(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。図面において、同一部分には同一符号を付している。
【0009】
図1、
図2は、本実施形態に係るスリップリング装置を有するロータリージョイントRJを示している。
【0010】
図1に示すように、ロータリージョイントRJは、固定部としてのケース10と、第1カバー11、第2カバー12、第3カバー13、及びケース10に対して回転可能な回転軸14などを具備している。
【0011】
図2に示すように、ケース10は、側面に第1開口部10aを有し、底部に第2開口部10bを有し、上部に第3開口部10cを有している。
【0012】
ケース10の第1開口部10aを覆うように、印刷基板15が設けられる。印刷基板15の第1の面には、後述する複数の接触子16が設けられ、第2の面には、複数の接触子16と電気的に接続されたコネクタ17が設けられている。
【0013】
本実施形態の場合、例えば14個の接触子16が印刷基板15に配置される。具体的には、回転軸14の直径方向に所定間隔離間して2列、回転軸14の軸方向に所定間隔離間して例えば7対が配置される。回転軸14の直径方向に配置された一対の接触子16が、後述する導電性を有するリング22に接触され、スリップリング装置を構成する。接触子16の数は、14個に限定されるものではなく、変形可能である。
【0014】
第1カバー11は、第1開口部10aに印刷基板15設けられた状態において、ケース10の側面にネジ18a、18bにより、固定される。
【0015】
第1カバー11は、開口部11aを有し、開口部11aは、印刷基板15に設けられたコネクタ17を露出する。
【0016】
回転軸14は、一端部に第1ベアリング20が設けられ、他端部に第2ベアリング21が設けられる。第1ベアリング20と第2ベアリング21との間の回転軸14に、複数のリング22が取着される。リング22のそれぞれは、後述するように、回転軸14の内部に配置された複数の配線23の1つに電気的に接続される。
【0017】
回転軸14は、第1開口部10a及び第2開口部10bからケース10内に設けられ、一端部が第3開口部10cに挿入されて、ケース10の外部に突出される。
【0018】
ケース10内に回転軸14が設けられた状態において、回転軸14の一端部に設けられた第1ベアリング20は、ケース10の第3開口部10c内に保持される。
【0019】
ケース10内に回転軸14が設けられた状態において、第2カバー12は、ケース10の第2開口部10bを覆うように設けられ、ネジ19a、19b、19cによって、ケース10に固定される。
【0020】
第2カバー12は、中央部にリング状の保持部12aを有し、この保持部12a内に回転軸14の他端部に設けられた第2ベアリング21が保持される。
【0021】
第3カバー13は、中央部に開口部13aを有している。ケース10内に回転軸14が設けられた状態において、第3カバー13は、第3開口部10cを覆うようにケース10に取着される。回転軸14の一端部は、第3カバー13の開口部13aに挿入され、第3カバー13は、ネジ24a、24b、24cによりケース10に固定される。
【0022】
図3は、回転軸14を概略的に示している。回転軸14は、筒状の本体14aを有している。本体14aは、一端部にフランジ14bを有し、フランジ14bの近傍から他端部に亘って一対のスリット14cを有している。すなわち、スリット14cは、本体14aの軸方向に沿って設けられている。このスリット14cにより、本体14aの他端部は、第1の部分14a−1と第2の部分14a−2に分離され、第1の部分14a−1と第2の部分14a−2は、互いに接近する方向、及び離れる方向に撓むことが可能とされている。
【0023】
尚、スリット14cの数は、2つに限らず1つ又は3つ以上であってもよい。
【0024】
本体14aのフランジ14bから他端部に亘って、前述した第1ベアリング20、複数のスペーサ25、複数のリング22、スペーサ26、及び第2ベアリング20が装着される。複数のスペーサ25及びスペーサ26は、絶縁材料、例えばプラスチックにより構成され、複数のリング22は、導電性の金属により構成されている。リング22の数は、本実施形態の場合、7個であるが、これに限定されるものではなく、変形可能である。
