特許第6887924号(P6887924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アサヒ飲料株式会社の特許一覧

特許6887924飲料、容器詰め飲料および飲料の風味改善方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887924
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】飲料、容器詰め飲料および飲料の風味改善方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20210603BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20210603BHJP
【FI】
   A23L2/00 B
   A23L2/38 F
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-174737(P2017-174737)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2019-47764(P2019-47764A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山口 航
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−226533(JP,A)
【文献】 特開2009−034074(JP,A)
【文献】 特開2017−012075(JP,A)
【文献】 特開2006−347927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
A23L 2/38
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチン、果糖ぶどう糖液糖、および酸味料を含有する飲料であって、
前記酸味料が、リンゴ酸及び/又は乳酸を含み、
前記飲料全量に対する前記アスタキサンチンの含有量が、0.0010質量/体積%以上1質量/体積%以下である飲料。
【請求項2】
前記酸味料が、前記リンゴ酸、前記乳酸、およびクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも2種以上を含む、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
さらにクエン酸を含む、請求項2に記載の飲料。
【請求項4】
前記アスタキサンチンが、ヘマトコッカス藻由来である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の飲料が容器に充填されている容器詰め飲料。
【請求項6】
アスタキサンチンを含む飲料の風味改善方法であって、
アスタキサンチン、果糖ぶどう糖液糖、および酸味料を混合し、前記飲料全量に対する前記アスタキサンチンの含有量を、0.0010質量/体積%以上1質量/体積%以下となるように調製する工程を含み、
前記酸味料が、リンゴ酸及び/又は乳酸を含む、飲料の風味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、容器詰め飲料および飲料の風味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗酸化成分の1種として知られているアスタキサンチンを含む飲料に関する開発が行われている。一方で、一定量以上のアスタキサンチンを飲料などに添加すると、海藻類にみられる独特の不快臭が生じ、飲料の風味が損なわれることが知られていた。そこで、アスタキサンチンを含む飲料においては、かかる不快臭を抑制すべく工夫がなされている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、アスタキサンチンの添加量に対して所定量の環状オリゴ糖を添加することで、藻臭をマスキングする技術が開示されている。
また、特許文献2には、果糖を含有し、実質的にぶどう糖を含有しないことで、アスタキサンチン由来の独特の不快臭を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−12075号公報
【特許文献2】特開2015−226533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、環状オリゴ糖を添加することを前提とし、また特許文献2に開示された技術は、実質的にぶどう糖を含有しないことを前提とするものであり、アスタキサンチンを含む飲料に関する設計の自由度という点において改善の余地があった。また、海藻臭を効果的に抑制する点においても不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、飲料業界で汎用されている果糖ぶどう糖液糖を用いることを前提とするという新たな観点から、アスタキサンチンを飲料に含有させた際に発生する海藻臭の問題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、果糖ぶどう糖液糖に、リンゴ酸または乳酸の少なくとも一方を組み合わせることで、かかる海藻臭を効果的に抑制できることを見出した。
【0007】
本発明によれば、
アスタキサンチンと、果糖ぶどう糖液糖と、酸味料と、を含有する飲料であって、
前記酸味料が、リンゴ酸及び/又は乳酸を含み、
前記飲料全量に対する前記アスタキサンチンの含有量が、0.0010質量/体積%以上1質量/体積%以下である、飲料が提供される。
【0008】
さらに、本発明によれば、
