【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物名 第28回廃棄物資源循環学会研究発表会 講演原稿2017 第313−314頁 発行日 平成29年8月18日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
廃棄物を燃焼させる火炉室と、前記火炉室で廃棄物の燃焼により生じた燃焼ガスを燃焼させる再燃焼室と、前記火炉室と前記再燃焼室との下側に配置され且つ予め定められた搬送方向に廃棄物を搬送する複数のストーカと、前記火炉室の上方空間と前記再燃焼室の上方空間とを仕切り且つ下端が前記複数のストーカの上面と離隔して配置された中間仕切壁と、を有する焼却炉と、
前記焼却炉から排出される排ガスの一部を循環排ガスとして循環させる循環路と、
前記中間仕切壁に対応する位置に設けられて前記循環路を通過した循環排ガスを前記火炉室内に噴射する噴射ノズルと、
前記噴射ノズルを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置が、前記搬送方向の下流側から上流側に向けて、前記噴射ノズルから前記火炉室内に循環排ガスを噴射させるように前記噴射ノズルを制御することにより、前記火炉室から前記中間仕切壁に向けて反転し、前記中間仕切壁の下方を通って前記再燃焼室へ向かうガスの反転流が形成される、焼却プラント。
前記噴射ノズルは、前記搬送方向に垂直な水平方向において、前記焼却炉の炉壁よりも前記焼却炉の内側に離隔した位置に配置されると共に、前記中間仕切壁から前記上流側に向けて斜め下方に循環排ガスを噴射可能に配置されている、請求項1に記載の焼却プラント。
前記制御装置は、前記焼却炉内の循環排ガス量が理論空気量の10%以上80%以下の範囲の値となるように、前記噴射ノズルから前記火炉室内に循環排ガスを噴射させる、請求項1又は2に記載の焼却プラント。
前記制御装置は、前記火炉室内に噴射する循環排ガス量をV1とし、前記焼却炉から排出される排ガス量をV2としたときのガス量比V1/(V1+V2)が0.15以上0.40以下の範囲の値となるように、前記噴射ノズルから前記火炉室内に循環排ガスを噴射させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の焼却プラント。
前記複数のストーカは、前記火炉室の前記上流側に配置された乾燥ストーカと、前記乾燥ストーカの前記下流側に配置された燃焼ストーカと、前記燃焼ストーカの前記下流側に配置された後燃焼ストーカを含み、
前記燃焼ストーカの上方と前記後燃焼ストーカの上方とにわたって、廃棄物の燃焼に伴って生じる火炎が位置させられる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の焼却プラント。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
焼却炉内に循環排ガスを循環させると、窒素酸化物の発生は抑制されるものの、焼却炉内の燃焼ガス温度が低下して廃棄物の固形未燃分が残留する不完全燃焼や、焼却炉内の酸素濃度が不足して一酸化炭素(CO)が発生する不完全燃焼が生じる場合がある。
【0006】
また焼却プラントでは、廃棄物の燃焼灰によりクリンカが発生して焼却炉の炉壁に付着し、焼却炉内における廃棄物やガスの流れを阻害する場合がある。このため、焼却炉の炉壁からクリンカを除去することが求められるが、メンテナンス作業の負担が増大する。
【0007】
そこで本発明は、焼却炉からの排ガスの一部を循環排ガスとして焼却炉内に循環させる焼却プラントにおいて、窒素酸化物の発生を良好に抑制しながら、廃棄物の不完全燃焼を防止すると共にクリンカの発生量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る焼却プラントは、廃棄物を燃焼させる火炉室と、前記火炉室で廃棄物の燃焼により生じた燃焼ガスを燃焼させる再燃焼室と、前記火炉室と前記再燃焼室との下側に配置され且つ予め定められた搬送方向に廃棄物を搬送する複数のストーカと、前記火炉室の上方空間と前記再燃焼室の上方空間とを仕切り且つ下端が前記複数のストーカの上面と離隔して配置された中間仕切壁と、を有する焼却炉と、前記焼却炉から排出される排ガスの一部を循環排ガスとして循環させる循環路と、前記中間仕切壁に対応する位置に設けられて前記循環路を通過した循環排ガスを前記火炉室内に噴射する噴射ノズルと、前記噴射ノズルを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が、前記搬送方向の下流側から上流側に向けて、前記噴射ノズルから前記火炉室内に循環排ガスを噴射させるように前記噴射ノズルを制御することにより、前記火炉室から前記中間仕切壁に向けて反転し、前記中間仕切壁の下方を通って前記再燃焼室へ向かうガスの反転流が形成される。
【0009】
