(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887675
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】育毛剤およびその溶液の調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20210603BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20210603BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20210603BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20210603BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20210603BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20210603BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20210603BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20210603BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q7/00
A61K8/55
A61K8/34
A61K31/52
A61P17/14
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/24
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-142189(P2017-142189)
(22)【出願日】2017年7月21日
(65)【公開番号】特開2019-23166(P2019-23166A)
(43)【公開日】2019年2月14日
【審査請求日】2020年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176110
【氏名又は名称】三省製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】小宮 康夫
【審査官】
星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−150203(JP,A)
【文献】
特開2017−043594(JP,A)
【文献】
特開平03−074318(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/094489(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 9/00−9/72
A61K 31/33−33/44
A61K 47/00−47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−ベンジルアミノプリンを有効成分とし、水とエタノールとの混合溶媒およびフィチン酸とを少なくとも含有する育毛剤であって、前記育毛剤中の6−ベンジルアミノプリンの濃度が0.2〜1.0重量%、フィチン酸の濃度が0.02〜0.3重量%であり、かつ、エタノールの濃度が40〜50重量%であることを特徴とする育毛剤。
【請求項2】
6−ベンジルアミノプリンの濃度が、0.5〜0.8重量%であることを特徴とする請求項1に記載の育毛剤。
【請求項3】
フィチン酸の濃度が、0.025〜0.25重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の育毛剤。
【請求項4】
6−ベンジルアミノプリンを水とエタノールとの混合溶媒に溶解した、6−ベンジルアミノプリンの濃度が0.2〜1.0重量%の育毛剤用溶液の調製方法であって、前記育毛剤用溶液中のエタノールの含有量が40〜50重量%の混合溶媒を用い、かつ、溶解補助剤としてフィチン酸を0.02〜0.3重量%使用することを特徴とする育毛剤用溶液の調製方法。
【請求項5】
6−ベンジルアミノプリンの濃度が0.5〜0.8重量%であることを特徴とする請求項4に記載の育毛剤用溶液の調製方法。
【請求項6】
