特許第6887889号(P6887889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

特許6887889放射線治療システム及び治療時間管理装置
<>
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000002
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000003
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000004
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000005
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000006
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000007
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000008
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000009
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000010
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000011
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000012
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000013
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000014
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000015
  • 特許6887889-放射線治療システム及び治療時間管理装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887889
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】放射線治療システム及び治療時間管理装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   A61N5/10 T
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-120555(P2017-120555)
(22)【出願日】2017年6月20日
(65)【公開番号】特開2019-4923(P2019-4923A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】市橋 正英
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−337371(JP,A)
【文献】 特開2000−222507(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0008744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療対象の患者に関する治療計画データを生成する治療計画部と、
治療用放射線を照射する照射部を回転可能に支持する治療用架台と、
前記治療用架台の回転速度と、前記治療計画データに含まれる複数の照射門の照射角度とに基づいて、前記複数の照射門間の移動に要する前記治療用架台の回転予測時間を算出する算出部と、
前記治療用架台の回転予測時間を表示する表示部と、
を具備する放射線治療システム。
【請求項2】
前記算出部は、前記複数の照射門の照射角度に基づいて前記複数の照射門間の移動順序及び移動方向を含む複数の移動パターンを決定し、前記複数の移動パターン各々について前記治療用架台の回転予測時間を算出する、請求項1記載の放射線治療システム。
【請求項3】
選択部を更に備え、
前記表示部は、前記複数の移動パターンについての前記回転予測時間を表示し、
前記選択部は、前記複数の移動パターンのうちの前記治療対象の患者に対する放射線治療に採用する移動パターンを、ユーザによる入力機器を介した指示に従い選択する、
請求項2記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記複数の移動パターン各々について干渉チェックを行う干渉チェック部を更に備え、
前記表示部は、前記複数の移動パターン各々について前記干渉チェックの結果を表示する、
請求項2記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記算出部は、前記複数の照射門間の移動毎に前記治療用架台の前記回転予測時間を算出する、請求項1記載の放射線治療システム。
【請求項6】
前記算出部は、前記治療用架台による前記複数の照射門間の移動と前記照射部による放射線の照射と人的作業との各々の作業項目について作業予測時間を算出し、前記算出された各作業項目の作業予測時間の合計時間として前記治療対象の患者に関する治療予測時間を算出し、
前記表示部は、前記治療予測時間を表示する、
請求項1記載の放射線治療システム。
【請求項7】
前記表示部は、前記作業項目毎に、作業開始時刻からの経過時間を数字又はインジケータで表示する、請求項6記載の放射線治療システム。
【請求項8】
前記表示部は、前記作業項目を、完了済みの項目と未完了の項目とで視覚的に区別して表示する、請求項6記載の放射線治療システム。
【請求項9】
前記表示部は、前記作業項目毎に、前記治療予測時間と作業実測時間とを並べて表示する、請求項6記載の放射線治療システム。
