【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、建物壁に形成された壁貫通孔に挿入される筒状本体部を有する壁貫通部形成部材が当該建物壁に固定されて、当該筒状本体部の内部に流体管が挿入され、前記筒状本体部の壁表側の端部は、管継手、水栓等の被取付部材が取付けられる取付口となっている配管構造において前記壁貫通孔の周縁部を止水する構造であって、
前記管継手は、その外面から張り出して、壁表面の前記壁貫通孔の周縁部に環状に当接される
フランジ部を有し、当該フランジ部の外周部には、張出し方向及び配置状態で壁表面と対向する裏面側の二方向に開放された形態の
環状凹部が設けられ、
前記フランジ部が、壁表面の前記壁貫通孔の周縁部に環状に当接されると共に、
前記壁表面と、当該壁表面に当接される部位よりも当該壁表面から離れるように控えて配置されて、前記環状凹部の前記壁表面と対向する面を構成する壁表対向面との間に、前記フランジ部の張出し方向に開口されたコーキング材の充填溝が形成され、
前記コーキング材が前記壁表面及び当該壁表面と対向するフランジ部の壁表対向面の二面のみに接着されるように、
前記フランジ部の張出し方向と反対側で前記環状凹部に臨み、前記充填溝の底面
を構成する箇所には、前記コーキング材が接着されない非接着面が形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明は、前記管継手の外面から張り出したフランジ部の壁表面と対向する側の外周部に設けられた環状凹部の壁表対向面により、壁表面との間において前記フランジ部の張出し方向に開口されたコーキング材の充填溝が形成され、前記コーキング材が、前記壁表面及び当該壁表面と対向するフランジ部の壁表対向面との二面のみに接着されるように、前記充填溝の底面には、前記コーキング材が接着されない非接着面が形成されているため、壁表面に沿って環状に形成されている環状凹部は、壁貫通孔の外部に開放状態で設けられる。よって、充填溝にコーキング材を充填する際に、当該充填溝の全周囲の自由な空間を使用して、周囲の物体と干渉することなく作業できるので、コーキング材の充填作業が容易になると共に、当該コーキング材は、二面接着状態で充填されるため、二面接着によるコーキング材の剥れ防止の利点が発揮される。
【0010】
また、壁貫通部形成部材は、建物壁の裏側に突出した固定部が、当該建物壁又は別の構造物に固定されることで、壁貫通孔に挿入された筒状本体部は、壁裏側で片持支持されて、壁表側の取付口の部分は、自由端部となっていて、当該筒状本体部の自由端部の取付口に管継手のフランジ部が取付けられる構造であるため、前記充填溝に充填されたコーキング材は、壁表面に対して微動し易く、しかも壁表面であるため、太陽光により熱伸縮し易いために、コーキング材の二面接着の効果が多大に発揮されて、コーキング材の剥離を防止できる。コーキング材は、前記壁表面及び当該壁表面と対向するフランジ部の壁表対向面の二面のみに接着されているので、壁表面に凹凸が生じていても、当該凹凸に影響されることなく、壁貫通孔の周縁部を止水できる。
なお、管継手のフランジ部における前記環状凹部よりも内側の部分は、壁表面の前記壁貫通孔の周縁部に環状となって直接に当接される。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記壁貫通部形成部材は、壁裏側において、壁貫通孔から突出している固定部により建物壁又は他の構造物に固定され、前記フランジ部は、壁表面に向けて押圧されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明によれば、筒状本体部が壁貫通孔に挿入されている壁貫通部形成部材は、壁裏側において固定部を介して建物壁又は他の構造物に固定され、壁表側においては、前記フランジ部が壁表面に向けて押圧されることで、壁裏側及び壁表側の双方において、建物壁に固定されるので、壁貫通孔に挿入された壁貫通部形成部材の筒状本体部がしっかり支持される。この結果、筒状本体部の壁表側の取付口に取付けられる管継手がしっかり支持される。
【0013】
請求項3の発明は、建物壁に形成された壁貫通孔に挿入されると共に、自身の内部に流体管が挿入される筒状本体部と、前記筒状本体部の壁裏側に一体に形成されて、前記建物壁又は他の構造物に固定される固定部とを備えた壁貫通部形成部材と、
前記壁貫通部形成部材の取着部に取着されて、壁表側の壁貫通孔の周縁部に当接されるフランジ部を備えた管継手と、
から成る壁貫通部配管装置であって、
前記管継手のフランジ部の壁表面と対向する側の外周部に、
前記フランジ部の前記壁表面に当接される部位よりも当該壁表面から離れるように控えた位置で当該壁表面と対向する壁表対向面が設けられると共に、当該フランジ部の張出し方向及び配置状態で壁表面と対向する裏面側の二方向に開放された形態
の環状凹部が設けられて、当該壁表面とで、前記管継手のフランジ部の張出し方向に開放されたコーキング材の充填溝が形成され、
前記コーキング材が、前記壁表面及び
前記壁表対向面の二面のみに接着されるように、前記充填溝の底部
を構成していて、前記フランジ部の張出し方向である開放方向と反対側で前記環状凹部に臨む周面には、前記コーキング材が接着されない非接着面が形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1の発明によるコーキング材の充填作業の容易性や、二面接着による利点に加えて、当該管継手を構成するフランジ部と建物壁の壁表面との間に環状に形成された充填溝に対するコーキング材の充填が容易になると共に、壁貫通部形成部材は、壁裏側に片持ち状態で支持されているにもかかわらず、壁表面に対するコーキング材の接着力により、管継手のフランジ部が建物壁に接着される
