特許第6887916号(P6887916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887916壁貫通箇所の配線・配管材固定構造、C型鋼固定部材、及び配線・配管材支持具装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887916
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】壁貫通箇所の配線・配管材固定構造、C型鋼固定部材、及び配線・配管材支持具装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/00 20060101AFI20210603BHJP
   F16L 3/02 20060101ALI20210603BHJP
   F16L 3/10 20060101ALI20210603BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20210603BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   F16L5/00 J
   F16L3/02 B
   F16L3/10 Z
   F16L5/02 F
   H02G3/22
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-162908(P2017-162908)
(22)【出願日】2017年8月27日
(65)【公開番号】特開2019-39517(P2019-39517A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】堀 信夫
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−015859(JP,A)
【文献】 特開2015−168975(JP,A)
【文献】 実開昭59−056482(JP,U)
【文献】 特開2011−052798(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0276092(US,A1)
【文献】 特開2016−205614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00−5/14
F16L 3/00−3/26
H02G 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物壁に形成された貫通孔から配線・配管材が引き出され、
引き出された前記配線・配管材は、底壁と、該底壁から立設する一対の側壁と、該各側壁の先端側が互いに対向する側壁側に折り返されたリップ部と、該リップ部間に形成された開口部と、を有するC型鋼と、該C型鋼に取着された配線・配管材支持部材と、からなる配線・配管材支持具により、前記貫通孔の内面との間に隙間を形成するように支持され、
前記建物壁に固定される固定部と、前記C型鋼の開口部に沿った長さ方向の任意の位置で前記配線・配管材支持具を保持可能である保持部と、を有する2つの固定部材が前記建物壁における前記貫通孔を挟んだ両側に立設する各柱にそれぞれ固定され、
前記配線・配管材支持具は、前記建物壁から離間した位置で前記固定部材の保持部に保持されている
ことを特徴とする壁貫通箇所の配線・配管材固定構造。
【請求項2】
建物壁に形成された貫通孔から配線・配管材が引き出され、
引き出された前記配線・配管材は、配線・配管材支持部材により、前記貫通孔の内面との間に隙間を形成するように支持され、
前記配線・配管材支持部材は、底壁と、該底壁から立設する一対の側壁と、該各側壁の先端側が互いに対向する側壁側に折り返されたリップ部と、該リップ部間に形成された開口部と、を有し前記建物壁の貫通孔を横切るように配置されたC型鋼に取着され、
前記建物壁に固定される固定部と、前記C型鋼の開口部に沿った長さ方向の任意の位置で前記C型鋼を保持可能である保持部と、を有する2つの固定部材が前記建物壁における前記貫通孔を挟んだ両側に立設する各柱にそれぞれ固定され、
