特許第6887718号(P6887718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゴゴロ インクの特許一覧

特許6887718車両、及び、電動車両の負荷の特定の種類を判定する方法
<>
  • 特許6887718-車両、及び、電動車両の負荷の特定の種類を判定する方法 図000002
  • 特許6887718-車両、及び、電動車両の負荷の特定の種類を判定する方法 図000003
  • 特許6887718-車両、及び、電動車両の負荷の特定の種類を判定する方法 図000004
  • 特許6887718-車両、及び、電動車両の負荷の特定の種類を判定する方法 図000005
  • 特許6887718-車両、及び、電動車両の負荷の特定の種類を判定する方法 図000006
  • 特許6887718-車両、及び、電動車両の負荷の特定の種類を判定する方法 図000007
  • 特許6887718-車両、及び、電動車両の負荷の特定の種類を判定する方法 図000008
  • 特許6887718-車両、及び、電動車両の負荷の特定の種類を判定する方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887718
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】車両、及び、電動車両の負荷の特定の種類を判定する方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20210603BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20210603BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20210603BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20210603BHJP
   B60W 40/12 20120101ALI20210603BHJP
   B60W 50/035 20120101ALI20210603BHJP
【FI】
   B60L3/00 N
   B60L15/20 J
   B60L50/60
   B60W40/02
   B60W40/12
   B60W50/035
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-563057(P2017-563057)
(86)(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公表番号】特表2018-524961(P2018-524961A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】US2016035889
(87)【国際公開番号】WO2016197044
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2018年2月5日
【審判番号】不服2019-16427(P2019-16427/J1)
【審判請求日】2019年12月5日
(31)【優先権主張番号】62/171,923
(32)【優先日】2015年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514022545
【氏名又は名称】ゴゴロ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】リン スンチン
(72)【発明者】
【氏名】リ カイジャン
【合議体】
【審判長】 佐々木 正章
【審判官】 渡邊 豊英
【審判官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−87911(JP,A)
【文献】 特開2003−335230(JP,A)
【文献】 特開2015−77963(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/160014(WO,A1)
【文献】 特表2012−512625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00,B60L 50/60,B60L 15/20,B60W 40/02,B60W 40/12,B60W 50/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の特定の種類の負荷を判定する方法であって、前記特定の種類の負荷は、前記電動車両が、傾斜面を登ること又は平坦面を走行することと関連しており、
ある期間にわたって車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを前記車両の動力伝達系から取得することであり、前記リアルタイムデータは、モータ速度の増加に伴った前記車両のモータの現在のモータトルクを示すデータを含む、取得することと、
取得した前記車両の前記パワートレーン動作に関する前記リアルタイムデータを基準データと比較することに基づいて、前記期間に前記車両が前記特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することとを含み、前記基準データは、前記車両が前記特定の種類の負荷を受けるときの特徴となる、モータ速度の増加に伴ったモータトルクを示すデータを含み、
前記期間に前記車両が前記特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することは、
前記動力伝達系からの前記リアルタイムデータを特定の期間にわたって特定のサンプリングレートでサンプリングすることと、
前記特定の期間中に前記リアルタイムデータのサンプリング毎に、
サンプリングした前記動力伝達系からの前記リアルタイムデータを前記基準データと比較することと、
前記サンプリング時に前記基準データに対して行った前記比較に基づいて、前記サンプリング時に前記車両が現在前記特定の種類の負荷を受けているかどうかを判定することと、
前記サンプリング時に前記車両が現在前記特定の種類の負荷を受けているかどうかの前記判定に基づいて、前記特定の期間の開始時に初期化されたカウンタをインクリメントするかどうかを決定することと、を含み、さらに
前記特定の期間が経過した後に、前記カウンタの値と閾値とを比較すること、をさらに含み、
前記比較に基づいた、前記カウンタの値が前記閾値以上であるかどうかに基づいて、前記特定の期間にわたって前記車両が前記特定の種類の負荷を受けたかどうかを判定することと、
前記特定の期間に前記車両が前記特定の種類の負荷を受けたという判定に少なくとも部分的に応答して、前記車両のモータトルクをモータ速度に応じた特定のトルク量にすることとを含み、
前記車両のモータトルクをモータ速度に応じた特定のトルク量にすることは、ディレーティング曲線を実施することでモータの最大トルク出力を管理して前記車両のバッテリの温度を制御することを備える、方法。
【請求項2】
前記車両が前記特定の期間にわたって前記特定の種類の負荷を受けたかどうかの前記判定に少なくとも部分的に基づいて、前記車両の前記モータの動作特性を制限するかどうかを決定することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記車両が前記特定の期間にわたって前記特定の種類の負荷を受けたかどうかを判定することは、前記サンプリングした前記動力伝達系からの前記リアルタイムデータを前記基準データと前記比較することに基づいて、前記車両が傾斜面を登っていたか平坦面を走行していたかを判定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプリングすることと、前記サンプリングしたリアルタイムデータを比較することと、前記サンプリング時に前記車両が現在前記特定の種類の負荷を受けているかどうかを判定することと、前記カウンタをインクリメントするかどうかを決定することと、前記特定の期間が経過した後に前記カウンタの値と閾値とを比較することと、前記車両が前記特定の種類の負荷を受けたかどうかの前記判定に少なくとも部分的に基づいて、前記車両の前記モータの動作特性を制限するかどうかを決定することとを、前記特定の期間に等しい長さの複数の期間にわたって繰り返すことをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記車両が前記特定の期間にわたって前記特定の種類の負荷を受けたと判定された場合、前記特定の期間にわたって前記車両が前記特定の種類の負荷を受けたという前記判定に少なくとも部分的に応答して、前記車両を動作させることをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記車両を動作させることは、前記車両の前記モータの動作特性を制限することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記車両の前記モータの動作特性を制限することは、前記車両の前記モータトルクをモータ速度に応じた特定のトルク量にするように前記車両の前記モータの動作特性を制限することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