【請求項10】
前記算出部は、前記治療用架台に関する時間当たりの照射可能線量と、治療部位に対する照射予定線量とに基づいて治療用放射線の照射予測時間を算出し、
前記表示部は、前記照射予測時間を更に表示する、
請求項1記載の放射線治療システム。
【請求項11】
前記治療用架台と一体又は別体の、撮像用放射線を照射する照射部を回転可能に支持する撮像用架台を更に備え、
前記算出部は、前記撮像用架台の回転速度と、前記治療計画データに含まれる複数の撮影方向の撮影角度とに基づいて、前記複数の撮影方向間の移動に要する前記撮像用架台の回転予測時間を算出し、
前記表示部は、前記撮像用架台の回転予測時間を更に表示する、
請求項1記載の放射線治療システム。
【請求項12】
治療対象の患者に関する治療計画データと、放射線源を回転可能に支持する治療用架台の回転速度とを記憶する記憶部と、
前記治療用架台の回転速度と、前記治療計画データに含まれる複数の照射門の放射線照射順序及び照射角度とに基づいて、前記複数の照射門間の移動に要する前記治療用架台の回転予測時間を算出する算出部と、
前記治療用架台の回転予測時間を表示する表示部と、
を具備する治療時間管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線治療システム及び治療時間管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療において、対向4門照射等の複数の照射角度から放射線を照射する場合がある。この場合、放射線診療技師等が経験的に決定した照射順序、あるいは、治療計画装置から取り込んだ照射順序そのもので放射線照射が行われている。ある照射角度へ照射ヘッド部を回転させる場合、架台の機械的制限により、最短経路ではなく機械的原点角度を迂回しなければならないことがある。このような場合、放射線診療技師等が予測していたよりも多くの時間が架台回転に費やされることとなる。このような要因もあって、放射線治療実行前に架台回転時間を含む治療時間を予測することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−178569号公報
【特許文献2】特開2011−194066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題は、放射線治療実行前に放射線診療技師等に対して正確な治療時間を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る放射線治療システムは、治療対象の患者に関する治療計画データを生成する治療計画部と、治療用放射線を照射する照射部を回転可能に支持する治療用架台と、前記治療用架台の回転速度と、前記治療計画データに含まれる複数の照射門の照射角度とに基づいて、前記複数の照射門間の移動に要する前記治療用架台の回転予測時間を算出する算出部と、前記治療用架台の回転予測時間を表示する表示部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る放射線治療システムの構成を示す図である。
図2図2は、図1の放射線治療装置及び画像撮影装置の外観を示す図である。
図3図3は、図1の干渉シミュレータが有する回転速度テーブルの一例を示す図である。
図4図4は、図1の治療時間管理装置が有する作業時間テーブルの一例を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る放射線治療システムの典型的な処理の流れを示す図である。
図6図6は、図5のステップS2において行われる回転予測時間の算出の一例を示す図である。
図7図7は、図5のステップS2において行われる回転予測時間の算出の他の例を示す図である。
図8図8は、図5のステップS2において行われる、架台の可動範囲の機械的制限を加味した回転予測時間の算出の一例を示す図である。
図9図9は、図5のステップS4において表示される治療予測時間と干渉チェック結果との表示画面の一例を示す図である。
図10図10は、図5のステップS7において表示される経過時間と完了ステータスとの表示画面の一例を示す図である。
図11図11は、図5のステップS7において表示される、治療予測時間と実測治療時間とを並列して表示する表示画面の一例を示す図である。
図12図12は、本実施形態に係る、移動フローを並列して表示する表示画面の一例を示す図である。
図13図13は、本実施形態に係る、移動フローを並列して表示する他の表示画面の一例を示す図である。
図14図14は、本実施形態に係る、ブーストボタンと共に作業項目と治療予測時間と作業予測時間とを表示する表示画面を示す図である。
図15図15は、本実施形態に係る、架台回転速度を一段階上げた後の回転予測速度と治療予測時間とを表示する表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる放射線治療システム及び治療時間管理装置を説明する。
【0008】
図1は、本実施形態に係る放射線治療システムの構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る放射線治療システムは、治療計画装置10、放射線治療情報管理システム(OIS: Oncology Information System)20、放射線治療装置30、画像撮影装置40、治療時間管理装置50、表示機器60、入力機器70及び干渉シミュレータ80を有する。
【0009】
治療計画装置10は、X線シミュレータやCTシミュレータ等の画像撮影装置により生成された医用画像を利用して治療対象の患者の治療計画を作成するコンピュータである。治療計画装置10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。当該プロセッサは、当該メモリに記憶された治療計画プログラムを実行することにより治療計画データを生成する。治療計画としては、具体的には、放射線治療装置30による照射門(Field)の照射角度、照射順序、画像撮影装置40による撮影角度、撮影順序、照射部位、線量分布等が挙げられる。治療計画データは、放射線治療情報管理システム20に送信される。また、治療計画装置10は、汎用のコンピュータ又はワークステーションが備える入力機器、ディスプレイ、通信機器及び記憶装置を備える。
