(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の磁極面を設けた場合、ロータが中心位置から径方向に変位したときに、ステータ側の磁極面とロータ側の磁極面との間で当該変位を大きくする方向に吸引力が作用し、ロータの径方向位置の制御性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本開示の目的は、スラスト磁気軸受において、ロータの径方向位置の制御性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、
ステータ(59)と、ロータ(51)とを備えたスラスト磁気軸受(50)を対象とする。
上記ロータ(51)の軸方向の一端面は、径方向内側端部にリング状凹部(53)を有し、かつ該リング状凹部(53)よりも径方向外側の全体が主ロータ磁極面(52)を構成する。上記主ロータ磁極面(52)は、軸方向に直交する1つの平面によって構成される。上記ステータ(59)は、鉄心部(60)と、上記鉄心部(60)内に配置されたコイル(71)とを有する。鉄心部(60)は、円筒状の外筒部(61)と、第1鍔部(62)と、第2鍔部(69)とを有する。上記第1鍔部(62)は、上記外筒部(61)の一端側の内周部から径方向内側に張り出し、上記第1鍔部(62)の径方向内側には、軸方向において上記ロータ(51)側に突出するリング状突出部(63)が形成され、上記リング状突出部(63)の突端面に主ステータ磁極面(64)が構成される。上記主ステータ磁極面(64)は、軸方向に直交する1つの平面によって構成される。
第2鍔部(69)は、上記外筒部(61)の他端側の内周部から径方向内側に張り出し、上記第2鍔部(69)の突端面は、上記ロータ(51)の外周面から所定の距離だけ離れていて、副ステータ磁極面(70)が構成される。上記ロータ(51)の外周面のうち、上記副ステータ磁極面(70)と対向する領域が、副ロータ磁極面(58)を構成する。上記コイル(71)に電流が流れると、
上記コイル(71)の回りに生ずる磁束に起因して上記主ステータ磁極面(64)と上記主ロータ磁極面(52)との間で軸方向の電磁力が発生する一方、
同じく上記コイル(71)の回りに生ずる磁束に起因して上記副ステータ磁極面(70)と上記副ロータ磁極面(58)との間で径方向の電磁力が発生する。上記ロータ(51)が径方向に変位すると、
上記コイル(71)の回りに生ずる磁束に起因して上記副ステータ磁極面(70)と上記副ロータ磁極面(58)との間で上記ロータ(51)に作用する径方向力が上記変位の方向に増加する一方、
同じく上記コイル(71)の回りに生ずる磁束に起因して上記主ステータ磁極面(64)と上記主ロータ磁極面(52)との間で上記ロータ(51)に作用する径方向力が上記変位の方向と逆の方向に増加する。
【0007】
第1の態様では、コイル(71)に電流が流れるときに主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間で生じる軸方向の電磁力によって、ステータ(59)はロータ(51)を非接触に支持する。また、スラスト磁気軸受(50)は、主ステータ磁極面(64)および主ロータ磁極面(52)に加えて、副ステータ磁極面(70)および副ロータ磁極面(58)を備えるので、ロータ(51)を非接触に支持するための軸方向の電磁力を発生させるための磁極面積を十分に確保しつつ、ロータ(51)の直径を比較的小さくすることができる。
【0008】
一方、第1の態様のスラスト磁気軸受(50)は、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間でロータ(51)に作用する径方向力がロータ(51)の径方向における変位の方向と逆の方向に増加するように構成されている。これは、ロータ(51)の径方向における変位を低減しようとするものであり、ロータ(51)の径方向位置の制御性を向上させる。したがって、第1の態様によると、スラスト磁気軸受(50)において、ロータ(51)の径方向位置の制御性を向上させることができる。
【0009】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、上記主ステータ磁極面(64)と上記主ロータ磁極面(52)との間の対向面積は、上記ロータ(51)が径方向に変位すると大きさが変わるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の態様では、ロータ(51)が径方向に変位するとき、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間の対向面積の大きさが変化することで、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間でロータ(51)に作用する径方向力がロータ(51)の径方向における変位の方向と逆の方向に増加する。
