(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
本発明または本明細書において、編布とは、糸でループを連続して作成し、上記ループに他の糸または同じ糸の続きを引っ掛けることで繰り返し作られた編目で構成された布地である。また、一方方向にループを連続して形成する方向を横方向といい、横方向に対し交差する方向を編方向という。
また、本発明または本明細書において、編布に形成された凸条部とは、編布の一方面側において、面方向に対し交差する方向に突出するとともに横方向に延在する部分であり、凹条部とは、凸条部と凸条部との間において横方向に延在し、凸条部に対し相対的に凹状の部分である。本発明の説明において、編方向に引っ張る、または編方向に引っ張り力が付加される、とは、編方向のみ、編方向と当該編方向とは逆方向の両方、または編方向の逆方向のみに、編布が伸長する程度の力が付加されたことを意味する。
【0015】
<第一実施形態>
以下に、本発明の編布の第一実施形態について
図1、
図2を用いて説明する。また本発明の比較対象例の説明に関し、適宜
図5を用いる。
図1は、本発明の第一実施形態にかかる編布100の上面図である。
図2A及び
図2Bは、第一実施形態にかかる編布100の側面を横方向Bから観察した場合の概略側面図であり、
図2Aは、編布100に力が加わっていない状態を示し、
図2Bは、編布100に対し、編方向Aに引っ張り力が付加された状態を示す。
図5A及び
図5Bは、本発明の比較対象となる編布400の側面を横方向から観察した場合の概略側面図であり、
図5Aは、編布400に力が加わっていない状態を示し、
図5Bは、編布400に対し、編方向Aに引っ張り力が付加された状態を示す。
【0016】
はじめに、本実施形態の編布100の概要について説明する。
図1に示すとおり、編布100は、一方面側において、編方向Aに交差する方向である横方向Bに延在する凸条部10と、横方向Bに延在する凹条部20と、を交互に備える。
凸条部10は、編方向Aにおいて第一糸12で構成された第一ループ14を2以上有してなる第一ループ列16が、横方向Bに連続することで構成されている。一方、凹条部20は、第二糸22で構成された第二ループ24を有してなる第二ループ列26が、横方向Bに連続することで構成されている。尚、凸条部10と凹条部20とを設けたことによる編布100の一方面側における凹凸の状態は、横方向Bから編布100の側面を観察した概略側面図である
図2Aにおいて理解容易である。
【0017】
編布100において、第一糸12は、第二糸22の伸縮性よりも小さい伸縮性を示すものが選択される。このように第一糸12と第二糸22の伸縮性を異ならしめることによって、相対的に伸縮性の小さい第一糸12から構成される第一ループ列16が、相対的に伸縮性の大きい第二糸22から構成される第二ループ列26より編布100の面方向に対し突出するよう盛り上がる(
図2A参照)。盛り上がった第一ループ列16が横方向Bに連続することで、凸条部10が構成される。また凸条部10と凸条部10との間には、相対的に凹部となる凹条部20が構成される。上述のとおり伸縮性の異なる第一糸12及び第二糸22を用いることで、編布100を製造する際、一方側面に凹凸部を形成するために編み方の変更を要さず、簡易かつ明確に、凸条部10及び凹条部20を形成することができる。
【0018】
編布100を構成する第一糸12及び第二糸22等の糸の伸縮性の確認は、以下のとおり行う。即ち、2種類の糸を用い、横編機にて、速度1.0m/分、上記2種類の糸を1種類ずつ4コース毎に繰り返し編むという条件で平編みし、筒状の編布を作製する。得られた筒状の編布を肉眼で観察し、当該筒状の編布の内側面において、凸条部を構成する糸を第一糸とし、隣り合う上記凸条部間において相対的に凹である凹条部を構成する糸を第二糸とする。
上記横編機とは、平らな針床を用いて編布を編む編機であり、例えば、株式会社島精機製作所製ホールガーメント横編機SWGO61N2を挙げることができる。かかるホールガーメント横編機を用いて第一糸と第二糸との伸縮性を確認する場合には、たとえば、度目40程度に設定し、筒状の編布を作製するとよい。尚、上記コースとは、編方向とは交差する方向(糸の給糸方向、上述する横方向と同意)に延在する編目のことをいう。
