特許第6887987号(P6887987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887987ASCの発現、NLRP3の発現、及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成を阻害するためのジアセレイン又はそのアナログ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887987
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】ASCの発現、NLRP3の発現、及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成を阻害するためのジアセレイン又はそのアナログ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/235 20060101AFI20210603BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A61K31/235
   A61P27/02
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-508748(P2018-508748)
(86)(22)【出願日】2016年8月17日
(65)【公表番号】特表2018-523687(P2018-523687A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】US2016047272
(87)【国際公開番号】WO2017031161
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2019年8月6日
(31)【優先権主張番号】62/206,102
(32)【優先日】2015年8月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511107980
【氏名又は名称】ティダブリューアイ・バイオテクノロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TWI Biotechnology, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン・ザ・サード,カール・オスカー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チー−クワン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジン−イー
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ,ウェイ−シュウ
【審査官】 大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−523832(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/007763(WO,A1)
【文献】 特表2012−506911(JP,A)
【文献】 特表2014−507476(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0128317(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0323329(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/003092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ膜炎の治療及び/又は予防を必要とする対象において、ブドウ膜炎を治療及び/又は予防するための医薬組成物であって、
ジアセレイン、レイン、及びそれらの治療的に許容可能な塩からなる群から選択される治療有効量の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項2】
化合物の用量が、1日当たり約5〜500mgである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項3】
対象がヒトである、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ASC(アポトーシス関連スペック様タンパク質含有カスパーゼ動員ドメイン[CARD])の発現、NLRP3(NLRファミリー、パイリンドメイン含有3)の発現、及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成を阻害するための方法に関する。特に、本発明は、ASC及び/又はNLRP3により、及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成により媒介される疾患を、ジアセレイン又はそのアナログを用いることによって治療及び/又は予防する方法に関する。ジアセレイン又はそのアナログを含む医薬組成物も提供される。
【背景技術】
【0002】
ヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン様受容体(NLR)は、通常C−末端のロイシンに富む反復(LRR)ドメイン及びN−末端のエフェクターパイリンドメイン(PYD)又はカスパーゼ動員ドメイン(CARD)を伴う共通の中央ヌクレオチド結合及びオリゴマー化(NACHT)ドメインを共有する3部構造をもつ細胞質受容体の進化的に保存されたファミリーである。病原体関連分子又はダメージ関連分子により活性化されると、NLRはオリゴマー化し、アダプタータンパク質ASC及びシステインプロテアーゼプロカスパーゼ−1を動員し、インフラマソーム複合体を形成し、カスパーゼ−1の自己触媒作用及び活性化を引き起こす。活性なカスパーゼ−1は最終的に前駆体炎症性サイトカインpro−IL−1β及びpro−IL−18をその成熟した分泌型に開裂する。