上記構成によれば、搬送方向の下流側から上流側に向けて、噴射ノズルから火炉室内に循環排ガスを噴射させることで、廃棄物と同方向に流れる燃焼ガスと、循環排ガスとを効率よく混合できる。また循環排ガスを、中間仕切壁に対応する位置に設けられた噴射ノズルから火炉室内に噴射させて、火炉室から中間仕切壁に向けて反転し、中間仕切壁の下方を通って再燃焼室へ向かうガスの反転流を形成することにより、火炉室内及び再燃焼室内において、燃焼ガス温度を均一に低減し易くすることができる。よって、焼却炉内で局所的に廃棄物の燃焼温度が過度に上昇するのを防止し、窒素酸化物の発生を良好に抑制できる。
【0010】
また、上記したガスの反転流が形成されることで、火炉室内と再燃焼室内とにおける、廃棄物の燃焼に伴って生じる燃焼ガスの燃焼が緩慢になり、火炎が火炉室内と再燃焼室内とにわたって従来より下流側まで、また、より低く位置させられるので、この火炎により、燃焼中の廃棄物に含まれる固形未燃分を燃焼ガスの輻射熱等により燃焼させ、固形未燃分の残留による廃棄物の不完全燃焼を防止できる。
【0011】
また、空気等に比べて酸素(O
2)濃度の低い循環排ガスが、中間仕切壁に対応する位置に設けられた噴射ノズルから火炉室内に噴射されるため、循環排ガスが噴射される中間仕切壁の周辺において、燃焼ガス温度が低下し、燃焼灰により生じるクリンカの発生量を低減できる。
【0012】
前記噴射ノズルは、前記搬送方向に垂直な水平方向において、前記焼却炉の炉壁よりも前記焼却炉の内側に離隔した位置に配置されると共に、前記中間仕切壁から前記上流側に向けて斜め下方に循環排ガスを噴射可能に配置されていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、噴射ノズルは、搬送方向に垂直な水平方向において、焼却炉の炉壁よりも焼却炉の内側に離隔した位置から循環排ガスを噴射するので、噴射ノズルを焼却炉の搬送方向に垂直な方向の炉壁(側壁)に配置した場合に比べて、噴射ノズルから噴射される循環排ガスにより焼却炉内の高温のガスが炉壁近傍において温度低下するのが低減される。従って、炉壁近傍で燃焼灰によりクリンカが生じて炉壁に付着・成長するのが防止される。
【0014】
また、中間仕切壁から前記搬送方向の上流側に向けて斜め下方に循環排ガスが噴射されることで、循環排ガスが火炉室の搬送方向上流側の炉壁や火炉室の天井に案内されて中間仕切壁に向けて反転し、中間仕切壁の下方を通って再燃焼室へ向かうガスの反転流が形成され易くなる。よって、焼却炉内の局所的な温度上昇が抑制され、廃棄物の燃焼温度が過度に上昇するのを良好に低減できる。
【0015】
前記制御装置は、前記焼却炉内の循環排ガス量が理論空気量の10%以上80%以下の範囲の値となるように、前記噴射ノズルから前記火炉室内に循環排ガスを噴射させてもよい。或いは、前記火炉室の下方から前記火炉室内に一次空気を供給する供給路を更に備え、前記制御装置は、前記焼却炉内の循環排ガス量が前記焼却炉内の一次空気量の10%以上80%以下の範囲の値となるように、前記噴射ノズルから前記火炉室内に循環排ガスを噴射させてもよい。これにより、焼却炉内において、適切な酸素濃度の雰囲気で廃棄物を燃焼させることができ、廃棄物の燃焼温度が過度に上昇するのを低減できる。
【0016】
排ガスの一酸化炭素濃度を測定する一酸化炭素濃度計を更に備え、前記制御装置は、排ガスの一酸化炭素濃度が10ppm以上であることを前記一酸化炭素濃度計により検出した場合、排ガスの一酸化炭素濃度が10ppm未満であることを前記一酸化炭素濃度計により検出した場合に比べて、前記噴射ノズルから前記火炉室内への循環排ガスの噴射量を低減させてもよい。
【0017】
これにより、焼却プラントから排出される一酸化炭素の排出量を適切に低減しながら、酸素不足或いは燃焼ガス温度の低下による廃棄物の不完全燃焼を防止して廃棄物を適切に燃焼させることができる。
【0018】
前記焼却炉内の酸素濃度を測定する酸素濃度計を更に備え、前記制御装置は、前記焼却炉内の酸素濃度が3%以下であることを前記酸素濃度計により検出した場合、前記焼却炉内の酸素濃度が3%より多いことを前記酸素濃度計により検出した場合に比べて、前記噴射ノズルから前記火炉室内への循環排ガスの噴射量を低減させてもよい。
【0019】
このように、制御装置が焼却炉内の酸素濃度を基準にして噴射ノズルの噴射量を制御することで、廃棄物の燃焼温度の過度の上昇による窒素酸化物の発生を低減すると共に、酸素不足による廃棄物の不完全燃焼を防止して、廃棄物を良好に燃焼させることができる。
【0020】
前記制御装置は、前記火炉室内に噴射する循環排ガス量をV1とし、前記焼却炉から排出される排ガス量をV2としたときのガス量比V1/(V1+V2)が0.15以上0.40以下の範囲の値となるように、前記噴射ノズルから前記火炉室内に循環排ガスを噴射させてもよい。
【0021】
このように、制御装置が所定の前記ガス量比に基づいて噴射ノズルを制御することで、廃棄物の燃焼温度の過度の上昇による窒素酸化物の発生を低減しながら、酸素不足による廃棄物の不完全燃焼を防止して廃棄物を適切に燃焼させることができる。
【0022】
排ガスの窒素酸化物濃度を測定する窒素酸化物濃度計を更に備え、前記制御装置は、排ガスの窒素酸化物濃度が30ppm以上であることを前記窒素酸化物濃度計により検出した場合、排ガスの窒素酸化物濃度が30ppm未満であることを前記窒素酸化物濃度計により検出した場合に比べて、前記噴射ノズルから前記火炉室内への循環排ガスの噴射量を増加させてもよい。
