特許第6887967号(P6887967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887967絶縁電線、その製造方法、コイル、電気・電子機器および電気・電子機器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887967
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】絶縁電線、その製造方法、コイル、電気・電子機器および電気・電子機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/02 20060101AFI20210603BHJP
   H01B 7/28 20060101ALI20210603BHJP
   H01B 3/42 20060101ALI20210603BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20210603BHJP
   H01F 5/06 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   H01B7/02 C
   H01B7/02 Z
   H01B7/28 F
   H01B3/42 Z
   H01B13/00 517
   H01B13/00 525H
   H01F5/06 P
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-43948(P2018-43948)
(22)【出願日】2018年3月12日
(65)【公開番号】特開2019-160507(P2019-160507A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】320003426
【氏名又は名称】エセックス古河マグネットワイヤジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】八本 智子
(72)【発明者】
【氏名】池田 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】須山 健一
(72)【発明者】
【氏名】福田 秀雄
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−115400(JP,A)
【文献】 特開2015−138626(JP,A)
【文献】 特開2017−054754(JP,A)
【文献】 特開2017−098030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/02
H01B 3/42
H01B 7/28
H01B 13/00
H01F 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体上に少なくとも1層の絶縁層を有する絶縁電線であって、
前記絶縁層を構成する樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンおよびポリエーテルケトンケトンから選択される少なくとも1種であり、
前記絶縁層において、導体界面側部分と絶縁電線表面側部分がいずれも融点を示し、かつ、該導体界面側部分と該絶縁電線表面側部分の融点の差の絶対値が10℃以上であることを特徴とする絶縁電線。
【請求項2】
前記絶縁層が、前記樹脂の押出形成層であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
【請求項3】
前記絶縁層が前記導体上に接して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁電線。
【請求項4】
前記導体上に有する絶縁層が1層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁電線。
【請求項5】
前記絶縁層の前記導体界面側部分に、前記樹脂とアミノ基を有する化合物、または、前記樹脂とアミノ基を有する化合物との反応物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁電線。
【請求項6】
前記アミノ基を有する化合物が、少なくとも2個のアミノ基を有することを特徴とする請求項5に記載の絶縁電線。
【請求項7】
前記アミノ基を有する化合物の含有量が、前記絶縁層を形成する樹脂に対して、2質量%以上20質量%未満であることを特徴とする請求項5または6に記載の絶縁電線。
【請求項8】
前記導体が、銅、または、メッキ銅もしくは銅合金からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の絶縁電線。