モータ速度に応じた前記特定のトルク量を、所望のモータトルク対モータ速度を示す前記ディレーティング曲線によって規定する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記車両を動作させることは、前記車両にウインドデフレクタを上昇させることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記車両を動作させることは、前記モータの最大トルク出力を管理して、前記車両の前記モータに動力を供給する前記車両の前記バッテリの温度を制御することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記モータの最大トルク出力を管理して前記モータに動力を供給する前記車両の前記バッテリの温度を制御することは、前記バッテリの温度が特定のバッテリ温度閾値に達することに応答して行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記車両を動作させることは、前記車両の前記モータに供給される電圧を制限することと、前記車両の加速度を制限することと、前記車両の前記モータに供給される電流を制限することと、前記車両の前記モータに電力を供給する前記バッテリの温度を調整することと、のうち1つまたは複数を含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記基準データは、前記車両が前記特定の種類の負荷を受けるときの特徴となる、基準モータトルク対基準モータ速度を示すデータ曲線の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記車両が前記期間にわたって特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することは、
取得した前記車両の前記パワートレーン動作に関する前記リアルタイムデータを基準データと比較することに基づいて、前記車両が平坦面を走行しているかまたは傾斜を走行しているかを判定することと、
前記車両が平坦面を走行しているか傾斜を走行しているかを前記判定することに基づいて、さらに、取得した前記車両の前記パワートレーン動作に関する前記リアルタイムデータを基準データと前記比較することに基づいて、前記車両の前記パワートレーンの異常の有無を判定することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記車両の前記パワートレーンに異常があると判定された場合に、前記車両の前記パワートレーンに異常があるとの前記判定に少なくとも部分的に応答して、前記車両のモータトルクをモータ速度に応じた特定のトルク量にするように前記車両を動作させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
取得した前記車両の前記パワートレーン動作に関する前記リアルタイムデータには、1つまたは複数のセンサから得られたデータが含まれ、
前記1つまたは複数のセンサは、車両加速度、車両の場所、車両高度、車両傾斜データ、車両温度、車両バッテリ温度、車両システム部品温度、ジャイロスコープデータ、車両テレマティックデータ、風速、風向、加速度計データ、車両重量、タイヤ空気圧、および車両高度の変化、のうちの1つまたは複数に関連する情報を収集するために動作可能なセンサを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記車両が前記期間にわたって特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することに基づいて、タイヤ空気圧を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記車両が前記期間にわたって特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することに基づいて、機械的問題によって生じる車両効率の低下を検出することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
車両であって、
前記車両の少なくとも1つの車輪を駆動するように結合されたモータと、
電力を蓄積する主電力蓄積デバイスと、
前記主電力蓄積デバイスと前記モータとの間で選択的に電力を伝達するように結合され、動作可能とされた電源と、
前記電源を制御するように通信可能に結合されたコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
ある期間にわたって前記車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを前記車両の動力伝達系から取得し、
取得した前記車両の前記パワートレーン動作に関する前記リアルタイムデータを基準データと比較することに基づいて、前記期間に前記車両が特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定し、
前記リアルタイムデータは、モータ速度の増加に伴った前記車両のモータの現在のモータトルクを示すデータを含み、
前記基準データは、前記車両が前記特定の種類の負荷を受けるときの特徴となる、モータ速度の増加に伴ったモータトルクを示すデータを含み、
前記特定の種類の負荷は、前記車両が、特定の数の人を運んでいる間に、傾斜面を登ること又は平坦面を走行することと関連しており、
前記期間に前記車両が前記特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することは、
前記動力伝達系からの前記リアルタイムデータを特定の期間にわたって特定のサンプリングレートでサンプリングすることと、
前記特定の期間中に前記リアルタイムデータのサンプリング毎に、
サンプリングした前記動力伝達系からの前記リアルタイムデータを前記基準データと比較することと、
前記サンプリング時に前記基準データに対して行った前記比較に基づいて、前記サンプリング時に前記車両が現在前記特定の種類の負荷を受けているかどうかを判定することと、
前記サンプリング時に前記車両が現在前記特定の種類の負荷を受けているかどうかの前記判定に基づいて、前記特定の期間の開始時に初期化されたカウンタをインクリメントするかどうかを決定することと、を含み、さらに
前記特定の期間が経過した後に、前記カウンタの値と閾値とを比較すること、をさらに含み、
前記比較に基づいた、前記カウンタの値が前記閾値以上であるかどうかに基づいて、前記特定の期間にわたって前記車両が前記特定の種類の負荷を受けたかどうかを判定することと、
前記特定の期間に前記車両が前記特定の種類の負荷を受けたという判定に少なくとも部分的に応答して、前記車両のモータトルクをモータ速度に応じた特定のトルク量にすることとを含み、
前記車両のモータトルクをモータ速度に応じた特定のトルク量にすることは、ディレーティング曲線を実施することでモータの最大トルク出力を管理して前記主電力蓄積デバイスの温度を制御することを備える、車両。
【請求項20】
コンピュータが実行可能な命令を記憶した非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータが実行可能な命令は、実行時に、少なくとも1つのプロセッサに
ある期間にわたって車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを前記車両の動力伝達系から取得することであり、前記リアルタイムデータは、モータ速度の増加に伴った前記車両のモータの現在のモータトルクを示すデータを含む、取得することと、
取得した前記車両の前記パワートレーン動作に関する前記リアルタイムデータを基準データと比較することに基づいて、前記期間に前記車両が特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することと、を実行させ、
前記基準データは、前記車両が特定の種類の負荷を受けるときの特徴となる、モータ速度の増加に伴ったモータトルクを示すデータを含み、
前記特定の種類の負荷は、前記車両が、傾斜面を登ること又は平坦面を走行することと関連しており、
前記期間に前記車両が前記特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することは、
前記動力伝達系からの前記リアルタイムデータを特定の期間にわたって特定のサンプリングレートでサンプリングすることと、
前記特定の期間中に前記リアルタイムデータのサンプリング毎に、
サンプリングした前記動力伝達系からの前記リアルタイムデータを前記基準データと比較することと、
前記サンプリング時に前記基準データに対して行った前記比較に基づいて、前記サンプリング時に前記車両が現在前記特定の種類の負荷を受けているかどうかを判定することと、
前記サンプリング時に前記車両が現在前記特定の種類の負荷を受けているかどうかの前記判定に基づいて、前記特定の期間の開始時に初期化されたカウンタをインクリメントするかどうかを決定することと、を含み、さらに
前記特定の期間が経過した後に、前記カウンタの値と閾値とを比較すること、をさらに含み、
前記比較に基づいた、前記カウンタの値が前記閾値以上であるかどうかに基づいて、前記特定の期間にわたって前記車両が前記特定の種類の負荷を受けたかどうかを判定することと、
前記特定の期間に前記車両が前記特定の種類の負荷を受けたという判定に少なくとも部分的に応答して、前記車両のモータトルクをモータ速度に応じた特定のトルク量にすることとを含み、
前記車両のモータトルクをモータ速度に応じた特定のトルク量にすることは、ディレーティング曲線を実施することでモータの最大トルク出力を管理して前記車両のバッテリの温度を制御することを備える、コンピュータ可読媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般に、原動機またはトラクションモータとして電動モータを使用する車両に関し、詳細には、このような車両が受ける負荷の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両および全電動の車両は、ますます一般的になってきている。このような車両によって、従来の内燃機関車両に比べて数多くの利点を達成することができる。例えば、ハイブリッド車両または電動車両は、高い燃費を達成できると共に、排気管汚染を抑制し、または無くすことさえ可能である。特に全電動の車両は、排気管汚染が皆無であるだけでなく、全体的な汚染の低減にも関連する可能性がある。例えば電力を、再生可能な供給源(例えば太陽光、水力)から生成することができる。また例えば、空気汚染を全く発生させない発電所(例えば原子力発電所)で電力を生成することもできる。また例えば、比較的「クリーンな燃焼」の燃料(例えば天然ガス)を燃焼させる発電所で電力を生成することもでき、このような発電所は内燃機関よりも高効率で、かつ/または汚染管理システムもしくは汚染除去システム(例えば工業用空気集塵器)を採用している。これらのシステムは、個々の車両での使用には過度に大きく、コストがかかり、高価である。
【0003】
