(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記振動エネルギ・ハーベスタは、ハウジングと、前記ハウジングの内部に配列された第1の質量要素および第2の質量要素と、前記第2の質量要素に結合されたエネルギ・トランスジューサとを備えており、前記エネルギ・トランスジューサは、前記ハウジングと前記第2の質量要素との間の相対運動によって起動されるように配列されており、前記相対運動は、前記第1の質量要素から前記第2の質量要素に衝突により移転される運動エネルギの少なくとも一部によって励起される、請求項2に記載のワイヤレス・センシング・デバイス(WSD’)。
前記制御モジュール(CM’)は、前記無線信号(RS’)を前記リモート・デバイスに送信するように前記トランシーバ(TRX’)に命令するように更に構成されている、請求項1に記載のワイヤレス・センシング・デバイス(WSD’)。
前記トランシーバ(TRX’)は、前記電気信号(I’)と関係する情報を前記無線信号(RS’)に含むように更に構成されている、請求項6に記載のワイヤレス・センシング・デバイス(WSD’)。
前記ステップb)は、前記トランシーバ(TRX’)において前記電気信号(I’)の前記少なくとも一部(I1’)を受け取る前に、前記電気信号(I’)が1つまたは複数の所定の要件を充足するかどうかをチェックするステップと、前記1つまたは複数の所定の要件が充足されている場合には、前記トランシーバ(TRX’)において、前記電気信号(I’)の前記少なくとも一部(I1’)を受け取るステップとを更に含む、請求項10に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の発明者たちは、WSNのプロバイダがそのデバイスを電力幹線に接続するためには電力を分配している地方当局に承認を求める必要があるという点で、電力幹線によるワイヤレス・センシング・デバイスへの給電は不都合であることに気が付いた。しかし、そのような承認を得るのは、非常に高コストで時間も要する作業になり得るのである。
【0008】
他方で、ワイヤレス・センシング・デバイスへの給電にバッテリを用いるのは、バッテリは放電し、従って寿命に限度があるという点で、不都合である。デバイスに給電しているバッテリが放電すると、交換される必要が生じる。しかし、この作業には非常に時間を要し(特に、WSNが広い地域にわたって拡がっている複数のデバイスで構成されている場合)、従って、WSNの維持コストを上昇させる。更に、そのバッテリを交換するためにワイヤレス・センシング・デバイスにアクセスするのは、デバイスの場所が遠方であるおよび/またはほとんどアクセス不可能な場合には、不便であり得るし、または、不可能であることさえあり得る。更に、バッテリは、環境を汚染する可能性がある化学物質を含む。
【0009】
以上を鑑みて、本発明の発明者たちは、上述の欠点を克服するワイヤレス・センシング・デバイス(特に、ワイヤレス振動センシング・デバイス)を提供するという課題に直面した。
【0010】
特に、長い時間的期間にわたって充電または交換することを必要とせず、潜在的に無制限の電力量を供給することが可能で、環境フレンドリな、自律的電源を備えたワイヤレス・センシング・デバイス(特に、ワイヤレス振動センシング・デバイス)を提供することが望まれている。
【0011】
本明細書において「機械振動」という用語を用いる場合には、ワイヤレス・センシング・デバイスの外部にある物理現象の存在または発生によって生じる振動を意味するものと理解されるべきである。従って、現実のデバイスにおいてデバイス自体の動作そのものによって生じ得る内在的な振動は、無視し得るものと考え、この明細書の文脈における「機械振動」という用語の意味には含まれないものとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様によると、ワイヤレス・センシング・デバイスであって、
機械振動を検出し、機械振動に応答して電気信号を生成するように構成されている振動センサと、
ワイヤレス・センシング・デバイスとリモート・デバイスとの間にワイヤレス接続を確立するのに適しているトランシーバと、を備えており、
トランシーバは、電気信号の少なくとも一部を受け取り、電気信号の少なくとも一部の強度に応じて、オンに切り換わり、無線信号をリモート・デバイスに送信するように構成されている、ワイヤレス・センシング・デバイスが提供される。
【0013】
