(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の一例に係るフォーカルプレンシャッタについて、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施の形態に係るフォーカルプレンシャッタは、撮像素子を有する撮像装置等に設けられる。撮像装置は、例えば、デジタルカメラを含むカメラ、監視カメラである。撮像素子は、例えば、CCD(Charge Couples Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)のイメージセンサである。フォーカルプレンシャッタは、レンズ等の光学系から撮像素子に至る光軸上に配置される。
【0016】
本実施の形態に係るフォーカルプレンシャッタ1を、
図1〜
図5を参照して説明する。
図1〜
図3は、シャッタ構造及び動作を示す図であり、
図4は、
図2のA−A’線で切断した切断面を示す図であり、
図5は、緩衝部材の拡大図である。
図1〜
図3の正面側がレンズ側であり、背面側が撮像素子側である。
【0017】
図1,
図4を参照して、本実施の形態に係るフォーカルプレンシャッタ1の構成を説明する。
図1において、緩衝部材は実線で示す。
図4は、切断図であるが、緩衝保持部材のみハッチングでしめし、他の部材にはハッチングは施していない。
【0018】
本実施の形態に係るフォーカルプレンシャッタ1は、
図1,
図4に示すように、シャッタ地板10と、先羽根群20と、後羽根群30と、中間板40と、カバー板50と、緩衝部材60と、を備える。
【0019】
図1のシャッタ地板10の正面側に、後羽根群30、中間板40、先羽根群20、カバー板50が、この順に配置され、シャッタ地板10の背面側に、図示しない先羽根用駆動部材、後羽根用駆動部材、セット部材、先羽根用電磁石、及び後羽根用電磁石が配置される。
【0020】
シャッタ地板10は、樹脂で成形された板状の矩形部材であり、その略中央部には、横長の長方形の露光開口10aが形成されている。
【0021】
シャッタ地板10の露光開口10aの右側には、円弧状の2つの長孔10b,10cが形成されている。シャッタ地板10の正面、すなわちレンズ側の面には、軸11a,11b,11c,11dが立設されている。
【0022】
シャッタ地板10の正面側には、
図4に示すように、中間板40とカバー板50が所定の間隔を空けて配置される。シャッタ地板10と中間板40の間の空間により、後羽根群30の羽根室が形成され、中間板40とカバー板50との間の空間により、先羽根群20の羽根室が形成される。シャッタ地板10の正面側には、緩衝部材60が取り付けられる。
【0023】
中間板40とカバー板50には、シャッタ地板10の露光開口10aと同一形状の露光開口40a,50aが、それぞれ形成されている。露光開口10a、露光開口40a、露光開口50aは、それぞれ光軸方向に並ぶように位置決めされている。また、中間板40とカバー板50のそれぞれには、シャッタ地板10の長孔10b,10cと同一の長孔が形成され、光軸方向に並ぶように位置決めされている。
【0024】
長孔10bと長孔10cの下端部には、図示しないゴム等の弾性材料からなる平面形状が略C字状をした緩衝部材がそれぞれ取り付けられている。この緩衝部材は、シャッタ動作終了時に駆動部材の駆動ピンを当接させて衝撃を緩和するための部材である。
【0025】
フォーカルプレンシャッタ1は、この他に図示しない、露光開口10aを開放するように先羽根群20を走行駆動してシャッタ動作をさせる先羽根用駆動部材、露光開口10aを閉鎖するように後羽根群30にシャッタ動作をさせる後羽根用駆動部材、先羽根用駆動部材及び後羽根用駆動部材をシャッタ動作前のセット位置にセットするセット部材を備える。さらに、先羽根用駆動部材をセット位置に吸着保持する先羽根用電磁石、後羽根用駆動部材をセット位置に吸着保持する後羽根用電磁石を備える。