燃焼機関によって駆動するスクータおよび/またはオートバイなどの個人輸送車両は、多くの場所、例えばアジアの多くの大都市で広く普及している。このようなスクータおよび/またはオートバイは、特に自動車、車、またはトラックと比べて、比較的低価格であることが多い。燃焼機関型スクータおよび/またはオートバイが非常に多く見られる都市は、人口密度が非常に高く、高レベルの大気汚染に見舞われる傾向がある。多くの燃焼機関型スクータおよび/またはオートバイは、新車のときには、個人輸送の汚染源としては比較的低いレベルの装備となっている。例えばこのようなスクータおよび/またはオートバイは、大型車両よりも高い燃費性能を有することがある。スクータおよび/またはオートバイによっては、基本的な汚染管理装置(例えば触媒コンバータ)を備えることがある。残念なことに、スクータおよび/もしくはオートバイが使用され、保守が行われないと、かつ/または、スクータおよびもしくはオートバイが例えば意図的もしくは非意図的に触媒コンバータを取り外すことによって改造が行われると、工場で設定された排出レベルをすぐに超えてしまう。スクータおよび/またはオートバイの所有者または運転者は、自分の車両の保守を行う資金も動機も持ち合わせていないことが多い。
【0004】
空気汚染は人の健康にマイナスの影響を及ぼし、様々な病気の発生または悪化に関わることが知られている(例えば多くの報告書では、空気汚染が、肺気腫、喘息、肺炎、および嚢胞性繊維症に加え、様々な心循環器系疾患に関連付けられている)。このような病気によって多数の生命が失われ、その他の無数の人々の生活の質が著しく低下してしまう。
【発明の概要】
【0005】
電動車両の負荷特性を判定する方法は、以下のように要約することができる。この方法は、ある期間にわたって車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを取得することと、取得した車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを基準データと比較することに基づいて、その期間に車両が特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することとを含み、基準データは、車両が特定の種類の負荷を受けるときの特徴となるパワートレーン動作に関するデータを含む。車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを取得することは、その期間にわたって車両の動力伝達系からリアルタイムデータを取得することをさらに含み、リアルタイムデータは、モータ速度の増加に伴った車両のモータの現在のモータトルクを示すデータを含む。基準データは、車両が特定の種類の負荷を受けるときの特徴となる、モータ速度の増加に伴ったモータトルクを示すデータを含んでもよい。
【0006】
車両がその期間にわたって特定の種類の負荷を受ける可能性があるかどうかを判定することは、動力伝達系からのリアルタイムデータを、特定の期間にわたって特定のサンプリングレートでサンプリングすることと、特定の期間中のリアルタイムデータのサンプリング毎に、サンプリングした動力伝達からのリアルタイムデータを基準データと比較することと、サンプリング時に基準データに対して行った比較に基づいて、サンプリング時に車両が現在特定の種類の負荷を受けているかどうかを判定することと、サンプリング時に車両が現在特定の種類の負荷を受けているかどうかの判定に基づいて、特定の期間の開始時に初期化されたカウンタをインクリメントするかどうかを決定することと、その特定の期間が経過した後に、カウンタの値と閾値とを比較することと、その比較に基づいて、カウンタの値が閾値以上であるかどうかに応じて、車両が特定の期間にわたって特定の種類の負荷を受けたかどうかを判定することと、を含んでもよい。
【0007】
この方法は、車両が特定の期間にわたって特定の種類の負荷を受けたかどうかの判定に少なくとも部分的に基づいて、車両のモータの動作特性を制限するかどうかを決定することをさらに含んでもよい。車両が特定の期間にわたって特定の種類の負荷を受けたかどうかを判定することは、サンプリングした動力伝達からのリアルタイムデータを基準データと比較することに基づいて、車両が傾斜面を登っていたか平坦面を走行していたかを判定することを含んでもよい。
【0008】
この方法は、サンプリングすることと、サンプリングしたリアルタイムデータを比較することと、サンプリング時に車両が現在特定の種類の負荷を受けているかどうかを判定することと、カウンタをインクリメントするかどうかを決定することと、特定の期間が経過した後にカウンタの値と閾値とを比較することと、車両が特定の種類の負荷を受けたかどうかの判定に少なくとも部分的に基づいて、車両のモータの動作特性を制限するかどうかを決定することとを、その特定の期間に等しい長さの複数の期間にわたって繰り返すことをさらに含んでもよい。特定のサンプリングレートは毎秒1回であってよい。特定の期間は1分であってよい。
【0009】
この方法は、車両が特定の期間にわたって特定の種類の負荷を受けたと判定された場合、特定の期間にわたって車両が特定の種類の負荷を受けたという判定に少なくとも部分的に応答して、車両を動作させることをさらに含んでもよい。車両を動作させることは、車両のモータトルクをモータ速度に応じた特定のトルク量にするように車両を動作させることを含んでもよい。車両を動作させることは、車両のモータの動作特性を制限することを含んでもよい。車両のモータの動作特性を制限することは、車両のモータの車両のモータトルクをモータ速度に応じた特定のトルク量にするように動作特性を制限することを含んでもよい。モータ速度に応じた特定のトルク量は、所望のモータトルク対モータ速度を示すディレーティング曲線によって規定することができる。車両を動作させることは、車両にウインドデフレクタを上昇させることを含んでもよい。車両を動作させることは、モータの最大トルク出力を管理することを含んでもよい。車両を動作させることは、モータの最大トルク出力を管理して、車両のモータに動力を供給する車両のバッテリの温度を制御することを含んでもよい。モータの最大トルク出力を管理してモータに動力を供給する車両のバッテリの温度を制御することは、バッテリ温度が特定のバッテリ温度閾値に達することに応答して行われてもよい。特定のバッテリ温度閾値は、約57℃であってもよい。車両を動作させることは、車両の電動モータに供給される電圧を制限することと、車両の加速度を制限することと、車両の電動モータに供給される電流を制限することと、車両のモータに電力を供給するバッテリの温度を調整することと、のうち1つまたは複数を含んでもよい。
【0010】
特定の種類の負荷は、以下のうちの1つ、または以下のうちの1つもしくは複数の組み合わせと関連してもよい。すなわち、車両の外部の状態、傾斜を登ること、特定の勾配の傾斜を登ること、平坦面を走行すること、車両の重量、追加重量を運ぶこと、特定の量の追加重量を運ぶこと、特定の数の人々を運ぶこと、転がり抵抗、特定の種類の転がり抵抗、タイヤの種類、1つまたは複数のタイヤの空気圧、車両が走行している地面の性質、車両と地面との間の摩擦、空気抵抗、車両の大きさおよび形状、車両の流線度、風速、横風速度、横風の方向、逆風、逆風の速度、車両の動力伝達系の問題、車両のパワートレーンに関する問題、車両の動力伝達系の異常、車両のパワートレーンの異常、車両の動力伝達系における抵抗の大きさ、車両のパワートレーンにおける抵抗の大きさ、車両の動力伝達系における可動部品間の摩擦量、車両のパワートレーンにおける可動部品間の摩擦量、車両バッテリ温度、ホイールアライメント、およびホイールアライメントの異常である。基準データは、車両が特定の種類の負荷を受けるときの特徴となる、基準モータトルク対基準モータ速度を示すデータ曲線の形態であってもよい。車両がある期間にわたって特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することは、取得した車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを基準データと比較することに基づいて、車両が平坦面を走行しているかまたは傾斜を走行しているかを判定することと、車両が平坦面を走行しているか傾斜を走行しているかを判定することに基づいて、さらに、取得した車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを基準データと比較することに基づいて、車両のパワートレーンまたは動力伝達系の異常の有無を判定することとを含んでもよい。この方法は、車両のパワートレーンまたは動力伝達系に異常があると判定された場合には、車両のパワートレーンまたは動力伝達系に異常があるとの判定に少なくとも部分的に応答して、車両のモータトルクをモータ速度に応じた特定のトルク量にするように車両を動作させることをさらに含んでもよい。取得した車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータには、1つまたは複数のセンサから得られたデータが含まれてもよく、この1つまたは複数のセンサは、車両加速度、車両の場所、車両高度、車両傾斜データ、車両温度、車両バッテリ温度、車両システム部品温度、ジャイロスコープデータ、車両テレマティックデータ、風速、風向、加速度計データ、車両重量、タイヤ空気圧、および車両高度の変化、のうちの1つまたは複数に関連する情報を収集するために動作可能なセンサを含む。この方法は、車両がその期間にわたって特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することに基づいて、タイヤ空気圧を決定することをさらに含んでもよい。この方法は、車両がその期間にわたって特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することに基づいて、機械的問題によって生じる車両効率の低下を検出することをさらに含んでもよい。
【0011】