アスタキサンチンを含む飲料の風味改善方法であって、
アスタキサンチン、果糖ぶどう糖液糖、および酸味料を混合し、前記飲料全量に対する前記アスタキサンチンの含有量を、0.0010質量/体積%以上1質量/体積%以下となるように調製する工程を含み、
前記酸味料が、リンゴ酸及び/又は乳酸を含む、飲料の風味改善方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アスタキサンチンを含有した飲料に発生する特有の海藻臭を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<飲料>
本実施形態において、飲料は、アスタキサンチン、果糖ぶどう糖液糖、および酸味料を含むものである。
【0011】
[アスタキサンチン]
アスタキサンチンは、カロテノイドと称される天然色素の1種であり、一般に抗酸化成分の1つとして知られているビタミンEの約1000倍の抗酸化力を有したものであるとされている。アスタキサンチンとしては、たとえば、ヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチンを好適に使用することができる。
また、アスタキサンチンとしては、工業的に生産されたアスタキサンチン製剤を用いてもよい。アスタキサンチンは難溶性であるため、アスタキサンチン製剤においては、界面活性剤等によりエマルジョン化されている。
【0012】
飲料全量に対するアスタキサンチンの含有量は、アスタキサンチンの抗酸化力に由来した機能性を飲料に対して付与する観点から、0.0010質量/体積%以上である。
一方、飲料全量に対するアスタキサンチンの含有量は、海藻臭を効果的に抑制し、飲料の嗜好性を良好にする観点から、1質量/体積%以下であり、好ましくは、0.8質量/体積%以下であり、より好ましくは0.5質量/体積%以下である。
【0013】
[果糖ぶどう糖液糖]
果糖ぶどう糖液糖とは、異性化糖の一種であり、果糖(フルクトース)含量が50%以上90%未満のものをいう。
なお、異性化糖とは、澱粉をアミラーゼその他の酵素または酸により加水分解して得られた、主としてぶどう糖からなる糖液について、そのぶどう糖の一部をグルコースイソメラーゼまたはアルカリにより果糖に異性化したぶどう糖および果糖を主成分とする液状の糖をいう。
【0014】
飲料全量に対する果糖ぶどう糖液糖の含有量は、嗜好性に応じて適宜調整できるが、好ましくは、1質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは、3質量%以上10質量%以下である。
【0015】
[酸味料]
酸味料は、リンゴ酸および乳酸の少なくとも一方を含むものである。
その他の酸味料としては、クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、フィチン酸、アスコルビン酸又はそれらの塩等が挙げられる。クエン酸の塩としては、例えば、クエン酸三ナトリウムが挙げられる。なかでも、飲料の味のバランスの良さを向上させ、おいしさを保持する観点からは、さらにクエン酸を含むことが好ましい。また、海藻臭を効果的に抑制する観点からは、リンゴ酸、乳酸、およびクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも2種以上を含むことが好ましい。なお、乳酸は、発酵乳酸を用いてもよい。例えば、50%発酵乳酸は、乳酸含有量50%であることを示す。
【0016】
リンゴ酸と乳酸との比率は、0:10〜10:0であるが、飲料の味のバランスの良さを向上する観点から、1:9〜9:1であることが好ましい。かかる数値範囲とすることにより、嗜好性のバランスを良好にしつつ、海藻臭を効果的に抑制できる。
また、クエン酸および乳酸を含む場合、クエン酸と乳酸との比率は、特に限定されず、1:9〜9:1であることが好ましく、3:7〜7:3であることがより好ましく、4:6〜6:4であることが特に好ましい。かかる数値範囲とすることにより、嗜好性のバランスを良好にしつつ、海藻臭を効果的に抑制できる。
また、クエン酸およびリンゴ酸を含む場合、クエン酸とリンゴ酸との比率は、1:9〜9:1であることが好ましく、3:7〜7:3であることがより好ましく、4:6〜6:4であることが特に好ましい。かかる数値範囲とすることにより、嗜好性のバランスを良好にしつつ、海藻臭を効果的に抑制できる。
【0017】
飲料全量に対するリンゴ酸の含有量は、海藻臭を低減し、嗜好性を良好にする観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。一方、飲料全量に対するリンゴ酸の含有量は、嗜好性を保持する観点から、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0018】
飲料全量に対する乳酸の含有量は、海藻臭を低減し、嗜好性を良好にする観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。一方、飲料全量に対する乳酸の含有量は、嗜好性を保持する観点から、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0019】
飲料全量に対するクエン酸の含有量は、海藻臭を低減し、嗜好性を良好にする観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。一方、飲料全量に対するクエン酸の含有量は、嗜好性を保持する観点から、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0020】