前記C型鋼は、前記建物壁から離間した位置で前記固定部材の保持部に保持されていることを特徴とする壁貫通箇所の配線・配管材固定構造。
【請求項3】
前記貫通孔の内面と前記配線・配管材の外面との間に充填材が充填され、
前記配線・配管材支持具または前記C型鋼と前記建物壁とは、前記充填される充填材を前記貫通孔内に挿入可能な大きさで離間していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の壁貫通箇所の配線・配管材固定構造。
【請求項4】
請求項1に記載の配線・配管材固定構造に用いられる固定部材であって、
建物壁に固定される固定部と、前記建物壁から離間した位置で前記C型鋼を保持する保持部と、を有し、前記保持部は、前記C型鋼の開口部に沿った長さ方向の任意の位置で保持可能であることを特徴とするC型鋼固定部材。
【請求項5】
底壁と、該底壁から立設する一対の側壁と、該各側壁の先端側が互いに対向する側壁側に折り返されたリップ部と、該リップ部間に形成された開口部と、を有するC型鋼と、該C型鋼に取着された配線・配管材支持部材と、を備え、建物壁に形成された貫通孔から引き出された配線・配管材を支持する配線・配管材支持具と、
前記C型鋼を建物壁に固定するためのC型鋼固定部材と、
からなる配線・配管材支持具装置であって、
前記C型鋼固定部材は、前記建物壁に固定される固定部と、前記建物壁から離間した位置で前記C型鋼を保持する保持部と、を有し、
前記保持部は、前記C型鋼の開口部に沿った長さ方向の任意の位置で保持可能であることを特徴とする配線・配管材支持具装置。
【請求項6】
前記保持部は、前記C型鋼の開口部内に挿入される挿入部を有し、該挿入部には前記C型鋼のリップ部に係止して吊持する吊持部が形成され、該吊持部が前記リップ部に係止した状態で前記C型鋼の長手方向に沿って移動可能であるとともに、前記移動を規制する移動規制手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載の配線・配管材支持具装置。
【請求項7】
前記保持部は、前記C型鋼の両側壁及び底壁の外面に沿う凹部を有し、該凹部内に配置された前記C型鋼に対してその長手方向に移動するのを規制する移動規制手段と、前記凹部の開口から前記C型鋼が離脱するのを防止する離脱防止手段と、を備えたことを特徴とする請求項5に記載の配線・配管材支持具装置。
【請求項8】
前記固定部は、前記保持部に保持された前記C型鋼の開口部より反底壁側に位置して前記建物壁に固定されることを特徴とする請求項5乃至請求7のいずれかに記載の配線・配管材支持具装置。
【請求項9】
前記固定部は、前記建物壁に当接する当接面を有する板状に形成され、
前記保持部は、前記固定部から屈曲形成された壁離間部を経た先に設けられていることを特徴とする請求項5乃至請求8のいずれかに記載の配線・配管材支持具装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物壁に形成された貫通孔から引き出された配線・配管材を支持する壁貫通箇所の配線・配管材固定構造、C型鋼固定部材、及び壁貫通箇所への配線・配管材の配設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二重壁等の建物壁に形成された貫通孔から室内に引き出されたケーブル等の配線材、電線管、給水管、給湯管等の配管材などの配線・配管材は、例えば、特許文献1に記載のような吊ボルトを使用してこれに支持させていた。すなわち、天井に予めインサートを埋め込んだりアンカーを打ち込むなどして天井から吊ボルトを吊り下げ、吊ボルトの下端に締付バンド等の支持具を取り付け、配線・配管材が引き出される壁際でその支持具に配線・配管材を支持させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−222074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、建物壁の貫通孔から引き出された配線・配管材を支持するとき、壁際でインサートを埋め込んだりアンカーを打ち込んで吊ボルトを吊り下げる必要があるため、大変面倒な作業となっていた。