【0023】
このように、制御装置が排ガスの窒素酸化物濃度に基づいて噴射ノズルの噴射量を制御することで、焼却炉内の酸素濃度を循環排ガスにより適切に低減させ、廃棄物の燃焼温度の過度の上昇を抑制して、窒素酸化物の発生を低減できると共に、酸素不足による廃棄物の不完全燃焼を防止して、廃棄物を適切に燃焼させることができる。
【0024】
前記火炉室の出口におけるガス温度を測定するガス温度計を更に備え、前記制御装置は、前記火炉室の出口におけるガス温度が900℃以下であることを前記ガス温度計により検出した場合、前記火炉室の前記出口におけるガス温度が900℃より高いことを前記ガス温度計により検出した場合に比べて、前記噴射ノズルから前記火炉室内への循環排ガスの噴射量を低減させてもよい。
【0025】
このように、制御装置が火炉室の出口におけるガス温度に基づいて噴射ノズルの噴射量を制御することで、廃棄物の燃焼温度が低下した状態で循環排ガスを噴射したことにより燃焼ガス温度の低下による廃棄物の不完全燃焼が生じるのを防止して、廃棄物を安定して燃焼させることができる。
【0026】
前記焼却炉の内圧を検出する圧力計を更に備え、前記制御装置は、前記焼却炉の内圧が基準値以上であることを前記圧力計により検出した場合、前記焼却炉の前記内圧が前記基準値未満であることを前記圧力計により検出した場合に比べて、前記噴射ノズルから前記火炉室内への循環排ガスの噴射量を低減させてもよい。
【0027】
このように、制御装置が焼却炉の内圧に基づいて噴射ノズルの噴射量を制御することで、焼却炉内の燃焼量が一時的に増加し、焼却炉の内圧が基準値よりも上昇して廃棄物の燃焼温度が過度に上昇したことによって窒素酸化物が発生するのを低減しながら、燃焼ガス温度の低下による廃棄物の不完全燃焼を防止して廃棄物を適切に燃焼させることができる。
【0028】
前記複数のストーカは、前記火炉室の前記上流側に配置された乾燥ストーカと、前記乾燥ストーカの前記下流側に配置された燃焼ストーカと、前記燃焼ストーカの前記下流側に配置された後燃焼ストーカを含み、前記燃焼ストーカの上方と前記後燃焼ストーカの上方とにわたって、廃棄物の燃焼に伴って生じる火炎が位置させられてもよい。
【0029】
上記構成によれば、前記燃焼ストーカの上方と前記後燃焼ストーカの上方とにわたって、廃棄物の燃焼に伴って生じる火炎が位置させられることで、廃棄物が搬送されながら十分に燃焼するので、窒素酸化物の発生を低減しながら、酸素不足或いは燃焼ガス温度の低下による廃棄物の不完全燃焼を防止できる。
【発明の効果】
【0030】
上記した本発明の各態様によれば、焼却炉からの排ガスの一部を循環排ガスとして焼却炉内に循環させる焼却プラントにおいて、窒素酸化物の発生を良好に抑制しながら、廃棄物の不完全燃焼を防止すると共にクリンカの発生量を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。以下の説明において、「搬送方向」とは、焼却炉4内における廃棄物Wの搬送方向を指す。
【0033】
図1は、実施形態に係る焼却プラント1の構成を示す図である。
図2は、
図1の焼却炉4内で形成される火炎の形状を示す模式図である。
図1に示すように、焼却プラント1は、ホッパー2、給塵機3、焼却炉4、ボイラ5、集塵機6、煙突7、タービン8、発電機9、制御装置10、ブロアB1,B2、供給路R1、排出路R2、循環路R3、及び流通路R4を備える。
【0034】
ホッパー2は、焼却炉4における火炉室11の搬送方向上流側に設けられ、焼却炉4の内部と連通している。ホッパー2には廃棄物Wが投入される。給塵機3は、ホッパー2から焼却炉4に供給される廃棄物Wを、予め定められた搬送方向に火炉室11内に給塵する。
【0035】
焼却炉4は、外部から供給される廃棄物Wを焼却処理する。本実施形態の焼却炉4は、廃棄物Wと廃棄物Wの燃焼により生じるガスの流れ方向が並行する並行流ストーカ式焼却炉であり、火炉室11、再燃焼室12、中間室13、及び複数のストーカ(乾燥ストーカ15、燃焼ストーカ16、及び後燃焼ストーカ17)を有する。
【0036】
火炉室11は、ホッパー2から供給される廃棄物Wを、燃焼中の廃棄物Wからの熱により乾燥させて燃焼する。再燃焼室12は、火炉室11の搬送方向下流側に配置されている。再燃焼室12は、火炉室11で廃棄物Wの燃焼により生じた燃焼ガスを燃焼させる。
【0037】
中間室13は、火炉室11の上方と再燃焼室12の上方との間に配置されている。中間室13は、焼却炉4の上部から下方に延びる中間仕切壁26によって、火炉室11及び再燃焼室12と区画されている。
【0038】
中間仕切壁26は、火炉室11の上方空間と再燃焼室12の上方空間とを仕切り且つ下端が複数のストーカ15〜17の上面と離隔して配置されている。本実施形態の中間仕切壁26は、燃焼ストーカ16の上方において、燃焼ストーカ16の搬送方向上流端部よりも搬送方向下流側に位置しているが、これに限定されない。
【0039】
中間室13内には、搬送方向に垂直な水平方向(
