特許第6887805号(P6887805)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887805有機電子素子での使用のための新規6員環構造を持つ化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887805
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】有機電子素子での使用のための新規6員環構造を持つ化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/86 20060101AFI20210603BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C07D209/86CSP
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
【請求項の数】6
【全頁数】104
(21)【出願番号】特願2016-530834(P2016-530834)
(86)(22)【出願日】2014年10月20日
(65)【公表番号】特表2016-539938(P2016-539938A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】EP2014002825
(87)【国際公開番号】WO2015070944
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年10月18日
【審判番号】不服2019-12192(P2019-12192/J1)
【審判請求日】2019年9月13日
(31)【優先権主張番号】13005398.6
(32)【優先日】2013年11月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ストエッセル、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】パルハム、アミア・ホサイン
(72)【発明者】
【氏名】プフルム、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤトシュ、アンヤ
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 大熊 幸治
【審判官】 齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第2573733(US,A)
【文献】 国際公開第2013/154064(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/095524(WO,A1)
【文献】 特開2020−33348(JP,A)
【文献】 NATURE,492(7428),2012,234−238
【文献】 Russ.J.Gen.Chem.,78(9),2008,1794−1801
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D209/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物;
【化1】
式中、
とQは、互いに独立して、CRおよびCRより成る基から選ばれ;
とZは、互いに独立して、CRおよびCRより成る基から選ばれ;
は、−M-効果を持つ基であり、独立して、フルオロアルキル、F、BR、B(OR、CHO、C(=O)R、CN、C(=O)OR、C(=O)N(R、CR=C(CN)、N、NO、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、ヘテロアリール、1以上の電子吸引基で置換されたヘテロアリールおよび1以上の電子吸引基で置換されたアリールであって、電子吸引基は、フルオロアルキル、F、B(OR、CHO、C(=O)R、CN、C(=O)OR、C(=O)N(R、NO、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)より成る基から選ばれ;
は、+M-効果を持つ基であり;一般式(N−b)の基より成る基から選ばれ、
【化2】
式中、
mは、0または1であり;
Arは、5〜30個の芳香族環原子を有する置換基Rにより置換されてよい芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
ここで、mが0である場合は基Arは、(N−b)の基中に存在せず、
mとArは、上記定義されるとおりであり;
基−NArは、以下の式(N−1)〜(N−23)から選ばれ;
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
上記式(N−1)〜(N−23)において、
Xは、NまたはCRであり、Rは、Rに対して下記定義されるとおりであり;
は、BR、CR、NR、OまたはSであり;
は、置換基Rにより置換されてよいアリールもしくはヘテロアリールであり;
は、アルキル、置換基Rにより置換されてよいアリールもしくヘテロアリールであり;
は、立体的にかさ高い基であり;ここで、2個のCRは、一緒になって、以下の式(II−A−a)または(II−A−e)の5員環を形成し、
【化4】
式中、
式(II−A)および(II−A−e)中の破線は、式(I)の6員環構造への結合を示し、破線は、式(I)の6員環構造への結合であり;
は、出現毎に独立して、H、D、F、Cl、Br、I、B(OR、CHO、C(=O)R、CR=C(R、CN、C(=O)OR、C(=O)N(R、Si(R、N(R、NO、P(=O)(R、OSO、OR、S(=O)R、S(=O)、OH、SH、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、2〜20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(ここで、上記アルキル、アルコキシ、チオアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基は、夫々1以上の基Rにより置換されてよい。)または、1以上の基Rにより置換され得る5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、1以上の基Rにより置換され得る5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または、1以上の基Rにより置換され得る5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基より成る基から選ばれ;
は、出現毎に独立して、H、D、F、1〜20個のC原子を有するアルキル基、1〜20個の芳香族炭素原子を有する芳香族基、1〜20個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族基であって、ここで、芳香族基および複素環式芳香族基は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基で置換されてよく;および
は、出現毎に独立して、F、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(ここで、これらの基は、夫々1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)または、夫々、1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、1以上の基Rにより置換され得る5〜24個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または、1以上の基Rにより置換され得る5〜24個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基より成る基から選ばれ;
ただし、一般式(I)の化合物は、少なくとも一つの基CRと少なくとも一つの基CRとを含む。
【請求項2】
式(I)の化合物は、式(I−a)〜(I−h)より成る群から選ばれる、請求項1記載の化合物:
【化5】
式中、R、RおよびRは、請求項1で定義されるとおりである。
【請求項3】
化合物が、式(I−e)である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物は、少なくとも2個の同一の基Rを含む、請求項1〜何れか1項記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物は、少なくとも2個の同一のRを含む、請求項1〜何れか1項記載の化合物。
【請求項6】
溶媒と請求項1〜何れか1項記載の化合物を含む調合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子供与体、電子受容体と立体的にかさ高い基により置換された6員環構造を有する新規な化合物に関する。前記化合物は、有機電子素子、特に、有機エレクトロルミッセンス素子での使用のために適している。
【0002】
背景
有機電子素子、すなわち、殆ど有機材料から製造される層を含む電子素子は、無機材料系の従来の電子素子を超える多くの利点を提供する。有機電子素子は、たとえば、フレキシビリティおよび/または減少した重量等の改善された最終特性と組み合わせた良好な加工性を可能とする。このような素子は、また、極めて低いエネルギー消費により特徴付けられることが多い。これらのような特性は、たとえば、タブレットPCおよびスマートフォン等の携帯素子に対してかなりの関心がある。
【0003】
有機電子素子の特別な例は、有機エレクトロルミッセンス素子(OLED)である。用語「有機エレクトロルミッセンス素子」は、電流が適用されると発光する少なくとも一つの有機材料を含む電子素子のために一般的に使用される。一般的にOLEDとその構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。
