特許第6887834号(P6887834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887834壁貫通孔周縁部の止水構造、壁貫通部配管装置、及び管継手
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887834
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】壁貫通孔周縁部の止水構造、壁貫通部配管装置、及び管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/00 20060101AFI20210603BHJP
   E04F 17/08 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   F16L5/00 Z
   F16L5/00 E
   F16L5/00 J
   E04F17/08 A
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-48315(P2017-48315)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-151019(P2018-151019A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年8月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦
【審査官】 黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−039125(JP,A)
【文献】 特開平09−144147(JP,A)
【文献】 特開2013−087828(JP,A)
【文献】 特開2001−173043(JP,A)
【文献】 特開2004−143759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
E04F 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物壁に形成された壁貫通孔に挿入される筒状本体部を有する壁貫通部形成部材が当該建物壁に固定されて、当該筒状本体部の内部に流体管が挿入され、前記筒状本体部の壁表側の端部は、管継手、水栓等の被取付部材が取付けられる取付口となっている配管構造において前記壁貫通孔の周縁部を止水する構造であって、
前記管継手は、その外面から張り出して、壁表面の前記壁貫通孔の周縁部に環状に当接されるフランジ部を有し、当該フランジ部の外周部には、張出し方向及 び配置状態で壁表面と対向する裏面側の二方向に開放された形態の環状凹部が設けられ、
前記フランジ部が、壁表面の前記壁貫通孔の周縁部に環状に当接されると共に、前記壁表面と、当該壁表面に当接される部位よりも当該壁表面から離れるように控えて配置されて、前記環状凹部の前記壁表面と対向する面を構成する壁表対向面との間に、前記フランジ部の張出し方向に開口されたコーキング材の充填溝が形成され、
前記コーキング材が前記壁表面及び当該壁表面と対向するフランジ部の壁表対向面の二面のみに接着されるように、前記フランジ部の張出し方向と反対側で前記環状凹部に臨み、前記充填溝の底面を構成する箇所には、前記コーキング材が接着されない非接着面が形成されていることを特徴とする壁貫通孔周縁部の止水構造。
【請求項2】
前記壁貫通部形成部材は、壁裏側において、壁貫通孔から突出している固定部により建物壁又は他の構造物に固定され、前記フランジ部は、壁表面に向けて押圧されていることを特徴とする請求項1に記載の壁貫通孔周縁部の止水構造。
【請求項3】
建物壁に形成された壁貫通孔に挿入されると共に、自身の内部に流体管が挿入される筒状本体部と、前記筒状本体部の壁裏側に一体に形成されて、前記建物壁又は他の構造物に固定される固定部とを備えた壁貫通部形成部材と、
前記壁貫通部形成部材の取着部に取着されて、壁表側の壁貫通孔の周縁部に当接されるフランジ部を備えた管継手と、
から成る壁貫通部配管装置であって、
前記管継手のフランジ部の壁表面と対向する側の外周部に、前記フランジ部の前記壁表面に当接される部位よりも当該壁表面から離れるように控えた位置で当該壁表面と対向する壁表対向面が設けられると共に、当該フランジ部の張出し方向及び配置状態で壁表面と対向する裏面側の二方向に開放された形態環状凹部が設けられて、当該壁表面とで、前記管継手のフランジ部の張出し方向に開放されたコーキング材の充填溝が形成され、
前記コーキング材が、前記壁表面及び前記壁表対向面の二面のみに接着されるように、前記充填溝の底部を構成していて、前記フランジ部の張出し方向である開放方向と反対側で前記環状凹部に臨む周面には、前記コーキング材が接着されない非接着面が形成されていることを特徴とする壁貫通部配管装置。
【請求項4】
前記管継手は、その壁表側に他の管継手や水栓器具が接続可能なねじ部が形成されていると共に、その壁裏側に流体管が接続される接続部が形成された継手本体を備え、
当該継手本体は、前記フランジ部とは別体に形成されて、当該継手本体に対してフランジ部が組付け可能であり、前記継手本体に対してフランジ部を外して、前記接続部に流体管を接続した状態で、前記壁貫通部形成部材の筒状本体部に、壁裏側から前記継手本体のねじ部を壁表側に臨ませるように挿入可能であり、