【0019】
編布100は、横方向Bにおいて隣り合う一つの第一ループ列16と他の第一ループ列16との間に、第三ループ列36を有している。第三ループ列36は、第一ループ列16を構成する第一ループ14の数より少ない数の第三ループ34を有して構成される。第三ループ列36を備えることにより、編布100は、編方向Aに引っ張られた場合であっても、凸条部10が完全に平坦化することが防止され、凸条部10を設けたことによる効果が良好に維持される。第三ループ列36を備えることによる作用及び効果を以下に説明する。
【0020】
まず比較対象として、第三ループ列36を有しないこと以外は編布100と同様に構成された編布400について説明する。編布400の概略側面図を
図5Aに示す。編布400は、相対的に伸縮性の小さい第一糸12から形成された第一ループ14を複数備える第一ループ列16と、相対的に伸縮性の大きい第二糸22から形成された第二ループ24を複数備える第二ループ列26とを編方向Aにおいて交互に有している。
図5Aの紙面手前方向から奥方向に第一ループ列16が連続することで凸条部10が構成され、同方向に第二ループ列26が連続することで凹条部20が構成されている。この編布400を編方向A(即ち、紙面左右方向)に引っ張ると、
図5Bに示すとおり、第一ループ14及び第二ループ24が編方向Aに伸長するとともに、
図5Aに示された凸条部10及び凹条部20が平坦化する。この状態では、編布400に凸条部10を設けたことによる効果が損失する。
【0021】
一方、本実施形態にかかる編布100は、
図1に示すとおり、横方向Bにおいて隣り合う一つの第一ループ列16と他の第一ループ列16との間に、第一ループ列16を構成する第一ループ14の数(本実施形態では具体的には4個)より少ない数の第三ループ34(本実施形態では具体的には1個)を有してなる第三ループ列36を有している。そのため、
図2Aに示すとおり、側面観察において、第一ループ16の奥方向に第三ループ34からなる第三ループ列36が観察される。上述する
図5Bと同様に、編布100を編方向A(即ち、紙面左右方向)に編布100を引っ張った場合、第一ループ14、第二ループ24、及び第三ループ34は、それぞれ引張方向に伸長する。しかし、第三ループ列36は第一ループ列16よりもループ数が少ないため、第一ループ列16に先んじて第三ループ列36が伸長限界に達し、編布100がさらに引っ張り方向に伸長することを規制する。即ち、編方向Aにおいて、伸びきった第三ループ列36は、第一ループ列16が伸びきり、これにより凸条部10が平坦化することを規制する規制部となる。そのため、編布100は、編方向Aに強く引っ張られた場合であっても、凸条部10がある程度の高さで維持され、凸条部10を設けたことによる効果が完全に損失することがなく良好に維持される。
【0022】
上記構成を有する編布100によれば、凸条部10を有することによって、凸条部10内に空間が確保され、当該空間に気体または液体を含有させることができる。そのため、編布100は、洗浄具に用いられた場合には、泡立ちが改善され、また衣類に用いた場合には、保温性が向上する等の機能が発揮される。また編布100が洗浄具に用いられた場合、凸条部10は、汚れの掻き取り部として機能し、洗浄性の向上に貢献する。また、編布100は、凸条部10を備えることで意匠性に優れる。しかも、上述にて説明するとおり、編布100は、第三ループ列36を備えることから、編方向Aに引っ張られた際にも、凸条部10が完全に平坦化することなく維持されるため、凸条部10を設けたことによる上記効果が喪失することがない。
【0023】
さらに、編布100が、編方向Aに伸長と収縮を繰り替えした場合であっても、第三ループ列36が第一ループ列16に先んじて伸びきるため、第一ループ列16は限界まで引っ張られることがない。そのため、少なくとも第一ループ列16に用いられた第一糸12は、第三ループ列36を構成する糸(第三糸)に比べて、長期間、良好な弾性力を維持することができ、この結果、凸条部10の形状が長期間良好に維持され得る。
【0024】
次に、本実施形態の編布100について詳細に説明する。
本実施形態における編布100は、