【0003】
NLRからのインフラマソーム複合体の形成は、遺伝学的に受け継がれた自己炎症性疾患並びに慢性の病気を始めとする広範囲の疾病の発症機序への関与が示唆されている。特に、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、メタボリックシンドローム、及び加齢性黄斑変性症のような病気と関連付けられている。
【0004】
上述の機序に基づいて、NLR又はASC及びインフラマソーム複合体の形成を抑制することは、これらのタンパク質により媒介される疾病を治療する可能性のある方法であると考えられている(Ozaki et al., Journal of Inflammation Research 2015, 8:15−27)。
【0005】
米国特許出願公開第2014/0199320号には、IL−1β阻害剤を始めとする数多くの阻害剤によるIL−1β、NLRP3、ASC、IL−1受容体タイプ1、カスパーゼ−1又はカテプシンBの阻害によってアクネを治療する方法が開示されている。しかしながら、NLRP3及びASCよりはむしろIL−1βの抑制に焦点を当てており、従ってどの阻害剤がNLRP3及びASCに対して直接阻害効果を有するかについては殆ど手掛かりにならない。
【0006】
尚、アナキンラ(組換えIL−1受容体アンタゴニスト)、カナキヌマブ(IL−1β抗体)、リロナセプト(可溶性のおとりIL−1受容体)、IL−18結合性タンパク質、可溶性IL−18受容体及び抗−IL−18受容体モノクローナル抗体を含めて、炎症性の病気を治療するためにIL−1β及びIL−18(インフラマソーム活性化の産物)を標的とする多くの試薬が開発されているが、これらの試薬はIL−1β又はIL−18を抑制するが、NLRP3及びASCを抑制しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0199320号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ozaki et al., Journal of Inflammation Research 2015, 8:15−27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、当技術分野では、NLR又はASCを抑制し、インフラマソーム複合体の形成を阻害することができる特定の方法及び化合物に対するニーズが未だに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者は、ジアセレイン及びそのアナログが、ASC及びNLR(殊にNLRP3)の発現の優れた阻害剤であり、従ってインフラマソーム複合体の形成を減少させることができることを見出した。従って、ジアセレイン及びそのアナログは、ASC及び/又はNLRにより媒介される疾患を治療及び/又は予防するのに使用することができる。
【0011】
本発明の基本的な目的は、ジアセレイン、レイン、モノアセチルレイン、それらの塩、エステル及びプロドラッグ(以後「ジアセレイン又はそのアナログ」という)からなる群から選択される化合物と細胞を接触させることを含む、細胞内でASC発現、NLRP3発現、及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成を阻害する方法を提供することである。
【0012】
本発明のもう1つ別の目的は、ジアセレイン又はそのアナログを、ASC発現、NLRP3発現、及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成の阻害を必要とする対象に投与することを含む、前記対象においてASC発現、NLRP3発現、及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成を阻害する方法を提供することである。
【0013】
本発明の更に別の目的は、ジアセレイン又はそのアナログを、ASC及び/又はNLRP3、及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成により媒介される疾患の治療及び/又は予防を必要とする対象に投与することを含む、前記対象においてASC及び/又はNLRP3、及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成により媒介される疾患の治療及び/又は予防方法を提供することである。
【0014】
本発明のために実施される詳細な技術及び好ましい実施形態を、添付の図面を伴って以下の段落に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、THP−1細胞を尿酸一ナトリウム(MSU)で刺激し、様々な用量のレインで処理した後の蛍光共焦点顕微鏡法のASC及びNLRP3の画像を示す。
図2図2は、THP−1細胞をMSUで刺激し、様々な用量のレインで処理した後のASC染色領域を示す統計棒グラフである。
図3図3は、THP−1細胞をMSUで刺激し、様々な用量のレインで処理した後のNLRP3染色領域を示す統計棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
用語「治療有効量」とは、本明細書で使用されるとき、病気の1以上の症状を軽減又は低減する量を意味する。
【0017】
用語「ジアセレイン又はそのアナログ」とは、本明細書で使用されるとき、ジアセレイン、レイン、モノアセチルレイン、又はその塩若しくはエステル若しくはプロドラッグを意味する。
【0018】
