(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1工程が、(A)熱可塑性樹脂、(B)着色顔料、及び分散溶媒を含み、更に(D)分散剤を含んでよい顔料分散液前駆組成物(I')を調製する工程と、前記顔料分散
液前駆組成物(I')及び前記(C)成分を混合し、前記顔料分散液組成物(I)を調製
する工程と、を含む、請求項14に記載の着色樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.着色樹脂組成物
本発明の着色樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂(以下において、「(A)成分」とも記載する。)、(B)着色顔料(以下において、「(B)成分」とも記載する。)、及び(C)鱗片状粒子(以下において、「(C)成分」とも記載する。)を含み、場合により(D)分散剤(以下において、「(D)成分」とも記載する。)を含むとともに;(D)成分を含まない場合には、(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂(以下において、「(A1)成分」とも記載する。)を含み;(D)成分を含む場合には、(A)成分が(A1)成分を含み、及び/又は、(D)成分が(D1)塩基性基含有分散剤(以下において、「(D1)成分」とも記載する。)を含むことを特徴とする。以下、本発明の着色樹脂組成物について詳述する。
【0014】
なお、本明細書において、「〜」で示される数値範囲は、その両端の値を含む。例えば、30〜200nmとの表記は、30nm以上200nm以下であることを意味する。
【0015】
1−1.(A)熱可塑性樹脂
本発明の着色樹脂組成物は、(A)成分として、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂と、(A2)アミノ基を含有しない熱可塑性樹脂(以下において、「(A2)成分」とも記載する。)とが挙げられる。(A)成分としては、好ましくは透光性、より好ましくは透明性の熱可塑性樹脂が用いられる。
【0016】
1−1−1.(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂
(A1)成分としては特に限定されず、アミノ基含有モノマーに由来する単位を有するポリマーであればよく、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、アミノ基含有熱可塑性樹脂の好ましい例としては、アミノ基含有(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を意味する。また、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基含有モノマー(具体的には(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル)に由来する構造単位を含む高分子を意味する。
【0017】
アミノ基含有(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基含有モノマー以外のモノマーに由来する構造単位を一部に含んでいてもよい。(メタ)アクリロイル基含有モノマー以外のモノマーとしては、具体的にはエチレン性不飽和モノマーであり、より具体的には、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系モノマー、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸モノマー等が挙げられる。但し、成形体でのおける色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは、(A1)成分の全構造単位の50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、一層好ましくは99質量%以上が、(メタ)アクリロイル基含有モノマーに由来する構造単位で占められる。
【0018】
アミノ基含有(メタ)アクリル樹脂の構成成分となる(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、一般式CH
2=CR−COO−R’(Rは水素原子又はメチル基を表し、R'はアミノ基を有してよい一価の有機基又は水素原子を表す)で表される構造のモノマーである。アミノ基含有(メタ)アクリル系樹脂は、少なくとも、上記R'がアミノ基を有する一価の有機基である(a11)アミノ基含有(メタ)アクリロイル基含有モノマー(以下において、「(a11)モノマー」とも記載する。)に由来する構造単位を含む。また、アミノ基含有(メタ)アクリル系樹脂は、上記の構造単位の他に、上記Rが水素原子又はメチル基でありR'が水素である(a12)(メタ)アクリル酸(以下において、「(a12)モノマー」とも記載する。)に由来する構造単位、及び/又は、Rが水素原子又はメチル基でありR'が一価の有機基である(a13)(メタ)アクリル酸エステル(以下において、「(a13)モノマー」とも記載する。)に由来する構造単位をさらに含むことができ、これらの中でも、好ましくは、(a13)モノマーに由来する構造単位をさらに含む。アミノ基含有(メタ)アクリル樹脂としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
(a11)アミノ基含有(メタ)アクリロイル基含有モノマー
(a11)モノマーが有するアミノ基は、(B)成分及び(C)成分と相まって、着色樹脂組成物から得られる成形体の色調変動性の向上に寄与する。
【0020】
アミノ基を含有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーとしては、(モノ−C1〜4アルキル)アミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレート、及び(ジ−C1〜4アルキル)アミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。(モノ−C1〜4アルキル)アミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレートとしては、アミノエチル、アミノプロピル、メチルアミノエチル、エチルアミノエチル、ブチルアミノエチル、メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(ジ−C1〜4アルキル)アミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレートとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、本明細書において、炭素含有基に関し、例えば「C1〜4アルキル」との記載は、炭素数1〜4のアルキルを表す。
【0021】
(a11)モノマーの市販品としては、共栄社化学株式会社製の、ライトエステルDM(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ライトエステルDE(N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート)等が挙げられる。
【0022】
(A1)成分の合成において、これらの(a11)モノマーを1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
これらの(a11)モノマーの中でも、成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは(ジ−C1〜4アルキル)アミノC2〜6アルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
(A1)成分を構成するモノマー100質量部当たりの(a11)モノマーの使用量としては、例えば、0.05〜20質量部、好ましくは0.08〜18質量部、より好ましくは0.1〜16質量部、さらに好ましくは0.5〜14質量部、一層好ましくは1〜12質量部が挙げられる。
【0025】
(a12)(メタ)アクリル酸
(a12)モノマーである(メタ)アクリル酸は、(A1)成分の合成において、1種単独で用いてもよいし、アクリル酸及びメタクリル酸を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(a13)(メタ)アクリル酸エステル
(a13)モノマーである(メタ)アクリル酸エステルとしては、式(1)R'(一価の有機基)が、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基であるものが挙げられる。
【0027】
上記炭素数1〜6のアルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等が挙げられ、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、及びn−ブチル基等の鎖状アルキル基が挙げられ、上記炭素数5〜20のシクロアルキル基としては、好ましくは、シクロヘキシル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。上記炭素数6〜18のアリール基としては、好ましくはフェニル基等が挙げられる。炭素数7〜24のアラルキル基としては、好ましくはフェニルメチル基、フェニルエチル基、炭素数6〜14のアリール基が上記の炭素数1〜6のアルキル基で置換された基(メチルフェニル基、エチルフェニル基等)等が挙げられる。
