(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887768
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】磁気シールドおよびその設置方法
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20210603BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20210603BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20210603BHJP
E04B 1/92 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
H05K9/00 H
A61B5/055 362
G01N24/00 540A
E04B1/92
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-148436(P2016-148436)
(22)【出願日】2016年7月28日
(65)【公開番号】特開2018-18969(P2018-18969A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 健大
【審査官】
原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−135424(JP,A)
【文献】
特開2002−263080(JP,A)
【文献】
特開平03−291996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
A61B 5/055
E04B 1/92
G01N 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング装置を収容する検査室を覆うように設けられた磁気シールドであって、
前記磁気共鳴イメージング装置の静磁場磁石から発生する漏洩磁場を吸収する少なくとも1つのシールド材を備え、
前記シールド材は、磁気的間隙を有するように設けられ、前記磁気的間隙の前記検査室における位置は、前記静磁場磁石から漏洩する漏洩磁場の分布に基づいて定められた、
磁気シールド。
【請求項2】
磁気共鳴イメージング装置を収容する検査室を覆うように設けられた磁気シールドであって、
前記磁気共鳴イメージング装置の静磁場磁石から発生する漏洩磁場を吸収する少なくとも1つのシールド材を備え、
前記シールド材は、磁気的間隙を有するように設けられ、前記磁気的間隙の前記検査室における位置は、前記磁気共鳴イメージング装置の寝台の長手方向の端部のうち前記静磁場磁石から離れた側の端部の近傍である、
磁気シールド。
【請求項3】
前記磁気的間隙は、物質的に何も配置されない空間と、非磁性体が配置された空間と、前記シールド材よりも透磁率の低い部材が配置された空間と、のうち少なくとも1つである、
請求項1または2に記載の磁気シールド。
【請求項4】
前記シールド材は、前記検査室の床面と天井面と側面とのうち少なくとも1面に設けられた、
請求項1または3のうちいずれか1項に記載の磁気シールド。
【請求項5】
前記磁気的間隙は、前記検査室の外部から前記検査室の内部を見ることができるように設けられた窓と、前記検査室の外部と前記検査室の内部との間を配線するのに設けられたフィルタパネルと、前記検査室の外部と内部とを出入りするのに設けられた扉とのうち少なくともいずれか1つを含むシールド開口部とは別に設けられる、
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の磁気シールド。
【請求項6】
前記磁気的間隙の位置または大きさは、前記検査室の建築構造に基づいて定められた、
請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の磁気シールド。
【請求項7】
前記建築構造は、前記検査室の外部から前記検査室の内部を見ることができるように設けられた窓と、前記検査室の外部と前記検査室の内部との間を配線するのに設けられたフィルタパネルと、前記検査室の外部と内部とを出入りするのに設けられた扉とのうち少なくともいずれか1つを含むシールド開口部の影響または、磁性体の建築部材の配置とのうち少なくとも1つを含む、
請求項6に記載の磁気シールド。
【請求項8】