用語「プロドラッグ」とは、本明細書で使用されるとき、身体内でレインに変換することができ、レインの形態でその生理学的な機能を発揮するあらゆる化合物を意味する。
【0019】
本明細書中他に断らない限り、本明細書(殊に後述の特許請求の範囲)で使用される用語「a(an)」、「the」などは、単数形態及び複数形態の両方を包含するものと理解されたい。
【0020】
化学的に、レインは、式(I)の構造を有する9,10−ジヒドロ−4,5−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−2−アントラセンカルボン酸である。そのプロドラッグの1つ、ジアセレインは、式(II)の構造を有する4,5−ビス(アセチルオキシ)−9,10−ジヒドロ−4,5−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−2−アントラセンカルボン酸である。ジアセレインは、体循環に到達する前に、全体がレインに変換され、身体内でレインの形態でその生理学的な機能を発揮する。
式(I)
【0021】
【化1】
式(II)
【0022】
【化2】
【0023】
ジアセレインは、変形性関節症の治療に広く使用されている抗炎症剤であり、インターロイキン−1(IL−1)シグナル伝達を阻害することが立証されている。現在、ジアセレインカプセルは50mg強度で入手可能であり、いろいろな国でArt 50(R)、Artrodar(R)、などを始めとして様々な商品名で販売されている。
【0024】
上に述べたように、本発明の発明者は、ジアセレイン又はそのアナログがASCの発現を阻害し得るということを見出した。従って、本発明は、ジアセレイン、レイン、モノアセチルレイン、それらの塩、エステル及びプロドラッグからなる群から選択される化合物と細胞を接触させることを含む、細胞においてASC発現を阻害する方法を提供する。
【0025】
1つの実施形態において、この方法における細胞はヒトの細胞である。
【0026】
本発明はまた、ジアセレイン又はそのアナログを対象に投与することを含む、ASC発現の阻害を必要とする対象においてASC発現を阻害する方法も提供する。
【0027】
1つの実施形態において、対象はヒトである。
【0028】
好ましくは、ASC発現は、ジアセレイン又はそのアナログによって、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%阻害される。
【0029】
ASCは様々なNLRからのインフラマソーム複合体の形成に関与するので、ジアセレイン又はそのアナログはASC発現を減少させることによってこれらのインフラマソーム複合体の形成を抑制することができ、従ってこれらの複合体により媒介される疾患を治療するのに使用することができる。
【0030】
これまでに、5つの異なるインフラマソーム複合体、即ち、NLRP1、NLRP2、NLRP3、AIM2、及びIPAF/NLRC4が明確に同定されている。各々のインフラマソームはいろいろな刺激に応答して活性化される。NLRファミリーのその他のメンバー、即ちNLRP6、NLRP7及びNLRP12も、ASCと共にインフラマソームを形成し、カスパーゼ−1活性化を引き起こすことが記載されているが、その具体的なリガンドは未だに知られていない。
【0031】
今までのところ、NLRP3インフラマソーム複合体(即ち、NLRP3、ASC及びプロカスパーゼ−1によって形成されるインフラマソーム)は、その特性が最もよく決定されているインフラマソームであり、慢性の疾病の発生と密接な関係を有することが示されている。
【0032】
ジアセレイン又はそのアナログはまた、NLRP3発現を阻害することも判明した。従って、本発明はまた、ジアセレイン又はそのアナログと細胞を接触させることを含む、細胞においてNLRP3発現及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成を阻害する方法にも関する。
【0033】
1つの実施形態において、この方法における細胞はヒトの細胞である。
【0034】
本発明はまた、NLRP3発現及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成の阻害を必要とする対象においてNLRP3発現及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成を阻害する方法であって、ジアセレイン又はそのアナログを前記対象に投与することを含む、方法にも関する。
【0035】
1つの実施形態において、対象はヒトである。
【0036】
好ましくは、NLRP3発現はジアセレイン又はそのアナログにより少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%阻害される。
【0037】
本発明は、更に、対象におけるASC及び/又はNLRP3及び/又はNLRP3インフラマソーム複合体の形成により媒介される疾患の治療及び/又は予防のための方法であって、かかる治療及び/又は予防を必要とする対象に治療有効量のジアセレイン又はそのアナログを投与することを含む方法を提供する。投与により、対象においてASC発現及び/又はNLRP3発現が低減する。
【0038】
1つの実施形態において、対象はヒトである。
【0039】
1つの実施形態において、ジアセレイン又はそのアナログは1日当たり約5〜500mgの用量で投与される。
【0040】