【0011】
本開示の第3の態様は、上記第2の態様において、上記主ステータ磁極面(64)と上記主ロータ磁極面(52)との間の対向面積は、上記ロータ(51)が径方向の可動範囲の少なくとも一部において径方向中心側から外側の方向に変位するにしたがって小さくなるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
第3の態様では、ロータ(51)が径方向中心側から外側の方向に変位するとき、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間の対向面積が小さくなることで、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間でロータ(51)に作用する径方向力がロータ(51)の径方向における変位の方向と逆の方向に増加する。
【0013】
本開示の第4の態様は、上記第1〜第3の態様のいずれか1つにおいて、上記主ステータ磁極面(64)は、径方向において磁気抵抗が変化する領域であるステータ磁気エッジ領域(68)を有し、上記主ロータ磁極面(52)は、径方向において磁気抵抗が変化する領域であるロータ磁気エッジ領域(57)を有することを特徴とする。
【0014】
第4の態様では、ロータ(51)が径方向に変位するとき、ステータ磁気エッジ領域(68)とロータ磁気エッジ領域(57)との位置関係が変化することで、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間でロータ(51)に作用する径方向力がロータ(51)の径方向における変位の方向と逆の方向に増加する。
【0015】
本開示の第5の態様は、上記第4の態様において、上記ステータ磁気エッジ領域(68)と上記ロータ磁気エッジ領域(57)とは、軸方向において互いに対向していることを特徴とする。
【0016】
第5の態様では、ロータ(51)が径方向に変位するとき、ステータ磁気エッジ領域(68)とロータ磁気エッジ領域(57)とが径方向において互いにずれる。このため、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間で、ステータ磁気エッジ領域(68)とロータ磁気エッジ領域(57)とが軸方向において互いに対向する位置に戻そうとする方向に径方向力が生じる。
【0022】
本開示の第
6の態様は、ターボ圧縮機(10)を対象とする。このターボ圧縮機(10)は、インペラ(30)が取り付けられて回転駆動されるシャフト(21)と、上記シャフト(21)を非接触に支持する上記第1〜第
5の態様のいずれか1つに係るスラスト磁気軸受(50)とを備える。
【0023】
第
6の態様では、ターボ圧縮機(10)の運転時に、スラスト磁気軸受(50)によって支持されるシャフト(21)およびインペラ(30)が回転する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。なお、各図において、右側(すなわち、インペラ(30)側)を「前側」とし、左側を「後側」とする。
【0026】
−ターボ圧縮機の構成−
図1は、実施形態1に係るターボ圧縮機(10)の構成例を示す。このターボ圧縮機(10)は、電動機(20)と、インペラ(30)と、ラジアル磁気軸受(40)と、スラスト磁気軸受(50)と、制御部(91)と、電源部(92)と、タッチダウン軸受(81)と、ケーシング(11)とを備える。ケーシング(11)は、両端が閉塞された円筒状に形成され、円筒軸線が水平向きとなるように配置されている。ケーシング(11)内の空間は、壁部(14)によって区画され、壁部(14)よりも後側の空間は、電動機(20)、ラジアル磁気軸受(40)、およびスラスト磁気軸受(50)を収容するための駆動機構空間(15)であり、壁部(14)よりも前側の空間は、インペラ(30)を収容するためのインペラ空間(16)である。
【0027】
〈電動機〉
電動機(20)は、シャフト(21)、ロータ(22)、およびステータ(23)を備える。ロータ(22)は、シャフト(21)と同軸状となるようにシャフト(21)に固定されている。また、ロータ(22)は、当該ロータ(22)の外周面が所定の距離を隔ててステータ(23)の内周面に対向するように配置されている。ステータ(23)は、ケーシング(11)の内周面に固定されている。この例では、電動機(20)は、いわゆる永久磁石同期モータであり、シャフト(21)の軸心(O)の方向が水平向きとなるように、駆動機構空間(15)に収容されている。
【0028】
なお、以下の説明において、「軸方向」とは、回転軸方向のことであって、シャフト(21)の軸心(O)の方向のことであり、「径方向」とは、シャフト(21)の軸方向と直交する方向のことである。また、「外周側」とは、シャフト(21)の軸心(O)からより遠い側のことであり、「内周側」とは、シャフト(21)の軸心(O)により近い側のことである。