飲料全量に対する全酸味料の含有量は、海藻臭を低減し、嗜好性を良好にする観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。一方、飲料全量に対する全酸味料の含有量は、嗜好性を保持する観点から、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0021】
[その他]
飲料には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、その他の甘味料、食塩、香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を含有させてもよい。なお、飲料は、果汁を含まないことが好ましく、たとえ果汁を含んだとしても0.1質量%未満である。果汁とは、果実の搾汁液、果実の抽出物または濃縮エキス等を含むものである。
【0022】
その他の甘味料としては、上記の果糖ぶどう糖液糖を除く公知の甘味料を使用することができる。たとえば、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、果糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類;キシリトール、D−ソルビトール等の低甘味度甘味料;タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。
【0023】
食塩は、精製塩といった塩化ナトリウムそのものであってもよく、海塩、岩塩、天塩、および山塩等であってもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。食塩の含有量は、飲料の海藻臭を抑制する観点から、好ましくは、0.005質量%以上であり、より好ましくは、0.01質量%以上である。一方、食塩の含有量は、飲料の良好な嗜好性を維持する観点から、好ましくは0.06質量%以下であり、より好ましくは、0.04質量%以下である。食塩濃度(質量%)は、モール法で分析することができる。
【0024】
香料は、天然香料または合成香料であって、例えば、フルーツフレーバー、植物フレーバー、またはこれらの混合物を用いることができる。フルーツフレーバーにおける「フルーツ」としては、例えば、レモン、オレンジ、蜜柑、グレープフルーツ、シークヮーサー、柚およびライム等の柑橘類、イチゴ、桃、葡萄、林檎、パイナップル、アセロラ、さくらんぼ、ザクロ、マンゴー、メロン、およびバナナ等が挙げられる。なかでも、アスタキサンチンの風味との相性がよく、海藻臭を効果的に抑制できる観点から、イチゴ、桃、リンゴ、アセロラ、サクランボ、およびザクロであることが好ましい。
【0025】
[炭酸]
飲料は、炭酸ガスを含有する炭酸飲料であってもよい。飲料を試飲した際に、炭酸ガスの刺激が加わることにより、海藻臭をより効果的に抑制できる。
炭酸ガスの圧力は、嗜好性や用途に応じて適宜調整できるが、1〜5ガスボリュームであることが好ましく、1.5〜3.5ガスボリュームであることがより好ましい。なお、炭酸ガス圧力(ガスボリューム)は、標準状態(1気圧、0℃)において、炭酸飲料全体の体積に対して、炭酸飲料に溶けている炭酸ガスの体積を表したものである。
【0026】
[飲料特性]
飲料の20℃におけるpHは、好ましくは、2.5以上4.4以下であり、飲料の嗜好性を向上させる観点から、飲料の20℃におけるpHは、より好ましくは、2.5以上4.3以下である。
【0027】
飲料のクエン酸酸度は、飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、0.05質量%以上0.5質量%以下であり、さらに好ましくは、0.1質量%以上0.3質量%以下である。
なお、「クエン酸酸度」とは、飲料に含まれている酸の量をクエン酸の相当量として換算した値、すなわち、クエン酸量に概算した酸成分の合計量を酸度(質量%)として表した数値を指す。
【0028】
飲料の20℃におけるブリックス値(Bx)は、飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、1°以上10°以下であり、より好ましくは、3°以上9°以下であり、さらに好ましくは、4°以上8°以下である。
なお、「ブリックス値」は、例えば、糖用屈折計示度「RX−5000α」株式会社アタゴ製を用いて測定することができる。
【0029】
また、飲料全量に対するナトリウムの含有量は、海藻臭を効果的に低減しつつ、飲料の嗜好性を向上させる観点から、好ましくは、0.01質量%以上0.3質量%以下であり、より好ましくは、0.02質量%以上0.2質量%以下であり、さらに好ましくは、0.022質量%以上0.1質量%以下である。
【0030】
次に、本実施形態の飲料による効果について、説明する。
本実施形態の飲料は、アスタキサンチン、果糖ぶどう糖液糖、及びリンゴ酸及び/又は乳酸を含み、飲料全量に対するアスタキサンチンの含有量を、0.0010質量/体積%以上1質量/体積%以下とするものである。
すなわち、果糖ぶどう糖液糖を用いることを前提として、これに酸味料の中でもリンゴ酸または乳酸のうち少なくとも一方を組み合わせたときに、アスタキサンチンを含む飲料に特有の海藻臭が効果的に低減できる。かかる理由の詳細は明らかではないが、果糖ぶどう糖液糖に固有の甘味曲線におけるピークと、リンゴ酸および乳酸にそれぞれ固有の酸味曲線におけるピークとのバランスが影響することで、海藻臭のマスキング効果が効果的に得られると推測される。また、酸味料のなかでもリンゴ酸および乳酸は、かかるピークが現れるのが比較的遅いため、アスタキサンチンを含有することによる油っぽさを改善し、後味を良好にできると考えられる。
なお、甘味曲線または酸味曲線におけるピークとは、甘味成分または酸味成分を口に含んだ後に、最も強く甘味または酸味が感じられるまでの時間を意図する。