図1に示すとおり、一方面側において、横方向Bに延在する凸条部10と、同方向に延在する凹条部20とを交互に備えている。本実施形態では凸条部10と凹条部20とは略平行である。ここで、凸条部10および凹条部20が、横方向Bに延在するとは、凸部及び、凸部と凸部との間にある凹部が、横方向Bに向かって延びるように連続して存在することを意味する。
【0025】
凸条部10は、第一ループ列16が横方向Bに連続することにより形成されている。第一ループ列16を構成する複数の第一ループ14は、それぞれ第一糸12から構成されている。一方、凹条部20は、第二ループ列26が横方向Bに連続することにより形成されている。第二ループ列26を構成する1個または複数の第二ループ24は、第二糸22から構成されている。凸条部10と凹条部20との境界は、第一ループ14と第二ループ24とが連係している。一般的な編物と同様に、編物100は、横方向Bにおいて、隣り合う第一ループ14、14間は、これらを構成する第一糸12において連結している。かかれる連結部分を連結部18と称する。また同様に、横方向Bにおいて、隣り合う第二ループ24、24間は、これらを構成する第二糸22において連結している。かかれる連結部分を連結部28と称する。
【0026】
第一糸12は、相対的に第二糸22より伸縮性の小さい糸であればよい。したがって第一糸12の太さや材質は特に限定されない。また同様に、第二糸22の太さや材質も特に限定されない。第一糸12及び第二糸22が同じ材質にて構成される場合には、相対的に糸の径を小さくすることで伸縮性が大きくなるよう調整可能である。本実施形態では第一糸12及び第二糸22は、同じ材質で構成されており、第一糸12の径を第二糸22よりも大きくすることで、第二糸22に比べて第一糸12の伸縮性が相対的に小さくなるよう調整している。
【0027】
尚、凸条部10は、凸形状が阻害されない範囲において、第一糸12とは伸縮性が異なる糸が含まれていてもよく、また凹条部20は、凹形状が阻害されない範囲において、第二糸22とは伸縮性が異なる糸が含まれていてもよい。
【0028】
第一糸12及び第二糸22として用いられる糸は、編布100を構成可能な糸から適宜選択される。上記糸としては、綿糸、ポリエステル、ナイロンもしくはポリオレフィン等を用いて作製された樹脂製糸、または銅、鉄、ステンレス、もしくはアルミニウム等を用いて作製された金属製糸などが例示される。また上記糸は、単繊維であるモノフィラメント糸または多数の繊維が縒り合わさって作製されたマルチフィラメント糸のいずれであってもよい。曲げ弾性の大小が示される範囲で、第一糸12及び第二糸22は、同種の材料からなる糸から選択されてもよいし、異種の材料からなる糸から選択されてもよい。
伸縮性が顕著に小さい糸を選択し、凸条部10を確実に形成するという観点からは、第一糸12として、横断面におけるアスペクト比が、1:1.5以上1:100以下であるスリット糸を選択することが好ましい。スリット糸は、一般的に樹脂から形成された断面扁平の樹脂製糸であって硬度が高い。そのため、スリット糸を用いて構成した凸条部10を備える編布100は、洗浄具に用いられることで、当該洗浄具の汚れの掻き取り機能をより高くすることができる。
【0029】
本実施形態にかかる編布100は、第一ループ列16における第一ループ14の数が、第二ループ列26における第二ループ24の数よりも多くなるよう構成されている。具体的には、本実施形態では、一つの第一ループ列16における第一ループ14の数は、4個であり、一つの第二ループ列26における第二ループ24の数は、2個である。このように凸条部10を構成する第一ループ14の数を、凹条部20を構成する第二ループ24よりも多くすることで、凸条部10を明確に形成し、凸条部10によって確保される空間の容積を大きくするなど、凸条部10を設けたことによる効果を顕著に発揮することが可能である。
ただし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明は、第一ループ列16における第一ループ14の数が、第二ループ列26における第二ループ24の数と同じである態様、及び第二ループ24の方が多い態様を包含する。
【0030】