【0026】
先羽根用駆動部材は、
図1に示すように先羽根群20を駆動するための駆動ピン21を備え、後羽根用駆動部材は、後羽根群30を駆動するための駆動ピン31を備える。駆動ピン21は、長孔10cを貫通して、先羽根群20を収納する羽根室に伸長し、先羽根群20に形成された係合孔に係合する。駆動ピン31は、長孔10bを貫通して、後羽根群30を収納する羽根室に伸長し、後羽根群30に形成された係合孔に係合する。先羽根用駆動部材は、駆動ピン21を長孔10c内で駆動することにより、先羽根群20を駆動する。同様に、後羽根用駆動部材は、駆動ピン31を長孔10b内で駆動することにより、後羽根群30を駆動する。
【0027】
先羽根群20は、中間板40とカバー板50との間の羽根室内を走行するメカニカル方式の先幕シャッタ(先羽根部材)である。先羽根群20は、4枚の羽根20a,20b,20c,20dと、これらの羽根のそれぞれの一端部に連結された先羽根アーム20e,20fと、を備える。先羽根アーム20e,20fの最先端に連結された羽根20aが、露光スリットを形成するスリット形成羽根である。中間板40からカバー板50に向けて、羽根20d、羽根20c、羽根20b、羽根20a、先羽根アーム20e,20fの順に配置されている。
【0028】
先羽根アーム20eは、シャッタ地板10の軸11bに回転可能に取り付けられ、先羽根アーム20fは、シャッタ地板10の軸11aに回転可能に取り付けられる。先羽根用駆動部材の駆動ピン21は、シャッタ地板10の長孔10cに挿入され、その先端部が先羽根アーム20fに形成された係合孔20ffに嵌合されている。
【0029】
後羽根群30は、シャッタ地板10と中間板40との間の羽根室内を走行する後幕シャッタ(後羽根部材)である。後羽根群30は、
図3に示すように、4枚の羽根30a,30b,30c,30dと、これらの羽根のそれぞれの一端部に連結された後羽根アーム30e,30fと、を備える。後羽根アーム30e,30fの最先端に連結された羽根30dが、露光スリットを形成するスリット形成羽根である。シャッタ地板10から中間板40に向けて、後羽根アーム30e,30f、羽根30d、羽根30c、羽根30b、羽根30aの順に配置されている。
【0030】
後羽根アーム30eは、シャッタ地板10の軸11dに回転可能に取り付けられ、後羽根アーム30fは、シャッタ地板10の軸11cに回転可能に取り付けられる。後羽根用駆動部材の駆動ピン31は、シャッタ地板10の長孔10bに挿入され、その先端部が後羽根アーム30eに形成された係合孔30eeに嵌合されている。
【0031】
羽根20a〜20d、羽根30a〜30dは、一定の方向に伸びて形成され、羽根の走行方向に対向する一対の一辺部を備える。羽根30dの一対の一辺部の、走行方向の側の一辺部が、羽根の走行終了位置において、後述する当接部60aと当接する。
【0032】
先羽根用駆動部材が、セット部材によって先羽根用駆動ばねの付勢力に抗し時計回りに回転されることで、駆動ピン21により、先羽根アーム20e,20fが時計回りに回転され、
図1に示すように、先羽根群20の4枚の羽根20a〜20dが相互の重なりを小さくしながら展開して露光開口10aを閉鎖する。
【0033】
先羽根用駆動部材が、セット部材によって先羽根用駆動ばねの付勢力によって反時計回りに回転されることで、駆動ピン21により、先羽根アーム20e,20fが反時計回りに回転され、
図2に示すように、先羽根群20の4枚の羽根21〜24が相互の重なりを大きくしながら重畳して露光開口10aを開放する。
【0034】
後羽根用駆動部材が、セット部材によって後羽根用駆動ばねの付勢力に抗し時計回りに回転されることで、駆動ピン31により、後羽根アーム30e,30fが時計回りに回転され、
