動軸と、該回動軸の周りに回動する回動部材とを備え
該回動部材が回動軸接続部材によって前記回動軸へ回動可能に接続され、前記回動軸接続部材の位置を挟んで第1部材及び第2部材を有し、
前記第1部材の重量が前記第2部材の重量よりも小さく構成され、
前記回動軸が略水平に保たれるように前記棚板へ取り付けられた際に、 前記第1部材の端部が略鉛直に立ち上がって前記棚板の上面よりも上に位置する状態で保持され、
前記棚板に積載された荷物が滑り出して前記第1部材に当たる際に前記回動部材の回動を防止するように構成され、前記棚板に取り付けられて前記棚板に積載された前記荷物の滑り出しによる落下を防止する落下防止具であって、
前記棚板に前記荷物を積み込む際に、前記落下防止具が前記棚板に取り付けられた状態で前記第1部材に前記荷物が前記棚板の手前方向から当たる場合は前記回動部材が回動して前記第1部材を前記棚板の上面に略平行になった状態に維持する水平保持部を備え、前記水平保持部が粘着性を有することを特徴とする落下防止具。
【請求項2】
棚板に取り付けられる取り付け部材と、該取り付け部材の回動支持部材に支えられる回動軸と、該回動軸の周りに回動する回動部材とを備え
該回動部材が回動軸接続部材によって前記回動軸へ回動可能に接続され、前記回動軸接続部材の位置を挟んで第1部材及び第2部材を有し、
前記第1部材の重量が前記第2部材の重量よりも小さく構成され、
前記回動軸が略水平に保たれるように前記棚板へ取り付けられた際に、 前記第1部材の端部が略鉛直に立ち上がって前記棚板の上面よりも上に位置する状態で保持され、
前記棚板に積載された荷物が滑り出して前記第1部材に当たる際に前記回動部材の回動を防止するように構成され、前記棚板に取り付けられて前記棚板に積載された前記荷物の滑り出しによる落下を防止する落下防止具であって、
前記棚板に積載された前記荷物が滑り出して前記第1部材に当たる際に前記第2部材の端部が、前記取り付け部材へ接触して前記回動部材の回動を防止する回動防止部材を有し、 前記回動防止部材が、弾性体であることを特徴とする落下防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等により工場や倉庫に設置された収納棚が振動しても、これらの収納棚の棚板に載置されたパレットや物品の滑り出しによる落下を防止する落下防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震や意図しない何らかの物品の衝突等における振動、揺れ又は傾きで収納棚の棚板に載置された物品の落下や飛び出しを防止する装置が種々提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1に開示される物品の滑り出しを防ぐ落下防止具は、ベルトとベルトの両端部に設けられる支柱への取り付け部とを備え、該取り付け部は支柱の側面に当接するL字型の取り付け本体と、支柱の一部に係合する係合突起と、取り付け本体をベルトの長手方向に伸縮可能な伸縮手段と、を有している。
【0004】
また、この落下防止具は、当該伸縮手段が、取り付け本体に対してベルトの長さを長くする方向に移動可能なスライド片と、スライド片をベルト側に付勢するバネとを備えており、ベルトの長手方向に引っ張り力がかかったときに、スライド片が、バネの付勢力に抗して、ベルトの長さを長くする方向に移動可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4128563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される物品の滑り出しを防ぐ落下防止具は、その構造上、支柱の前面と側面を使用しなければならないため、支柱の形状によってはその取り付けができなくなる課題や、複数の荷物載置台が横方向に連続して並んでいる棚板では取り付けが困難となる課題があった。
【0007】
また、特許文献1に開示される落下防止具は、取り付け後に荷物を出し入れする際に、
荷物の前面に張設されているベルトをバックルで長くしたり、両手を用いて取り付け部の
スライド片をベルトの長手方向にスライドさせたりしなければならず、荷物載置台の使い
勝手が悪くなる課題があった。
【0008】
この発明の目的は、上述した事情に鑑みて棚板に載置された物品の振動による滑り出しによる落下を防止する使い勝手のよい落下防止具を提供することである。
【0009】
また、この発明の別の目的は、1本の支柱の左右方向に複数の棚板が取り付けられている状態での取り付けが可能な落下防止具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の落下防止具は、棚板に取り付けられる取り付け部材と、該取り付け部材の回動支持部材に支えられる回動軸と、該回動軸の周りに回動する回動部材とを備え、該回動部材が回動軸接続部材によって前記回動軸へ回動可能に接続され、前記回動軸接続部材の位置を挟んで第1部材と第2部材を有し、前記第1部材の重量が前記第2部材の重量よりも小さく構成され、前記回動軸が略水平に保たれるように前記棚板へ取り付けられた際に、前記第1部材の端部が略鉛直に立ち上がって前記棚板の上面よりも上に位置する状態で保持され、前記棚板に積載された荷物が滑り出して前記第1部材に当たる際に前記回動部材の回動を防止するように構成される、前記棚板に取り付けられて前記棚板に積載された前記荷物の滑り出しによる落下を防止する落下防止具であって、