車両は、以下のように要約することができる。車両は、車両の少なくとも1つの車輪を駆動するように結合されたモータと、電力を蓄積する主電力蓄積デバイスと、主電力蓄積デバイスとモータとの間で選択的に電力を伝達するように結合され、動作可能とされた電源と、電源を制御するように通信可能に結合されたコントローラと、を備え、コントローラは、ある期間にわたって車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを取得し、取得した車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを基準データと比較することに基づいて、その期間に車両が特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定し、基準データは、車両が特定の種類の負荷を受けるときの特徴となるパワートレーン動作に関するデータを含む。
【0012】
非一時的なコンピュータ可読媒体はコンピュータが実行可能な命令を記憶することができ、このコンピュータが実行可能な命令は、実行時に少なくとも1つのプロセッサに、ある期間にわたって車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを取得することと、取得した車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを基準データと比較することに基づいて、その期間に車両が特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定することとを実行させ、基準データは、車両が特定の種類の負荷を受けるときの特徴となるパワートレーン動作に関するデータを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面において、同一の参照番号は同様の要素または動作を指す。図面における各要素の大きさおよび相対的位置は、必ずしも正確な縮尺比で描かれたものではない。例えば、様々な要素および角度の形状は、正確な縮尺で描かれたものではなく、これらの要素の中には、図面の可読性を向上させるために任意に拡大されて配置されたものもある。また、図示された要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状についての情報を伝えるためのものではなく、図面における認識を容易にするために選択されているに過ぎない。
【0014】
図1】1つの非限定的な例示の実施形態による、本明細書に記載の様々な構成要素または構造を含むことができる電動スクータまたは電動オートバイの等角部分分解図である。
【0015】
図2】1つの非限定的な例示の実施形態による、図1のスクータまたはオートバイの構成要素または構造の一部のブロック図である。
【0016】
図3】別の非限定的な例示の実施形態による、図1のスクータまたはオートバイの構成要素または構造の一部のブロック図である。
【0017】
図4】非限定的な例示の実施形態による、登坂を含む様々な種類の車両負荷の特徴となる基準モータトルク対モータ速度値の例、およびディレーティング曲線の例を示すグラフである。
【0018】
図5】1つの非限定的な例示の実施形態による、動力伝達系からのリアルタイムデータの、特定のサンプリングレート例でのサンプリング例を含む、ある期間にわたって車両が特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定するプロセスのタイミング図の例である。
【0019】
図6】それぞれ100回および500回の充電サイクルが繰り返されたバッテリの開始温度の例と、そのようなバッテリを搭載した車両の、バッテリ温度が57℃に達したときの走行距離とを示す表である。
【0020】
図7】1つの非限定的な例示の実施形態による、車両負荷検出の方法を示すフローチャートである。
【0021】
図8】1つの非限定的な例示の実施形態による、図7の車両負荷検出方法において有用な、特定の期間にわたって車両が特定の種類の負荷を受けたかどうかを判定する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明では、開示される様々な実施形態の十分な理解を提供するために、特定の具体的な内容が示される。しかしながら、これらの具体的な内容の1つまたは複数を伴うことなく、または他の方法、構成要素、材料などによっても実施形態を実施できることは、当業者によって認識されるであろう。別の点においては、実施形態の説明を不必要に不明瞭にするのを避けるために、自動販売機、バッテリ、スーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタ、限定するものではないが、変圧器、整流器、DC/DC電力コンバータ、およびスイッチモード電力コンバータを備える電力コンバータ、コントローラ、ならびに通信システムおよび構造に関連するよく知られた構造、さらにネットワークについては詳細な図示または説明を行っていない。
【0023】
文脈による別段の規定がない限り、明細書およびそれに付随する特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という単語、ならびに「含み(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変形は、「含むが、それに限定されない」のような制限のない包括的な意味で解釈されるべきである。
【0024】
本明細書を通じて、「一実施形態」または「実施形態」という表記は、その実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所に出現する「一実施形態で」または「実施形態で」という表現は、必ずしもすべて同じ実施形態に言及しているわけではない。
【0025】
第1、第2、および第3などの序数の使用は、必ずしも順序付けの意図を示唆するものではなく、むしろ複数の動作または構造の事例を区別し得るものに過ぎない。
【0026】
ポータブル電力蓄積デバイスまたは電気エネルギー蓄積デバイスという表記は、限定するものではないが、バッテリ、スーパーキャパシタ、またはウルトラキャパシタを含む、電力の蓄積および蓄積された電力の放出が可能な任意のデバイスを意味する。バッテリという表記は、1つまたは複数の化学蓄電セルを意味し、例えば、限定するものではないが、ニッケルカドミウム合金またはリチウムイオンの電池セルを含む、充電式電池セルまたは二次電池セルを意味する。
【0027】
本明細書において提供される本開示の見出しおよび要約書は便宜上のものに過ぎず、実施形態の範囲や意味の解釈を与えるものではない。
【0028】
図1は、1つの例示の実施形態による、電動スクータまたは電動オートバイ100の形態での電動の人員輸送車両を示す。
【0029】
上記のように、燃焼機関型のスクータおよびオートバイは、例えばアジア、ヨーロッパ、および中東などの多くの大都市で一般的なものである。車両の主動力源または一次動力源として電力蓄積デバイス(例えば二次電池)を使用することに関係する性能または効率の問題に対処できれば、内燃機関型のスクータおよびオートバイの代わりに全電動のスクータまたはオートバイ100の使用を促進することができ、それによって空気汚染を緩和し、騒音を低減することができる。
【0030】
電動スクータまたは電動オートバイ100は、フレーム102と、車輪104aおよび104b(まとめて104)と、ハンドルバー106とを備え、ハンドルバー106は、スロットル108、ブレーキレバー110、および方向指示器スイッチ112等のユーザ制御手段を備えている。これらは全て従来設計のものであってよい。電動スクータまたは電動オートバイ100は、さらに、車輪104bの少なくとも1つを駆動するように結合されたトラクション電動モータ116を含む動力システムと、電力を蓄積して少なくともトラクション電動モータ116に電力を供給する、少なくとも1つの主電力蓄積デバイス118と、少なくとも主電力蓄積デバイス118とトラクション電動モータ116との間の配電を制御する制御回路120とを備えてもよい。
【0031】
トラクション電動モータ116は様々な形態を取ることができ、通常は、予想される負荷を所望の速度および加速度で駆動するのに十分な動力(ワットまたは馬力)およびトルクを発生させることが可能な、永久磁石誘導モータである。トラクション電動モータ116は、駆動モードでの動作に加えて回生制動モードでも動作可能な任意の従来の電動モータであってもよい。駆動モードにおいては、トラクション電動モータは電力を消費して車輪を駆動する。回生制動モードにおいては、トラクション電動モータは発電機として動作し、車輪の回転に応答して電流を生成し、車両を減速する制動効果を生み出す。
【0032】
主電気エネルギー蓄積デバイス118は様々な形態をとることができ、例えばバッテリ(例えば電池セルのアレイ)、またはスーパーキャパシタもしくはウルトラキャパシタ(例えばウルトラキャパシタセルのアレイ)の形態をとることができる。例えば、電気エネルギー蓄積デバイス118は、充電式バッテリ(すなわち、二次電池または二次バッテリ)の形態を取ることができる。電気エネルギー蓄積デバイス118は、例えば、全電動のスクータまたはオートバイ100のなどの個人輸送車両に物理的に適合し、それらに電気的に動力を与えるような大きさであってよく、容易に置換または交換ができるように携帯可能であってもよい。輸送の用途により課せられる可能性のある需要を考慮すると、主電気エネルギー蓄積デバイス118は、1つまたは複数の化学電池セルの形態を取るものと考えられる。
【0033】
電気エネルギー蓄積デバイス118は、電気エネルギー蓄積デバイス118の外部からアクセス可能ないくつかの電気端子122aおよび122b(2つが図示され、まとめて122)を備えてもよい。電気端子122によって、電気エネルギー蓄積デバイス118から電荷を導出できるだけでなく、電気エネルギー蓄積デバイス118を充電または再充電するために電気エネルギー蓄積デバイス118に電荷を導入できる。図1には柱体として図示されているが、電気端子122は、バッテリハウジングのスロット内に配置される電気端子の形態を含め、電気エネルギー蓄積デバイス118の外部からアクセス可能な他の任意の形態を取ることもできる。
【0034】
以下により詳しく例示および説明されるように、制御回路120は、特に電気エネルギー蓄積デバイス118とトラクション電動モータ116との間における電力の伝達を変更、調整、および制御するための様々な構成要素を含む。
【0035】
