特許第6887954号(P6887954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887954水媒体中の抽出アジュバントとしての非イオン性両親媒性化合物を用いた植物性由来マトリックス抽出物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887954
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】水媒体中の抽出アジュバントとしての非イオン性両親媒性化合物を用いた植物性由来マトリックス抽出物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 11/02 20060101AFI20210603BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20210603BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20210603BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 36/81 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 36/18 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 36/61 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 36/67 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 36/74 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 36/898 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 36/906 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 36/63 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20210603BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20210603BHJP
   A61K 129/00 20060101ALN20210603BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20210603BHJP
   A61K 135/00 20060101ALN20210603BHJP
【FI】
   B01D11/02 A
   A61Q19/00
   A61K8/9794
   A61K8/9789
   A61P17/00
   A61K36/81
   A61K36/18
   A61K36/61
   A61K36/67
   A61K36/74
   A61K36/28
   A61K36/898
   A61K36/906
   A61K36/9068
   A61K36/63
   B01D11/02 103
   A61K125:00
   A61K127:00
   A61K129:00
   A61K131:00
   A61K135:00
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-548880(P2017-548880)
(86)(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公表番号】特表2018-509292(P2018-509292A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】EP2016056037
(87)【国際公開番号】WO2016146837
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年3月8日
(31)【優先権主張番号】1552248
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500166231
【氏名又は名称】ピエール、ファブレ、デルモ‐コスメティーク
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE DERMO−COSMETIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】マチュー、レティ
(72)【発明者】
【氏名】アンヌ、マンドー
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/077970(WO,A1)
【文献】 特表2013−523155(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/184884(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 11/00−12/00
A61K 36/00−36/9068
A61P 1/00−43/00