【0004】
進歩がなされはしたが、たとえば、寿命、効率と駆動電圧の点で、有機電子素子の、特に、有機エレクトロルミッセンス素子の特性を改善することに多大な関心が残っている。この面において、重要なファクターは、有機発光層と、特に、そこに含まれる材料と有機電荷輸送層である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、改善された特性を有する新規な材料を見出すことである。さらに、一般的に有機電子素子における、特に、有機エレクトロルミッセンス素子における使用のために適した入手可能な材料のプールをさらに増やすことが本発明の目的である。さらに、青色発光する材料のプールを増やすことが本発明の特別な目的である。本発明のさらなる目的は、以下の記載からと例から明らかになるであろう。
要約
本発明者は、上記目的が本発明の化合物により、また本出願のさらなる側面により、個別にかまたは任意の組み合わせの何れかにより達成されうることが、驚くべきことに今回見出された。
【0006】
したがって、本出願は、一般式(I)の化合物を提供し;
【0007】
【化1】
【0008】
式中、QとQは、互いに独立して、N、CR、CRおよびCRより成る基から選ばれ;ZとZは、互いに独立して、N、CRおよびCRより成る基から選ばれ;Rは−M-効果を持つ基であり;Rは、+M-効果を持つ基であり;およびRは、立体的にかさ高い基であるが、ただし、一般式(I)の化合物は、少なくとも一つの基CRと少なくとも一つの基CRとを含む。
【0009】
本出願は、また、溶媒と前記化合物とを含む調合物を提供する。
【0010】
さらに、本出願は、電子素子の製造方法であって、以下の工程を含む方法を提供する。
(a)前記化合物またはオリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーを供給すること;および
(b)前記化合物または前記オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーを支持層上に堆積すること。
【0011】
さらに、本出願は、前記化合物を含む有機電子素子、特に、有機エレクトロルミッセンス素子を提供する。
詳細な説明
定義
本出願の目的のために、用語「有機発光素子」と「有機エレクトロルミッセンス素子」は、交換可能に使用される。
【0012】
本出願の目的のために、用語「基」と「置換基」は、同じ意味で使用される。
【0013】
本出願の目的のために、用語「置換された」は、本出願で定義されるとおりの置換基Rを示すことを意味する。
【0014】
本出願の式においては、二重結合は、芳香族または複素環式芳香族構造における芳香族結合を示すために使用され得る。
【0015】
本出願において「M-効果」として示されるメソメリ−効果は、そのp-もしくはπ-軌道と分子全体残部のp-もしくはπ-軌道との重複に基づく置換基または基の結果であると考えられる。非局在化がそこで導入されるかまたは拡張され、電荷が置換基へとまたは置換基から流れ得る。International Union of Pure and Applied Chemistry, Compendium of Chemical Technology, Gold Book, Version 2.3.2, 2012-08-19.を参照されたい。+M-効果(正のM-効果)をもつ基は、メソメリ−系への電子密度を与える。−M-効果(負のM-効果)をもつ基は、メソメリ−系から電子密度を受け入れる。
【0016】
本出願において、Rは、出現毎に独立して、H、D、F、Cl、Br、I、B(OR、CHO、C(=O)R、CR=C(R、CN、C(=O)OR、C(=O)N(R、Si(R、N(R、NO、P(=O)(R、OSO、OR、S(=O)R、S(=O)、OH、SH、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、2〜20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(ここで、これらの基は、1以上の基Rにより置換されてよく、これらの基中の1以上のCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=S、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOで置き代えられてよく、ここで、これらの基中の1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)または、1以上の基Rにより置換され得る5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、1以上の基Rにより置換され得る5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または、1以上の基Rにより置換され得る5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基より成る基から選ばれ;ここで、2個以上の基Rは、たがいに結合し、脂肪族、芳香族もしくは複素環式芳香族環を形成してよい。
【0017】
本出願において、Rは、出現毎に独立して、H、D、F、1〜20個のC原子を有するアルキル、1〜20個の芳香族炭素原子を有する芳香族基、1〜20個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族基であって、ここで、芳香族基および複素環式芳香族基は、1〜20個の炭素原子を有するアルキルで置換されてよい。Rに対して、1〜20個のC原子を有するアルキルの好ましい例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、ネオヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチルおよび2-エチルヘキシルより成る基から選ばれ得る。Rに対して、1〜20個の芳香族炭素原子を有する芳香族基および1〜20個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族基の好ましい例は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ベンズフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、クアテルフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、cis-もしくはtrans-インデノフルオレン、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナンスロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザピレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールと1〜20個のC原子を有するアルキルをもつアルキル置換誘導体より成る基から選ばれ得る。
【0018】
本出願において、Rは、出現毎に独立して、F、1〜20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(ここで、これらの基は、夫々1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、C=O、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよい。)または、夫々1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、1以上の基Rにより置換され得る5〜24個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または、1以上の基Rにより置換され得る5〜24個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基より成る基から選ばれ;ここで、同じ炭素原子に結合する2個のRは、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成し、それによりスピロ構造を形成してよいか、またはRは、隣接する基RもしくはRと一緒になって脂肪族環を形成することができる。
【0019】
本発明の目的のために、直鎖、分岐あるいは環状アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、ネオ-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、ネオ-ヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニルおよびそれぞれの置換された誘導体より成る基から選ばれてよく、ここで、それらは、1以上の基Rにより置換されてよく、これらの基中の1以上のCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=S、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOで置き代えられてよく、ここで、これらの基中の1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。
【0020】
本発明の目的のために、直鎖もしくは分岐アルコキシおよびチオアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチチオル、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニルチオル、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオ、オクチニルチオおよびそれぞれの置換された誘導体より成る基から選ばれてよく、ここで、それらは、1以上の基Rにより置換されてよく、これらの基中の1以上のCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=S、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOで置き代えられてよく、ここで、これらの基中の1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。