磁気共鳴イメージング装置を収容する検査室を覆うように磁気シールドを設置する方法であって、
前記磁気共鳴イメージング装置の静磁場磁石から発生する漏洩磁場を吸収する少なくとも1つのシールド材を、前記静磁場磁石から漏洩する漏洩磁場の分布に基づいて定めた磁気的間隙が前記検査室に位置するように設置する、
磁気シールドの設置方法。
【請求項9】
磁気共鳴イメージング装置を収容する検査室を覆うように磁気シールドを設置する方法であって、
前記磁気共鳴イメージング装置の静磁場磁石から発生する漏洩磁場を吸収する少なくとも1つのシールド材を、前記磁気共鳴イメージング装置の寝台の長手方向の端部のうち前記静磁場磁石から離れた側の端部の近傍に磁気的間隙が前記検査室に位置するように設ける、
磁気シールドの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気シールドおよびその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば磁気共鳴イメージング装置など、磁場を発生させる装置を利用する場合、外部に磁場が漏れないように、あるいは外部からの不要な磁場が入り込まないように、磁気シールドを設けることがある。通常、磁気シールドは、磁場を発生する装置を備えた部屋を覆うように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−15487号公報
【特許文献2】特開2004−167104号公報
【特許文献3】特開昭62−203399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、漏洩磁場の漏洩範囲を変える磁気シールドおよびその設置方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の磁気シールドは、磁気共鳴イメージング装置を収容する検査室の一部または全てを覆うように設けられる。磁気シールドは少なくとも1つのシールド材を備え、シールド材は磁気共鳴イメージング装置の静磁場磁石から発生する漏洩磁場を吸収する。シールド材は、磁気的間隙を有するように設置され、磁気的間隙の検査室における位置は、静磁場磁石から漏洩する漏洩磁場の分布に基づいて定められる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る検査室に設置された磁気共鳴イメージング装置を天井側から見た図。
【
図2】実施形態に係る側面から見た磁気共鳴イメージング装置と磁気シールドを示す図。
【
図3】実施形態に係る磁気シールドの構成パターンを示す図。
【
図4】実施形態に係る磁気的間隙の有無による漏洩磁場の漏洩範囲の差異を示す図。
【
図6】変形例に係る側面に磁気的間隙を設けた磁気シールドを有する検査室の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0008】
(実施形態)
図1は、検査室300に設置された磁気共鳴イメージング装置20を、天井側から見た図である。他の図面との向きの対応関係を明らかにするために、寝台202の長手方向をZ方向、Z方向と水平面で直交する寝台202の短手方向をX方向、XZ平面と直交する方向をY方向と定める。なお、検査室300は、磁気共鳴イメージング装置20が設置された空間を指す。
【0009】
磁気共鳴イメージング装置20は、寝台202に載置された被検体を撮像する。被検体は、寝台202上の図示しない天板により、架台200のボア内に移動させられる。架台200に収められた静磁場磁石201は、例えば、数テスラ程度の静磁場を形成する。静磁場磁石201は、例えば、超伝導コイルなどによって構成される。静磁場が形成された架台200のボア内であって、被検体の撮像が行われる撮像空間において、例えば、被検体に傾斜磁場および高周波磁場を印加することにより、被検体の磁気共鳴データを取得することができる。傾斜磁場は、図示しない傾斜磁場コイルによって形成される。高周波磁場は、図示しない高周波コイルによって形成される。取得された磁気共鳴データは、例えば、検査室300の外部に設けられた機械室のユニットに送られる。機械室のユニットは、磁気共鳴データに基づいて、磁気共鳴画像を生成する。機械室に置かれるユニットは、磁気共鳴画像を生成するユニットに限らず、例えば、電源供給を行なうユニットや冷却を行なうユニットなども含まれる。
【0010】