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A23L 2/00−2/84
A23L 5/00−5/30
A23L 11/00−11/30
A23L 19/00−19/20
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の非イオン性両親媒性化合物を少なくともその最小ハイドロトロープ濃度と同等の濃度で含有する水溶液を用いた固体−液体抽出を含む、植物性マトリックス抽出物の製造方法であって、
前記非イオン性両親媒性化合物が、一般式Alk−O−Zp
[式中、
・Alkは、3〜6個の炭素原子を有する、飽和または不飽和、直鎖状または分岐状の疎水性脂肪族炭化水素フラグメントを示し、かつ、
・Zは、グルコース、キシロース、アラビノース等の疎水性グリコシド基を表し、かつ、・1<p<5である]
のアルキルポリグリコシドである、方法。
【請求項2】
前記植物性マトリックス抽出物が植物抽出物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非イオン性両親媒性化合物を含有する水溶液が、使用される唯一の抽出溶媒を構成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記固体−液体抽出が、撹拌下で維持された、少なくとも1種の非イオン性両親媒性化合物を含有する前記水溶液中での植物のマセレーションによって行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記固体−液体抽出が、マイクロ波下、超音波下あるいは向流法で行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶液中の非イオン性両親媒性化合物の濃度が、最小ハイドロトロープ濃度の1〜10倍である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶液中の非イオン性両親媒性化合物の濃度が、最小ハイドロトロープ濃度の1〜2倍である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記非イオン性両親媒性化合物が、前記水溶液中に、該溶液の重量に対して60重量%未満の濃度で存在している、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非イオン性両親媒性化合物が、前記水溶液中に、該溶液の重量に対して40重量%未満の濃度で存在している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶液が、抽出継続時間、20℃〜還流の温度で加熱される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
キログラムでの植物とリットルでの前記水溶液との比が、1:5〜1:50である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抽出後に、濾過または遠心分離による固体−液体分離が行われる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記非イオン性両親媒性化合物が、アミルグリコシドであり、ここで、
アミルグリコシドの疎水性アミルフラグメントがビートまたはジャガイモの粉の発酵により得られたCアルコールに相当し、かつ
アミルグリコシドのグリコシドフラグメントが穀類に由来する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
使用される植物が、ブドウホオズキ(Physalis peruviana)の果実、エンベリア・リブス(Embelia ribes)の果実、ギンバイカ(Myrtus communis)の葉、コショウ属(Piper spp.)の地下部および葉、 サザンブルーガム(Eucalyptus globulus)の葉、マンゴスチン(Garcinia mangostana)の果皮、ホップ(Humulus lupulus)の雌花序、キナ属(Cinchona sp. )の樹皮、イラクサ(Urtica dioica)の地上部、ムギワラギク属(Helichrysum sp.)の地上部、バニラ属(Vanilla sp.)の果実、ウコン属(Curcuma spp.)の根茎、ショウガ(Zingiber officinale)の根茎、オリーブ(Olea europaea)の果実および葉から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
固体−液体分離後に得られた溶液が、そのまま保存されるかまたは凍結乾燥され、目的の分子および非イオン性両親媒性化合物を含有し、該非イオン性両親媒性化合物が最終製品中での抽出物のより良い可溶化を可能とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記得られた抽出物において、親油性化合物が沈殿によって精製される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明の分野は、水媒体中の抽出補助物としての非イオン性両親媒性化合物を用いた植物性マトリックス抽出物の製造方法に関する。
【0002】
