特許第6887991号(P6887991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887991
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】化粧品保存用液体濃縮物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20210603BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20210603BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61K47/22
   A61K9/08
   A61K47/10
   A61K47/12
   A61K8/36
   A61K8/365
   A61K8/49
   A61K8/02
   A61Q19/10
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-511392(P2018-511392)
(86)(22)【出願日】2016年8月16日
(65)【公表番号】特表2018-530528(P2018-530528A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】EP2016069429
(87)【国際公開番号】WO2017042001
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年7月19日
(31)【優先権主張番号】102015115024.7
(32)【優先日】2015年9月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518054928
【氏名又は名称】シュルケウント マイヤー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフガンク・ベイルフス
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・グラツケ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・サクロウスキー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ウェバー
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−505192(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/121074(WO,A1)
【文献】 米国特許第05670160(US,A)
【文献】 特表2010−508251(JP,A)
【文献】 特表2011−513266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 9/00
A61K 47/00
CAPLUS/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体濃縮物であって、
a)アリールオキシアルカノールおよびアリールアルカノールから選択される1種以上の芳香族アルコールであって、成分a)の全量が液体濃縮物の重量に基づいて少なくとも50重量%である、1種以上の芳香族アルコール、
b)安息香酸、プロピオン酸、サリチル酸、ソルビン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、デヒドロ酢酸、ギ酸もしくは10−ウンデシレン酸、または前記酸の1種以上の塩から選択される1種以上の酸であって、成分b)の全量が、1種または複数の遊離酸として記載されかつ液体濃縮物の重量に基づいて少なくとも8重量%である、1種以上の酸、および
c)体濃縮物の重量に基づいて少なくとも0.03重量%のオクテニジンジヒドロクロリド
を含んでなる、液体濃縮物。
【請求項2】
前記アリールオキシアルカノールが、フェノキシエタノールまたはフェノキシプロパノールから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の液体濃縮物。
【請求項3】
前記アリールアルカノールが、3−フェニルプロパノール−1、フェネチルアルコール、ベラトリルアルコール、ベンジルアルコールまたは2−メチル−1−フェニル−2−プロパノールであることを特徴とする、請求項1または2に記載の液体濃縮物。
【請求項4】
成分a)の前記全量が、体濃縮物の重量に基づいて55〜90重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体濃縮物。
【請求項5】
前記酸が、安息香酸、プロピオン酸、サリチル酸、ソルビン酸、4−ヒドロキシ安息香酸およびデヒドロ酢酸から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体濃縮物。
【請求項6】
成分b)の前記全量が、1種または複数の遊離酸として記載されかつ体濃縮物の重量に基づいて10〜30重量%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体濃縮物。