図1の紙面に垂直な方向)に延びる配管27が配置されている。配管27の周面には、1又は複数(ここでは複数)の噴射ノズル14が設けられている。
【0040】
噴射ノズル14は、中間仕切壁26に対応する位置に設けられている。噴射ノズル14は、焼却炉4から排出される排ガスの一部である循環排ガス(EGRガス)を、排出路R2、循環路R3、及び配管27を通過させて、火炉室11内に噴射する。本実施形態の噴射ノズル14は、一例として、循環排ガスと他のガス(空気等)との混合ガスではなく、循環排ガスのみを噴射する。噴射ノズル14は、火炉室11の天井の最も高い位置よりも下方に配置されている。中間仕切壁26の噴射ノズル14に対応する位置には、噴射ノズル14の先端を火炉室11内に露出させるための吹出口26aが設けられている。
【0041】
本実施形態の噴射ノズル14は、搬送方向に垂直な水平方向において、焼却炉4の炉壁よりも焼却炉4の内側に離隔した位置に配置されている。噴射ノズル14の噴射方向は、適宜設定可能である。
【0042】
本実施形態の噴射ノズル14は、中間仕切壁26から搬送方向上流側に向けて、斜め下方に循環排ガスを噴射可能に配置されている。これにより、噴射ノズル14から循環排ガスが、焼却炉4内における廃棄物Wと燃焼ガスとの流れ方向と対向する方向に噴射される。一例として、噴射ノズル14は、乾燥ストーカ15の搬送方向上流端部上の廃棄物Wの表面に向けて循環排ガスを噴射可能に配置することで、後述するガスの反転流(
図2参照)を形成し易くすることができる。
【0043】
噴射ノズル14から噴射される循環排ガスの温度は、焼却炉4内で燃焼する廃棄物Wの燃焼中の最高温度よりも低温である。例えば、ボイラ5の出口における循環排ガスの温度は150℃以上300℃以下の範囲の値に設定でき、廃棄物Wの燃焼温度は、850℃以上1200℃以下の範囲の値に設定できる。このため、噴射ノズル14から火炉室11内に循環排ガスを噴射することで、燃焼中の廃棄物Wの過度の温度上昇が抑制される。また、ストーカ16,17の上方空間を流通するガスの過度の温度上昇も抑制される。
【0044】
なお、循環排ガスの温度が低過ぎると、廃棄物Wの燃焼温度を低下させ過ぎるおそれがあり、循環排ガスの温度が高過ぎると、廃棄物Wの燃焼温度及びストーカ16,17の上方空間を流通するガスの温度を低下させる効果が減るので留意する。
【0045】
ここで噴射ノズル14は、燃焼ストーカ16上に位置する主燃焼領域と、後燃焼ストーカ17上に位置する後燃焼領域とのいずれかの真上から循環排ガスを噴射するように設けられていることが望ましい。これにより、運転中の焼却炉4内で最も温度上昇する領域に対して、循環排ガスを効果的に噴射できる。また、循環排ガスを用いることで、主燃焼領域と後燃焼領域とにおける酸素濃度を低減し、燃焼を緩慢にして燃焼時間を延長し易くすることができる。
【0046】
また複数の噴射ノズル14を設ける場合、隣接する噴射ノズル14の間隔は均一でもよいし、不均一でもよい。また複数の噴射ノズル14を設ける場合、搬送方向又は搬送方向に垂直な方向(以下、単に垂直方向とも称する。)から見た各噴射ノズル14の噴射方向は、平行でもよいし、交差していてもよい。
【0047】
また搬送方向から見て、各噴射ノズル14の噴射方向が交差する場合、各噴射ノズル14の噴射方向は、ストーカ16,17上の同一位置に向けられていてもよいし、ストーカ16,17上の複数の位置に向けられていてもよい。また、各噴射ノズル14の噴射方向は、廃棄物W上の搬送方向に垂直な方向における焼却炉4の内側に向けられていてもよい。
【0048】
噴射ノズル14の噴射方向が、搬送方向の下流側から上流側に向かう方向の成分を含むことにより、火炉室11から中間仕切壁26に向けて反転し、中間仕切壁26の下方を通って再燃焼室12へ向かうガスの反転流が形成される。
【0049】
具体的には
図2に示すように、垂直方向から見て、噴射ノズル14から噴射された循環排ガスが、火炉室11の搬送方向上流側の炉壁の下側から上方に向けて上昇し、火炉室11の天井に案内されて中間仕切壁26に向けて移動し、その後、中間仕切壁26の下方を通って再燃焼室12へ向かうガスの反転流が形成される。
【0050】
このようなガスの反転流を形成することで、主燃焼領域で生成した高温のガスを乾燥ストーカ15の上方に位置する乾燥領域に流通させ、乾燥領域の上部の温度を上昇できると共に、火炉室11内の空間を有効利用して温度分布の均一化を図ることができる。また、火炉室11内及び再燃焼室12内の局所的な過度の温度上昇を防いで、窒素酸化物の発生を抑制しながら、焼却炉4に及ぶ負荷を軽減できる。
【0051】
また、火炉室11の搬送方向に垂直な方向の炉壁(側壁)にボイラパネル等を設置してもよい。これにより、火炉室11内を流れる高温のガスから熱回収を効率よく図れるため、焼却プラント1の運転コスト等を低減できる。
【0052】
噴射ノズル14から火炉室11内に循環排ガスを噴射する際の吹込み流速は適宜設定可能であるが、吹込み流速が低過ぎる(吹込み量が少な過ぎる)と効果が少なく、吹込み流速が高過ぎる(吹込み量が多過ぎる)と燃焼ガスの燃焼不良を起こすと共に、中間仕切壁26にクリンカが付着・成長するおそれがある。従って、噴射ノズル14から火炉室11内への循環排ガスの吹込み流速は、適切に設定することが望ましく、一例として、20m/s以上100m/s以下の範囲の値に設定できる。