【0028】
(A1)成分の合成において、これらの(a13)モノマーを1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
これらの(a13)モノマーの中でも、着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での色調変動性をより一層増大させる観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは、上記式(1)におけるR'が炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくは鎖状アルキル基、更に好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基であるものが挙げられる。
【0030】
(A1)成分が(a13)モノマー由来の構造単位を含む場合、(A1)成分を構成するモノマー100質量部に対する(a13)モノマーの使用量としては、成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、例えば80〜99.95質量部、好ましくは82〜99.92質量部、より好ましくは84〜99.9質量部、さらに好ましくは86〜99.5質量部、一層好ましくは88〜99質量部が挙げられる。
【0031】
(A1)成分の合成
(A1)成分の合成については、上記の(a11)モノマー、及び必要に応じ(a12)モノマー及び/又は(a13)モノマーを用いて公知の重合方法を用いて行うことができる。
【0032】
重合方法としては、通常、ラジカル重合が挙げられる。また、重合方式としては、溶液重合、懸濁重合、及び乳化重合等の公知の重合方式のいずれであってもよい。これらの重合方式の中でも、重合の精密な制御等の観点から、溶液重合を用いることが好ましい。
【0033】
ラジカル重合の重合開始剤としては、公知のものを用いることができる。例えば2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(ABNE)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1'−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクタノエート、ジイソブチルパーオキサイド、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシピバレート、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、およびt−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物系開始剤、過酸化水素と鉄(II)塩、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウム等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
これらの重合開始剤の中でも、好ましくはアゾ系開始剤が挙げられ、より好ましくは2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が挙げられる。
【0035】
重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、重合するモノマーの総量100質量部当たり、0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜6質量部、より好ましくは1〜4質量部、更に好ましくは1.5〜2.5質量部が挙げられる。
【0036】
(A1)成分の特性
(A1)成分の重量平均分子量(Mw)としては特に限定されないが、着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での色調変動性をより一層増大させる観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは5,000〜50,000、より好ましくは8,000〜40,000、さらに好ましくは10,000〜35,000、一層好ましくは12,000〜25,000、より一層好ましくは14,000〜20,000が挙げられる。
【0037】
(A1)成分の重量平均分子量(Mw)は、重合反応時間、重合開始剤の使用量等の条件により調節することができる。具体的には、重合反応時間を長くするほど、及び/又は、重合開始剤の使用量を少なくするほど、重量平均分子量(Mw)を大きくすることができる。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン換算で測定される値である。
【0038】
(A1)成分のガラス転移温度(Tg)としては、例えば30〜80℃、好ましくは35〜80℃、より好ましくは40〜80℃が挙げられる。
【0039】
(A1)成分のアミン価としては特に限定されないが、例えば成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは0.1〜50、より好ましくは0.3〜45、さらに好ましくは1〜40、一層好ましくは2〜40、より一層好ましくは3〜20、特に好ましくは3.5〜10が挙げられる。(A1)成分のアミン価は、(A1)成分の合成に用いられるモノマー中のアミノ基を有するモノマーの使用比率により調節することができる。具体的には、(A1)成分の合成に用いられるモノマー中のアミノ基を有するモノマーの使用比率を上げるほど、アミン価を高くすることができる。
【0040】
(A1)成分の含有量
(A)成分100質量部に対する(A1)成分の含有量としては特に限定されない(つまり、0質量部以上100質量部以下である)が、着色樹脂組成物調製時のペレット化、フレーク化、又はチップ化の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での色調変動性をより一層増大させる観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは50質量部以下(つまり、0質量部以上50質量部以下)、(A)成分が(A1)成分を含む場合にあっては、より好ましくは0質量部超50質量部以下、さらに好ましくは0質量部超40質量部以下、一層好ましくは0質量部超30質量部以下、より一層好ましくは0質量部超20質量部以下、具体的には1〜20質量部が挙げられる。
【0041】
また、(A)成分が(A1)成分と後述の低分子(A2L)成分とを含む場合、(A1)成分は、成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、(A)成分100質量部に対する(A1)成分と低分子(A2L)成分との総量が、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは6〜20質量部、一層好ましくは10〜20質量部となるように配合することができる。この場合、具体的には、(A)成分100質量部に対する(A1)成分の含有量として、同様の観点から、好ましくは0.5〜15質量部、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは3〜8質量部が挙げられる。
【0042】
さらに、(A)成分が(A1)成分を含み後述の低分子(A2L)成分を含まない場合、(A)成分100質量部に対する(A1)成分の含有量としては、成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは6〜20質量部、一層好ましくは10〜20質量部が挙げられる。
【0043】
1−1−2.(A2)アミノ基を含有しない熱可塑性樹脂
(A2)成分としては特に限定されないが、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂等の水酸基含有樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテンおよびポリ(4−メチル)ペンテン)等のポリオレフィン;6−ナイロン、6,6−ナイロン、非晶性ポリアミド等のポリアミド(PA);アルキド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のポリエステル;ポリカーボネート(PC);芳香族ポリイミド等のポリイミド;ポリアミドイミド;非晶性ポリアリレート等のポリアリレート;ポリスチレン(PS);ポリ塩化ビニル;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル樹脂;ポリ酢酸ビニル(PVAC);ポリアクリロニトリル;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS);セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート(CAB)、ニトロセルロース等のセルロース樹脂;ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトン、およびポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチック;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂が挙げられる。これらのアミノ基を含有しない熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