図1に示すように、後羽根群30の4枚の羽根30a〜30dが相互の重なりを大きくしながら重畳して露光開口10aを開放する。
【0035】
後羽根用駆動部材が、セット部材によって後羽根用駆動ばねの付勢力によって反時計回りに回転されることで、駆動ピン31により、後羽根アーム30e,30fが反時計回りに回転され、
図3に示すように、後羽根群30の4枚の羽根30a〜30dが相互の重なりを小さくしながら展開して露光開口10aを閉鎖する。
【0036】
緩衝部材60は、
図1〜
図3に示すように、シャッタ地板10の下端部に固定され、走行終了位置に達した後羽根群30の羽根の衝撃を緩和するための部材である。
図5に緩衝部材60の拡大図を示す。
図5(a)は緩衝部材60の正面図、
図5(b)は緩衝部材の上面図である。緩衝部材60は、緩衝部材60の骨格を形成する緩衝部材本体61と、緩衝部材本体61に取り付けられる緩衝補助部材72を備える。
【0037】
緩衝部材本体61は、一定の厚みを有し、長方形形状に形成され、ゴムや樹脂などの弾性材料で形成されている。緩衝部材本体61は、後羽根群30の走行終了時に、羽根30dの一辺部と当接する当接部61aを有する。当接部61aは、シャッタ地板10の面と平行に伸び、具体的には、長方形の長手方向に伸び、羽根30dの一辺部と対向する平坦な面である当接面を備える。
【0038】
緩衝部材本体61には、当接部61aの長手方向に垂直な方向、すなわち厚み方向に貫通する貫通孔62が形成されている。貫通孔62は、第1の貫通孔63、第2の貫通孔64、第3の貫通孔65から構成される。これらの貫通孔は、当接部61aが伸びる方向に沿って、互いに平行に配置される。
【0039】
緩衝部材本体61は、長手方向に対向して形成された一対の固定部材66を備える。固定部材66により、緩衝部材本体61は、シャッタ地板10に固定される。固定部材66は、緩衝部材本体61の一方の面から突出する形状を有する。シャッタ地板10には、固定部材66に対応する位置に孔10dが形成され、固定部材66は、孔10dに挿入される。固定部材66と孔10dの構造を、
図4(a),(b)に示す。
図4(a)は、
図3のA−A’線での切断面、
図4(b)は
図3のB−B’線での切断面を示す。固定部材66の外周と、孔10dの内周とは、ほぼ同一の形状を有し、固定部材66を孔10dに嵌込むことで、緩衝部材本体61は、シャッタ地板10に固定される。固定部材66を孔10dに嵌め込むとともに、固定部材66と孔10dとの間に接着剤を塗布して、確実に固定してもよい。また、シャッタ地板10に、シャッタ地板10の地板面から突出する突出部を設け、緩衝部材本体61に孔を設け、シャッタ地板10の突出部を緩衝部材本体61の孔に嵌合して、緩衝部材本体61をシャッタ地板10に取り付けてもよい。また、リベット、ネジなどを、緩衝部材本体61の孔に挿入して、緩衝部材本体61をシャッタ地板10に取り付けてもよい。また、シャッタ地板10の下端部から正面側に向けて突出する板状の突出部を設けて、この突出部の面に緩衝部材本体61を取り付けてもよい。
【0040】
緩衝補助部材72は、貫通孔62に嵌合される部材であり、緩衝部材本体61と緩衝補助部材72とは、硬度が相違する材料で形成されている。硬度を示す指標として、デュロメータ硬さを用い、0〜100の数値で示す。この指標で示す数値は、数値が大きくなるほど、硬いことを示す。
【0041】
緩衝補助部材72は、第1の緩衝補助部材73、第2の緩衝補助部材74、第3の緩衝補助部材75から構成される。第1の緩衝補助部材73、第2の緩衝補助部材74、第3の緩衝補助部材75は、それぞれゴムや樹脂等の弾性部材により形成されている。第1の緩衝補助部材73は第1の貫通孔63に、第2の緩衝補助部材74は第2の貫通孔64に、第3の緩衝補助部材75は第3の貫通孔65に、それぞれ嵌合される。
【0042】