【0021】
本発明の目的のために、芳香族環構造は、好ましくは、6〜60個の芳香族環原子、最も好ましくは、6〜30個の芳香族環原子を含む。本発明の目的のために、複素環式芳香族環構造は、5〜60個の芳香族環原子、最も好ましくは、5〜30個の芳香族環原子を含み、そのうちの少なくとも1個はヘテロ原子である。適切なヘテロ原子は、N、Oおよび/またはSより成る群から選ばれてよい。ここで使用される用語「芳香族環構造」および「複素環式芳香族環構造」は、数個のアリールもしくはヘテロアリール基が非芳香族単位により結合された構造であってよい。好ましくは、このような非芳香族単位は、HおよびD以外の多くとも10%の原子を芳香族環もしくは複素環式芳香族環構造中に含む。適切な非芳香族単位の例は、C、Si、NおよびOより成る群から選ばれる原子を持つsp混成原子、sp混成C原子、sp混成N原子、sp混成C原子より成る群から選ばれてよい。本出願の目的のために、たとえば9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等のような構造も、2個以上のアリール基が、たとえば、直鎖あるいは環状アルキル、アルケニルもしくはシリル基のアルキニル基により連結される構造であるから、芳香族環構造とみなされるべきである。さらに、本出願の目的のために、たとえば、ビフェニル、テルフェニルもしくはジフェニルトリアジン等の2個以上のアリールもしくはヘテロアリール基が、1以上の単結合を介して互いに結合する構造も、芳香族もしくは複素環式芳香族環構造とみなされるべきである。
【0022】
適切な芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の例は、各々、上記定義した基により置換されていてもよく、任意の所望の位置を介して、本出願で定義される芳香族または複素環式芳香族構造に随意に連結していてもよいが、好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ベンズフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、クアテルフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、cis-もしくはtrans-インデノフルオレン、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナンスロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザピレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン、ベンゾチアジアゾールと任意の組み合わせとその誘導体より成る基から選ばれる。
【0023】
アリールもしくはヘテロアリール基の例は、前記基は、上記定義されたとおりに置換されていてもよく、任意の位置で本出願で定義される芳香族または複素環式芳香族構造に連結していてもよいが、好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ベンズアントラセン、ベンズナフタセン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナンスロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールり成る基から選ばれる。
【0024】
本出願の目的のために、用語「アリールオキシ基」と「ヘテロアリールオキシ基」は、2価(エーテル型)O原子を介して共有結合する上記定義されたとおりのアリールおよびヘテロアリール基を各々示すために使用される。
【0025】
本出願の目的のために、用語「アラルキル基」と「ヘテロアラルキル基」は、アリールおよびヘテロアリール基が1〜20個のC原子を有するアルキル基で置換されたアリールおよびヘテロアリール基を各々示すために使用され、ここで、アルキル基中で、任意のHもしくはD原子もしくは任意のCH基は、上記言及した基で置換されてよく、ここで、アルキル基は、アリールもしくはヘテロアリール基を化合物の残部に結合するために使用される。
化合物
一般的に述べると、本発明の化合物は、ここで定義されるとおりの電子供与体、電子受容体と立体的にかさ高い基により置換された6員環構造により特徴付けられる。
【0026】
同様の化合物は、H. Uoyama et al., Nature, Vol. 492, 13 December 2012, pages 234-238に最近開示された。
【0027】
本発明の化合物は、以下の一般式(I)により表すことができ;
【0028】
【化2】
【0029】
式中、Q、Q、Z、ZおよびRは、以下に定義されるとおりであるが、ただし、式(I)の化合物は、以下に定義されるとおり少なくとも一つの基CRと少なくとも一つの基CRを含む。
【0030】
基QとQは、互いに独立して、N、CR、CRおよびCRより成る基から選ばれる。より好ましくは、それらは、互いに独立して、N、CRおよびCRより成る基から選ばれる。最も好ましくは、それらは、互いに独立して、CRまたはCRである。
【0031】
基ZとZは、互いに独立して、N、CRおよびCRより成る基から選ばれる。最も好ましくは、それらは、互いに独立して、CRまたはCRである。
【0032】
基Rは、−M-効果を持つ基である。基Rは、+M-効果を持つ基である。このような基は当業者に周知であり、有機化学の任意の通常の教科書に見出すことができる。基Rは、出現毎に-一以上のこのような基が、存在するならば-互いに独立して選ばれる。また、基Rは、出現毎に-一以上のこのような基が、存在するならば-互いに独立して選ばれる。
【0033】
式(I)の化合物の例は、以下の式(I−a)〜(I−h)により例示され;
【0034】
【化3】
【0035】
式中、
、RおよびRは、ここで定義されるとおりである。式(I−e)が、特によく適している。
【0036】
好ましくは、式(I)の化合物は、少なくとも二つのここで定義されるとおりの基Rを含む。より好ましくは、式(I)の化合物は、少なくとも二つの同一の基Rを含む。最も好ましくは、式(I)の化合物は、二つの同一の基Rを含む。
【0037】
好ましくは、式(I)の化合物は、少なくとも二つのここで定義されるとおりの基Rを含む。より好ましくは、式(I)の化合物は、少なくとも二つの同一の基Rを含む。最も好ましくは、式(I)の化合物は、二つの同一の基Rを含む。
基R
基Rの好ましい例は、フルオロアルキル、F、BR、B(OR、CHO、C(=O)R、CN、C(=O)OR、C(=O)N(R、CR=C(CN)、N、NO、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)、ヘテロアリール、1以上の電子吸引基で置換されたヘテロアリールおよび1以上の電子吸引基で置換されたアリールより成る群から選ばれ、ここで、電子吸引基は、フルオロアルキル、F、B(OR、CHO、C(=O)R、CN、C(=O)OR、C(=O)N(R、NO、P(=O)(R、S(=O)R、S(=O)より成る基から選ばれ、Rは、上記定義されるとおりである。
【0038】
より好ましくは、出現毎のRは、独立して、フルオロアルキル、F、C(=O)R、CN、ヘテロアリール、1以上の電子吸引基で置換されたヘテロアリールおよび1以上の電子吸引基で置換されたアリールより成る群から選ばれ、ここで、電子吸引基は、フルオロアルキル、F、C(=O)RおよびCNより成る基から選ばれ、Rは、上記定義されるとおりである。
【0039】
さらにより好ましくは、出現毎のRは、独立して、フルオロアルキル、F、CN、ヘテロアリール、1以上の電子吸引基で置換されたヘテロアリールおよび1以上の電子吸引基で置換されたアリールより成る群から選ばれ、電子吸引基は、フルオロアルキル、F、CNより成る基から選ばれる。
【0040】
なおさらにより好ましくは、出現毎のRは、独立して、F、CNより成る基から選ばれる。
【0041】
最も好ましくは、Rは、CNである。
【0042】
基R
基Rの好ましい例は、一般式(N−a)の基より成る基から選ばれてよく;
【0043】
【化4】
【0044】
式中、mは、0または1であり、Arは、5〜30個の芳香族環原子を有する置換あるいは非置換芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり、Rは、上記で定義されるとおりである。mが0である場合には、そこで、基Arが、式(N−a)の基中に存在する。
【0045】
の他の好ましい例は、一般式(N−b)の基より成る基から選ばれてよく;
【0046】
【化5】
【0047】
式中、mとArは、上記で定義されるとおりであり、Arは、5〜30個の芳香族炭素原子を有する置換あるいは非置換芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;ここで、2個の基Arは、基Yにより連結されてよく、その結果、N-Ar基のN原子と一緒になって環を形成する。
【0048】
適切な連結基Yは、たとえば、単結合、BR、C(R、Si(R、NR、PR、P(=O)R、P(=S)R、O、S、S=OおよびS(=O)より成る基から選ばれてよい。
【0049】
好ましくは、前記連結基Yは、単結合、BR、C(R、Si(R、NR、P(=O)R、O、SおよびS(=O)より成る基から選ばれてよい。
【0050】
より好ましくは、前記連結基Yは、単結合、BR、C(R、NR、P(=O)R、OおよびS(=O)より成る基から選ばれてよい。
【0051】
さらにより好ましくは、前記連結基Yは、単結合、C(R、NRおよびOより成る基から、代替として、単結合、NRおよびOより成る基から選ばれてよい。