【請求項7】
オクテニジンジヒドロクロリドの量が、体濃縮物の重量に基づいて0.04〜0.2重量%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体濃縮物。
【請求項8】
d)1種以上の1−または2−(C〜C24アルキル)グリセロールエーテル
も含んでなることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体濃縮物。
【請求項9】
成分d)の量が、体濃縮物の重量に基づいて0.5〜10重量%であることを特徴とする、請求項8に記載の液体濃縮物。
【請求項10】
e)1種以上の抗酸化剤
も含んでなることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の液体濃縮物。
【請求項11】
前記抗酸化剤が、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(BHA)およびビタミンEならびにその誘導体から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の液体濃縮物。
【請求項12】
成分e)の量が、1〜1000ppm(重量/前記液体濃縮物の重量)であることを特徴とする、請求項10または11に記載の液体濃縮物。
【請求項13】
医薬もしくは皮膚病用製品または化粧品製品を保存するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の液体濃縮物の使用。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の液体濃縮物を含んでなる製品。
【請求項15】
医薬もしくは皮膚病用製品または化粧品製品であることを特徴とする、請求項14に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、a)1種以上の芳香族アルコール、b)1種以上の特定の有機酸またはその塩、およびc)オクテニジンジヒドロクロリドを含んでなる液体濃縮物に関する。液体濃縮物は、医薬製品または化粧品製品を保存するために使用される。さらに、本発明は、濃縮物を含んでなる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品製品は、多くの場合、有機酸またはその塩を含んでなる配合物を使用して保存される。例えば、独国特許出願公開第4026765A号明細書には、カルボン酸またはその塩、芳香族アルコールおよびポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩を含んでなる保存剤が開示される。独国特許出願公開第4026765A号明細書に記載されるポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩の量は、0.1〜20重量%である。さらに、グリセロールエーテルが存在し得る。
【0003】
さらに、安息香酸、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩、デヒドロ酢酸およびフェノキシエタノールを含んでなる、Schuelke&Mayr GmbH(Norderstedt,Federal Republic of Germany)からの製品euxyl(登録商標)K702が既知である。しかしながら、(ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩などの)カチオン性界面活性剤の使用は、特にそれらがシャンプーなどのアニオン性界面活性剤ベースの製品中で相対的に多量に、例えば1重量%で使用される場合、それが沈殿の形成との相互作用をもたらす可能性があるか、または不活性化をもたらす可能性があるために問題である。さらに、EU規制944/2013に従って、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩は、2015年以来、CMR2物質として分類されており、そのため、それらはもはや化粧品中の構成成分として許容されない。
【0004】
独国特許出願公開第19922538A1号明細書は、カルボン酸成分、アルコール成分、溶媒、ならびに任意選択的にさらなる助剤、添加剤および/または活性成分からなり、成分AおよびBの全フラクションが45重量%より多い液体濃縮物を記載している。独国特許出願公開第19922538A1号明細書によれば、(カチオン性物質が好ましくは除外されるが)さらなる活性成分が存在していてもよい。
【0005】