【請求項9】
前記導体が、断面形状が矩形の平角導体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の絶縁電線。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の絶縁電線からなるコイル。
【請求項11】
請求項10に記載のコイルを有する電気・電子機器。
【請求項12】
導体上に少なくとも1層の絶縁層を有する絶縁電線の製造方法であって、
前記導体上に、前記絶縁層を構成する樹脂を押出し形成する工程を含み、
前記絶縁層を構成する樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンおよびポリケトンから選択される少なくとも1種であり、かつ、
前記絶縁層において、導体界面側部分と絶縁電線表面側部分がいずれも融点を示し、該導体界面側部分と該絶縁電線表面側部分の融点の差の絶対値が10℃以上であることを特徴とする絶縁電線の製造方法。
【請求項13】
前記絶縁層を構成する樹脂を押出し形成する工程の前に、前記導体上にアミノ基を有する化合物を分散もしくは付着させることを特徴とする請求項12に記載の絶縁電線の製造方法。
【請求項14】
前記導体上に、アミノ基を有する化合物を粉末の状態で有することを特徴とする請求項13に記載の絶縁電線の製造方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の絶縁電線の製造方法で製造された絶縁電線でコイルを形成し、該コイルを用いることを特徴とする電気・電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線、その製造方法、コイル、電気・電子機器および電気・電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ関連機器、例えば高速スイッチング素子、インバータモータ、変圧器等の電気・電子機器用コイルには、マグネットワイヤとして、絶縁電線が用いられている。絶縁電線は、導体上に絶縁層などの樹脂からなる被覆層が設けられている。
被覆層の樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が使用されている。
また、いわゆるエナメル線からなる絶縁電線(絶縁ワイヤ)や、エナメル樹脂からなる層と、エナメル樹脂とは別種の樹脂からなる被覆層を含む多層の被覆層を有する絶縁電線等がある。
【0003】
電気・電子機器用コイルにおいて絶縁電線(巻線)を固定化したり、絶縁性を高めたりするために、様々な技術が開発されている。例えば、特許文献1には、絶縁被膜で外周が被覆された平角導体が積層され、その外周にエポキシ樹脂組成物が用いられてなる熱硬化性接着剤層が形成されたシート状基材が被覆されている構成が開示されている。
【0004】
一方、絶縁電線は、通常、長期保存されるものであり、導体が酸化され、例えば、銅害(銅の酸化)で劣化する。
特許文献2では、金属の酸化を抑制するために、絶縁電線ではないが、金属基板において、防食性接着層が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−126684号公報
【特許文献2】特開平10−286908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、導体の酸化を抑止し、従来より長期に使用できると同時に、導体と絶縁層間の密着力をさらに改善することが、今後の絶縁電線において重要であると考えた。
【0007】
このため、本発明は、導体と絶縁層間の密着力が高く、長期加熱劣化が少なく、銅害が抑制され、かつ、簡便で、特殊な装置を必要とせず、安価に多量製造できる絶縁電線、その製造方法、コイル、電気・電子機器および電気・電子機器の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、銅害(銅の酸化)を防ぐため、種々検討を行ったところ、絶縁層を形成する樹脂が特定の官能基や構造を有すると銅害が少ないことを見出した。
この検討の過程で、多くの検討を繰り返し、本発明に至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段によって解決された。
(1)導体上に少なくとも1層の絶縁層を有する絶縁電線であって、
前記絶縁層を構成する樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンおよびポリエーテルケトンケトンから選択される少なくとも1種であり、
前記絶縁層において、導体界面側部分と絶縁電線表面側部分がいずれも融点を示し、かつ、該導体界面側部分と該絶縁電線表面側部分の融点の差の絶対値が10℃以上であることを特徴とする絶縁電線。