フィチン酸の濃度が、0.025〜0.25重量%であることを特徴とする請求項4または5に記載の育毛剤用溶液の調製方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載の調製方法によって調製された育毛剤用溶液を使用してなることを特徴とする育毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水およびエタノールの混合溶媒を使用することにより、6−ベンジルアミノプリン(6−Benzylaminopurine)の育毛効果が発揮できる澄明な育毛剤およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
6−ベンジルアミノプリンは、出願人が世界で初めて開発した育毛用の機能性素材である(特許文献1参照)。
しかし、当該6−ベンジルアミノプリンは、優れた効能を備える一方、難溶性の素材であるため、非常に製剤設計しづらい素材でもある。
すなわち、日本薬局方基準に準拠して表現するならば、6−ベンジルアミノプリンは「メタノール、エタノールに溶けにくく、酢酸エチル、クロロホルムに極めて溶けにくく、水にほとんど溶けない」という溶解特性を示す。
【0003】
通常、溶液系の製剤設計においては、安全性等の観点からみて使用できる溶媒は事実上エタノールか水に限られるものであるところ、上記日本薬局方表記の溶解性に関する解釈によれば、「溶けにくい」というのは「溶質1gを溶かすのに必要な溶媒量が100mL乃至1000mLの範囲」である。また「ほとんど溶けない」というのは「溶質1gを溶かすのに必要な溶媒量が1000mL以上」である。従って、水のみを使用する場合はもとより、エタノールを使用した場合であっても6−ベンジルアミノプリン配合の透明型製剤を設計するうえで、その溶解方法に係る技術困難性は明らかである。
【0004】
出願人らの行った実測(日本薬局方基準)では、エタノールを溶媒として使用した場合、常温での6−ベンジルアミノプリンの溶解度は0.4重量%前後であり、水に対しては検出限界以下という事実が明らかになっている。
【0005】
一方、育毛効果の面では、6−ベンジルアミノプリン自体は0.1重量%の配合量でその効果が期待できるが、製剤中での溶解度が6−ベンジルアミノプリンの皮膚へのリリースに影響を与えるほか、個体差を考慮に入れると6−ベンジルアミノプリンの育毛効果を安定に維持できる至適配合量は少なくとも0.2%以上必要であることが出願人らの研究で明らかになっている(非特許文献1参照)。
【0006】
従来から、6−ベンジルアミノプリンを配合した育毛剤の商品開発においては、当該6−ベンジルアミノプリンの育毛効果に係る有効濃度を適正に維持しつつ、透明型の製剤を提供するためにエタノール主体の処方設計となっていた。
【0007】
このため、製造面においては、消防法規制下でのいわゆる危険物(エタノール使用60重量%以上)として取り扱われるため、例えば、防爆設備等の投資も必要になり経費的にも不利な処方設計を余儀なくされていた。また、そればかりでなく、消費者に対しては保管上および使用上の注意喚起が必要となるほか、エタノール臭が際立つ等の使用時の不快感を伴うものでもあった。
【0008】
当然、これに対処すべくエタノールの使用量を減らせば、水にほとんど溶けない6−ベンジルアミノプリンの製剤における溶解性が下がり、低温時での沈殿析出を助長するため、安定した育毛効果が発揮できないという問題を招来していた。
【0009】
これらの問題解決のため、出願人らは、多価アルコールおよびその誘導体等の添加物(溶解補助剤)の使用や、混合溶媒の水とエタノールとを特定比率(水:エタノール比が65:35〜10:90重量比)とすることにより6−ベンジルアミノプリンの有効使用量を調製する方法を提供した(特許文献2および3参照)。
しかしながら、前者では溶解補助剤を多量に使用する必要があり最終製品の性能上べたつき等の問題が残ること、また、後者では溶解助剤を用いる必要が無いものの使用するエタノールの量が多く危険物としての取り扱いとなる問題が解決されていなかった。
【0010】
一方、フィチン酸は、キレート作用を有する化合物の1種である。特許文献4には、タマネギ外皮抽出物を有効成分とする育毛剤において、キレート剤としてフィチン酸を使用することが記載されている。しかしながら、この技術は6−ベンジルアミノプリンを有効成分とする育毛剤ではなく、また、水とアルコールの混合溶媒における6−ベンジルアミノプリンの溶解性の向上につき記載するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2636118号