【0052】
なおさらにより好ましくは、前記連結基Yは、単結合、およびOより成る基から選ばれてよい。
【0053】
最も好ましくは、前記連結基Yは、単結合である。
【0054】
とRは、上記で定義されるとおりである。
【0055】
出現毎に前記連結基Yは、同一か異なってよい。好ましくは、Yは、出現毎に同一である。
【0056】
特に適切なのは、式(N−b)の基であり、ここで、-NArは、すべて置換されても非置換でもよい芳香族アミン、複素環式芳香族アミン、カルバゾール、アザカルバゾール、縮合カルバゾール、縮合アザカルバゾール、5,10-ジヒドロフェナザボラン、9,10-ジヒドロアクリジン、9,10-ジヒドロ-10-シラ-アクリジン、9,10-ジヒドロ-フェナジン、10-ヒドロ-フェノキサジンおよび10-ジヒドロ-フェンチアジンより成る基から選ばれる。
【0057】
適切な芳香族アミンの例は、以下の式(N−1)〜(N−6)の基により例示される。
【0058】
【化6】
【0059】
カルバゾールとアザカルバゾールおよび各々の縮合誘導体の適切な例は、以下の式(N−7)〜(N−17)の基により例示される。
【0060】
【化7-1】
【0061】
【化7-2】
【0062】
5,10-ジヒドロフェナザボラン、9,10-ジヒドロアクリジン、9,10-ジヒドロ-10-シラアクリジン、9,10-ジヒドロ-フェナジン、10-ヒドロ-フェノキサジンおよび10-ジヒドロ-フェンチアジン適切な例は、以下の式(N−18)〜(N−23)の基により例示される。
【0063】
【化8】
【0064】
上記式(N−1)〜(N−23)において、
Xは、NまたはCRであり、Rは、Rに対して上記定義されるとおりであり;
は、BR、CR、NR、OまたはS、好ましくは、CR、NR、OまたはS、最も好ましくは、CRまたはNRであり、Rは上記定義されるとおりであり;
は、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、置換アリールもしくは置換ヘテロアリールであり、置換される場合には、好ましくは、2-位もしくは6-位で、アルキル、アリールもしくはCNで置換され;
は、アルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、置換アリールもしくは置換ヘテロアリールであり、随意に上記定義されるとおりの基Yにより連結されてよい。
基R
基Rは、立体的にかさ高い基である。本出願において、用語「かさ高い」は、実質的な空間体積を必要とし、このような基Rが位置する分子側からの物理的アクセスを遮断する基を示すために使用される。
【0065】
適切な基Rは、独立して、sec-アルキル、tert-アルキル、sec-フルオロアルキルおよびtert-フルオロアルキルより成る基から選ばれ、ここで、2個の隣接する基CRは、一緒になって、5、6もしくは7員環を形成してよい。
【0066】
の特別な例は、イソプロピルとtert-ブチルである。
【0067】
2個の隣接する基CR-が、一緒になって、5、6もしくは7員環を形成する例は、以下の式(II−A)〜(II−G)により例示され;
【0068】
【化9】
【0069】
式中、A、A、A、GとRは、以前以後に定義されるとおりである。式(II−A)、(II−B)、(II−D)および(II−E)が好ましい。式(II−A)と(II−B)が、最も好ましい。
【0070】
式(II−A)〜(II−G)中の破線は、式(I)の6員環構造への結合を示すように、式(II−A)〜(II−G)の5、6もしくは7員環が、式(I)の6員環構造に縮合することが留意される。
【0071】
Gは、1,2もしくは3個のC原子をもつ置換もしくは非置換アルカンジイル、-CR=CR-または1以上の基Rにより置換されてよい5〜14個の芳香族環原子を有する置換もしくは非置換オルト結合アリーレンもしくはヘテロアリーレン基より成る基から選ばれ、Rは、上記定義されるとおりである。
【0072】
基AとAは、出現毎に独立して、C(R、O、S、NRおよびC(=O)より成る基から選ばれ、Rは、上記定義されるとおりである。
【0073】
基Aは、出現毎に独立して、C(R、O、S、NRおよびC(=O)より成る基から選ばれ、Rは、上記定義されるとおりであり、および2個の基Aが、互いに隣接する場合には、A-Aは、互いに独立して上記定義されるRにより置換されてよい5〜14個の芳香族環原子を有するオルト結合アリーレンもしくはヘテロアリーレン基より成る基から選ばれ、それぞれは、他とは独立して、上記定義されるとおりのRにより置換されてよい。
【0074】
基A、AおよびAは、O、SおよびNRから選ばれる2個の基(Rは、Aの場合にRであり、およびAとAの場合にRである。)が互いに隣接しない限り、出現毎に独立して、上記定義されるとおりの各基から選ばれる。
【0075】
式(II−A)の好ましい例は、以下の式(II−A−a)〜(II−A−e)から選ばれてよく;
【0076】
【化10】
【0077】
式中、RとRは、上記定義されるとおりであり、A、AおよびAは、互いに独立して、OおよびNRより成る基から選ばれる。
【0078】
式(II−B)の好ましい例は、以下の式(II−B−a)〜(II−B−f)から選ばれてよく;
【0079】
【化11】
【0080】
式中、RとRは、上記定義されるとおりであり、A、AおよびAは、互いに独立して、OおよびNRより成る基から選ばれる。
【0081】
式(II−C)の好ましい例は、以下の式(II−C−a)〜(II−C−e)から選ばれてよく;
【0082】
【化12】
【0083】
式中、RとRは、上記定義されるとおりであり、A、AおよびAは、互いに独立して、OおよびNRより成る基から選ばれる。
【0084】
式(II−D)の好ましい例は、RがH、D、FおよびCFより成る基から選ばれるものである。さらに、Aは、好ましくは、C(RまたはOであり、最も好ましくは、C(Rである。式(II−D)の好ましい例は、以下の式(II−D−a)〜(II−D−e)から選ばれてよく;
【0085】
【化13】
【0086】
式中、R、RとGは、上記定義されるとおりである。
【0087】
式(II−E)、(II−F)および(II−G)の好ましい例は、RがH、D、FおよびCFより成る基から選ばれるものである。好ましいAは、C(Rである。したがって、式(II−E)、(II−F)および(II−G)の特に好ましい例は、以下の式(II−E−a)、(II−F−a)および(II−G−a)から選ばれてよく;
【0088】
【化14】
【0089】
式中、R、RとGは、上記定義されるとおりである。
【0090】
さらに、式(II−C)、(II−D)、(II−F)、(II−G)、(II−D−a)、(II−D−b)、(II−D−c)、(II−E−a)、(II−F−a)および(II−G−a)におけるGが、式-C(R-C(R-のエタンジオールであることが好ましく、ここで、Rは、出現毎に独立して、H、1〜4個のC原子を有するアルキル、6〜10個のC原子を有するオルト-アリーレンであって、前記オルト-アリーレンは、1〜4個のC原子を有するアルキルもしくはフェニルにより置換されてよい。しかしながら、Rは、Hであることが好ましい。
【0091】
式(II−A)〜(II−G)に関して、各例のRは、好ましくは、出現毎に独立して、F、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜20個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基および5〜14個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれ;ここで、同じC原子上の2個の基Rは、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成し、それによりスピロ構造を形成してよく、隣接するC原子上の2個の基Rは、脂肪族環構造を形成してよい。これらの基の各々において、一以上のH原子は、D、Fおよび1〜10個のC原子を有するアルキルより成る基から選ばれる一つにより置き代えられてよい。
【0092】
式(II−A)〜(II−G)に関して、各例のRは、最も好ましくは、出現毎に独立して、F、1〜3個のC原子を有する直鎖アルキル、メチルが好ましく、および5〜12個の環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれ;ここで、同じC原子上の2個の基Rは、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成し、それによりスピロ構造を形成してよく、隣接するC原子上の2個の基Rは、脂肪族環構造を形成してよい。これらの基の各々において、一以上のH原子は、D、Fおよび1〜10個のC原子を有するアルキルより成る基から選ばれる一つにより置き代えられてよい。
【0093】
式(II−A)の特に好ましい例は、以下の基から選ばれてよい。
【0094】
【化15-1】
【0095】
【化15-2】
【0096】
【化15-3】
【0097】
式(II−B)の特に好ましい例は、以下の基から選ばれてよい。
【0098】
【化16】
【0099】
式(II−C)、(II−F)および(II−G)の特に好ましい例は、以下の基から選ばれてよい。
【0100】
【化17】
【0101】
式(II−D)の特に好ましい例は、以下の基から選ばれてよい。
【0102】
【化18】
【0103】
式(II−E)の特に好ましい例は、以下の基から選ばれてよい。
【0104】
【化19】
【0105】
特に、このような縮合2環構造の使用は、キラル基を導くことができる。溶解性の理由で、純粋なアイソマーよりもむしろ、エナンチオマーのブレンドの使用が好ましい可能性がある。
【0106】
一般式(I)の化合物の特に適切な例は、以下の式(I−1)式(I−314)により例示される。
【0107】
【化20-1】
【0108】
【化20-2】
【0109】
【化20-3】
【0110】
【化20-4】