図2は、1つの例示の実施形態による、電動スクータまたは電動オートバイ100の部分を示す。特に、図2に示す実施形態では、電気エネルギー蓄積デバイス118を使用して、トラクション電動モータ116によって生成された、様々な構成要素(例えば、電気エネルギー蓄積デバイス118および/または回路)の温度を調整または制御するために使用される電力を、多数の温度調節デバイス(まとめて200)を介して供給する。
【0036】
図示されているように、トラクション電動モータ116は、電動スクータまたは電動オートバイ100の少なくとも1つの車輪104bを駆動するために、直接的または間接的のいずれかで結合されるシャフト202を備えている。図示しないが、トランスミッション(例えば、チェーン、ギヤ、ユニバーサルジョイント)が利用されてもよい。
【0037】
制御回路120は、多種多様な任意の形態をとることができ、通常は、コントローラ204、1つまたは複数の電力コンバータ206a〜206e(5つが図示される)、スイッチSW1〜SW3(3つが図示される)、および/またはセンサSTB、SVB、SIB、STC、SVC、SIC、STM、SVM、SIM、およびSRMを含む。
【0038】
図2に示すように、制御回路120は、駆動モードまたは構成において電気エネルギー蓄積デバイス118を結合して、トラクション電動モータ116によって生成された電力を供給する、第1のDC/DC電力コンバータ206aを含んでもよい。第1のDC/DC電力コンバータ206aは、電気エネルギー蓄積デバイス118からの電力の電圧を、トラクション電動モータ116を駆動するのに十分なレベルまで昇圧させることができる。第1のDC/DC電力コンバータ206aは、様々な形態を取ることができ、例えば、非安定化または安定化のスイッチモード電力コンバータの形態を取ることができ、絶縁されていてもされていなくてもよい。例えば第1のDC/DC電力コンバータ206aは、安定化昇圧スイッチモード電力コンバータ、または昇降圧スイッチモード電力コンバータの形態を取ってもよい。
【0039】
制御回路120は、駆動モードまたは構成において電気エネルギー蓄積デバイス118を結合して、トラクション電動モータ116によって生成された電力を第1のDC/DCコンバータ206aを介して供給する、一般にインバータと呼ばれるDC/AC電力コンバータ206bを含んでもよい。DC/AC電力コンバータ206bは、第1のDC/DCコンバータ206aからの電力を、トラクション電動モータ116を駆動するのに適したAC波形に反転させることができる。AC波形は、単相または多相、例えば2相または3相のAC電力であってもよい。DC/AC電力コンバータ206bは、様々な形態を取ることができ、例えば、非安定化または安定化のスイッチモード電力コンバータの形態を取ることができ、絶縁されていてもされていなくてもよい。例えばDC/AC電力コンバータ206bは、安定化インバータの形態を取ってもよい。
【0040】
第1のDC/DC電力コンバータ206aおよびDC/AC電力コンバータ206bは、コントローラ204を介して供給される制御信号C1およびC2を介してそれぞれ制御される。例えば、コントローラ204または何らかの中間ゲート駆動回路は、パルス幅変調されたゲート駆動信号を供給して、第1のDC/DC電力コンバータ206aおよび/またはDC/AC電力コンバータ206bのスイッチの動作を制御することができる(例えば、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistors:MOSFET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Bipolar Insulated Gate Transistors:IGBT))。
【0041】
図2にさらに示されるように、制御回路120は、一般に整流器と呼ばれるAC/DC電力コンバータ206cを含んでもよく、このAC/DC電力コンバータ206cは、制動モードもしくは回生制動モードまたは構成において、トラクション電動モータ116を結合して、トラクション電動モータ116によって生成される電力を電気エネルギー蓄積デバイス118に供給する。AC/DC電力コンバータ206cは、トラクション電動モータ116により生成されるAC波形を、電気エネルギー蓄積デバイス118または任意で制御回路120などの他の構成要素への供給に適したDCの形に整流することができる。AC/DC電力コンバータ206cは様々な形態を取ることができ、例えば、フルブリッジ受動ダイオード整流器、またはフルブリッジ能動トランジスタ整流器の形態を取ることができる。
【0042】
また、制御回路120は、トラクション電動モータ116と電気エネルギー蓄積デバイス118とを、AC/DC電力コンバータ206cを介して電気的に結合する第2のDC/DC電力コンバータ206dを含んでもよい。第2のDC/DC電力コンバータ206dは、トラクション電動モータ116によって生成された電力の電圧を、電気エネルギー蓄積デバイス118に適したレベルに降圧することができる。第2のDC/DC電力コンバータ206dは、様々な形態を取ることができ、例えば、非安定化または安定化のスイッチモード電力コンバータの形態を取ることができ、絶縁されていてもされていなくてもよい。例えば第2のDC/DC電力コンバータ206dは、安定化降圧スイッチモード電力コンバータ、同期降圧スイッチモード電力コンバータ、または昇降圧スイッチモード電力コンバータの形態を取ってもよい。
【0043】
AC/DC電力コンバータ206cおよび第2のDC/DC電力コンバータ206dは、コントローラ204を介して供給される制御信号C3およびC4を介してそれぞれ制御される。例えば、コントローラ204または何らかの中間ゲート駆動コントローラは、パルス幅変調されたゲート駆動信号を供給して、AC/DC電力コンバータ206cおよび/または第2のDC/DC電力コンバータ206dのスイッチ(例えばMOSFET、IGBT)の動作を制御することができる。
【0044】
図2にさらに示されるように、制御回路120は、電気エネルギー蓄積デバイス118と、様々な他の構成要素、例えば制御回路120とを電気的に結合する第3のDC/DC電力コンバータ206eを含んでもよい。第3のDC/DC電力コンバータ206eは、電気エネルギー蓄積デバイス118によって供給される電力の電圧を、1つまたは複数の他の構成要素に適したレベルに降圧することができる。第3のDC/DC電力コンバータ206eは様々な形態を取ることができ、例えば、非安定化または安定化のスイッチモード電力コンバータの形態を取ることができ、絶縁されていてもされていなくてもよい。例えば第3のDC/DC電力コンバータ206eは、安定化降圧スイッチモード電力コンバータ、同期降圧スイッチモード電力コンバータ、または昇降圧スイッチモード電力コンバータの形態を取ってもよい。
【0045】
また、図2にも示されているように、特定の構成要素の温度またはその近傍の温度を制御または調節するために、温度調節デバイス200を配置してもよい。
【0046】
温度調節デバイス200は、能動的に温度を管理することによって、または取り扱うことによって利点が得られる1つまたは複数の他の構成要素に近接して、隣接して、または接触して配置してもよい。例えば、第1の数の温度調節デバイス200aおよび200b(2つ図示)は、トラクション電動モータ116に電力を供給する主電気エネルギー蓄積デバイス118に近接して、隣接して、または接触して配置してもよい。第2の数の温度調節デバイス200cは、例えば1つまたは複数の電力コンバータ206a〜206eなど、制御回路の1つまたは複数の構成要素または要素に近接して、隣接して、または接触して配置してもよい。第3の数の温度調節デバイス200dは、コントローラ204の1つまたは複数の構成要素に近接して、隣接して、または接触して配置してもよい。温度調節デバイス200cは、第1のDC/DC電力コンバータ206aおよびDC/AC電力コンバータ206bに近接して図示されているが、これに加えて、またはこれに代えて、AC/DC電力コンバータ206cまたは第2のDC/DC電力コンバータ206dに近接して、隣接して、または接触して配置してもよい。これに加えて、またはこれに代えて、1つまたは複数の温度調節デバイス200を第3のDC/DC電力コンバータ206eに近接して配置してもよい。温度調節デバイス200は、回生制動動作中に電力を生成するトラクション電動モータ116によって生成された電力から電力供給を受けてもよい。コントローラ204からの制御信号CS1に応答して、1つまたは複数のスイッチS1(1つのみ図示)を操作して、電力を電気エネルギー蓄積デバイス118から温度調節デバイスに選択的に結合することができる。
【0047】
温度調節デバイス200は、様々な形態を取ることができる。例えば、1つまたは複数の温度調節デバイス200は、ペルチェ効果素子としても知られているペルチェ素子の形態を取ることができる。
【0048】
このような装置は、ペルチェ効果を利用して2つの異なる種類の材料の接合部の間に熱流束を生成する。ペルチェ素子は固体能動ヒートポンプであり、直流電流に応答して、素子の一方の側から他方の側へ温度勾配に対抗して熱を伝達する。熱伝達の方向は、印加されるDC電圧の極性によって制御される。したがって、このような素子を、ペルチェクーラ、ペルチェヒータ、または熱電ヒートポンプと呼ぶこともある。1つまたは複数の温度調節デバイス200は、例えば、抵抗ヒータの形態を取ることができる。
【0049】
1つまたは複数の温度調節デバイス200は、1つまたは複数の熱交換デバイス208a〜208d(まとめて208)を含んでもよく、またはこれらと熱伝導的に結合されてもよい。熱交換デバイス208は、ヒートシンク(すなわち、固体材料から空気などの流体に熱を伝達するデバイス)、ヒートスプレッダ(すなわち、熱伝導率が比較的高いプレート)、および/またはヒートパイプ(すなわち、材料の相転移を使用する熱伝達デバイス)を、単独で、または任意の組み合わせで含んでもよい。熱交換デバイス208は、典型的には、温度調節デバイス200と比較して、放熱面積が比較的大きい。例えば、熱交換デバイス208は、所与の体積で表面積を最大にするために複数のフィン、例えばピンフィンを含んでもよい。熱交換デバイス208の放熱面は、冷却されている特定の構成要素から比較的離れて配置してもよい。
【0050】