【0005】
そこで、本発明は、建物壁の貫通孔から引き出された配線・配管材を壁貫通箇所において簡単に支持固定できる壁貫通箇所の配線・配管材固定構造、C型鋼固定部材、及び配線・配管材支持具装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の壁貫通箇所の配線・配管材固定構造は、
建物壁に形成された貫通孔から配線・配管材が引き出され、
引き出された前記配線・配管材は、底壁と、該底壁から立設する一対の側壁と、該各側壁の先端側が互いに対向する側壁側に折り返されたリップ部と、該リップ部間に形成された開口部と、を有するC型鋼と、該C型鋼に取着された配線・配管材支持部材と、からなる配線・配管材支持具により、前記貫通孔の内面との間に隙間を形成するように支持され、
前記建物壁に固定される固定部と、前記C型鋼の開口部に沿った長さ方向の任意の位置で前記配線・配管材支持具を保持可能である保持部と、を有する2つの固定部材が前記建物壁における前記貫通孔を挟んだ両側に立設する各柱にそれぞれ固定され、
前記配線・配管材支持具は、前記建物壁から離間した位置で前記固定部材の保持部に保持されたものである
【0007】
請求項2の壁貫通箇所の配線・配管材固定構造は、
建物壁に形成された貫通孔から配線・配管材が引き出され、
引き出された前記配線・配管材は、配線・配管材支持部材により、前記貫通孔の内面との間に隙間を形成するように支持され、
前記配線・配管材支持部材は、底壁と、該底壁から立設する一対の側壁と、該各側壁の先端側が互いに対向する側壁側に折り返されたリップ部と、該リップ部間に形成された開口部と、を有し前記建物壁の貫通孔を横切るように配置されたC型鋼に取着され、
前記建物壁に固定される固定部と、前記C型鋼の開口部に沿った長さ方向の任意の位置で前記C型鋼を保持可能である保持部と、を有する2つの固定部材が前記建物壁における前記貫通孔を挟んだ両側に立設する各柱にそれぞれ固定され、
前記C型鋼は、前記建物壁から離間した位置で前記固定部材の保持部に保持されたものである。
請求項1及び請求項2の壁貫通箇所の配線・配管材固定構造は、貫通孔の内面と配線・配管材の外面との間に充填材が充填され、前記配線・配管材支持具または前記C型鋼と前記建物壁とは、前記充填される充填材を前記貫通孔内に挿入可能な大きさで離間しているものとすることもできる。
【0008】
請求項4のC型鋼固定部材は、
請求項1に記載の配線・配管材固定構造に用いられるものであって、
建物壁に固定される固定部と、前記建物壁から離間した位置で前記C型鋼を保持する保持部と、を有し、前記保持部は、前記C型鋼の開口部に沿った長さ方向の任意の位置で保持可能なものである。
【0009】
請求項5の配線・配管材支持具装置は、
底壁と、該底壁から立設する一対の側壁と、該各側壁の先端側が互いに対向する側壁側に折り返されたリップ部と、該リップ部間に形成された開口部と、を有するC型鋼と、該C型鋼に取着された配線・配管材支持部材と、を備え、建物壁に形成された貫通孔から引き出された配線・配管材を支持する配線・配管材支持具と、
前記C型鋼を建物壁に固定するためのC型鋼固定部材と、
からなる配線・配管材支持具装置であって、
前記C型鋼固定部材は、前記建物壁に固定される固定部と、前記建物壁から離間した位置で前記C型鋼を保持する保持部と、を有し、
前記保持部は、前記C型鋼の開口部に沿った長さ方向の任意の位置で保持可能なものでる。
請求項5の配線・配管材支持具装置は、保持部が、C型鋼の開口部内に挿入される挿入部を有し、該挿入部には前記C型鋼のリップ部に係止して吊持する吊持部が形成され、該吊持部が前記リップ部に係止した状態で前記C型鋼の長手方向に沿って移動可能であるとともに、前記移動を規制する移動規制手段を備えたものとすることもできる。
また、請求項5の配線・配管材支持具装置は、保持部が、前記C型鋼の両側壁及び底壁の外面に沿う凹部を有し、該凹部内に配置された前記C型鋼に対してその長手方向に移動するのを規制する移動規制手段と、前記凹部の開口から前記C型鋼が離脱するのを防止する離脱防止手段と、を備えたものとすることもできる。