好ましくは、この方法における疾患は、痛風、偽痛風、痛風発作(flare)予防、肥満により誘発されるインシュリン抵抗性、2型糖尿病、アルツハイマー病(AD)、加齢性黄斑変性症(AMD)、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、癌、全身性エリテマトーデス(SLE)、喘息、アレルギー性喘息、接触過敏症、日焼け、UVBにより誘発される皮膚損傷、本態性高血圧症、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、家族性感冒自己炎症性症候群(FCAS)、新生児期発症多臓器系炎症性疾患/慢性乳児神経皮膚関節炎症候群(NOMD/CINCA)、B細胞非ホジキンリンパ腫、急性心筋梗塞、心筋梗塞、アレルギー性鼻炎、鼻ポリープ、自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、多発性硬化症(MS)、ヒト全身性硬化症における皮膚線維症(SSc)、高ホモシステイン血症(hHcys)関連糸球体硬化、末期腎不全(ESRD)、アテローム性動脈硬化症、肝線維症、腎線維症、肺線維症、慢性肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、線維性肺疾患、嚢胞性線維症(CF)、心筋線維化、膵島線維症、慢性腎疾患(CKD)、結晶性腎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、眼ベーチェット病、ブドウ膜炎、乾癬、石綿肺症、珪肺、マラリア、デング熱、細菌感染症、アレルギー性皮膚炎、高酸素肺障害、結膜炎、角膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬性関節炎、白斑、クローン病、肥満に関連するメタボリックシンドローム、炎症関連癌、過敏性皮膚炎、家族性地中海熱(FMF)、家族性アイルランド熱(FHF)、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)、化膿性無菌性関節炎、壊疽性膿皮症、アクネ(PAPA)、全身型若年性特発性関節炎、メバロン酸キナーゼ欠損症(MKD)、表皮水疱症(EB)、表皮融解性魚鱗癬(EI)、及びシュニッツラー症候群(SS)からなる群から選択される。
【0041】
より好ましくは、この方法における疾患は、アレルギー性喘息、接触過敏症、日焼け、UVBにより誘発される皮膚損傷、本態性高血圧症、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、家族性感冒自己炎症性症候群(FCAS)、新生児期発症多臓器系炎症性疾患/慢性乳児神経皮膚関節炎症候群(NOMD/CINCA)、B細胞非ホジキンリンパ腫、急性心筋梗塞、心筋梗塞、アレルギー性鼻炎、鼻ポリープ、自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、多発性硬化症(MS)、ヒト全身性硬化症における皮膚線維症(SSc)、高ホモシステイン血症(hHcys)関連糸球体硬化、末期腎不全(ESRD)、アテローム性動脈硬化症、肝線維症、腎線維症、肺線維症、慢性肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、線維性肺疾患、嚢胞性線維症(CF)、心筋線維化、膵島線維症、慢性腎疾患(CKD)、結晶性腎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、眼ベーチェット病、ブドウ膜炎、乾癬、石綿肺症、珪肺、マラリア、デング熱、細菌感染症、アレルギー性皮膚炎、高酸素肺障害、結膜炎、角膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬性関節炎、白斑、クローン病、肥満に関連するメタボリックシンドローム、炎症関連癌、過敏性皮膚炎、家族性地中海熱(FMF)、家族性アイルランド熱(FHF)、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)、化膿性無菌性関節炎、壊疽性膿皮症、アクネ(PAPA)、全身型若年性特発性関節炎、メバロン酸キナーゼ欠損症(MKD)、表皮水疱症(EB)、表皮融解性魚鱗癬(EI)、及びシュニッツラー症候群(SS)からなる群から選択される。
【0042】
本発明はまた、記載された機序により調節される疾患の治療のための医薬組成物も提供する。本発明の医薬組成物は、これらの組成物の投与の目的を達成するのに充分な治療有効量のジアセレイン又はそのアナログを含む。本発明の医薬組成物は、限定されることはないが錠剤、経口溶液、注射、及びその他一般に使用される剤形を含めてあらゆる適切な剤形であることができる。
【0043】
それを必要とする対象に投与するとき、ジアセレイン又はそのアナログは医薬組成物として製造することができる。本発明の目的に対して使用することが考えられる医薬組成物は、固体、溶液、乳濁液、分散液、ミセル、リポソームなどの形態であることができる。組成物は、静脈内、局所、皮内、筋肉内、経皮、皮下、鼻腔内、非経口、髄腔内、経膣、直腸、結腸、経口、頭蓋内、眼窩後方、又は胸骨内のような当技術分野で公知の何らかの手段を用いて投与することができる。好ましくは、組成物は経口投与に適する。例えば、薬物は錠剤、カプセル、丸薬、トローチ、ロゼンジ、溶液、粉末又は顆粒、懸濁液、硬又は軟カプセル及びその他使用に適したあらゆる形態の製造に適した賦形剤と混合することができる。
【0044】
幾つかの実施形態において、対象は、血液凝固第VIII因子、血液凝固第IX因子、アセトアミノフェン、及び非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えばCOX−2阻害剤からなる群から選択される関連のある疾患の治療に適した1以上の追加の治療薬を同時投与される。
【0045】
