(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
船舶の両船舷にそれぞれ設けられたフィンを互いに同相に傾斜を調整するフィン傾斜制御部、泡発生部が前記船舶から水中へ発生させる泡の量を調整する泡発生量制御部、前記船舶の主軸回転数及びプロペラのプロペラピッチを同じ速力で変化させる主機関雑音制御部、及び船底に設けられた雑音発生体が発生させる雑音を調整する雑音発生体制御部、の各サブ制御部うち2以上のサブ制御部を有する雑音制御部と、
前記2以上の各サブ制御部の組み合わせ及び制御条件に関係づけられて登録されている雑音周波数モードに基づいて、前記2以上のサブ制御部へのそれぞれの指令を一括して管理する雑音管理部と、
を備える雑音制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
<実施形態>
以下、本実施形態に係る雑音制御装置について、
図1〜
図8を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
(全体構成)
船舶1の全体構成について説明する。
図1に示すように、船舶1は、船体2と、雑音制御装置10と、コンソール40と、フィンスタビライザ51と、泡発生部52と、主機関53と、雑音発生体54と、を備える。
本実施形態において、船舶1は、鑑艇である。船舶1は、主機関53によって、海SEを+X方向に進む。
以下、船舶1の後方から前方に向かう方向は+X方向、船舶1の下方から上方に向かう方向は+Z方向、船舶1の右方から左方に向かう方向は+Y方向とも記載される。
コンソール40は、操作者によって操作される。コンソール40は、操作者に複数の雑音周波数モードを提示し、操作者によって選択された雑音周波数モードを雑音制御装置10に通知する。
以下、各構成について詳しく説明する。
【0021】
(フィンスタビライザ)
フィンスタビライザ51は、船体2の右舷2Rの下部に右側フィン51Rと、船舶1の左舷2Lの下部に左側フィン51Lを備える。
右側フィン51Rは、ZX断面において、+X側に前縁51F、及び−X側の後縁51Tを有する流線型を有している。同様に、左側フィン51Lも、ZX断面において、+X側に前縁51F、及び−X側の後縁51Tを有する流線型を有している。各流線型は、前縁51F側が肉厚となっている。
【0022】
図2の実線で示されるように、基準位置にあるとき、右側フィン51Rは、流線型の前縁51Fから後縁51Tに延びる基準線BLfがX方向に沿っている。同様に、左側フィン51Lも、流線型の前縁51Fから後縁51Tに延びる基準線BLfがX方向に沿っている。
右側フィン51Rは、基準位置に対し、
図2の点線で示されるように、Y方向に沿う軸Af周りに回動可能である。同様に、左側フィン51Lも、基準位置に対し、Y方向に沿う軸Af周りに回動可能である。
さらに、
図3に示すように、右側フィン51Rは、右舷2Rから−Y方向に向かって延びている。同様に、左側フィン51Lは、左舷2Lから+Y方向に向かって延びている。
【0023】
フィンスタビライザ51は、雑音制御装置10からの制御によって、
図3に示すように、右側フィン51Rと左側フィン51Lとを、流線型がX方向に沿う基準位置から、Y方向に沿う軸Af周りを同相(同方向)に回動する。
【0024】
具体的には、
図3の場合、船舶1の右方(紙面の左方)から見て、右側フィン51Rは軸Af周りを反時計回りに、左側フィン51Lは軸Af周りを反時計回りに、所定角度で回動される。船舶1の推進時において、回動された右側フィン51R及び左側フィン51Lは、水に乱れを発生させることによって、特定周波数の水中放射雑音を発生させる。フィンスタビライザ51は、右側フィン51R及び左側フィン51Lの回動角度によって、発生させる水中放射雑音の周波数を変化させることができる。本実施形態の場合、右側フィン51R及び左側フィン51Lの回動角度は、2〜3°である。
【0025】