更に、請求項5の配線・配管材支持具装置は、固定部が、保持部に保持された前記C型鋼の開口部より反底壁側に位置して前記建物壁に固定されるものとすることもできる。
そして、請求項5の配線・配管材支持具装置は、固定部が、前記建物壁に当接する当接面を有する板状に形成され、保持部は、前記固定部から屈曲形成された壁離間部を経た先に設けられたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、固定部材が建物壁に固定され、固定部材の保持部に配線・配管材支持具あるいはC型鋼が保持され、配線・配管材支持具あるいは配線・配管材支持部材に配線・配管材が支持され、建物壁に固定される構成となっているから、従来のように天井にインサートを埋め込んだりアンカーを打ち込んで吊ボルトを設置したりする必要はなく、建物壁の貫通孔から引き出された配線・配管材を簡単に支持固定することができる。
【0013】
また、配線・配管材支持具あるいはC型鋼は、建物壁から離間した位置で固定部材の保持部に保持されているから、これらの配線・配管材支持具等と建物壁との間から、貫通孔の内面と配線・配管材の外面との隙間に充填材を充填して該隙間を閉塞する作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の配線・配管材固定構造を示す斜視図である。
図2図1の配線・配管材支持具の斜視図である。
図3図1の固定部材の斜視図である。
図4】本発明の実施形態により配線・配管材を壁貫通箇所に配設する方法を説明する斜視図である。
図5】本発明の実施形態により配線・配管材を壁貫通箇所に配設する方法を説明する、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図6】本発明の実施形態により配線・配管材を壁貫通箇所に配設する方法を説明する、(a)は斜視図、(b)は要部側面図である。
図7】本発明の実施形態により配線・配管材を壁貫通箇所に配設する方法を説明する、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A切断線による断面図である。
図8】本発明の実施形態により配線・配管材を壁貫通箇所に配設する方法を説明する、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
図9】本発明の実施形態により配線・配管材を壁貫通箇所に配設する方法を説明する要部断面図である。
図10】本発明の実施形態により配線・配管材を壁貫通箇所に配設する方法を説明する要部断面図である。
図11図1の別の固定部材を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
図12図1のC型鋼に図11の固定部材を取り付けた状態を示し、(a)はC型鋼の開口部側から見た斜視図、(b)はC型鋼の底壁側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の壁貫通箇所の配線・配管材固定構造、C型鋼固定部材、及び壁貫通箇所への配線・配管材の配設方法を図に基づいて説明する。
壁貫通箇所の配線・配管材固定構造(以下、単に「配線・配管材固定構造」という。)は、建物壁に形成された貫通孔から配線・配管材が引き出され、引き出された配線・配管材は、配線・配管材支持具により、貫通孔の内面との間に隙間を形成するように支持され、建物壁に固定される固定部と、配線・配管材支持具を保持する保持部と、を有する固定部材が建物壁に固定されている。そして、配線・配管材支持具は、建物壁から離間した位置で固定部材の保持部に保持される構成となっている。なお、本実施形態では、配線・配管材として、樹脂製あるいは鋼製のスリーブ状の電線管を例示する。また、建物壁は、防火区画壁であり、貫通孔の内面と配線・配管材の外面との間に耐熱パテあるいは熱膨張性耐火部材等の充填材が充填されるものを例示する。以下、各構成部材について詳細に説明する。
【0016】