【0111】
【化20-5】
【0112】
【化20-6】
【0113】
【化20-7】
【0114】
【化20-8】
【0115】
【化20-9】
【0116】
【化20-10】
【0117】
【化20-11】
【0118】
【化20-12】
【0119】
【化20-13】
【0120】
【化20-14】
【0121】
【化20-15】
【0122】
【化20-16】
【0123】
【化20-17】
【0124】
【化20-18】
【0125】
【化20-19】
【0126】
【化20-20】
【0127】
【化20-21】
【0128】
【化20-22】
【0129】
【化20-23】
【0130】
【化20-24】
【0131】
【化20-25】
【0132】
【化20-26】
【0133】
【化20-27】
【0134】
【化20-28】
【0135】
【化20-29】
【0136】
【化20-30】
【0137】
【化20-31】
【0138】
【化20-32】
【0139】
【化20-33】
【0140】
【化20-34】
【0141】
【化20-35】
【0142】
【化20-36】
【0143】
【化20-37】
【0144】
【化20-38】
【0145】
【化20-39】
【0146】
【化20-40】
【0147】
【化20-41】
【0148】
【化20-42】
【0149】
【化20-43】
【0150】
【化20-44】
【0151】
【化20-45】
【0152】
【化20-46】
【0153】
オリゴマー、ポリマー、デンドリマー
一般式(I)の化合物、特に、反応性基を含む化合物は、各々のオリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーの製造のためのモノマーとして使用され得る。したがって、本発明は、また、一般式(I)の化合物を含むオリゴマー、ポリマーおよびデンドリマーを提供する。
【0154】
反応性基の例は、一以上のこのような基が存在するならば、互いに独立して、Cl、Br、I、ボロン酸、ボロン酸エステル、アミン、末端C-C二重結合を持つアルケニル基、末端C-C三重結合を持つアルキニル基、オキシラン、オキセタン、環付加、特に、1,3-双極子環付加を受けることができる基(たとえば、ジエンもしくはアジド等)、カルボン酸誘導体、アルコールおよびシランである。このような反応性基は、一般式(I)の化合物において、たとえば、基R、Rおよびは中におよび/または環炭素原子、たとえば、任意の一以上の基Q、Q、ZおよびZに上に直接含まれ得る。式(I)の化合物中の反応性基の位置に応じて、化合物(I)は、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーの主鎖および/または側鎖中についには位置し得る。
【0155】
本出願の目的のためにオリゴマーは、少なくとも3個の反復単位を含むと理解され、ポリマーは、少なくとも10個の反復単位を含むと理解され、このような反復単位は、少なくとも一つの一般式(I)の化合物を含む。式(I)の化合物に関する上記定義は、ここでもあてはまることが留意される。
【0156】
本発明のオリゴマー、ポリマーおよびデンドリマーは、共役、部分共役もしくは非共役であってよい。それらは、直鎖、分岐鎖もしくは樹状であってよい。直鎖状の構造においては、反復単位は、式(I)の適切な化合物から成るか、または二価の基、たとえば、置換もしくは非置換アルキレン基により、ヘテロ原子により、または二価の芳香族もしくは複素環式芳香族基により、結合し得るかの何れかである。分岐および樹状構造においては、3個以上の一般式(I)の化合物は、3価もしくはより多価の基、たとえば、3価もしくはより多価の芳香族もしくは複素環式芳香族基により結合してもよく、分岐もしくは樹状オリゴマーまたはポリマーを生じる。
【0157】
本発明のオリゴマーまたはポリマー、少なくとも一つのさらなるモノマーの存在下、ホモ重合するか共重合されてよく、以下で「コモノマー」と称される。適切なコモノマーは、フルオレン(たとえば、EP842208もしくはWO00/22026に開示されたもの)、スピロビフルオレン(たとえば、EP707020、EP894107もしくはWO06/061181に開示されたもの)、パラ-フェニレン(たとえば、WO1992/18552に開示されたもの)、カルバゾール(たとえば、WO04/070772もしくはW02004/113468に開示されたもの)、チオフェン(たとえば、EP1028136に開示されたもの)、ジヒドロ-フェナントレン(たとえば、WO 2005/014689もしくはWO 2007/006383に開示されたもの)、cis-およびtrans-インデノフルオレン(たとえば、WO2004/041901もしくはWO2004/113412に開示されたもの)、ケトン(たとえば、WO2005/040302に開示されたもの)、フェナントレン(たとえば、WO2005/104264もしくはWO2007/017066に開示されたもの)または任意の一以上のこれらのブレンドのリストから選ばれる。
【0158】
本発明のオリゴマー、ポリマーおよびデンドリマーは、さらなる成分、たとえば、ビニルトリアリールアミン(たとえば、WO2007/068325に開示されたもの)もしくは金属錯体(たとえば、WO2006/03000に開示されたもの)の発光成分および/または電荷輸送成分、特に、トリアリールアミンを含むものを含んでよい。
【0159】
本発明のオリゴマー、ポリマーおよびデンドリマーは、公知の重合法により一般的に製造され得る。C-CまたはC-N結合の生成をもたらす、特に十分に適切な重合反応は、以下に言及され得る:
(A)スズキ重合;
(B)ヤマモト重合;
(C)スチル重合および
(D)ハートウイッグ-ブッフバルト重合。
【0160】
各々の重合条件を含むこれらの方法は、当業者に周知であり、文献、たとえば、WO 2003/048225、WO 2004/037887およびWO 2004/037887に詳細に記載されてもいる。
【0161】
したがって、本出願は、また、スズキ重合、ヤマモト重合、スチル重合またはハートウイッグ-ブッフバルト重合より成る群から選ばれる方法による重合によって、上記オリゴマーおよびポリマーを製造する方法を提供する。各デンドリマーは、これらの方法または類似方法により製造され得る。このようなデンドリを製造するための適切な方法は、文献、たとえば、Frechet, Jean M. J.; Hawker, Craig J., "Hyperbranched polyphenylene and hyperbranched polyesters: new soluble, three-dimensional, reactive polymers"、 Reactive & Functional Polymers (1995), 26(1-3), 127-36; Janssen, H. M.; Meijer, E. W.、 "The synthesis and characterization of dendritic molecules", Materials Science and Technology (1999), 20 (Synthesis of Polymers), 403-458; Tomalia, Donald A., "Dendrimer molecules", Scientific American (1995), 272(5), 62-6、WO 2002/067343 A1およびWO 2005/026144 A1に記載されている。
【0162】
本発明の化合物とポリマーは、混合物もしくはポリマーブレンド中で、たとえば、モノマー化合物と一緒にまたは電荷輸送、半導性、電気伝導性、光子伝導性および/または発光半導体特性を有する他のポリマーと一緒にまたは、たとえば、OLED素子での中間層もしくは電荷ブロック層としての使用のための正孔ブロックもしくは電子ブロック特性を有するポリマーと共に使用することができる。したがって、本発明の別の側面は、一以上の本発明のポリマーと一以上の上記言及した特性を有する一以上のさらなるポリマーとを含むポリマーブレンドに関する。これらのブレンドは、先行技術に記載され、当業者に知られた通常の方法により調製することができる。典型的には、ポリマーは、互いに混合されるか、または適切な溶媒と結合した溶液中に溶解される。
調合物
本発明の別の側面は、一以上の式(I)の化合物または以前以後に記載されたとおりのオリゴマー、ポリマー、デンドリマーもしくはポリマーブレンドと一以上の有機溶媒を含む調合物に関する。このような調合物は、溶液、分散液もしくはエマルジョンであり得る。このような調合物の製造は、周知であり、たとえば、WO 2002/072714、WO 2003/019694とそこに引用された文献に記載されている。
【0163】
適切な有機溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メチルベンゾエート、メシチレン、テトラリン、1,2-ジメトキシベンゼン(「ベラトール」として通常知られる。)、テトラヒドロフラン(通常「THF」と略される。)、メチル-テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン(オキサン)、クロロベンゼン、ジオキサン、フェノキシトルエン、特に、3-フェノキシトルエン、(-)-フェンコンヌ、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタリン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、ブチルベンゾエート、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、エチルベンゾエート、インダン、N-メチル-2-ピロリドン(通常、「NMP」と略される。)、p-シメン、エチルフェニルエーテル、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチル-メチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエ−テル、トリプロピレングリコールジメチルエ−テル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタンおよび任意のこれら溶媒の混合物より成る群から選ばれ得る。