【0029】
〈インペラ〉
インペラ(30)は、複数の羽根によって外径が略円錐形状となるように形成されている。また、インペラ(30)は、シャフト(21)の一端部(この例では、前側端部)に固定された状態で、インペラ空間(16)に収容されている。インペラ空間(16)には、吸入管(12)および吐出管(13)が接続され、インペラ空間(16)の外周部には、圧縮空間(17)が形成されている。吸入管(12)は、気体を外部からインペラ空間(16)内に導くために設けられ、吐出管(13)は、インペラ空間(16)内で圧縮された高圧の気体を外部へ戻すために設けられている。
【0030】
〈ラジアル磁気軸受〉
ラジアル磁気軸受(40)の各々は、電磁力によりシャフト(21)を非接触に支持するように構成されている。この例では、ラジアル磁気軸受(40)は、軸方向において電動機(20)を挟んで互いに対向するように配置されている。各ラジアル磁気軸受(40)は、シャフト(21)に固定されたロータ(41)と、このロータ(41)と所定の距離を隔てて配置されたステータ(42)とを備える。ステータ(42)は、ケーシング(11)の内周壁に固定されている。
【0031】
〈スラスト磁気軸受〉
スラスト磁気軸受(50)は、電磁力によりシャフト(21)の軸方向位置を非接触で制御するように構成されている。この例では、スラスト磁気軸受(50)は、一方が軸方向においてインペラ(30)と前側のラジアル磁気軸受(40)との間に配置され、他方が軸方向において後側のラジアル磁気軸受(40)の後側に配置されている。各スラスト磁気軸受(50)は、シャフト(21)に固定されたロータ(51)と、このロータ(51)と所定の距離を隔てて配置されたステータ(59)とを備える。ステータ(59)は、ケーシング(11)の内周壁に固定されている。スラスト磁気軸受(50)の構造については後に詳述する。
【0032】
なお、本明細書において「中心位置」とは、スラスト磁気軸受(50)において、ステータ(59)とロータ(51)との間の径方向距離(具体的には、後述する第2鍔部(69)の内周面とロータ(51)の外周面との間の径方向距離)が全周にわたって実質的に一定である位置を言う。
【0033】
〈制御部〉
制御部(91)は、シャフト(21)の位置が所望の位置となるように、ラジアル磁気軸受(40)におけるロータ(41)とステータ(42)との間のギャップを検出可能なギャップセンサ(図示せず)の検出値や、スラスト磁気軸受(50)におけるロータ(51)とステータ(59)との間のギャップを検出可能な
ギャップセンサ(図示せず)の検出値に基づいて、ラジアル磁気軸受(40)に供給する電力を制御するための電力指令値(ラジアル電力指令値)や、スラスト磁気軸受(50)に供給する電力を制御するための電力指令値(スラスト電力指令値)を出力する。例えば、制御部(91)は、マイクロコンピュータ(図示せず)と、マイクロコンピュータを動作させるプログラムとによって構成することが可能である。
【0034】
〈電源部〉
電源部(92)は、制御部(91)からのラジアル電力指令値およびスラスト電力指令値に基づいて、ラジアル磁気軸受(40)およびスラスト磁気軸受(50)に電力をそれぞれ供給する。例えば、電源部(92)は、PWM(Pulse Width Modulation)アンプによって構成することが可能である。
【0035】
〈タッチダウン軸受〉
タッチダウン軸受(81)は、ラジアル磁気軸受(40)におけるステータ(42)とロータ(41)との接触、およびスラスト磁気軸受(50)におけるステータ(59)とロータ(51)との接触を防止するために設けられている。この例では、タッチダウン軸受(81)は、インペラ空間(16)と駆動機構空間(15)とを区画する壁部(14)と、後側のスラスト磁気軸受(50)の後側とに1つずつ設けられているが、タッチダウン軸受(81)の数および配置はこれに限られない。タッチダウン軸受(81)とシャフト(21)との間の径方向距離は、スラスト磁気軸受(50)におけるステータ(59)とロータ(51)との間の径方向距離(具体的には、後述する第2鍔部(69)の内周面とロータ(51)の外周面との間の径方向距離)よりも短い。例えば、タッチダウン軸受(81)は、アンギュラ玉軸受によって構成することが可能である。
【0036】
なお、本明細書中における「スラスト磁気軸受(50)のロータ(51)の径方向の可動範囲」とは、タッチダウン軸受(81)が存在する場合には、当該ロータ(51)の中心位置からシャフト(21)がタッチダウン軸受(81)に接触する位置までの範囲を言い、タッチダウン軸受(81)が存在しない場合には、当該ロータ(51)の中心位置から当該ロータ(51)がステータ(59)に接触する位置までの範囲を言う。
【0037】
−各ロータの直径−