水酸基含有樹脂としては特に限定されず、水酸基含有モノマーに由来する単位を有するポリマーであればよく、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、水酸基含有樹脂としては、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0045】
水酸基含有(メタ)アクリル樹脂が(メタ)アクリロイル基含有モノマー以外のモノマーに由来する構造単位を一部に含んでいてもよい点、(メタ)アクリロイル基含有モノマー以外のモノマー及びそれが占める比率は、上記(A1)成分におけるアミノ基含有(メタ)アクリル樹脂と同様である。
【0046】
水酸基含有(メタ)アクリル系樹脂は、少なくとも、上記R'が水酸基を有する一価の有機基である(a14)水酸基含有(メタ)アクリロイル基含有モノマー(以下において、「(a14)モノマー」とも記載する。)に由来する構造単位を含む。水酸基含有(メタ)アクリル樹脂の構成成分となる(メタ)アクリロイル基含有モノマーについては、(a11)モノマーの代わりに(a14)モノマーが含まれることを除いて、上記(A1)成分におけるアミノ基含有(メタ)アクリル樹脂と同様である。
【0047】
上記の(A2)成分の中でも、成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは水酸基含有樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、セルロース樹脂が挙げられ、より好ましくは水酸基含有樹脂、ポリオレフィン、アルキド樹脂、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、セルロースアセテートブチレートが挙げられ、さらに好ましくは水酸基含有樹脂(一層好ましくは水酸基含有(メタ)アクリル樹脂)、ポリオレフィン、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂(一層好ましくは(メタ)アクリル酸エステル)が挙げられる。
【0048】
また、上記の(A2)成分の中でも、着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での色調変動性をより一層増大させる観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは芳香環を有しないものが挙げられる。
【0049】
(A2)成分の特性
(A2)成分の重量平均分子量(Mw)としては特に限定されず、例えば、10,000〜400,000が挙げられ、着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での色調変動性をより一層増大させる観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは20,000〜200,000、より好ましくは20,000〜100,000が挙げられる。
【0050】
(A2)成分のガラス転移温度(Tg)としては、例えば30〜200℃、好ましくは35〜150℃、より好ましくは50〜120℃が挙げられる。
【0051】
また、(A2)成分は、着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での色調変動性をより一層増大させる観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、少なくとも、重量平均分子量(Mw)が例えば10,000〜90,000、好ましくは20,000〜90,000、より好ましくは20,000〜60,000、さらに好ましくは20,000〜40,000、一層好ましくは20,000〜30,000のアミノ基を含有しない低分子量の熱可塑性樹脂(「低分子(A2L)成分」とも記載する。)を含んでいることが好ましい場合がある。このような場合としては、後述の着色樹脂組成物調製の製造方法での第1工程で(A2)成分を用いる場合が挙げられる。(A2L)成分のガラス転移温度(Tg)としては、例えば30〜200℃、好ましくは35〜150℃、より好ましくは50〜120℃が挙げられる。
【0052】
さらに、(A2)成分は、着色樹脂組成物調製時のペレット化、フレーク化、又はチップ化の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での色調変動性をより一層増大させる観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、少なくとも、重量平均分子量(Mw)が例えば90,000超800,000、好ましくは100,000〜600,000、より好ましくは150,000〜400,000のアミノ基を含有しない高分子量の熱可塑性樹脂(「高分子(A2H)成分」とも記載する。)を含んでいることが好ましい。
【0053】
(A2)成分の含有量
(A)成分100質量部に対する(A2)成分の含有量としては特に限定されない(つまり、0質量部以上100質量部以下である)が、(A)成分が(A2)成分を含む場合にあっては、例えば50質量部以上、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上、さらに好ましくは80質量部以上が挙げられる。
【0054】
また、(A)成分が低分子(A2L)成分を含む場合、(A)成分100質量部に対する低分子(A2L)成分の含有量としては、成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは1〜19質量部、好ましくは5〜15質量部、より好ましくは7〜12質量部が挙げられる。
【0055】
1−2.(B)着色顔料
本発明の着色樹脂組成物は、(B)成分として、着色顔料を含む。着色顔料としては、有機顔料及び無機顔料が挙げられ、これらのいずれか一方又は両方を組み合わせて用いられる。成形体での色調変動性をより一層増大させる等の観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、(B)成分は、好ましくは有機顔料を含み、より好ましくは有機顔料からなる。
【0056】
有機顔料としては特に限定されないが、例えば、アゾ顔料(例えば、モノアゾイエロー、モノアゾレッド、モノアゾバイオレット、ジスアゾイエロー、ジスアゾオレンジ、ピラゾロン顔料等)、ベンズイミダゾロン顔料、β−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、縮合アゾ顔料、キナクリドン顔料(例えば、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等)、ペリレン顔料(例えば、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等)、ペリノン顔料(例えば、ペリノンオレンジ等)、イソインドリノン顔料(例えば、イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等)、イソインドリン顔料(例えば、イソインドリンイエロー等)、ジオキサジン顔料(例えば、ジオキサジンバイオレット等)、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料(例えば、キノフタロンイエロー等)、ジケトピロロピロール(DPP)顔料、フタロシアニン顔料(例えば、フタロシアニン青、フタロシアニン緑等)が挙げられる。
【0057】
有機顔料は、成形体に着色すべき色に応じ、有機顔料自体が呈する色を考慮して当業者が適宜決定することができ、有機顔料の1種を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。有機顔料自体が呈する色は、化合物の種類及び平均粒子径に依存し、当業者であれば各有機顔料がどのような色を呈するかについて容易に認識できる。これらの有機顔料の中でも、成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、青味顔料、具体的には青色顔料、緑色顔料、紫色顔料、青味赤色顔料が挙げられ、好ましくは青色顔料、青味赤色顔料(ジケトピロロピロール(DPP)顔料等)が挙げられ、より好ましくは青色顔料が挙げられ、さらに好ましくはフタロシアニン青が挙げられる。
【0058】
無機顔料としては、チタン、亜鉛、クロム、鉄、コバルト、銅、マンガン、マグネシウム、ビスマス、イットリウム、アルミニウム、バナジウムからなる群より選択される金属の酸化物、水酸化物、硫化物、ケイ酸塩、フェロシアン化塩等の化合物が挙げられる。また、無機顔料は、上記金属の1種を含有する化合物であってもよいし、複数種を含有する複合化合物であってもよい。複合化合物の具体例としては、Fe−Co−Cr系、Cu−Cr系、Fe−Cr系、Fe−Mn系、Cu−Mn系、Cu−Mg系、Cu−Bi系、Mn−Bi系、Y−Mn系、Co−Al系、Fe−Co−Al−Mg系等の塩が挙げられる。
【0059】
無機顔料も、成形体に着色すべき色に応じ、無機顔料自体が呈する色を考慮して当業者が適宜決定することができ、無機顔料の1種を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。無機顔料自体が呈する色は、化合物の種類及び平均粒子径に依存し、当業者であれば各無機顔料がどのような色を呈するかについて容易に認識できる。これらの有機顔料の中でも、好ましくは有機顔料にない色味顔料を用いることができ、より好ましくは、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の白色顔料が挙げられる。
【0060】