前記フランジ部は、壁表側に臨まされた継手本体の前記ねじ部に対して壁表側から螺着されることで、前記管継手は、前記筒状本体部の壁表側の取着部に取着可能であることを特徴とする請求項3に記載の壁貫通部配管装置。
【請求項5】
流体管が接続される接続部を有する継手本体と、当該継手本体の全周を囲むように外方に張り出す板状のフランジ部と、から成る管継手であって、
前記継手本体は、流体管の先端部に接続され、建物壁に形成された壁貫通孔に挿入されて壁表面に臨んでいて、
当該壁貫通孔の壁表側の周縁部に前記フランジ部が沿うように当接して配置された状態で、前記フランジ部の外周部の壁表面と対向する部分に、当該壁表面と協働してコーキング材の充填溝を形成すべく、
前記フランジ部の外周部に、前記フランジ部の前記壁表面に沿わされる部位よりも当該壁表面から離れるように控えた位置で当該壁表面と対向する壁表対向面が設けられると共に、当該フランジ部の張出し方向、及び配置状態で壁表面と対向する裏面側の二方向に開放する環状凹部が形成され、
前記環状凹部の前記フランジ部の張出し方向である開放方向と反対側には、コーキング材が接着されない非接着面が形成されていることを特徴とする管継手。
【請求項6】
前記継手本体の壁表側の外周面には雄ねじ部が形成され、当該雄ねじ部に螺着される雌ねじ部を備えた前記フランジ部は、前記継手本体に螺着可能なように、当該継手本体とは別体に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の管継手。
【請求項7】
流体管が接続される接続部を有する継手本体と、当該継手本体とは別体に形成されて、当該継手本体に一体に組み付けられた状態で、その全周を囲むように外方に張り出す板状のフランジ体と、から成る管継手であって、
前記継手本体は、建物壁に形成された壁貫通孔に挿入されて壁表側に臨まされて、当該壁表側に他の管継手や水栓器具が接続可能なねじ部が形成されていると共に、前記ねじ部が壁表側に臨むように、壁裏側に形成されて前記建物壁又は他の構造物に固定される固定部を備え、
前記壁貫通孔の壁表側の周縁部に前記フランジ体が沿うように当接して配置された状態で、前記フランジ体の外周部の壁表面と対向する部分に、当該壁表面と協働してコーキング材の充填溝を形成すべく、
前記フランジ部の外周部に、前記フランジ体が前記壁表面に沿う部位よりも当該壁表面から離れるように控えた位置で当該壁表面と対向する壁表対向面が設けられると共に、
当該フランジ体の張出し方向、及び配置状態で壁表面と対向する壁裏側の二方向に開放する環状凹部が形成され、
前記環状凹部の前記フランジ体の張出し方向である開放方向と反対側には、コーキング材が接着されない非接着面が形成されていることを特徴とする管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーキング材を用いて壁貫通孔の周縁部を止水する構造、壁貫通部配管装置、及び管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物壁に形成された壁貫通孔に挿入される筒状本体部を有する壁貫通部形成部材が当該建物壁に固定されて、当該筒状本体部の内部に流体管が挿入され、当該筒状本体部の壁表側の端部は、管継手、水栓等の被取付部材が取付けられる取付口となっている配管構造において、前記壁貫通孔の周縁部を止水する構造として、特許文献1の図11及び特許文献2の図1に開示の構造が知られている。
【0003】
特許文献1の図11には、壁貫通孔に壁貫通部形成部材の挿入部(本明細書の「筒状本体部」に相当)が挿入され、当該挿入部に配線・配管材2が挿通されて、当該配線・配管材2の先端部に管継手30が接続され、壁表面における壁貫通孔の周縁部に、面状のパッキング・リング35の周縁部が密着されて、前記管継手30を構成するフランジ部34の押圧力により、前記パッキング・リング35の周縁部を壁表面に押圧させて、雨水等の止水を行っている。この止水構造は、「面パッキン構造」であって、壁表面の凹凸が止水性に大きく影響されるため、高い止水性を確保できない。また、壁表面に対する前記パッキング・リング35の押圧力は、管継手30の継手本体に対するフランジ部34の固定力を利用しているため、当該固定力が強すぎると、パッキング・リング35が押し潰されて、止水機能を十分に発揮できず、弱いと管継手自体をしっかり固定できない問題がある。
【0004】
特許文献2の図1には、壁貫通孔1aを閉塞する屋外貫通孔カバー4の筒状部が当該壁貫通孔1aに挿入され、当該筒状部と前記壁貫通孔1aの内周面との間に、コーキング材の充填空間7が形成され、当該充填空間7の底部には、非接着層が形成されて、二面接着による壁貫通孔の止水構造が開示されている。この止水構造では、壁裏側からコーキングガンを挿入して、前記充填空間7にコーキング材を充填する必要があるため、充填箇所を認識しにくい。外壁のような壁厚が大きい箇所では、壁表に近い部分に存在する充填空間7に対するコーキング材の充填作業は、コーキングガンの挿入距離が長い分、困難を伴う。
【0005】