【0010】
放射線治療情報管理システム20は、治療計画装置10、放射線治療装置30、画像撮影装置40及び治療時間管理装置50等と連携して放射線治療に関する情報を管理するコンピュータシステムである。例えば、放射線治療情報管理システム20は、治療計画データベース21を有している。治療計画データベース21は、治療計画装置10により生成された治療計画データを患者情報等に関連付けて記憶する。治療計画データベース21は、治療時間管理装置50からの要求に応じて治療計画データを治療時間管理装置50に送信する。また、放射線治療情報管理システム20は、汎用のコンピュータ又はワークステーションが備える入力機器、ディスプレイ、通信機器及び記憶装置を備える。
【0011】
放射線治療装置30は、放射線治療を目的とした装置であり、治療計画に従い患者に放射線を照射して患者を治療する。画像撮影装置40は、放射線治療時等において患者を対象とする医用撮像を実行して患者の体内に関する医用画像を生成する。本実施形態に係る放射線治療装置30と画像撮影装置40とは独立型にも一体型にも適用可能であるが、以下の説明の簡単のため一体型であるとする。
【0012】
図2は、図1の一体型の放射線治療装置30及び画像撮影装置40の外観を示す図である。図2に示すように、放射線治療装置30は、架台31と寝台32とを有する。架台31は、回転軸Z回りに回転可能に照射ヘッド部312と画像撮影装置40とを支持する架台本体311を有する。照射ヘッド部312は、治療計画データに従い放射線を照射する。具体的には、照射ヘッド部312は、多分割絞り(マルチリーフコリメータ)により照射野を形成し、当該照射野により正常組織への照射を抑える。治療部位に放射線が照射されることにより当該治療部位が消滅又は縮小する。画像撮影装置40は、回転軸Zを挟んで対向配置されたX線管41とX線検出器42とを有する。X線管41は、撮像用の放射線であるX線を照射する。X線検出器42は、X線管41から照射された患者を透過したX線を検出し、患者に関するX線画像データを生成する。生成されたX線画像データは、放射線治療情報管理システム20に送信される。放射線治療情報管理システム20は、X線画像データを表示したり、複数の撮影角度に関するX線画像データに基づいて3次元画像データを生成し、当該3次元画像データに任意のレンダリング処理を施して表示しても良い。図2に示すように、寝台32は、基台331と天板322とを有する。基台331は、天板322を移動自在に支持する。天板322には患者が載置される。
【0013】
干渉シミュレータ80は、放射線治療装置30の各機構、画像撮影装置40の各機構、患者及び他の付随装置間の干渉の有無を判定するための干渉チェックを実行する。干渉シミュレータ80は、例えば、汎用のコンピュータ又はワークステーションである。例えば、干渉シミュレータ80は、治療室に隣接する管理室等に設置される。干渉シミュレータ80は、汎用のコンピュータ又はワークステーションが備える入力機器、ディスプレイ、通信機器及び記憶装置を備える。当該記憶装置は、HDDやSSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、干渉シミュレータ80は、CPU、GPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。当該プロセッサは、当該メモリに記憶された干渉チェックプログラムを実行することにより干渉チェックを行う。具体的には、干渉シミュレータ80は、放射線治療装置30の各機構、画像撮影装置40の各機構、患者及び他の付随装置の間の物理的距離を計算し、当該物理的距離から干渉を予測し、干渉チェックの結果を表示する。干渉チェックは、放射線治療装置30、画像撮影装置40及び付随装置等の機構の構造及び当該機構の可動範囲に関する情報(以下、機構情報と呼ぶ)と、患者の体型情報とに基づいて実行される。機構情報は、放射線治療装置30、画像撮影装置40及び付随装置に関する機構設計データ(CAD:Computer-Aided Design)から取得可能である。なお、本実施形態に係る付随装置としては、放射線治療装置30及び画像撮影装置40とは別体のX線コンピュータ断層撮影装置やX線アンギオ装置、超音波診断装置、PET(positron emission tomography)装置、SPECT(single photon emission CT)装置、磁気共鳴イメージング装置等の如何なる画像撮影装置や、患者呼吸監視システム、患者体表監視システム等が挙げられる。
【0014】
また、干渉シミュレータ80は、図1に示すように、後述の回転予測時間の算出のため回転速度テーブル81を有する。回転速度テーブル81は、架台の回転速度[°/sec]と、当該架台の識別情報とを関連付けて記憶する。
【0015】
図3は、干渉シミュレータ80が有する回転速度テーブル81の一例を示す図である。図3に示すように、回転速度テーブルは、放射線治療システムが管理する放射線治療装置30や画像撮影装置40等の装置と、当該装置の架台の回転速度[°/sec]とを関連付けている。例えば、放射線治療装置Aの回転速度は5°/secであり、画像撮影装置であるコーンビームCT装置Cの回転速度は30°/secである。回転速度に関する情報は、治療時間管理装置50に供給される。
【0016】