まず、図1に示す配線・配管材固定構造1を構成する配線・配管材支持具(以下、単に「支持具」という。)10は、図2に示すように、C型鋼20と配線・配管材支持部材(以下、単に「支持部材」という。)30とからなる。C型鋼20は、略C字形状の一定断面の鋼製の長尺体からなり、底壁21と、底壁21から立設する一対の側壁22,22と、各側壁22の先端側が互いに対向する側壁22側に折り返されてなる一対のリップ部23,23と、一対のリップ部23,23間に形成された開口部24と、を有している。
【0017】
支持部材30は、ダクトクリップからなり、図2に示すように、一対の同大同形状の挟持片31,31が左右反対称に配置されビスを使用して互いに向かい合わせに組み付けられてなる。各挟持片31は鋼板を折り曲げて形成され、湾曲状に折り曲げられた湾曲部32の上端に垂直上方に折り曲げられたフランジ33が形成され、フランジ33の中央部にはビスが挿通される挿通孔34が設けられている。更に、湾曲部32の下側は垂直方向の平板からなる脚板部35が形成され、脚板部35の下部の幅方向の両端縁部にはC型鋼20のリップ部23が嵌入可能な略コ字状の切欠空間36が形成され、切欠空間36の下側には水平外方に張り出してC型鋼20のリップ部23と係止する係止部37が形成されている。湾曲部32は、電線管60の半径と略同一の曲率半径を有し、電線管60を挟持したときに内面全体が電線管60の外面に沿って当接するように形成されている。
【0018】
支持部材30は、一対の挟持片31,31をC型鋼20の開口部24内に挿入し、一対の挟持片31,31の間に電線管60を挿通し、両フランジ33の挿通孔34にビスを挿通して締め付けることにより、C型鋼20のリップ部23に係止する一対の係止部37,37が弾性的にC型鋼20の長手方向に拡開しつつリップ部23の先端部を押し上げる方向の力が発生し、その押上力によって発生した係止部37とリップ部23との摩擦力により、C型鋼20の開口部24内を長手方向に移動するのが阻止され、C型鋼20に対して一定箇所に弾性的に保持される。
【0019】
固定部材40は、C型鋼20を建物壁70から所定距離離間した状態で固定するための部材で鋼板からなり、図3に示すように、長尺片と短尺片とを直角に折り曲げて全体が略L字板状に形成されており、建物壁70に固定される固定部41と、支持具10を保持する保持部42と、を有している。図3において、垂直に起立している短尺片は、固定部41を形成している。図3の水平方向の長尺片は、短尺片との屈曲部から離間する方向に所定長さの壁離間部43が形成され、更に、壁離間部43を超えた先端側に保持部42が設けられている。加えて、固定部材40は、長尺片の先端縁部すなわち保持部42の先端部に、固定部41とは反対側である下方に直角に折り曲げられて突出する突片44が設けられている。なお、固定部材40は、請求項のC型鋼固定部材に相当するものでもある。
【0020】
更に詳述すれば、固定部41は、建物壁70に当接する当接面を有する板状に形成され、短尺片の幅方向の中央部には、上側に建物壁70の柱72に固定するためのビスが挿通されるビス孔45が設けられ、下側に建物壁70がコンクリート壁からなる場合にこれにアンカーを打ち込んで固定するためのアンカー孔46が設けられている。なお、建物壁70が木板や石膏ボードなどの場合は、固定部41のビス孔45から挿通したビスを建物壁70のみに螺着すると壁材が崩れたりして固定部材40を確実に建物壁70に固定できないおそれがあるので、ビスは建物壁70に立設された柱72に螺着される。建物壁70がコンクリート壁からなる場合は、柱に固定するなどの制限はない。
【0021】
保持部42は、C型鋼20の開口部24内に挿入される略逆T字板状突片からなる挿入部47を有し、挿入部47は、長尺片の一部をプレスにより打ち抜き、垂直下方に折り曲げることにより形成されており、長尺片の幅方向に所定長さ離間して一対設けられている。挿入部47の下半部の両側は、C型鋼20のリップ部23に係止してこれを吊持する吊持部47aを形成している。また、挿入部47の吊持部47aより少し狭小の上半部の幅は、C型鋼20の開口部24より僅かに小さい大きさに形成されており、これにより、吊持部47aがC型鋼20の開口部24の幅方向にずれてリップ部23から外れて脱落するのが防止される。