静磁場磁石201により形成される静磁場は、ボア内の撮像空間のみに形成されることが望ましいが、実際には、撮像空間の外部にも静磁場を形成する。ここで、撮像空間の外部に形成された静磁場を漏洩磁場と呼ぶこととする。漏洩磁場は、例えば電子機器に対して害を与える可能性があるので、所定の強度以上の漏洩磁場が検査室の外部へ漏れ出ないようにすることが求められる。漏洩磁場は、磁気シールド1により、検査室300の外部へ所定の強度以上漏洩しないように制御される。
【0011】
磁気シールド1は、磁性体のシールド材によって構成され、検査室300の一部またはすべてを覆うように設けられる。なお、検査室300の一部またはすべてを「覆う」とは、磁気共鳴イメージング装置20が設置された空間を覆うことを意図している。つまり、シールド材は、検査室300を形成している内装の内側に設けるか、外側に設けるかを限定する意図はない。シールド材は、静磁場磁石201から発生した漏洩磁場に対応する磁束をシールド材内部に吸収する。シールド材として、例えば、電磁軟鉄、方向性珪素鋼、無方向性珪素鋼、パーマロイ、アモルファスなどが用いられる。磁気シールド1は、検査室300の外部に漏洩磁場が漏洩することを防ぐことができる。同時に、検査室300の外部からの外来磁場が、磁気共鳴イメージング装置20によって形成される磁場に、ノイズとして混入することを防ぐことができる。磁気シールド1は、例えば、床面や天井面、側面(壁面)に設けられる。なお、
図1において、磁気シールド1は、磁気共鳴イメージング装置20の下部にも設けられていてもよい。
【0012】
磁気シールド1は、複数のシールド材に分割して構成してもよい。例えば、検査室300の床面に複数枚のシールド材を敷き詰めて磁気シールド1を構成してもよい。また、床の1面に限らず、壁面や天井面など複数面に亘ってシールド材を設け、磁気シールド1を構成してもよい。シールド材を必要とする面は、例えば検査室300の広さによって異なるため、シールド材を検査室300のどの面に設置するかは任意である。以下、磁気シールド1とは、1つまたは複数のシールド材の総称とする。
【0013】
磁気シールド1を構成するシールド材は、静磁場磁石201の近傍において漏洩する漏洩磁場の漏洩範囲が検査室300の外部方向に関して小さくなるように、静磁場磁石201から離れた位置に磁気的間隙2を有するように設けられる。例えば、磁気的間隙2は、寝台202の長手方向の端部のうち静磁場磁石201から離れた側の端部の近傍に設ける。磁気的間隙2は、検査室300において意図的に設けられた、あえてシールド材を設けないようにした空間である。磁気的間隙2は、例えば、複数枚からなるシールド材を敷き詰めた時に発生しうるシールド材の間の偶発的に生じる間隙ではない。
図1に磁気的間隙2を例示する。磁気的間隙2は、
図1において破線で囲われた領域である。磁気的間隙2は、例えば、寝台202において、静磁場磁石201から離れた側の端の近傍に設けられている。磁気的間隙2は、物質的に何もない空間に限定されず、非磁性体や、シールド材よりも透磁率の低い物質が設けられた空間でもよい。磁気的間隙2は、例えば、コンクリートや樹脂で充填されてもよいし、非磁性の板で蓋をされていてもよい。
【0014】
一般に、検査室の敷地面積が限られている場合には、検査室内において強い漏洩磁場の影響を受ける範囲が広いので、床面全体に亘って磁気シールドが設けられる。一方で、実施形態に係る磁気シールド1は、床面全体に亘ってシールド材を設けることはせず、床面の一部にあえて磁気的間隙2を設け、意図的に磁気的間隙2に漏洩磁場を漏洩させる。静磁場磁石201から離れた位置に設けられた磁気的間隙2に漏洩磁場を漏洩させたことにより、静磁場磁石の近傍において漏洩する漏洩磁場の漏洩範囲が検査室300の外部方向に関して小さくなる。
【0015】
磁気的間隙2は、静磁場磁石201に近接させて設けると、強い漏洩磁場が架台200の下に漏洩してしまうので、磁気的間隙2は、静磁場磁石201よりも離れた位置に設ける。例えば、長辺が6mで、短辺が4mである検査室300であれば、床面の5分の1程度の面積を有する磁気的間隙2を設ける。つまり、検査室300の短辺方向に4m、検査室300の長辺方向に1.2mの大きさを有する磁気的間隙2を設ける。
【0016】
図2は、磁気共鳴イメージング装置20および磁気シールド1の側面をY方向から見た図である。
図2は、磁気共鳴イメージング装置20と磁気シールド1とが直接触れているように描いているが、間に床材などを設けてもよい。磁気シールド1の磁気的間隙2は、
図2に示す構成に限らず、
図3に示すような構成であってもよい。
【0017】
図3に、磁気シールド1の構成に関する他の例を示す。