治療時間管理装置50は、治療対象の患者に関する治療時間を計算及び表示等の管理を行うコンピュータである。治療時間管理装置50は、例えば、治療室に隣接する管理室等に設置される。治療時間管理装置50は、汎用のコンピュータ又はワークステーションが備える通信機器及び記憶装置を備える。当該記憶装置は、HDDやSSD、集積回路記憶装置等の記憶装置である。治療時間管理装置50は、CPU、GPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。当該プロセッサは、当該メモリに記憶された治療時間管理プログラムを実行することにより、治療時間算出機能51、実測時間計測機能53、表示制御機能54、選択機能55及び治療スケジュール修正機能56を有する。また、治療時間管理装置50は、作業時間テーブル52を有する。
【0017】
治療時間算出機能51において治療時間管理装置50は、放射線治療に含まれる複数の作業項目各々の作業予測時間を算出又は決定し、これら作業項目の作業時間の合計時間を治療予測時間として算出する。作業項目としては、機械起因の作業項目と人起因の作業項目とに区分される。機械起因の作業項目としては、例えば、架台回転、放射線照射、画像撮影、寝台の移動等が挙げられる。例えば、治療時間管理装置50は、干渉シミュレータ80から供給される架台31の回転速度と、放射線治療情報管理システム20から供給される治療計画データに含まれる複数の照射門の照射角度とに基づいて、複数の照射門間の移動に要する架台31の回転予測時間を算出する。
【0018】
図4は、治療時間管理装置50が有する作業時間テーブル52の一例を示す図である。図4に示すように、作業時間テーブル52は、人起因の作業項目と予測時間[s]とを関連付けている。作業項目のうちの人起因の作業項目としては、患者の作業項目と、放射線診療技師及び医師の作業項目とに区分される。患者の作業項目としては、例えば、入室及び着替、退室及び着替等が挙げられる。放射線診療技師及び医師の作業項目としては、例えば、患者セットアップ、アクセサリ交換、位置確認等が挙げられる。予測時間としては、操作者が任意に決定した値が登録されても良いし、過去の実績時間が登録されても良い。例えば、患者の作業項目「入室・着替」の予測時間は60sであり、医師及び放射線治療技師の作業項目「患者セットアップ」の予測時間は120sである。
【0019】
実測時間計測機能53において治療時間管理装置50は、放射線治療における実際の作業時間を作業項目毎に計測する。計測された作業時間を実測時間と呼ぶことにする。
【0020】
表示制御機能54において治療時間管理装置50は、治療時間算出機能51により算出された治療予測時間と作業予測時間とを所定のレイアウトで表示機器60に表示する。
【0021】
選択機能55において治療時間管理装置50は、入力機器70を介したユーザにより指定された表示項目を選択する。
【0022】
治療スケジュール修正機能56において治療時間管理装置50は、治療時間算出機能51により算出された治療予測時間に従い、放射線治療情報管理システム20が設置された病院の治療スケジュールを修正する。
【0023】
治療時間管理装置50には表示機器60と入力機器70が接続される。表示機器60は、治療時間管理装置50の表示制御機能54による制御を受けて治療予測時間や作業予測時間等の種々の情報を表示する。表示機器60としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。表示機器60は、治療室に隣接する管理室に設けられても良いし、治療室に設けられても良い。入力機器70は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器70としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力機器70からの出力信号は、治療時間管理装置50に供給される。
【0024】
次に、本実施形態に係る放射線治療システムの動作例について説明する。
【0025】
図5は、本実施形態に係る放射線治療システムの典型的な処理の流れを示す図である。なお、図5の処理の前段において治療計画装置10は、治療対象の患者に関する治療計画データを生成し、放射線治療情報管理システム20の治療計画データベース21は、治療対象の患者に関する治療計画データを登録しているものとする。
【0026】
図5に示すように、治療時間管理装置50は、放射線治療情報管理システム20の治療計画データベース21に登録された、治療対象の患者に関する治療計画データを取得する(ステップS1)。治療対象の患者は、例えば、入力機器70を介して放射線診療技師等のユーザにより任意に指定される。
【0027】
ステップS1が行われると治療時間管理装置50は、治療時間算出機能51を実行する(ステップS2)。ステップS2において治療時間管理装置50は、ステップS1において取得した治療計画データに基づいて、治療対象の患者に関する一回の放射線治療の治療予測時間を算出する。一回の放射線治療に関する治療予測時間とは、患者が治療室に入室して放射線治療を受けて退室するまでの予測時間を指すものとする。以下、治療予測時間の算出について詳細に説明する。
【0028】
まず、治療予測時間のうちの、機械起因の作業項目のうちの放射線治療装置30の架台回転に関する作業時間である回転予測時間の算出について説明する。治療時間管理装置50は、ステップS1において取得した治療対象の患者に関する治療計画データから、使用する放射線治療装置の識別情報、複数の照射門の照射角度、複数の照射門の照射順序を抽出する。そして治療時間管理装置50は、使用する放射線治療装置に対応する回転速度を回転速度テーブル81から特定する。また、治療時間管理装置50は、照射順序に従い照射門間の回転予測時間を、照射門間の移動量と回転速度とに基づいて算出する。移動量は、移動元の照射門から移動先の照射門の角度間隔に規定される。原則的には、治療時間管理装置50は、移動量を算出する際、時計回りと反時計回りとの両方の移動量を算出し、短い方を移動量に選択する。
【0029】