(2)前記絶縁層が、前記樹脂の押出形成層であることを特徴とする(1)に記載の絶縁電線。
(3)前記絶縁層が前記導体上に接して設けられていることを特徴とする(1)または(2)に記載の絶縁電線。
(4)前記導体上に有する絶縁層が1層であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の絶縁電線。
(5)前記絶縁層の前記導体界面側部分に、前記樹脂とアミノ基を有する化合物、または、前記樹脂とアミノ基を有する化合物との反応物を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の絶縁電線。
(6)前記アミノ基を有する化合物が、少なくとも2個のアミノ基を有することを特徴とする(5)に記載の絶縁電線。
(7)前記アミノ基を有する化合物の含有量が、前記絶縁層を形成する樹脂に対して、2質量%以上20質量%未満であることを特徴とする(5)または(6)に記載の絶縁電線。
(8)前記導体が、銅、または、メッキ銅もしくは銅合金からなることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の絶縁電線。
(9)前記導体が、断面形状が矩形の平角導体であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の絶縁電線。
(10)前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の絶縁電線からなるコイル。
(11)前記(10)に記載のコイルを有する電気・電子機器。
【0010】
(12)導体上に少なくとも1層の絶縁層を有する絶縁電線の製造方法であって、
前記導体上に、前記絶縁層を構成する樹脂を押出し形成する工程を含み、
前記絶縁層を構成する樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンおよびポリケトンから選択される少なくとも1種であり、かつ、
前記絶縁層において、導体界面側部分と絶縁電線表面側部分がいずれも融点を示し、該導体界面側部分と該絶縁電線表面側部分の融点の差の絶対値が10℃以上であることを特徴とする絶縁電線の製造方法。
(13)前記絶縁層を構成する樹脂を押出し形成する工程の前に、前記導体上にアミノ基を有する化合物を分散もしくは付着させることを特徴とする(12)に記載の絶縁電線の製造方法。
(14)前記導体上に、アミノ基を有する化合物を粉末の状態で有することを特徴とする(13)に記載の絶縁電線の製造方法。
(15)前記(12)〜(14)のいずれか1項に記載の絶縁電線の製造方法で製造された絶縁電線でコイルを形成し、該コイルを用いることを特徴とする電気・電子機器の製造方法。
【0011】
本発明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、導体と絶縁層間の密着力が高く、長期加熱劣化が少なく、銅害が抑制され、かつ、簡便で、特殊な装置を必要とせず、安価に多量製造できる絶縁電線、その製造方法、コイル、電気・電子機器および電気・電子機器の製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の絶縁電線の好ましい実施形態の一例を示した概略斜視断面図である。
図2】電気・電子機器に用いられるステータの好ましい実施形態の一例を示した概略斜視図である。
図3】電気・電子機器に用いられるステータの好ましい実施形態の一例を示した概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、絶縁電線から順に説明する。
【0015】
<<絶縁電線>>
本発明の絶縁電線は、導体上に少なくとも1層の絶縁層を有し、該絶縁層を構成する樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)から選択される少なくとも1種である。
しかも、前記絶縁層において、導体界面側部分と絶縁電線表面側部分がいずれも融点を示し、かつ、該導体界面側部分と該絶縁電線表面側部分の融点の差の絶対値が10℃以上である。
本発明の絶縁電線の好ましい実施形態の一例の概略斜視断面図を図1に示した。
ここで、絶縁層2の導体界面側部分2aと絶縁電線表面側部分2bは図1で模式的に示した。
【0016】
図1では、絶縁電線10の導体1を被覆する被覆層は1層の絶縁層2のみであるが、これに限定されるものではない。
なお、図1に示される形態は、本発明の理解を容易にするための模式図であり、各部材の大きさ、厚さ、相対的な大小関係等は説明の便宜上大小を変えている場合があり、実際の関係をそのまま示すものではない。さらに、本発明で規定する事項以外はこれらの図面に示された外形、形状に限定されるものでもない。
【0017】
<導体>