好適実施形態によると、振動センサは、振動エネルギ・ハーベスタを備えている。
【0014】
更に好ましくは、振動エネルギ・ハーベスタは、ハウジングと、ハウジングの内部に配列された第1の質量要素および第2の質量要素と、第2の質量要素に結合されたエネルギ・トランスジューサとを備えており、エネルギ・トランスジューサは、ハウジングと第2の質量要素との間の相対運動によって起動されるように配列されており、相対運動は、第1の質量要素から第2の質量要素に衝突により移転される運動エネルギの少なくとも一部によって励起される。
【0015】
第1の実施形態によると、センサは、電気信号の少なくとも一部をトランシーバに自動的に供給するように構成されている。
【0016】
好ましくは、トランシーバは、オンに切り換えられると、無線信号をリモート・デバイスに自動的に送信するように、更に構成されている。
【0017】
第2の実施形態によると、ワイヤレス・センシング・デバイスは、振動センサとトランシーバとの間に挿入された制御モジュールを更に備えており、制御モジュールは、電気信号が1つまたは複数の所定の要件を充足するかどうかをチェックし、1つまたは複数の所定の要件が充足されている場合には、電気信号の少なくとも一部をトランシーバに供給するように構成されている。
【0018】
好ましくは、制御モジュールは、無線信号をリモート・デバイスに送信するようにトランシーバに命令するように更に構成されている。
【0019】
オプションであるが、トランシーバは、電気信号と関係する情報を無線信号に含むように更に構成されている。
【0020】
第2の態様によると、ワイヤレス・センシング・デバイスを動作させるための方法であって、ワイヤレス・センシング・デバイスは、振動センサと、ワイヤレス・センシング・デバイスとリモート・デバイスとの間にワイヤレス接続を確立するのに適しているトランシーバとを備えており、
a)振動センサにおいて、機械振動を検出し、機械振動に応答して電気信号を生成するステップと、
b)トランシーバにおいて、電気信号の少なくとも一部を受け取り、電気信号の少なくとも一部の強度に応じて、オンに切り換わり、無線信号をリモート・デバイスに送信するステップと、
を振動センサにおいて含む方法が提供される。
【0021】
第1の実施形態によると、ステップb)は、振動センサが電気信号を生成すると、トランシーバへの電気信号の少なくとも一部を自動的に受け取るステップを含む。
【0022】
好ましくは、ステップb)は、トランシーバにおいて、トランシーバがオンに切り換わると、無線信号をリモート・デバイスに自動的に送信するステップを更に含む。
【0023】
第2の実施形態によると、ステップb)は、トランシーバにおいて電気信号の少なくとも一部を受け取る前に、電気信号が1つまたは複数の所定の要件を充足するかどうかをチェックするステップと、1つまたは複数の所定の要件が充足されている場合には、トランシーバにおいて、電気信号の少なくとも一部を受け取るステップとを更に含む。
【0024】
好ましくは、ステップb)は、無線信号をリモート・デバイスに送信するようにトランシーバに命令するステップを更に含む。
【0025】
好ましくは、ステップb)は、電気信号と関係する情報を無線信号に含むステップを更に含む。
【0026】
第3の態様によると、上述した少なくとも1つのワイヤレス・センシング・デバイスを備えているワイヤレス・センサ・ネットワークが提供される。
【0027】
本発明は、次の添付の図面を参照して読むべき限定ではなく例示によって与えられている詳細な説明を読むことによって、より明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態によるワイヤレス・センシング・デバイスWSDを示している。
【0030】
ワイヤレス・センシング・デバイスWSDは、好ましくは、1つまたは複数の振動センサと1つまたは複数のワイヤレス・トランシーバとを備えている。非限定的な例示であるが、
図1に示されているデバイスWSDは、1つの振動センサSと1つの短距離ワイヤレス・トランシーバTRXとを備えている。
【0031】
振動センサSは、1自由度ベースの振動検出器および/または複数自由度ベースの振動検出器を用いて振動を検出するように構成されたセンサを備えている。特に好適な実施形態によると、振動センサSは、機械振動Vを電気信号Iに、すなわち、電流または電圧に変換するように構成された振動エネルギ・ハーベスタを備えている。振動センサSは、それを経由して電気信号Iを生じる出力OUTを有する。