次に第三ループ列36について説明する。上述のとおり、第三ループ列36は、第三糸を用いて形成された第三ループ34より構成されている。一つの第三ループ列36における第三ループ34の数は、一つの第一ループ列16における第一ループ14の数よりも少ない。第一ループ列16、16間において存在する第三ループ34は、編方向Aにおいて第一ループ14と比較して相対的に大径のループである。一つの第三ループ列36における第三ループ34の数に対し、一つの第一ループ列16における第一ループ14の数は、2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、4倍以上であることがさらに好ましい。本実施形態では4倍の例を図示している。このように第三ループ34の数に対し第一ループ14の数が多いほど、編布100が編方向Aに引っ張られて第三ループ列36の伸長限界に達したときの、凸条部10の形状の維持が良好である。ただし、一つの第三ループ列36における第三ループ34の数が、一つの第一ループ列16の第一ループ14の数に比べて少なすぎると、第三ループ34の編方向Aにおける寸法が大きくなり過ぎ、第三ループ34に指や任意の物品が引っかかりやすく、編目の吊れが発生する虞がある。かかる観点から、一つの第三ループ列36と、一つの第一ループ列16とにおいて、1個の第三ループ34に対し、第一ループ14は、10個以下であることが好ましく、8個以下であることがより好ましく、5個以下であることがさらに好ましい。
【0031】
一つの第三ループ列36を構成する第三ループ34の数は、特に限定されないが、本実施形態では具体的には1個である。本実施形態における編布100は、
図1または
図2に示すとおり、上面視において、4個の第一ループ14から構成される第一ループ列16と、1個の第三ループ34から構成される第三ループ列36とが、横方向Bに交互に連続している。このように第三ループ列36を構成する第三ループ34の数を1個とすることで、編布100の構成をシンプルで、かつ製造容易な構成とすることができる。
【0032】
本実施形態にかかる編布100は、第三ループ34を構成する第三糸が、第二ループ24を構成する第二糸22と共通である。より具体的には、本実施形態では、凹条部20を構成する第二ループ列26、26の間において、第二ループ24を構成する第二糸22で大径のループを形成し、これを第三ループ34としている。このように第二糸22と第三糸とを兼用することで、編布100を製造する際に用いる糸の種類を減らすことができ、製造工程を単純化することがきる。
【0033】
本実施形態では、第二ループ列26は、2個の第二ループ24により構成されている。即ち、第二ループ列26は、2本の第二糸22が用いられている。この2本の第二糸22のうちの1本が、第三ループ34を構成するための第三糸として兼用されている。第三ループ34の構成に兼用されていない残りの第二糸22は、編方向Aにおいて第三ループ34と第三ループ34とを連係する連係ループ35を構成している。本実施形態では、連係ループ35は、第二ループ24と略同寸法である。連係ループ35を設けることは本実施形態において必須ではなく、図示省略する変形例として、連係ループ35を省略し、編方向Aにおいて、第三ループ34同士を直接に連続させてもよい。
【0034】
第三糸は、第一糸12及び第二糸22に対し、伸縮性の相対的な大小は規定されない。第三糸は、実質的に第一糸12または第二糸22と同じであってもよいし、第一糸12及び第二糸22とは異なる伸縮性を示す糸であってもよい。第三糸は、上述する第一糸12及び第二糸22と同様の糸から適宜選択されてよい。
【0035】
編布100において凸条部10の突出方向を上方向とし、反対方向を下方向として上下を規定した場合、本実施形態における第三ループ列36は、第一ループ列16よりも下位に位置している。即ち、第三ループ列36を構成する第三糸(第二糸22と兼用される糸)は、第一糸12の下を通っている。
図1の上面図では、第三ループ列36は、第一ループ列16、16の間において、下方に視認されている。しかし第一ループ列16、16間を繋ぐ連結部18の長さを適度に調整することで、実際の編布100は、凸条部10が視認される一方側の面から実質的に第三ループ列36が視認されないよう編成され得る。これにより、編布100は、第三ループ列36の視認により上記一方側面における意匠性が低下することが防止される。また凸条部10を備える面を表側とし、反対側面を裏側とした場合、編布100は、表側において、第一ループ14及び第二ループ24より大径である第三ループ34に対し指や任意の物品がひっかかり編目が吊れるという問題が防止される。