【0053】
なお噴射ノズル14からは、循環排ガスだけでなく、循環排ガスと共に空気等の酸化性ガスが火炉室11内に噴射されてもよい。また循環排ガスは、中間室13内の配管27に設けられた噴射ノズル14からだけでなく、例えば、火炉室11の搬送方向に垂直な方向の炉壁(側壁)に設けられた別の噴射ノズルから火炉室11内へ噴射されてもよい。
【0054】
各ストーカ15〜17は、火炉室11と再燃焼室12との下側に配置され、搬送方向に廃棄物Wを搬送する。各ストーカ15〜17は、搬送方向に並べられた複数の火格子を有する。この火格子は、定位置に設けられた固定火格子と、搬送方向に一定範囲内で往復移動する可動火格子とを含む。この固定火格子と可動火格子とにより、各ストーカ15〜17に載置された廃棄物Wが搬送方向に搬送される。
【0055】
乾燥ストーカ15は、火炉室11の下側且つ搬送方向上流側に配置されている。燃焼ストーカ16は、火炉室11の下側において、乾燥ストーカ15よりも搬送方向下流側に配置されている。本実施形態の燃焼ストーカ16の真上には、噴射ノズル14の先端(吹出口26a)が位置している。
【0056】
後燃焼ストーカ17は、再燃焼室12の下側において、燃焼ストーカ16よりも搬送方向下流側に配置されている。後燃焼ストーカ17の上面は、燃焼ストーカ16の上面よりも下方に位置している。焼却炉4の後燃焼ストーカ17よりも搬送方向下流側には、廃棄物Wの燃焼灰を排出する排出口28が配置されている。
【0057】
焼却炉4の下方には、風箱18〜20が設けられている。風箱18は、乾燥ストーカ15の下方に配置されている。風箱19は、燃焼ストーカ16の下方に配置されている。風箱20は、後燃焼ストーカ17の下方に配置されている。風箱18〜20は、供給路R1と個別に接続されている。
【0058】
供給路R1は、火炉室11の下方から火炉室11内に一次空気を供給する。空気は、廃棄物Wを燃焼するために用いられる。供給路R1を流通した一次空気は、風箱18〜20を介して、火炉室11内に供給される。供給路R1から風箱18〜20に供給される一次空気量は、風箱18〜20毎に個別に調整可能である。
図1では図示しないが、本実施形態では、火炉室11の天井の位置から火炉室11内へ二次空気が供給される。二次空気の供給位置は、これに限定されない。火炉室11内に供給される一次空気量と二次空気量とは、空気量測定計を用いて、制御装置10により制御される。
【0059】
ボイラ5は、焼却炉4内で生じた燃焼ガスと排ガスとから熱回収する。ボイラ5は、放射室21、第1煙道22、及び第2煙道23を有する。放射室21は、再燃焼室12の上部と連通して上下方向に延び、下方から上方へ向けて排ガスを案内する。
【0060】
放射室21の外側には、水蒸気が流通する流通路R4が設けられる。流通路R4は垂直方向に延びている。放射室21を流通する高温の排ガスは、流通路R4を流通する水蒸気と熱交換される。これにより、温度上昇した水蒸気によってタービン8が回転する。発電機9は、タービン8の回転駆動力により発電する。
【0061】
煙道22,23は、再燃焼室12から流出した排ガスを流通させる。第1煙道22は、放射室21に隣接して配置され、放射室21の上部と連通して上下方向に延び、上方から下方へ向けて排ガスを案内する。
【0062】
第2煙道23は、第1煙道22に隣接して配置され、第1煙道22の下部と連通して上下方向に延び、下方から上方へ向けて排ガスを案内する。第2煙道23の途中には、過熱器24が配置されている。過熱器24は、第2煙道23を流通する排ガスから熱回収する。
【0063】
ボイラ5の後部には、排出路R2の上流端部が接続されている。排出路R2の下流端部は、煙突7に接続されている。排出路R2は、第2煙道23から排出される排ガスを煙突7へ向けて案内する。
【0064】
排出路R2の途中には、集塵機6とブロアB1とが設けられている。集塵機6にはバグフィルターが設けられ、排ガスから集塵する。集塵機6を通過した排ガスは、ブロアB1により誘引され、煙突7を流通して大気中に排出される。
【0065】
排出路R2の集塵機6とブロアB1との間には、循環路R3の上流端部が接続されている。循環路R3の下流端部は、配管27と接続されている。循環路R3は、焼却炉4から排出される排ガスの一部を循環排ガスとして循環させる。本実施形態の循環路R3は、焼却炉4とボイラ5とを通過した排ガスの一部を循環排ガスとして火炉室11に循環させる。
【0066】
循環路R3の途中には、ブロアB2が設けられている。循環路R3を流通した循環排ガスは、ブロアB2により誘引され、配管27に設けられた噴射ノズル14から火炉室11内に噴射される。
【0067】
なお循環路R3の上流端部は、排出路R2の集塵機6よりも排ガスの流通方向の上流側の部分に接続されていてもよいし、焼却炉4のボイラ5よりも排ガスの流通方向の上流側の部分に接続されていてもよい。
【0068】