緩衝部材本体61の硬度と緩衝補助部材72の硬度の組合せは、フォーカルプレンシャッタが使用される環境、求められる耐久性に応じて、種々の組合せがある。本実施の形態では、緩衝部材本体61と緩衝補助部材72とが、それぞれゴムで形成された場合を例に説明する。緩衝部材60の特性として、緩衝部材60の耐久性を保ちながら、羽根の衝撃を緩和することが求められる。1つの緩衝部材を使用した場合において、耐久性に重きを置くとゴムの硬度は高くなり、羽根の衝撃を吸収する能力は落ちる。一方、羽根の衝撃を吸収することに重きを置くとゴムの硬度は低くなり、耐久性に問題がある。また、高温環境下でゴムの硬度が低いと、緩衝部材60は熱により柔らかくなり、耐久性に問題がある。低温環境下でゴムの硬度が高いと、緩衝部材60は硬くなり衝撃を吸収しづらい。本実施の形態では、様々な環境で使用される緩衝部材60における、緩衝部材本体61と緩衝補助部材72のゴムの組合せについて、具体例を用いて説明する。
【0043】
ゴムの組合せの例として、
図6に衝撃性と耐久性に配慮した組合せの例(「例1」という。)を、
図7に耐久性を増すための組合せの例(「例2」という。)を、
図8に衝撃性を低減するための組合せの例(「例3」という。)を、
図9に高温環境下で使用するための組合せの例(「例4」という。)を、
図10に低温環境下で使用するための組合せの例(「例5」という。)を示す。
【0044】
図6に示す例1のゴムの組合せは、緩衝部材本体61として硬度60度のゴムを、第1の緩衝補助部材73として硬度30度のゴムを、第2の緩衝補助部材74として硬度80度のゴムを、第3の緩衝補助部材75として硬度30度のゴムを、使用した例である。
【0045】
羽根30dが直接衝突する緩衝部材本体61として、衝撃に対する耐久性を担保するために、硬度60度のゴムを使用し、緩衝部材本体61より羽根の走行方向の下流側に位置する第1の緩衝補助部材73には、衝撃を吸収するために柔らかい硬度30度のゴムを使用している。また、第1の緩衝補助部材73より下流側に位置する第2の緩衝補助部材74は、再度、硬度80度という硬いゴムを使用して、耐久性を保持し、第2の緩衝補助部材74の下流側の第3の緩衝補助部材75では、再度、硬度30度という柔らかいゴムを使用して、衝撃を吸収する。
【0046】
このようなゴムの組合せにより、緩衝部材本体61の耐久性を保ちつつ、段階的に第1の緩衝補助部材73と第3の緩衝補助部材75により、羽根30dによる襲撃を吸収することができる。
【0047】
図7に示す例2のゴムの組合せは、緩衝部材本体61として硬度80度のゴムを、第1の緩衝補助部材73として硬度70度のゴムを、第2の緩衝補助部材74として硬度60度のゴムを、第3の緩衝補助部材75として硬度50度のゴムを、使用した例である。
【0048】
例2のゴムの組合せは、緩衝部材60の耐久性に重点を置いた組合せである。羽根30dが直接衝突する緩衝部材本体61として、衝撃に対する耐久性を担保するために、硬度80度のゴムを使用し、緩衝部材本体61より羽根の走行方向の下流側に位置する第1の緩衝補助部材73〜第3の緩衝補助部材75には、衝撃を段階的に吸収するために徐々に硬度が低くなるようなゴムを並べて、衝撃を吸収する。
【0049】
このようなゴムの組合せにより、緩衝部材60の耐久性を保ちながら、衝撃を吸収することができる。このようなゴムの組合せは、特に、羽根の走行速度が速いフォーカルプレンシャッタに有効である。
【0050】
図8に示す例3のゴムの組合せは、羽根の走行速度が比較的遅いフォーカルプレンシャッタに適用され、衝撃力を低減することに重点を置いた組合せである。緩衝部材本体61として硬度50度のゴムを、第1の緩衝補助部材73として硬度40度のゴムを、第2の緩衝補助部材74として硬度30度のゴムを、第3の緩衝補助部材75として硬度20度のゴムを、使用した例である。
【0051】