加えて、フィンスタビライザ51は、フィンスタビライザ本来の制御として、右側フィン51Rと左側フィン51Lとを、Y方向に沿う軸Af周りを逆相(逆方向)に回動し、船舶1の左右のバランスを取る制御を行うことも可能である。
船体2が傾いた場合に、右側フィン51Rと左側フィン51Lとを逆相に回動することによって、フィンスタビライザ51は、船体2の左右(YZ平面内)の傾きを復元することができる。
例えば、
図4のように、フィンスタビライザ51は、船舶1の右方(紙面の左方)から見て、右側フィン51RをY方向に沿う軸Af周りを時計回りに、左側フィン51LをY方向に沿う軸Af周りを反時計回りに回動し、船体2の左右の傾きを復元する。この場合、
図4に示されるように、フィンスタビライザ51の働きによって、船体2が回動方向TLに向かって回動され、左右の傾きが復元される。
【0026】
(泡発生部)
図5に示すように、泡発生部52は、船舶1の右舷2R側、左舷2L側にそれぞれ、コンプレッサ52aと、配管52bと、を備える。泡発生部52は、雑音制御装置10からの制御によって、船舶1から水中へ泡BBを発生させたり停止させたりできると共に、泡BBの量を多段階で調整することができる。
【0027】
配管52bの一端は、コンプレッサ52aに接続され、他端は、複数に分岐している。船体2の右舷2R、左舷2Lは、それぞれ複数の開口穴2hを有している。配管52bの分岐した各他端は、各開口穴2hそれぞれに連通している。本実施形態において、船体2の右舷2R及び左舷2Lは、船体2の右舷2R下部及び左舷2L下部に、各開口穴2hをそれぞれ有する。
さらに船体2の右舷2R及び左舷2Lは、各開口穴2hを船体2の前方に有する。このため、発生させた泡BBは、船体2下部を覆うように、推進時の船舶1の前方から後方へ流れ、水中に放射された各種水中放射雑音を吸収する。
【0028】
コンプレッサ52aは、配管52bを介して、複数の開口穴2hへ圧縮空気を送り込む。各開口穴2hは、送り込まれた圧縮空気を水中へ放出することによって、多数の泡BBを発生させる。本実施形態では、コンプレッサ52aをオンオフ制御することによって、船舶1から水中へ泡BBを発生させたり停止させたりしている。
【0029】
泡発生部52は、圧縮空気の制御により、泡発生部52は、泡BBの量を多段階で調整する。発生させた泡BBの量に関連して、水中に放射された各種水中放射雑音の特定周波数の雑音の吸収量が変化する。このため、泡発生部52は、水中放射雑音のうち、特定周波数の雑音の吸収量を多段階で変化させることができる。
【0030】
(主機関)
図1に示されるように、主機関53は、エンジンを含む駆動源53aと、主軸53bと、プロペラ53cと、を備える。主機関53は、船舶1を推進させると共に、主軸53bの回転数(主軸回転数)に関連して、特定周波数の水中放射雑音を発生する。
【0031】
駆動源53aは、船舶1内に設けられ、主軸53bを介してプロペラ53cを回転駆動する。
【0032】
主軸53bは、駆動源53aからプロペラ53cに向かって船舶1の後下方へ延びている。主軸53bは、一端が駆動源53a、他端がプロペラ53cに連結されている。主軸53bは、駆動源53aによって、自身の中心軸Am周りに主軸回転数で回転駆動される。
【0033】
プロペラ53cは、船舶1の後下方に設けられる。プロペラ53cは、駆動源53aにより、主軸53bを介して回転駆動される。プロペラ53cは、駆動源53aの回転エネルギーを船舶1の推進力(推進エネルギー)に変換する。
プロペラ53cは、プロペラ基部53dと、複数のブレード53eを備える。プロペラ基部53dは、中心軸Am周りを周面とする回転体形状を有する。複数のブレード53eは、プロペラ基部53dの外周に環状に並べて配置される。各ブレード53eは、プロペラ基部53dの径方向外側に延びている。各ブレード53eは、プロペラ基部53dの径方向に沿うそれぞれの軸Ap周りで回動可能となっている。
【0034】