図1に示すように、電動機(20)のロータ(22)と、ラジアル磁気軸受(40)のロータ(41)と、スラスト磁気軸受(50)のロータ(51)とは、互いの直径が実質的に等しい。また、ラジアル磁気軸受(40)のロータ(41)とスラスト磁気軸受(50)のロータ(51)との間には、各ロータ(22,41,51)と実質的に等しい直径を有する円筒状の非磁性リング(80)が配置されている。このように各ロータ(22,41,51)や非磁性リング(80)の直径が互いに実質的に等しいことにより、各ロータ(22,41,51)およびシャフト(21)を1つのユニットとして取り扱うことができ、よってターボ圧縮機(10)の組立工数を削減することができる。
【0038】
−スラスト磁気軸受の構成−
図2は、実施形態1のスラスト磁気軸受(50)の部分断面図である。同図は、前側のスラスト磁気軸受(50)をその半部について示しており、スラスト磁気軸受(50)は、シャフト(21)の軸心(O)に関して軸対称に構成されている。このことは、
図3〜
図5、および
図7,8についても同様である。
【0039】
図2に示すように、スラスト磁気軸受(50)は、上でも述べたように、ステータ(59)およびロータ(51)を備える。
【0040】
ステータ(59)は、ケーシング(11)の内周壁に固定された鉄心部(60)と、この鉄心部(60)内に配置されたコイル(71)とを有する。そして、鉄心部(60)は、外筒部(61)と、第1鍔部(62)と、第2鍔部(69)とを有しており、これらは互いに一体となっている。鉄心部(60)は、例えば電磁鋼板を積層することで構成されていてもよいし、あるいは圧粉磁心等のその他の磁性材料で構成されていてもよい。
【0041】
外筒部(61)は、水平方向に延びる円筒状に形成されていて、その外周面がケーシング(11)の内周壁に固定されている。
【0042】
第1鍔部(62)は、前側のスラスト磁気軸受(50)においては外筒部(61)の前側の内周部から径方向内側に張り出すように形成されている。第1鍔部(62)の突端面(すなわち、径方向内側面)は、シャフト(21)の外周面から所定の距離だけ離れている。第1鍔部(62)の径方向内側部には、軸方向においてロータ(51)側(
図2では左側)に突出するリング状突出部(63)が形成されている。このリング状突出部(63)の突端面(すなわち、
図2で左側の面)は、軸方向に直交する1つの平面によって構成されていて、主ステータ磁極面(64)を構成している。
【0043】
第2鍔部(69)は、前側のスラスト磁気軸受(50)においては外筒部(61)の後側の内周部から径方向内側に張り出すように形成されている。第2鍔部(69)の突端面(すなわち、径方向内側面)は、ロータ(51)の外周面から所定の距離だけ離れていて、円筒状の副ステータ磁極面(70)を構成している。
【0044】
コイル(71)は、第1鍔部(62)と第2鍔部(69)との間に形成される空間にリング状に配置されている。コイル(71)は、電源部(92)に接続されていて、電流が流れることによってステータ(59)およびロータ(51)が構成する磁路中に磁束を発生させるように構成されている。
【0045】
ロータ(51)は、水平方向に延びる円筒状に形成されていて、シャフト(21)が挿通固定されている。ロータ(51)は、例えば電磁鋼板を積層することで構成されていてもよいし、あるいは圧粉磁心等のその他の磁性材料で構成されていてもよい。ロータ(51)の軸方向の一端面(すなわち、ステータ(59)側の面)は、径方向内側端部にリング状凹部(53)が形成されていて、このリング状凹部(53)よりも径方向外側の部分が主ロータ磁極面(52)を構成している。一方、ロータ(51)の外周面における上記第2鍔部(69)の突端面と対向する部分は、副ロータ磁極面(58)を構成している。
【0046】
ステータ(59)の主ステータ磁極面(64)と、ロータ(51)の主ロータ磁極面(52)とは、軸方向において互いに所定の距離を隔てて対向している。主ステータ磁極面(64)の径方向長さと主ロータ磁極面(52)の径方向長さとは、互いに実質的に等しい。ステータ(59)のリング状突出部(63)の径方向内側端(すなわち、主ステータ磁極面(64)の径方向内側端)と、ロータ(51)の主ロータ磁極面(52)の径方向内側端とは、軸方向において互いに対向している。ステータ(59)のリング状突出部(63)の径方向外側端(すなわち、主ステータ磁極面(64)の径方向外側端)と、ロータ(51)の主ロータ磁極面(52)の径方向外側端とは、軸方向において互いに対向している。
【0047】
−ターボ圧縮機の動作−
ターボ圧縮機(10)の運転動作について説明する。電動機(20)に電力が供給されると、電動機(20)のロータ(22)が回転し、これによりシャフト(21)およびインペラ(30)が回転する。そして、インペラ(30)が回転することで吸入管(12)からインペラ空間(16)へ気体が吸入されて圧縮される。圧縮された気体は、吐出管(13)を通ってインペラ空間(16)から吐出される。