【0164】
有機電子素子
本発明の化合物、オリゴマー、ポリマーおよびデンドリマーは、電子素子で活性材料として使用することができる。用語「活性材料」は、たとえば、電荷注入材料、電荷輸送材料、電荷ブロック材料、発光材料またはマトリックス材料を示すために、ここでは使用される。
【0165】
好ましくは、このような電子素子は、アノード、カソードと活性層を含み、前記活性層は前記活性材料を含む。本発明の有機電子素子は、限定するものではないが、光学、光電子、電子、エレクトロルミネッセントおよびフォトルミネッセント素子を含む。それらの例は、限定するものではないが、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光ダイオード(OLED)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機光起電力素子(OPV)、有機光検査器(OPD)、有機太陽電池、レーザーダイオード、ショットキーダイオード、光伝導体およびフォトダイオードを含む。好ましくは、本発明の素子は、有機発光ダイオードおよび有機発光トランジスタより成る群から選ばれる。最も好ましくは、本発明の素子は、有機発光ダイオードである。
【0166】
アノード、カソードおよび活性層とは別に、本発明の有機電子素子は、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、中間層および電荷生成層より成る群から選ばれる少なくとも一つのさらなる層を随意に含んでもよい。このようなさらなる層の存在(不在)は、有機素子のタイプと、各々の最終用途に依存する。
【0167】
本発明の化合物、オリゴマー、ポリマーおよびデンドリマーは、有機エレクトロルミッセンス素子で発光材料として使用されると、特に有利な特性を示すことから、このような素子の発光層で発光材料としてこれらを使用することが好ましい。
【0168】
本発明の電子素子が有機エレクトロルミッセンス素子である場合には、アノード、カソードと発光層とを含む。随意にこれらと別に、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子注入層、電子輸送層、電子ブロック層、電荷生成層、励起子ブロック層、有機p/n遷移層および無機p/n遷移層より成る群から選ばれる一以上のさらなる層を含んでもよい。一以上の正孔輸送層が、p-ドーパントを含むことも可能であり得る。p-ドーパントの例は、金属酸化物、(過)フッ素化電子不足芳香族である。適切な金属酸化物の例は、限定するものではないが、MoOおよびWOである。正孔輸送層の任意のドーピングとは独立して、一以上の電子輸層が、n-ドーパントでドープされることも可能である。随意に、たとえば、有機エレクトロルミネセンス素子中で励起子ブロック機能および/または直接電荷平衡を有する中間層も、存在するならば、二個の発光層の間に存在し得る。
【0169】
本発明の有機エレクトロルミネセンス素子は、1以上の発光層を含んでもよい。より好ましくは、そのような場合に、異なる発光層は、380nm〜750nm間に異なる最大発光波長を有し、それにより異なる色の発光が可能となり、たとえば、白色発光が生じる。この点で特に好ましいのは、3個の発光層を含む有機電子素子であり、ここで、好ましくは、これらの少なくとも一つは、本発明の化合物、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーを含み、その3個の発光層は、青色、緑色およびオレンジ色もしくは赤色発光を呈する。そのような素子の基本構造の説明については、たとえば、WO 2005/011013を参照されたい。数種の異なる発光化合物に代えて、広い波長範囲で発光し、合わせて白色発光する一つの化合物を使用することも可能である。
【0170】
本発明の好ましい1側面では、一般式(I)の化合物は、一以上の発光層中でエミッターとして使用される。
【0171】
発光層中でエミッターとして使用される場合には、式(I)の化合物は、好ましくは、一以上のマトリックス材料と組み合わせて使用される。式(I)の化合物とマトリックス材料とを含む混合物は、混合物の全体積に対して、好ましくは、0.1体積%〜99体積%、好ましくは、1体積%〜90体積%、さらにより好ましくは、3〜40体積%であり、最も好ましくは、5体積%〜15体積%の式(I)の化合物を含む。
【0172】
マトリックス材料としては、当業者に知られた任意の適切なマトリックス材料、好ましくは、マトリックス材料の三重項準位がエミッターの三重項準位よりも高いような材料を使用し得る。
【0173】
ここで使用される適切なマトリックス材料は、以下のケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、インデノカルバゾール誘導体、アザカルバゾール、バイポーラーマトリックス材料、シラン、アザボロール、ボロン酸エステル、ジアザシロール誘導体、トリアジン誘導体、亜鉛錯体、ジベンゾフラン誘導体および架橋カルバゾール誘導体より成る群から選ばれてよい。スルホキシドおよびスルホンの適切な例は、たとえば、WO 2004/013080、WO 2004/093207、WO 2006/005627もしくはWO 2010/006680に開示されている。カルバゾールの適切な誘導体は、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)、m-CBPであり、または、WO 2005/039246、US 2005/0069729、JP 2004/288381、EP 1205527、WO 2008/086851もしくはUS 2009/0134784に開示されたものである。インドロカルバゾールの適切な誘導体は、たとえば、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746に開示されたものである。インデノカルバゾールの適切な誘導体は、たとえば、WO 2010/136109もしくはWO 2011/000455に開示されたものである。アザカルバゾールの適切な例は、たとえば、EP 1617710、EP 1617711、EP 1731584、JP 2005/347160に開示されたものである。バイポーラーマトリックス材料の適切な例は、たとえば、WO 2007/137725に開示されたものである。シランの適切な例は、たとえば、WO 2005/111172に開示されたものである。アザボロールもしくはボロン酸エステルの適切な例は、たとえば、WO 2006/117052に開示されたものである。ジアザシロール誘導体の適切な例は、たとえば、WO 2010/054729に開示されたものである。ジアザホスホール誘導体の適切な例は、たとえば、WO 2010/054730に開示されたものである。トリアジン誘導体の適切な例は、たとえば、WO 2010/015306、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746に開示されたものである。
適切な亜鉛錯体は、たとえば、EP 652273もしくはWO 2009/062578に開示されたものである。適切なジベンゾフラン誘導体は、たとえば、WO 2009/148015に開示されたものである。架橋カルバゾール誘導体の適切な例は、たとえば、US2009/0136779、WO2010/050778、WO2011/042107もしくはWO2011/088877に開示されたものである。
【0174】
代替として、本発明の化合物、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーは、有機電子素子において、たとえば、電子輸送層等に存在するその他の任意の層に存在し得る。
【0175】
好ましくは、層配列は、以下のとおりである:
−アノード
−随意に、正孔注入層
−随意に、1以上の正孔輸送層
−発光層
−随意に、電子輸送層
−随意に、電子注入層、および
−カソード。
【0176】
「随意に」と示された任意の層は、得られた素子の意図する用途および/または所望の特性に応じて、存在するか存在しないかの何れかであることに留意する。
【0177】
アノードは、一般的に電気伝導材料で形成される。電気伝導材料の例は、電気伝導金属、電気伝導合金、電気伝導ポリマーおよび電気伝導金属酸化物を含む。電気伝導金属の例は、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、白金およびチタンを含む。電気伝導合金の例は、ステンレス鋼(たとえば、332ステンレス鋼、316ステンレス鋼)、金合金、銀合金、銅合金、アルミニウム合金、ニッケル合金、パラジウム合金、白金合金およびチタン合金を含む。電気伝導ポリマーの例は、ポリチオフェン(たとえば、ドープされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリアニリン(たとえば、ドープされたポリアニリン)、ポリピロール(たとえば、ドープされたポリピロール)を含む。電気伝導金属酸化物の例は、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、フッ素化錫酸化物、錫酸化物および亜鉛酸化物を含む。アノードは、真空に対して少なくとも4.5eV超の仕事関数を有する、高い仕事関数をもつ材料から形成されることが好ましい。幾つかの態様では、ブレンドもしくは組み合わせが使用される。幾つかの態様では、インジウム錫酸化物もしくはインジウム亜鉛酸化物等の透明材料のアノードを形成することが有利な可能性がある。代替として、アノードは、1以上の層、たとえば、インジウム錫酸化物の内部層とタングステン酸化物、モリブデン酸化物またはバナジウム酸化物の外部層を含み得る。
【0178】