固体−液体抽出とは、固体(特に植物)中に存在している物質を、液体溶媒へ抽出することからなる方法である。マセレーション、注入および煮沸は、従来的な固体−液体抽出法である。
【0003】
溶媒とは、−作業温度にて−その他の物質を、当該物質を化学的に変性させることなく、かつそれ自体が変性することなく、溶解、希釈または抽出する特性を有する液体である。それらは、大量に多数の他の工業的用途(ペンキ、洗剤、塗料、植物衛生製品等)で用いられ、従来的に石油化学由来である。
【0004】
しかしながら、先細りの石油備蓄や化学薬品に対するより厳格な規制によって、より環境に優しい代替品を見出すことが必要とされている。
【0005】
環境に優しい抽出は、薬剤、化粧品、農業食品、ファインケミカルおよびバイオ燃料における原料として有用である、安全な高品質の抽出物を保証しながら、エネルギー消費を軽減し、かつ代替溶媒−農業溶媒−の使用を可能にする抽出法の発見および設計に基づくものである(Green extraction of natural products (GENP2013), (2014), Comptes Rendus Chimie, 17, 179-180)。この文脈において、既存の方法の改善および新規方法の設計における、抽出工程の環境への影響を低減させることを目的とした多量の作業によって、超音波、マイクロ波、超臨界COおよび真空フラッシュ膨張による抽出等の技術への参入およびその普及につながった。並行して、非石油化学由来の代替の抽出溶媒の追求は、改善への別の経路を構成するものである。
【0006】
よって、木材、農作物(スターチ産生または糖産生のもの)および油脂性種に由来する農業溶媒の市場は、完全に広がり、テルペン誘導体、アルコール類(エタノール、ブタノール、1,3-プロパンジオール)、フルフラール誘導体およびメチルエステル類に至っている(Formule Verte No. 8, December 2011, pp. 28-32)。
【0007】
水は、再生可能と見なされている天然溶媒である。しかしながら、その高い極性は、特定の目的の脂溶性分子の抽出を可能としない。
【0008】
従って、異なる範囲の極性の化合物を抽出するため(増加する広範囲の極性のため、または親油性化合物の抽出の最適化のため)の新しい溶媒を得る必要がある。
【0009】
水溶液中の特定の非イオン性両親媒性化合物は、十分な濃度で親油性化合物の可溶化を可能とする。
【0010】
ニコチンアミド、ジメチルイソソルビド、アルキルポリグリコシドおよび尿素は、これら非イオン性両親媒性化合物の例である。これら化合物の、水媒体中における特定の親油性分子用の可溶化補助物としての可能性は研究されてきた(Sanghvi R., Evans D., Yalkowsky S. Stacking complexation by nicotinamide: a useful way of enhancing drug solubility. (2007) 336: 35-41)。
【0011】
しかし、可溶化特性は植物性マトリックスから溶質の抽出を可能とするためには十分でない。実際、植物抽出の分野では、抽出溶媒は、植物性マトリックスに侵入し、膜を破壊し、かつ化合物を含浸溶媒中に放出させて(拡散現象、脱離現象、溶解現象等)、かつマトリックス溶質を固体を囲む液膜へ拡散させて溶質へ移送させること(限界工程)(limiting step)を可能としなければならない。使用する溶媒に応じて、植物細胞膜は、最大限またはそれより少ない程度に弱体化し、それに応じて、当該細胞中に含有された化合物の放出を可能とし得るかまたは可能とし得ない。
【0012】
出願人は、非イオン性両親媒性化合物の水溶液を十分な濃度で使用することによって、異なる範囲の極性を有する溶質を植物性マトリックスから抽出することが可能となることを示した。
【0013】
従って、本発明は、少なくとも1種の、好ましくは農業由来の(agro-sourced)、非イオン性両親媒性化合物を少なくともその最小ハイドロトープ(hydrotrope)濃度と同等の濃度で含有する水溶液を用いた固体−液体抽出を含む、植物性マトリックス抽出物の製造方法に関する。
【0014】
本発明は、非イオン性両親媒性化合物の水溶液を用いた、極性、中程度に極性および親油性の化合物を含有する全抽出物、または目的の親油性化合物が濃縮した抽出物のいずれかの製造に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1
図2
図3
【0016】
本発明の文脈において、用語「親油性化合物」とは、陽性オクタノール/水分離係数(log Pまたはlog Kowとも言われる)を有する化合物を指す。
【0017】
本発明によれば、用語「非イオン性両親媒性化合物」とは、任意の割合で水溶性であり、かつ界面活性特性を有さず、ミセルの形成を防ぐ化合物を指す。
【0018】
この抽出法は、好ましい非イオン性両親媒性化合物が農業から供給され得る(can be agro-sourced)(即ち、植物バイオマスに実質的に由来し得る)ため、酢酸エチル、ヘキサン、アセトン等の汚染する石油化学有機溶媒を置き換えることを可能とする代替法である。
【0019】
本発明による方法は、好ましくは農業由来の、非イオン性両親媒性化合物を少なくとも最小で十分な濃度(即ち、最小ハイドロトープ濃度)で含有する水溶液を用いて、植物性マトリックスの抽出を遂行する。
【0020】