【特許文献2】特開平10−72321号
【特許文献3】特許第6026429号
【特許文献4】特開2013−119535号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】三嶋豊 他 FJ 20〜26 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、6−ベンジルアミノプリンの育毛効果としての必要量を適正に維持しつつ、危険物取扱としての問題を回避しうる育毛剤(エタノール50重量%以下の清澄な組成物)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、6−ベンジルアミノプリンを有効成分とし、水とエタノールとの混合溶媒を使用する育毛剤において、新規溶解補助剤としてフィチン酸を使用することを第一の特徴とする。
本発明のフィチン酸の使用量は、育毛剤全体の0.02〜0.3重量%と極少量であるにもかかわらず、エタノールの含有量が40〜50重量%とする澄明な育毛剤を提供することができる。
【0015】
即ち、本発明によれば、フィチン酸を使用することにより、6−ベンジルアミノプリンの有効濃度0.2〜1.0重量%に対し、育毛剤中のエタノールの含有量が40〜50重量%の混合溶媒を用いた非危険物型の育毛剤とすることができる。
【0016】
また本発明は、フィチン酸を溶解補助剤として0.02〜0.3重量%使用する、6−ベンジルアミノプリンをエタノールの含有量が40〜50重量%の混合溶媒に溶解した、6−ベンジルアミノプリンの濃度が0.2〜1.0重量%の澄明な育毛剤用溶液の調製方法を提供するものである。
【0017】
即ち、本発明は、先ず、次の育毛剤に係るものである。
<1> 6−ベンジルアミノプリンを有効成分とし、水とエタノールとの混合溶媒およびフィチン酸とを少なくとも含有する育毛剤であって、前記育毛剤中の6−ベンジルアミノプリンの濃度が0.2〜1.0重量%、フィチン酸の濃度が0.02〜0.3重量%であり、かつ、エタノールの濃度が40〜50重量%である育毛剤。
<2> 6−ベンジルアミノプリンの濃度が、0.5〜0.8重量%である前記<1>に記載の育毛剤。
<3> フィチン酸の濃度が、0.025〜0.25重量%である前記<1>または<2>に記載の育毛剤。
【0018】
本発明は、また、次の育毛剤用溶液の調整法等に係るものである。
<4> 6−ベンジルアミノプリンを水とエタノールとの混合溶媒に溶解した、6−ベンジルアミノプリンの濃度が0.2〜1.0重量%の育毛剤用溶液の調製方法であって、前記育毛剤用溶液中のエタノールの含有量が40〜50重量%の混合溶媒を用い、かつ、溶解補助剤としてフィチン酸を0.02〜0.3重量%使用する育毛剤用溶液の調製方法。
<5> 6−ベンジルアミノプリンの濃度が0.5〜0.8重量%である前記<4>に記載の育毛剤用溶液の調製方法。
<6> フィチン酸の濃度が、0.025〜0.25重量%である前記<4>または<5>に記載の育毛剤用溶液の調製方法。
<7> 前記<4>から<6>のいずれかに記載の調製方法によって調製された育毛剤用溶液を使用してなる育毛剤。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ライトな使用感調整が可能な水とエタノール系溶媒の育毛剤原液が提供され、従来のエタノール高配合でみられた刺激と刺激臭が緩和された澄明な育毛剤を提供することができる。
本発明の育毛剤は、従来の溶解補助剤に比べより少量のフィチン酸を使用するものであり、最終製品のべたつき、溶解助剤の経時的なにおいの発生等の問題が軽減でき、また、本発明により製剤全体に対するエタノール配合量を50重量%以下に低減した非危険物型の澄明な育毛剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1にかかる6−ベンジルアミノプリン(CTP)の溶解度を示した示す図である。
【
図2】本発明の実施例3にかかる6−ベンジルアミノプリン(CTP)の溶解度を示した示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について説明する。
本発明は、先ず、6−ベンジルアミノプリンを有効成分とし、水とエタノールとの混合溶媒およびフィチン酸とを少なくとも含有する育毛剤であって、前記育毛剤中の6−ベンジルアミノプリンの濃度が0.2〜1.0重量%、フィチン酸の濃度が0.02〜0.3重量%であり、かつ、エタノールの濃度が40〜50重量%である育毛剤に係るものである。