カソードは、一般的には、電気伝導性材料、好ましくは、低い仕事関数を有する電気伝導性材料から成る。適切な材料の例は、アルカリ土類金属、主族金属もしくはランタノイド等の金属である、このような金属の特別な例は、Ca、Ba、Mg、Al、In、Yb、SmおよびEuとそれらの合金である。銀とアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属との合金、たとえば、銀とマグネシウムの合金を使用することも可能である。カソードは、一以上の層から形成されてもよく、その場合に、より高い仕事関数を有する金属もしくは合金が存在してよい。より高い仕事関数を有する金属もしくは合金の例は、Ag、Al、Ca/Ag合金、Mg/Ag合金およびBa/Ag合金である。
【0179】
幾つかの態様では、カソードは、高い誘電定数を有する材料の層を含んでもよい。適切な材料の例は、アルカリおよびアルカリ土類金属から選ばれる金属との金属フッ化物、酸化物もしくは炭酸塩である。このような材料の特定の例は、LiF、LiO、BaF、MgO、NaF、CsF、CsCOもしくはCaFである。リチウムキノリナートを使用してもよい。
【0180】
電荷輸送層のための、たとえば、正孔輸送層もしくは電子輸送層のためのさらに適切な電荷輸送材料は、たとえば、Y. Shirota et al., Chem. Rev. 2007, 107(4), 953-1010に開示されている。適切な例は、アルミニウム錯体、ジルコニウム錯体、ベンズイミダゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリジン、ピラジン、キノキサリン、キノリン、オキサジアゾール、芳香族ケトン、ラクタム、ボラーン、ジアザホスホール、ホスフィンオキシドおよびそれらの誘導体であり、たとえば、JP2000/053957、WO2003/060956、WO 2004/028217、WO 2004/080975およびWO 2010/072300に開示されている。
【0181】
正孔輸送、正孔注入もしくは電子ブロック層中で使用され得る好ましい正孔輸送材料の例は、インデノフルオレンアミン誘導体(たとえば、WO 06/122630もしくはWO95/09147に開示されたもの)、アミン(たとえば、EP1661888に開示されたアミンもしくはWO06/100896に開示されたもの)、ヘキサアザトリフェニレン誘導体(たとえば、WO 01/049806に開示されたもの)、縮合アリールを持つアミン誘導体(たとえば、US5,061,569に開示されたもの)、モノベンゾインデノフルオレンアミン(たとえば、WO08/006449に開示されたもの)、ジベンゾインデノフルオレンアミン(たとえば、WO 07/140847に開示されたもの)、スピロビフルオレンアミン(たとえば、WO2012/034627に開示されたもの)、フルオレンアミン、スピロジベンゾピランアミンおよびジアクリジン誘導体である。
【0182】
水および空気の存在の損傷効果を回避しまたは減じるために、本発明の素子は、引き続き密封され、封止される。
【0183】
上記定義されるとおりの本発明の化合物、オリゴマー、ポリマーもしくはデンドリマーまたは代替としての上記定義されるとおりの調合物は、電子素子、特に、有機発光ダイオ−ド(OLED)の製造に使用されてよい。特に、それらは、有機発光ダイオ−ドの発光層の製造に役立つ。
【0184】
本発明の有機電子素子は、任意の適切な方法で製造され得る。たとえば、そのような有機電子素子に含まれる1以上の層は、昇華により、有機気相堆積(OVPD)により、もしくはキャリアガス昇華により、有機気相ジェット印刷により、スピンコーティングにより、または、たとえばスクリーン印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷もしくは光誘起熱画像化のような任意の所望の印刷法により堆積され得る。
【0185】
したがって、本発明は、本発明の電子素子の製造方法をも提供し、前記方法は、以下の工程を含む:
(a)本発明の化合物、ポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーを供給すること;および
(b)前記化合物、ポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーを支持層上に堆積すること。
【0186】
本発明の有機素子は、たとえば、照明用途の表示装置、光源に、たとえば、医療および/または美容用途において使用し得る。
【0187】
本発明の化合物、オリゴマー、ポリマーおよびデンドリマーは、計算により確認されたS1準位とT1準位との間の減少されたエネルギー差の故に、有機発光素子において、特に有利な特性を有すると考えられる。理論に束縛されることを望むものではないが、これは、本発明の化合物の6員環上の置換基の特別な配置の結果であると考えられる。計算は、さらに、本発明の化合物が青色領域で発光し、それ自体が、有機発光化合物での使用のために特に望ましいことを示す。
【0188】

以下の合成を、別段の指定がない限り、無水溶媒中で不活性雰囲気下で実施する。溶媒及び試薬を、たとえばSigma-ALDRICHまたはABCRから購入することができる。
以下の略語を使用する:テトラヒドロフランには“THF”、ジメチルホルムアミドには“DMF”、フッ素化エチレンプロピレンには“FEP”、ジクロロメタン(CHCl)には“DCM”、核磁気共鳴には“NMR”。
【0189】
例S1−5,6-ジブロモ-1,1,2,2,3,3-ヘキサメチルインダン(S1)の合成
【0190】
【化21】
【0191】
2000mlのジクロロメタン中101.2g(500ミリモル)の1,1,2,2,3,3-ヘキサメチル-インダン(CAS番号91324-94-6)の溶液に、1.3gの無水の塩化鉄(III)を添加する。次いで、温度が25℃を超えないように、必要ならば冷水浴で冷却することにより、遮光下、64.0ml(1.25モル)の臭素と、300mlのジクロロメタンとの混合物を添加する。反応混合物を、室温で16時間撹拌した後、500mlの亜硫酸ナトリウム飽和水溶液をゆっくりと添加し、続いて、水相を分離させる。有機相を連続して、各回、1000mlの水で三度洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水させ、シリカゲルの短いカラムを通して濾過する。その後、溶媒を蒸発させる。得られた固形物を、約100mlのエタノールから再結晶化させる。
【0192】
以下の化合物S2〜S5を適宜、合成することができる:
【0193】
【化22】
【0194】
例S6−5,6-ジシアノ-1,1,2,2,3,3-ヘキサメチルインダン(S6)の合成
【0195】
【化23】
【0196】
合成を、T. Schareina et al., Chem. Eur. J., 2007, 13, 6249により実施することができる。オートクレーブ中で、36.0g(100ミリモル)の5,6-ブロモ-1,1,2,2,3,3-ヘキサメチルインダン(S1)と、18.4g(50ミリモル)のK[Fe(CN)](無水、CAS番号13943-58-3)と、1.9g(10ミリモル)のヨウ化銅(I)と、26.4ml(200ミリモル)の1-ブチル-イミダゾールと、200mlのトルエンとの混合物を110℃まで20時間、加熱する。室温まで冷却後、反応混合物を300mlのトルエンで希釈する。有機相を連続して、各回、300mlの水で三度洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水させ、セライトを通して濾過する。真空でトルエンを除去した後、残留物をジメチルホルムアミド/エタノールから二度、再結晶化させる。
【0197】
以下の化合物S7〜S11を適宜、合成することができる:
【0198】
【化24】
【0199】
例S12−4,7-ジブロモ-5,6-ジシアノ-1,1,2,2,3,3-ヘキサメチル-インダン(S12)の合成
【0200】
【化25】
【0201】
合成を、B. Du et al., J. Org. Chem., 2013, 78, 2786により実施することができる。12.6g(50ミリモル)の5,6-ジシアノ-1,1,2,2,3,3-ヘキサメチルインダン(S6)と、21.4g(120ミリモル)のN-ブロモスクシンイミドと、1.1g(5ミリモル)の酢酸パラジウム(II)と、951mg(5ミリモル)のp-トルエンスルホン酸一水和物と、300mlの1,2-ジクロロエタンとの混合物を80℃で30時間、撹拌する。室温まで冷却後、反応混合物を連続して、各回、300mlの5重量%のアンモニア水溶液で三度洗浄し、次いで飽和塩化ナトリウム溶液で一度、洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水させ、セライトを通して濾過する。真空で溶媒を除去した後、残留物を、1:1の体積比の酢酸エチル/n−ヘプタンとともに、シリカゲルにおいてクロマトグラフィにより精製する。
【0202】
以下の化合物S13〜S17を適宜、合成することができる:
【0203】
【化26】
【0204】
例S18−1,1,3,3-テトラメチル-インダン-5,6-ジアミンの合成
工程A:5,6-ジニトロ-1,1,3,3-テトラメチル-インダン(S18a)の合成
【0205】
【化27】
【0206】
0℃で、350mlの硝酸(100%)を、87.2g(500ミリモル)の1,1,3,3-テトラメチルインダン(CAS番号4834-33-7)と、350mlの硫酸(95%)とのよく撹拌した混合物へ、温度が+5℃を超えないように、ゆっくりと添加する。次いで、反応混合物を2〜3時間の期間にわたって室温までゆっくりと温めさせ、その後、6kgの氷と2kgの水とをよく撹拌した混合物へ添加する。pHを、40重量%の水酸化ナトリウム水溶液の添加によって8〜9に調節する。その後、各回、1000mlの酢酸エチルで三度抽出し、結合した有機相を各回、1000mlの水で二度洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水させ、結晶化が始まるまで真空で酢酸エチルをほぼ完全に除去する。次いで結晶化を、500mlのヘプタンの添加により完了させる。ベージュ色の結晶を真空濾過により分離させ、真空で脱水させる。