前記棚板に前記荷物を積み込む際に、前記落下防止具が前記棚板に取り付けられた状態で前記第1部材に前記荷物が前記棚板の手前方向から当たる場合は前記回動部材が回動して前記第1部材を前記棚板の上面に略平行になった状態に維持する水平保持部を備え、前記水平保持部が粘着性を有することを特徴とする落下防止具である。
【0011】
第1部材の重量が第2部材の重量よりも小さいので落下防止具が棚板へ取り付けられた状態で第2部材が下方へ、第1部材が上方へ向けて回動して、第1部材の上端が棚板の上面よりも上に位置することで棚板の上面に載置された荷物の滑り出しを防止する。従来技術のように支柱を使わず棚板に取り付けるだけで第1部材の端部が略鉛直に立ち上がって前記棚板の上面よりも上に位置する状態で保持されて荷物が落下することを防止するので取り付けの自由度が高い。また、本発明の落下防止具は、前記棚板に積載された荷物が滑り出して第1部材を回動させる際にその回動を防止するように構成されているので動作が簡便である。
棚板に載置された荷物の高さが棚板の天井の高さに近いと荷物をフォークリフトなどで持ち上げて落下防止具の第1部材の上端を超えることが難しい場合がある。かかる際は、フォークリフトの爪で第1部材を棚板の奥方向へ押すことで第1部材を棚板の上面に平行にすると水平保持部を有する落下防止具はその状態を維持するので落下防止具に妨げられることなく荷物を棚板から引き出すことができる。そして水平保持部が粘着性を有するので棚板の材質によらずに棚板の上面へ粘着して第1部材の水平を保つことができる。
【0024】
本発明の耐震固定具は、
棚板に取り付けられる取り付け部材と、該取り付け部材の回動支持部材に支えられる回動軸と、該回動軸の周りに回動する回動部材とを備え 該回動部材が回動軸接続部材によって前記回動軸へ回動可能に接続され、前記回動軸接続部材の位置を挟んで第1部材及び第2部材を有し、 前記第1部材の重量が前記第2部材の重量よりも小さく構成され、 前記回動軸が略水平に保たれるように前記棚板へ取り付けられた際に、 前記第1部材の端部が略鉛直に立ち上がって前記棚板の上面よりも上に位置する状態で保持され、 前記棚板に積載された荷物が滑り出して前記第1部材に当たる際に前記回動部材の回動を防止するように構成され、前記棚板に取り付けられて前記棚板に積載された前記荷物の滑り出しによる落下を防止する落下防止具であって、前記棚板に積載された前記荷物が滑り出して前記第1部材に当たる際に前記第2部材の端部が、前記取り付け部材へ接触して前記回動部材の回動を防止する回動防止部材を有し、 前記回動防止部材が、弾性体であることを特徴とする落下防止具
である。
【0025】
第2部材が回動防止部材を有するので余分な回動が阻止されて第1部材の端部が荷物の滑り出しを防止する。
そして回動防止部材が弾性体なので棚板から荷物が滑り出すのを防止する際の衝撃が和らげられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の落下防止具を棚板へ取り付けた様子の説明図である。
【
図2】荷物を矢印Aの方向へ搬入する際の落下防止具の動きの説明図である。
【
図3】棚板の上に置かれた敷板が棚板の手前に出ている場合に対応する落下防止具の様子を示す説明図である。
【
図4】第1部材へ付着された水平保持部材の説明図である。
【
図5】第1部材へ付着された水平保持部材の機能を説明する図である。
【
図6】回動接続部材に設けられた凹みとこれを係止する板バネの様子の説明図である。
【
図7】第2部材に取り付けられた回動防止部材の説明図である。
【
図8】断面がコの字型の取り付け部材を有する落下防止具の棚への取り付け状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は落下防止具が荷物を積載する棚板9へ取り付けられた様子を示している。落下防止具は取り付け部材2によって棚板9の横の部分へ取り付けられる。回動部材は回動軸の軸心の位置を示すSを境界とする第1部材4と第2部材5で構成される。回動部材は回動軸接続部材6によって回動軸3へ回動可能に接続されて回動軸3の周りで回動する。
【0034】
第1部材の重量は第2部材の重量よりも小さいので第2部材が下方へ位置して回動部材がほぼ鉛直面に沿う態様で安定する。そうすると第1部材の端部が棚板の上面よりも上に出るように構成されているので棚板上の荷物の滑り出しを防げて荷物の落下を防止する。
【0035】
この状態で荷物が滑り出して第1部材の端部に当たると回動部材を
図1の手前方向へ押す力が与えられ回動部材が回動しようとするが、第2部材の端部が折り曲げられて取り付け部材2に接しているので回動部材のこれ以上の回動が妨げられている。その結果、第1部材の端部によって荷物の滑り出しが防止されることになる。
【0036】
次に、
図2を用いてに本実施形態の落下防止具の動作を説明する。
図2において矢印Aは荷物の位置を示している。