【0032】
より好ましくは、振動センサSは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2011/0074162号に記載されている振動エネルギ・ハーベスタを備えている。そのような振動エネルギ・ハーベスタは、より大きな質量の第1の質量要素とより小さな質量の第2の質量要素とを備えており、これらの質量要素は、低摩擦誘導ロッドによってこれらの質量要素が拘束されている直線状経路に沿って弾道的に(ballistically)移動する(「弾性的に」とは、質量要素の運動が、それら自体の運動量、重力、擬似重力(pseudo−gravity)によって支配されるが、摩擦および印加された力によっては支配されないことを意味する)。質量要素と誘導ロッドとは、誘導ロッドが固定されているハウジングの内部に含まれている。質量要素間およびそれぞれの質量要素とハウジングとの間の衝突における非弾性的なエネルギ損失を防止するために、バネ要素が提供されている。エネルギの変換は、質量要素の変位軸と同心円的なソレノイド・コイルによって提供される。第2の質量要素は、永久磁石で構成されている。第2の質量要素が運動を開始すると、電磁誘導により、出力電圧が生成される。動作の間、ハウジングは、機械的擾乱(mechanical disturbance)の外部ソースと接触している。ハウジングが機械的撹拌状態(state of mechanical agitation)にあるときには、運動エネルギが、速度乗算原理(principle of velocity multiplication)に従って、第1の質量から第2の質量に衝突により移転される。コイルはハウジングに対して固定されているので、第2の質量要素とハウジングとの間の相対運動は、第2の質量要素とコイルとの間の相対運動と等価である。この相対運動によって、出力電圧が誘導されるのである。このような振動エネルギ・ハーベスタは、広範囲の動作周波数帯域幅を提供し、従って、機械振動が広い範囲の周波数にわたって存在し得る現実的な応用に特に適するという点で、特に優れている。
【0033】
短距離ワイヤレス・トランシーバTRXは、例えば、更なるワイヤレス・センシング・デバイスや、デバイスWSDから受信された情報に基づいて動作するように構成されているリモート中央局など、好ましくは、ワイヤレス・センシング・デバイスWSDとリモート・デバイスとの間のワイヤレス接続を実装するように構成されている。トランシーバTRXは、例えば、ブルートゥース・トランシーバまたはWi−Fiトランシーバを備え得る。トランシーバTRXは、好ましくは、振動センサSの出力OUTに接続されている入力INを備えており、本明細書で詳細に後述されるように、この入力INを通して、振動センサSによって放出される電気信号Iが供給される。
【0034】
デバイスWSDは他のコンポーネントを備えていることがあり得るが、それらは本発明と関連しないため、
図1には示されていない。更に、図面に示されていない実施形態によると、デバイスWSDは、センサSの出力OUTとトランシーバTRXの入力INとの間に挿入された電圧アクチュエータ(例えば、DC−DCコンバータ)を備えていることがあり得るが、この電圧アクチュエータは、トランシーバTRXに供給するのに適するように電気信号Iを処理するのに適している。
【0035】
ここで、デバイスWSDの動作について、
図2の流れ図を参照しながら、詳細に説明される。
【0036】
デバイスWSDの周囲の環境に機械振動が存在しないのであれば、振動センサSは、どのような機械振動を受けることもなく、従って、いかなる電気信号も生成しない(ステップ21)。トランシーバTRXには、従って、いかなる電力も供給されず、結果的にオフに切り換えられたままである(ステップ22)。
【0037】
デバイスWSDの周囲の環境で機械振動Vが生じると、振動センサSがその機械振動Vを電気信号Iに変換する、すなわち、換言するならば、機械振動Vに応答して電気信号Iを生成する(ステップ23)。振動センサSは、次に、電気信号IをトランシーバTRXに供給する。電気信号Iの強度がトランシーバTRXに給電するのに十分である場合には、トランシーバTRXはオンに切り換わる(ステップ24)。電気信号Iの強度がトランシーバTRXに給電するのには十分でない場合には、トランシーバTRXはオフに切り換えられたままである(このステップは図示されていない)。
【0038】