羽根30dが直接衝突する緩衝部材本体61として、低速度の羽根に対する耐久性を確保するため比較的柔らかい硬度50度のゴムを使用し、緩衝部材本体61より羽根の走行方向の下流側に位置する第1の緩衝補助部材73、第2の緩衝補助部材74、第3の緩衝補助部材75に、段階的に柔らかいゴムを使用して、衝撃を吸収する。
【0052】
このようなゴムの組合せにより、比較的低速度で走行する羽根30dに対して、緩衝部材本体61の耐久性を保ちつつ、第1の緩衝補助部材73、第2の緩衝補助部材74、第3の緩衝補助部材75に、段階的に柔らかいゴムを使用することにより、衝撃を大きく低減することに重点を置いた緩衝部材60を提供できる。
【0053】
図9に示す例4のゴムの組合せは、高温環境下において使用される緩衝部材60の例であり、緩衝部材本体61として硬度70度のゴムを、第1の緩衝補助部材73として硬度60度のゴムを、第2の緩衝補助部材74として硬度50度のゴムを、第3の緩衝補助部材75として硬度60度のゴムを、使用した例である。
【0054】
羽根30dが直接衝突する緩衝部材本体61として、高温環境下において硬度が低下することを考慮して、硬度が高い硬度70度のゴムを使用し、緩衝部材本体61より羽根の走行方向の下流側に位置する第1の緩衝補助部材73、第2の緩衝補助部材74には、段階的に柔らかいゴムを使用し、第3の緩衝補助部材75には、耐久性を担保するために、再び硬いゴムを使用している。
【0055】
このようなゴムの組合せにより、高温環境下における緩衝部材本体61の耐久性を保ちつつ、衝撃を緩和することができる。
【0056】
図10に示す例5のゴムの組合せは、低温環境下において使用される緩衝部材60の例であり、緩衝部材本体61のゴムとして硬度50度のゴムを、第1の緩衝補助部材73として硬度30度のゴムを、第2の緩衝補助部材74として硬度20度のゴムを、第3の緩衝補助部材75として硬度30度のゴムを、使用した例である。
【0057】
羽根30dが直接衝突する緩衝部材本体61として、低温環境下において硬度が高くなることを考慮して、硬度50度の比較的柔らかいゴムを使用し、緩衝部材本体61より羽根の走行方向の下流側に位置する第1の緩衝補助部材73、第2の緩衝補助部材74には、段階的に柔らかいゴムを使用し、第3の緩衝補助部材75には、衝撃を吸収するために、再び硬いゴムを使用している。
【0058】
このようなゴムの組合せにより、低温環境下における緩衝部材本体61の耐久性を保ちつつ、衝撃を緩和することができる。
【0059】
このように、緩衝部材本体61、第1の緩衝補助部材73、第2の緩衝補助部材74、第3の緩衝補助部材75、のそれぞれに使用されるゴムの硬度を組み合わせることで、様々な弾性変形の態様を備える緩衝部材60を提供できる。また、緩衝補助部材72間の領域には、緩衝部材本体61が介在するので、この領域の硬度も考慮して、様々な弾性変形の態様の緩衝部材60を提供できる。
【0060】
次に、
図1〜
図3を参照して、フォーカルプレンシャッタ1の動作について説明する。
図1は、撮影前の初期状態を示し、
図2は、先羽根群の露光動作が終了した状態を示し、
図3は、後羽根群の露光動作が終了した状態を示す。
【0061】
図1は、セット部材によるセット動作が完了したときの初期状態を示す。先羽根用駆動部材は、シャッタ動作前のセット位置においてセット部材により係止される。先羽根群20は、
図1に示すように、展開した状態で露光開口10aを覆っている。後羽根用駆動部材は、シャッタ動作前のセット位置においてセット部材により係止される。後羽根群30は、重畳した状態で露光開口10aの上方に位置する。セット部材は、先羽根用駆動部材を先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して係止するとともに、後羽根用駆動部材を後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して係止する。