本発明に用いる導体としては、絶縁電線で用いられている通常のものを広く使用することができ、例えば、銅線、アルミニウム線等の金属導体を用いることができる。さらに、細分化した導体を複数備えた分割導体でもよい。
本発明で使用する金属導体は、銅導体が好ましく、銅導体は、銅、または、メッキ銅もしくは銅合金をも含む。
また、銅導体は、好ましくは、酸素含有量が30ppm以下の低酸素銅、さらに好ましくは20ppm以下の低酸素銅または無酸素銅の導体である。酸素含有量が30ppm以下であれば、導体を溶接するために熱で溶融させた場合、溶接部分に含有酸素に起因するボイドの発生がなく、溶接部分の電気抵抗が悪化することを防止するとともに溶接部分の強度を保持することができる。
【0018】
本発明で使用する導体の断面形状は、矩形(正方形を含む平角形状)であっても円形であっても構わないが、矩形の平角導体が好ましい。
平角導体は、円形のものと比較し、巻線時にステータコアのスロットに対する占積率を高めることができる。
平角導体は、角部からの部分放電を抑制する点において、図1に示すように、導体の幅方向断面の4隅に面取り(曲率半径r)を設けた形状であることが好ましい。曲率半径rは、0.6mm以下が好ましく、0.2〜0.4mmがより好ましい。
導体の大きさは、特に限定されないが、平角導体の場合、矩形の断面形状において、幅(長辺)は1.0〜5.0mmが好ましく、1.4〜4.0mmがより好ましく、厚さ(短辺)は0.4〜3.0mmが好ましく、0.5〜2.5mmがより好ましい。幅(長辺)と厚さ(短辺)の長さの割合(厚さ:幅)は、1:1〜1:4が好ましい。一方、断面形状が円形の導体の場合、直径は0.3〜3.0mmが好ましく、0.4〜2.7mmがより好ましい。なお、幅(長辺)と厚さ(短辺)の長さの割合(厚さ:幅)が1:1のとき、長辺とは1対の対向する辺を意味し、短辺とは他の1対の対向する辺を意味する。
【0019】
<絶縁層>
本発明では、導体上に絶縁層を構成する樹脂が、PEEK、PEKおよびPEKKから選択される少なくとも1種である少なくとも1層の絶縁層(以後、本発明の絶縁層と称す)を有する。
絶縁層は複数有してもよいが、本発明の絶縁層の少なくとも1層は、導体に接した絶縁層であることが、導体の酸化を防ぐためにも効果的で好ましい。
また、本発明では、本発明の絶縁層は1層であることが好ましい。
【0020】
本発明の絶縁層を構成する樹脂は、PEEK、PEKおよびPEKKから選択される少なくとも1種で、いずれも熱可塑性樹脂であり、かつ結晶性で融点を有する。
製造メーカーによる種類や品種にもよるが、PEEKの融点は343℃であり、PEKの融点は373℃である。PEKKはテレフタロイル骨格のみや、これにイソフタロイル骨格が含まれたものが存在し、イソフタロイル骨格の含有量にもよるが、融点は、代表的には303℃から400℃を超える範囲である。
【0021】
本発明の絶縁層では、絶縁層の導体界面側部分と絶縁電線表面側部分がいずれも融点を示し、かつ、導体界面側部分と絶縁電線表面側部分の融点の差の絶対値が10℃以上である。
なお、本発明では、融点を示すとは、示差走査熱量計(DSC)で吸熱曲線のピークを有することを意味する。
この融点の差の絶対値は、11℃以上が好ましく、12℃以上がより好ましく、14℃以上がさらに好ましい。
この融点の差の絶対値の上限は、特に制限されるものではないが、現実的には50℃以下であり、40℃以下が好ましく、35℃以下がより好ましい。
特に、本発明では、導体界面側部分の融点が低い場合が好ましい。
【0022】
導体界面側部分と絶縁電線表面側部分の融点の差の絶対値は、絶縁電線の絶縁層の導体界面から厚さで10%までの部分を、また、絶縁層の絶縁電線表面から厚さで10%までの部分を、それぞれミクロトームで採取し、示差走査熱量計〔例えば、(株)島津製作所製のDC60A〕を用い、JIS K 7121に準拠して、昇温速度10℃/分で熱測定を行い、得られた吸熱曲線のピークから融点を求める。
本発明では、測定誤差を低減するため、この操作を5回行い、融点の平均値を求め、小数点以下を四捨五入した値を、測定物の融点とする。
【0023】
導体界面側部分と絶縁電線表面側部分の融点の差の絶対値を10℃以上とするには、どのような方法でも構わないが、導体界面側部分でアミン化合物と樹脂を接触させる方法や、押出機で、押出被覆する際に、導体の加熱温度をヒータ等により絶縁電線表面側の加熱温度より50℃以上、好ましくは100℃以上高くして、押出被覆する方法で行うことができる。
本発明では、導体界面側部分でアミン化合物と樹脂を接触させる方法が好ましい。
【0024】
本発明の絶縁層は、後述するように、特に好ましくは、導体上に、本発明の絶縁層を構成する樹脂を押出し形成する工程を少なくとも含む製造方法で製造される。