なお、二面接着によるコーキングは、三面接着に対するものであって、対向する二面のみに接着させるコーキング構造であり、充填されたコーキング材に、微振動、外力、熱伸縮応力等が作用した場合には、コーキング材全体が微動することで、対向二面からコーキング材が剥離しにくい利点があり、隣接壁材の間に形成される目地溝のコーキングにおいて多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−39125号公報の図11
【特許文献2】特開2012−13124号公報の図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に基づいて、壁貫通孔の周縁部を止水のためのコ−キング材の充填操作が容易で、しかも止水性を高めることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、建物壁に形成された壁貫通孔に挿入される筒状本体部を有する壁貫通部形成部材が当該建物壁に固定されて、当該筒状本体部の内部に流体管が挿入され、前記筒状本体部の壁表側の端部は、管継手、水栓等の被取付部材が取付けられる取付口となっている配管構造において前記壁貫通孔の周縁部を止水する構造であって、
前記管継手は、その外面から張り出して、壁表面の前記壁貫通孔の周縁部に環状に当接されるフランジ部を有し、当該フランジ部の外周部には、張出し方向及び配置状態で壁表面と対向する裏面側の二方向に開放された形態の環状凹部が設けられ、
前記フランジ部が、壁表面の前記壁貫通孔の周縁部に環状に当接されると共に、前記壁表面と、当該壁表面に当接される部位よりも当該壁表面から離れるように控えて配置されて、前記環状凹部の前記壁表面と対向する面を構成する壁表対向面との間に、前記フランジ部の張出し方向に開口されたコーキング材の充填溝が形成され、
前記コーキング材が前記壁表面及び当該壁表面と対向するフランジ部の壁表対向面の二面のみに接着されるように、前記フランジ部の張出し方向と反対側で前記環状凹部に臨み、前記充填溝の底面を構成する箇所には、前記コーキング材が接着されない非接着面が形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明は、前記管継手の外面から張り出したフランジ部の壁表面と対向する側の外周部に設けられた環状凹部の壁表対向面により、壁表面との間において前記フランジ部の張出し方向に開口されたコーキング材の充填溝が形成され、前記コーキング材が、前記壁表面及び当該壁表面と対向するフランジ部の壁表対向面との二面のみに接着されるように、前記充填溝の底面には、前記コーキング材が接着されない非接着面が形成されているため、壁表面に沿って環状に形成されている環状凹部は、壁貫通孔の外部に開放状態で設けられる。よって、充填溝にコーキング材を充填する際に、当該充填溝の全周囲の自由な空間を使用して、周囲の物体と干渉することなく作業できるので、コーキング材の充填作業が容易になると共に、当該コーキング材は、二面接着状態で充填されるため、二面接着によるコーキング材の剥れ防止の利点が発揮される。
【0010】
また、壁貫通部形成部材は、建物壁の裏側に突出した固定部が、当該建物壁又は別の構造物に固定されることで、壁貫通孔に挿入された筒状本体部は、壁裏側で片持支持されて、壁表側の取付口の部分は、自由端部となっていて、当該筒状本体部の自由端部の取付口に管継手のフランジ部が取付けられる構造であるため、前記充填溝に充填されたコーキング材は、壁表面に対して微動し易く、しかも壁表面であるため、太陽光により熱伸縮し易いために、コーキング材の二面接着の効果が多大に発揮されて、コーキング材の剥離を防止できる。コーキング材は、前記壁表面及び当該壁表面と対向するフランジ部の壁表対向面の二面のみに接着されているので、壁表面に凹凸が生じていても、当該凹凸に影響されることなく、壁貫通孔の周縁部を止水できる。なお、管継手のフランジ部における前記環状凹部よりも内側の部分は、壁表面の前記壁貫通孔の周縁部に環状となって直接に当接される。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記壁貫通部形成部材は、壁裏側において、壁貫通孔から突出している固定部により建物壁又は他の構造物に固定され、前記フランジ部は、壁表面に向けて押圧されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明によれば、筒状本体部が壁貫通孔に挿入されている壁貫通部形成部材は、壁裏側において固定部を介して建物壁又は他の構造物に固定され、壁表側においては、前記フランジ部が壁表面に向けて押圧されることで、壁裏側及び壁表側の双方において、建物壁に固定されるので、壁貫通孔に挿入された壁貫通部形成部材の筒状本体部がしっかり支持される。この結果、筒状本体部の壁表側の取付口に取付けられる管継手がしっかり支持される。
【0013】
請求項3の発明は、建物壁に形成された壁貫通孔に挿入されると共に、自身の内部に流体管が挿入される筒状本体部と、前記筒状本体部の壁裏側に一体に形成されて、前記建物壁又は他の構造物に固定される固定部とを備えた壁貫通部形成部材と、
前記壁貫通部形成部材の取着部に取着されて、壁表側の壁貫通孔の周縁部に当接されるフランジ部を備えた管継手と、
から成る壁貫通部配管装置であって、
前記管継手のフランジ部の壁表面と対向する側の外周部に、前記フランジ部の前記壁表面に当接される部位よりも当該壁表面から離れるように控えた位置で当該壁表面と対向する壁表対向面が設けられると共に、当該フランジ部の張出し方向及び配置状態で壁表面と対向する裏面側の二方向に開放された形態環状凹部が設けられて、当該壁表面とで、前記管継手のフランジ部の張出し方向に開放されたコーキング材の充填溝が形成され、