【0022】
6−ベンジルアミノプリン(分子量225.26)は、結晶性の白色粉末であり、別名6−ベンジルアデニン、あるいはサイトプリン(以下、「CTP」と称すことがある。)とも呼ばれ、育毛用の有効成分として公知である。本発明においては、育毛効果を発揮できる十分な量として育毛剤(「育毛組成物」ということがある。)全体の0.2〜1.0重量%、薬効薬理面(薬剤利用率)と皮膚適用上の負担の点で好ましくは0.3〜0.9重量%、より好ましくは0.5〜0.8重量%、最適には約0.5重量%である。
【0023】
フィチン酸(phytic acid)は、myo-イノシトール−1,2,3,4,5,6-六リン酸(myo-inositol-1,2,3,4,5,6-hexaphosphate)とも呼ばれ、未精製の穀物や豆類に多く含まれるキレート作用を有する化合物の1種である。
【0024】
本発明は、上記6−ベンジルアミノプリンを有効成分とし、かつ育毛組成物中の6−ベンジルアミノプリンの濃度が0.2〜1.0重量%、好ましくは0.3〜0.9重量%、より好ましくは0.5〜0.8重量%の育毛剤である。
【0025】
育毛組成物の有効成分の6−ベンジルアミノプリンは、水とエタノールとの混合溶媒に溶解される。6−ベンジルアミノプリンは、前記のように溶解性に乏しく混合溶媒中のエタノールの割合をできるだけ多くすることが必要となるが、エタノールが多くなればエタノールの刺激臭も強くなること、また混合溶媒中のエタノールの割合が60%を超えると危険物としての取り扱いとなる。
しかしながら、水とエタノールの混合溶媒のみでは、エタノールの含有量が50重量%以下では、6−ベンジルアミノプリンの濃度を0.5重量%以上とすることは困難である。
【0026】
一方、本発明では溶解助剤としてフィチン酸を0.02〜0.3重量%添加することにより、水とエタノールとの混合溶媒に対する6−ベンジルアミノプリンの溶解度を著しく向上することが可能となる。即ち、従来のグリセリンや1,3−ブチレンアルコール等の溶解補助剤の場合はその使用量が数%(2〜5重量%)であるのに対し、フィチン酸では遥かに少ない量で6−ベンジルアミノプリンを溶解することができる。このように、本発明は、先ず、水とエタノールとの混合溶媒に6−ベンジルアミノプリンを溶解するための新規、有用な溶解助剤を提供するものである。
【0027】
更に、フィチン酸を0.15重量%以上使用することにより6−ベンジルアミノプリンの濃度が0.2〜0.5重量%と比較的低濃度の範囲のみならず、0.5〜1.0重量%と高濃度の範囲においても澄明な育毛組成物を得ることが可能である。
なお、フィチン酸の量が多くなると逆に組成物の安定性が失われ、澄明性が損なわれるため、フィチン酸濃度は0.3重量%以下であることが好ましい。
【0028】
6−ベンジルアミノプリンを有効成分とし、水とエタノールとの混合溶媒を使用した育毛剤の溶解補助剤として、フィチン酸が何故有効であるかについては定かではないが、水に溶けるフィチン酸が6-ベンジルアミノプリンのアミノ基と相互作用することで複合体を形成し水が多い状態でも溶けやすくなったと思われる。
【0029】
次に、本発明は、6−ベンジルアミノプリンを水とエタノールとの混合溶媒に溶解した、6−ベンジルアミノプリンの濃度が0.2〜1.0重量%の育毛剤用溶液の調製方法であって、育毛剤用溶液中のエタノールの含有量が40〜50重量%となる混合溶媒を用い、かつ、溶解補助剤としてフィチン酸を0.02〜0.3重量%使用する育毛剤用溶液の調製方法に係るものである。
【0030】
育毛剤用溶液中の6−ベンジルアミノプリンの濃度は、0.2〜1.0重量%、好ましくは0.3〜0.9重量%、より好ましくは0.5〜0.8重量%である。
また、フィチン酸の使用量は、目的とする溶液中の6−ベンジルアミノプリンの濃度、使用する水とエタノール混合溶媒の溶媒比等に合わせ適宜選択されるが、フィチン酸を0.15重量%以上使用することにより6−ベンジルアミノプリンの濃度が0.2〜0.5重量%と比較的低濃度の範囲みならず、0.5〜1.0重量%と高濃度の範囲の育毛剤溶液を得ることが可能である。
【0031】
例えば、6−ベンジルアミノプリンの濃度が約0.5重量%以上の育毛剤溶液(原液)を得たい場合は、混合溶媒中のエタノールの含有量が40〜50重量%の混合溶媒を用い、かつ、溶解補助剤としてフィチン酸を0.15〜0.25重量%使用することで容易に溶解調整することができる。