【0048】
−スラスト磁気軸受の動作−
スラスト磁気軸受(50)の動作について説明する。スラスト電力指令値に基づいて電源部(92)からコイル(71)に電力が供給されると、ステータ(59)およびロータ(51)が構成する磁路において磁束が生じる。これにより、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間では軸方向の電磁力が発生し、当該軸方向の電磁力によってシャフト(21)を含む回転系が受ける軸方向の負荷を支える。一方、副ステータ磁極面(70)と副ロータ磁極面(58)との間では径方向の電磁力が発生する。
【0049】
ここで、ロータ(51)が実質的に中心位置にあるとき(すなわち、ロータ(51)の外周面とステータ(59)の第2鍔部(69)の突端面との間の距離が全周にわたって実質的に一定であるとき)には、副ステータ磁極面(70)と副ロータ磁極面(58)との間で生じる径方向の電磁力は全周にわたって釣り合っている。一方、ロータ(51)が中心位置から径方向に変位したときには、副ステータ磁極面(70)と副ロータ磁極面(58)との間で生じる径方向の電磁力は、不釣り合いになって当該変位を大きくする方向に作用する。この径方向の変位を大きくするように電磁力が作用する特性が顕著であるほど、ロータ(51)の径方向位置の制御性が低下する(すなわち、ロータ(51)を中心位置に維持することが難しくなる)。
【0050】
これに対し、ロータ(51)が実質的に中心位置にあるときには、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)とが実質的に全面にわたって互いに軸方向に対向している。一方、ロータ(51)が中心位置から径方向に変位したときには、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間に径方向のずれが生じる。例えば、ロータ(51)が
図2の状態から上方に変位したときには、主ロータ磁極面(52)が主ステータ磁極面(64)に対して上方にずれる。この場合、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間では、ロータ(51)に対して径方向の変位と逆の方向に作用する径方向力が発生する。なぜなら、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)とが実質的に全面にわたって互いに軸方向に対向している状態が、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間における磁路の抵抗が最も小さくなる状態であり、その位置から変位すると磁路の抵抗が増え、リラクタンス力が生じるためである。このように、本実施形態のスラスト磁気軸受(50)では、ロータ(51)が径方向に変位すると、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間の対向面積が小さくなり、それにより主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間でロータ(51)に作用する径方向力が当該変位の方向と逆の方向に増加する。
【0051】
−実施形態1の効果−
本実施形態のスラスト磁気軸受(50)は、コイル(71)を有するステータ(59)と、ロータ(51)とを備える。上記ステータ(59)は、主ステータ磁極面(64)と、副ステータ磁極面(70)とを有する。上記ロータ(51)は、上記主ステータ磁極面(64)と対向する主ロータ磁極面(52)と、上記副ステータ磁極面(70)と対向する副ロータ磁極面(58)とを有する。上記コイル(71)に電流が流れると、上記主ステータ磁極面(64)と上記主ロータ磁極面(52)との間で軸方向の電磁力が発生する一方、上記副ステータ磁極面(70)と上記副ロータ磁極面(58)との間で径方向の電磁力が発生する。上記ロータ(51)が径方向に変位すると、上記副ステータ磁極面(70)と上記副ロータ磁極面(58)との間で上記ロータ(51)に作用する径方向力が上記変位の方向に増加する一方、上記主ステータ磁極面(64)と上記主ロータ磁極面(52)との間で上記ロータ(51)に作用する径方向力が上記変位の方向と逆の方向に増加する。
【0052】
本実施形態では、コイル(71)に電流が流れるときに主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間で生じる軸方向の電磁力によって、ステータ(59)はロータ(51)を非接触に支持する。また、スラスト磁気軸受(50)は、主ステータ磁極面(64)および主ロータ磁極面(52)に加えて、副ステータ磁極面(70)および副ロータ磁極面(58)を備えるので、ロータ(51)を非接触に支持するための軸方向の電磁力を発生させるための磁極面積を十分に確保しつつ、ロータ(51)の直径を比較的小さくすることができる。