前記コーキング材が、前記壁表面及び前記壁表対向面の二面のみに接着されるように、前記充填溝の底部を構成していて、前記フランジ部の張出し方向である開放方向と反対側で前記環状凹部に臨む周面には、前記コーキング材が接着されない非接着面が形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1の発明によるコーキング材の充填作業の容易性や、二面接着による利点に加えて、当該管継手を構成するフランジ部と建物壁の壁表面との間に環状に形成された充填溝に対するコーキング材の充填が容易になると共に、壁貫通部形成部材は、壁裏側に片持ち状態で支持されているにもかかわらず、壁表面に対するコーキング材の接着力により、管継手のフランジ部が建物壁に接着されると共に、管継手のフランジ部は、壁表側の壁貫通孔の周縁部に直接に当接される構造であることで、壁貫通部形成部材を構成する筒状本体部の自由端部に取着される管継手は、当該建物壁に対して支持状態にできて、管継手の支持が安定化する。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記管継手は、その壁表側に他の管継手や水栓器具が接続可能なねじ部が形成されていると共に、その壁裏側に流体管が接続される接続部が形成された継手本体を備え、
当該継手本体は、前記フランジ部とは別体に形成されて、当該継手本体に対してフランジ部が組付け可能であり、前記継手本体に対してフランジ部を外して、前記接続部に流体管を接続した状態で、前記壁貫通部形成部材の筒状本体部に、壁裏側から前記継手本体のねじ部を壁表側に臨ませるように挿入可能であり、
前記フランジ部は、壁表側に臨まされた継手本体の前記ねじ部に対して壁表側から螺着されることで、前記管継手は、前記筒状本体部の壁表側の取着部に取着可能であることを特徴としている。
【0016】
請求項4の発明によれば、継手本体に対してフランジ部を取り外した状態で、当該継手本体の接続部に流体管を接続することで、先端部に継手本体が接続された流体管を壁裏側から壁表側に向けて、壁貫通部形成部材の筒状本体部の内部に挿入して、流体管の先端部に接続した継手本体を壁表に臨ませて、壁表側において、当該継手本体にフランジ部を螺着により一体に組み付けることができる。よって、流体管の先端部に継手本体を接続したままで、前記筒状本体部に挿入できて、壁貫通部の配管作業の能率が高められる。
【0017】
請求項5の発明は、流体管が接続される接続部を有する継手本体と、当該継手本体の全周を囲むように外方に張り出す板状のフランジ部と、から成る管継手であって、
前記継手本体は、流体管の先端部に接続され、建物壁に形成された壁貫通孔に挿入されて壁表面に臨んでいて、
当該壁貫通孔の壁表側の周縁部に前記フランジ部が沿うように当接して配置された状態で、前記フランジ部の外周部の壁表面と対向する部分に、当該壁表面と協働してコーキング材の充填溝を形成すべく、
前記フランジ部の外周部に、前記フランジ部の前記壁表面に沿わされる部位よりも当該壁表面から離れるように控えた位置で当該壁表面と対向する壁表対向面が設けられると共に、当該フランジ部の張出し方向、及び配置状態で壁表面と対向する裏面側の二方向に開放する環状凹部が形成され、
前記環状凹部の前記フランジ部の張出し方向である開放方向と反対側には、コーキング材が接着されない非接着面が形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1又は3の発明を「管継手」の観点から把握して表現したものであって、コーキング材の充填作業の容易性、及び当該二面接着による利点は、上記した通りである。
【0019】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記継手本体の壁表側の外周面には雄ねじ部が形成され、当該雄ねじ部に螺着される雌ねじ部を備えた前記フランジ部は、前記継手本体に螺着可能なように、当該継手本体とは別体に形成されていることを特徴としている。
【0020】
請求項6の発明は、請求項4の「壁貫通部配管装置」の特徴的な構成を、「管継手」として表現したものであって、流体管の先端部に継手本体を接続した状態で、当該流体管を筒状本体部の内部に挿入できて、壁表側において,壁表側に臨んだ継手本体に対してフランジ部を螺着により一体に組み付けられる。
【0021】
請求項7の発明は、流体管が接続される接続部を有する継手本体と、当該継手本体とは別体に形成されて、当該継手本体に一体に組み付けられた状態で、その全周を囲むように外方に張り出す板状のフランジ体と、から成る管継手であって、
前記継手本体は、建物壁に形成された壁貫通孔に挿入されて壁表側に臨まされて、当該壁表側に他の管継手や水栓器具が接続可能なねじ部が形成されていると共に、前記ねじ部が壁表側に臨むように、壁裏側に形成されて前記建物壁又は他の構造物に固定される固定部を備え、
前記壁貫通孔の壁表側の周縁部に前記フランジ体が沿うように当接して配置された状態で、前記フランジ体の外周部の壁表面と対向する部分に、当該壁表面と協働してコーキング材の充填溝を形成すべく、
前記フランジ部の外周部に、前記フランジ体が前記壁表面に沿う部位よりも当該壁表面から離れるように控えた位置で当該壁表面と対向する壁表対向面が設けられると共に、