図3(A)は、磁気的間隙2の底面に、薄いシールド材1bをシールド材1aに加えてさらに設けた例である。また、
図3(B)は、磁気的間隙2の上面に位置する部分に、薄いシールド材1cをシールド材1aに加えてさらに設けた例である。さらに、
図3(C)は、シールド材1aと、シールド材1aと同等な厚みのシールド材1dとを、磁気的間隙2を挟みこむようにして設けた例である。なお、
図3(A)と
図3(B)と
図3(C)で示した例を組み合わせて、磁気的間隙2が、シールド材1a、1b、1c、1dとで囲まれるようにして、磁気的空洞を形成しても構わない。
図3においていくつか例示した磁気シールド1は、磁気シールド1の全体に対して、磁気的に間隙または空洞とみなせる程度に、透磁率の低い空間を有している。
【0018】
図4は、磁気的間隙2を設けない場合と設ける場合とで、漏洩磁場の漏洩範囲を対比する図である。磁気シールド1は、検査室300を取り囲むようにして配置される。点線は、所定の強度を有する漏洩磁場の分布を示している。
図4(A)と
図4(B)とで、点線は同じ強度の漏洩磁場の分布を示している。所定の強度とは、例えば、規格で定められた漏洩磁場の最大許容値である。磁気シールド1の下には、床下を形成するスラブ3が設けられる。スラブ3は、例えばコンクリートで形成される。漏洩磁場は、磁気シールド1によって全て吸収される必要はない。例えば、検査室300の階下の部屋に所定の強度を有する漏洩磁場が漏洩しない程度であれば、スラブ3に漏洩磁場が一部漏洩していても構わない。
【0019】
図4(A)は、磁気シールド1に磁気的間隙2を設けない例である。磁気的間隙2を設けない場合は、静磁場磁石201の下に、Y方向に最大T1の深さまで漏洩磁場が漏洩する。深さの基準面は検査室300の床面とする。
図4(B)は、磁気シールド1に磁気的間隙2を設ける例である。磁気的間隙2を設ける場合は、静磁場磁石201の下に最大T2の深さまで漏洩磁場が漏洩する。同時に、磁気的間隙2の位置には、最大T3の深さまで漏洩磁場が漏洩する。漏洩磁場が漏洩する最大の深さに関して、T2およびT3は、T1よりも小さい。
図4(A)と
図4(B)とを対比すると、磁気シールド1に磁気的間隙2を設けたことにより、静磁場磁石201の下に集中して分布していた漏洩磁場の分布が分散される。漏洩磁場に関する磁束は保存されるため、磁気的間隙2から漏洩した分、静磁場磁石201の下に漏洩する所定の強度を有する漏洩磁場の漏洩範囲が小さくなる。例えば、長辺が6mで、短辺が4mである検査室300において、検査室300の短辺方向に4m、検査室300の長辺方向に1.2mの大きさを有する磁気的間隙2を設けると、静磁場磁石201から漏洩する漏洩磁場の分布は、Y方向に関して10cm程度小さくなる。漏洩磁場は、先述した通り、スラブ3にも一部漏洩させて構わない。
図4(B)に示した例においては、漏洩磁場はスラブ3まで至っていない。すなわち、床下の磁気シールド1の厚みを薄くしたとしても、漏洩磁場をスラブ3内にとどめることができると考えられる。なお、先述した、短辺が1メートル以上となる磁気的間隙2の大きさはあくまでも例であり、意図せず生じうる複数のシールド材の間の隙間よりも大きいことを示している。
【0020】
磁気的間隙2を磁気シールド1のどの部分に設けるかは、検査室300の置かれた環境に基づいて決定する。検査室300の置かれた環境とは、建築構造に関するものであって、例えば、磁性体の建築部材に関する配置である。磁性体の建築部材は、例えば、鉄筋コンクリートや鉄骨を含んだ、壁や柱、梁などである。また、検査室300の置かれた環境とは、例えば、磁気的間隙2とは別に設けられたシールド開口部の影響である。シールド開口部とは、例えば、フィルタパネル21や窓22、扉23である。磁気的間隙2の検査室における位置は、静磁場磁石201から漏洩する漏洩磁場の分布を例えばシミュレーションなどによって求め、その漏洩磁場の分布に基づいて決定する。
【0021】
図5は、フィルタパネル21と、窓22と、扉23について説明するための図である。
【0022】
フィルタパネル21は、検査室300の磁気共鳴イメージング装置20と機械室のユニットとを接続するケーブルが配線された配線盤である。
【0023】
窓22は、例えば、磁気共鳴イメージング装置20の操作を行なうコンソールが設けられた操作室から、操作者が検査室300内部の様子を観察できるように設けられた窓である。窓には、漏洩磁場が漏洩しないように、磁気シールド加工がなされている場合がある。なお、窓22は必ずしも検査室300に設ける必要はない。