プロペラ53cは、CPP(Controllable Pitch Propeller:可変ピッチプロペラ)であって、一定の主軸回転数に対し、プロペラピッチ(翼角)を変化させることで推進力を変化させることができる。
本実施形態では、プロペラピッチは、
図6に示すように、各ブレード53eのプロペラ基部53dの径方向に沿うそれぞれの軸Ap周りの回動について、回動角度を変化させることによって調整される。各ブレード53eは、例えば、油圧システムや電気モータ等を用いたアクチュエータによって、軸Ap周りについて回動駆動される。
【0035】
主機関53は、本来の主機関53自身の制御によって、最大の推進力が得られる主軸回転数(基準主軸回転数)及びプロペラピッチ(基準プロペラピッチ)で駆動する。これに加えて、主機関53は、主軸回転数及びプロペラピッチを、雑音制御装置10からの制御によって、基準主軸回転数及び基準プロペラピッチと同じ速力が得られる主軸回転数及びプロペラピッチであって、基準主軸回転数及び基準プロペラピッチと異なる主軸回転数及びプロペラピッチに変化させる。このように主軸回転数及びプロペラピッチを変化させることによって、主機関53は、同じ速力であっても、基準主軸回転数及び基準プロペラピッチに設定された時とは異なる特定周波数の雑音を発生させることができる。
【0036】
(雑音発生体)
図7に示すように、雑音発生体54は、アクチュエータ54aと、進退軸54bと、棒状体54cと、を備える。雑音発生体54は、棒状体54cの船底2Bからの突出長さを変化させることができる。
【0037】
アクチュエータ54aは、船舶1内に設けられ、進退軸54bを介して棒状体54cを船体2の船底2Bから、船舶1外へ突出させる。
進退軸54bは、アクチュエータ54aから棒状体54cに向かって延びている。進退軸54bは、上端がアクチュエータ54aの進退機構、下端が棒状体54c上端にそれぞれ連結されている。進退軸54bは、アクチュエータ54aの駆動によって、上下動される。
棒状体54cは、船底2Bに収納可能に設けられる。棒状体54cは、アクチュエータ54aにより、進退軸54bを介して、船底2Bから突出されたり、収納されたりする。
船舶1の推進時において、棒状体54cが船底2Bから突出されると、棒状体54cは、水に乱れを発生させる。このため、雑音発生体54は、棒状体54cが船底2Bから突出させることによって、特定周波数の水中放射雑音を発生させることができる。
雑音発生体54は、雑音制御装置10からの制御によって、棒状体54cの船底2Bから突出量(突出長さ)を多段階で変化させることができる。突出量の制御によって、雑音発生体54は、発生させる水中放射雑音の特性周波数を多段階で変化させることができる。
【0038】
(雑音制御装置)
雑音制御装置10は、フィンスタビライザ51、泡発生部52、主機関53、及び雑音発生体54を制御し、船舶1固有の水中放射雑音を変化させる。
図8に示すように、雑音制御装置10は、雑音管理部20と、雑音制御部30と、を機能的に備える。
雑音管理部20は、モード受付部21と、データベース22と、組み合わせ決定部23と、指令部24を機能的に備える。
雑音制御部30は、複数のサブ制御部として、フィン傾斜制御部31と、泡発生量制御部32と、主機関雑音制御部33と、雑音発生体制御部34と、を機能的に備える。
本実施形態では、後述するプログラムを実行することにより、コンピュータを雑音管理部20及び雑音制御部30として機能させている。
【0039】
(雑音管理部)
モード受付部21は、コンソール40において選択された雑音周波数モードを受け付ける。
【0040】
データベース22には、複数の雑音周波数モードと、各雑音周波数モードを合成できるサブ制御部の組み合わせ及び制御条件と、が関係づけられたデータが登録されている。
各サブ制御部の組み合わせ及び制御条件に関係づけられる雑音周波数モードは、例えば、各サブ制御部の組み合わせ及び制御条件における水中放射雑音の周波数分布を予め計測することによって決定されてもよいし、計算やシミュレーションから導き出した周波数分布との関係から決定してもよい。