いったんオンに切り換えられると、トランシーバTRXは、好ましくは、無線信号RSを、上述されたリモート・デバイスに自動的に送信する(ステップ25)。無線信号RSは、機械的信号Vの存在を示しており、好ましくは、リモート・デバイスにおいて適切な反応をトリガするのに適している。無線信号RSのコンテンツとリモート・デバイスの結果的な反応とは、本明細書において詳細に後述されるように、ワイヤレス・センサ・デバイスWSDのアプリケーションに左右される。例えば、無線信号RSは、リモート・デバイスにおいて受信されると、リモート・デバイスをアラート状態に導く、覚醒状態に導く、またはその機能を変更させるアラーム・メッセージを含み得る。
【0039】
従って、デバイスWSDにおいては、振動センサSは、デバイスそれ自体のための、および、特にトランシーバTRXのための局所的な電源として作用する。機械振動が存在しない場合には、振動センサSは、いかなる電力を生成することもなく、従って、デバイスWSDはオフに切り換えられたままの状態にある。機械振動が存在する場合には、振動センサSは、その振動を、トランシーバTRXに給電し得る電力に変換することにより、そのオンへの切り換えと無線信号RSの送信とをトリガする。
【0040】
電力の局所的ソースとして振動センサSを用いることは、振動センサは、バッテリとは異なり、充電や交換をまったく必要とせずに潜在的に無制限の量の電力を供給し得るという点で、優れている。バッテリの充電や交換に起因するメンテナンス費用は、従って、好都合なことに回避される。ここで用いられている「無制限」という用語は、例えばバッテリの場合のように電源の充電や交換が要求されず、必要なときにはいつでも電力供給が可能であることを意味する。
【0041】
更に、振動センサSは、環境を汚染する可能性があるいかなる化学物質も含まないため、環境フレンドリなエネルギ源である。
【0042】
更に、デバイスWSDは、必要とされるときにだけ、すなわち、リモート・デバイスに報告されなければならないイベントが発生するとき(すなわち、機械振動Vが発生するとき)にだけ、オンに切り換えられるのであるから、デバイスWSDの電力消費は好都合に最小化される。それ以外の場合には、デバイスWSDはオフに切り換えられたままの状態であり、従って、電力をまったく消費しない。その上に、デバイスWSDは、本明細書において更に詳細に後述されるように、必要とされるときにだけオンへの切り換えすなわちスリープ・モードから動作モードへの切り換えをトリガするのであるから、リモート・デバイスの電力消費もまた好都合に最小化される。
【0043】
センシング機能と給電機能とが同一のコンポーネントに一体化されている、すなわち、機械振動Vを検出すると共にそれをトランシーバTRXに供給される電力に同時に変換する振動センサSに一体化されているのであるから、デバイスWSDもまた優れて効率的である。
【0044】
図3は、本発明の第2の実施形態によるワイヤレス・センシング・デバイスWSD’を示している。
【0045】
図1のワイヤレス・センシング・デバイスWSDと同様に、ワイヤレス・センシング・デバイスWSD’は、好ましくは、1つまたは複数の振動センサと1つまたは複数のワイヤレス・トランシーバとを備えている。非限定的な例示であるが、
図3のデバイスWSD’もまた、1つの振動センサS’と1つの短距離ワイヤレス・トランシーバTRX’とを備えている。
【0046】
振動センサS’と短距離ワイヤレス・トランシーバTRX’とは、
図1の振動センサSとワイヤレス・トランシーバTRXとに実質的に類似している。よって、詳細な説明は、繰り返さない。振動センサS’は機械振動V’を電気信号I’に変換しその出力OUT’を通じてそれを生じるように構成されている、ということだけが述べられる。特に、振動センサS’は、好ましくは、1自由度または複数自由度の振動エネルギ・ハーベスタに基づく振動エネルギ・バーベスタを、更に好ましくは、米国特許出願公開第2011/0074162号に記載されている振動エネルギ・ハーベスタを備えている。他方で、トランシーバTRX’は、入力IN’を備えている。本明細書で詳細に後述されるように、この入力IN’を通過して、振動センサS’によって生じた電気信号I’の一部が、特定の条件の下で供給され得る。
【0047】
振動センサS’とトランシーバTRX’とに加え、デバイスWSD’は、また、制御モジュールCM’も備えている。制御モジュールCM’は、好ましくは、振動センサS’とトランシーバTRX’との間に置かれており、すなわち、振動センサS’の出力OUT’に接続された入力と、トランシーバTRX’の入力IN’に接続された出力とを有する。制御モジュールCM’とトランシーバTRX’とは、また、データ・リンクDL’によって相互に接続されている。