当該フランジ体の張出し方向、及び配置状態で壁表面と対向する壁裏側の二方向に開放する環状凹部が形成され、
前記環状凹部の前記フランジ体の張出し方向である開放方向と反対側には、コーキング材が接着されない非接着面が形成されていることを特徴としている。
【0022】
請求項7の発明は、管継手を構成する継手本体が固定部により壁裏側に固定されていて、継手本体の壁表側は、自由端になっている構造に特定されたものであって、このような配置構造の管継手においても、壁表側において、壁表面とフランジ体の環状凹部とにより形成される充填溝にコーキング材を充填することで奏される、コーキング材の充填作業の容易性、及び当該二面接着による利点は、上記した通りである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、管継手のフランジ部が壁表面に当接した状態で、壁表面と管継手のフランジ部との間に形成される充填溝は、当該フランジ部の壁表面と対向する側の外周部に、当該フランジ部の張出し方向及び配置状態で壁表面と対向する裏面側の二方向に開放された形態で設けられた環状凹部と、当該壁表面との協働により形成され、全周に亘って、当該フランジ部の張出し方向に開口されているので、当該充填溝に対するコーキング材の充填作業が容易になると共に、当該充填溝は、壁表面と、フランジ部の外周部に形成された環状凹部における当該壁表面と対向する壁表対向面とで、当該フランジ部の張出し方向に開放された状態で形成されて、当該充填溝に二面接着状態でコーキング材が充填されるため、二面接着の効果が多大に発揮されて、太陽光等の影響を受けても、コーキング材は剥離しにくくなって、壁貫通孔の周縁部を長期に亘って止水できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】建物壁Wの壁貫通孔H1 に壁貫通部形成部材Aの筒状本体部Dが挿入されて、当該壁貫通部形成部材AのエルボボックスBが壁裏側の固定材61に固定された状態の断面図である。
図2】先端部に継手本体11が接続された流体管Pを壁貫通孔H1 に壁裏側から挿入している途中の断面図である。
図3】先端部に継手本体11が接続された流体管Pが壁貫通部形成部材Aの筒状本体部Dに挿入されて、壁表側において継手本体11にフランジ体21が螺着されて、壁表面Waとフランジ体21との間に環状の充填溝G1 が形成された状態の断面図である。
図4図3の状態において、充填溝G1 にコーキング材Kが充填されて、継手本体11に化粧リングRが螺着された状態の断面図である。
図5】(a)は、管継手C1 を構成するフランジ体21の環状凹部27の周面27bに非接着性のテープ32が巻回された状態の斜視図であり、(b)は、フランジ体21の縦断面図である。
図6】継手本体11の縦断面図である。
図7】壁表面Waに臨んで配置された管継手C1 の継手本体11とフランジ体21との分解斜視図である。
図8】壁表面Waとフランジ体21との間に形成された環状の充填溝G1 にコーキング材Kを充填している状態の斜視図である。
図9】充填溝G1 にコーキング材Kが充填されると共に、継手本体11に化粧リングRが螺着されて、フランジ体21が覆われた状態の斜視図である。
図10】(a),(b)は、本発明に係る管継手C2 を異なる方向から見た斜視図である。
図11】流体管Pと接続された管継手C2 が建物壁Wの壁貫通孔H2 に挿入されて、壁表面Waに固定された状態の断面図である。
図12】(a),(b)は、充填溝G2 にコーキング材Kが充填される前後の図11のEの部分の拡大断面図である。
図13】壁裏側に固定された管継手C3 の壁表側の止水構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、複数の実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
実施例1は、図1図9に示されるように、建物壁Wの壁貫通孔H1 に壁貫通部形成部材Aの筒状本体部Dが挿入されて、当該筒状本体部Dに壁裏側から流体管Pが挿入されて、当該筒状本体部Dの壁表側の端部が、管継手C1 を構成するフランジ体21が固定状態で取付けられる取付口1となっている配管構造に対して、本発明を実施したものである。なお、筒状本体部Dの取付口1は、管継手C1 のフランジ体21が螺着により取着されるために、請求項3における「取着部」に該当する。
【0027】
図1に示されるように、壁貫通部形成部材Aは、建物壁Wの壁貫通孔H1 に挿入される筒状本体部Dと、壁裏側において当該筒状本体部Dに一体に組み付けられるエルボボックスBとから成り、当該筒状本体部Dにおける壁貫通孔H1 に挿入される部分は、直管状であるが、壁裏面Wbから突出した部分は、屈曲された屈曲部Daとなっていて、当該屈曲部Daの開口端面に一体に設けられた固定平板部2にエルボボックスBが一体に組み付けられる。筒状本体部Dは、壁貫通孔H1 の内周面との間に僅かの隙間を有し、しかも壁表面Waから僅かに突出された状態で、当該壁貫通孔H1 に挿入配置されている。また、図1において、建物壁Wの壁裏面Wbに断熱材を配置するために、当該断熱材の厚さに対応した高さを有して、所定間隔をおいた一対の固定材61が壁裏面Wbに固定され、前記筒状本体部Dの固定平板部2は、当該一対の固定材61に複数本のビス66を介して固定される。従って、建物壁Wの壁貫通孔H1 に挿入された筒状本体部Dは、その壁裏側の一端部が固定平板部2を介して一対の固定材61に固定され、壁表側の他端部は、非固定状態の自由端構造となっている。