【0022】
前述の、保持部42の先端部から直角下方に屈曲して突出している突片44は、その幅方向中央に上下方向に長い長孔44aが設けられている。長孔44aは、固定部材40がC型鋼20に取り付けられた後にビスが挿通され、このビスがC型鋼の側壁22に螺着されることにより、固定部材40がC型鋼20の長手方向に沿って移動するのを規制するものであり、突片44及び長孔44aは、請求項の移動規制手段を構成している。これについて、逆に言えば、固定部材40の保持部42の挿入部47は、ビスが長孔44aに挿通されC型鋼20の側壁22に螺着されるまでは、吊持部47aがリップ部23に係止した状態でC型鋼20の長手方向に沿って移動可能となっており、突片44及び長孔44aは、C型鋼20に対する固定部材40の位置調整手段ともいえる。なお、移動規制手段としては長孔44a及びC型鋼20の側壁22にビスを取り付けるものに限られるものではなく、他の手段で移動を規制してもよい。
【0023】
次に、上記のように構成された本実施形態の配線・配管材固定構造1により、建物壁70の貫通孔71から引き出された電線管60を支持し、壁貫通箇所に配設する方法を図4乃至図10に基づいて説明する。
ここで、図4に示すように、建物壁70である二重壁の間には柱72が立設されており、建物壁70には電線管60より大きい孔径を有し電線管60が貫通する貫通孔71が設けられている。
【0024】
まず、図5に示すように、建物壁70の貫通孔71の周辺に、固定部材40を使用してC型鋼20を設置する。その際、予め建物壁70の壁面73に上下方向に罫書き線を入れるなどして、固定部41のビス孔45に挿通されたビスが螺着される柱72の水平方向における位置を壁面73に表示させる。併せて、C型鋼20を図7(a)に示すように壁面73に本固定したときに、C型鋼20が貫通孔71をその弦の位置で水平方向に横切るよう、左右の固定部41のビス孔45の高さ方向における位置を水平方向の罫書き線を入れるなどして表示させる。このようにして、2本の直交する表示線を壁面73上に表示させたら、これらの表示線の交点が、固定部41のビス孔45の設置点となる。ここで、貫通孔71において、C型鋼20が横切る弦は、図7(a)に示すように電線管60がC型鋼20の上端に載置されたときに、電線管60の外面と貫通孔71の内面との隙間Sが電線管60の全周に至って均一となるような位置、高さに設定され、C型鋼20の上端と貫通孔71の最下点との間隔は、隙間Sと同一長となる。
【0025】
一方で、C型鋼20の長手方向両端部において、2つの固定部材40の保持部42の挿入部47をC型鋼20の長手方向側端部から開口部24内に挿入し、固定部材40の突片44の長孔44aにビスを挿通し、ビスの先端をC型鋼20の側壁22に当接させてC型鋼20に固定部材40を仮保持させておく。
【0026】
そこで、この仮保持状態において、図5に示すように、固定部41のビス孔45の設置点においてビスを挿通し、壁面73を貫通させ、更に壁面73の裏面側の柱72の幅方向中央位置に螺着して、左右一対の固定部材40,40を壁面73に固定する。そして、左右の固定部材40がC型鋼20の両端部に均等に配置されるよう位置決めしたら、ビスを固定部材40の突片44の長孔44aに挿通し、C型鋼20の側壁22に螺着して本締めする。この状態において、C型鋼20と建物壁70とは、固定部材40の壁離間部43の長さ分だけ離間する。また、固定部材40の固定部41は、保持部42に保持されたC型鋼20の開口部24より反底壁21側すなわち開口部24より上方に位置する。
【0027】
次に、電線管60を貫通孔71に貫通させて壁表に引き出し、C型鋼20上に載置する。電線管60をC型鋼20に載置した状態を図6及び図7に示す。
【0028】