導体界面側部分でアミン化合物と樹脂を接触させる方法では、アミノ基を有する化合物が、押出し形成する工程での押出加工温度(例えば、250〜400℃)で、導体界面側部分で、PEEK、PEKおよびPEKKから選択される少なくとも1種の樹脂とアミノ基を有する化合物が接触もしくは部分的に拡散し、さらには、樹脂とアミノ基を有する化合物とが反応する。
このため、製造された絶縁電線では、本発明の絶縁層の少なくとも導体界面側部分には、アミノ基を有する化合物や、樹脂とアミノ基を有する化合物との反応物が存在することになる。
従って、本発明の絶縁層は、特に好ましい態様では、アミノ基を有する化合物や、樹脂とアミノ基を有する化合物との反応物が存在する。
【0025】
アミノ基を有する化合物や、樹脂とアミノ基を有する化合物との反応物の含有量は、アミノ基を有する化合物換算で、本発明の絶縁層を構成する樹脂中に2質量%以上20質量%未満が好ましい。
この含有量が2質量%未満であると、導体と絶縁層間の密着力が劣り、20質量%以上であると、樹脂の硬化が進み、架橋反応が進むことで、逆に曲げ加工性が悪化する。
【0026】
アミノ基を有する化合物は、どのような化合物でも構わない。
このようなアミノ基は、下記で表されるアミノ基が好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
式中、Ra1およびRa2は各々独立に、水素原子または置換基を表す。
置換基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基が挙げられる。
本発明では、Ra1およびRa2のいずれか一方が水素原子の場合が好ましく、いずれも水素原子の場合が特に好ましい。
【0029】
また、本発明では、アミノ基を2個以上有する化合物が好ましく、なかでもアミノ基を2個有する化合物が好ましい。
【0030】
アミノ基を有する化合物は、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、ヘテロ環を含むアミン化合物のいずれでも構わないが、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物が好ましく、芳香族アミン化合物がより好ましい。
このような好ましいアミン化合物は、下記一般式(I)で表される。
【0031】
【化2】
【0032】
一般式(I)において、Lは連結基を表す。
連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−N(Rb)−、−C(=O)−またはこれらを組み合わせた基が好ましい。ここで、Rbは、水素原子または置換基を表し、置換基としては、アルキル基、アリール基が好ましい。これらのアルキル基やアリール基は置換基を有してもよい。
なお、上記の連結基のアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基は置換基で置換されていてもよい。
【0033】
これらを組み合わせた基は、例えば、−アルキレン−アリーレン−アルキレン基、−アリーレン−アルキレン−アリーレン基、−アリーレン−O−アリーレン基、−アリーレン−S−アリーレン基、−アリーレン−C(=O)−アリーレン基、−アリーレン−O−C(=O)−アリーレン基、−アリーレン−C(=O)−O−アリーレン基、−アリーレン−N(Rb)−O−アリーレン基が挙げられる。
【0034】
本発明では、連結基は、アルキレン基、アリーレン基、−アリーレン−アルキレン−アリーレン基、−アリーレン−O−アリーレン基が好ましい。
アルキレン基の炭素数は2〜12が好ましく、3〜10がより好ましく、3〜8がさらに好ましい。
アリーレン基は2価のベンゼン環基、2価のナフタレン環基が挙げられ、2価のベンゼン環基が好ましい。
なお、−アルキレン−アリーレン−アルキレン基、−アリーレン−アルキレン−アリーレン基のように、他の基と組み合わされたアルキレン基では、このアルキレン基の炭素数は1〜12が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。
【0035】
一般式(I)で表されるアミン化合物は、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニル−ジメチルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,4−ヘキサンジアミンおよび1,10−デカンジアミンが挙げられる。
【0036】
本発明の絶縁層の厚さは特に限定されないが、好ましくは30〜300μmであり、より好ましくは40〜250μmである。
【0037】
本発明では、本発明の絶縁層を2層以上有してもよく、本発明の絶縁層以外の絶縁層をさらに有してもよく、接着層等の機能性層を別途設けても構わない。
しかしながら、本発明では、前述のように、導体上の被覆層が本発明の絶縁層1層であることが好ましい。