【0024】
扉23は、被検体や操作者が検査室300の内部と外部との間を出入り可能なように設けられた扉である。
【0025】
例えば、シールド開口部が検査室300のある面をくり抜いて設けられた形態であるのに対して、磁気的間隙2は、検査室300のある一面に設けられた磁気シールドを有さないスリットと表現することもできる。
【0026】
以上説明した磁気シールド1は、磁気的間隙2を、検査室300の床面に設ける例を示したが、天井面に設けても構わない。天井面に設ける場合は、床面の場合と同様に、検査室300の置かれた環境に基づいて磁気的間隙2を設置する位置を決定する。
【0027】
(変形例)
上述の実施形態に係る磁気シールド1は、磁気的間隙2を床面または天井面に設けているがそれに限らない。本変形例に係る磁気シールド1は、側面に磁気的間隙2を設ける。
【0028】
図6は、側面に磁気的間隙2を設けた磁気シールド1を示す図である。磁気シールド1は、フィルタパネル21や窓22、扉23とは別に、磁気的間隙2aと2bを設ける。磁気的間隙2は、検査室300の隅にスリット状に設けられる。
【0029】
磁気的間隙2a、2bは、検査室300の側面であって、架台200に関して寝台202が設置される側に設けられる。
図6においては、検査室300の側面のうち、扉23がある面と、その面に対向する面において、磁気的間隙2a、2bが設けられているが、例えば、フィルタパネル21が設けられた面と対向する面に磁気的間隙2を設けてもよい。いずれにしても、静磁場磁石201から離れた位置に磁気的間隙2を設ける。
【0030】
以上説明した実施形態によれば、検査室300に設けられた磁気シールド1の静磁場磁石201から離れた位置に磁気的間隙2を設ける。これにより、検査室300に対して網羅的に磁気シールドを設ける場合と比較して、検査室300の外部方向に漏洩する漏洩磁場の漏洩範囲を小さくすることができる。特に、静磁場磁石201の近辺の漏洩磁場の強度が大きい領域において、漏洩磁場の強度を低減させることができる。同時に、磁気的間隙2に相当する部分のシールド材が不要になるので、磁気シールドの材料コストを削減できる。
【0031】
さらに、検査室300の外部方向に漏洩する漏洩磁場の漏洩範囲を低減させることができれば、磁気シールド1を構成するシールド材の厚みを減らすことができる。したがって、シールド材に係る材料コストをさらに削減することができる。
【0032】
従来においては、狭い検査室に高い静磁場を発生する磁気共鳴イメージング装置20を設置する場合、例えば、シールド材の厚みを増やすことが対応策であった。ところが、磁気共鳴イメージング装置20を利用する場合、磁気シールドの厚みを増やすと、静磁場磁石201に含まれる超伝導コイルと磁気シールド1とが引き付け合う力が大きくなる問題点がある。引き付け合う力が大きくなると、静磁場磁石内の超伝導コイルが変位し、膨大な熱エネルギーが発生する。すると、超伝導コイルを冷却するための、例えば液体ヘリウムが大量に気化してクエンチする。一方で、実施形態に係る磁気シールド1は、従来の構成よりも薄くすることができるので、クエンチの危険性を下げることができる。とりわけ、静磁場磁石201に近い床面のシールド材の厚みを薄くすることが可能になることで、クエンチの危険性を下げることができる。
【0033】
実施形態に係る磁気シールド1によれば、例えば、磁気共鳴イメージング装置20を設置するために用意された空間が制限されている場合、磁気シールドの厚みを薄くすることができることで、実際に検査室300として用いることができる空間を従来よりも拡張することができる。
【0034】
上述した変形例に係る磁気シールド1によれば、検査室300の側面に磁気的間隙2を設けることにより、検査室300の外部方向に漏洩する漏洩磁場の漏洩範囲を小さくすることができる。また、磁気的間隙2を、床面に加えて検査室300の側面に設けることで、床面にのみ磁気的間隙2を設けた場合と比べて、検査室300の外部方向に漏洩する漏洩磁場をより分散させることができる。また、従来、シールド材が配置されていた箇所が磁気的間隙2に置き換わる箇所がさらに増えるので、材料コストをより多く削減することができる。
【0035】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1 磁気シールド
2 磁気的間隙
20 磁気共鳴イメージング装置
200 架台
201 静磁場磁石
202 寝台
21 フィルタパネル
22 窓
23 扉
300 検査室