と共に、管継手のフランジ部は、壁表側の壁貫通孔の周縁部に直接に当接される構造であることで、壁貫通部形成部材を構成する筒状本体部の自由端部に取着される管継手は、当該建物壁に対して支持状態にできて、管継手の支持が安定化する。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記管継手は、その壁表側に他の管継手や水栓器具が接続可能なねじ部が形成されていると共に、その壁裏側に流体管が接続される接続部が形成された継手本体を備え、
当該継手本体は、前記フランジ部とは別体に形成されて、当該継手本体に対してフランジ部が組付け可能であり、前記継手本体に対してフランジ部を外して、前記接続部に流体管を接続した状態で、前記壁貫通部形成部材の筒状本体部に、壁裏側から前記継手本体のねじ部を壁表側に臨ませるように挿入可能であり、
前記フランジ部は、壁表側に臨まされた継手本体の前記ねじ部に対して壁表側から螺着されることで、前記管継手は、前記筒状本体部の壁表側の取着部に取着可能であることを特徴としている。
【0016】
請求項4の発明によれば、継手本体に対してフランジ部を取り外した状態で、当該継手本体の接続部に流体管を接続することで、先端部に継手本体が接続された流体管を壁裏側から壁表側に向けて、壁貫通部形成部材の筒状本体部の内部に挿入して、流体管の先端部に接続した継手本体を壁表に臨ませて、壁表側において、当該継手本体にフランジ部を螺着により一体に組み付けることができる。よって、流体管の先端部に継手本体を接続したままで、前記筒状本体部に挿入できて、壁貫通部の配管作業の能率が高められる。
【0017】
請求項5の発明は、流体管が接続される接続部を有する継手本体と、当該継手本体の全周を囲むように外方に張り出す板状のフランジ部と、から成る管継手であって、
前記継手本体は、流体管の先端部に接続され、建物壁に形成された壁貫通孔に挿入されて壁表面に臨んでいて、
当該壁貫通孔の壁表側の周縁部に前記フランジ部が沿うように
当接して配置された状態で、前記フランジ部の外周部の壁表面と対向する部分に、当該壁表面と協働してコーキング材の充填溝を形成すべく、
前記フランジ部の外周部に、前記フランジ部の前記壁表面に沿わされる部位よりも当該壁表面から離れるように控えた位置で当該壁表面と対向する壁表対向面が設けられると共に、当該フランジ部の張出し方向、及び配置状態で壁表面と対向する裏面側の二方向に開放する環状凹部が形成され、
前記環状凹部の前記フランジ部の張出し方向である開放方向と反対側には、コーキング材が接着されない非接着面が形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1又は3の発明を「管継手」の観点から把握して表現したものであって、コーキング材の充填作業の容易性、及び当該二面接着による利点は、上記した通りである。
【0019】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記継手本体の壁表側の外周面には雄ねじ部が形成され、当該雄ねじ部に螺着される雌ねじ部を備えた前記フランジ部は、前記継手本体に螺着可能なように、当該継手本体とは別体に形成されていることを特徴としている。
【0020】
請求項6の発明は、請求項4の「壁貫通部配管装置」の特徴的な構成を、「管継手」として表現したものであって、流体管の先端部に継手本体を接続した状態で、当該流体管を筒状本体部の内部に挿入できて、壁表側において,壁表側に臨んだ継手本体に対してフランジ部を螺着により一体に組み付けられる。
【0021】
請求項7の発明は、流体管が接続される接続部を有する継手本体と、当該継手本体とは別体に形成されて、当該継手本体に一体に組み付けられた状態で、その全周を囲むように外方に張り出す板状のフランジ体と、から成る管継手であって、
前記継手本体は、建物壁に形成された壁貫通孔に挿入されて壁表側に臨まされて、当該壁表側に他の管継手や水栓器具が接続可能なねじ部が形成されていると共に、前記ねじ部が壁表側に臨むように、壁裏側に形成されて前記建物壁又は他の構造物に固定される固定部を備え、
前記壁貫通孔の壁表側の周縁部に前記フランジ体が沿うように
当接して配置された状態で、前記フランジ体の外周部の壁表面と対向する部分に、当該壁表面と協働してコーキング材の充填溝を形成すべく、
前記フランジ部の外周部に、前記フランジ体が前記壁表面に沿う部位よりも当該壁表面から離れるように控えた位置で当該壁表面と対向する壁表対向面が設けられると共に、
当該フランジ体の張出し方向、及び配置状態で壁表面と対向する壁裏側の二方向に開放する環状凹部が形成され、
前記環状凹部の前記フランジ体の張出し方向である開放方向と反対側には、コーキング材が接着されない非接着面が形成されていることを特徴としている。
【0022】
請求項7の発明は、管継手を構成する継手本体が固定部により壁裏側に固定されていて、継手本体の壁表側は、自由端になっている構造に特定されたものであって、このような配置構造の管継手においても、壁表側において、壁表面とフランジ体の環状凹部とにより形成される充填溝にコーキング材を充填することで奏される、コーキング材の充填作業の容易性、及び当該二面接着による利点は、上記した通りである。