【0053】
一方、副ステータ磁極面(70)と副ロータ磁極面(58)との間でロータ(51)に作用する径方向力は、ロータ(51)の径方向における変位と同じ方向に増加する。このことは、特許文献1に係るスラスト磁気軸受と同様であり、ロータ(51)の径方向位置の制御性を低下させる要因となる。これに対し、本実施形態のスラスト磁気軸受(50)は、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間でロータ(51)に作用する径方向力がロータ(51)の径方向における変位の方向と逆の方向に増加するように構成されている。これは、ロータ(51)の径方向における変位を低減しようとするものであり、ロータ(51)の径方向位置の制御性を向上させる。したがって、本実施形態によると、スラスト磁気軸受(50)において、ロータ(51)の径方向位置の制御性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態のスラスト磁気軸受(50)は、上記主ステータ磁極面(64)と上記主ロータ磁極面(52)との間の対向面積が、上記ロータ(51)が径方向の可動範囲において中心位置から外側の方向に変位するにしたがって小さくなるように構成されている。したがって、ロータ(51)が中心位置から外側の方向に変位するとき、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間の対向面積が小さくなることで、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間でロータ(51)に作用する径方向力がロータ(51)の径方向における変位の方向と逆の方向に増加する。
【0055】
また、本実施形態のスラスト磁気軸受(50)は、上記ロータ(51)が、円筒状に形成されており、上記円筒状のロータ(51)の軸方向の一端面は、径方向内側端部にリング状凹部(53)を有し、かつ該リング状凹部(53)よりも径方向外側の部分が上記主ロータ磁極面(52)を構成し、上記ステータ(59)が、軸方向において上記ロータ(51)側に突出し、径方向内側端が上記主ロータ磁極面(52)の径方向内側端と軸方向に対向し、かつ径方向外側端が上記主ロータ磁極面(52)の径方向外側端と軸方向に対向するリング状突出部(63)であって、突端面が上記主ステータ磁極面(64)を構成するリング状突出部(63)を有する。
【0056】
したがって、ロータ(51)が中心位置にある場合、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)とは、それぞれの径方向外側端および径方向内側端が互いに軸方向に対向した状態で、互いに対向している。一方、ロータ(51)が径方向において中心位置から変位した場合、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)とが径方向において互いにずれることにより、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間でロータ(51)に作用する径方向力が当該変位の方向と逆の方向に増加する(具体的には、当該逆の方向においてロータ(51)に作用するリラクタンス力が発生する)。
【0057】
また、本実施形態のスラスト磁気軸受(50)は、上記主ロータ磁極面(52)が、軸方向に直交する1つの平面によって構成され、上記主ステータ磁極面(64)が、軸方向に直交する1つの平面によって構成されている。このため、主ロータ磁極面(52)と主ステータ磁極面(64)との間でロータ(51)の変位を大きくするように作用する径方向力が発生せず、また主ロータ磁極面(52)と主ステータ磁極面(64)との間で軸方向の電磁力を効率良く生じさせることができる。
【0058】
−実施形態1の変形例1−
実施形態1の変形例1について、
図3を参照して説明する。本変形例のスラスト磁気軸受(50)は、ステータ(59)とロータ(51)との両方に非磁性体(54,65)を備える。
【0059】
図3に示すように、スラスト磁気軸受(50)のステータ(59)において、リング状突出部(63)の径方向外側面(
図3における上側面)と、外筒部(61)の内周面(
図3における下側面)との間には、扁平リング状の非磁性体(
54)が設けられている。この非磁性体(65)は、例えば樹脂で構成されていてもよい。
【0060】
また、スラスト磁気軸受(50)のロータ(51)において、リング状凹部(53)内に、リング状の非磁性体(
65)が設けられている。この非磁性体(
65)は、例えば樹脂で構成されていてもよい。
【0061】