【0062】
レリーズボタンが押下されると、先羽根用電磁石及び後羽根用電磁石に通電され、先羽根用駆動部材及び後羽根用駆動部材は、先羽根用電磁石及び後羽根用電磁石によって吸着保持される。
【0063】
先羽根用駆動部材及び後羽根用駆動部材が、先羽根用電磁石及び後羽根用電磁石によって吸着保持された状態において、セット部材は、付勢ばねの付勢力によって所定方向に回転し、セット位置から退避位置に戻る。これにより、先羽根用駆動部材及び後羽根用駆動部材の係止が解除されるものの、先羽根用電磁石及び後羽根用電磁石によって吸着保持された状態が維持されているため、反時計回りの回転が抑止される。
【0064】
次に、先羽根用電磁石の通電が停止されることにより、先羽根用駆動部材の反時計回りの回転の抑止が解除され、先羽根用駆動部材は、反時計回りに回転し、駆動ピン21を長孔10cの上端から下端に移動させる。これにより、羽根20a〜20dは、露光開口10aを開くように下方向に移動しながら畳まれ、露光開口10aを開口させる。具体的には、スリット形成羽根である羽根20aの上端縁で露光開口10aを開いていく。先羽根用駆動部材の反時計回りの回転は、先羽根用駆動部材の駆動ピン21が長孔10cの下端部に設けられた緩衝部材に当接することにより停止する。これに伴い、先羽根アーム20a〜20dの反時計回りの回転が停止する。このような先羽根群20の移動により、
図2に示すように、露光開口10aは開口した状態(露光状態)となる。
【0065】
先羽根用電磁石の通電の停止から所定時間経過後、後羽根用電磁石の通電が停止されることによって、後羽根用駆動部材の反時計回りの回転の抑止が解除され、後羽根用駆動部材は、反時計回りに回転し、駆動ピン31を長孔10bの上端から下端に移動させる。これにより、羽根アーム30a〜30dは、露光開口10aを閉じるように下方向に移動しながら展開し、露光開口10aを閉鎖させる。具体的には、スリット形成羽根である羽根30dの下端部で露光開口10aを閉鎖していく。後羽根用駆動部材の反時計回りの回転は、駆動ピン31が長孔10bの下端部に設けられた緩衝部材に当接することにより停止する。これに伴い、羽根30a〜30dの反時計回りの回転が停止する。このような後羽根群30の移動により、
図3に示すように、露光開口10aは閉鎖した状態(露光終了)となる。
【0066】
後羽根群30の走行が終了すると、後羽根群30の羽根30dは、緩衝部材60の当接部60aに当接し、緩衝部材60により衝撃を緩和される。緩衝部材60の、緩衝部材本体61と緩衝補助部材72の硬度の組合せにより、様々な弾性変形の形態に適用することができる。
【0067】
次に、セット部材は、次の撮影に備え、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材のそれぞれに駆動力を与えて係止するセット動作を行う。セット部材は、図示しない駆動機構の駆動力によって、付勢ばねの付勢力に抗して所定方向に回転する。セット部材の回転に伴い、先羽根用駆動部材は、先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して時計回りに回転する。また、後羽根用駆動部材は、後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して時計回りに回転する。後羽根用駆動部材の回転により、後羽根群30は、露光開口10aを開くように上方向に移動しながら畳まれ、露光開口10aを開放する。また、先羽根用駆動部材の回転により、先羽根群20は、露光開口10aを覆うように上方向に移動しながら展開し、露光開口10aを閉鎖する。
【0068】