図6は、回転予測時間の算出の一例を示す図である。図6に示すように、1番目の照射門の照射角度が225°、2番目の照射門の照射角度が315°、3番目の照射門の照射角度が45°、4番目の照射門の照射角度が135°である。この場合、各照射門間の角度範囲(移動量)は、90°であるから、各照射門間の回転の予測時間は90/5=18secである。従って1番目の照射門から4番目の照射門までの回転予測時間の合計時間は、18・3=54secである。
【0030】
図7は、回転予測時間の算出の他の例を示す図である。図7に示すように、1番目の照射門の照射角度が315°、2番目の照射門の照射角度が225°、3番目の照射門の照射角度が45°、4番目の照射門の照射角度が135°である。この場合、1番目の照射門から2番目の照射門への角度範囲(移動量)は90°であり、2番目の照射門から3番目の照射門への角度範囲(移動量)は180°であり、3番目の照射門から4番目の照射門への角度範囲(移動量)は90°である。従って1番目の照射門から2番目の照射門への角度範囲(移動量)は90°/5=18secであり、2番目の照射門から3番目の照射門への角度範囲(移動量)は180°/5=36secであり、3番目の照射門から4番目の照射門への角度範囲(移動量)は90°である。従って1番目の照射門から4番目の照射門までの回転予測時間の合計時間は、18+36+18=72secである。
【0031】
なお、治療時間管理装置50は、架台31の可動範囲の機械的制限を加味して移動量及び回転予測時間を算出する。
【0032】
図8は、架台31の可動範囲の機械的制限を加味した回転予測時間の算出の一例を示す図である。機械的原点角度が0°に設計されている場合、架台31は、0°を中心として±180°が可動範囲として設計される。この場合、架台31は180°を跨いで回転することができない。例えば、図8に示すように、第1の照射門の照射角度が225°であり、第2の照射門の照射角度が135°である場合、照射ヘッド部312を第1の照射門から180°を経由して第2の照射門へ直接的に移動させることができない。この場合、照射ヘッド部312を第1の照射門から機械的原点角度0°を経由して第2の照射門へ移動させなければならない。
【0033】
上記の通り、治療時間管理装置50は、移動元の照射門から移動先の照射門への移動量を算出する際、時計回りと反時計回りとの両方の経路の移動量を算出する。次に治療時間管理装置50は、短い方の経路が180°を経由するか否かを判定する。180°を経由しない場合、治療時間管理装置50は、短い方の経路を回転予測時間の算出対象の移動経路に設定し、当該経路の移動量を、回転予測時間の算出対象の移動量に設定する。短い方の経路が180°を経由する場合、治療時間管理装置50は、長い方の経路を回転予測時間の算出対象の移動経路に設定し、当該経路の移動量を、回転予測時間の算出対象の移動量に設定する。これにより、可動範囲を加味した移動経路の設定及び回転予測時間の算出を行うことができる。
【0034】
治療時間管理装置50は、機械起因の作業項目のうちの放射線照射に関する作業時間である照射予測時間を算出することを可能である。例えば、治療時間管理装置50は、治療計画データから、使用する放射線治療装置の時間当たりの照射可能線量と、治療部位に対する照射予定線量とを抽出する。そして治療時間管理装置50は、抽出された時間当たりの照射可能線量と照射予定線量とに基づいて照射予測時間を算出する。具体的には、照射可能線量が300MU/分であり、照射予定線量が150MUである場合、照射予定線量を照射可能線量で除した値、すなわち、150/300=0.5分=30秒である。
【0035】
治療時間管理装置50は、機械起因の作業項目として、画像撮影に要する予測時間を算出することも可能である。例えば、画像撮影が2D撮影である場合、画像撮影に要する予測時間は、回転予測時間と撮影予測時間とに分けられる。画像撮影に関する回転予測時間は、放射線照射に関する回転予測時間と同様に算出可能である。すなわち、まず、治療時間管理装置50は、治療計画データから、画像撮影に関する架台31の回転速度と複数の撮影方向の撮影角度と撮影順序とを抽出する。次に、治療時間管理装置50は、使用する画像撮影装置に対応する回転速度を回転速度テーブル81から特定する。そして、治療時間管理装置50は、撮影順序に従い撮影方向間の移動に要する回転予測時間を、撮影方向間の移動量と回転速度とに基づいて算出する。2D撮影の場合、X線照射時に架台回転を要しないので、X線照射時間は予め決められた値が用いられれば良い。
【0036】
画像撮影が3D撮影である場合、撮影時間は初期角度への移動に関する回転予測時間とコーンビーム撮影に関する照射予測時間とに分けられる。初期角度への移動に関する回転予測時間は、移動前の架台角度から初期角度への移動量と、回転速度とに基づいて算出可能である。照射予測時間は、撮影角度範囲と回転速度とに基づいて算出可能である。例えば、撮影角度範囲が360°であり、回転速度が10°/secである場合、照射予測時間は、360/10=36秒となる。
【0037】
治療時間管理装置50は、人起因の作業項目に関する予測時間を作業時間テーブル52に基づいて算出することも可能である。治療対象の患者の放射線治療に必要な人起因の作業項目及び順番は、放射線治療の種類等に応じて決まる。治療時間管理装置50は、治療対象の患者の放射線治療に必要な人起因の作業項目を特定し、特定された人起因の作業項目に関連付けられた作業予測時間を作業時間テーブル52から特定する。
【0038】
機械起因の作業項目の作業予測時間と人起因の作業項目の作業予測時間とを算出し終えると治療時間管理装置50は、それら作業予測時間の合計時間を、治療予測時間として算出する。
【0039】
ステップS2が行われると干渉シミュレータ80は、治療対象の患者に関する治療計画データに従い干渉チェックを実行する(ステップS3)。干渉シミュレータ80は、治療計画データに含まれる照射順序及び撮影順序に従い放射線治療装置30の各機構、画像撮影装置40の各機構、患者及び付随装置の動作をシミュレーションし、放射線治療装置30の各機構、画像撮影装置40の各機構、患者及び付随装置間で干渉が生じるか否かを判定する。