用語「最小ハイドロトープ濃度」とは、これら非イオン性両親媒性化合物が集合体を形成し始める上記の濃度(即ち、化合物が希釈された際に観察されるものとは異なり、かつミセル挙動とは異なる物理特性を有する新たな微環境)を指す。この最小ハイドロトープ濃度は、各非イオン性両親媒性化合物に特異的であり、一般的にモルの大きさの順番である。それは、界面張力、伝導性、または動的および静的光拡散性を測定することによる等(Self-association of nicotinamide in aqueous solution: Light-scattering and vapor pressure osmometry studies (1996) 85(8): 848-853)によるか、または比較的容易に親油性化合物の可溶化曲線を確立すること(可溶化溶質含有量は非イオン性両親媒性化合物の濃度としての機能である)による、幾つかの物理化学的方法で測定することができる。分光測光法によって容易に測定可能な親油性染料であるスーダン・レッドを参照として使用することができる。この濃度の値は、非イオン性両親媒性化合物の性質によるものであり、溶質によるものではない。それは溶質の可溶化曲線が指数形式をとる、上記の最小限濃度に相当するものである。
【0021】
本発明の別の特徴によれば、好ましくは農業由来の、非イオン性両親媒性化合物は、使用される唯一の抽出溶媒を構成する。
【0022】
本発明の有利な特徴によれば、固体−液体抽出は、撹拌下で維持された、少なくとも1種の非イオン性両親媒性化合物を最小ハイドロトープ濃度と少なくとも同等な最小限の濃度で含有する前記水溶液中で植物性マトリックスのマセレーション(maceration)によって行われる。
【0023】
本発明によれば、語句「少なくとも1種の非イオン性両親媒性化合物を、最小ハイドロトープ濃度と少なくとも同等な濃度で含有する水溶液」とは、少なくとも1種の非イオン性両親媒性化合物を、上記最小ハイドロトープ濃度(MHC)より高いかまたは同等な濃度で含有する水溶液を指す。植物性マトリックス中に存在している可能性がある水分含有量も考慮し、ひいては、非イオン性両親媒性化合物の濃度を調整して、本発明の方法におけるそれらの十分な使用を可能にする必要がある。
【0024】
本発明の別の特徴によれば、前記水溶液中の非イオン性両親媒性化合物の濃度は、最小ハイドロトープ濃度の1〜10倍、好ましくは1〜6倍、より好ましくは1〜2倍、一層より好ましくは1.4〜1.8倍である。有利的には、実務において非イオン性両親媒性化合物は、水溶液中に1.5mol/Lと等しい濃度で使用することができる。
【0025】
本発明の別の有利な特徴によれば、非イオン性両親媒性化合物は、抽出水溶液中に、当該溶液の重量に対して60重量%未満、好ましくは当該溶液の重量に対して50重量%未満、より好ましくは当該溶液の重量に対して40重量%未満、一層より好ましくは当該溶液の重量に対して30重量%未満の濃度で存在している。一般的にエタノールは遥かに高い割合(約80%)での使用に限られ、具体的には、この濃度閾値が、親油性化合物のための抽出溶媒としてのエタノールの使用を暗に排除することが観察されるであろう。
【0026】
本発明の別の特徴によれば、当該水溶液は、使用された抽出技術に応じて、数分〜数時間と変動する期間、20℃〜還流の温度の範囲で加熱される。
【0027】
本発明の別の特徴によれば、植物性マトリックス(キログラムで表す)と当該水溶液(リットルで表す)との比率は、1:5〜1:50である。
【0028】
本発明の別の特徴によれば、固体−液体抽出は、例えば、マイクロ波もしくは超音波による抽出または向流抽出等の、当業者に周知の任意のその他の抽出システムによって行われる。
【0029】
本発明の有利な特徴によれば、抽出後に濾過または遠心分離による固体−液体分離が行われる。
【0030】
本発明の有利な特徴によれば、好ましくは農業由来の、当該非イオン性両親媒性化合物は、一般式Alk−O−Zp
[式中、
・Alkは、3〜7個の炭素原子を有する、飽和または不飽和、直鎖状または分岐状の疎水性脂肪族炭化水素フラグメントを示し、かつ、
・Zは、グルコース、キシロース、アラビノース等の疎水性グリコシド基を表し、かつ、
・1<p<5である。]
のアルキルポリグリコシドである。
【0031】
本発明の具体的態様によれば、Zはグルコース基を表す。
【0032】
本発明の別の具体的態様によれば、Zはキシロース基を表す。
【0033】
本発明のさらなる別の具体的態様によれば、Zはアラビノース基を表す。
【0034】
本発明の具体的態様によれば、Alkは、7個の炭素原子を有する、飽和または不飽和、直鎖状または分岐状の疎水性脂肪族炭化水素フラグメントを示す。
【0035】
本発明の別の具体的態様によれば、Alkは、6個の炭素原子を有する、飽和または不飽和、直鎖状または分岐状の疎水性脂肪族炭化水素フラグメントを示す。
【0036】
本発明のさらなる別の具体的態様によれば、Alkは、5個の炭素原子を有する、飽和または不飽和、直鎖状または分岐状の疎水性脂肪族炭化水素フラグメントを示す。
【0037】
本発明のさらなる別の具体的態様によれば、Alkは、4個の炭素原子を有する、飽和または不飽和、直鎖状または分岐状の疎水性脂肪族炭化水素フラグメントを示す。
【0038】