【0028】
壁貫通部形成部材Aの筒状本体部Dには、周方向に沿って等分された4箇所に溝部3(図7参照)が長手方向に沿って形成されている。流体管Pの先端部には、後述の継手本体11が接続されており、前記溝部3の壁表面Waの側の部分は、壁表面Waにおいて、流体管Pの先端の前記継手本体11に螺着されるフランジ体21を筒状本体部Dに固定する際のビス62の下孔となる。なお、筒状本体部Dにおける屈曲部Daの側の所定長を除く部分の外周面には、建物壁Wの壁厚に対応して当該筒状本体部Dを切断するための切れ目4(図1参照)が一定ピッチをおいて形成されている。
【0029】
管継手C1 を構成する継手本体11とフランジ体21とは別体で構成されているため、継手本体11に対してフランジ体21を分離させられる。このため、図2に示されるように、継手本体11に対してフランジ体21を分離させて、大きな曲げ剛性を有する樹脂管から成る流体管Pの先端部に継手本体11を接続させた状態で、当該流体管Pは、壁裏側からエルボボックスB及び筒状本体部Dの内部に挿入されて、当該継手本体11は、その一部が、当該筒状本体部Dの先端面から突出した状態で、前記筒状本体部Dの内部に挿通配置される。このように、流体管Pの先端部に継手本体11を接続した状態で、当該流体管Pは、筒状本体部D内に挿入できるので、配管作業が容易となる。なお、図2において、5,6は、それぞれ流体管Pを挿通させるために、エルボボックスBの壁裏面Wbと対向する面、及び底面に形成された流体管挿通孔を示す。
【0030】
管継手C1 は、図1図4及び図6に示されるように、流体管Pの先端部に接続される継手本体11と、当該継手本体11に螺着により組み付けられて、前記筒状本体部Dの取付口1に固定状態で取付けられるフランジ体21とから成り、当該フランジ体21は、筒状本体部Dの取付口1に取付けられた状態で、壁表面Waに押圧されることで、当該壁表面Waに密着される。継手本体11は、筒状の部材であって、軸方向に沿って二分した壁裏側の部分に、流体管Pと接続される接続部12が形成され、軸方向に沿って二分した壁表側の部分の外周面に、第1及び第2の雄ねじ部13,14が段差状に形成され、各雄ねじ部13,14の段差部に水密リング15が嵌め込まれ、軸方向に沿って二分した壁表側の内周面に、水栓類が取付けられる雌ねじ部16が形成されている。なお、継手本体11は、金属製であり、フランジ体21は、樹脂製である。
【0031】
フランジ体21は、図3図5及び図7に示されるように、内周面に前記継手本体11の第1雄ねじ部13に接続される雌ねじ部22が形成された筒体部23と、半径方向の外側に張り出して、当該筒体部23の軸方向に沿って壁表側の端部に一体に形成された厚板状のフランジ板部24とから成る。厚板状のフランジ板部24の裏面側(配置状態で壁表面Waと対向する側)には、前記筒状本体部Dの先端部が挿入される環状溝部25が形成され、当該フランジ板部24における前記環状溝部25の僅かに内側の部分には、複数本のビス62を用いて、当該フランジ体21の全体を筒状本体部Dに固定するために、当該ビス62を貫通させる計4つのビス挿通孔26が周方向に沿って等間隔をおいて貫通して形成されている。
【0032】
フランジ体21のフランジ板部24の外周部には、半径方向外側(フランジ板部24の張出し方向)及び配置状態で壁表面Waと対向する裏面側の二方向に開口された横断面方形の環状凹部27が形成されている。図3に示されるように、継手本体11の第1雄ねじ部13に、フランジ体21の雌ねじ部22を螺着させた後に、当該フランジ体21の各ビス挿通孔26に挿通された各ビス62を、筒状本体部Dの先端部のビス下孔として機能する各溝部3に螺じ込むことで、当該筒状本体部Dの先端部の取付口1にフランジ体21が一体に取付けられて、そのフランジ板部24の密着面24aが壁表面Waに密着される。流体管Pの先端部に接続された継手本体11に対するフランジ体21の螺着は、雌ねじ部16に対する水栓類の接続と一緒に行われて、当該流体管Pを建物壁Wの壁貫通孔H1 から所定長だけ引き出して行うこともあり、この場合には、建物壁Wの壁貫通孔H1 から所定長だけ引き出された流体管Pの先端部の継手本体11に対してフランジ体21を螺着した後に、引き出された流体管Pを壁貫通孔H1 内に押し戻し、その後に、筒状本体部Dの先端部に対してフランジ体21を複数本のビス62により固定する際に、当該ビス62の回転時の押圧力により、当該フランジ体21のフランジ板部24の密着面24aは、壁表面Waに大きな力で押圧・密着される。これにより、壁表面Waと、前記環状凹部27における壁表面Waと対向する壁表対向面27aと、後述の底面31とで、フランジ体21の半径方向外側に開口された環状をしたコーキング材Kの充填溝G1 が形成される。環状凹部27の周面27bには、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン)から成る非接着性のテープ32が巻回されて、非接着性の充填溝G1 の底面31となる。
【0033】