【0040】
ステップS3が行われると治療時間管理装置50は、表示制御機能54を実行する(ステップS4)。ステップS4において治療時間管理装置50は、ステップS2において算出された治療予測時間とステップS3において実行された干渉チェックの結果とを表示機器60に表示する。
【0041】
図9は、ステップS4において表示される治療予測時間と干渉チェック結果との表示画面I1の一例を示す図である。図9に示すように、表示画面I1は、治療対象の患者に関する放射線治療の治療予測時間を表示すると共に、当該放射線治療に関する作業項目を実施順序に従い一覧で表示し、作業項目毎に作業予測時間を表示する。具体的には、表示画面I1は、治療対象の患者名の下方に作業項目表示欄J1を表示する。作業項目表示欄J1には治療対象の患者放射線治療に関する作業項目が実施順序に従い一覧で表示されている。作業項目は階層別に分けて表示されると良い。例えば、最上層の作業項目としては、「入室・着替」、「処方」、「退室・着替」に区分される。処方とは、患者への施術の種類に対応する。作業項目「処方」の下層には、具体的な作業項目が属する。例えば、患者Aに対しては、まず処方AとしてX線照射が行われ、次に処方Bとして電子線照射が行われる。各作業項目の名称には当該作業項目の種類を示すマークが横に表示される。例えば、図9の■は患者の作業項目を示し、□は放射線診療技師及び医師の作業項目を示し、△は画像撮影の作業項目を示し、▲は放射線照射の作業項目を示す。
【0042】
図9に示すように、作業項目表示欄J1の隣には治療予測時間表示欄J2と作業予測時間表示欄J3とが設けられる。治療予測時間表示欄J2には治療予測時間が表示される。治療予測時間は、上述の通り、各作業予測時間の合計時間である。図9の場合、治療予測時間は626sすなわち10m26sである。作業予測時間表示欄J3には各作業項目の作業予測時間が表示される。例えば、1回目の放射線照射の作業予測時間は36sであり、2回目の放射線照射の作業予測時間は27sであり、1回目の照射角度から2回目の照射角度への架台回転の回転予測時間は21sである。なお、「cc」は反時計回りを指し、「cw」は時計回りを指す。
【0043】
このように、治療予測時間と作業項目毎の作業予測時間とが表示されることにより、放射線診療技師等のユーザは、患者が治療室に入室する前に現状の照射順序及び撮影順序での架台回転時間や治療予測時間を知ることができる。このため、ユーザは、効率の良い照射順序を準備することが出来、治療時間の短縮を図ることができる。また、作業項目と作業予測時間とを並列して表示することにより、放射線治療の作業手順が明確になるので、手順の間違いや手戻りを減少させることができる。
【0044】
図9に示すように、表示画面I1には干渉チェック結果表示欄J4が設けられる。干渉チェック結果表示欄J4には、ステップS3において行われた干渉チェックの結果が表示される。例えば、ステップS3において干渉のおそれがあると判定され場合、「干渉のおそれがあります」と表示される。この際、作業予測時間表示欄J3には、干渉が生じうる作業項目に警告マークJ5が付されると良い。例えば、干渉チェックにおいて正面撮影から側面撮影への架台回転について干渉が生じうると判定された場合、正面撮影から側面撮影への架台回転の作業項目に警告マークJ5が付される。なお、ステップS3において干渉のおそれがないと判定され場合、「干渉のおそれはありません」等と表示される。
【0045】
ステップS4が行われると治療時間管理装置50は、照射順序及び撮影順序の変更を待機する(ステップS5)。
【0046】
図9に表示される各作業項目は、ユーザによる入力機器70を介した指示に従い、他の作業項目と入れ替え可能に表示される。すなわち、照射順序及び撮影順序の変更が可能である。例えば、ユーザは、図7図8に示すように、照射順序が非効率であると判断した場合、図6に示す照射順序になるように照射門の順番を並び替える。並び替えは、例えば、図9に示す表示画面I1において各作業項目をドラッグ・アンド・ドロップ操作することにより行われると良い。画像撮影が2D撮影である場合、同様の操作により、撮影角度の順番を変更することができる。
【0047】
照射順序及び撮影順序の変更が行われた場合(ステップS5:YES)、治療時間管理装置50は、変更後の照射順序及び撮影順序に基づいて回転予測時間等を含む治療予測時間を算出し(ステップS2)、干渉チェックを行い(ステップS3)、再度の治療予測時間及び干渉チェックの結果を表示し(ステップS4)、再び照射順序及び撮影順序の変更を待機する(ステップS5)。
【0048】
このように、治療予測時間と作業項目毎の作業予測時間とを表示したうえで照射順序及び撮影順序の変更を受け付けることにより、放射線診療技師等のユーザは、患者が入室する前に、最適な架台回転時間及び治療予測時間を設定することができる。
【0049】
ステップS5において照射順序及び撮影順序の変更が行われず(ステップS5:NO)、放射線治療情報管理システム20や放射線治療装置30等に設けられた治療開始ボタンが押下された場合、放射線治療装置30及び画像撮影装置40は、放射線治療を開始する(ステップS6)。放射線治療装置30及び画像撮影装置40は、治療計画に従い放射線治療を実行する。なお、ステップS5において照射順序及び撮影順序が変更された場合、変更後の照射順序及び撮影順序に従い放射線治療が行われる。
【0050】
放射線治療の実行中、治療時間管理装置50は、表示制御機能54を実行する(ステップS7)。ステップS7において治療時間管理装置50は、作業項目毎の経過時間及び完了ステータスを表示機器60に表示する。
【0051】
図10は、ステップS7において表示される経過時間と完了ステータスとの表示画面I2の一例を示す図である。図10に示すように、表示画面I2は、図9の表示画面I1と同様、作業項目表示欄J1、治療予測時間表示欄J2及び作業予測時間表示欄J3とが設けられる。作業項目表示欄J1、治療予測時間表示欄J2及び作業予測時間表示欄J3の表示内容は。図9と同様である。