本発明の別の特徴によれば、農業由来の非イオン性両親媒性化合物は、トウゴマ(Ricinus)に由来するC7脂肪アルコールと小麦グルコース(遺伝子組み換えでない)との組み合わせである。
【0039】
本発明の有利な特徴によれば、当該化合物は、その疎水性アミルフラグメントがビートまたはジャガイモの粉の発酵により得られたC5アルコールに相当し、そのグリコシドフラグメントが穀類に由来する、アミルグリコシドである。
【0040】
本発明の有利な特徴によれば、当該化合物はC4脂肪アルコールとキシロシドとの組み合わせである。
【0041】
本願の文脈において、略称APGはアルキルポリグルコシドを示し、略称APXはアルキルポリキシロシドを示し、2つの略称の後に場合により表記Cx(xはアルキルフラグメントの炭素原子数を示す)が続く。
【0042】
本発明の具体的態様によれば、好ましくは農業由来の、当該非イオン性両親媒性化合物は、イソペンチルジオール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)および/またはメチルプロパンジオール、好ましくはイソペンチルジオールから選択されるジオールである。
【0043】
本発明の文脈に有用な非イオン性両親媒性化合物は、有利的には、市販のイソペンチルジオール(クラレ)またはDub Diol(Stearinerie Dubois)の1つであってもよい。
【0044】
本発明は、植物、菌類、地衣類、微細藻類培地または脱分化植物細胞培地の固体−液体抽出溶媒としての、好ましくは唯一の抽出溶媒としての、少なくとも1種の、好ましくは農業由来の、当該非イオン性両親媒性化合物を最小ハイドロトープ濃度と少なくとも同等の濃度で含んでなる水溶液の使用にも関する。当該使用は、本発明の方法に関して言及された全ての溶媒および植物マトリックスに関係する。
【0045】
本発明によれば、用語「植物性マトリックス」とは、植物、菌類、地衣類、微細藻類培地または脱分化植物細胞培地の全部または一部を指す。
【0046】
当該植物、菌類、地衣類、微細藻類は乾燥しているかまたは乾燥しておらず、冷凍されているかまたは解凍されていて、丸ごとであるか(粉砕も、製粉もされていない)、粉砕されているか製粉されている。当該微細藻類培地または脱分化植物細胞培地養は丸ごとであり、製粉され、好ましくは乾燥していない(fresh)ものであるが、乾燥していてもよく、バイオマスを回収するために濾過し、場合により細胞内含有物を放出するために、例えば超音波法によって、事前処理される。
【0047】
用語「植物部分」とは、とりわけ、茎、枝、葉、果実、種子および/または花等の地上部および/または根茎、根および/または球根等の地下部を指す。
【0048】
語句「地衣類、菌類または藻類部分」とは、葉状体、子実体、肉眼的子実体、菌糸体および/またはフィラメント等のこれら有機体の任意の器官を指す。
【0049】
本発明の具体的態様において、丸ごと(粉砕も製粉もされていない)の植物の全部または一部を使用する。
【0050】
本発明の文脈において有用な植物の中でも、とりわけ次のものに言及し得る:ブドウホオズキ(Physalis peruviana)の果実、エンベリア・リブス(Embelia ribes)の果実、ギンバイカ(Myrtus communis)の葉、コショウ属(Piper spp.)の地下部および葉、 サザンブルーガム(Eucalyptus globulus)の葉、マンゴスチン(Garcinia mangostana)の果皮、ホップ(Humulus lupulus)の雌花序、キナ属(Cinchona sp. )の樹皮、イラクサ(Urtica dioica)の地上部、ムギワラギク属(Helichrysum sp.)の地上部、バニラ属(Vanilla sp.)の果実、ウコン属(Curcuma spp.)の根茎、ショウガ(Zingiber officinale)の根茎、オリーブ(Olea europaea)の果実および葉。
【0051】
本発明の文脈において有用な藻類には、具体的に、藍藻類または藍色細菌、同様にミドリムシ、地中植物、ハプト植物、灰色藻等の真核生物、紅藻類または紅色植物門、とりわけ珪藻類を含むストラメノパイル、褐藻類(algues brunes)または褐藻類(Phaeophyceaes)、そして最後に、とりわけアオサ藻綱(Ulvophyceaes)を含む緑藻類が含まれる。
【0052】
本発明の文脈において有用な地衣類の中で、とりわけ次のものを言及し得る:アイランド・モス(Cetraria islandica)の葉状体、サルオガセ属(Usnea spp.)の葉状体、ハナゴケ属(Cladonia spp.)の葉状体、およびカブトゴケ属(Lobaria spp.)の葉状体。
【0053】
本発明の文脈において有用な菌類の中で、とりわけ次のものを言及し得る:カワラタケ(Coriolus versicolor)、ノムシタケ属(Cordyceps spp.)。
【0054】
本発明の文脈において有用な植物細胞培養物の中で、とりわけ次のものを言及し得る:オジギソウ(Mimosa pudica)細胞培養物、クロヅル(Tripterygium wilfordii)細胞培養物。
【0055】
非イオン性両親媒性化合物は、特定の濃度で、予期せぬことに水中で親油性化合物を抽出することを可能にする。この最小ハイドロトープ濃度は、各非イオン性両親媒性化合物に特異的であり、例えば、スーダン・レッドの可溶化の分光測光アッセイによって容易に測定することができる。この最小ハイドロトープ濃度は、一般的にモルの大きさの順番である。