着色顔料の平均粒子径としては、例えば10〜1000nmが挙げられる。成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、着色顔料の平均粒子径としては、好ましくは、20〜500nm、より好ましくは30〜200nm、さらに好ましくは40〜150nm、一層好ましくは50〜100nm、特に好ましくは60〜90nmが挙げられる。
【0061】
なお、着色顔料の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察により測定する。具体的には、透過型電子顕微鏡(TEM)でランダムに選んだ50個の着色顔料の粒子径(最大径)を測定し、50個の着色顔料の粒子径の平均値を平均粒子径として採用する。TEM画像から最大径を測定する場合、TEM画像における着色顔料粒子の外周上の任意の2点を結ぶ直線を引き、その直線の長さが最大となる箇所を特定し、当該箇所の直線の長さを着色顔料粒子の最大径とする。
【0062】
着色樹脂組成物における(B)成分の含有量としては特に限定されないが、(C)成分1質量部に対する(B)成分の含有量として、例えば0.03〜0.5質量部が挙げられる。成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、(A)成分1質量部に対する(B)成分の含有量としては、好ましくは0.05〜0.4質量部、より好ましくは0.1〜0.25質量部、さらに好ましくは0.15〜0.2質量部が挙げられる。
【0063】
着色樹脂組成物において、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量としては、着色樹脂組成物がマスターバッチであるか着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップであるかによっても異なりうるが、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量として、例えば0.01〜30質量部が挙げられる。
【0064】
例えば、着色樹脂組成物がマスターバッチである場合、成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量としては、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは2〜20質量部、さらに好ましくは4〜12質量部、一層に好ましくは6〜10質量部、特に好ましくは7〜9質量部が挙げられる。
【0065】
また、着色樹脂組成物が着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップである場合、成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量としては、好ましくは0.01〜0.2質量部、より好ましくは0.025〜0.14質量部、さらに好ましくは0.04〜0.12質量部、一層好ましくは0.06〜0.1質量部、より一層好ましくは0.07〜0.078質量部が挙げられる。
【0066】
着色樹脂組成物100g中の(B)成分の含有量としても、着色樹脂組成物がマスターバッチであるか着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップであるかによっても異なりうるが、例えば5〜30,000mgが挙げられる。
【0067】
例えば、着色樹脂組成物がマスターバッチである場合、マスターバッチ100g中の(B)成分の含有量としては、例えば500〜30,000mgが挙げられる。成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる観点から、マスターバッチ100g中の(B)成分の含有量としては、好ましくは1,000〜15,000mg、より好ましくは2,000〜12,000mgg、さらに好ましくは3,000〜7,000mg、一層好ましくは4,000〜6,000mgが挙げられる。
【0068】
また、着色樹脂組成物が着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップである場合、着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップ100g中の(B)成分の含有量としては、例えば5〜300mgが挙げられる。成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる観点から、着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップ100g中の(B)成分の含有量としては、好ましくは10〜150mg、より好ましくは20〜120mg、さらに好ましくは30〜70mg、一層好ましくは40〜60mgが挙げられる。
【0069】
1−3.(C)鱗片状粒子
本発明の着色樹脂組成物は、(C)成分として、鱗片状粒子を含む。鱗片状粒子は、光輝性を付与する目的で用いられる。
【0070】
鱗片状粒子としては、表面光沢を有する物質であれば特に限定されない。例えば、[i]鱗片状金属粒子(以下において、「[i]粒子」とも記載する)、[ii]鱗片状金属酸化物粒子(以下において、「[ii]粒子」とも記載する)、[iii]基材の表面が金属酸化物で被覆された鱗片状粒子(以下において、「[iii]粒子」とも記載する)、[iv]基材の表面が金属酸化物で被覆された鱗片状粒子、[v]鱗片状黒鉛粒子等が挙げられる。
【0071】
[i]鱗片状金属粒子の材料としては、アルミニウム、銅、ニッケル合金、ステンレス等が挙げられる。[ii]鱗片状金属酸化物粒子の材料としては、アルミナ、酸化鉄等が挙げられる。[iii]基材の表面が金属酸化物で被覆された鱗片状粒子における基材としては、鱗片状金属粒子、鱗片状金属酸化物粒子、鱗片状二酸化ケイ素粒子、鱗片状ガラス粒子、マイカ粒子、グラファイト粒子等が挙げられ、鱗片状金属粒子及び鱗片状金属酸化物粒子の具体例としては、上記[i] 粒子及び[ii] 粒子として用いられるものと同様である。[iii]基材の表面が金属酸化物で被覆された鱗片状粒子における金属酸化物としては、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、銅、錫、クロム、ジルコニウム等の金属から選択される1種又は複数種の金属の酸化物が挙げられ、例えば、酸化鉄、チタン酸鉄、二酸化チタン等が挙げられる。[iii]基材の表面が金属酸化物で被覆された鱗片状粒子の好ましい例としては、酸化鉄が被覆された鱗片状アルミニウム粒子が挙げられる。[iv]基材の表面が金属酸化物で被覆された鱗片状粒子における基材の具体例としては、上記[iii] 粒子の基材として用いられるものと同様である。[iv]基材の表面が金属酸化物で被覆された鱗片状粒子における着色顔料の具体例としては、上記項目1−2で挙げたものが挙げられる。
【0072】
これらの鱗片状粒子の中でも、成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは[i]粒子、[ii]粒子及び[iii]粒子が挙げられ、より好ましくは[ii]粒子及び[iii]粒子が挙げられ、更に好ましくは[iii]粒子が挙げられ、特に好ましくは、酸化鉄が被覆された鱗片状アルミニウム粒子が挙げられる。
【0073】
鱗片状粒子の形状は、樹脂組成物を成形する際に配向可能な扁平状であればよく、好ましくは平板状が挙げられる。また、鱗片状粒子の扁平面の形状としても特に制限されず、円形状、楕円形状、多角形状等、任意の形状が許容される。
【0074】
鱗片状粒子の平均粒子径としては特に限定されないが、例えば1〜150μmが挙げられる。成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、鱗片状粒子の平均粒子径としては、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜25μm、さらに好ましくは7〜24μm、一層好ましくは10〜22μm、特に好ましくは15〜20μmが挙げられる。なお、鱗片状粒子の粒子径は最大径を意味し、鱗片状粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(D50)を意味する。
【0075】
鱗片状粒子のアスペクト比、つまり平均厚に対する平均粒子径(平均粒子径/平均厚)としては特に限定されないが、例えば10〜1000が挙げられる。成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、鱗片状粒子のアスペクト比としては、好ましくは15〜70、より好ましくは35〜300、さらに好ましくは45〜200、一層好ましくは50〜130が挙げられる。なお、鱗片状粒子の平均厚は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて20個の鱗片状粒子の断面を観察し、それらの厚み(最大厚)の平均値である。
【0076】
着色樹脂組成物における(C)成分の含有量としては特に限定されないが、好ましくは、(B)成分の含有量との関係が上記項目1−3に述べた関係((C)成分1質量部に対する(B)成分の含有量)となるように設定することができる。
【0077】
例えば、着色樹脂組成物がマスターバッチである場合、成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量としては、好ましくは20〜70質量部、より好ましくは30〜55質量部、さらに好ましくは40〜47質量部が挙げられる。
【0078】