【0036】
本実施形態における編布100を作成する手段は特に制限されず、機械編または手編みのいずれ手段も包含する。たとえば、本実施形態の編布100は、横編機で編成される。また本実施形態の編布100の編み方は特に制限されず、平編み、ゴム編み、パール編、またはメリヤス編み等の一般的に知られるいずれの編み方が採用されてもよい。編布100は、編み方の種類によらず、第一糸12及び第二糸22の伸縮性を異ならしめることで、凸条部10及び凹条部20を設けることができる。尚、本実施形態では、いずれのループも一本の編糸で構成した態様を示したが、図示省略する変形例として、第一ループ14、第二ループ24、または第三ループ34のいずれか、または組合せ、または全部が2本以上(即ち複数本取り)の編糸で構成されてもよい。
【0037】
<第二実施形態>
次に本発明の第二実施形態にかかる編布200について
図3を用いて説明する。
図3は、編布200の上面図である。編布200は、第三ループ34を構成する編糸が、第二糸22とは異なる第三糸32である点が、上述する編布100と異なる。
【0038】
編布200の構成について詳細に説明する。編布200は、
図3に示すとおり、一方面側において、横方向Bに延在する凸条部10と、横方向Bに延在する凹条部20と、を交互に備えている。本実施形態では凸条部10は、編方向Aにおいて第一糸12で構成された第一ループ14を3個有してなる第一ループ列16が、横方向Bに連続することで構成されている。一方、凹条部20は、第二糸22で構成された第二ループ24を2個有してなる第二ループ列26が、横方向Bに連続することで構成されている。第一糸12の伸縮性が第二糸22の伸縮性よりも小さいことは、第一実施形態と同様である。
【0039】
編布200は、横方向Bにおいて隣り合う一つの第一ループ列16と他の第一ループ列16との間に、第一ループ列16を構成する第一ループ14の数より少ない数の第三ループ34を有してなる第三ループ列36を有している。
【0040】
本実施形態にかかる編布200において、第三ループ34を構成する糸(第三糸32)は、第二ループ24を構成する第二糸22とは非共通である。また、第一糸12で形成された第一ループ14と、第二糸22で形成された第二ループ24とは任意の箇所(例えば凸条部10と凹条部20との境界)で連係しているが、これらのループと、第三糸32で形成された第三ループ34とは互い連係していない。換言すると、第三ループ列36は、第一ループ列16及び第二ループ列26に対し独立している。
【0041】
ただし、編布200において凸条部10の突出方向を上方向とし、反対方向を下方向として上下を規定した場合、第三糸32は、第一糸12と第二糸22とに対し、上下で交差している。そのため、第三ループ列36は、第一ループ列16及び第二ループ列26に対し、分離することがない。具体的には、本実施形態では、第三糸32は、隣り合う第一ループ列16、16間において、第一糸12の下側に配置されており、一方、隣り合う第二ループ列26、26間において、第二糸22の上側に配置されている。
【0042】
本実施形態では、第三ループ列36は、1個の第三ループ34により構成されている。本実施形態における第三ループ34は、編方向Aにおいて、第一ループ列16を構成する3個の第一ループ14と、第二ループ列26を構成する2個の第二ループ24とに相当する程度に大径である。
【0043】
上述のとおり、編布200における第三ループ列36は、第一ループ列16及び第二ループ列26に対し独立している。かかる編布200が編方向Aに引っ張られたとき、大径の第三ループ34の伸長に、第一糸12及び第二糸22が追従しにくい。そのため、第三ループ34が伸長限界に到達することで編方向Aに対する編布200の伸長が規制された際、凹条部20が、第三糸32に吊られて形状の一部が変形し、凹条部20の変形に吊られて凸条部10が変形するといった虞がない。したがって編布200は、編方向Aに引っ張られた場合、編布100と同様に凸条部10が完全に平坦化せず、かつ残存する凸条部10の形状が良好に維持される。