【0025】
第1ベアリング20は、例えばラジアルベアリングであり、リング状の内輪20aと、リング状の外輪20bと、内輪20aと外輪20bとの間に設けられた複数の鋼球20c(
図4に示す)とを具備する。
【0026】
第1ベアリング20は、回転軸14の本体14aに装着された状態において、内輪20aが回転軸14の外面及びフランジ14bに当接される。また、外輪20bは、ケース10の第3開口部10cの内面に、例えば圧接される。
【0027】
第1ベアリング20は、ラジアルベアリングに限定されるものではなく、内輪と外輪を有する他の構成のベアリングを適用することも可能である。また、第1ベアリング20の取り付け方法は、これに限定されるものではなく、変形可能である。
【0028】
各スペーサ25は、フランジ25aとスリーブ25bを有している。スリーブ25bの直径はリング22の直径より小さく、回転軸14の本体14aの直径より大きい。
【0029】
図4に示すように、スペーサ25は、回転軸14の本体14aに装着された状態において、スリーブ25bがリング22と回転軸14の本体14aとの間に配置される。フランジ25aは、隣接する2つのリング22の間に位置し、2つのリング22を絶縁する。
【0030】
図3、
図4に示すように、リング22は、内側に略L字型の突起22aを有している。リング22は、突起22aが本体14aのスリット14c内に位置するように、本体14aに装着される。具体的には、隣接するリング22の突起22aが本体14aの2つのスリット14c内に交互に配置されるように、本体14aに装着される。この構成により、本体14aに対する各リング22の回転が阻止され、各リング22は、本体14aと共に回転される。
【0031】
各リング22の突起22aは、本体14aの内部空間に位置し、各リング22の突起22aに複数の配線23の1つが接続される。
【0032】
組み立てに際しては、予め各リング22の突起22aに配線23の1つが接続され、配線23が本体14aの内部空間に挿入された状態でリング22が本体14aに装着される。
【0033】
図3に示すように、スペーサ26は、内側に本体14aのスリット14cに係合される一対の突起26aが設けられている。スペーサ26は、複数のリング22及び複数のスペーサ25が本体14aに装着された状態において、本体14aに装着される。
【0034】
第2ベアリング21は、第1ベアリング20と同様に、リング状の内輪21aと、外輪21bと、内輪21aと外輪21bとの間に設けられた複数の鋼球21c(
図4に示す)とを具備している。
【0035】
第2ベアリング21は、回転軸14の本体14aの他端部に装着される。第2ベアリング21の内径は、本体14aの外径より若干大きい。しかし、本体14aの第1の部分14a−1と第2の部分14a−2を互いに接近するように撓ませた状態で、第2ベアリング21を装着することにより、第2ベアリング21を本体14aの外部に容易に取り付けることができる。
【0036】
この状態において、本体14aの他端部の内部にキャップ27が圧入される。
【0037】
図5に示すように、キャップ27は、例えばプラスチックにより構成され、スリーブ27a及びフランジ27bを有している。スリーブ27aの一端部(先端部)の外径D1は、回転軸14の本体14aの内径D3より小さい。このため、スリーブ27aの一端部を容易に本体14aに挿入することができる。
【0038】
スリーブ27aの他端部の外径D2は、本体14aの内径D3より大きく、本体14aの外径と第2ベアリング21の内径(内輪21aの内径)との差D4×2を加えた大きさより大きく設定されている。すなわち、スリーブ27aの他端部の外径D2は、
D2>D3+2D4
に設定されている。
【0039】
換言すると、スリーブ27aの外径D2と本体14aの内形D3との差は、ベアリングの21の内径と本体14aの外径との差2D4より大きい。
【0040】
このため、
図6に示すように、キャップ27のスリーブ27aを本体14aの他端部に挿入すると、本体14aの第1の部分14a−1と第2の部分14a−2との間隔が広がり、第1の部分14a−1と第2の部分14a−2が第2ベアリング21の内輪21aに圧接される。
【0041】
上記構成の回転軸14がケース10の内部に装着された状態において、回転軸14は、第1ベアリング20及び第2ベアリング21により、ケース10に対して回転可能に保持される。