その他の構成は、上記実施形態1と同様であり、本変形例によっても上記実施形態1と同様の効果が得られる。
【0062】
−実施形態1の変形例2−
実施形態1の変形例2について、
図4を参照して説明する。本変形例のスラスト磁気軸受(50)は、主ステータ磁極面(64)および主ロータ磁極面(52)の形状が上記実施形態1のものと異なる。
【0063】
図4に示すように、スラスト磁気軸受(50)のステータ(59)において、主ステータ磁極面(64)は、径方向外側端部(すなわち、主ロータ磁極面(52)と対向している領域における径方向外側端部)が、径方向外側にいくほどロータ(51)側(
図4では、左側)に向かうように傾斜している。
【0064】
また、スラスト磁気軸受(50)のロータ(51)において、主ロータ磁極面(52)は、径方向外側端部が、径方向外側にいくほどステータ(59)と反対側(
図4では、左側)に向かうように傾斜している。
【0065】
そして、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)とは、上記の傾斜を伴う領域においては軸方向に対して傾いた方向において互いに対向し、かつ上記の傾斜を伴わない領域(すなわち、主ステータ磁極面(64)および主ロータ磁極面(52)が軸方向と直交する領域)においては軸方向において互いに対向している。
【0066】
その他の構成は、上記実施形態1と同様であり、本変形例によっても上記実施形態1と同様の効果が得られる。
【0067】
−実施形態1の変形例3−
実施形態1の変形例3について、
図5を参照して説明する。本変形例のスラスト磁気軸受(50)は、ステータ(59)内およびロータ(51)内に空隙(55,66)が形成されている。
【0068】
図5に示すように、スラスト磁気軸受(50)のステータ(59)において、第1鍔部(62)の径方向の略中央部における主ステータ磁極面(64)の近傍に、リング状のステータ空隙(66)が形成されている。ステータ空隙(66)は、径方向において、径方向内側端の位置がロータ(51)の外周面の位置と実質的に同じである。本変形例では、第1鍔部(62)のロータ(51)側の面のうちステータ空隙(66)よりも径方向内側の部分が主ステータ磁極面(64)を構成している。また、ステータ空隙(66)と主ステータ磁極面(64)との間の軸方向距離は、コイル(71)に所定値以上の電流を流したときに、当該ステータ空隙(66)のロータ(51)側に存在する磁性部(67)で磁気飽和が生じるように設定されていることが好ましい。
【0069】
また、スラスト磁気軸受(50)のロータ(51)において、径方向内側端部における主ロータ磁極面(52)の近傍に、リング状のロータ空隙(55)が形成されている。ロータ空隙(55)は、径方向において、径方向外側端の位置が第1鍔部(62)の径方向内側端の位置と実質的に同じである。本変形例では、ロータ(51)の一端面(すなわち、ステータ(59)側の面)のうちロータ空隙(55)よりも径方向外側の部分が主ロータ磁極面(52)を構成している。また、ロータ空隙(55)と主ロータ磁極面(52)との間の軸方向距離は、コイル(71)に所定値以上の電流を流したときに、当該ロータ空隙(55)のステータ(59)側に存在する磁性部(56)で磁気飽和が生じるように設定されていることが好ましい。
【0070】
その他の構成は、上記実施形態1と同様であり、本変形例によっても上記実施形態1と同様の効果が得られる。
【0071】
−実施形態1の変形例4−
実施形態1の変形例4について、
図6を参照して説明する。本変形例のスラスト磁気軸受(50)は、ステータ(59)の第1鍔部(62)の軸心(O’)がシャフト(21)ないしロータ(51)の軸心(O)から偏心している。
【0072】
図6に示すように、スラスト磁気軸受(50)のステータ(59)において、第1鍔部(62)の軸心(O’)がシャフト(21)ないしロータ(51)の軸心(O)から所定の方向に(この例では、上方向に)所定の距離だけ偏心している。このため、第1鍔部(62)は、
図6においてシャフト(21)の上方にある部分の方が、
図6においてシャフト(21)の下方にある部分よりも、突端面(すなわち、径方向内側面)とシャフト(21)の外周面との間の距離が大きい。一方、第2鍔部(69)の軸心(O)(すなわち、ステータ(59)の軸心(O))は、シャフト(21)ないしロータ(51)の軸心(O)と実質的に一致している。
【0073】
以上の構成により、本変形例のスラスト磁気軸受(50)では、ロータ(51)が径方向における中心位置にある場合であっても、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間で、第1鍔部(62)の偏心方向(この例では上方向)への径方向力(例えば、リラクタンス力を含む径方向力)がロータ(51)に対して作用する。このため、例えばロータ(51)を含む回転系に作用する重力を支えるための力をコイル(71)に電流を流すことで生じさせることができる。