【0038】
<絶縁電線の製造方法>
本発明では、導体上に少なくとも1層の本発明の絶縁層を有する絶縁電線を、該導体上に、本発明の絶縁層を構成する樹脂を押出し形成する工程を少なくとも含む製造方法で製造される。
これによって、本発明の絶縁層において、導体界面側部分と絶縁電線表面側部分の融点の差の絶対値を10℃以上にすることができる。
【0039】
導体界面側部分と絶縁電線表面側部分の融点の差の絶対値を10℃以上とするには、導体上にアミノ基を有する化合物を分散もしくは付着させ、導体界面側部分でアミン化合物と樹脂を接触させる方法や、押出機で、押出被覆する際に、導体の加熱温度をヒータ等によって、絶縁電線表面側の加熱温度より50℃以上、好ましくは100℃以上高くして、押出被覆する方法がある。
【0040】
本発明では、本発明の絶縁層を構成する樹脂を押出し形成する工程の前に、導体上にアミノ基を有する化合物を分散もしくは付着させる方法が好ましい。
得られた絶縁層において、アミノ基を有する化合物や、樹脂とアミノ基を有する化合物との反応物の含有量が、アミノ基を有する化合物換算で、本発明の絶縁層を構成する樹脂中に2質量%以上20質量%未満となるように、アミノ基を有する化合物を導体上に分散もしくは付着させる。
【0041】
導体上にアミノ基を有する化合物を分散もしくは付着させる方法は、どのような方法でも構わないが、導体上にアミノ基を有する化合物を粉末の状態で有することが好ましい。
導体上にアミノ基を有する化合物を粉末の状態で存在させることで、均一に分散することができる。
【0042】
導体上にアミノ基を有する化合物を粉末の状態で分散もしくは付着させる方法は、スプレー、例えば、スプレーガンの先端にある電極に高電圧がかけられ、ガンと導体との間に電界が発生し、同時にガンから吐出されたアミン化合物の粉体粒子がこの電界内を通過する時に帯電し、アースされた導体に付着する方式のものを使用する方法が挙げられる。
【0043】
本発明の絶縁層を構成する樹脂を押出し形成する工程は、通常の押出機で構わない。
本発明の絶縁層は、導体上に導体と相似形のダイスを使用する。
押出成形する際の押出温度条件は、用いる熱可塑性樹脂に応じて適宜に設定される。好ましい押出温度の一例を挙げると、具体的には、押出被覆に適した溶融粘度にするために融点よりも約40℃から60℃高い温度に押出温度を設定する。このように、温度設定された押出成形によって熱可塑性樹脂の絶縁層を形成する。この場合、熱硬化性樹脂とは異なり、製造工程で絶縁層を形成する際に焼付炉を通す必要がないため、絶縁層の厚さを厚くできる利点がある。
【0044】
<絶縁電線の特性>
本発明の絶縁電線は、電気特性に加え、密着性(導体密着性および層間密着性)に優れる。
導体と絶縁層の密着力は、1N/50mm以上が好ましく、2N/50mm以上がより好ましい。
【0045】
密着力は、JIS Z 0237に基づき、導体と絶縁層間の180℃ピール試験を行うことで求められる。
具体的には、引張試験機〔例えば、(株)島津製作所製のAGS−J〕を使用し、絶縁層である樹脂側をピール速度5mm/minで引っ張り、50mmの長さの粘着力の測定値を平均し、引きはがし粘着力の値として求められる。
【0046】
<<コイル、電気・電子機器およびその製造方法>>
本発明の絶縁電線は、コイルとして、各種電気・電子機器など、電気特性(耐電圧性)や耐熱性を必要とする分野に利用可能である。例えば、本発明の絶縁電線はモータやトランス等に用いられ、高性能の電気・電子機器を構成できる。特にハイブリッドカー(HV)および電気自動車(EV)の駆動モータ用の巻線として好適に用いられる。このように、本発明によれば、本発明の絶縁電線を用いたコイル、そのコイルを用いた電気・電子機器、特にHVやEVの駆動モータを提供できる。また、本発明の絶縁電線は、導体に超電導体を用いることによって、超電導用コイルに用いることができる。この絶縁電線を用いた超電導用コイルは、例えば、超電導磁石として好適に用いることができ、超電導リニアモーターを提供できる。
【0047】
本発明のコイルは、各種電気・電子機器に適した形態を有していればよく、本発明の絶縁電線をコイル加工して形成したもの、本発明の絶縁電線を曲げ加工した後に所定の部分を電気的に接続してなるもの等が挙げられる。
本発明の絶縁電線をコイル加工して形成したコイルとしては、特に限定されず、長尺の絶縁電線を螺旋状に巻き回したものが挙げられる。このようなコイルにおいて、絶縁電線の巻線数等は特に限定されない。通常、絶縁電線を巻き回す際には鉄芯等が用いられる。
【0048】