コントローラ204は、1つまたは複数の集積回路、集積回路コンポーネント、アナログ回路、またはアナログ回路コンポーネントを含み得る様々な形態を取ることができる。図示されているように、コントローラ204は、マイクロコントローラ220、ならびに読出し専用メモリ(Read Only Memory:ROM)222および/またはランダム・アクセス・メモリ(Random Access Memory:RAM)224などの非一時的なコンピュータ可読メモリまたはプロセッサ可読メモリを含み、さらに任意で、1つまたは複数のゲート駆動回路226を含んでもよい。コントローラ204は、車両システムおよび他のセンサからの入力を受信し、ファームウェアコードまたは他のソフトウェアを実行し、信号を生成して、本明細書で説明する車両負荷検出および応答に関する動作を実行するように動作可能である。例えばコントローラ204は、請求項1〜27に記載の操作および動作を実行することができる。
【0051】
マイクロコントローラ220は、動力システムの動作を制御するロジックを実行し、様々な形態を取ることができる。例えばマイクロコントローラ220は、マイクロプロセッサ、プログラムされたロジックコントローラ(Programmed Logic Controller:PLC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGS)などのプログラマブル・ゲート・アレイ(Programmable Gate Array:PGA)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、または他のそのようなマイクロコントローラデバイスの形態を取ることができる。ROM222は、制御ロジックを実施するためのプロセッサ実行可能な命令および/またはデータを記憶することができる、様々な任意の形態をとることができる。RAM224は、プロセッサ実行可能な命令またはデータを一時的に保持することができる、様々な任意の形態をとることができる。マイクロコントローラ220、ROM222、RAM224、および任意でゲート駆動回路226は、電力バス、命令バス、データバス、アドレスバスなどを含む1つまたは複数のバス(図示せず)によって結合することができる。または、制御ロジックは、アナログ回路で実施されてもよい。
【0052】
ゲート駆動回路226は、駆動信号(例えばPWMゲート駆動信号)を介して電力コンバータ206のスイッチ(例えばMOSFET、IGBT)を駆動するのに適した、様々な任意の形態をとることができる。1つまたは複数のゲート駆動回路は、コントローラ204の一部として図示されているが、コントローラ204と電力コンバータ206との中間にあってもよい。
【0053】
コントローラ204は、1つまたは複数のセンサSTB、SVB、SIB、STC、SVC、SIC、STM、SVM、SIM、およびSRMから信号を受信することができる。コントローラは、例えば熱伝達の開始、熱伝達の停止、熱伝達率の増加、または熱伝達の方向の変更をも含む、温度調節デバイス200を制御する際に検知された情報を使用することができる。これは、スイッチSW1〜SW3を選択するための制御信号Cs1〜Cs3を印加することによって達成することができる。例えば制御信号Cs1〜Cs3は、スイッチSW1〜SW3を選択して、選択された温度調節デバイス200の1つに電力(例えば、直流)を供給し、印加電力の電圧レベルを設定し、印加電力の極性さえも設定する。
【0054】
バッテリ温度センサSTBは、主電力蓄積デバイス118の温度または主電力蓄積デバイス118に近接する周囲環境の温度を検知し、検知された温度を示す信号TBを提供するように配置してもよい。
【0055】
バッテリ電圧センサSVBは、主電力蓄積デバイス118の両端の電圧を検知して、検知された電圧を示す信号VBを提供するように配置してもよい。
【0056】
バッテリ充電センサSIBは、主電力蓄積デバイス118の電荷を検知して、検知された電荷を示す信号IBを提供するように配置してもよい。
【0057】
電力コンバータ温度センサSTCは、1つまたは複数の電力コンバータ206の温度、または電力コンバータ206に近接する周囲環境の温度を検知し、検知された温度を示す信号TCを提供するように配置してもよい。
【0058】
電力コンバータ電圧センサSVCは、1つまたは複数の電力コンバータ206の両端の電圧を検知し、検知された電圧を示す信号VCを提供するように配置してもよい。
【0059】
電力コンバータ充電センサSICは、1つまたは複数の電力コンバータ206を通る電荷を検知し、検知された電荷を示す信号ICを提供するように配置してもよい。
【0060】
トラクションモータ温度センサSTMは、トラクション電動モータ116の温度またはトラクション電動モータ116に近接する周囲環境の温度を検知し、検知された温度を示す信号TMを提供するように配置してもよい。
【0061】
トラクションモータ電圧センサSVMは、主電力蓄積デバイス118の両端の電圧を検知し、検知された電圧を示す信号VMを提供するように配置してもよい。
【0062】
トラクションモータ電流センサSIMは、トラクション電動モータ116を通る電流を検知し、検知された電流を示す信号IMを提供するように配置してもよい。
【0063】
トラクションモータ回転センサSRMは、トラクションモータ116を通る電流を検知し、検知された回転速度を示す信号RPMを提供するように配置してもよい。
【0064】
本明細書で論じるように、コントローラは、検知された条件のうちの1つまたは複数を使用して、1つまたは複数の温度調節デバイス200の動作を制御することができる。
【0065】
コントローラ204は、電動スクータまたは電動オートバイ100から離れた構成要素またはシステムとの無線通信を提供するトランシーバ228として形成または称することができる送信機および受信機を含む。トランシーバ228は、無線通信を提供するのに適した多種多様な形態をとることができる。例えば、トランシーバは、セルラサービスプロバイダのネットワークを介して遠隔システムとの通信を継続するために、携帯電話チップセット(無線機とも呼ばれる)およびアンテナの形態を取ることができる。トランシーバ228は、セルラベースの通信以外の無線通信手法を実施することができる。通信は、遠隔のシステムまたはデバイスから情報および/または命令を受信することと、情報および/または命令もしくはクエリを遠隔のシステムまたはデバイスに送信することを含んでもよい。
【0066】
コントローラ204は全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)の受信機230を含んでもよく、この受信機230は、コントローラ204がスクータまたはオートバイ100の現在地を決定することを可能にする、GPS衛星からの信号を受信する。任意の市販の様々なGPS受信機を採用することができる。現在地または位置は、例えば経緯度などの座標で、典型的には3メートル未満の精度で特定することができる。代わりに、スクータまたはオートバイ100の現在地、高度、傾斜、または位置を決定するために、他の技術を使用してもよい。例えば、3つ以上のセルラタワーまたは基地局に基づく三角測量を使用して場所を決定してもよい。
【0067】
現在地の高度は、GPS座標に基づいて識別可能であるか、または決定されてもよい。同様に、現在地と1つまたは複数の他の場所または目的地との間の高度変化は、地形マッピングまたはGPS座標と高度とを関連付ける他の構造化フォーマットを使用して決定することができる。これは、電動スクータまたは電動オートバイ100の範囲をより正確に推定するために有利に使用され得る。これに代えて、またはこれに加えて、電動スクータまたは電動オートバイ100は、高度を検出する高度計、または、例えば高度変化を検出する加速度計などの他のセンサを含んでもよい。これにより、推定範囲を決定する際に、丘(例えば、丘の頂部、丘の底部)に対する電動スクータまたは電動オートバイ100の相対位置に関連する位置エネルギーを考慮に入れることができる。これによって、より正確な範囲または推定された範囲を有利に生成して、操作性能の不必要な制限を防ぐことができる。
【0068】
図3は、別の例示の実施形態による、電動スクータまたは電動オートバイ100の部分を示す。特に、図3に示す実施形態では、副電気エネルギー蓄積デバイス300を使用して、トラクション電動モータ116によって生成された、種々の構成要素(例えば電気エネルギー蓄積デバイス118および/または回路)の温度を調節または制御するために使用する電力を、多数の温度調節デバイス200を介して供給する。副電気エネルギー蓄積デバイス300は、トラクション電動モータ116に電力を供給するために依然として使用される主電気エネルギー蓄積デバイス118に加えて設けられる。構造および/または構成要素の多くは、上記の図2を参照して図示および説明されたものと同様であるか、または同一である。そのような構造および構成要素は、図2で使用されるものと同じ参照番号を共有し、これ以上詳細には説明しない。重要な相違点の一部についてのみ、これより以下に説明する。
【0069】
前述したように、図3の実施形態は、副電気エネルギー蓄積デバイス300が追加されるものである。回生制動モードで動作しているトラクション電動モータによって生成された電力は、例えばAC/DCコンバータ206cおよび/またはDC/DCコンバータ206dを介して副電気エネルギー蓄積デバイス300に供給される。副電気エネルギー蓄積デバイス300は、1つまたは複数のスーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタとして例示されているが、様々な形態、例えば化学バッテリの形態を取ることができる。副電気エネルギー蓄積デバイス300はトラクション電動モータ116を駆動しないので、形態の選択において高い自由度が可能である。したがって、副電気エネルギー蓄積デバイス300は、副電気エネルギー蓄積デバイス300が動作する際の予想される電圧、充電容量、および/または温度での性能など、所望の特性に基づいて選択することができる。ウルトラキャパシタを選択することで、特に比較的高い周囲温度での放電動作および/または充電動作に関して、化学バッテリよりも高い効率を実現することができる。
【0070】
ここでスイッチSW1〜SW3は、副電気エネルギー蓄積デバイス300と温度調節デバイス200とを選択的に結合するように動作可能となっている。