独国特許出願公開第19922538A1号明細書中の実施例配合物は、少なくとも20重量%の有機酸またはその塩を含んでなり、これは、独国特許出願公開第19922538A1号明細書の発明に従って、少なくとも一部が塩の形態である有機酸を使用することによって達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、20重量%より多い有機酸またはその塩の含有量を自動的に含まない、化粧品を保存するための液体濃縮物を提供するという目的に基づいていた。しかしながら、これらの液体濃縮物は、少量で使用される場合でさえ、適切な保存効果を有するべきである。さらに、液体濃縮物は、−5℃の温度でさえ十分に貯蔵安定性であるべきであり、加えて、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩を自動的に含まないべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、この目的は、
a)アリールオキシアルカノールおよびアリールアルカノールから選択される1種以上の芳香族アルコールであって、成分a)の全量が液体濃縮物の重量に基づいて少なくとも50重量%である、1種以上の芳香族アルコール、
b)安息香酸、プロピオン酸、サリチル酸、ソルビン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、デヒドロ酢酸、ギ酸もしくは10−ウンデシレン酸、またはこれらの酸の1種以上の塩から選択される1種以上の酸であって、成分b)の全量が、1種または複数の遊離酸として記載されかつ液体濃縮物の重量に基づいて少なくとも8重量%である、1種以上の酸、および
c)液体濃縮物の重量に基づいて少なくとも0.03重量%のオクテニジンジヒドロクロリド
を含んでなる、本発明による液体濃縮物によって達成されることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の実施形態において、本発明は、液体濃縮物に関する。第2の実施形態において、本発明は、医薬(特に皮膚病用)製品および化粧品製品を保存するための液体濃縮物の使用に関する。第3の実施形態において、本発明は、液体濃縮物を含んでなる製品に関する。
【0009】
本発明による濃縮物は、有効性のために必要とされる成分b)、すなわち有機酸またはその塩の量が必ずしも高くなく、(抗微生物活性成分として存在しない)成分c)オクテニジンジヒドロクロリドが、驚くべきことに、成分a)およびb)の抗微生物有効性を補助することを特徴とする。本発明による液体濃縮物は、さらに、(例えば、5℃の低貯蔵温度でさえも)貯蔵安定性であり、かつ化粧品の保存のために適切な典型的な量において十分に効果的である。
【0010】
a)芳香族アルコール
本発明による液体濃縮物は、a)アリールオキシアルカノールおよびアリールアルカノールから選択される1種以上の芳香族アルコールであって、成分a)の全量が液体濃縮物の重量に基づいて少なくとも50重量%である、1種以上の芳香族アルコールを含んでなる。芳香族アルコールの例は、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、3−フェニルプロパノールおよびフェノキシプロパノールまたはその混合物である。
【0011】
本発明に従って使用されるアリールオキシアルカノールは、好ましくは、式ArO(CHR)OH(式中、Rは、独立して、H(n≧2の場合)またはC〜Cアルキルであり、nは、整数であり、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、特に2または3である)を有する。基Arは、環置換または未置換アリール基であり得るが、好ましくは、未置換アリール、例えばフェニルまたはナフチルである。本発明に従って使用されるアリールオキシアルカノールの例は、フェノキシエタノールおよびフェノキシプロパノールである。好ましいフェノキシプロパノールは、1−フェノキシプロパノール−2、2−フェノキシプロパノール−1またはその混合物および3−フェノキシプロパノール−1である。
【0012】
本発明に従って使用されるアリールアルカノールは、式Ar(CHR)OH(式中、Rは、独立して、HまたはC〜Cアルキルであり、nは、整数であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、特に1、2、3または4である)を有する。基Arは、環置換または未置換アリール基であり得るが、好ましくは、未置換アリール、例えばフェニルまたはナフチルである。アリールアルカノールの例は、3−フェニルプロパノール−1、フェネチルアルコール、ベラトリルアルコール(3,4−ジメトキシフェニルメチルアルコール)、ベンジルアルコールおよび2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、好ましくはフェネチルアルコールまたはベンジルエチルアルコールである。
【0013】
好ましいアルコール成分は、a1)フェノキシエタノールである。代替的に、成分a)は、好ましくは、特にa2)ベンジルアルコールである。さらに代替的に、成分a)は、好ましくはa3)3−フェニルプロパノールである。さらに代替的に、成分a)は、好ましくはa4)フェネチルアルコールである。
【0014】
好ましくは、成分a)の全量、すなわちアリールオキシアルカノールおよびアリールアルカノールから選択される芳香族アルコールの全量は、それぞれの場合に液体濃縮物の重量に基づいて55〜90重量%、好ましくは60〜85重量%、特に65〜80重量%、例えば70〜77重量%、例えば約74重量%である。