【0048】
制御モジュールCM’は、1つまたは複数のハードウェア・コンポーネントと、更に1つまたは複数のソフトウェア・コンポーネントとを備え得るのであるが、ハードウェア・コンポーネントは、適当なソフトウェア・コンポーネントと協働してソフトウェアを実行することができる。制御モジュールCM’は、1つまたは複数の専用プロセッサを備えていることがあり得る。更に、制御モジュールCM’は、これらに限定されることはないが、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェアと、ネットワーク・プロセッサと、特定用途向け集積回路(ASIC)と、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)と、ソフトウェアを記憶するためのリード・オンリ・メモリ(ROM)と、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)と、不揮発性ストレージ・デバイスとを備え得る。
【0049】
次に、デバイスWSD’の動作について、
図4の流れ図を参照しながら詳細に説明される。
【0050】
デバイスWSD’の周囲の環境において機械振動が存在しない場合には、振動センサS’は、いかなる機械振動も受け取ることがなく、従って、いかなる電気信号も生成しない(ステップ21’)。制御モジュールCM’とトランシーバTRX’とには、従って、いかなる電力も供給されず、結果的に、オフに切り換えられたままの状態である(ステップ22’)。
【0051】
デバイスWSD’の周囲の環境で機械振動V’が生じると、振動センサS’がその機械振動V’を電気信号I’に変換する、すなわち、換言するならば、機械振動V’に応答して電気信号I’を生成する(ステップ23’)。次に、振動センサS’は、電気信号I’を制御モジュールCM’に供給し、それに従い制御モジュールCM’はオンに切り換わる(ステップ23a’)。
【0052】
そして、制御モジュールCM’は、好ましくは、トランシーバTRX’のオンへの切り換えと無線信号の送信とをトリガするための1つまたは複数の所定の要件を電気信号I’が満たすかどうかをチェックする(ステップ23b’)。
【0053】
この所定の要件は、本明細書において詳細に後述されるように、アプリケーションのタイプに左右される。例えば、制御モジュールCM’は、機械振動V’の振幅を示す電気信号I’の強度が所定のスレショルドを上回るかどうかをチェックすることがあり得る。あるいは、制御モジュールCM’は、機械振動V’の周波数スペクトルを示す電気信号I’の周波数スペクトルがある形状要件を満たすかどうかをチェックすることがあり得る。
【0054】
ステップ23b’でチェックされた1つまたは複数の所定の要件が満足されると、制御モジュールCM’は、好ましくは、(制御モジュールCM’に供給するのに用いられない)電気信号I’の一部I1’を、トランシーバTRX’に供給する。電気信号の一部I1’の強度が十分である場合には、トランシーバTRX’がオンに切り換わる(ステップ24’)。そうでない場合には、トランシーバTRX’は、(例えば、振動強度の上昇に起因して)電気信号の一部I1’の強度がそれに給電するのに十分となるまで、オフに切り換えられた状態のままに留まる。
【0055】
トランシーバTRX’がオンに切り換わると、制御モジュールCM’は、好ましくは、無線信号RS’を上述したリモート・デバイスに送信するように、トランシーバTRX’に命令する(ステップ25’)。好ましくは、ステップ25’は、制御モジュールCM’からデータ・リンクDL’を経由してトランシーバTRX’まで適切なコマンド信号CS’を送ることを含む。
【0056】
無線信号RS’は、電気信号I’に関する所定の要件が充足されているという事実を示し、好ましくは、リモート・デバイスにおいて適切な反応をトリガするのに適している。無線信号RS’のコンテンツとリモート・デバイスの結果的な反応とは、本明細書において詳細に後述されるように、ワイヤレス・センサ・デバイスWSD’のアプリケーションに左右される。
【0057】