絶縁電線を曲げ加工した後に所定の部分を電気的に接続してなるものとして、回転電機等のステータに用いられるコイルが挙げられる。このようなコイルは、例えば、図3に示されるように、図1に示す構成を有する本発明の絶縁電線を所定の長さに切断してU字形状等に曲げ加工して複数の電線セグメント54を作製する。そして、各電線セグメント54のU字形状等の2つの開放端部(末端)54aを互い違いに接続してなるコイル53(図2参照)が挙げられる。
【0049】
このコイルを用いてなる電気・電子機器としては、特に限定されない。このような電気・電子機器の好ましい一態様として、例えば、図2に示されるステータ50を備えた回転電機(特にHVおよびEVの駆動モータ)が挙げられる。この回転電機は、ステータ50を備えていること以外は、従来の回転電機と同様の構成とすることができる。
ステータ50は、電線セグメント54が本発明の絶縁電線で形成されていること以外は従来のステータと同様の構成とすることができる。すなわち、ステータ50は、図2に示されるように、ステータコア51と、コイル53とを有している。コイル53は、例えば図3に示されるように、図1に示した構成を有する本発明の絶縁電線からなる電線セグメント54がステータコア51のスロット52に組み込まれ、開放端部54aが電気的に接続されてなる。ここで、電線セグメント54は、スロット52に1本で組み込まれてもよいが、好ましくは図3に示したように2本一組として組み込まれる。このステータ50は、上記のように曲げ加工した電線セグメント54を、その2つの末端である開放端部54aを互い違いに接続してなるコイル53が、ステータコア51のスロット52に収納されている。このとき、電線セグメント54の開放端部54aを接続してからスロット52に収納してもよく、また、絶縁セグメント54をスロット52に収納した後に、電線セグメント54の開放端部54aを折り曲げ加工して接続してもよい。
【0050】
このように、本発明では、本発明の絶縁電線の製造方法で製造された絶縁電線で、上記のようにコイルを形成し、該コイルを用いて電気・電子機器を製造する。
【0051】
本発明の絶縁電線は、特に好ましい態様では、断面形状が矩形の導体を用いることで、例えば、ステータコアのスロット断面積に対する導体の断面積の比率(占積率)を高めることができ、電気・電子機器の特性を向上させることができる。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
使用した素材は以下のものである。
【0054】
〔使用素材〕
(樹脂)
・PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)
ビクトレックスジャパン社製、商品名:450G、比誘電率2.8
・PEK(ポリエーテルケトン)
ビクトレックスジャパン社製、商品名:HT−G22
・PEKK(ポリエーテルケトンケトン)
アルケマ(株)製、商品名:スーパーエンプラPEKK
【0055】
(アミン化合物)
【0056】
【化3】
【0057】
実施例1
図1に示す構造を有する実施例1の絶縁電線を製造した。
【0058】
導体として、断面平角(長辺3.2mm×短辺2.4mmで、四隅の面取りの曲率半径r=0.3mm)の平角導体(酸素含有量15ppmの銅)を用いた。
この導体上に、押出し被覆して形成される絶縁層のPEEK中の含有量が10質量%(導体の単位長さにおける、樹脂被覆質量でのアミン化合物の付着質量)になるように、スプレーでアミン化合物(1)の粉末を付着させた。
スプレーは、スプレーガンの先端にある電極に高電圧がかけられ、ガンと導体との間に電界が発生し、同時にガンから吐出されたアミン化合物の粉体粒子がこの電界内を通過する時に帯電し、アースされた導体に付着する方式のものを使用した。
【0059】
上記のアミン化合物(1)の粉末が付着した導体上に、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(ビクトレックスジャパン社製、商品名:450G)を用い、押出機で、押出ダイを用いて押出被覆した。
押出機のスクリューは、30mmフルフライト、L/D=25、圧縮比3を用い、押出温度条件は次のようにした。
なお、ホッパー側からC1、C2、C3となり、Hはヘッド、Dはダイである。
【0060】
【表1】
【0061】
PEEKの押出被覆を行った後、2秒の時間を空けて水冷して導体の外側に厚さ200μmの絶縁層を形成し、実施例1の絶縁電線を製造した。
【0062】
実施例2〜7、9、比較例1〜3
下記表2、3に記載の樹脂、絶縁層の厚さおよびアミン化合物とその含有量に変更した以外は、実施例1の絶縁電線と同様にして、実施例2〜7、9、比較例1〜3の絶縁電線を製造した。
【0063】
実施例8
実施例1において、下記表2のように、導体上にアミン化合物を付着させないで、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(ビクトレックスジャパン社製、商品名:450G)を用い、押出機で、押出ダイを用いて押出被覆した。