NSAIDの例としては、限定されることはないが、イブプロフェン、ケトロラック及びナプロキセンのような2−アリールプロピオン酸、メフェナム酸及びメクロフェナム酸のようなn−アリールアントラニル酸、ピロキシカム及びメロキシカムのようなオキシカム、並びにジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、及びスリンダクのようなアリールアルカン酸がある。COX−2阻害剤の例としては、限定されることはないが、セレコキシブ、エトリコキシブ、ロフェコキシブ、及びバルデコキシブがある。血液凝固第VIII因子及び第IX因子の例としては、限定されることはないが、ヘリキセート(Helixate)、モノクレート(Monoclate)−P、ベリエート(Beriate)、ベネフィクス、オルプロリクス、イデルビオン、及びリクスビスがある。
【0046】
幾つかの実施形態において、ジアセレイン又はそのアナログは本発明の組成物中の唯一の活性剤であることができる。本発明の組成物は当技術分野で一般に使用される医薬添加剤(即ち、不活性な化合物)を含有してもよい。
【0047】
適切な添加剤としては、酸化防止剤、ゲル化剤、pH調節剤/緩衝剤、浸透促進剤、保存料、キレート剤、保湿剤、界面活性剤、乳化剤、増粘剤、溶剤及び安定剤がある。ここで、本発明における添加剤/成分は複数の機能を有していてもよく、例えば、1つの添加剤を界面活性剤及び/又は安定剤及び/又は乳化剤、などとして使用することができる。
【0048】
酸化防止剤の例としては、限定されることはないが、ビタミンC、ビタミンA及びアルファ−リポ酸、パルミチン酸アスコルビル、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、などの1種以上がある。
【0049】
適切なゲル化剤としては、限定されることはないが、グアー、キサンタン、及びカラギーナンガム、アニオン性、非イオン性、カチオン性及び親油性に変性されたグアーガム、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、セルロース樹脂、ポリエチレングリコール、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ポリアルキレンアミン、などの1種以上を挙げることができる。
【0050】
pH調節剤/緩衝剤の例としては、限定されることはないが、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化マグネシウム、乳酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム/重炭酸ナトリウム共沈物、アミノ酸、アルミニウムグリシネート、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酢酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、などの1種以上がある。
【0051】
浸透促進剤の例としては、限定されることはないが、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、カルシポトリエン(cal−cipotriene)、洗剤、皮膚軟化剤、エトキシジグリコール、トリアセチン、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、ラウレス硫酸ナトリウム、ジメチルイソソルビド、ミリスチン酸イソプロピル、中鎖トリグリセリド油(MCT Oil)、メントール、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、モノステアリン酸プロピレングリコール、レシチン、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸、オレイン酸エチル、尿素、オレイン酸グリセリル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、ラウレス4、オレス−2、オレス−20、プロピレンカーボネート、ノノキシノール−9、2−n−ノニル−l,3−ジオキソラン、C7〜C14−ヒドロカルビル置換1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、又はアセタール、及びノノキシノール−15、などの1種以上がある。
【0052】
保存料は、例えば、安息香酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、エチレンジアミン四酢酸、パラオキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、メチル−、エチル−、及び/又はプロピル−パラベンの1種以上であることができる。
【0053】
適切な溶剤の例としては、限定されることはないが、アルコール、ひまし油、アジピン酸ジイソプロピル、エトキシ化アルコール、エチルアルコール、脂肪アルコールクエン酸エステル、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、へキシレングリコール、イソプロピルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、リン酸、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1450、ポリエチレングリコール8000、ポリエチレングリコール1000モノセチルエーテル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシプロピレン15−ステアリルエーテル、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリソルベート、プロピレンカーボネート、プロピレングリコール、精製水、SDアルコール40、飽和脂肪酸のトリグリセリド、などの1種以上がある。
【0054】