【0041】
組み合わせ決定部23は、データベース22に登録されているデータを参照して、雑音制御部30が有する各サブ制御部のうち、モード受付部21が受け付けた雑音周波数モードを合成可能なサブ制御部の組み合わせ及び制御条件を決定する。
各雑音周波数モードを合成する上で、制御する必要がないサブ制御部がある場合は、決定される組み合わせに加えない。さらに、制御する必要がないサブ制御部の制御条件は決定しない。
【0042】
指令部24は、決定された制御条件に関連するサブ制御部の各指令値を決定し、サブ制御部に各指令値を通知する。
本実施形態では、指令部24は、複数のサブ制御部のうち、組み合わせ決定部23で決定された組み合わせに該当するサブ制御部の各指令値を決定する。各指令値は、組み合わせ決定部23が決定した制御条件に関連して設定される。
さらに、指令部24は、複数のサブ制御部のうち、組み合わせ決定部23で決定された組み合わせに該当するサブ制御部に各指令値を通知する。
指令部24は、組み合わせ決定部23で決定された組み合わせに該当しないサブ制御部には、雑音制御を行わない旨の指令(雑音制御停止指令)を通知する。
【0043】
(フィン傾斜制御部)
指令部24からフィン傾斜制御部31へ指令値が通知されると、フィン傾斜制御部31は、右側フィン51R及び左側フィン51Lを互いに同相に傾斜させる。フィン傾斜制御部31は、指令値に関連する傾斜角度に、右側フィン51R及び左側フィン51Lの傾斜角度を調整する。
指令部24からフィン傾斜制御部31へ指令値が通知されないときは、フィン傾斜制御部31は、右側フィン51R及び左側フィン51Lの傾斜を制御しない。このため、右側フィン51R及び左側フィン51Lは、フィンスタビライザ51自身の制御によって、基準位置にあるか、右側フィン51Rと左側フィン51Lとを逆相に回動し、船舶1の左右のバランスを取る位置にある。
【0044】
(泡発生量制御部)
指令部24から泡発生量制御部32へ指令値が通知されると、泡発生量制御部32は、コンプレッサ52aをオンさせて、船舶1から水中へ泡BBを発生させる。さらに、泡発生量制御部32は、圧縮空気の圧力が指令値に関連する圧力となるように、コンプレッサ52aを制御し、泡BBの量を調整する。
指令部24から泡発生量制御部32へ指令値が通知されないときは、泡発生量制御部32は、コンプレッサ52aをオフさせる。
【0045】
(主機関雑音制御部)
指令部24から主機関雑音制御部33へ指令値が通知されると、主機関雑音制御部33は、主機関53によって設定された基準主軸回転数及び基準プロペラピッチと異なる主軸回転数及びプロペラピッチに、同じ速力で変化させる。
異なる主軸回転数及びプロペラピッチに変化させると、同じ速力であっても、基準主軸回転数及び基準プロペラピッチに設定された時とは異なる特定周波数の雑音を発生させることができる。
主機関雑音制御部33は、指令値に関連する主軸回転数となるように、主機関53を制御する。主機関雑音制御部33は、主軸回転数の変化によって船舶1の速力が変化しないように、主軸回転数の変化に関連してプロペラピッチを変化させる。
例えば、指令値が、主軸回転数を、基準主軸回転数に対し10%増加させる指令であれば、主機関雑音制御部33は、基準プロペラピッチに対し(単位主軸回転数に対する)速力が10%低下するようにプロペラピッチを変化させる制御を行う。
指令部24から主機関雑音制御部33へ指令値が通知されないときは、主機関雑音制御部33は、主軸回転数及びプロペラピッチを制御しない。このため、主機関53は、基準主軸回転数及び基準プロペラピッチで駆動する。
【0046】
(雑音発生体制御部)
指令部24から雑音発生体制御部34へ指令値が通知されると、雑音発生体制御部34は、アクチュエータ54aを駆動させ、棒状体54cを船底2Bから突出させる。さらに、雑音発生体制御部34は、指令値に関連する突出量に、棒状体54cの突出量を調整し、特定周波数の水中放射雑音を発生させる。