【0031】
さらに、本実施形態の飲料は、さらにクエン酸を含んでもよいものである。ここで、アスタキサンチンは、上述したように、難溶性であるため、特有の油っぽい風味がある。そのため、アスタキサンチンを飲料に含有させた場合、飲料の後味を低下させると推測される。これに対し、本実施形態の飲料は、さらにクエン酸を含むことで飲料の甘味、酸味のバランスを向上させつつ、後味を良好にし、おいしさを保持できると考えられる。また、複数種類の酸味料を用いることで、単調な酸味ではなく、豊かで深みのある酸味が得られるようになり、その結果、飲料のおいしさを一層高めることができる。
【0032】
[容器]
飲料は、容器詰めされてもよい。また、容器としては、飲料業界で公知の密封容器であれば、その素材は、適宜選択して用いることができる。その具体例としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、アルミ、スチール等の単体もしくは複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、缶容器、ボトル容器等が挙げられる。さらに、飲料を充填する容器の色は、特に限定されないが、アスタキサンチンが含有されていることが外観からわかるように、無色透明であることが好ましい。
【0033】
[用途]
本実施形態の飲料は、清涼飲料、炭酸飲料、スポーツ飲料、ニアウォーター、茶系飲料、乳性飲料、発酵乳飲料、および果汁飲料などとすることができる。好ましくは、清涼飲料、および炭酸飲料である。
また、本実施形態の飲料は、アスタキサンチンを含むため、アスタキサンチンの抗酸化力に由来した機能性が付与されていると考えられる。すなわち、アスタキサンチンを含むことを前提とした飲料は、機能性飲料の1種であるともいえる。
アスタキサンチンの抗酸化力に由来した機能の具体例としては、美肌効果、抗メタボ効果、保湿効果、アンチエイジング効果、眼精疲労抑制効果、抗疲労効果(疲労回復効果)、糖尿病改善効果、脂肪肝改善効果、心不全改善効果、および運動能力向上効果等が挙げられる。このため、本実施形態の飲料は、アスタキサンチンを含むため、肌質改善用飲料、抗メタボ効果促進用飲料、保湿効果促進用飲料、アンチエイジング効果促進用飲料、眼精疲労抑制効果促進用飲料、抗疲労効果促進用飲料、糖尿病改善効果促進用飲料、脂肪肝改善効果促進用飲料、心不全改善効果促進用飲料、運動能力向上効果促進用飲料等の用途で市場に流通させることも可能であるといえる。
【0034】
<飲料の風味改善方法>
本実施形態に係る飲料の風味改善方法は、アスタキサンチン、果糖ぶどう糖液糖、および酸味料を混合し、飲料全量に対するアスタキサンチンの含有量を、0.0010質量/体積%以上1質量/体積%以下となるように調製する工程を含み、酸味料として、リンゴ酸および乳酸の少なくとも一方を含有するものである。
これにより、アスタキサンチンを含む飲料に発生する特有の海藻臭を抑制でき、その結果飲料の風味を改善することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例1】
【0036】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
<実施例1〜5、比較例1>
表1に示す配合比率となるように、果糖ぶどう糖液糖(異性化糖含有率:55質量%)、アスタキサンチン製剤(太陽化学社製、サンアクティブ AX−310、アスタキサンチン濃度1.1質量%、ヘマトコッカス藻由来)、精製塩(食塩)、L−アスコルビン酸、香料(ストロベリーフレーバーおよびアセロラフレーバー)、酸味料を、予め純水に溶解させてから添加混合した。次いで、得られた混合液をフラッシュ・パスツリゼーション法(FP殺菌法)により殺菌後、容器に充填し、容器詰め飲料をそれぞれ得た。なお、上記の純水としては、ナトリウムなどのミネラル成分が検出されなかったものを使用した。
また、得られた容器詰め飲料のブリックス値、クエン酸酸度、pHおよびナトリウムイオン量は、それぞれ表1に示す通りであった。
なお、飲料全量に対するアスタキサンチンの含有量は、0.0011質量/体積%であった。
【0038】
・評価
得られた容器詰め飲料について、次の評価を実施した。なお、評価に用いた容器詰め飲料は、製造直後に20℃で12時間以上静置保管したものを使用した。
【0039】
・官能評価試験:実施例1〜5および比較例1の飲料を、それぞれ熟練した5名のパネラーが試飲し、評価項目「おいしさ」、「甘味のよさ」、「酸味のよさ」、「塩味のよさ」、「後味のよさ」、「海藻臭の強さ」それぞれについて評価した。かかる評価では、比較例1の飲料を対照品(コントロール品)、基準値を4点として、実施例1〜5の飲料について、最高点を7点、最低点を1点として7段階評価を実施し、その平均点を結果とした。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1より、実施例1〜5の飲料は、少なくともリンゴ酸または乳酸のいずれか一方を含むことで、比較例1よりも海藻臭を低減できた。
さらに、無水クエン酸を用いた実施例3,4の飲料は、後味のよさが改善し、おいしさも向上した。すなわち、無水クエン酸と、少なくともリンゴ酸または乳酸のいずれか一方を併用することで、海藻臭を低減できるとともにおいしさを向上でき、甘味、酸味のバランスを良好にできることが分かった。
なお、本発明者は、リンゴ酸と乳酸との比率、クエン酸とリンゴ酸との比率、クエン酸と乳酸との比率を、表1に示された比率から変更した場合であっても、クエン酸と、少なくともリンゴ酸または乳酸のいずれか一方を併用することによって、同様の効果が得られることを確認した。