【0052】
図10に示すように、作業予測時間表示欄J3の隣にはインジケータ表示欄J6が設けられる。インジケータ表示欄J6には、各作業項目についての経過時間及び実際の作業時間を示すインジケータJ61、J62及びJ63が表示される。インジケータJ61、J62及びJ63の長さは、対応する作業項目の作業予測時間に応じた長さに設定される。作業予測時間が長いほどインジケータJ61、J62及びJ63の横幅が長く設定される。作業項目が未実施である場合、そのインジケータJ61は未実施を示す色、例えば、白等で表示されると良い。作業項目が実施中である場合、そのインジケータJ62は、例えば、経過時間に応じた色で表示されると良い。例えば、作業予測時間に対しする経過時間の割合が低いほど白く、1に近いほど青く表示されると良い。また、経過時間が作業予測時間を超えている場合、インジケータJ63は、例えば、警告色である赤色で表示されると良い。作業項目が完了した場合、そのインジケータは完了を示す色、例えば、青等で表示されると良い。あるいは、インジケータに「完了しました」等のメッセージが表示されても良い。このように、治療時間管理装置50は、未実施、実施中、実施済みに分けてインジケータJ61、J62及びJ63を表示することにより、作業項目を、未実施、実施中又は実施済みに分けて視覚的に区別して表示する。これにより、ユーザは、各作業項目のステータスを明確に把握することができる。
【0053】
経過時間は、治療時間管理装置50の実測時間計測機能53により計測される。例えば、治療時間管理装置50は、各作業項目の開始を契機として時間の計測を開始し、各作業項目の終了を契機として計測を終了する。各作業項目の開始及び終了の指示は、放射線治療情報管理システム20、放射線治療装置30及び画像撮影装置40の入力機器等を介してユーザにより入力されても良いし、放射線治療情報管理システム20、放射線治療装置30及び画像撮影装置40により各作業項目に対応する動作の開始及び終了に伴い自動的に発行されても良い。治療時間管理装置50は、リアルタイムで経過時間を計測し、経過時間に色等でインジケータを表示する。
【0054】
なお、上記の例においては、経過時間を、インジケータJ61、J62及びJ63の色で表すとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、治療時間管理装置50は、直接的に数字で表示しても良い。また、全ての作業項目が終了した場合、各作業項目の実測時間の合計時間を算出し、実測治療時間として、治療予測時間に並べて表示しても良い。
【0055】
図11は、治療予測時間と実測治療時間とを並列して表示する表示画面I3の一例を示す図である。図11に示すように、表示画面I3は、図9の表示画面I1と同様、作業項目表示欄J1、治療予測時間表示欄J2及び作業予測時間表示欄J3とが設けられる。作業項目表示欄J1、治療予測時間表示欄J2及び作業予測時間表示欄J3の表示内容は。図9と同様である。治療予測時間表示欄J2の隣には治療実測時間表示欄J7が設けられ、作業予測時間表示欄J3の隣には作業実測時間表示欄J8が設けられる。治療実測時間表示欄J7には、各作業項目の作業予測時間に並列して作業実測時間が表示される。上記の通り、作業実測時間と治療実測時間とは、治療時間管理装置50の実測時間計測機能53により計測される。例えば、図10に示すように、作業項目「セットアップ」の作業予測時間は120sであるのに対して、作業実測時間は110sである。また、治療予測時間が626sであるのに対して治療実測時間は666sである。このような並列表示により、実際に要した時間が予想によりどの程度短いのかあるいは長いのかを容易に判断することができる。
【0056】
そして治療終了ボタンが押下された場合、放射線治療装置30及び画像撮影装置40は、放射線治療を終了する(ステップS8)。
【0057】
以上により、本実施形態に係る放射線治療システムの典型的な処理が終了する。
【0058】
なお、本実施形態に係る放射線治療システムの処理の流れは図5に示す流れのみに限定されず、種々の変更が可能である。例えば、上記の例においては、ステップS3において、治療計画データに含まれる初期の照射順序及び撮影順序に基づき回転予測時間及び治療予測時間を算出するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、治療時間管理装置50は、治療計画データに含まれる複数の照射門及び複数の撮影方向と、回転方向(時計回り及び反時計回り)とに基づき構築される全ての照射順序及び撮影順序のパターン(以下、移動フローと呼ぶ)について回転予測時間及び治療予測時間を算出しても良い。各移動フローの回転予測時間及び治療予測時間が治療時間管理装置50により表示機器60に並列して表示される。
【0059】
図12は、移動フローを並列して表示する表示画面I4の一例を示す図である。図12に示すように、表示画面I4は、各移動フローnの表示欄J9nが設けられる。ここで、nは移動フローの番号を示す自然数である。各表示欄J9nには、各移動フローnの作業項目と作業予測時間とが照射順序に一覧で表示されると共に、治療予測時間が表示される。これにより、各移動フローの照射順序や作業予測時間、治療予測時間の違いを容易に把握することが可能となる。また、各移動フローnについて採用ボタンBnが表示される。採用ボタンBnが入力機器70等を介して押下された場合、治療時間管理装置50は、押下された採用ボタンBnに対応する移動フローnを放射線治療の移動フローとして採用する。これにより、ユーザは、複数の移動フローの中から、照射順序や作業予測時間、治療予測時間の違いを考慮して最良の移動フローを採用することが可能になる。
【0060】
また、治療時間管理装置50は、表示画面I4を表示する前段において、複数の移動フロー各々について干渉チェックを行い、干渉チェックの結果と共に、各移動フローnの治療予測時間と作業項目と作業予測時間とを表示しても良い。