【0015】
b)有機酸またはその塩
さらに、本発明による液体濃縮物は、安息香酸、プロピオン酸、サリチル酸、ソルビン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、デヒドロ酢酸、ギ酸もしくは10−ウンデシレン酸、またはこれらの酸の1種以上の塩から選択される1種以上の有機酸であって、成分bの全量が、1種または複数の遊離酸として記載されかつ液体濃縮物の重量に基づいて少なくとも8重量%である、1種以上の有機酸を含んでなる。これらの酸の例は、安息香酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、サリチル酸、10−ウンデシレン酸ならびにその塩およびその混合物である。好ましくは、酸は、安息香酸、プロピオン酸、サリチル酸、ソルビン酸、4−ヒドロキシ安息香酸およびデヒドロ酢酸から選択される。特に好ましい有機酸は、安息香酸、デヒドロ酢酸およびソルビン酸である。
【0016】
非常に好ましい実施形態において、成分b)は、特にb1)安息香酸、b2)デヒドロ酢酸またはb3)安息香酸およびデヒドロ酢酸の組合せである。
【0017】
代替的に、成分b)は、好ましくは、カルボン酸およびカルボン酸塩の組合せであり、例えば、安息香酸および安息香酸ナトリウムの組合せが成分b)として好ましい。
【0018】
好ましくは、成分b)の全量、すなわち指定された有機酸およびその塩の全量は、それぞれの場合に1種または複数の遊離酸として記載されかつ液体濃縮物の重量に基づいて10〜30重量%、好ましくは12〜27重量%、特に14〜25重量%、例えば16〜22重量%である。
【0019】
c)オクテニジンジヒドロクロリド
さらに、本発明による液体濃縮物は、液体濃縮物の重量に基づいて少なくとも0.03重量%のオクテニジンジヒドロクロリドを含んでなる。c)オクテニジンジヒドロクロリドの好ましい最低量は、0.04重量%、特に0.05重量%である。
【0020】
本発明によると、オクテニジンジヒドロクロリドは、抗微生物活性成分として使用されないが、代わりにカチオン性界面活性剤としておよび特に(最終製品で使用される場合に)界面活性を改善するために使用される。オクテニジンジヒドロクロリドの四次構造はpH依存性である。オクテニジンジヒドロクロリドは、ビスピリジニウム塩の形態またはN,N’−(1,10−デカンジイルジ−1(4H)−ピリジニル−4−イリデン)ビス−1−オクタンアミンの形態であり得る。さらに、例えば、独国特許出願公開第19647692A1号明細書に開示されるように、オクテニジンジヒドロクロリドという用語には、化合物の種々のプロトトロープ(prototrope)が含まれる。
【0021】
本発明によれば、水溶液中で製造され(独国特許出願公開第10005853A号明細書の教示と比較されたい)、したがって、例えばジメチルホルムアミドなどの望ましくない有機溶媒を含まないオクテニジンジヒドロクロリドグレードが特に好ましい。
【0022】
好ましくは、本発明による液体濃縮物中のオクテニジンジヒドロクロリドの量は、それぞれの場合に液体濃縮物の重量に基づいて0.04〜0.2重量%、より好ましくは0.05〜0.1重量%、例えば約0.05重量%の範囲である。
【0023】
d)グリセロールモノアルキルエーテル
本発明による液体濃縮物は、さらに好ましくは、d)1種以上の1−または2−(C〜C24アルキル)グリセロールエーテル(グリセロールモノアルキルエーテル)を含んでなる。d)グリセロールモノアルキルエーテルの含有は、本発明による液体濃縮物の水性希釈物の表面張力を改善し(すなわち減少させ)、したがって、本発明による液体濃縮物を保存剤として使用する場合、これらの希釈の結果として湿潤が改善され、それにより抗微生物効果が補助される。
【0024】
本発明に従って任意選択的に使用されるd)グリセロールモノアルキルエーテルの例は、ドデシルグリセロールエーテル、デシルグリセロールエーテル、オクチルグリセロールエーテル、プロピルグリセロールエーテル、オクタデシルグリセロールエーテル(バチルアルコール)、ヘキサデシルグリセロールエーテル(キミルアルコール)およびオクタデニルグリセロールエーテル(セラキルアルコール)など、1位または2位において(すなわち対称または非対称)、飽和または不飽和、分枝または分枝アルキルによって置換されたグリセロールモノアルキルエーテルである。飽和(分枝または非分枝)C〜C18アルキル、特に好ましくは飽和および分枝C〜C12アルキルによる1−モノアルキルグリセロールエーテルが好ましい。1−(2−エチルヘキシル)グリセロールエーテル(エチルヘキシルグリセロール、Schuelke&Mayr GmbH,Norderstedt,Federal Republic of GermanyからのSensiva(登録商標)SC50)が非常に特に好ましい。
【0025】
好ましくは、成分d)の全量は、それぞれの場合に液体濃縮物の重量に基づいて0.5〜10重量%、好ましくは1.0〜5重量%、特に1.5〜2.5重量%、例えば約2重量%である。
【0026】