このとき、導体の加熱温度をヒータにより絶縁電線表面側の加熱温度より100℃以上高くして、押出被覆した。
【0064】
〔測定、評価〕
(1)絶縁層の樹脂の融点の測定
絶縁電線の絶縁層の導体界面から厚さで10%までの部分を、また、絶縁層の絶縁電線表面から厚さで10%までの部分を、それぞれミクロトームで採取し、示差走査熱量計(DSC)DC60A〔(株)島津製作所製〕を用い、JIS K 7121に準拠して、昇温速度10℃/分で熱測定を行い、得られた吸熱曲線のピークから融点を求めた。
この操作を5回行い、融点の平均値を求め、小数点以下を四捨五入した値を、測定物の融点とした。
下記表2および3では、絶縁層の導体界面部分の融点を融点1とし、絶縁層の絶縁電線表面部分の融点を融点2として示した。
【0065】
(2)密着力試験(180℃ピール)
室温(25℃)で保管した絶縁電線と200℃で24時間保存した絶縁電線のそれぞれに対し、導体と絶縁層間の密着力を、以下のようにして測定した。
なお、下記表2、3では、「常温密着力」、「200℃24hr加熱後密着力」として示した。
JIS Z 0237に基づき、導体と絶縁層間の180℃ピール試験を行った。
引張試験機AGS−J〔(株)島津製作所製〕を使用し、絶縁層である樹脂側をピール速度5mm/minで引っ張り、50mmの長さの粘着力の測定値を平均し、引きはがし粘着力の値とし、下記基準により評価した。
この値が2N/50mm以上の場合を「A」とし、1N/50mm以上2N/50mm未満を「B」とし 1N/50mm未満を「C」とした。
【0066】
(3)曲げ加工性試験
絶縁電線における導体と絶縁層との密着性を、下記曲げ加工性試験により、加工性を評価した。
製造した各絶縁電線から長さ300mmの直状試験片を切り出した。この直状試験片のエッジ面の絶縁層の中央部に、専用冶具を用いて、長手方向と垂直方向との2方向それぞれに、深さ約5μmで長さ2μmのキズ(切り込み)をつけた(なお、このとき、絶縁層と導体とは密着しており、剥離していない)。ここで、エッジ面とは、平角形状の絶縁電線の断面形状において、短辺(厚さ、図1において上下方向に沿う辺)が軸線方向に連続して形成する面をいう。従って、上記キズは、図1に示される絶縁電線10の左右側面のいずれか一方の側面に、設けられている。
このキズを頂点として、直径1.0mmの鉄芯を軸として直状試験片を180°(U字状)に曲げ、この状態を5分間維持した。直状試験片の頂点付近に発生する導体と絶縁層との剥離の進行を目視で観察した。
本試験において、絶縁層に形成した、いずれのキズも拡張せず、絶縁層が導体から剥離していなかった場合を合格:「A」とした。また、絶縁層に形成したキズの少なくとも1本が拡張して、絶縁層の全体が導体等から剥離した場合を不合格:「C」とした。
【0067】
得られた結果をまとめて、下記表2および3に示す。
ここで、アミン含有量の「−」は0質量%であり、融点差Δの「−」は差が求められないことを意味する。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
上記表2および3から明らかなように、本発明の規定を満たす実施例1〜9の絶縁電線は、いずれも導体と絶縁層間の密着力が高く、しかも、200℃で24時間加熱後の密着力も高く、長期加熱劣化が少ないことがわかる。
また、実施例1〜7および9の絶縁電線は、絶縁層の導体界面にアミン化合物を有することから、絶縁層全体に含有する場合と比較し、少量で効率的、効果的に銅害(銅の酸化)を防止できる。
さらに、実施例1〜7および9の絶縁電線の製造方法が示すように、簡便で、特殊な装置を必要とせず、安価に多量製造できる。
【0071】
アミン化合物にアミノ基が1個の4−フェノキシアニリンを使用した比較例1の絶縁電線では、絶縁層の導体界面側部分と絶縁電線表面側部分の融点の差が1℃と低い。このため、実施例1〜7および9の絶縁電線との比較から、アミン化合物を使用する場合、アミノ基が2個以上のアミン化合物の方が、導体と絶縁層間の密着力を高める効果に優れていることがわかる。
比較例2の絶縁電線は、2個のアミノ基を有するアミン化合物を樹脂に対して30質量%含有させたが、絶縁電線の導体界面側部分の融点が観測されなかった。DSCのチャートから判断して、製造された絶縁電線の絶縁層の樹脂がアミン化合物で硬化が進み、架橋反応が進んだものと考えられる。
逆に、2個のアミノ基を有するアミン化合物の含有量が少ない比較例3の絶縁電線では、融点の差が観測されず、比較例1の絶縁電線並みの性能であった。
【符号の説明】
【0072】
10 絶縁電線
1 導体
2 絶縁層
2a 絶縁層の導体界面側部分
2b 絶縁層の絶縁電線側部分
50 ステータ
51 ステータコア
52 スロット
53 コイル
54 電線セグメント
54a 開放端部
図1
図2
図3