セット部材は、駆動機構により所定角度回転したところでその回転を停止させられてセット位置に保持される。このように、先羽根用駆動部材及び後羽根用駆動部材はシャッタ動作前のセット位置にセットされ、先羽根群20及び後羽根群30にシャッタ動作をさせるための駆動力がチャージされる。そして、フォーカルプレンシャッタ1は、
図1に示す初期状態に戻る。
【0069】
本実施の形態によれば、緩衝部材本体61と、貫通孔62に嵌合される緩衝補助部材とを異なる硬度の部材で形成したので、硬度の組合せにより、様々な環境で使用されるフォーカルプレンシャッタに適合する緩衝部材60を提供することができる。
【0070】
本実施の形態によれば、第1の貫通孔63に嵌合される第1の緩衝補助部材72と、第2の貫通孔64に嵌合される第2の緩衝補助部材73と、第3の貫通孔65に嵌合される第3の緩衝補助部材75と、を備える。そして、緩衝部材本体61と、第1〜第3の緩衝補助部材72〜74との硬度の組合せを変更することで、多様な硬度の組合せの緩衝部材60を提供することができる。したがって、様々な環境で使用されるフォーカルプレンシャッタにきめ細かく対応できる緩衝部材60を提供することができる。
【0071】
本実施の形態によれば、貫通孔62を、当接部60aの伸びる方向と同一方向に伸びるように形成して、緩衝補助部材72を嵌合したので、当接部60aに受ける衝撃力を均等に分散することができ、羽根30dへのダメージを軽減することができる。
【0072】
本実施の形態によれば、後羽根群30の複数の羽根のうち、スリット形成羽根30dが、当接部61aに当接するので、羽根の走行速度の速いスリット形成羽根30dによる衝撃を効果的に緩和することができる。
【0073】
上述の実施の形態では、貫通孔62は、第1〜第3貫通孔63〜65により構成されていたが、貫通孔の数は3つに限定されない。貫通孔の数は1つでもよし、4つ以上であってもよい。
【0074】
上述の実施の形態では、貫通孔62の形状は、長孔であると説明したが、長孔に限定されない。円形、楕円など、使用されるフォーカルプレンシャッタの仕様に応じて、適宜選択することができる。
【0075】
上述の実施の形態では、第1の緩衝補助部材73、第2の緩衝補助部材74、第3の緩衝補助部材75のゴムの硬度を異なるように組み合わせた。組合せは、例1、例4、例5のように、何れか2つの緩衝補助部材は、同一の硬度のゴムを使用した組合せでもよいし、例2,3のように全ての緩衝補助部材のゴムの硬度を異なるように組合せてもよい。また、全ての緩衝補助部材の硬度を同一としてもよい。
【0076】
上述の実施の形態では、緩衝部材本体61、第1の緩衝補助部材73、第2の緩衝補助部材74、第3の緩衝補助部材75の材料として、ゴムを用いて説明したが、本発明において使用される材料は、ゴムに限定されない。樹脂を使用してもよい。樹脂を使用する場合には、緩衝部材本体61、第1の緩衝補助部材73、第2の緩衝補助部材74、第3の緩衝補助部材75の全ての材料を樹脂としてもよいし、ゴムと樹脂を組み合わせて使用してもよい。
【0077】
上述の実施の形態では、緩衝補助部材72は、固体の緩衝補助部材であることを前提として説明したが、貫通孔62に挿入されるときは、固体でなくてもよい。例えば、液状の緩衝補助部材72を、貫通孔62に充填して硬化させることにより、緩衝補助部材72を貫通孔62に挿入してもよい。
【0078】
上述の実施の形態では、複数の羽根を備える後羽根群30のスリット形成羽根30dの衝撃を緩和する緩衝部材60について説明したが、本発明は、このような羽根の衝撃を緩衝する緩衝部材に限定されない。先羽根群20の走行終了位置に、緩衝部材を取り付けてもよい。また、本発明の緩衝部材は、1つの先羽根と1つの後羽根を備えるフォーカルプレンシャッタにも適用することができる。
【0079】
以上の実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。