【0056】
好ましくは、非イオン性両親媒性化合物はアルキルグリコシドまたはアルキルポリグリコシドである。
【0057】
本発明の文脈において有用な非イオン性両親媒性化合物は、有利的に市販の原料SEPICLEAR G7(商標)(SEPPIC)およびAPPYCLEAN(商標)(WHEATOLEO)の1つであってもよい。また、それはC4アルコキシ基によって置換されているアノマーヒドロキシル官能基を有するキシロースモノマーフラグメントであってもよい。
【0058】
抽出条件(継続時間、非イオン性両親媒性化合物の濃度、pH、温度等)は、抽出収量および/または選択性を最適化するために植物/非イオン性両親媒性化合物の組に応じて変動し得る。このような特定の適合は、固体−液体抽出の分野で通常常識を用いる当業者の領域である。
【0059】
一般的に、方法は、非イオン性両親媒性化合物を最小ハイドロトープ濃度と少なくとも同等な濃度で含有する水溶液中に製粉された乾燥したかまたは乾燥されていない植物性マトリックスの、20℃〜還流の間の温度にて撹拌下でのマセレーションからなり、親油性化合物の抽出を可能とする。
【0060】
好ましい態様によれば、非イオン性両親媒性化合物の水溶液を除き、抽出工程自体においてその他の溶媒は用いられない。特定の濃度で用いられた非イオン性両親媒性化合物の水溶液が、抽出法において用いられる唯一の溶媒である。
【0061】
本発明の具体的態様において、植物(kg)の溶媒(L)に対する割合は、1:5〜1:50である。もちろん、絞りかすを1回以上再抽出して植物を使い果たしてもよい。
【0062】
抽出は、従来的な反応器で行ってもよく、または当業者に公知の任意の他の抽出システム(マイクロ波、超音波、向流抽出等)を用いて行ってもよい。
【0063】
抽出継続時間は、使用された抽出技術に応じて数分から数時間と変化してもよい。
【0064】
抽出は、植物性マトリックスの水分含有量を考慮しながら、非イオン性両親媒性化合物と均質化した、乾燥していない植物性マトリックスに適用してもよい。
【0065】
抽出の後に、遠心分離および/または濾過による固体−液体分離が行われる。
【0066】
用語「遠心分離」とは、完全に透明な溶液を得るために、混合物の成分を、デカンター遠心分離機または任意の種類の遠心分離器を用いて遠心力にかけることによってその密度の差異に従って分離する動作を指す。
【0067】
用語「濾過」とは、全面濾過または接線濾過であって、濾過助剤(パーライトまたは珪藻等のような)の存在が想定されてもよいものを指す。この濾過は、最後の固体残渣を保持し、目的は完全に透明な溶液を得ることである。その後に考慮すべき分子の大きさに応じて定義される分画を有する膜濾過が続いてもよい。また、樹脂あるいはシリカでの濾過をそれと入れ替えるかあるいはその後に続けて、例えば、吸着樹脂を用いて目的の化合物に濃縮させてもよい。
【0068】
特定の態様において、固体−液体分離後に得られた、目的の分子および非イオン性両親媒性化合物を含む溶液は、そのまま保存されるか、または凍結乾燥され、当該化合物は、最終製品中での抽出物のより良い可溶化を可能にする。
【0069】
従って、幅広い範囲の極性(極性、中程度に極性、非極性)で化合物を含有する完全抽出物が得られる。
【0070】
非イオン性両親媒性化合物が、上記で定義した十分な濃度を下回る最終濃度となるように、このように得られた抽出物を、塩、酸または塩基から選択されるアジュバントで場合により補給された水分量中に希釈してもよい。
【0071】
このように親油性化合物が濃縮された抽出物が得られる。目的の親油性化合物は、フラボノイド、フェノール酸、テルペン(モノ−、ジ−、トリテルペン)およびステロイド化合物、ジアリールヘプタノイド誘導体、リグナン、クマリン、キノン、アントラキノン、キサントン、フロログルシノール、イリドイド、セスキテルペンラクトン、アルカロイド、スクロースエステル、極性脂質等であってもよい。
【0072】
それらは、具体的に、カヴァラクトン、ミルツコンムロン(myrtucommulone)、エンベリン、キニーネおよびそれらの誘導体、バニリンおよびそれらの誘導体、α−マンゴスチン、キサントフモール、モノ−およびジガラクトシルジアシルグリセロール、マスリン酸、ウルソール酸、ロスマリン酸、カルノソール、ガランギン、ピノバンクシン、カルダモニン、クルクミノイド、ジンゲロール、ショウガオールであってもよい。
【0073】
完全抽出物または親油性化合物が濃縮された抽出物は、希釈して、濃縮して、乾燥させて、好適な認可された保存料を添加することによって保存して、所望の最終製品(グリコール、ソルビン酸、安息香酸、クエン酸およびそれらの塩等)またはアルコール(最小度数15°)とし得る。
【0074】
乾燥抽出物を製造するためには真空乾燥技術、凍結乾燥技術または微粒化技術を想定し得る。得られた抽出物は、基質と一緒にあるいは基質無しで乾燥し、および/または液体基質中に可溶化させてもよい。
【0075】
上記で定義された液体、ペーストあるいは乾燥抽出物は、そのまま、局所あるいは経口投与を目的とし、化粧品組成物、医薬組成物あるいは食品組成物として使用することができる。
【0076】
利点は、以下のとおりである。
−濾液をそのまま保存または凍結乾燥した場合、広範囲の極性で分子および非イオン性両親媒性化合物を含有する完全抽出物の製造によって最終製品中における抽出物のより良い可溶化が可能になる。