継手本体11の第1雄ねじ部13に対するフランジ体21の螺着による接続及び継手本体11の雌ねじ部16に対する水栓類の螺着による接続を行った後において、筒状本体部Dに対して流体管Pを引き出して行うか否かに係わらず、筒状本体部Dの先端部に対してフランジ体21を複数本のビス62により固定する際に、当該ビス62の回転時の押圧力により、当該フランジ体21のフランジ板部24の密着面24aは、壁表面Waに大きな力で押圧・密着される。
【0034】
次に、図8に示されるように、壁表面Waに近接させたコーキングガン63を、建物壁Wの壁表面Waとの間に形成された環状の充填溝G1 に沿わせて移動させることで、当該充填溝G1 にコーキング材Kを充填させる。環状の充填溝G1 は、半径方向外方に開口しているために、その全体を明確に視認でき、しかもコーキングガン63の移動範囲内に障害物が全く存在しないため、コーキング材Kの充填作業を確実に、しかも迅速に行える。
【0035】
最後に、図9に示されるように、継手本体11の第2雄ねじ部14に、樹脂製の化粧リングRを螺着させることで、フランジ体21の全体が覆われて、水栓類を接続するための継手本体11の雌ねじ部16のみが露出される。
【0036】
このようにして、図4に示されるように、充填溝G1 にコーキング材Kが充填されると、当該充填溝G1 の底面31は、非接着性のテープ32が巻回されて非接着面となっているため、当該充填溝G1 に充填されたコーキング材Kは、壁表面Waと、当該壁表面Waと対向するフランジ体21の側の壁表対向面27aとの二面のみに接着され、底面31には非接着の二面接着構造となる。よって、充填溝G1 に充填されたコーキング材Kは、温度変化による熱伸縮応力、微振動、外力等の作用により多少変形させられても、二面接着部の接着状態を維持したままで変形可能であるので、壁表面Waと、管継手C1 を構成するフランジ体21との間の止水性を確保できる。なお、継手本体11の第1及び第2の各雄ねじ部13,14の段差部に設けられた水密リング15により、継手本体11とフランジ体21との間の止水性が確保される。
【0037】
充填溝G1 の対向二面の一方である壁表面Waの凹凸部が生じていても、この凹凸部にコーキング材Kが隙間なく充填されるため、当該凹凸部の存在とは無関係に、当該壁表面Waと、管継手C1 を構成するフランジ体21との間の止水性を確保できる。特に、実施例1では、壁貫通部形成部材Aを構成する筒状本体部Dの壁表面Waに臨む部分は、自由端構造になっているため、当該筒状本体部Dの自由端部の取付口1に固定状態で取付けられる管継手C1 のフランジ体21は、微動可能な構造であるが、当該フランジ体21と壁表面Waとの間の充填溝G1 に充填されたコーキング材Kは、底面31に対して非接着となる二面接着構造であるため、二面接着の上記利点が最大に発揮されて、壁表面Waとフランジ体21との間の止水性を確保できる。
【0038】
また、実施例1では、筒状本体部Dが壁貫通孔H1 に挿入されている壁貫通部形成部材Aは、壁裏側においては、筒状本体部Dの屈曲部Daに一体形成された固定平板部2が、壁裏側の構造物である一対の固定材61に固定され、壁表側においては、前記フランジ体21が壁表面Waに向けて押圧されることで、壁裏側及び壁表側の双方において、建物壁Wに固定されるので、壁貫通孔H1 に挿入された筒状本体部Dがしっかり支持される。この結果、筒状本体部Dの壁表側の取付口1に取付けられる管継手C1 のフランジ体21及び水栓が、当該筒状本体部Dにしっかり支持される。
【実施例2】
【0039】
次に、図10図12を参照して、本発明の別の実施例2について説明する。実施例2の管継手C2 は、継手本体部41にフランジ部42が一体に設けられていて、当該フランジ部42が複数本のビス64を用いて壁表面Waに固定される構成である。即ち、管継手C2 は、筒状をした継手本体部41の軸方向の一端部にフランジ部42が一体に設けられ、継手本体部41におけるフランジ部42と反対側の端部に、流体管Pを接続可能な接続部43が形成され、継手本体部41におけるフランジ部42の側の端部の内周面に、水栓類が接続される雌ねじ部44が形成された構成である。
【0040】
前記フランジ部42の外周部の裏面側には、断面方形の環状凹部45が形成されて、当該フランジ部42を複数本のビス64を用いて壁表面Waに固定した状態で、当該壁表面Waと、前記環状凹部45の壁表対向面45aと、周面45bにテープ32を巻回させることで形成された底面48とで、コーキング材Kの充填溝G2 が形成される。なお、図10において、49は、フランジ部42に形成されたビス挿通孔を示す。
【0041】
そして、壁貫通孔H2 に挿入された流体管Pを所定長だけ壁表側に引き出しておき、この状態で、管継手C2 の継手本体部41の接続部43に、引き出された流体管Pの先端部を接続させて、当該流体管Pを壁貫通孔H2 の内部に押し戻して、フランジ部42を壁表面Waに当接させ、当該フランジ部42の各ビス挿通孔49に挿通された各ビス64を建物壁Wに螺じ込むことで、流体管Pを接続した管継手C2 が壁表面Waに固定される。これにより、壁表面Waとの間に、底面48が非接着面となった二面接着構造のコーキング材Kの充填溝G2 が形成され、当該充填溝G2 にコーキング材Kを充填することで、管継手C2 のフランジ部42と壁表面Waとの間が止水される。
【0042】