【0074】
その他の構成は、上記実施形態1と同様であり、本変形例によっても上記実施形態1と同様の効果が得られる。
【0075】
《実施形態2》
実施形態2について、
図7を参照して説明する。本実施形態のスラスト磁気軸受(50)は、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との両方に、径方向において磁気抵抗が変化する領域である磁気エッジ領域(57,68)としての凹部(57,68)を備える。
【0076】
図7に示すように、本実施形態のスラスト磁気軸受(50)では、ステータ(59)の第1鍔部(62)のうちロータ(51)の一端面(この例では、前側面)と軸方向に対向する部分が主ステータ磁極面(64)を構成し、ロータ(51)の一端面のうち主ステータ磁極面(64)と軸方向に対向する部分が主ロータ磁極面(52)を構成している。
【0077】
そして、主ステータ磁極面(64)には、ステータ磁気エッジ領域(68)としてのリング状のステータ凹部(68)が形成されている。一方、主ロータ磁極面(52)には、ロータ磁気エッジ領域(57)としてのリング状のロータ凹部(57)が形成されている。ステータ凹部(68)とロータ凹部(57)とは、互いの径方向位置が実質的に同じであって、軸方向において互いに対向している。ただし、ステータ凹部(68)とロータ凹部(57)とは、互いの径方向位置が異なっていてもよい。
【0078】
以上の構成により、本実施形態のスラスト磁気軸受(50)では、ロータ(51)が径方向において中心位置から外側に変位すると、ステータ凹部(68)とロータ凹部(57)との位置関係が変化することによって、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間でロータ(51)に対して当該変位と逆の方向に作用する径方向力(例えば、リラクタンス力を含む径方向力)が生じる。
【0079】
その他の構成は、上記実施形態1と同様であり、本実施形態によっても上記実施形態1と同様の効果が得られる。
【0080】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0081】
例えば、
図8に示すように、主ステータ磁極面(64)および主ロータ磁極面(52)の各々の一部が、ステータ(59)またはロータ(51)を構成する磁性材料よりも透磁率の高い材料である高透磁率材料で構成されていてもよい。この例では、主ステータ磁極面(64)の径方向内側端部と、主ロータ磁極面(52)のうちこれと軸方向に対向する部分とが高透磁率材料で構成されている(
図8において、高透磁率材料で構成されている部分を濃いハッチングで示す)。このような構成により、ロータ(51)が径方向において中心位置から外側に変位した場合、ステータ(59)側の高透磁率材料で構成された部分とロータ(51)側の高透磁率材料で構成された部分との位置関係が変化して、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間でロータ(51)に対して当該変位の方向と逆の方向に作用する径方向力(例えば、リラクランス力を含む径方向力)が生じる。
【0082】
また、各上記実施形態では、スラスト磁気軸受(50)のロータ(51)が径方向において中心位置から外側に変位するにしたがって、主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間でロータ(51)に対して作用する径方向力が当該変位の方向と逆の方向に増加するが、スラスト磁気軸受(50)は、当該ロータ(51)の径方向への変位量が所定の閾値(すなわち、ゼロよりも大きくかつ可動範囲の長さよりも小さな値)を上回った場合にのみ当該径方向力が当該変位の方向と逆の方向に増加するように構成されていてもよい。例えば、ロータ(51)の変位量が当該閾値以下である範囲では主ステータ磁極面(64)と主ロータ磁極面(52)との間の対向面積が実質的に変化しない一方、ロータ(51)の変位量が当該閾値を上回ると当該対向面積が小さくなっていくように、主ステータ磁極面(64)および主ロータ磁極面(52)を設計することが考えられる。
【0083】
また、主ステータ磁極面(64)および主ロータ磁極面(52)の形状は、平面状である必要はなく、その他の任意の形状であってもよい。
【0084】
また、例えば、
図9に示すように、副ステータ磁極面(70)と副ロータ磁極面(58)とは、互いに径方向において対向している必要はなく、径方向に対して傾いた方向において互いに対向していてもよい。
【0085】
なお、スラスト磁気軸受(50)の用途はターボ圧縮機(10)に限定されない。
【0086】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。