制御装置10は、噴射ノズル14を制御する。制御装置10は、内部にCPU、RAM、ROMを内蔵するコンピュータであり、所定の制御プログラムにより、配管27に設けられた不図示のバルブの流量を調節することで噴射ノズル14の噴射量を制御する。本実施形態の制御装置10は、搬送方向の下流側から上流側に向けて、噴射ノズル14から火炉室11内に循環排ガスを噴射させるように噴射ノズル14を制御する。
【0069】
焼却プラント1は、焼却炉4内へ供給される一次空気量を測定するための空気量測定計30と、排ガスの一酸化炭素濃度を測定するための一酸化炭素濃度計31と、排ガスの窒素酸化物濃度を測定するための窒素酸化物濃度計32と、火炉室11の出口におけるガス温度を測定するためのガス温度計33と、焼却炉4内の酸素濃度を測定するための酸素濃度計34と、焼却炉4の内圧を測定するための圧力計35とを更に備える。これらの計器30〜35は、制御装置10に接続され、各測定値が制御装置10により監視されている。本実施形態の制御装置10は、制御プログラムに基づき、以下の項目(a)〜(i)に示す具体的制御を行う。
【0070】
(a)循環排ガス量が廃棄物の焼却量と焼却プラント1に設けられたボイラの蒸発量から求められる理論空気量の10%以上80%以下の範囲の値となるように、噴射ノズル14から火炉室11内に循環排ガスを噴射させる。
【0071】
(b)空気量測定計30の測定値に基づいて、循環排ガス量が一次空気量の10%以上80%以下の範囲の値となるように、噴射ノズル14から火炉室11内に循環排ガスを噴射させる。
【0072】
(c)排ガスの一酸化炭素濃度が10ppm以上であることを一酸化炭素濃度計31により検出した場合、排ガスの一酸化炭素濃度が10ppm未満であることを一酸化炭素濃度計31により検出した場合に比べて、噴射ノズル14から火炉室11内への循環排ガスの噴射量を低減させる。
【0073】
(d)焼却炉4内の酸素濃度が3%以下であることを酸素濃度計34により検出した場合、焼却炉4内の酸素濃度が3%より多いことを酸素濃度計34により検出した場合に比べて、噴射ノズル14から火炉室11内への循環排ガスの噴射量を低減させる。
【0074】
ここで酸素濃度計34は、例えば焼却炉4の出口、又は、集塵機6に設けられたバグフィルターの出口に取り付けることができる。
図1に示す例では、酸素濃度計34は、焼却炉4の出口に取り付けられている。
【0075】
(e)火炉室11内に噴射する循環排ガス量をV1とし、焼却炉4から排出される排ガス量をV2としたときのガス量比V1/(V1+V2)が0.15以上0.40以下の範囲の値となるように、噴射ノズル14から火炉室11内に循環排ガスを噴射させる。
【0076】
(f)排ガスの窒素酸化物濃度が30ppm以上であることを窒素酸化物濃度計32により検出した場合、排ガスの窒素酸化物濃度が30ppm未満であることを窒素酸化物濃度計32により検出した場合に比べて、噴射ノズル14から火炉室11内への循環排ガスの噴射量を増加させる。
【0077】
(g)火炉室11の出口におけるガス温度が900℃以下であることをガス温度計33により検出した場合、火炉室11の出口におけるガス温度が900℃より高いことをガス温度計33により検出した場合に比べて、噴射ノズル14から火炉室11内への循環排ガスの噴射量を低減させる。
【0078】
(h)焼却炉4の内圧が基準値以上であることを圧力計35により検出した場合、焼却炉4の内圧が基準値未満であることを圧力計35により検出した場合に比べて、噴射ノズル14から火炉室11内への循環排ガスの噴射量を低減させる。
【0079】
(i)ボイラ5の出口、又は、火炉室11の乾燥ストーカ15上に位置する乾燥領域の上側に、焼却炉4内の温度を測定可能な温度計を設けた状態において、温度が所定の基準温度未満であることを温度計により検出した場合、温度が所定の基準温度以上であることを温度計により検出した場合に比べて、噴射ノズル14から火炉室11内への循環排ガスの噴射量を低減させる。
【0080】
制御装置10は、焼却炉4内の廃棄物Wの状態等を考慮して、項目(a)〜(i)の制御のうち、いずれかを単独で行ってもよいし、2つ以上を組み合わせて行ってもよい。制御装置10が項目(a)〜(i)の制御を行う場合、例えば、オペレータが焼却炉4内の火炎の形状が
図2に示した形状となるように、火炎の形状をモニタ等で確認しながら制御装置10の調整を行ってもよい。また、項目(c),(d),(g),(h),及び(i)の制御における「低減」の程度は、適宜調整可能であり、噴射ノズル14からの循環排ガスの噴射の完全停止も含む。
【0081】
制御装置10がこのような噴射ノズル14の制御を行うことで、焼却プラント1では、
図2に示すように、火炉室11から中間仕切壁26に向けて反転し、中間仕切壁26の下方を通って再燃焼室12へ向かうガスの反転流が形成される。また、火炉室11内と再燃焼室12内とにわたって、廃棄物Wの燃焼に伴って生じる火炎が位置させられる。なお火炎は、燃焼ストーカ16上の主燃焼領域と、後燃焼ストーカ17上の後燃焼領域との両方における廃棄物Wの上方に向けて延びていてもよい。
【0082】