例えば、無線信号RS’は、リモート・デバイスにおいて受信されると、リモート・デバイスをアラート状態に導く、覚醒状態に導く、またはその機能を変更させるアラーム・メッセージを含み得る。あるいは、または、それに加えて、無線信号RS’は、電気信号I’と関係する情報(例えば、周波数スペクトルおよび/または振幅)を含み得る。電気信号の一部I’に関係するそのような情報は、ステップ23b’において実行される処理の結果として、制御モジュールCM’によって提供され得る。更に、そのような情報は、トランシーバTRX’がオンに切り換えられることを制御モジュールCM’が判断するまで、デバイスWSD’に含まれているメモリに記憶され得る。そして、それらは、好ましくは、制御モジュールCM’からトランシーバTRX’に送信されるコマンド信号CS’に含まれている。
【0058】
ステップ23b’においてチェックされた1つまたは複数の所定の要件が充足されていない場合には、制御モジュールCM’は、好ましくは、どの他の作用も実行しない。トランシーバTRX’には、どのような電流も供給されず、従って、オフに切り換えられたままの状態に留まる。
【0059】
従って、本発明の第2の実施形態によると、振動センサS’は、デバイスWSD’それ自体のための、および、特に制御モジュールCM’とトランシーバTRX’とのための局所的な電源として作用する。機械振動が存在しない場合には、振動センサS’は、いかなる電力を生成することもなく、従って、デバイスWSD’はオフに切り換えられたままの状態にある。機械振動が存在する場合には、振動センサS’は、その振動を、制御モジュールCM’に供給する電力に変換する。すると、制御モジュールCM’は、(1つまたは複数の)所定の要件が充足されているかどうかをチェックし、充足されている場合にはトランシーバTRX’に供給されることにより、そのオンへの切り換えと無線信号RS’の送信とをトリガする。
【0060】
よって、第1の実施形態によると、トランシーバTRXは、(電気信号Iの強度がそれに給電するのに十分であると仮定して)どのようなものであっても振動Vが検出されると自動的に給電されるのであるが、第2の実施形態によると、ワイヤレス・センシング・デバイスWSD’は、検出された振動V’に関係する情報を自律的に処理し、その処理の結果に基づいてトランシーバTRX’に給電すべきかどうかを判断する能力を有する。
【0061】
この第2の実施形態によるデバイスWSD’は、デバイスWSDと同じ長所を提供するのである。すなわち、振動センサによって提供されるグリーン電力の量が潜在的に無制限であること、デバイスWSD’それ自体とリモート・デバイスとの電力消費が最小化されていること(制御モジュールとトランシーバとは必要なときにだけオンに切り替えられる)、およびデバイス効率(センシング機能と給電機能とが同一のコンポーネントの中に一体化されている)が提供される。
【0062】
上述されたワイヤレス・センシング・デバイスWSDおよびWSD’は、有利であることに、様々な応用のためにワイヤレス・センサ・ネットワークに含まれ得る。
【0063】
図5は、複数(非限定的な例示として4とする)のワイヤレス・センサ・デバイスWSD1、WSD2、WSD3、WSD4を備えたワイヤレス・センサ・ネットワークWSNを示している。ワイヤレス・センサ・デバイスWSD1、WSD2、WSD3、WSD4は、応用のタイプに応じて、
図1のデバイスWSDまたは
図3のデバイスWSD’に、類似し得る。デバイスWSD1、WSD2、WSD3、WSD4は、好ましくは、ルートがデバイスWD1であるツリー・トポロジに従って、ワイヤレス・リンク経由で、互いに相互接続されている。デバイスWSD1、WSD2、WSD3、WSD4は、どのような既知のネットワーク・トポロジ(スター、メッシュ、バスなど)に従っても接続され得るのであるから、これは単なる例示である。
【0064】
ワイヤレス・センサ・ネットワークWSNは、また、デバイスWSD1に(好ましくは、ワイヤード・リンクを経由して)接続されたネットワーク管理システムNMSを備えている。
【0065】
デバイスWSD1は、好ましくは、コンセントレータまたはゲートウェイとして作用するのであるが、これは、他のデバイスWSD2、WSD3、WDS4から情報を収集し、オプションであるが、収集された情報の処理を実行して、それらをネットワーク管理システムNMSに送る。ネットワーク管理システムNMSは、好ましくは、デバイスWSD1から情報を受け取り、それらを処理して、例えばアラームを送るなどの結果的に生じる管理作用を実行する。
【0066】
ここで、本発明の第1の実施形態によるデバイスWSDの例示的な応用が、
図6aおよび
図6bを参照して説明される。
【0067】