図2の(A)において荷物は落下防止具の手前に有る。荷物が棚の奥方向すなわち図の右方向へ進むと
図2(B)の矢印で示す荷物に押されて回動部材は棚板上面に略平行になる。そして、
図2(C)の矢印で示す荷物が落下防止具の位置を過ぎて奥方向へ移動すると回動部材は当初の姿へ戻り第1部材の端部が棚板上面よりも上に出る形で安定する。
【0037】
図3を用いて棚板よりも常設の下敷き部材が棚板の側面よりも手前に長さdだけ出ている場合への対応策を説明する。
図3の落下防止具の取り付け部材の回動軸支持部材の長さLは
図2よりも長く形成されている。ここで、L>dに取ることで下敷き部材が棚板の側面よりも手前に長さdだけ出ている場合にも対応することができる。そして、回動部材を回動軸へ回動可能に接続する回動接続部材の長さも回動支持部材の長さに合わせて長く構成される。また、回動接続部材が棚板に平行になったときの高さhは敷板91の厚さtよりも大きく取ることで敷板の出っ張り具合や厚みの変化に対応することができる。
【0038】
荷物を棚から降ろすときは、フォークリフトで一度荷物を持ち上げて手前に引き出す。ところが、棚へ荷物を積み上げられた荷物の高さが棚の天井近くなっている場合があるので、そういう場合は荷物を第1部材の端部の高さを超えて持ち上げることで荷物を手前に引き出すことが難しくなる。この問題を解決するには荷物の引き出しの際には第1部材の端部を棚板の上面に平行に沿わせて荷物を降ろす妨げにならないように回動部材を水平に保持する水平保持の仕組みが必要になる。
【0039】
そこで
図4を用いて第1部材の端部を棚板の上面に平行に沿わせて保持する水平保持部について説明する。
図4において第1部材に水平保持部を構成する水平保持部材21,22が第1部材に付着されている。
【0040】
ここで、棚板が鉄製の場合は、水平保持部材21,22として磁石を用いる。また、棚板が鉄のような磁性体でない場合は粘着性を有する材料として例えばゲルなどを用いてもよい。
【0041】
図5を用いて水平保持部材の機能を説明する。矢印Aは水平保持部材を機能させるためのリフトの爪の位置を示す。
図5(A)はリフトの爪が落下防止具の手前に有る状態で、リフトの爪が第1部材へ当たると回動部材は棚の奥方向へ回動して第1部材が棚板の上面に略平行になり
図5(B)の状態になる。そうすると水平保持部材21,22によって第1部材がほぼ水平になった状態が保たれて荷物の移動の妨げが無くなる。この状態で
図5(C)に示すように荷物を棚から手前方向(矢印B)へ落下防止具に妨げられることなく移動させることができる。
【0042】
次に、
図6を用いて異なる水平保持部の構成を説明する。回動軸接続部材は回動部材の回動に伴って回動軸の周りを回動するので
図6(A)におい回動軸接続部材の外周部分に凹み31を設け、
図6(B)に示すようにこの凹み31へ係止する板バネ32を取り付け部材に設ける。この凹み31の位置を第1部材が棚板に略平行になる場所へ設けることで第1部材が棚板に略平行な状態を保つことができる。
【0043】
荷物の滑り出しによる落下を防止するには、荷物が滑り出しで棚の手前方向へ移動して第1部材に当たることによる回動部材の回動を阻止する必要がある。
図7(A)のように落下防止具を棚板へ取り付けた状態で第2部材の端部を取り付け部材側へ曲げて取り付け部材に接触させることで回動部材の上端の手前方向への回動を阻止することができる。
【0044】
また、
図7(B)に示すように第2部材へ回動防止部材55を付着して回動を防止することもできる。この方法では回動部材の折り曲げ加工の手間が省かれコストダウンにつながる。また、回動防止部材55として弾性体を用いることで荷物の滑り出しによる落下防止具への衝撃を和らげることもできる。また衝撃吸収には水平保持部材21,22の代わりに第1部材へ衝撃吸収用の弾性体を設けても良い。
【0045】
棚に常設の下敷きが用意されている場合への対応策を
図1を用いて説明する。棚板の上に下敷きがある場合は下敷きの上面に第1部材が載るように落下防止具の取り付け位置を変える必要がある。
図1に示すように取り付け部材には鉛直方向に長孔81又は複数の取り付け用の丸孔(図示せず)を設けることで鉛直方向の取り付け位置の調整が可能になる。
【0046】
棚には落下防止具を取り付けるための孔が設けられていないものもあるので、これに対する実施例を
図8に示す。
図8の落下防止具は棚の横部材へ上から被せるように断面がコの字になっている。棚板の横部材へ上から載せて取り付け部材のナットへ取り付け用のボルトを嵌めて締めることで落下防止具を棚へ固定する。このナットは
図8のように取り付け部材の背面に設けても良いが前面に設けても良い。
【0047】
上記に説明した実施例は本願発明の一部であって本願発明の技術思想を含む実施の態様は本願発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
2 取り付け部材
3 回動軸
4 第1部材
5 第2部材
6 回動軸接続部材
7 取り付けボルト
8 取り付け用ナット
9 棚板
10 落下防止具
12 取り付け部材
14 第1部材
15 第2部材
17 回動軸支持部
20 引き抜き防止部
21、22 水平保持部材
55 回動防止部材
81 取り付け用長孔
91 敷板