【0071】
図3の実施形態はまた、ダンプ抵抗器または散逸抵抗器RとスイッチSW4とを含んでもよく、スイッチSW4は、制御回路120からの制御信号CRに応答して、トラクション電動モータ116とAC/DC電力コンバータ206cとの間で抵抗器Rを選択的に並列結合するように動作可能である。これにより、例えば回生制動動作中に生成されるエネルギーが副電気エネルギー蓄積デバイス300に対して大きすぎる場合に、余分な電気エネルギーを熱として散逸することができる。
【0072】
図3の実施形態は、追加的または代替的に直接結合スイッチSW5を含むことができ、直接結合スイッチSW5は、制御回路120からの制御信号CS5に応答して、回生制動モードで動作しているトラクション電動モータによって生成された電力と温度調節デバイス200との間を、バッテリまたはウルトラキャパシタを介さずに直接的に電気結合するように動作可能である。
【0073】
図4は、非限定的な例示の実施形態による、登坂を含む様々な種類の車両負荷の特徴となる基準モータトルク対モータ速度値の例、およびディレーティング曲線405の例を示すグラフ400である。このようなデータを使用して、本明細書に記載されたシステムおよび方法は、特定の種類の車両負荷(例えば、車両が丘を登っている)を検出し、例えば、登坂中にバッテリ温度を制限する。例えば、(1)バッテリへの永久的な損傷を回避するために、(2)バッテリの移動範囲を広げるために、バッテリ温度を制限することが重要となる場合もある。
【0074】
システムは、図4に示すような基準トルク速度曲線401または特定の種類の負荷の他のデータ特性(「道路負荷」とも呼ばれる)を生成することができ、これらは例えば傾斜の有無、逆風の有無、および温度の高低など、動作中の車両の外部の条件を判定するのに役立つ標準(「標準」)として使用される。いくつかの実施形態では、このような基準データは既に生成されている。コントローラは、負荷データの実際のトルク速度のサンプルと標準とを比較する。比較に基づいて、システムは、(a)外部条件(丘を登っている、逆風に向かって走行している、高温で動作している)、または(b)パワートレーンの異常動作、例えば、低タイヤ圧、摩擦の上昇、またはホイールアライメントのずれなどを判定する。(a)または(b)の判定に基づいて、コントローラは例えば、ディレーティング曲線405を実施することでモータの最大トルク出力を管理してバッテリの温度を制御する、ウインドデフレクタを上昇させる、車両の最高速度を管理して低タイヤ圧、パワートレーンの摩擦の上昇、もしくはホイールアライメントのずれによって生じる危険性を低減する、または異常状態の表示を開始するなどの動作を行う。いくつかの実施形態では、コントローラがパワートレーンの異常動作を識別しようとしているとき、車両が平らな道路上にあったとの判定は、動作の実行前に行われる。これらの動作は、コントローラによって、または車両から受信したデータに基づいてコントローラにそのようなデータを提供するコントローラから遠隔のシステムによって実行することができる。
【0075】
特定の種類の負荷の特徴となる、使用されるデータは、図4に示すトルク速度曲線の代わりに、車両が該当するトルク速度曲線に関連した負荷を受けるときの特徴となる、該当するトルク速度曲線の特徴に対応するモータ電流データを含むモータ電流の基準曲線によって示されてもよい。この場合、車両のモータ電流をサンプリングしてもよく、そのようなサンプリングした値とモータ電流の基準曲線における値とを比較して、該当するモータ電流の曲線および対応するトルク速度曲線に関連する負荷を車両が受けていることを判定してもよい(例えば、車両が上り坂を走行しているのか平坦な路面を走行しているのかを判定する)。
【0076】
図4を参照すると、動力伝達系から得られるデータを負荷の曲線またはデータと比較して、トルク速度曲線の変化を判定し、または動力伝達の問題を検出する。車両は、異なる負荷条件下で多くの負荷曲線を生成することができる。負荷曲線は、車両が傾斜を登っているのか平坦な道路に沿って走行しているのかを判定するために選択される。車両がディレーティング曲線を使用するモードに入ると、エネルギー消費を減らすことができ、したがって性能があまり低下しない。
【0077】
図4は、4つの負荷の速度トルク曲線、すなわち4つの負荷トルク曲線の例を示しており、下から上に、第1の曲線409は、車両が1人の人を乗せて平坦な道路上を移動するときに得られるデータから構築され、第2の曲線407は、車両が2人の人を乗せて平坦な道路上を移動するときに得られるデータから構築され、第3の曲線411は、車両が1人の人を乗せて傾斜を登るときに得られるデータから構築され、第4の曲線403は、車両が2人の人を乗せて傾斜を登るときに得られるデータから構築される。
【0078】
図5は、1つの非限定的な例示の実施形態による、特定のサンプリングレート例での、動力伝達系からのリアルタイムデータのサンプリング例を含む、ある期間にわたって車両が特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定するプロセスのタイミング図500の例である。
【0079】
1つの例示される実施形態では、カウンタを、各サイクル、またはこの例では1分の固定された時間に累積する。データは1秒ごとに取得またはサンプリングされる。例えば点501,503、および505において車両が傾斜を登っていることがデータによって示されると、カウンタを1だけ加算する。サイクルが終了すると、カウンタの数と閾値(この例では36)とを比較する。カウンタが閾値以上であれば、ディレーティング曲線すなわち電力制限曲線を使用して、車両が「エコモード」に切り替わる。様々な他の実施形態では、サンプリングレート、サイクルタイム、および閾値には、様々な他の値を使用することができる。例えば、そのような値は、所望の車両性能および測定の精度に基づいて選択することができる。
【0080】
車両が傾斜を走行しているときには、車両はピークトルク速度曲線以外のトルク速度曲線を使用することができる。車両が傾斜を登っているかどうかの判定は、車両のパワートレーンの挙動または性能に基づいている。車両が平坦な道路を走行するときとは相違を示す、パワートレーンの任意の特徴を使用することができる。例えば、特定の種類の負荷の特徴となる、使用されるデータは、図4に示すトルク速度曲線の代わりに、該当するトルク速度曲線に関連した負荷を車両が受けるときの特徴となる、該当するトルク速度曲線の特徴に対応するモータ電流データを含むモータ電流の基準曲線によって示されてもよい。この場合、車両のモータ電流をサンプリングしてもよく、そのようなサンプリングした値とモータ電流の基準曲線における値とを比較して、該当するモータ電流の曲線および対応するトルク速度曲線に関連する負荷を車両が受けていることを判定してもよい(例えば、車両が上り坂を走行しているのか平坦な路面を走行しているのかを判定する)。
【0081】
いくつかの実施形態では、この判定は、Gセンサまたは同様の付加的に追加されたセンサに基づくものではない。
【0082】
パワートレーンは、負荷のトルク速度曲線と、トルクおよび速度のデータとを比較する。データが曲線を上回っている場合には、車両は例えば傾斜を登っていると判定され、データが曲線を下回っている場合には、車両は傾斜を登っていないか、または平坦な道路を走行していると判定される。これは、車両が傾斜上にあることを判定するための1つの方法であり、本明細書に記載されるような他の方法も使用可能である。
【0083】
動作モードは周期的に変化してもよい。比較は、この例では1分間続くサイクルにおいて毎秒ごとに行われる。カウンタは、車両が傾斜を登る状態にある回数をカウントするために使用される。総カウント数に対するカウンタの数の比率が60%より大きい場合、「エコモード」を適用することで車両の動作の一部を制限(3500W電力制限など)して、適用されている現在のトルクおよび/または結果として生じるバッテリ温度に影響を及ぼす。カウントは連続でなくてもよい。モード変更を開始するに際して、傾斜を登ることが連続的である必要はない。
【0084】
負荷曲線を決定するために使用される負荷は、風抵抗、機械抵抗、および傾斜を登るために必要な動力などを含んでもよい。負荷曲線は、例えば、車両のタイヤ圧、伝達系、パワートレーン、および動力システムを監視するためにも使用することができる。例えばタイヤ圧を監視する場合、データは10分ごとに取得され、継続期間はバッテリ交換から次のバッテリ交換までの期間となる。例えばカウント率が95%を超える場合、1つのタイヤの交換が必要である可能性がある。換言すれば、タイヤ圧は、バッテリ交換とバッテリ交換との間で10分ごとにトルク速度データをサンプリングすることによって監視することができる。サンプリングしたトルク速度データのカウント率が、タイヤ圧を監視するための制御として選択されたトルク速度曲線(多くの場合、平らな道路に対するトルク速度曲線)を上回る場合、例えば95%を超える場合には、タイヤ圧が低いと判定される。これは、タイヤ圧が低いと転がり抵抗が増加し、トルクの速度曲線に影響を及ぼすという考え方に基づいている。
【0085】
負荷曲線に加えて、離散データを使用してもよい。モードの変更は、車両の登坂が検出される毎に開始することができる。モードの変更は、車両が一定の時間または一定の距離を登坂していることが検出されたときに開始することができる。丘を登るときの走行は速くないので、最大トルク出力での速度範囲は減少する。ファームウェアでは、モータの電流を使用して、負荷曲線に対応する電流データと比較する。しかし、電流をトルクに変換することができ、負荷曲線との比較に使用される。
【0086】
図4に示すように、多くの負荷曲線を得ることができる。これらの曲線から比較基準として1つ選択される。この1つが選択されるのは、これより上方の点は車両の登坂を示す可能性が高く、これより下方の点は車両が登坂していないことを示す可能性が高いためである。
【0087】
例えば、異なるテストトラック構成(勾配、路面、レベル)、異なる周囲条件(温度、湿度、風速、風向)、ならびに異なる車両構成(タイヤおよびタイヤ状態、車体の種類、ブレーキ、ホイールアライメント、車輪用軸受、車両オプション)などは、車両の道路負荷に影響を与える要因となる可能性がある。他の要因もまた、車両が受ける負荷に寄与する可能性がある。