【0207】
工程B−1,1,3,3-テトラメチル-インダン-5,6-ジアミン(S18)の合成
【0208】
【化28】
【0209】
1200mlのエタノール中、126.9g(480ミリモル)の5,6-ジニトロ-1,1,3,3-テトラメチルインダン(S18a)を、触媒として炭素上に10gのパラジウムを存在させた状態で、3バールの水素圧力下で24時間、水素化させる。反応混合物をセライトのベッドで、連続して二度濾過する。エタノールを除去する。得られた茶色の固形物を、約160℃の温度で、10−4ミリバールの圧力で、クーゲルロール蒸留により精製する。
【0210】
以下の化合物S19〜S23を適宜、合成することができる:
【0211】
【化29】
【0212】
例S24−5,6-ジフルオロ-1,1,3,3-テトラメチルインダン(S24)の合成
【0213】
【化30】
【0214】
合成を、K. Sasaki et al., J. Fluorine Chem., 1996, 76, 59により実施する。FEPフラスコ中で、60:40重量比である100mlのHFとピリジンとの混合物を5℃まで冷却する。次いで、6.4g(30ミリモル)の1,1,3,3-テトラメチル-インダン-5,6-ジアミン(S18)と4.5g(65ミリモル)の硝酸ナトリウムとを、連続して小分けして添加する。反応混合物を10℃まで温めておき、45分間撹拌する。その後、11.4g(60ミリモル)の塩化スズ(II)と18.1g(60ミリモル)の三フッ化二水素テトラブチルアンモニウムを添加する。得られた反応混合物を次いで100℃までゆっくりと温め(注意:発泡、ガスの発生)、100℃で5時間、撹拌する。冷却後、反応混合物を1000gの氷および水へ注ぎ、その後、各回、300mlのジクロロメタンで三度、連続して抽出する。結合した有機相を次いで、300mlの飽和塩化カルシウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水させる。溶媒の除去後、最初に、9:1の体積比のn-ヘプタンとDCMとの混合物とともに、シリカゲルでクロマトグラフィにより、次いでクーゲルロール蒸留により、精製する。
【0215】
以下の化合物S25〜S29を適宜、合成することができる:
【0216】
【化31】
【0217】
例S30−4,7-ジブロモ-5,6-ジフルオロ-1,1,2,2,3,3-ヘキサメチル-インダンの合成
【0218】
【化32】
【0219】
110mlのTHF中、110ミリモルのリチウムジイソプロピルアミド(LDA)の新たに調製した溶液を、−78℃に冷却した300mlのTHF中の11.9g(50ミリモル)の5,6-ジフルオロ-1,1,3,3-テトラメチルインダンの溶液へ滴下し、次いで1時間撹拌する。続いて、200mlのTHF中の36.5g(110ミリモル)のテトラブロモメタンの溶液を素早く添加し、撹拌を30分間継続する。反応混合物を−20℃まで温めておき、20mlのメタノールの添加により止める。溶媒を除去し、残留物を9:1の体積比のn-ヘプタンとDCMとの混合物とともに、シリカゲルでクロマトグラフィにより、精製する。
【0220】
以下の化合物S31〜S35を適宜、合成することができる:
【0221】
【化33】
【0222】
例S36−4,7-ジシアノ-5,6-ジフルオロ-1,1,2,2,3,3-ヘキサメチル-インダンの合成
【0223】
【化34】
【0224】
合成を例S6にしたがって実施できるが、5,6-ブロモ-1,1,2,2,3,3-ヘキサメチルインダン(S1)のかわりに、4.0g(10ミリモル)の4,7-ジブロモ-5,6-ジフルオロ-1,1,2,2,3,3-ヘキサメチルインダン(S30)を使用する点が異なり、他の反応物のそれぞれの量をS30の量に比例して変化させる。
【0225】
以下の化合物S37〜S41を適宜、合成することができる:
【0226】
【化35】
【0227】
例B1−4,7-ビス-N-カルバゾリル-5,6-ジシアノ-1,1,2,2,3,3-ヘキサ-メチルインダン(B1)の合成
【0228】
【化36】
【0229】
合成を、B. Hu et al., Tetrahedron, 2010, 66(38), 7583にしたがって実施できる。20.5g(50リモル)の4,7-ジブロモ-5,6-ジシアノ-1,1,2,2,3,3-ヘキサメチルインダン(S12)と、33.4g(200ミリモル)のカルバゾール(CAS番号86-74-8)と、55.3g(400ミリモル)の炭酸カリウムと、635mg(10ミリモル)の銅の粉末と、26.4g(100ミリモル)の18-クラウン-6と、100gのガラスビーズ(直径4mm)と、500mlのジメチルホルムアミドとの混合物を、48時間の良好な撹拌下で、加熱して僅かに還流させ、他方で、発生した水をディーン・スターク・トラップで集め、時折除去する。冷却後、500mlの酢酸エチルを添加する。ガラスビーズと塩とを、セライトで真空濾過により除去する。濾過物を連続して、各回500mlの水で五度、500mlの飽和塩化ナトリウム水溶液で一度洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水させる。溶媒を除去した後、残留物を、連続してDMF/エタノールから五度、再結晶化させ、その後、三度の連続的な分別昇華により約10−5ミリバールの圧力下で、約310℃の温度で精製する。
【0230】
以下の化合物B2〜B7を適宜、合成することができる:
【0231】
【化37-1】
【0232】
【化37-2】
【0233】
【化37-3】
【0234】
例B8−4,7-ジシアノ-5,6-ビス-N-カルバゾリル-1,1,2,2,3,3-ヘキサ-メチルインダン(B8)の合成
【0235】
【化38】
【0236】
50mlのTHF中の960mg(40ミリモル)の水素化ナトリウムの懸濁液を0℃まで冷却する。次いで、6.7g(40ミリモル)のカルバゾール(CAS番号86-74-8)を小分けして添加する(注意:水素の発生、発泡)。室温まで温めた後、反応混合物を1時間撹拌し、それに続いて、50mlのTHF中の2.9g(10ミリモル)の4,7-ジシアノ-5,6-ジフルオロ-1,1,2,2,3,3-ヘキサメチルインダン(S36)の溶液をゆっくりと添加する。発熱反応が止まった後、50℃で16時間の撹拌を継続し、50mlのエタノールを添加し、真空で溶媒を除去する。残留物を300mlのDCMに溶解させる。有機相を連続して、各回200mlの水で三度、100mlの飽和塩化ナトリウム水溶液で一度洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水させ、次いでセライトで濾過する。溶媒の除去後、残留物をDMF/エタノールから五度、再結晶化させ、次いで、三度の連続的な分別昇華により、約10−5ミリバールの圧力下で、約320℃の温度で精製する。
【0237】
以下の化合物B9〜B13を適宜、合成することができる:
【0238】
【化39-1】
【0239】
【化39-2】
【0240】
【化39-3】
【0241】
例−OLEDの製造
a)真空処理された素子
本発明によるOLEDおよび先行技術にしたがうOLEDは、WO 2004/058911にしたがう一般的なプロセスにより製造されるが、ここに記載される状況(層の厚さの変化、使用する材料)に適合される。ガラス板は、構造化ITO(インジウムスズ酸化物、50nm)とともに、OLEDが適用される基板を形成する。基板は、湿式洗浄プロセスにより洗浄され(皿洗い機、Merck社市販のExtran洗浄剤)、次いで250℃で15分間、乾燥され、使用前にOプラズマで処理される。
【0242】
OLEDは、原則的に次の層構造を有する:基板/正孔輸送層(HTL)/随意に電子ブロック層(EBL)/発光層(EML)/随意に正孔ブロック層/電子輸送層(ETL)/随意に電子注入層(EIL)、および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層によって形成される。
【0243】
最初に、真空処理されたOLEDについて記載する。この目的では、すべての材料は、真空チャンバ中で熱気相堆積によって適用される。ここで発光層は、常に、少なくとも1種のマトリックス材料(ホスト材料)、および1種または複数種のマトリックス材料と一定の体積割合で共蒸発によって予備混合された発光ドーパント(エミッタ)からなる。ここでマトリックスM:B(95%:5%)などの表現は、材料Mが95%の体積割合で層中に存在し、ドーパントBが5%の割合で層中に存在することを意味する。同じように、電子輸送層は、2種の材料の混合物からなってもよい。このようなOLEDの正確な構造を、表1に示す。このようなOLEDの製造のために使用した材料を、表2に示す。
【0244】
【表1】
【0245】
【表2】
【0246】
OLEDは、標準の方法によって特性決定される。この目的では、エレクトロルミネッセンススペクトル、電流効率(cd/Aで測定)および電圧(1000cd/m2においてVで測定)は、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から測定される。選択された実験について、寿命を測定する。寿命は、輝度が一定の初期輝度から一定割合に低下するまでの時間と定義される。表現「LT80」は、所与の寿命が、輝度が初期輝度の80%に低下した、すなわちたとえば1000cd/m2から800cd/m2に低下した時点までであることを意味する。発光色に応じて、異なる初期輝度を選択した。寿命の値は、当業者に公知の変換式を用いて他の初期輝度の値に変換することができる。ここでは、初期輝度の寿命1000cd/m2が通常値である。
【0247】
b)OLEDにおけるエミッタ材料としての本発明による化合物の使用
本発明による化合物は、中でもOLED中の発光層において、エミッタ材料(ドーパント)として用いることができる。化合物DRを先行技術にしたがう比較として用いる。