以上説明したように、焼却プラント1では、搬送方向の下流側から上流側に向けて、噴射ノズル14から火炉室11内に循環排ガスを噴射させることで、廃棄物と同方向に流れる燃焼ガスと、循環排ガスとを効率よく混合できる。また循環排ガスを、中間仕切壁26に対応する位置に設けられた噴射ノズル14から火炉室11内に噴射させて上記したガスの反転流を形成することにより、火炉室11内及び再燃焼室12内において、燃焼ガス温度を均一に低減し易くすることができる。よって、焼却炉4内で局所的に廃棄物Wの燃焼温度が過度に上昇するのを防止し、窒素酸化物の発生を良好に抑制できる。本実施形態では、噴射ノズル14から火炉室11内に循環排ガスを噴射することで、火炉室11の出口における燃焼ガスの燃焼温度が1000℃以下となるように調整され、窒素酸化物の発生が効果的に抑制される。
【0083】
また、上記したガスの反転流が形成されることで、火炉室11内と再燃焼室12内とにおける、廃棄物Wの燃焼に伴って生じる燃焼ガスの燃焼が緩慢になり、火炎が火炉室11内と再燃焼室12内とにわたって従来より下流側まで、また、より低く位置させられるので、この火炎により、燃焼中の廃棄物Wに含まれる未燃分(特に後燃焼領域に堆積している廃棄物Wに含まれる未燃分)を、燃焼ガスの輻射熱等により燃焼させ、固形未燃物の残留による廃棄物Wの不完全燃焼を防止できる。
【0084】
また、空気等に比べて酸素濃度の低い循環排ガスが、中間仕切壁26に対応する位置に設けられた噴射ノズル14から火炉室11内に噴射されるため、循環排ガスが噴射される中間仕切壁26の周辺において、燃焼ガス温度が低下し、燃焼灰により生じるクリンカの発生量を低減できる。
【0085】
ここで、廃棄物Wの発熱量が低い場合等、廃棄物Wの乾燥に時間を要して廃棄物Wの着火が遅れる場合がある。これに対して本実施形態では、中間仕切壁26に対応する位置に設けられた噴射ノズル14から火炉室11内に循環排ガスを噴射させることで、主燃焼領域から高温のガスを乾燥領域に流通させ、乾燥領域を温度上昇させて廃棄物Wの乾燥効果を向上できる。これにより、焼却炉4に供給された廃棄物Wを早期に着火可能にし、主燃焼領域と後燃焼領域とにおいて、廃棄物Wを効率よく燃焼させて、固形未燃物の残留による廃棄物Wの不完全燃焼を防止できる。
【0086】
また、従来の焼却炉の運転中の温度分布では、通常、主燃焼領域が最も高温となり、乾燥領域は比較的低温となる。本実施形態の焼却炉4では、上記のように乾燥領域を温度上昇できるため、焼却炉の乾燥領域の炉壁にボイラ水壁管を配置した場合、吸収熱量が高められると共に、乾燥領域よりも搬送方向下流側に配置されたボイラ5の伝熱面積を縮小できる。これにより、焼却プラント1の設備小型化を図り、焼却プラント1の熱回収率を高めることができる。
【0087】
また、従来の運転中の焼却炉では、主燃焼領域が過度に温度上昇して窒素酸化物が発生し易くなる場合がある。これに対して本実施形態の焼却炉4では、中間仕切壁26に対応する位置に設けられた噴射ノズル14から循環排ガスが火炉室11内に噴射されることで、主燃焼領域の過度の温度上昇が抑制されるため、窒素酸化物の発生を効果的に防止できる。また、焼却炉4の搬送方向に垂直な方向の炉壁(側壁)のうち、主燃焼領域に対応する部分の温度上昇が抑制されるので、当該炉壁部分にクリンカが付着するのを防止できる。
【0088】
また、中間仕切壁26に対応する位置に設けられた噴射ノズル14から火炉室11内に噴射された循環排ガスが、火炉室11の搬送方向上流側の炉壁の下側から上方に向けて上昇し、火炉室11の天井に案内されて中間仕切壁26に向けて移動し、その後、中間仕切壁26の下方を通って再燃焼室12へ向かうガスの反転流が形成されることで(
図2)、中間仕切壁26におけるガスの反転混合撹拌効果を高めることができる。これにより、火炉室11内の温度分布を均一化すると共に、低空気比化を図って一酸化炭素量を低減しながら、酸素不足或いは固形未燃物の残留による廃棄物Wの不完全燃焼を防止できる。
【0089】
ここで従来の運転中の焼却炉では、主燃焼領域の周辺における焼却炉の炉壁から火炉室内に循環排ガスを噴射すると、主燃焼領域の周辺における高温のガスが炉壁近傍で滞留するようにガスの流れが形成され、廃棄物Wの燃焼灰により生じるクリンカが炉壁に付着・成長する場合がある。
【0090】
これに対して本実施形態の焼却炉4では、噴射ノズル14は、搬送方向に垂直な水平方向において、焼却炉4の炉壁よりも焼却炉4の内側に離隔した位置に配置されると共に、中間仕切壁26から搬送方向上流側に向けて斜め下方に循環排ガスを噴射可能に配置されている。
【0091】
これにより噴射ノズル14は、搬送方向に垂直な水平方向において、焼却炉4の炉壁よりも焼却炉4の内側に離隔した位置から循環排ガスを噴射するので、噴射ノズル14を焼却炉の搬送方向に垂直な方向の炉壁(側壁)に配置した場合に比べて、噴射ノズル14から噴射される循環排ガスにより焼却炉内の高温のガスが炉壁近傍において温度低下するのが低減される。従って、炉壁近傍で燃焼灰によりクリンカが生じて炉壁に付着・成長するのが防止される。
【0092】