エチルヘキシルグリセロールは、(最終製品において)界面活性を改善するための両親媒性成分として機能する。オクテニジンジヒドロクロリドとエチルヘキシルグリセロールとの組合せは、界面活性を改善するため、および活性成分(すなわち、a)芳香族アルコールおよびb)酸)の殺微生物有効性を高めるために特に有利である。
【0027】
オクテニジンジヒドロクロリドと、任意選択的に使用されるエチルヘキシルグリセロールとの組合せは、驚くべきことに、成分の強い相互作用を導き、これは、物理化学的特性の変化において、例えばエチルヘキシルグリセロールおよびオクテニジンジヒドロクロリドの水溶性の改善および低い界面活性として出現する。同等に強い相互作用は、ポリビグアニドおよびエチルヘキシルグリセロール間で観察されなかった。
【0028】
グリセロールエーテルおよびオクテニジンジヒドロクロリドの組合せは、低い(動的)表面張力を有し、これと同じことは、芳香族アルコールおよびオクテニジンジヒドロクロリド、または芳香族アルコールおよびグリセロールエーテルの組合せに関しても、特に芳香族アルコールと、グリセロールエーテルと、オクテニジンジヒドロクロリドとの組合せに関しても当てはまる。低い表面張力は、抗微生物有効性に、粒子、ポリマー、繊維、微生物およびバイオフィルムなどの基質の湿潤に(相当な)寄与がある。本発明に従って保存された製品によるワイプのマシンローディングに関して(以下を参照されたい)、低い動的表面張力が有利である。
【0029】
抗微生物活性成分(アルコール成分および酸成分)は、カチオン性オクテニジンジヒドロクロリドおよび両親媒性グリセロールエーテルなどの界面活性添加剤により、それらの殺微生物有効性が有利に支援される。特に、オクテニジンジヒドロクロリドおよび2−エチルヘキシルグリセロールの組合せは、活性成分の殺微生物性有効性の増大を導く。
【0030】
e)抗酸化剤
さらに、e)1種以上の抗酸化剤を含んでなる本発明による濃縮物が好ましい。
【0031】
本発明に従って任意選択的に使用される抗酸化剤は、好ましくは、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、トコフェロール、特にビタミンEおよびその誘導体、特にビタミンEアセテート、ビタミンEリノレエート、ビタミンEニコチネートおよびビタミンEスクシネートなどのビタミンE誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、特にそのメチル、エチル、プロピルまたはブチルエステル、ジメチロールジメチルヒダントインおよびN−アシルアミノ酸ならびにその塩、特にN−オクタノイルグリシンからなる群から選択される。特に、抗酸化剤は、ビタミンEおよびその誘導体、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソールおよび2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールからなる群から選択され、ビタミンEが最も好ましい。
【0032】
トコフェロールは、化粧品および医薬品の製造中の本発明による濃縮物の厳密に制定された規制および毒性試験と関連する用途に関して、特に望ましい抗酸化剤である。
【0033】
好ましい抗酸化剤は、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(BHA)、ビタミンEおよびその誘導体から選択される。非常に特に好ましい成分e)は、ビタミンEである。
【0034】
任意選択的な成分e)の好ましい量、すなわち1種以上の抗酸化剤の全量は、1〜1000ppm、好ましくは5〜500ppm、例えば約10または約200ppm(重量/液体濃縮物の重量)である。
【0035】
任意選択的な成分e)の好ましい量、すなわち1種以上の抗酸化剤の全量は、a)アリールオキシアルカノールを使用する場合、1〜100ppm、好ましくは5〜50ppm、例えば約10ppm(重量/液体濃縮物の重量)である。
【0036】
1種以上のアリールアルカノール、例えばベンジルアルコールまたはフェネチルアルコールが芳香族アルコールとして使用される場合、成分e)の好ましい全濃度は、1〜1000ppm、例えば50〜500ppm、例えば約200ppm(それぞれの場合に重量/液体濃縮物の重量)の抗酸化剤、例えば成分e)としてのビタミンEである。
【0037】
使用
本発明による液体濃縮物は、医薬(特に皮膚病用)製品または化粧品製品を保存するため、例えばシャンプー、ハンドウォッシュローションおよびまたシャワーアンドフォームバスを保存するため、特にウェットワイプエマルジョンを保存するために使用される。
【0038】
製品
さらなる実施形態において、本発明は、液体濃縮物を含んでなる製品、例えば医薬(主に皮膚病用)製品または化粧品製品に関する。典型的に、液体濃縮物は、保存製品の重量に基づいて0.1〜2重量%、好ましくは0.3〜1.5重量%、より好ましくは0.5〜1.0重量%の量、例えば約0.75重量%の量で使用される。
【0039】
本発明による液体濃縮物は、次の利点を提供する:
− カチオン系および非イオン系と関連する非常に良好な適合性および有効性、
− アニオン系における良好な適合性および有効性、
− 硬質および軟質表面の良好な湿潤性、特にワイプ材料の良好な湿潤性、