−親油性化合物を沈殿によって精製した場合、水性抽出物および農業由来の物質を用いて得た親油性化合物が濃縮した抽出物の製造は、ヘキサン、酢酸エチルまたはアセトン等の毒性かつ石油化学系溶媒の代替である。
【0077】
以下の実施例は情報目的で提供され、限定されるものではない。
【実施例】
【0078】
例1:ブドウホオズキ(Physalis peruviana)の濃縮抽出
100gの乾燥し製粉したホオズキ(Physalis)の果実を700mLの1.5Mのヘプチルグルコシド水溶液(SEPICLEAR G7(商標),SEPPIC)で40℃にて2時間撹拌した。濾過後、濾液をpH2に酸性化し、次いで15容量の水で希釈した。遠心分離後、ペレットを取り出し乾燥させた。濃縮抽出物を2.1重量%の収率で得た。
【0079】
例2:ブドウホオズキ(Physalis peruviana)の濃縮抽出
20gの乾燥し製粉したホオズキ(Physalis)の果実を140mLの0.75Mのヘプチルグルコシド水溶液で40℃にて2時間撹拌した。濾過後、濾液を6.6容量の水で希釈した。遠心分離後、ペレットを取り出し乾燥させた。濃縮抽出物を0.64重量%の収率で得た。
【0080】
例3:ブドウホオズキ(Physalis peruviana)の濃縮抽出
20gの乾燥し製粉したホオズキ(Physalis)の果実を140mLの3Mのヘプチルグルコシド水溶液で40℃にて2時間撹拌した。濾過後、濾液を22容量の水で希釈した。遠心分離後、ペレットを取り出し乾燥させた。濃縮抽出物を0.98重量%の収率で得た。
【0081】
ホオズキ(Physalis)の種々の濃縮抽出物について得た結果
【表1】
【0082】
例1〜3において、ヘプチルグルコシド水溶液でのホオズキ(Physalis)の果実の抽出、それに続く希釈による抽出物の沈殿によって、ショ糖エステルが豊富な抽出物が産生された。果実の糖は抽出されるが、希釈の間は溶液中に留まり、沈殿しない。得られた抽出物の品質は、石油化学由来(酢酸エチル、ヘプタン)の溶媒を用いて得られた抽出物より優れていた。
【0083】
例4:バニラ抽出物
5kgの乾燥し製粉したバニラの鞘を50Lの1.5Mのヘプチルグルコシド水溶液で50℃にて3時間抽出した。加圧濾過後、絞りかす25Lの同一の溶液で洗浄した。濾液を濃縮して赤褐色シロップ状溶液の形態でバニラ抽出物を得た。
【0084】
バニラ抽出物について得た結果:
【表2】
【0085】
ヘプチルグリコシド基質で、この抽出物は、相当な割合のバニリンおよび誘導体を含有し、一方で化粧品処方、栄養補給食品処方または医薬処方の水性相へのそれの導入を容易にするために事前に製剤化される。
【0086】
例5:マンゴスチンの濃縮抽出物
100kgの乾燥し製粉したマンゴスチン(Garcinia mangostana)の果皮を1000Lの1.5Mのヘプチルグルコシド水溶液で40℃にて2時間撹拌した。濾過後、濾液をpH=2に酸性化し、次いでpH=2に酸性化した11容量の水で希釈した。遠心分離後、ペレットを取り出し乾燥させた。キサントンが豊富な抽出物(α−マンゴスチンで表すと21.3%)を7.3重量%の収率で得た。得られた抽出物はタンニンを含まない。
【0087】
比較したところ、植物質量/溶媒容量比が同一での、乾燥し製粉したマンゴスチン(Garcinia mangostana)の果皮のエタノール還流抽出によって、キサントン含有量がより低いが(α−マンゴスチンで表すと19.5%)、より高い収率(27%)を有する抽出物が得られる。得られた抽出物はタンニンを含む。
【0088】
比較したところ、植物質量/溶媒容量比が同一での、乾燥し製粉したマンゴスチン(Garcinia mangostana)の果皮のヘキサン還流抽出によって、キサントン含有量がより高いが(α−マンゴスチンで表すと89.1%)、より低い収率(1.2重量%)を有する抽出物が得られる。得られた抽出物はタンニンを含まない。
【0089】
従って、1.5Mのヘプチルグルコシド水溶液での抽出によって、エタノール抽出と比較してキサントンの選択的な抽出が可能となる。またそれは、ヘキサン抽出と比較してより高い抽出収率を可能にする。
【0090】
例6:カヴァ(Piper methysticum)の濃縮抽出物
1kgの乾燥し製粉したカヴァ(Piper methysticum)の地下部を700mLの1.5mol/Lのアミルキシロシド水溶液(APXC5)で40℃下にて撹拌しながら1.5時間抽出した。濾過後、濾液を4容量の水で希釈した。遠心分離後、カヴァ(Kava)の濃縮抽出物に相当するペレットを6.2%の収率で得た。抽出物は3.0%のカヴァラクトンを含有する。
【0091】
比較したところ、植物質量/溶媒容量比が同一での、カヴァ(Piper methysticum)の乾燥し製粉した地下部の酢酸エチル還流抽出によって、8.2%の収率を得た。抽出物は5.3%のカヴァラクトンを含有する。
【0092】
比較したところ、植物質量/溶媒容量比が同一での、カヴァ(Piper methysticum)の乾燥し製粉した地下部の水還流抽出によって、23.1%の収率を得た。抽出物は0.25%のカヴァラクトンを含有する。
【0093】
3つの抽出物は異なるカヴァラクトン組成を有している。