電線管60をC型鋼20に載置したら、図8及び図9に示すように、支持部材30を用いて電線管60をC型鋼20に固定する。それには、支持部材30の一対の挟持片31,31の脚板部35,35をリップ部23と平行する状態でC型鋼20の開口部24内に挿入し、その後、水平方向に回動して90度向きを変えて切欠空間36内にリップ部23を嵌入し、係止部37をリップ部23に係止させる。そして、一対の挟持片31,31のフランジ33,33の挿通孔34,34にビスを挿通して締め付けることにより、電線管60をこれら一対の挟持片31,31とC型鋼20とで挟持して固定する。
【0029】
このようにして、支持具10及び固定部材40によって電線管60を支持固定したら、図10に示すように、貫通孔71の内面と電線管60の外面との隙間Sに耐熱パテ、熱膨張性耐火部材等の充填材80を充填し隙間Sを閉塞する。充填材80はコーキングチューブを直接あるいはコーキングガンなどの工具を使用して挿入する。このとき、充填材80は作業性の点から上方から貫通孔71の隙間Sに充填される。一方で、C型鋼20の裏側部分、奥側部分にある貫通孔71の下方部分については、C型鋼20と建物壁70との間が固定部材40の壁離間部43の長さ分だけ離間し、充填材80を貫通孔71内の隙間Sに挿入可能な大きさで離間しているから、その離間している部分の空間Tを利用して貫通孔71の隙間Sに充填材80を充填することができる。なお、貫通孔71の設置箇所により、下方から隙間S内に充填する必要がある場合は、C型鋼20と建物壁70との間の空間Tのみを利用して貫通孔71の隙間Sの全体を充填することもできる。いずれにしても、充填材80は、少なくともC型鋼20と建物壁70との間の空間Tが利用されて挿入される。
【0030】
なお、上記手順において、電線管60は、図6及び図7において、C型鋼20及び固定部材40を建物壁70に設置する前に、建物壁70の貫通孔71に貫通させて壁表に引き出し、C型鋼20に載置し、支持部材30を用いてC型鋼20に固定し、その後、C型鋼20を固定部材40を介して建物壁70に設置してもよく、その手順の前後は問わない。
【0031】
次に、本実施形態の配線・配管材固定構造1及び固定部材40の作用を説明する。
本実施形態の配線・配管材固定構造1は、固定部材40が建物壁70に固定され、固定部材40の保持部42にC型鋼20が保持され、支持部材30によって電線管60がC型鋼20上に支持されて、建物壁70に固定される構造となっているから、従来のように天井にインサートを埋め込んだりアンカーを打ち込んで吊ボルトを設置するなどして電線管60を支持し固定する必要はなく、建物壁70の貫通孔71から引き出された電線管60を簡単に支持固定することができ、作業し易い。
【0032】
また、貫通孔71の内面と電線管60の外面との隙間Sに充填材80を充填して該隙間Sを閉塞するとき、C型鋼20が建物壁70の壁面73及び貫通孔71に密接した状態で固定されていると、C型鋼20が貫通孔71の一部を覆い隠すために、C型鋼20の裏側部分すなわち貫通孔71の下方部分においては、貫通孔71の内面と電線管60の外面との隙間Sに充填材80を充填しにくい。しかし、本発明の配線・配管材固定構造1のC型鋼20は、建物壁70から空間Tだけ離間した位置で固定部材40の保持部42により保持されているから、その空間Tからコーキングチューブやコーキングガンなどを挿入して貫通孔71内の隙間Sに円滑かつ確実に充填材80を充填し、隙間Sを閉塞することができる。
【0033】
更に、固定部材40は、移動規制手段によりビスがC型鋼20の側壁22に締め付けられるまでは仮保持されるので、両固定部材40,40を仮保持させることで、C型鋼20を把持した状態で固定部材40をビス止めでき、C型鋼20が長くてもその作業を行ない易い。
【0034】
加えて、両固定部材40,40を仮保持させた状態で、一方の固定部材40を壁裏の柱72に固定した後、他方の固定部材40を壁裏の別の柱72の位置に合うようにC型鋼20の開口部24に沿って移動させて固定することができるから、両固定部材40,40は、壁裏の柱72の間隔に柔軟に対応して固定することができる。
【0035】
次に、配線・配管材固定構造1に用いられる別の固定部材を図11及び図12に示す。