− 濃縮物は、水含量が低く、かつクロリドイオンが低い。
【0040】
液体濃縮物は、
− ポリマーフラクションを含まず、
− 単一物質を使用するために有利であり、
− ポリアミノプロピルビグアニドを含まず、
− 費用効果が高く、
− 高純度およびグレードの明確な成分を含んでなり、
− 多機能的有効性をもたらし、
− ブースター効果を示し、
− 活性成分として(ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩などの)ポリマーフラクションを自動的に含まず、かつ
− 溶液中に本発明によって規定された成分をもたらすために、水を自動的に含まず(代わりに限定量の水が存在していてもよい)、したがって、濃縮物は容易に貯蔵され得る。
【実施例】
【0041】
化粧品配合物中の化学保存剤の保存効果の決定方法(Koko試験)
下記の試験は、化粧品配合物中の化学保存剤の保存効果を評価するために有益である。
【0042】
原理
上記の方法の補助により、目的は、化粧品配合物のパック保存に関する化学保存剤の有効性を試験することである。この目的のため、種々の実験用バッチにおいて、保存されていない試料に対し、調査される保存剤を異なる濃度で添加する。連続的な菌装填は、実験用バッチの定期的播種によって達成される。播種と平行して、個々のバッチのスミアをそれぞれの場合に直前に実行する。評価は、スミアの微生物生育に関して実行される。微生物生育の最初の出現までの期間が長いほど、保存剤は効果的である。
【0043】
手順
それぞれの場合に25gの試験される化粧品を、スクリュークロージャーを有する広口ボトル中に測量する(LDPE)。調査される保存剤は、それぞれの場合にそれらの使用濃度で個々のバッチに添加される。(調査のために、すでに保存されている試料はさらなる殺生剤添加を受けない。)保存されていない試料は、それぞれの場合に生育制御として機能する。保存剤の添加の2日後、試料を、以下に列挙される試験生体からなる0.1mlの播種溶液で感染させる。播種溶液は、約10〜約10個の菌/mlの滴定量を有する。
【0044】
【表1】
【0045】
次いで、試験バッチを週に1回播種させ、週に1回アガープレート上にこすりつけ(細菌用のカゼインペプトン−ダイズ粉ペプトンアガー(CSA)ならびに酵母およびカビ用のサブロー−デキストロース−アガー(SA))、可能な限り全ての出発汚染を発見するために、第1のスミア(無菌検査)を阻害(TLSH)および非阻害培養媒体上の両方で実行する。スミアの微生物生育の評価は、25℃において3日間のインキュベーション後に実行する。念のため、陰性スミアは、さらに2日間観察しかつ再び評価する。個々の製品濃度の保存効果の評価は、個々のスミアの生育によって半定量的方法で実行される。
【0046】
−=生育なし ++=低生育
+=弱生育 +++=強発育
【0047】
生育は、細菌、酵母およびカビによって異なる(「B」=細菌、「Y」=酵母、「M」=カビ、「Sp」=胞子形成細菌、「/」=試験終了)。実験は、最大6週間、すなわち6回の播種サイクルにわたって実行されるか、または強生育(+++)の複数回後に終了する。
【0048】
結果の評価
試料は、上記の実験室条件下において、試料バッチの微生物の攻撃が生じることなく、6週間耐える場合、すなわち6回の播種後でさえ微生物生育が検出不可能である場合に十分に保存される。1年にわたるこの試験方法の経験から、30カ月より長い化粧品に関して推薦される微生物学的安定性を推論することが可能である。
【0049】
試験された濃縮物
次の濃縮物が試験された(重量%における定量的データ)。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
これらの試験が明らかにするように、保存剤の存在しないベビーワイプ用ポリエチレングリコールフリーエマルジョンは、十分に抗微生物的に備えられない(試験1を参照されたい)。標準的な商業的濃縮物(比較濃縮物A)は、0.75%の使用濃度でこのエマルジョンを微生物的に備えさせる(試験結果2〜4)。さらに、試験結果5〜7が明らかにするように、濃縮物Aに対応するが、0.75%の使用濃度でのポリヘキサメチレンビグアニドを含まない配合物は、エマルジョンを十分に抗微生物的に備えさせない。
【0053】
0.75%の使用濃度における、0.01重量%のみのオクテニジンジヒドロクロリドを有する配合物(濃縮物C)も不十分な保存作用を有する(試験結果8〜10)。対照的に、本発明による液体濃縮物(濃縮物D)は、0.75%の使用濃度において、エマルジョンを十分に抗微生物的に備えさせ(試験結果14〜16)、濃縮物中の0.01重量%超のオクテニジンジヒドロクロリドの存在において効果の改善があり(比較濃縮物BおよびC、ならびに対照的に本発明による濃縮物Dを参照されたい)、したがって、それを備えたエマルジョン中で1.0重量%の使用濃度でさえ、0.05%のオクテニジンジヒドロクロリド自体は抗微生物効果を有さないため(濃縮物Eを参照されたい)、驚くべきことである(試験結果14を参照されたい)。
【0054】
したがって、オクテニジンジヒドロクロリドは、明示された使用濃度において、それ自体では抗微生物効果を有さないが、抗微生物有効性を補助する。