また、着色樹脂組成物が着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップである場合、成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量としては、好ましくは0.2〜0.7質量部、より好ましくは0.3〜0.55質量部、さらに好ましくは0.4〜0.47質量部が挙げられる。
【0079】
1−4.(D)分散剤
本発明の着色樹脂組成物は、(D)成分として、分散剤を含む。
【0080】
分散剤としては特に限定されないが、例えば、(D1)塩基性基含有分散剤及び(D2)塩基性基を含有しない分散剤(以下において、「(D2)成分」とも記載する。)が挙げられる。(D1)成分は、塩基性基以外に酸性基をさらに有していてもよく、酸性基を有していなくてもよい。(D2)成分としては、酸性基を有する分散剤及び塩基性基も酸性基も有しない分散剤が挙げられる。
【0081】
(D1)成分及び(D2)成分において、塩基性基としては、アミノ基、アミド基、ピロリドン基、イミン基、イミノ基、ウレタン基、四級アンモニウム基、アンモニウム基、ピリジノ基、ピリジウム基、イミダゾリノ基、およびイミダゾリウム基等が挙げられ、酸性基としては、カルボキシル基、硫酸基、リン酸基等が挙げられる。
【0082】
成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、分散剤としては、好ましくは(D1)成分、具体的には、塩基性基を有し酸性基を有しない分散剤、塩基性基及び酸性基を有する分散剤が挙げられる。
【0083】
(D1)成分としては、アミン価が50mgKOH/g超の分散剤が用いられる。成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、(D1)成分は、好ましくは100mgKOH/g以上、より好ましくは120mgKOH/g以上のものが挙げられる。(D1)成分のアミン価の上限としては特に限定されないが、例えば1000mgKOH/g以下、900mgKOH/g以下、又は800mgKOH/g以下が挙げられる。
【0084】
(D1)成分の好ましい例としては、塩基性基を有し酸性基を有しない分散剤が挙げられ、より好ましくは、トリアルキルアミン(アルキル基は、例えば炭素数1〜8であり、3つのアルキル基は同一又は異なっていてよい;テトラメチルアミン、テトラエチルアミン、テトラブチルアミン等)、アルキロールアミノアマイド等が挙げられる。
【0085】
着色樹脂組成物における(D)成分の含有量としては特に限定されないが、(B)成分1質量部に対する(D)成分の含有量として、例えば0.01〜1質量部、好ましくは0.04〜0.6質量部が挙げられる。
【0086】
1−5.(B)成分に対するアミン価
本発明の着色樹脂組成物は、(D)成分を含まない場合にあっては(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含むこと、及び(D)成分を含む場合にあっては(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、(D)成分が塩基性基含有分散剤(D1)を含むことによって、成形体での色調変動性を増大させる。つまり、着色樹脂組成物中にアミノ基等の塩基性基を存在させることで、成形体での色調変動性を増大させる。
【0087】
着色樹脂組成物中に存在するアミノ基等の塩基性基の量としては特に限定されないが、例えば、(B)成分1gに対するアミン価として、0.5mgKOH以上が挙げられる。成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、(B)成分1gに対するアミン価として、好ましくは0.7mgKOH以上、より好ましくは3mgKOH以上、さらに好ましくは6mgKOH以上、10mgKOH以上、20mgKOH以上、30mgKOH以上、40mgKOH以上、50mgKOH以上、60mgKOH以上、又は70mgKOH以上が挙げられる。(B)成分1gに対するアミン価の上限としては特に限定されないが、例えば、100mgKOH以下、90mgKOH以下、80mgKOH以下、70mgKOH以下、60mgKOH以下、50mgKOH以下、40mgKOH以下、30mgKOH以下、20mgKOH以下、又は10mgKOH以下が挙げられる。
【0088】
(B)成分1gに対するアミン価の調節は、(B)成分の含有量、(A1)成分の含有量、(A1)成分自体のアミン価(つまり(A1)成分の合成に用いられるアミノ基含有モノマーの使用量)、(D1)成分の含有量、及び/又は(D1)成分のアミン価を調節することによって行うことができる。
【0089】
1−6.その他の成分
着色樹脂組成物は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、発泡剤、染料、充填剤、金属石鹸、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、滑剤、造核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、脱水剤、艶調整剤等が挙げられる。
【0090】
1−7.用途
着色樹脂組成物は、着色成形体を製造するために用いられ、より具体的には、マスターバッチ、若しくは、着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップとして用いることができる。
【0091】
マスターバッチは、(B)成分及び(C)成分が、着色成形体における濃度よりも高い濃度に濃縮された状態で配合されており、着色成形体の製造において、無色の熱可塑性樹脂で希釈して用いる。着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップは、(B)成分及び(C)成分が、着色成形体における濃度と同じ濃度で配合されており、着色成形体の製造において、無色の熱可塑性樹脂で希釈せずに用いる。
【0092】
2.着色樹脂組成物の製造方法
上記項目1で述べた着色樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂、(B)着色顔料、(C)鱗片状粒子、及び場合により配合される(D)分散剤を含む樹脂組成物を調製し、当該樹脂組成物をペレット化、フレーク化、又はチップ化することによって得ることができる。
【0093】
(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の詳細及びその使用量、他の成分、並びに得られる着色樹脂組成物のアミン価及び用途については、上記項目1で述べた通りである。
【0094】
着色樹脂組成物調製時の分散作業の容易性をより一層向上させる観点及び/又は着色樹脂組成物調製時のペレット化、フレーク化、又はチップ化の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での色調変動性をより一層増大させる観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、着色樹脂組成物の製造方法は、以下の第1工程から第3工程を含むことが好ましい。
【0095】
2−1.第1工程
第1工程では、(A)熱可塑性樹脂、(B)着色顔料、(C)鱗片状粒子、及び分散溶媒を含み、更に(D)分散剤を含んでよい顔料分散液組成物(I)を調製する。つまり、第1工程を行うことで、あらかじめ顔料を分散させる。顔料分散液組成物(I)が(D)成分を含まない場合にあっては、(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含む。顔料分散液組成物(I)が前記(D)成分を含む場合にあっては、(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、(D)成分が(D1)塩基性基含有分散剤を含む。
【0096】
分散溶媒としては特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素溶剤;シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサン等の脂環式脂肪族炭化水素溶剤;クロロホルム及びクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤;、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコールなどの第一級アルコール、2−ブタノール等の第二級アルコール、t−ブチルアルコール、等の第三級アルコール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル溶剤等が挙げられる。これらの分散溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
これらの分散溶媒の中でも、好ましくはハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン溶剤及びエステル溶剤が挙げられ、より好ましくはケトン溶剤及びエステル溶剤が挙げられ、より好ましくはエステル溶剤が挙げられ、さらに好ましくは酢酸エチルが挙げられる。
【0098】