指令部24から雑音発生体制御部34へ指令値が通知されないときは、雑音発生体制御部34は、棒状体54cを船底2Bから突出させない。
【0047】
(作用及び効果)
雑音制御装置10は、水中放射雑音を放射又は吸収する機器を個別に制御することによって、任意の周波数分布の雑音を合成できる。このため、船舶1固有の水中放射雑音を抑制できるため、水中放射雑音から船舶1の位置が把握されにくい。
【0048】
例えば、船舶1が艦艇である場合、潜水艦からの雑音の周波数分布による自艦の特定を困難にさせることができる。
艦艇は、推進時において、主機関を含む推進器、船体、艦内機器による固有の水中放射雑音を発生する。固有の水中放射雑音が潜水艦によって特定されれば、潜水艦に対する自艦の距離、方位、速力等が、潜水艦によって探知される。
このため、潜水艦に探知されないように、主機関を含む推進器、船体、艦内機器それぞれの低減対策が進められている。しかし、低減された水中放射雑音レベルによっても、依然、自艦の位置、方位、速力等を潜水艦に探知される可能性がある。例えば、艦艇の駆動源が発するエンジン音の周波数から主軸回転数が推定され、艦艇の速力が探知される可能性がある。
【0049】
本実施形態によれば、艦艇固有の雑音をそのまま水中に放射させず、任意の周波数分布の雑音に合成して放射している。このため、潜水艦によって、水中放射雑音から推定される艦艇の速力や艦艇との距離を欺瞞することが可能となる。
【0050】
例えば、艦艇の主軸回転数及びプロペラピッチを同じ速力で変化させれば、艦艇の速力と主軸回転数の関係が一定とならないために、艦艇の速力を欺瞞できる。
また、泡発生部52が発生させる泡の量を調整すれば、水中放射雑音の吸収によって、艦艇との距離を欺瞞できる。
さらに、フィンスタビライザ51から雑音を発生させたり、雑音発生体54から雑音を発生させたりすれば、発生させる特定周波数の雑音によって、他の雑音の特定を妨害することができ、艦艇の速力や艦艇との距離を欺瞞することができる。
【0051】
(変形例)
本実施形態では、泡発生部52は、船体2の右舷2R、左舷2Lにコンプレッサ52a及び配管52bを各1対ずつ備えるが、変形例として、右舷2Rにコンプレッサ52a及び配管52bを複数対、左舷2Lにコンプレッサ52a及び配管52bを複数対備えてもよい。この場合、各コンプレッサ52aを独立にオンオフすることによって、泡の量を多段階に調整することができる。
【0052】
本実施形態では、棒状体54cが1本設けられているが、変形例として、棒状体54cが複数本設けられてもよい。複数の棒状体54cの突出量を独立に制御すれば、より複雑な周波数分布の水中放射雑音を発生させることができる。複数の棒状体54cの各太さ、各形状、各材質等を変化させれば、さらに複雑な周波数分布の水中放射雑音を発生させることができる。
【0053】
本実施形態では、雑音発生体54は、棒状体54cを備え、雑音発生体制御部34が、棒状体54cを船底2Bから突出させて雑音を発生している。変形例として、雑音発生体54がスピーカーを備え、雑音発生体制御部34が、スピーカーから発生させる雑音の周波数を制御してもよい。
【0054】
本実施形態では、船舶1は、フィンスタビライザ51、泡発生部52、主機関53及び雑音発生体54の各機器を全て備えるが、変形例として、当該各機器のうち、少なくとも2以上を備えるものであればよい。この場合、雑音制御部30は、船舶が備える各機器に関連するサブ制御部を少なくとも備えればよい。
例えば、各雑音周波数モードを合成するのに、雑音発生体54が必要ないときは、船舶1は雑音発生体54を備えなくてもよい。この場合、雑音制御部30は、少なくとも雑音発生体制御部34を備えなくてもよい。
各雑音周波数モードを合成するのに、雑音を吸収する必要がないときは、船舶1は泡発生部52を備えなくてもよい。この場合、雑音制御部30は、少なくとも泡発生量制御部32を備えなくてもよい。