図11に示す固定部材50は、1枚の短冊状の鋼板を折り曲げて形成されており、コ字板状に屈曲されたコ字板部51と、コ字板部51の開口の一端側から図11(b)の水平側方に突出した水平板部52と、水平板部52のコ字板部51とは反対側の端部から90度屈曲して図11(b)の垂直上方に立設する垂直板部53とが形成され、コ字板部51においてC型鋼20の外回りに取り付けられるものである。垂直板部53は建物壁70に固定される固定部54を形成し、その中央にはビスが挿通されるビス孔54aが設けられている。水平板部52はC型鋼20と建物壁70とを所定長さで離間する壁離間部55を形成している。
【0036】
更に、コ字板部51は、C型鋼20を保持する保持部56を形成しており、換言すれば、保持部56は、C型鋼20の両側壁22及び底壁21の外面に沿う凹部57を有している。コ字板部51の固定部54側の側板には、中央部のコ字状の切り込みを切り起こして水平板部52の壁離間部55と平行して建物壁70側に突出し、建物壁70と当接して突張る突っかい片51aが突設されている。保持部56は、また、コ字板部51において固定部54とは反対側の側板の中央部にビス挿通孔58を備えている。このビス挿通孔58は、凹部57内に配置されたC型鋼20に対してその長手方向に固定部材50が移動するのを規制する移動規制手段を構成し、C型鋼20に対する固定部材50の位置を調整する手段となっている。更に、保持部56は、コ字板部51の両側板の先端部が互いに対向するように開口側に折り曲げられて、C型鋼20のリップ部23の上端部に係止する一対の係止突起59,59を備えており、これらの係止突起59,59は、凹部57の開口からC型鋼20が離脱するのを防止する離脱防止手段を構成している。この固定部材50も前述の固定部材40と同様に作用する。なお、この固定部材50も、請求項のC型鋼固定部材に相当するものでもある。
【0037】
ところで、上記実施形態の固定部材40及び50は、建物壁70の貫通孔71の内面と電線管60の外面との隙間Sが全周に至って略均一となるような位置で壁面73に固定されるが、必ずしも隙間Sが略均一となるように固定する必要はなく、電線管60が貫通孔71内でいずれか側に偏心した状態で壁面73に固定してもよい。但し、充填材80の充填等を考慮すれば、貫通孔71の内面と電線管60の外面との隙間Sは略均一であるのが望ましい。
【0038】
また、上記実施形態では、建物壁70として、防火区画壁を例示し、貫通孔71の内面と電線管60の外面との隙間Sに耐熱パテあるいは熱膨張性耐火部材等の充填材80を充填しているが、本発明を実施する場合は、建物壁70は、防火区画壁以外の壁であってもよく、その場合は、貫通孔71の内面と電線管60の外面との隙間Sには通常のパテ等の充填材が充填される。あるいは、本発明の配線・配管材固定構造1は、これらの充填材が充填されないものとしてもよい。
【0039】
更に、上記実施形態の各固定部材は、図3図11に示したもの限られるものではなく、C型鋼を建物壁70から所定距離離間した位置で固定できる任意の形状、形態のものを採用し得る。
また、上記実施形態の支持部材30は、一対の挟持片32,32を備えたダクトクリップを用いているが、サドルなど他の部材を使用して電線管60を支持してもよい。
【0040】
本実施形態の配線・配管材固定構造は、建物壁70の貫通孔71から引き出される配線・配管材として電線管60を例示しているが、本発明は、他のケーブル等の配線材、給水管、給湯管等の配管材にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 配線・配管材固定構造 44a 長孔(移動規制手段)
10 支持具 47 挿入部
20 C型鋼 47a 吊持部
21 底壁 57 凹部
22 側壁 58 ビス挿通孔(移動規制手段)
23 リップ部 59 係止突起(離脱防止手段)
24 開口部 60 電線管(配線・配管材)
30 支持部材 70 建物壁
40、50 固定部材 71 貫通孔
41、54 固定部 80 充填材
42、56 保持部 S 隙間(電線管と貫通孔との隙間)
43、55 壁離間部 T 空間(C型鋼と建物壁との間の空間)
44 突片(移動規制手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12