第1工程で用いられる(A)成分としては、上記項目1−1で述べた(A)成分のうち、(A1)成分及び/又は(A2)成分を用いることができるが、第1工程での分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での色調変動性をより一層増大させる観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、低分子量のものであることが好ましく、具体的には、(A1)成分、及び/又は、上記項目1−1−2で述べた低分子(A2L)成分が挙げられる。また、(A)成分としては、第1工程での分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での色調変動性をより一層増大させる観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、好ましくは芳香環を有しないものが挙げられる。
【0099】
顔料分散液組成物(I)調製方法としては特に限定されず、(A)成分と場合により配合される(D)成分とを含む分散溶媒中で、(B)成分及び(C)成分が分散した状態で調製される方法を任意に選択することができる。
【0100】
本発明においては、顔料分散液組成物(I)を調製する方法の好ましい例は、(A)成分、(B)成分、及び分散溶媒を含み、更に(D)成分を含んでよい顔料分散液前駆組成物(I')を調製する工程と、当該顔料分散液前駆組成物(I')及び(C)成分を混合し、顔料分散液組成物(I)を調製する工程と、を含む。さらに、顔料分散液組成物(I)を調製する方法のより好ましい例は、(A)成分と場合により配合される(D)成分とを含む分散溶媒中で(B)成分を分散することによって顔料分散液前駆組成物(I')を調製する工程、及び顔料分散液前駆組成物(I')に(C)成分を分散することによって顔料分散液組成物(I)を調製する工程と、を含む。
【0101】
(B)成分、又は(B)成分及び(C)成分の分散の方法としては特に限定されないが、例えば、プロペラミキサー、ハイスピードミキサー、ディゾルバー、ホモジナイザー、アルテマイザー、湿式ジェットミル、コロイドミル、マスコロイダー、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、サンドグラインダー、インラインミル、メディアレス型高速撹拌分散機、超音波分散基等の湿式混合分散機;ニーダー混練、ヘンシル混練、ロール混練、エクストルーダー混練等の混練混合機を用いる方法が挙げられる。
【0102】
第1工程で用いる(A)成分の量は、着色樹脂組成物の調製に用いる(A)成分の一部であり、具体的には、着色樹脂組成物の調製に用いる(A)成分の総量100質量部に対する量として、例えば5〜30質量部、好ましくは8〜20質量部、より好ましくは13〜16質量部、さらに好ましくは15〜16質量が挙げられる。
【0103】
成形体での色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、(B)成分は、顔料分散液前駆組成物(I')を、(B)成分が1質量%となるように酢酸エチル中に希釈して希釈物を調製した場合に、当該希釈物の動的光散乱測定による(B)成分の平均分散粒子径(Z平均粒子径)が100〜500nmとなるように分散されることが好ましい。第1工程での分散作業の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での色調変動性をより一層増大させる観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、上記平均分散粒子径としては、好ましくは200〜400nm、より好ましくは230〜360nm、さらに好ましくは250〜300nmが挙げられる。
【0104】
2−2.第2工程
第2工程では、第1工程で調製した顔料分散液組成物(I)と、追加の(A)熱可塑性樹脂とを混合し、樹脂組成物を調製する。
【0105】
第2工程で用いられる追加の(A)成分は、第1工程で用いられる(A)成分と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2工程でのペレット化、フレーク化、又はチップ化の容易性をより一層向上させる観点、若しくはそれに加えて成形体での色調変動性をより一層増大させる観点及び/又は成形体でのウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、第2工程で用いられる追加の(A)成分としては、高分子(A2H)成分、及び/又は低分子(A2L)成分のうちの芳香環を有するものが挙げられる。追加の(A)成分の形態としては特に限定されず、ペレット状、粉末状、冷凍粉砕物状等が挙げられるが、好ましくは冷凍粉砕物の形態が挙げられる。
【0106】
混合方法としては特に制限されず、公知の装置を用いて混合すればよい。例えば、ヘンシェルミキサー、三本ロール、二本ロール、押出機等を用いた混合が挙げられる。なお、第2工程では、樹脂組成物から分散溶媒を除去することができる。
2−3.第3工程
第3工程では、第2工程で調製された樹脂組成物をペレット化、フレーク化、又はチップ化し、着色樹脂組成物を得る。ペレット化、フレーク化、又はチップ化の方法としては、公知の方法を特に制限なく用いることができる。
【0107】
3.着色成形体
本発明の着色成形体は、(A)熱可塑性樹脂、(B)着色顔料、及び(C)鱗片状粒子を含み、場合により(D)分散剤を含むとともに;(D)成分を含まない場合、(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み;(D)成分を含む場合、(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、(D)成分が(D1)塩基性基含有分散剤を含むことを特徴とする。
【0108】
(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の詳細、他の成分等については、上記項目1で述べた通りである。
【0109】
着色成形体において、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量としては、例えば0.01〜0.2質量部が挙げられる。色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又はウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる等の観点から、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量としては、好ましくは0.025〜0.14質量部、より好ましくは0.04〜0.12質量部、さらに好ましくは0.06〜0.1質量部、一層好ましくは0.07〜0.078質量部が挙げられる。
【0110】
また、着色成形体100g中の(B)成分の含有量としては、例えば5〜300mgが挙げられる。色調変動性をより一層増大させる観点、及び/又はウェルドライン視認抑制性をより一層向上させる観点から、着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップ100gにおける(B)成分の含有量としては、好ましくは10〜150mg、より好ましくは20〜120mg、さらに好ましくは30〜70mg、一層好ましくは40〜60mgが挙げられる。
【0111】
着色成形体は、上記項目1で述べた着色樹脂組成物を用いて製造することができる。
【0112】
例えば、着色成形体がマスターバッチである場合、マスターバッチにさらに熱可塑性樹脂を加えて混錬し、所定の形状に成形することで得ることができる。この場合、熱可塑性樹脂としては、上記項目1−1で述べた(A)成分が挙げられ、好ましくは上記項目1−1−2で述べた(A2)成分が挙げられ、さらに好ましくは上記項目1−1−2で述べた高分子(A2H)成分及び/又は低分子(A2L)成分のうちの芳香環を有するものが挙げられる。マスターバッチと混合される熱可塑性樹脂は、マスターバッチに含まれる(A)成分と同じであってもよしい、異なっていてもよい。好ましくは、マスターバッチと混合される熱可塑性樹脂は、マスターバッチに含まれる(A)成分と同じである。
【0113】
また、着色成形体が着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップである場合、着色ペレット、着色フレーク、又は着色チップをそのまま混錬し、所定の形状に成形することで得ることができる。
【0114】
成形法としては特に限定されず、射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法等が挙げられる。これらの成形法の中でも、(C)成分配向させやすく、見る角度によって色相変化及び輝度変化を生じさせやすくする観点から、好ましくは、射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法が挙げられる。
【0115】
成形体の用途としては、意匠性が求められる用途であれば特に限定されず、例えば、家電機器、電子機器、画像表示装置等の筐体、及び自動車内装品等が挙げられる。
【実施例】
【0116】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0117】
[1]材料
以下に示す符号((A),(A1),(A2),(B),(C),(D),(D1),(D2))を付した成分は、上記項目「1.着色樹脂組成物」〜「3.着色成形体」で説明した当該符号を付した成分に対応しており、同様に、表2〜7に示す符号を付した成分にも対応している。
【0118】
(A)熱可塑性樹脂
・(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂(アミノ基有)
・・アミノ基含有アクリル樹脂1〜4
【表1】
【0119】
・・(a11)ジメチルアミノエチルメタクリレート
ライトエステルDM:共栄社化学株式会社製
・・2,2’ −アゾビス(2−メチルブチロニトリル)