【0088】
図4に示された、負荷データの実際のトルク速度と標準の例との前述の比較に基づいて、コントローラは、外部条件(丘を登っている、逆風に向かって走行している、高温で動作している)、および/またはパワートレーンの異常動作、例えば、低タイヤ圧、摩擦の上昇、もしくはホイールアライメントのずれなどを判定する。一実施形態では、この判定に基づいて、コントローラが図4に示すディレーティング曲線を実施することで、モータの最大トルク出力を管理してバッテリの温度を制御する。エコノミーモードのトルク速度曲線が実施される目標バッテリ温度(すなわち、コントローラによって図4に示されるディレーティング曲線が実施され、モータの最大トルク出力を管理してバッテリの温度を制御するときの目標バッテリ温度)は、57℃であるが、これは実施形態の一例にすぎず、代わりに他の目標温度を使用することができる。例えば図6は、それぞれ100回および500回の充電サイクルが繰り返された車両バッテリの開始温度の例と、そのようなバッテリを搭載した車両の、バッテリ温度が57℃に達したときの走行距離とを示す表600である。図6では、例えば、35℃が車両バッテリの開始温度である。30kmは(充電サイクルが100回のバッテリの場合の)バッテリ温度が57℃に達したときの車両の走行距離であり、18kmは(充電サイクルが500回のバッテリの場合の)バッテリ温度が57℃に達したときの車両の走行距離である。括弧「()」は、バッテリ温度が57℃に達する前に車両が最初に「クロールホーム(crawl home)」モードに入ったことを意味する。
【0089】
図7は、1つの非限定的な例示の実施形態による、車両負荷検出の方法700を示すフローチャートである。
【0090】
702において、コントローラは、ある期間にわたって車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを取得する。
【0091】
704において、コントローラは、取得した車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを基準データと比較することに基づいて、その期間に車両が特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定し、基準データは、車両が特定の種類の負荷を受けるときの特徴となるパワートレーン動作に関するデータを含む。
【0092】
図8は、1つの非限定的な例示の実施形態による、図7の車両負荷検出方法において有用な、特定の期間にわたって車両が特定の種類の負荷を受けたかどうかを判定する方法800を示すフローチャートである。
【0093】
802において、コントローラは、動力伝達系からのリアルタイムデータを、特定の期間にわたって特定のサンプリングレートでサンプリングする。
【0094】
804において、コントローラは、特定の期間中のリアルタイムデータのサンプリング毎に、サンプリングした動力伝達からのリアルタイムデータを基準データと比較する。
【0095】
804において、コントローラは、特定の期間中のリアルタイムデータのサンプリング毎に、サンプリング時に基準データに対して行った比較に基づいて、サンプリング時に車両が現在特定の種類の負荷を受けているかどうかを判定する。
【0096】
806において、コントローラは、特定の期間中のリアルタイムデータのサンプリング毎に、サンプリング時に車両が特定の種類の負荷を現在受けているかどうかの判定に基づいて、特定の期間の開始時に初期化されたカウンタをインクリメントするかどうかを決定する。
【0097】
808において、コントローラは、取得した車両のパワートレーン動作に関するリアルタイムデータを基準データと比較することに基づいて、その期間に車両が特定の種類の負荷を受けるかどうかを判定し、基準データは、車両が特定の種類の負荷を受けるときの特徴となるパワートレーン動作に関するデータを含む。
【0098】
812において、コントローラは、その特定の期間が経過した後に、カウンタの値と閾値とを比較する。
【0099】
814において、コントローラは、その比較に基づいて、カウンタの値が閾値以上であるかどうかに応じて、車両が特定の期間にわたって特定の種類の負荷を受けたかどうかを判定する。
【0100】
本明細書に記載される様々な方法は、追加の動作を含んでよく、いくつかの動作を省略してもよく、かつ/または種々のフローチャートに示されたものと異なる順序で動作が実行されてもよい。
【0101】
以上の詳細な説明において、ブロック図、概略図、および例を用いて装置および/またはプロセスの様々な実施形態を提示した。このようなブロック図、概略図、および例が1つまたは複数の機能および/または動作を含む場合、広範囲のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、または事実上それらの組合せにより、このようなブロック図、フローチャート、および例における各機能および/または各動作が個別および/または集合的に実現され得ることは、当業者によって理解されよう。一実施形態においては、本開示の主題は、1つもしくは複数のマイクロコントローラを通じて実現することができる。しかしながら、当業者であれば、本明細書に開示される実施形態が、全体的または部分的に、標準集積回路において(例えば特定用途向け集積回路、すなわちASIC)、1つもしくは複数のコンピュータによって実行される1つもしくは複数のコンピュータプログラムとして(例えば、1つもしくは複数のコンピュータシステム上で動作する1つもしくは複数のプログラムとして)、1つもしくは複数のコントローラ(例えばマイクロコントローラ)によって実行される1つもしくは複数のプログラムとして、1つもしくは複数のプロセッサ(例えばマイクロプロセッサ)によって実行される1つもしくは複数のプログラムとして、ファームウェアとして、または事実上それらの任意の組み合わせとして同等に実施可能であり、回路の設計、ならびに/またはソフトウェアおよび/もしくはファームウェア用のコードの記述は、本開示の教示に照らして当業者の技術範囲に十分収まることが理解されよう。
【0102】
ロジックがソフトウェアとして実装され、メモリに記憶される場合、ロジックまたは情報は、任意のプロセッサ関連のシステムまたは方法によって使用される、またはそれらと関連して使用される任意の非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶され得る。本開示の文脈において、メモリとは、電子的装置、磁気的装置、光学的装置、もしくは他の物理的装置、またはコンピュータプログラムおよび/もしくはプロセッサプログラムを非一時的に含むかもしくは記憶する手段である、非一時的コンピュータ可読記憶媒体またはプロセッサ可読記憶媒体である。ロジックおよび/または情報は、例えばコンピュータベースのシステムおよびプロセッサを含むシステムなどの、命令実行システム、命令実行装置、もしくは命令実行デバイス、または命令実行システム、命令実行装置、もしくは命令実行デバイスから命令をフェッチし、ロジックおよび/もしくは情報に関連する命令を実行することができる他のシステムなどによって使用される、またはこれらと関連して使用される任意のコンピュータ可読媒体で具現化することができる。
【0103】
本明細書の文脈において、「コンピュータ可読媒体」は、命令実行システム、命令実行装置、および/もしくは命令実行デバイスによって使用される、またはそれらと関連してロジックおよび/もしくは情報に関連するプログラムを記憶することができる任意の物理的要素であり得る。コンピュータ可読媒体は、例えば、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線、または半導体のシステム、装置、またはデバイスであり得るが、これらに限定されない。コンピュータ可読媒体のより具体的な例(非網羅的リスト)として、ポータブル・コンピュータ・ディスケット(磁気ディスク、コンパクト・フラッシュ・カード、SD(Secure Digital)カードなど)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、消去可能なプログラマブル読出し専用メモリ(Erasable Programmable Read−Only Memory:EPROM、EEPROM、またはフラッシュメモリ)、CDROM(portable compact disc read−only memory)、およびデジタルテープが挙げられる。
【0104】
上述の様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わせることができる。必要に応じて、実施形態の態様を変更し、様々な特許、出願、および刊行物のシステム、回路、および概念を使用してさらに別の実施形態を提供することができる。
【0105】
全般として、全電動のスクータおよび/またはオートバイなどの個人輸送車両に使用する動力システムの環境および背景について論じてきたが、本明細書の教示は、他の車両環境および非車両環境を含む他の広範囲の環境に適用することができる。
【0106】
要約に記載されているものを含め、例示の実施形態の上記の説明は、網羅的であること、または開示される厳密な形態に実施形態を限定することを意図したものではない。特定の実施形態および実施例が例示を目的として本明細書に記載されているが、関連する技術分野において当業者によって認識されるように、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の同等な変更を行ってもよい。
【0107】
上記の詳細な説明に照らして、実施形態にこれらの変更および他の変更を行うことができる。全般として、以下の特許請求の範囲において使用される用語は、特許請求の範囲を、明細書および特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、かかる特許請求の範囲の権利の対象となる、均等物の全範囲とともに可能なすべての実施形態を含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって制限されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8