また、焼却炉4の炉壁よりも焼却炉4の内側に離隔した位置で、中間仕切壁26から搬送方向上流側に向けて斜め下方に循環排ガスを噴射することにより、中間仕切壁26近傍においても、上記したような高温のガスの温度低下が防止される。このため、中間仕切壁26にクリンカが付着・成長するのが防止される。
【0093】
また、中間仕切壁26から搬送方向の上流側に向けて斜め下方に循環排ガスが噴射されることで、循環排ガスが火炉室11の搬送方向上流側の炉壁や火炉室11の天井に案内されて中間仕切壁26に向けて反転し、中間仕切壁26の下方を通って再燃焼室12へ向かうガスの反転流が形成され易くなる。よって、焼却炉4内の局所的な温度上昇が抑制され、廃棄物Wの燃焼温度が過度に上昇するのを良好に低減できる。
【0094】
また制御装置10は、焼却炉4内の循環排ガス量が理論空気量の10%以上80%以下の範囲の値となるように、噴射ノズル14から火炉室11内に循環排ガスを噴射させる。或いは制御装置10は、焼却炉4内の循環排ガス量が焼却炉4内の一次空気量の10%以上80%以下の範囲の値となるように、噴射ノズル14から火炉室11内に循環排ガスを噴射させる。これにより、焼却炉4内において、適切な酸素濃度の雰囲気で廃棄物を燃焼させることができ、廃棄物Wの燃焼温度が過度に上昇するのを低減できる。
【0095】
また制御装置10は、排ガスの一酸化炭素濃度が10ppm以上である場合、排ガスの一酸化炭素濃度が10ppm未満である場合に比べて、噴射ノズル14から火炉室11内への循環排ガスの噴射量を低減させるので、焼却プラント1から排出される一酸化炭素の排出量を適切に低減しながら、酸素不足或いは燃焼ガス温度の低下による廃棄物Wの不完全燃焼を防止して廃棄物Wを適切に燃焼させることができる。
【0096】
また制御装置10は、焼却炉4内の酸素濃度が3%以下である場合、焼却炉4内の酸素濃度が3%より多い場合に比べて、噴射ノズル14から火炉室11内への循環排ガスの噴射量を低減させる。
【0097】
このように、制御装置10が焼却炉4内の酸素濃度を基準にして噴射ノズル14の噴射量を制御することで、廃棄物Wの燃焼温度の過度の上昇による窒素酸化物の発生を低減すると共に、酸素不足による廃棄物Wの不完全燃焼を防止して、廃棄物Wを良好に燃焼させることができる。
【0098】
また、ガス量比V1/(V1+V2)が0.15以上0.40以下の範囲の値となるように、噴射ノズル14から火炉室11内に循環排ガスを噴射させるので、制御装置10がガス量比V1/(V1+V2)に基づいて噴射ノズル14を制御することで、廃棄物Wの燃焼温度の過度の上昇による窒素酸化物の発生を低減しながら、酸素不足による廃棄物Wの不完全燃焼を防止して廃棄物Wを適切に燃焼させることができる。
【0099】
また、制御装置10は、排ガスの窒素酸化物濃度が30ppm以上である場合、排ガスの窒素酸化物濃度が30ppm未満である場合に比べて、噴射ノズル14から火炉室11内への循環排ガスの噴射量を増加させる。
【0100】
このように、制御装置10が排ガスの窒素酸化物濃度に基づいて噴射ノズル14の噴射量を制御することで、焼却炉4内の酸素濃度を循環排ガスにより適切に低減させ、廃棄物Wの燃焼温度の過度の上昇を抑制して、窒素酸化物の発生を低減できると共に、酸素不足による廃棄物Wの不完全燃焼を防止して、廃棄物Wを適切に燃焼させることができる。
【0101】
また制御装置10は、火炉室11の出口におけるガス温度が900℃以下である場合、火炉室11の出口におけるガス温度が900℃より高い場合に比べて、噴射ノズル14から火炉室11内への循環排ガスの噴射量を低減させる。
【0102】
このように、制御装置10が火炉室11の出口におけるガス温度に基づいて噴射ノズル14の噴射量を制御することで、廃棄物Wの燃焼温度が低下した状態で循環排ガスを噴射したことにより燃焼ガス温度の低下による廃棄物Wの不完全燃焼が生じるのを防止して、廃棄物Wを安定して燃焼させることができる。
【0103】
また制御装置10は、焼却炉4の内圧が基準値以上である場合、焼却炉4の内圧が基準値未満である場合に比べて、噴射ノズル14から火炉室11内への循環排ガスの噴射量を低減させる。
【0104】
このように、制御装置10が焼却炉4の内圧に基づいて噴射ノズル14の噴射量を制御することで、焼却炉4内の燃焼量が一時的に増加し、焼却炉4の内圧が基準値よりも上昇して廃棄物Wの燃焼温度が過度に上昇したことによって窒素酸化物が発生するのを低減しながら、燃焼ガス温度の低下による廃棄物Wの不完全燃焼を防止して廃棄物Wを適切に燃焼させることができる。
【0105】
また、燃焼ストーカ16の上方と後燃焼ストーカ17の上方とにわたって、廃棄物Wの燃焼に伴って生じる火炎が位置させられることで、廃棄物Wが搬送されながら十分に燃焼するので、廃棄物Wの燃焼に伴って発生する窒素酸化物を低減しながら、酸素不足或いは燃焼ガス温度の低下による廃棄物Wの不完全燃焼を防止できる。
【0106】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明の構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。