実施例2の管継手C2 は、継手本体部41にフランジ部42が一体に設けられ、当該フランジ部42の外周部における壁表面Waと対向する側に環状凹部45が形成されて、フランジ部42を壁表面Waに直接に固定することで、壁表面Waとの間でコーキング材Kを二面接着によりコーキングして、先端部が前記継手本体部41に接続された流体管Pが挿入された壁貫通孔H2 の周縁部を止水する構造である。このような、管継手を構成するフランジ部が、壁表面に直接に固定されて、コーキング材Kにより壁貫通孔の周縁部を止水する構造において、継手本体とフランジ体(フランジ部)とを別体にして、当該継手本体に対してフランジ体を螺着する構成にしてもよい。
【実施例3】
【0043】
次に、図13を参照して、実施例3の管継手C3 について説明する。管継手C3 は、L字形に屈曲された継手本体51と、当該継手本体51と別体に形成されて、当該継手本体51に壁表側において螺着により一体に組み付けられるフランジ体52とから成る。L字形に屈曲された継手本体51は、直管部51aと屈曲部51bとから成り、当該屈曲部51bは、その全体が壁裏側に配置されて、継手本体51に一体に設けられた固定板部58を介して建物壁Wの壁裏に固定された固定材65に固定される。このため、継手本体51の直管部51aの壁表側は、自由端部となる。このようにして、継手本体51は、その直管部51aが建物壁Wの壁貫通孔H3 に挿通されて、その屈曲部51bが壁裏側に固定される構造である。直管部51aの先端部の外周面には、前記フランジ体52及び化粧リングRが螺着される第1及び第2の各雄ねじ部53,54が段差状となってそれぞれ形成され、直管部51aの先端部の内周面には、水栓が螺着される雌ねじ部55が形成されている。厚リング板状のフランジ体52は、その内周面に、継手本体51の第1雄ねじ部53と螺着される雌ねじ部56が形成され、外周部における壁表面Waに対向する側に環状凹部57が形成され、壁表面Waと、環状凹部57における壁表面Waと対向する壁表対向面57aと、環状凹部57の周面に巻回された非接着性のテープ32とで、コーキング材Kの充填溝G3 が形成される。
【0044】
継手本体51の第1雄ねじ部53に、フランジ体52の雌ねじ部55を螺着して、壁表面Waに押圧・密着させることで、壁表面Waとの間に、底面が非接着面となった充填溝G3 が形成され、当該充填溝G3 にコーキング材Kを充填することで、継手本体51の壁表側の部分が、コーキング材Kの二面接着構造により止水される。
【0045】
ここで、管継手C2 のフランジ部42が壁表面Waに固定される実施例2に対して、実施例1,3では、筒状本体部D又は継手本体51を壁裏側に固定して、当該筒状本体部D又は継手本体51の壁表側の端部に管継手C1 のフランジ体21又は管継手C3 のフランジ体52を螺着により固定しているため、壁表面Waに対してビスを螺じ込む必要がなく、当該ビス孔からの漏水等の問題が生じることがなく、管継手を設置できるが、その反面、壁裏側に固定されて壁表側に臨まされた管継手に、操作荷重や振動が直接に作用する水栓が接続されると、壁裏側の固定部から離れた壁表面と管継手との間には、相対的なずれが生じ易いが、本発明のように、壁表面と管継手のフランジ体(フランジ部)とのコーキングを二面接着構造とすることで、固定部が壁表面から離れており、前記ずれが生じ易い管継手であっても、コーキング材が剥離しにくく止水効果を高めることができる。
【0046】
特に、実施例1においては、壁貫通部形成部材の筒状本体部は、壁裏側において建物壁又は他の構造物に固定されて、壁表側は、自由端構造となっていて、当該自由端部に、管継手を含む被接続部材が接続されて、被接続部材のフランジ部の環状凹部と壁表面との間で、コーキング材の充填溝が形成される構成であるため、充填溝に充填されたコーキング材は、構造的に微動し易いので、コーキング材の二面接着によるコーキング材の剥離防止の効果は一層に大きい。
【0047】
また、実施例2においては、管継手の固定の相手方は、壁表面であって、コーキング材の充填空間と、建物壁に対する管継手の固定部とが近接していて、建物壁と管継手との一体性が高いために、荷重操作や管継手の振動によるコーキング材の剥離は発生しにくく、熱伸縮応力に対しても十分に機能する。
【0048】
更に、壁表面に密着状態で押圧されて、当該壁表面との間でコーキング材の充填溝を形成するフランジ部は、壁表面に臨んで壁内に配置された管継手に接続される水栓の側に一体に設けられていてもよい。
【0049】
なお、上記実施例では、非接着性のテープとして、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン)から成るテープ材を示したが、例えば、塗膜によりポリオレフィン系樹脂を充填溝の底面に塗膜層として形成することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
A:壁貫通部形成部材
B:エルボボックス
1 〜C3 :管継手
D:筒状本体部
1 〜G3 :環状充填溝
1 〜H3 :壁貫通孔
K:コーキング材
P:流体管
W:建物壁
Wa:壁表面
Wb:壁裏面
11,51:継手本体
12:流体管の接続部
13,53:第1雄ねじ部
21,52:フランジ体
27,45,57:環状凹部
32:非接着性のテープ
41:継手本体部
27a,45a:壁表対向面
31,48:充填溝の底面(非接着面)
61,65:固定材(構造物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13