ABN−E:株式会社日本ファインケム製
【0120】
・(A1)アミノ基含有アクリル樹脂1〜4の合成
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えたフラスコに酢酸エチルを90質量部仕込み還流温度まで昇温し、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート(MMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、2,2’−アゾビス(2−メ
チルブチロニトリル)を表1に示す量で含む混合液を2時間かけて滴下し、2時間反応させた。さらに、酢酸ブチルを10質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリ
ル)をさらに0.5質量部滴下し、3時間反応させ、アミノ基含有アクリル樹脂を含む樹脂溶液(固形分50重量%)を得た。
【0121】
・(A2)アミノ基を含有しない熱可塑性樹脂(アミノ基無)
・・(A2L)低分子熱可塑性樹脂
・・・水酸基含有アクリル樹脂(OH含有アクリル樹脂)
ファインディックA−251:DIC株式会社製、MI=8〜28g/10min、Tg=56℃、重量平均分子量21,000、常温固体
・・・CAB(セルロースアセテートブチレート)
CAB531−1:イーストマンケミカル社製、Tg=115℃、重量平均分子量85,000、常温固体
・・・アルキド樹脂
アルキディアEZ−3801−60:DIC株式会社製、短油アルキド樹脂、Tg=36℃、重量平均分子量55,000
【0122】
・・(A2H)高分子熱可塑性樹脂
・・・PMMA(ポリメチルメタクリレート)
アクリペットVH−001:三菱ケミカル株式会社製、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位95質量%以上含むアクリル樹脂、Tg=90℃、重量平均分子量168,000
・・・PP(ポリプロピレン)
ノバテックMA3:日本ポリプロ株式会社製、アイソタクチックポリプロピレン樹脂、重量平均分子量397,000
・・・PC(ポリカーボネート)
ユーピロンH−4000:三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート樹脂、Tg=148℃、重量平均分子量33,000
・・・ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)
ダイヤラック
(R)M U400:テクノUMG株式会社製、透明ABS樹脂、Tg=112℃
【0123】
(B)着色顔料
・青色有機顔料(青)
・・フタロシアニン青
Fastogen Blue AE−8:DIC株式会社製、銅フタロシアニン、平均粒子径80nm)
・・フタロシアニン青
CYANINE BLUE J−620(山陽色素株式会社製、フタロシアニン系顔料、平均粒子径150nm)
・青味赤色有機顔料(青味赤)
・・DPP(ジケトピロロピロール)
Cinilex DPP Runbine SR6T:CINIC社製、平均粒子径100nm
・白色無機顔料(白)
酸化チタン:MT−500SA:テイカ株式会社製、無機表面処理酸化チタン、平均一次粒子径35nm
【0124】
(C)鱗片状粒子
・酸化鉄被覆アルミニウム
以下のペースト性状の酸化鉄被覆アルミニウム顔料を用いた。表中に示す酸化鉄被覆アルミニウムの配合量は、これらペースト顔料中に含まれる酸化鉄被覆アルミニウムの量を示す。
・・Paliocrom Brriant RED L3258:BASF社製、粒径幅10〜26μm、平均粒子径=17μm、アスペクト比57
・・Paliocrom Orange L2800:BASF社製、粒径幅8〜38μm、平均粒子径=19μm、アスペクト比112
・・Paliocrom Gold L 2020:BASF社製、粒径幅8〜38μm、平均粒子径=16μm、アスペクト比107
・アルミニウム
以下のペースト性状のアルミニウム顔料を用いた。表中に示すアルミニウムの配合量は、このペースト顔料中に含まれるアルミニウムの量を示す。
・・GX−40A:旭化成メタルズ株式会社製、アルミニウム顔料ペースト(アルミ含有量74%)、平均粒子径19μm、アスペクト比50
・酸化鉄
・・TAROX BM−200P:チタン工業株式会社製、平均粒子径18μm、アスペクト比60
・黒鉛(鱗片状黒鉛粒子)
・・J−CPB:日本黒鉛工業株式会社製、平均粒子径5μm、アスペクト比17
・・CPB:日本黒鉛工業株式会社製、平均粒子径19μm、アスペクト比38
・・FB−150:日本黒鉛工業株式会社製、平均粒子径45μm、アスペクト比90
・・F#2:日本黒鉛工業株式会社製、平均粒子径130μm、アスペクト比650
【0125】
他形状粒子
・土状黒鉛
・・青P:日本黒鉛工業株式会社製、平均粒子径7μm、アスペクト比1
・黒色ウレタン
・・C−400黒:根上工業株式会社製、アートパールC−400黒、平均粒子径15μm、アスペクト比1
【0126】
(D)分散剤
・(D1)塩基性基含有分散剤(アミノ基有)
・・アルキロールアミノアマイド
DISPERBYK−109:ビッグケミー・ジャパン株式会社製、無溶剤型湿潤分散剤(高分子量アルキロールアミノアマイド)、アミン価140mgKOH/g
・・テトラブチルアミン
アミン価768mgKOH/g
・(D2)塩基性基を含有しない分散剤
・・酸性基含有コポリマー
DISPERBYK−102:ビッグケミー・ジャパン株式会社製、無溶剤型湿潤分散剤、酸価101mgKOH/g(アミン価0mgKOH/g)
【0127】
[2]測定
[2−1]アミン価
アミン価を測定すべき試料を固形分換算で約3g採取し、正確に秤量する。その後、テトラヒドロフランを加えて溶解する。次いで、ブロムクレゾールグリーン指示薬を数滴加え、電位差滴定装置(商品名:GT−06、三菱化学社製)を用い、0.1mol/L塩酸滴定溶液で中和滴定を行い、青色から黄色に変わった点を終点として滴定液の量を読み取る。次式によりアミン価Bを算出する。なお、下記式において、空試験とは、アミン価を測定すべき試料ではなく、脱イオン水を用いて測定する試験を意味する。また、実施例9、10における(A)成分のアミン価は、アミン価を測定すべき試料として、熱可塑性樹脂を表記載の比率で混合した混合物を用いた。
【0128】
【数1】
【0129】
[2−2]重量平均分子量
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定、算出した。用いた装置、条件等は以下の通りである。
・使用機器:HLC8220GPC(株式会社東ソー製)
・使用カラム:TSKgel SuperHZM−M、TSKgel GMHXL−H、TSKgel G2500HXL、TSKgel G5000HXL(株式会社東ソー製)
・カラム温度:40℃
・標準物質:TSKgel 標準ポリスチレンA1000、A2500、A5000、F1、F2、F4、F10(株式会社東ソー製)
・検出器:RI(示差屈折)検出器
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:1ml/min
【0130】
[2−3]ガラス転移温度(Tg)の測定方法
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121−1987にしたがって、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製「EXSTAR6000」)で測定した。具体的には、測定対象となる試料(樹脂溶液等の溶剤を含むものについては、溶剤を揮発させたもの)10mgを、窒素気流下で、−40℃から200℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、DSC曲線を得た。低温側のベースラインの延長線と、遷移部(すなわち曲線部)における最大傾斜を示す接線との交点の温度(いわゆる補外ガラス転移開始温度)を、ガラス転移温度Tgとして読み取った。なお、空の容器を、基準物質として使用した。また、また、実施例9、10における(A)成分のTgは、Tgを測定すべき試料として、熱可塑性樹脂を表記載の比率で混合した混合物を用いた。結果、実施例9の(A)成分のTgは50、実施例10の(A)成分のTgは52であった。
【0131】
[2−4]平均分散粒子径の測定方法:
実施例1〜34及び比較例1、3〜10について、後述の第1工程で調製した顔料分散液前駆組成物(I')を、(B)成分濃度が1質量%となるように酢酸エチルで希釈し、得られた希釈物を、23℃、湿度50%の条件で、Malvern製Zetasizer Nanoを使用した動的光散乱法にて平均粒子径を測定した。なお、得られた測定データを光強度分布よりキュムラント解析(ISO13321)を行い、得られたZ平均粒子径の値を平均分散粒子径とした。
【0132】
[3]マスターバッチの製造
[3−1]実施例1〜36、比較例1、3〜10
(第1工程)
(A)成分及び分散溶媒の混合液に、(B)成分及び場合により(D)を混合し、これを縦型ビーズミル(AIMEX製RMB−08、直径2mmのジルコニアビーズを使用)を使用して2時間分散処理を行い、顔料分散液前駆組成物(I')を調製した。さらに、顔料分散液前駆組成物(I')に(C)成分等の粒子を攪拌混合し、顔料分散液組成物(I)を得た。それぞれの材料は、表に示す量(質量部)で用いた。
【0133】
(第2工程)
得られた顔料分散液組成物(I)に、冷凍粉砕した追加の(A)成分を表に示す量(質量部)で混合し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製、FM10C)で2時間攪拌混合させて混合物を得た後、振動乾燥機(中央化工機株式会社製、VU−35)を用いて60℃・50Torrの乾燥条件にて溶媒を留去させ、樹脂組成物(23℃で固体)を得た。