図6aは、道路の片側に配置され、その道路に関係する(例えば、道路混雑または移動時間など)リアルタイムの交通情報を提供するように構成されている交通モニタリング・デバイス200を示している。交通モニタリング・デバイス200は、好ましくは、モニタリング対象の道路に沿って通過する車両から情報を受け取るように構成されている(ブルートゥース・トランシーバなどの)ワイヤレス・トランシーバと、その情報を処理するように構成されている処理モジュールとを備えている。
【0068】
本発明の第1の実施形態によるワイヤレス振動センシング・デバイスWSDは、好ましくは、交通モニタリング・デバイス200の近傍の道路脇に配置される。特に、デバイスWSDは、(
図6aでは矢印201によって示されている)車両の進行方向に沿った方向の交通モニタリング・デバイス200よりも前方に、配置されている。デバイスWSDは、同じ道路に沿って分布する異なる地点に関するまたは別の道路に関するデータを収集するように構成されているワイヤレス・センシング・ネットワークに含まれ得る。
【0069】
デバイスWSDは、地面の振動を検出するように構成されている。
【0070】
特に、
図6bに示されているように、デバイスWSDに近接する道路に沿って車両が通過しないときには、デバイスWSDに含まれている振動センサSによって提供される電気信号I(t)は、上側の時間ダイアグラム(a)に示されているように、実質的にゼロである。デバイスWSDのトランシーバTRXは、従って、オフに切り換えられたままの状態にある。
【0071】
デバイスWSDに近接する道路に沿って自動車202が通過するときには、振動センサSによって提供される電気信号I(t)は、下側の時間ダイアグラム(b)に示されているように、時間変動する振動振幅と関係する時間変動する強度を有する。電気信号I(i)は、デバイスWSDのトランシーバTRXに供給され、トランシーバTRXは、それに従ってオンに切り換わり、自動的に、無線信号RSを交通モニタリング・デバイス200に送信する。
【0072】
道路に沿って車両が通過しないときには、好ましくは、交通モニタリング・デバイス200は、スリープ・モードにある。スリープ・モードでは、そのワイヤレス・トランシーバだけがアクティブであり、他方で、その処理モジュールと可能性のある他のコンポーネントとは、オフに切り換えられたままの状態にある。車両が道路に沿って通過すると、交通モニタリング・デバイス200は、そのワイヤレス・トランシーバを経由して、デバイスWSDによって送信された無線信号RSを受信するのであるが、その無線信号を受信すると、スリープ・モードから覚醒モードに切り換わる。覚醒モードでは、(処理モジュールを含む)デバイス200のすべてのコンポーネントがオンに切り換わり、車両202から受信された情報を処理する。
【0073】
このようにして、ワイヤレス振動センシング・デバイスWSDにより、好都合であることに、必要であるとき以外、すなわち、情報が収集されるべき自動車が通過するとき以外は、交通モニタリング・デバイス200をスリープ・モードに維持しておくことが可能になる。これにより、特に車両の通行がそれほど頻繁でない道路では、またオフピークの時間においては、デバイス200の電力消費を減少させることが可能になる。
【0074】
交通モニタリング・デバイス200をスリープ・モードから覚醒モードに切り換えるという上述した機能に加えて、または、それとは別に、デバイスWSDは、通過する車両の台数を推定することや、速度カメラをスリープ・モードから覚醒モードに切り換えることなどにも用いられ得る。デバイスWSDの代わりに、第2の実施形態によるデバイスWSD’が設けられることがあり得るが、このデバイスWSD’は、(自動車、バス、トラックなど)車両のタイプを判断することや、車両の重量がある所与のスレショルドを超えるかどうかを判断することなど、より高度な機能を実行し得る。
【0075】
デバイスWSDまたはWSD’と類似する更に別のワイヤレス振動センシング・デバイスが、車両202上に配置されることもあり得る。車両の振動が検出されると、そのようなデバイスWSDのトランシーバは、オンに切り換わり、(例えば、識別子など)その車両に関する情報を含む無線信号RSを、交通モニタリング・デバイス200に送信し得る。複数のデバイス200が道路に沿って分布されている場合には、様々なデバイス200によって収集された車両に関する情報により、例えば平均速度など、その車両に関する詳細な情報を提供することが可能になる。それに加えて、または、あるいは、そのようなデバイスWSDは、(例えば、ホイール・バランス/圧力などの)車両の動作条件を検出し得る。