−1.5mol/Lのアミルグリコシド水溶液での抽出によって得られた抽出物は、酢酸エチル抽出より高い含有量の低極性カヴァラクトン(ヤンゴニン、デメトキシヤンゴニン、フラヴォカヴァインA、フラヴォカヴァインBおよびフラヴォカヴァインC)を有する(総カヴァラクトンは35.3%と比べて44.8%)。
−反対に、1.5mol/Lのアミルグリコシド水溶液での抽出によって得られた抽出物は、酢酸エチル抽出より低い含有量の最も極性なカヴァラクトン(メチスチシン、ジヒドロメチスチシン、カヴァインおよびマリンジニン(marindinine))を有する(総カヴァラクトンは55.2%と比べて64.7%)。
−水性抽出によって得られた抽出物は、1.66%のカヴァラクトンを含有し、低極性カヴァラクトン(ヤンゴニン、デメトキシヤンゴニン、フラヴォカヴァインA、フラヴォカヴァインBおよびフラヴォカヴァインC)を含有しない。
【0094】
従って1.5mol/Lのアミルグリコシド水溶液での抽出は、酢酸エチル抽出に匹敵する全体収率にて、最も極性でないカヴァラクトンの選択的抽出を可能にする。
【0095】
例7:ゼラチンカプセル
例5によるマンゴスチン抽出物 200mg
デンプン 45mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
【0096】
例8:クリーム
例4によるバニラ抽出物 0.5〜3%
トリベヘニンPEG−20エステル 2〜7%
ネオペンタン酸イソデシル 2〜9%
グリセリン 0.5〜10%
パルミチン酸グリコール 1〜6%
セチルアルコール 0.5〜3%
2ナトリウムEDTA 0.05〜0.25%
保存料 0.5〜3%
香料 0.2〜0.5%
キサンタンガム 0.1〜0.4%
水 適量
【0097】
例9:典型的な可溶化曲線
異なる濃度での種々の非イオン性両親媒性化合物の水溶液中のスーダン・レッドの可溶化曲線を作成した。スーダン・レッドとの溶液の飽和および濾過後、各溶液に可溶化したスーダン・レッド含有量を、476nmでのUV分光測光法による希釈後に測定した。可溶化曲線は、添付の図1に記載されている。y軸は、希釈で乗じたOD値を表し、これら値は濃度に比例するものである(ランベルト・ベールの法則による)。
【0098】
これら曲線によって、本発明による非イオン性両親媒性化合物の最小ハイドロトープ濃度の測定が可能となる。
【0099】
明らかな界面活性挙動(低濃度で高い可溶化が見られ、化合物はミセルを形成する)を有するPlantacare(デシルグルコシド)は不適切である。目的の化合物を希釈によって回収することは不可能となるであろう。さらに、界面活性剤によりもたらされた泡の形成は、濾過を大幅に妨害する。
【0100】
類似の方法(可溶化α−マンゴスチンのHPLCアッセイ)に従い、α−マンゴスチンで得られた曲線の形状は、スーダン・レッドで得られたものに匹敵し、この値は両親媒性化合物に依存するものであり、溶質に依存するものではないことを示す。
【0101】
種々の濃度での非イオン性両親媒性化合物の水溶液中のα−マンゴスチンの可溶化曲線は、添付の図2に記載されている。
【0102】
従って、これら曲線からAPXC4は15〜20%のMHCおよび5〜10%のアミルキシロシドを有するということを推測できる。
【0103】
イソペンチルジオールのMHCは、40〜45%である。
【0104】
これら値は、例えば、マンゴスチン果皮からのα−マンゴスチンの抽出など、抽出法を実行するために必要である。
【表3】
【0105】
APXC4 25%では、マンゴスチン果皮から抽出した活性物質含有量は、酢酸エチル還流抽出によって得られたものとは同等であるが、5%の場合は異なる(MHCを下回る濃度)。
【0106】
次いで、この活性物質は、以下の表で見られるように、両親媒性化合物の最終濃度がMHCを下回った際に回収することができる。
【表4】
アミルキシロシド溶液を15%に希釈すると、α−マンゴスチンの沈殿物は少なく、濃度はMHCを超えて維持される。7%アミルキシロシドでは100%のα−マンゴスチン抽出沈殿物である。
【0107】
例10:
−乾燥していないオリーブかす(grignon)の抽出
製粉したオリーブ果肉を、油状物(76%の水を含有)を回収するために圧搾した後、10g計量し、12gのAPXC4(乾燥物質)および当量の水を添加して50%の最終APXC4濃度とした(植物の水分含有量を考慮する)。50℃で3時間加熱して濾過し、透明な褐色濾液を87.5%の収率で回収した。
【0108】
並行して、この同一のオリーブ果肉(収率24.5%)を凍結乾燥させ、還流にて1時間酢酸エチルで抽出した。溶媒を蒸発させた後、混濁した緑色油状物を、乾燥物質23.4%および乾燥していない物質5.7%の収率で得た。
【0109】
下記条件下でTLCによって得られた抽出物の評価:
・固定相:シリカゲル60でコーティングしたTLCプレート
・移動相:酢酸エチル/シクロヘキサン(1:1)
・現像液:硫酸バニリン+120℃への加熱
【0110】
添付の図3に記載されたTLCプロファイルの比較によって、APXC4での抽出物(LX 1872)は、トリテルペン(オレアノール酸およびマスリン酸)を含有する一方、AcOEt抽出物(LX 1874)は、トリテルペンに加えてトリグリセリドを含有する。従って、目的の分子は、材料を乾燥させる必要なく、かつそれを毒性かつ揮発性な溶媒で抽出する必要なく存在している。さらに、クロロフィルも中性脂肪も抽出されない。
図1
図2
図3