【0044】
<第三実施形態>
次に本発明の第三実施形態について
図4を用いて説明する。
図4Aは、本発明の第三実施形態にかかる洗浄具300の概略斜視図であり、
図4Bは、
図4AにおけるI−I断面を示す洗浄具300の概略断面図である。尚、
図4Bでは、第一ループ、第二ループ、及び第三ループを個々に図示することを省略し、線状に第一ループ列16、第二ループ列26、及び第三ループ列36を示している。
【0045】
本実施形態にかかる洗浄具300は、本発明の編布を用いて構成されている。本実施形態では、編布100を用いて構成された洗浄具300について具体的に説明する。洗浄具300は、編布100を備えることにより、編布100の特徴的な構造に起因する望ましい機能を発揮する。具体的には、洗浄具300は、編布100における凸条部10を有することにより、気体及び液体(洗剤を含む)を充分に含有することができ、良好な泡立ち性を発揮する。また凸条部10は、汚れの掻き取り性も発揮するため、洗浄具300は、洗浄性に優れる。しかも編布100は、上述にて説明するとおり、編方向Aに引っ張られても、凸条部10が平坦化せずに凸形状が維持されるので、上記泡立ち性及び洗浄性が良好に維持される。
【0046】
本発明の洗浄具は、一枚の編布100から構成することもできるが、本実施形態では、2枚の編布100を対向させて筒状または袋状(以下、筒状等という)に構成された洗浄具300の態様を示す。第一の編布100及び第二の編布100それぞれは、凸条部10が筒状等の洗浄具300の露出面側に配置される向きで、対向配置されると良い。これにより、洗浄具300は、凸条部10による汚れの掻き取り機能を両面において発揮し高い洗浄性を示す。
【0047】
第一の編布100と第二の編布100は、いずれも第三ループ列36が第一ループ列16の下側に位置するよう形成されている。即ち、凸条部10(第一ループ列16)が対向配置された2枚の編布100の露出面側に配置されることで、第三ループ列36は、洗浄具300の対向面側に位置する。この結果、洗浄具300において、第三ループ列36は使用者から視認され難く、また使用者の指や被洗浄物は第三ループ列36にひっかかり難い。
【0048】
洗浄具300の製造方法は特に限定されない。たとえば、横編機等の編機で第一の編布100及び第二の編布100を連続的に編むことで、筒状等の洗浄具300を製造することができる。また異なる製造方法として、個別に編成された2枚の編布100を、凸条部10が露出面側となるように対向させて互いを接合し、筒状等の洗浄具300を製造してもよい。上記接合とは、洗浄作業により2枚の編布100が互いに離間しないように合わせることを意味し、縫製、編成、または接着等のいずれの手段であってもよい。
【0049】
図示する洗浄具300は、袋状に構成されている。具体的には、第一の編布100及び第二の編布100は、横方向端部112において、接合されているか、または連続的に編まれたことにより輪をなしている。また第一の編布100及び第二の編布100は、編方向端部114のうちの一方が閉じられるとともに他方が開口して開口部110が設けられている。このように袋状に構成された洗浄具300は、開口部110から内部に使用者の指を挿入させることができ、被洗浄部の細部や曲面等を良好に洗浄することができる。尚、本実施形態は、編方向端部114の両端に開口部110を設けて筒状とする態様、及び開口部110を設けず編方向端部114の両方を閉じる態様を包含する。
【0050】
図示省略する変形例として、洗浄具300は、第一の編布100と第二の編布100との間に多孔質体が配置されてもよい。即ち、袋状に構成された洗浄具300の内部に多孔質体を内包させてもよい。内部に多孔質体を備えることで、洗浄具300の泡立ち性、またはクッション性を高めることができる。
【0051】
ここで、多孔質体とは、洗剤と水を含みうる程度の孔を複数有し、適度な弾性を有する固体であって、たとえばウレタンフォーム等の樹脂発泡体(所謂、スポンジ)、不織布体、またはヘチマスポンジ等の植物の繊維体等が挙げられる。
【0052】