【0076】
次に、本発明の第2の実施形態によるデバイスWSD’の例示的な応用が、
図7aおよび
図7bを参照して、説明される。
【0077】
図7aは、2つのタービン・ブレード101、102を備えたウインド・タービン100を示している。ウインド・タービン100は、更に、本発明の第2の実施形態による振動ワイヤレス・センシング・デバイスWSD’を備えている。デバイスWSD’は、好ましくは、タービン・ブレードの一方101の端部に配置されている。デバイスWSD’は、リモート・コントロール・ステーション(
図7aには示されていない)とワイヤレスで通信するように構成されている。デバイスWSD’は、いくつかのウインド・タービンと関係するデータを収集するように構成されているワイヤレス・センシング・ネットワークに含まれることがあり得る。
【0078】
デバイスWSD’は、タービン・ブレード101によって経験される機械振動V’を連続的に検出する。
【0079】
図7bに示されているように、タービン・ブレード101が適切に動作しているときには、デバイスWSD’に含まれている振動センサS’によって提供される電気信号I’(t)は、既知の所定の形状を有しており、これは、上側の時間ダイアグラム(a)に示されている。ブレード101が損傷を受けると、振動センサS’によって提供される電気信号I’(t)は、下側の時間ダイアグラム(b)に示されているように、上側のダイアグラム(a)の既知の形状と比較すると、変形を生じる。
【0080】
デバイスWSD’に含まれている制御モジュールCM’が、好ましくは、ダイアグラム(a)の既知の所定の形状との比較における変形の存在を判断する(
図4における流れ図のステップ23b’)。変形が存在しなければ、デバイスWSD’のトランシーバTRX’には電力は供給されず、従って、トランシーバTRX’はオフに切り換えられた状態のままである。変形が生じると、デバイスWSD’の制御モジュールCM’はトランシーバTRX’に給電し、それに従い、トランシーバTRX’はオンに切り換わり(
図4における流れ図のステップ24’)、無線信号RS’をリモート・コントロール・ステーションに送信する(
図4における流れ図のステップ25’)。リモート・コントロール・ステーションは、これにより、タービン・ブレード101が損傷を受けたという事実を、告知される。この情報が、タービン100の将来の故障を予測するのに、有利に用いられ得る。
【0081】
この例示的な応用におけるデバイスWSD’の使用は特に有利なのであるが、その理由は、ウインド・タービンは遠隔地にある辺鄙な地域に配置されることが多く、そのような地域では、電気幹線が利用可能でないまたは信頼性が低いことがあり得るからである。振動センサS’によって提供される電力I’がデバイスWSD’の電力需要を超える場合には、超える分の電力は、ウインド・タービン100によって発電される電力と有利に合流させられ得る。
【0082】
ワイヤレス・センシング・デバイスWSDおよびWSD’は、いくつかの他の応用に用いられ得る。例えば、それらは、作業員がさらされる振動の強度が関連の規則に従っているかどうかを判断するのに用いられ得る。
【0083】
あるいは、ワイヤレス・センシング・デバイスWSDまたはWSD’は、歴史的建造物、スポーツ施設、スタジアムなどを振動に起因する損傷から保護するためにも用いられ得る。そのような場合には、振動が生じるまたは所与のスレショルドを超えるときには、デバイスWSDまたはWSD’のトランシーバが、緊急コールをトリガする無線信号を、リモート・コントロール・ステーションに送信する。
【0084】
また、デバイスWSDは、ドア・ノッカとして、有利に用いられ得る。だれかがドアをノックすると、デバイスWSDが、ドアの振動を、そのワイヤレス・トランシーバに供給される電力に変換し、そのワイヤレス・トランシーバがオンに切り換わり、起動信号を、アパートに配置されているリモート・ベルに自動的に送信する。
【0085】
すべてのこのような応用において、デバイスWSDまたはWSD’は以下の長所を提供するのである。すなわち、振動センサによって提供されるグリーン電力の量が潜在的に無制限であること、電力消費が最小化されていること(制御モジュールとトランシーバとは必要なときにだけオンに切り替えられる)、およびデバイス効率(センシング機能と給電機能とが同一のコンポーネントの中に一体化されている)が提供される。