適切な安定剤又は界面活性剤は、例えば、イオン性ポリソルベート界面活性剤、Tween20、Tween40、Tween60、Tween80、ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル、(アルキルフェノール−ヒドロキシポリオキシエチレン)、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、アルファ−(4−ノニルフェノール)−オメガ−ヒドロキシ−、分岐(即ち、Tergitol(R)NP−40界面活性剤)、ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル混合物(即ち、Tergitol(R)NP−70(70%AQ)界面活性剤)、フェノキシポリエトキシエタノール及びそのポリマー、例えばTriton(R)、Poloxamer(R)、Spans(R)、Tyloxapol(R)、いろいろなグレードのBrij、ドデシル硫酸ナトリウム、セチルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸ポリオキシル、などの1種以上であることができる。
【0055】
提供される組成物のある成分が上述の関連疾患の治療以外の目的の従来技術の製剤中の活性剤であり得るとしても、その成分は、関連疾患を効果的に治療するのに充分な量で存在しなければ、やはり提供される組成物の目的からは医薬添加剤であると考えられる。
【0056】
ジアセレイン又はそのアナログ及び追加の治療薬は、単一の製剤に含有されてもよいし、又は別々の製剤として同時投与されてもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を参照して本発明を更に例証する。しかしながら、これらの実施例は例示の目的で挙げるのみであり、本発明の範囲を制限することはない。
【0058】
[実施例1]
細胞培養
20mgのレイン粉末を1mLの100%ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かし、0.22μm細孔のろ過膜により滅菌し、使用前−20℃で保存した。尿酸一ナトリウム(MSU)結晶(10mg/mL)を滅菌したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で調製した。アデノシン5’−三リン酸二ナトリウム塩(ATP)をddHOに溶かし、0.22μm細孔のろ過膜により滅菌した。THP−1というヒトの急性単球性白血病細胞株(ATCC(R)TIB−202)を、10%ウシ胎児血清及び1%抗生物質(ペニシリン−ストレプトマイシン−アムホテリシンB)馴化培地を補充したRPMI−1640培地(GIBCO、Life Technologies、Grand Island、USA)に懸濁させた。マクロファージ様分化のために、THP−1細胞を0.1μMのホルボールミリスチルアセテート(PMA)により24時間プライミング処理した。分化したTHP−1細胞を様々な用量のレイン治療(0、5又は10μg/mL)と共に100μg/mLのMSU刺激で6時間培養した。培養上清及び細胞溶解物を集めた。細胞生存率のために、PMAでプライミング処理したTHP−1細胞を、24時間レインインキュベーションの存在下又は不在下でCell Counting Kit−8(CCK−8アッセイ、Sigma−Aldrich、St Louis、USA)によって検出した。細胞接着試験のためには、xCELLigenceリアルタイム細胞分析装置システムを製造業者の説明書に従って実施した。
【0059】
免疫蛍光染色
PMAでプライミング処理したTHP−1細胞(1×10細胞/mL)を0、5又は10μg/mLのレインと共に一晩培養した後、100μg/mLのMSU結晶により6時間刺激した。蛍光共焦点アッセイを実施して、処理後パラホルムアルデヒド固定したTHP−1細胞内のヒトのASC及びNLRP3発現を検出した。Olympus FV1000共焦点顕微鏡を用いて画像を獲得した。ASC(緑色)及びNLRP3(赤色)染色分布の染色領域を定量し、Metamorph分析装置で解析した。DAPIによる核染色との画像の結合(merge)は、ASCとNLRP3(黄色)の共局在化を示す(スケールバー、10μm)。染色切片をPMAのみの群に対して規格化し、任意に1に設定した未処理対照に対する値との相対倍(relative fold)として示した。データは3つの領域をもつ1つの実験から得た(平均±SD)。P−値は対応のない両側t−検定で決定した。
【0060】
結果
NLRP3インフラマソーム活性化中、NLRP3及びASCドメインは細胞内で凝集する。蛍光共焦点アッセイを使用して、レイン治療と共にMSUで刺激されたTHP−1細胞内のNLRP3及びASCタンパク質レベルを測定し、染色領域を定量した。図1〜3に示されているように、免疫蛍光染色の結果は、MSU結晶がNLRP3及びASCタンパク質の発現をアップレギュレートしたことを示していた(それぞれ、P=0.0023及び0.0032)。レイン治療の場合、ASC切片の染色は面積/細胞の平均強度を用量依存的に約64.0%及び79.0%大幅に低減させた(それぞれ、P=0.0011及び0.0022)。加えて、レインはNLRP3レベルをMSUで誘発された炎症における面積/細胞の平均強度で約62.5%及び84.1%阻害した(それぞれ、P=0.014及び0.0012)。
【0061】
この研究は、レインが、ASC及びNLRP3の発現を抑制することにより、ASCスペック及びNLRP3インフラマソーム複合体アセンブリの形成を阻害することを示した。
【0062】
以上の開示は詳細な技術内容及びその発明的特徴に関する。当業者は、本発明の特徴から逸脱することなく、記載された本発明の開示及び示唆内容に基づいて様々な修正及び置換を行うことができよう。しかしながら、かかる修正及び置換が上記記載に完全に開示されていなくとも、それらは以下の添付の特許請求の範囲に実質的に包含される。
図1
図2
図3