フィチン酸を用いない場合は、6-ベンジルアミノプリンを室温で溶解させるためには、60分間以上の攪拌を必要としていたが、フィチン酸を使用することで30分間程度の攪拌で溶解することが可能となった。
【0032】
上記育毛剤溶液(原液)を予め調製しておき、これを用いて使用目的に応じた機能性成分を溶解することによって所望の育毛剤を供することができる。この場合、その最適な水・エタノール重量比がわかっているため、別途に機能性成分等の原液を当該水・エタノール重量比と同一の比率によって調製しておくことにより、必要で最適な濃度調製をした育毛剤を簡便に製造することができる。特に、育毛剤の添加物成分が植物からの抽出液などの場合は、溶媒の種類と比率の一致した混合溶媒を使用することによりオリや濁り等の発生がない澄明で経時的に安定な製剤を製造できるメリットもある。
【0033】
上記育毛剤を調製する場合、水またはアルコールの添加は急激におこなわず、徐々に行なう点に留意する必要がある。また安定な系を破壊しないよう添加時の溶媒温度にも留意する。いずれも、原液に溶解している6−ベンジルアミノプリンの濃度が高い場合には、低温時において経時的に沈殿が発生しやすくなるから十分な配慮が必要である。
【0034】
本発明の上記育毛剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、前記した通常の育毛剤や頭皮用外用剤に用いられる種々の添加成分を目的に応じて含有させることができる。
【0035】
具体的には、c−AMPおよびその誘導体、フォルスコリン、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド、ミノキシジルがあげられる。これらの使用量は、6−ベンジルアミノプリンの1に対して0.01〜0.2(重量)の範囲内である。
【0036】
また、育毛活性を有する植物・菌類・海藻類・微生物由来のエキスについても適宜選択して使用することができる。
育毛活性を有する植物・菌類・海藻類・微生物由来としては、例えば、特許第6026429号(特許文献3)に記載の素材を水・エタノール系の溶媒で抽出したものが好適に使用でき、6−ベンジルアミノプリンの育毛効果の増強、相乗的作用に寄与し得るものである。
【0037】
本発明の育毛剤は、医薬品、医薬部外品および化粧品のカテゴリーとして許容しうる形態を含むものであり、その剤型としては、本発明の目的とした透明系の製剤設計に利点を有するものである。具体的には、例えば、ヘアトニック等の溶液製剤、液状かどうかを問わずに本発明の原液を利用したゲル、エッセンス等の可溶化製剤およびエアゾール等の噴射剤混合製剤である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、「CTPの溶解濃度」とは、6−ベンジルアミノプリンが析出なく安定に溶解し、澄明な状態で溶ける最大量を意味する。なお、エタノールは95度の一級エタノール(日本アルコール販売社製)を使用し、フィチン酸は(築野食品工業社製)を使用した。また、水は精製水を使用した。
【0039】
(実施例1)
フィチン酸の使用量を変えて、6−ベンジルアミノプリン(CTP)の水とエタノールとの混合溶媒への20℃における溶解特性を評価した。
【0040】
<試験方法および定量評価方法>
水とエタノールの混合割合を80:20〜50:50にした混合溶液を透明なガラスビンに入れ、これにフィチン酸を0〜0.25重量%の割合で添加し、それぞれに6−ベンジルアミノプリンを約2g添加し、40℃で1時間加温した。その後、6−ベンジルアミノプリンが溶け残っていることを確認し、20℃にて1晩保管した。その後、上澄み液を採取し、その液に溶けている6−ベンジルアミノプリンをHPLCで定量した。
【0041】
表1に、使用したフィチン酸、混合溶媒に対するCTPの溶解濃度を示す。表中上段には、混合溶媒の水とエタノールとの混合比を示した。
【0042】
【表1】
【0043】
また、これらの結果を
図1に示した。フィチン酸の添加によりCTPの溶解度が増加することが分かる。
【0044】
(実施例2)
フィチン酸の使用量を変えて、CTPを0.5g含有する場合における水エタノール混合溶媒への−5℃における溶解安定性を評価した。
【0045】
<試験方法および判定基準>
下記表2の組成の被験試料約100gを透明ガラスビンに取り、−5℃に1日間保存した。保存後、被験試料入りのガラスビンを取り出して、直ちに、白濁(曇り)または結晶析出の有無を肉眼で判定した。表2に、結果を併せて示した。