以上に、編布の実施形態、及び当該編布を用いた洗浄具について説明したが、本発明の編布は、洗浄具だけでなく、広く種々の用途に用いられる。たとえば、衣類の一部または全部を本発明の編布で構成することができる。本発明に関し衣類とは、服、帽子、手袋、または履物等の体に装着可能な装着物を包含する。
たとえば、第一領域と、当該第一領域よりも繰り返し伸縮が求められる第二領域とを有する衣類において、上記第二領域が本発明の編布で構成されることは、本発明の1つの好ましい態様である。このとき、上記第二領域に用いられる編布は、第二領域において伸縮が予想される方向と、当該編布の編方向とが略同方向になるように配置されるとよい。また、意匠性を発揮するために、衣類の表面側に凸条部が視認される向きで編布が配置されるとよい。
本発明の編布は、上述のとおり、一方面側に凸条部を有するため、意匠性が高く、また凸条部において気体が多く含有されるため、保温性にも優れる。さらに、本発明の編布は、適度な伸縮性を有しつつ、編方向に引っ張られたときに、凸条部を構成する第一ループ列に先んじて、第三ループ列が伸長限界に達する。したがって、第一ループ列は、伸長が規制され伸びきることがない。そのため、第二領域が編方向に引っ張られた場合であっても、当該第二領域において、凸条部に起因する意匠性や保温性が良好に維持される。
【0053】
上記衣類がセーターやニット等の上半身に装着されるものである場合には、第二領域として、襟口、袖口、または肘部のいずれかまたは全てが挙げられる。また、上記衣類がズボンである場合には、第二領域として、ひざ部等が挙げられる。他にも、帽子、履物、または手袋の、身体が出入りする開口部を第二領域として、本発明の編布が適用されることが好ましい。
【0054】
一般的に、セーターの襟口や袖口は、構成する編糸が繰り返しの伸長により弾性力を失い、伸びきってしまう問題がある。これに対し、本発明の編布は、第三ループ列の存在により、凸条部は伸びきることが防止されている。そのため本発明の衣類は、第二領域において少なくとも凸条部を構成する第一糸の弾性が長期間維持されるので、上記問題が発生しにくい。
【0055】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)一方面側において、編方向に交差する方向である横方向に延在する凸条部と、前記横方向に延在する凹条部と、を交互に備える編布であって、
前記凸条部は、前記編方向において第一糸で構成された第一ループを2以上有してなる第一ループ列が、前記横方向に連続することで構成されており、
前記凹条部は、第二糸で構成された第二ループを有してなる第二ループ列が、前記横方向に連続することで構成されており、
前記第一糸の伸縮性が、前記第二糸の伸縮性よりも小さく、
前記横方向において隣り合う一つの前記第一ループ列と他の前記第一ループ列との間に、前記第一ループ列を構成する第一ループの数より少ない数の第三ループを有してなる第三ループ列を有することを特徴とする編布。
(2)前記第三ループ列を構成する前記第三ループの数が1個である上記(1)に記載の編布。
(3)前記第一ループ列における前記第一ループの数は、前記第二ループ列における前記第二ループの数よりも多い上記(1)または(2)に記載の編布。
(4)前記第三ループを構成する糸が、前記第二ループを構成する前記第二糸と共通である上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の編布。
(5)前記第三ループを構成する糸が、前記第二ループを構成する第二糸とは非共通である上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の編布。
(6)上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の編布を用いてなることを特徴とする洗浄具。
(7)前記凸条部が、露出面側に配置される向きで、第一の前記編布と第二の前記編布とが対向して構成された上記(6)に記載の洗浄具。
(8)前記第一の編布と前記第二の編布との間に多孔質体が配置された上記(7)に記載の洗浄具。
(9)第一領域と、前記第一領域よりも繰り返し伸縮が求められる第二領域とを有する衣類であって、
前記第二領域が授記(1)から(5)のいずれか一項に記載の編布で構成されていることを特徴とする衣類。