【0061】
図13は、移動フローを並列して表示する他の表示画面I5の一例を示す図である。図13に示すように、表示画面I5は、各移動フローnの表示欄J9nと採用ボタンBnと共に干渉チェック結果表示欄J101及びJ101が設けられる。干渉チェック結果表示欄J101は、干渉のおそれがある旨の結果を示すメッセージを表示する欄である。干渉チェック結果表示欄J102は、干渉のおそれがない旨の結果を示すメッセージを表示する欄である。治療時間管理装置50は、各移動フローについて干渉チェックを行い、干渉のおそれがあると判定された移動フローについては干渉チェック結果表示欄J101を表示し、干渉のおそれがないと判定された移動フローについては干渉チェック結果表示欄J102を表示する。
【0062】
なお、干渉チェックの結果の表示態様としては、干渉の有無を示すメッセージの表示のみに限定されない。例えば、治療時間管理装置50は、干渉の有無を表示欄J9nの色等で表示しても良い。また、治療時間管理装置50は、干渉のおそれがある移動フローnに対応する表示欄J9nにマスクをかけたり、点滅させたりしても良い。
【0063】
架台31が回転速度を変更できる機構を備えている場合、治療時間管理装置50は、「架台回転」の作業項目に隣接して「高速」マークM1を表示しても良い。「高速」マークM1は、放射線治療装置30に搭載されたブースト(加速)機構を利用して架台31を高速回転可能であることを示す。治療時間管理装置50は、「高速」マークM1と共に、治療予測時間と作業予測時間と共にブーストボタンを表示する。なお、干渉チェックにより、回転時に架台31が干渉するおそれがあると判断した場合、又は架台回転の開始角度又は終了角度付近に干渉のおそれのある物体が近いと判断した場合、放射線治療装置30は、「高速」マークM1を表示しない。
【0064】
図14は、ブーストボタンと共に作業項目と治療予測時間と作業予測時間とを表示する表示画面I6を示す図である。図14に示すように、表示画面I6は、作業項目表示欄J1、治療予測時間表示欄J2及び作業予測時間表示欄J3共に、ブーストボタンB4を表示する。作業項目表示欄J1、治療予測時間表示欄J2及び作業予測時間表示欄J3の表示内容は、図9の表示内容と同一である。ブーストボタンB4は、架台回転速度を一段階上げるためのボタンである。ブーストボタンB4が押下された場合、治療時間管理装置50は、一段階上げた後の回転速度に基づいて回転予測速度と治療予測時間とを算出する。そして治療時間管理装置50は、架台回転速度を一段階上げた後の回転予測速度と治療予測時間とを表示する。
【0065】
図15は、架台回転速度を一段階上げた後の回転予測速度と治療予測時間とを表示する表示画面I7を示す図である。図15に示すように、作業予測時間表示欄J12には、架台回転速度を一段階上げた後の回転予測時間が表示され、治療予測時間表示欄J11には、
架台回転速度を一段階上げた後の治療予測時間が表示される。例えば、図14図15とを比較すると、架台回転cwが28sから14sに短縮されていることが分かる。また、架台回転速度が最高速度である場合、図15に示すように、ブーストボタンB4には押下不可のマークが付されると良い。
【0066】
放射線治療情報管理システム20等は、当該放射線治療情報管理システム20が設置された病院の治療スケジュールを管理している場合もある。治療スケジュールは、各治療室で行われる放射線治療の時間割である。しかしながら、治療スケジュールに含まれる各放射線治療の治療時間は、放射線診療技師等の医療従事者が大雑把に決めており、正確ではないことがある。
【0067】
本実施形態に係る治療時間管理装置50は、治療スケジュール修正機能56を実行し、治療スケジュールに含まれる各放射線治療の治療時間を、治療時間算出機能51により算出された治療対象の患者に関する治療予測時間に基づいて修正する。具体的には、治療時間管理装置50は、まず、放射線治療情報管理システム20から治療スケジュールを取得する。次に治療時間管理装置50は、治療予測時間の算出対象である患者の放射線治療の日程を、取得した治療スケジュールから特定する。そして治療時間管理装置50は、特定された放射線治療の治療時間を、治療時間算出機能51により算出された治療予測時間で上書きする。これにより、治療スケジュールに登録されている治療時間をより正確な時間にすることができる。
【0068】
上記の説明の通り、本実施形態に係る放射線治療システムは、治療計画装置10、放射線治療装置30、治療時間管理装置50及び表示機器60を有する。治療計画装置10は、治療対象の患者に関する治療計画データを生成する。放射線治療装置30は、治療用放射線を照射する照射ヘッド部312を回転可能に支持する架台31を有する。治療時間管理装置50は、架台31の回転速度と、治療計画データに含まれる複数の照射門の照射角度とに基づいて、当該複数の照射門間の移動に要する架台31の回転予測時間を算出する。治療時間管理装置50は、架台31の回転予測時間を表示機器60に表示する。
【0069】
かくして、上記少なくとも一の実施形態によれば、放射線治療実行前に放射線診療技師等に対して正確な治療時間を提示することが可能となる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
10…治療計画装置、20…放射線治療情報管理システム、21…治療計画データベース、30…放射線治療装置、31…架台、32…寝台、40…画像撮影装置、41…X線管、42…X線検出器、50…治療時間管理装置、51…治療時間算出機能、52…作業時間テーブル、53…実測時間計測機能、54…表示制御機能、55…選択機能、56…治療スケジュール修正機能、60…表示機器、70…入力機器、80…干渉シミュレータ、81…回転速度テーブル、311…架台本体、312…照射ヘッド部、322…天板、331…基台。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15