【0134】
(第3工程)
得られた樹脂組成物を、直径2mmのストランドダイを備えた二軸押出機(東洋精機社製ラボプラストミル、型式:4C−150)に投入し、シリンダ温度180℃、スクリュー回転数60rpmの条件で溶融混練し、押し出してストランド状とし、水冷した。水冷後の組成物をペレタイザーでカットし、除湿型乾燥機を用いて100℃で3時間乾燥処理を行った。これによって、直径約5mm程度の、ペレット状のマスターバッチを得た。
【0135】
[3−2]比較例2
(B)成分を加えなかったことを除いて、上記[3−1]と同様の操作を行い、ペレット状のマスターバッチを得た。
【0136】
[3−3]実施例37、比較例11
上記[3−1]の第1工程を行わず、全ての材料をヘンシェルミキサ−(三井鉱山株式会社製、FM10C)で2時間攪拌混合させて混合物を得た後、上記[3−1]の第2工程及び第3工程と同様の操作を行い、ペレット状のマスターバッチを得た。
【0137】
[4]着色成形体の製造
[4−1]着色成形体1
マスターバッチと、(A)成分とを表記載の量(質量部)でドライブレンドし、射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SE18S)に投入し、シリンダ温度200℃、金型温度30℃、冷却時間15秒の条件で射出成形を行って、1.5mm×50mm×50mmの平板状の着色成形体1を得た。着色成形体1は、色調変動性の評価に用いた。
【0138】
[4−2]着色成形体2
樹脂の流れが2つに分かれ、かつ、引張試験片(JIS K7162の附属書Aに記載の1BA号形の小形試験片:厚み2mm、平行部分の長さ30mm、平行部分幅5mm、両端の幅10mm)の両端2か所にゲートを設けた形状のキャビティを持つ金型を使用し、上記の着色成形体1と同様の成形条件にて成形を行い、引張試験片(平行部分の真ん中付近で射出された樹脂が合流することでウェルドが形成されるようにしたもの。以下、着色成形体2と記載する。)を得た。着色成形体2は、ウェルドライン視認抑制性の評価に用いた。
【0139】
[5]評価
[5−1]作業性:顔料分散の容易性
実施例1〜36及び比較例1、3〜10について、第1工程で顔料分散液前駆組成物(I')を調製する(分散処理する)際の分散状態を観察し、以下の基準で評価を行った。結果を表2〜7に示す。
◎:問題無く分散処理を行うことができる
〇:粘度がやや高いものの、分散処理は問題無く行うことができる
△:粘度が高いものの、分散処理を行うことは可能
×:粘度が高く、顔料が凝集してしまって分散ができない
【0140】
[5−2]作業性:ペレット化の容易性
マスターバッチへのペレット化(二軸押出機による溶融混練)の際、ダイスからのストランドの吐出状態を観察し、以下の基準で評価を行った。結果を表2〜7に示す。
◎:ストランドは安定しており、問題無くペレット化が可能
〇:ダイスからの吐出にやや不安があるものの、問題無くペレット化が可能
△:ダイスからの吐出安定性に欠けるものの、なんとかペレット化は可能
×:吐出が全く安定せず、ペレットにすることができない
【0141】
[5−3]射出成形性
着色成形体1又は着色成形体2を成形する際の、ショット毎の成形状況(主に射出時の充填ピーク圧力及び保圧完了位置)を観察し、以下の基準で評価を行った。結果を表2〜7に示す。
◎:安定して射出成形することができる
〇:充填ピーク圧力又は保圧完了位置にややバラツキがあるものの問題無く射出成形できる
△:充填ピーク圧力、保圧完了位置ともに安定はしないが、なんとか射出成形は可能
×:計量ができず、射出成形をすることができない
【0142】
[5−4]色調変動性
着色成形体1を使用し、紫外・可視・近赤外分光光度計(島津製作所製、SolidSpec3700)により、入射角度40°(波長300nm〜710nm)で光を照射したときの正反射光(着色成形体1の表面を反射する光)と、入射角0°で光(波長300nm〜710nm)を照射したときの透過光(厚み1.5mmの着色成形体1を透過する光)と、を測定し、それぞれ得られたスペクトルから、以下の基準に基づいて意匠性評価を行った。評点3以上であれば、見る角度の違いによって視認される色調変化を一層増大できていると評価できる。結果を表2〜7に示す。
5:反射光と透過光とで極めて大きなスペクトル変化が認められる(光輝性にも優れている)
4:反射光と透過光とで大きなスペクトル変化が認められる(光輝性にも優れている)
3:反射光と透過光とでスペクトル変化が認められる(光輝性にも優れている)
2:反射光と透過光とで若干スペクトル変化が認められるものの、あまり大きな差ではない
1:反射光と透過光とでほとんど変化が認められない
【0143】
[5−5]ウェルドライン視認抑制性
着色成形体2において、平行部分の中央部に出来る樹脂が合流する部分において、合流界面(ウェルドライン)が明瞭に見えるかどうかを目視にて判断した。なお、通常、樹脂の合流する部分では、含有する鱗片状粒子の配向が急激に変化することが予想され、このような場合には、ウェルドラインが明確に見えると考えられる。結果を表2〜7に示す。
5:ウェルドラインは視覚的に全く認識できない。
4:ウェルドラインは視覚的に認識できるものの、ほとんど目立たない。
3:ウェルドラインは視覚的に認識できるが、くっきりとはしていない。
2:ウェルドラインは視覚的に認識できる。
1:樹脂の流れが明確に認識できるほどにウェルドラインがくっきり見える。
【0144】
【表2】
【0145】
【表3】
【0146】
【表4】
【0147】
【表5】
【0148】
【表6】
【0149】
【表7】
【0150】
比較例1に示すように、(C)成分である鱗片状粒子を含まない着色樹脂組成物では、(C)成分が無いためウェルドラインは目立たないものの、色調変動性がほとんど認められない意匠性の乏しい成形体しか得ることができなかった。また、比較例2に示すように、(B)成分である着色顔料を含まない樹脂組成物では、色調変動性は認められたものの、ウェルドラインが目立つ意匠性の乏しい成形体しか得ることができなかった。比較例3及び4に示すように、鱗片状ではない形状の粒子を含む着色樹脂組成物では、色調変動性もウェルドラインの視認抑制性も不十分な意匠性の乏しい成形体しか得ることができなかった。比較例5に示すように、(B)成分である着色顔料と(C)成分である鱗片状粒子との両方を含むがアミノ基が存在しない着色樹脂組成物において、低分子(A2L)成分中で分散した場合、色調変動性がほとんど認められずウェルドラインが目立つ意匠性の非常に乏しい成形体しか得ることができず、比較例6に示すように、分散剤(アミノ基を有さないもの)をさらに加えてもその結果は変わらなかった。また、比較例7に示すように、(B)成分である着色顔料と(C)成分である鱗片状粒子との両方を含むがアミノ基が存在しない着色樹脂組成物において、低分子(A2L)成分中で分散した場合、分散作業は一応可能であったが(B)成分の分散粒径が大きかったため、色調変動性がほとんど認められずウェルドラインが目立つ意匠性の非常に乏しい成形体しか得ることができず、比較例8に示すように、分散剤(アミノ基を有さないもの)をさらに加えてもその結果は変わらなかった。一方で、実施例1〜37に示すように、(B)成分である着色顔料と(C)成分である鱗片状粒子との両方を含み、アミノ基を存在させた着色樹脂組成物では、色調変動性とウェルドラインの視認抑制性の両方に優れる成形体が得られた。
【0151】
また、比較例9に示すように、(B)成分である着色顔料を含むがアミノ基が存在しない着色樹脂組成物において、高分子量の熱可塑性樹脂である高分子(A2H)成分中で分散しようとすると、樹脂組成物の粘度が高く顔料が凝集してしまったため分散工程自体が不能であり、比較例10に示すように、分散剤(アミノ基を有さないもの)をさらに加えてもその結果は変わらなかった。一方で、実施例18及び19に示すように、着色樹脂組成物中にアミノ基を存在させることで、高分子(A2H)成分中で分散させた場合であっても分散が可能であっただけでなく、色調変動性とウェルドラインの視認抑制性の両方に優れる成形体まで得ることができた。
【0152】
さらに、比較例11に示すように、(B)成分である着色顔料と(C)成分である鱗片状粒子との両方を含むがアミノ基が存在しない着色樹脂組成物で分散工程を行わない場合、射出成形自体が不能であり成形体を得ることができなかった。一方で、実施例37に示すように、(B)成分である着色顔料と(C)成分である鱗片状粒子との両方を含み、アミノ基を存在させた着色樹脂組成物では、分散工程を行わない場合であっても、射出成形が可能であっただけでなく、色調変動性とウェルドラインの視認抑制性の両方に優れる成形体まで得ることができた。
【課題】本発明の目的は、光輝性だけでなく、見る角度の違いによって視認される色調変動の程度を一層増大できる着色成形体が得られる着色樹脂組成物の配合処方を提供することにある。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂、(B)着色顔料、及び(C)鱗片状粒子を含み、更に(D)分散剤を含んでよい着色樹脂組成物であって;前記(D)成分を含まない場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み;前記(D)成分を含む場合、前記(A)成分が(A1)アミノ基含有熱可塑性樹脂を含み、及び/又は、前記(D)成分が(D1)塩基性基含有分散剤を含む着色樹脂組成物は、光輝性だけでなく、見る角度の違いによって視認される色調変動の程度を一層増大できる着色成形体を与えることができる。