【0042】
さらに、
図7に示すように、印刷基板15に設けられた複数の接触子16は、2つずつ1つのリング22に接触される。リング22のそれぞれには、潤滑剤としての例えば導電性を有するグリース28が塗布され、グリース28によりリング22と接触子16との接触の安定性が保持されている。
【0043】
図8(a)(b)(c)(d)は、接触子16を示している。
【0044】
接触子16は、一端部に端子16a及び端子16bを有している。端子16a及び端子16bは、印刷基板15のスルーホールに挿入される。端子16bは、端子16aに対して、90°折曲されているため、接触子16を印刷基板15の表面に対して直角に設置することが可能である。
【0045】
接触子16の他端部は、例えば複数のスリットにより、複数の接触部16cに分離され、ブラシが形成されている。
【0046】
図8(b)に示すように、接触部16cの先端は、例えば20°程度傾斜されており、組み立て時に、印刷基板15に配置された複数の接触子16のそれぞれが各リング22に容易に接触できるようにされている。
【0047】
図8(d)に示すように、複数の接触部16cは、幅方向の両側が、リング22から離れる方向に湾曲されている。このため、リング22の回転に伴い、接触部16cのそれぞれとリング22との間にグリース28が容易に侵入できる。したがって、各接触部16cとリング22との接触の安定性を保持することが可能である。
【0048】
図9は、一対の接触子16とリング22との関係を示している。リング22と接触子16との接触を安定に保持するためには、リング22に対する接触子16の接触圧を十分に確保することが重要である。
【0049】
本実施形態は、リング22と接触子16との位置関係を規定することにより、リング22に対する接触子16の適正な接触圧を設定可能とする。
【0050】
一対の接触子16は、一端部が印刷基板15に設けられ、接触部16cがリング22に接触される。
【0051】
ここで、印刷基板15に設けられた一対の接触子16の一端部の相互間距離を、W1とし、印刷基板15の表面からリング22と接触子16とが接触する接点Cまでの距離をLとし、接点Cの相互間距離をW2とし、2つの接点Cを通る2つの接線の成す角度をθとし、距離W1、W2、Lを変化させて、例えば5000万回転未満でノイズが発生しないことを条件として、実験により求めた理想的な接点圧の範囲は、7.56gf〜22.84gfである。
【0052】
上記接点圧の範囲7.56gf〜22.84gfを得るための、距離W1、W2、Lの関係は、次のようになる。
【0053】
W1:2mm〜7mm
W2:9.19mm〜9.89mm
L:10.44mm〜11.66mm
θ:17.01°〜46.2°
ここで、接触子16の幅は、例えば1.6mm、厚みは、0.1mmである。
【0054】
これより、理想的なW1、W2、Lの比は、次式(1)で示される。
【0055】
W1:W2:L=1:1.41〜4.60:1.67〜5.22 (1)
(実施形態の効果)
上記実施形態によれば、回転軸14の本体14aは、一対のスリット14cを有し、本体14aの他端部は、第1の部分14a−1と第2の部分14a−2に分割され、第1の部分14a−1と第2の部分14a−2は、撓むことが可能とされている。このため、本体14aに、第1ベアリング20、複数のリング22、複数のスペーサ25、及びスペーサ26を装着した状態において、本体14aの第1の部分14a−1と第2の部分14a−2が接近するように撓ませることにより、第2ベアリング21を本体14aの他端部に容易に装着することができる。
【0056】
しかも、第2ベアリング21を本体14aの他端部に装着した状態において、キャップ27のスリーブ27aを本体14aの他端部に圧入することにより、本体14aの第1の部分14a−1と第2の部分14a−2を押し広げることができ、本体14aを第2ベアリング21に締結することができる。このため、複数の部品が装着された回転軸14に、接着剤などを用いることなく、第2ベアリングを締結することができる。したがって、組み立て作業を容易化できる。
【0057】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。