【0046】
【表2】
【0047】
フィチン酸の添加が無い場合はCTPの結晶が析出した。また、フィチン酸の添加が0.5重量%と増加すると溶液に曇りが生じ清澄な組成物が得られなかった。一方、フィチン酸の添加量が0.025〜0.25重量%では、異常がなく澄明な組成物が保存できた。
【0048】
(実施例3)
従来からCTPの溶解補助剤として知られている、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、および化粧品で金属キレート剤として一般に使用されているエデト酸塩を使用し、CTPの水エタノール混合溶媒への20℃における溶解特性を、フィチン酸と比較評価した。評価結果を、
図2に示した。
【0049】
結果から分かるように、フィチン酸は従来CTPの溶解補助剤としてしられているグリセリン、1,3−ブチレングリコールと比べ少量(0.25重量%程度)での溶解補助効果が高いことを示している。また、エデト酸塩の評価結果は、一般にキレート剤として使用されるものがCTPの溶解補助剤として必ずしも使用できないことを示している。
【0050】
以下、本発明に係る育毛剤の処方例を具体的に示す。
【0051】
処方例
<処方例1> 育毛剤:ヘアトニック (重量%)
A
エタノール 50.0
精製水 47.2
6−ベンジルアミノプリン 0.5
フィチン酸 0.3
B
センブリエキス 1.0
ショウキョウチンキ 1.0
【0052】
Aに属する成分を均一に撹拌し6−ベンジルアミノプリンを溶解し調製原液を製造した。当該原液に、別に均一に溶解したBに属する成分を徐々に加え、均一に撹拌して澄明で安定なヘアトニックを製造した。
【0053】
<処方例2> 育毛剤:ヘアトニック (重量%)
A
エタノール 40.0
精製水 56.48
6−ベンジルアミノプリン 0.5
フィチン酸 0.02
B
セージ葉エキス 2.5
タイムエキス 0.5
【0054】
Aに属する成分を均一に撹拌し6−ベンジルアミノプリンを溶解し調製原液を製造した。当該原液に、別に均一に溶解したBに属する成分を徐々に加え、均一に撹拌して澄明で安定なヘアトニックを製造した。
【0055】
<処方例3>育毛剤:ヘアトニック (重量%)
A
エタノール 45.0
精製水 52.4
6−ベンジルアミノプリン 0.5
フィチン酸 0.1
B
トレハロース 1.0
タイムエキス 0.5
アシタバエキス 0.5
【0056】
Aに属する成分を均一に撹拌し6−ベンジルアミノプリンを溶解し調製原液を製造した。当該原液に、別に均一に溶解したBに属する成分を徐々に加え、均一に撹拌して澄明で安定なヘアトニックを製造した。
【0057】
<処方例4>育毛剤:ヘアトニック (重量%)
A
エタノール 50.0
精製水 28.9
6−ベンジルアミノプリン 0.8
フィチン酸 0.3
B
センブリエキス 10.0
ニンジンエキス 10.0
【0058】
Aに属する成分を均一に撹拌し6−ベンジルアミノプリンを溶解し調製原液を製造した。当該原液に、別に均一に溶解したBに属する成分を徐々に加え、均一に撹拌して澄明で安定なヘアトニックを製造した。
【0059】
<処方例5>育毛剤:エアゾール (重量%)
A 原液
エタノール 50.0
精製水 49.42
ニコチン酸ベンジル 0.01
ビタミンEアセテート 0.05
6−ベンジルアミノプリン 0.5
フィチン酸 0.02
B
液化石油ガス(噴射剤) 原液Aに対する重量比20
【0060】
Aに属する成分を均一に混合溶解してエアゾール容器に入れ、常法によりBを容器に加圧充填してエアゾールを製造した。
【0061】
<処方例6>育毛剤:エアゾール (重量%)
A 原液
エタノール 40.0
精製水 57.39
ニコチン酸ベンジル 0.01
ペンタデカン酸グリセリド 0.1
6−ベンジルアミノプリン 0.8
フィチン酸 0.2
ジグリセリン 1.5
B
液化石油ガス(噴射剤) 原液Aに対する重量比30
【0062】
Aに属する成分を均一に混合溶解してエアゾール容器に入れ、常法によりBを容器に加圧充填してエアゾールを製造した。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の溶液の調製方法によれば、6−ベンジルアミノプリンを有効成分としエタノールの刺激臭が緩和された澄明な溶液を得ることができ、育毛剤として有用である。さらに、エタノール配合量を50%重量以下に低減した非危険物型の澄明な育毛剤および当該育毛剤溶液の調製方法を提供することができる。