各雑音周波数モードを合成するのに、フィンスタビライザ51が必要なく、船体2の左右の傾きを復元する必要がないときは、船舶1はフィンスタビライザ51を備えなくてもよい。この場合、雑音制御部30は、少なくともフィン傾斜制御部31を備えなくてもよい。
各雑音周波数モードを合成するのに、主機関53の雑音調整が必要なく、プロペラピッチが必要ないときは、プロペラ53cを、可変ピッチプロペラとせず、固定ピッチプロペラとしてもよい。この場合、雑音制御部30は、少なくとも主機関雑音制御部33を備えなくてもよい。
【0055】
本実施形態では、組み合わせ決定部23は、雑音周波数モードを合成可能なサブ制御部の組み合わせ及び制御条件を決定している。変形例として、制御条件を決定せず、雑音周波数モードを合成可能なサブ制御部の組み合わせのみを決定するものであってもよい。このとき、データベース22には、制御条件と関係づけずに、複数の雑音周波数モードと、各雑音周波数モードを合成できるサブ制御部の組み合わせのみと、が関係づけられたデータが登録される。
【0056】
<雑音制御方法>
本発明に係る実施形態の雑音制御装置10を用いた雑音制御方法について、
図9を参照して説明する。
【0057】
コンソール40によって雑音周波数モードが選択されると、モード受付部21は、コンソール40において選択された雑音周波数モードを受け付ける(S
T1:受け付けステップ)。
【0058】
受け付けステップS
T1に続いて、組み合わせ決定部23は、データベース22に登録されているデータを参照して、雑音制御部30が有する各サブ制御部のうち、モード受付部21が受け付けた雑音周波数モードを合成可能なサブ制御部の組み合わせ及び各制御条件を決定する(S
T2:組み合わせ決定ステップ)
。
【0059】
組み合わせ決定ステップS
T2に続いて、指令部24は、決定された制御条件に関連するサブ制御部の各指令値を決定し、サブ制御部に各指令値を通知する。(S
T3:指令ステップ)。
指令ステップS
T3において、指令部24は、複数のサブ制御部のうち、組み合わせ決定部23で決定された組み合わせに該当するサブ制御部の各指令値を決定する。各指令値は、組み合わせ決定部23が決定した制御条件に関連して設定される。
指令ステップS
T3において、指令部24は、複数のサブ制御部のうち、組み合わせ決定部23で決定された組み合わせに該当するサブ制御部に各指令値を通知する。
指令ステップS
T3において、指令部24は、組み合わせ決定部23で決定された組み合わせに該当しないサブ制御部に、雑音制御を行わない旨の指令(雑音制御停止指令)を通知する。
【0060】
指令ステップS
T3に続いて、雑音制御部30は、受け付けステップST1で受け付けた雑音周波数モードに基づいて決定される指令値に関連して、船舶1の両船舷にそれぞれ設けられたフィンを互いに同相に傾斜を調整するフィン傾斜制御ステップ、船舶1から水中へ発生させる泡の量を調整する泡発生量制御ステップ、船舶1の主軸回転数及びプロペラのピッチを同じ速力で変化させる主機関雑音制御ステップ、及び船底2Bに設けられた雑音発生体54が発生させる雑音を調整する雑音発生体制御ステップ、の各サブ制御ステップうち2以上のサブ制御ステップを実施する(S
T4:サブ制御ステップ)。サブ制御ステップS
T4は継続され、操作者によって終了指示が入力されると処理は終了する。
【0061】
なお、上述の各実施形態においては、雑音制御装置の各種機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをマイコンといったコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各種処理を行うものとしている。ここで、コンピュータシステムのCPUの各種処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0062】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。