特許第6887994号(P6887994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887994密封可能な洗浄リザーバを有する医療用注射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887994
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】密封可能な洗浄リザーバを有する医療用注射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20210603BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20210603BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A61M5/32 500
   A61M5/32 510D
   A61M5/24 540
   A61M5/20 510
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-514777(P2018-514777)
(86)(22)【出願日】2016年9月19日
(65)【公表番号】特表2018-527123(P2018-527123A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】EP2016072164
(87)【国際公開番号】WO2017050694
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2019年8月8日
(31)【優先権主張番号】15186192.9
(32)【優先日】2015年9月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン, ビョルン グーラック
(72)【発明者】
【氏名】プラムベッシー, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アイレットセン, ラース
(72)【発明者】
【氏名】イナースレウ, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】アルチッラ, ルベン
(72)【発明者】
【氏名】イェンスン, セーレン デュアイング
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/062845(WO,A1)
【文献】 特開昭63−051867(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/117854(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/064100(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/173151(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/20
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防腐剤含有液剤の用量を分配するための医療用注射装置であって、
前記防腐剤含有液剤を収容するカートリッジ(10、110、210、310)を支持するハウジング(102、302)と、
遠位先端(23、123、223、323)を有する遠位部分(22、122、222、322)と、近位部分(21、121、221、321)と、これらの間の長手方向ルーメン(24、124、224、324)とを有する針カニューレ(20、120、220、320)であって、少なくとも注射中に、前記遠位部分(22、122、222、322)が遠位方向に延び、前記近位部分(21、121、221、321)が近位方向に、前記カートリッジ(10、110、210、310)の中に延びるように前記ハウジング(102、302)に対して設置される、針カニューレ(20、120、220、320)と、
前記ハウジング(102、302)に対して第1の位置から第2の位置へ軸方向に移動可能である軸方向に移動可能なシールド(40、140、340、440)であって、前記軸方向に移動可能なシールド(40、140、340、440)は、互いに長手方向に離間している、遠位の穿孔可能なシール(32、132、232、332、432)によって遠位が密封され、近位の穿孔可能なシール(33、133、233、333、433)によって近位が密封される洗浄リザーバ(31、131、231、331、431)を保持し、前記洗浄リザーバ(31、131、231、331、431)には、前記カートリッジ(10、110、210、310)内に存在する防腐剤含有液剤と同じ、ある量の防腐剤含有液剤が充填されており、前記針カニューレ(20、120、220、320)の前記遠位先端(23、123、223、323)は、前記第1の位置において、前記洗浄リザーバ(31、131、231、331、431)内に配置され、前記第2の位置において、前記洗浄リザーバ(31、131、231、331、431)の遠位に配置される、軸方向に移動可能なシールド(40、140、340、440)と
を備え、
前記洗浄リザーバ(31、131、231、331、431)は、前記防腐剤含有液剤が前記洗浄リザーバ(31、131、231、331、431)の充填中に前記洗浄リザーバ(31、131、231、331、431)から出ていくことができるように、出口(53、134、Y、338、438)を有し、前記注射装置は、前記出口(53、134、Y、338、438)を密封する密封手段(52、152、260、370、470)をさらに備え、前記密封手段(52、152、260、370、470)は、一旦、前記洗浄リザーバ(31、131、231、331、431)が充填されて過圧が均一にされると、さらなる防腐剤含有液剤が前記洗浄リザーバ(31、131、231、331、431)から出ていくのを防止するように、前記出口(53、134、Y、338、438)を密封す、医療用注射装置。
【請求項2】
前記出口(53、134、Y、338、438)を密封する前記手段(52、152、260、370、470)は、使用者による操作によって作動される、請求項1に記載の医療用注射装置。
【請求項3】
前記洗浄リザーバ(31、131、231、331、431)は、前記遠位の穿孔可能なシール(32、132、232、332、432)によって遠位が密封され、前記近位の穿孔可能なシール(33、133、233、333、433)により近位が密封されるチューブ構造(30、130、230、330、430)として構成されており、前記チューブ構造(30、130、230、330、430)は、前記軸方向に移動可能なシールド(40、140、340、440)によって保持される、請求項1または2に記載の医療用注射装置。
【請求項4】
前記出口(53、134、338、438)は、オーバーフローチャンバ(51、135;142、372、472)で終端する、請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用注射装置。
【請求項5】
前記洗浄リザーバ(31、131、231、331、431)および前記オーバーフローチャンバ(51、135;142、372、472)は、ルーメン(53、153)を有するチューブ(52、152)によって接続されている、請求項4に記載の医療用注射装置。
【請求項6】
前記軸方向に移動可能なシールド(40)は、前記出口(53)を保持する取り外し可能な部分(50)を備える、請求項5に記載の医療用注射装置。
【請求項7】
前記出口(Y、338、438)は、周囲環境中で終端する、請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用注射装置。
【請求項8】
前記遠位の穿孔可能なシール(232)または前記近位の穿孔可能なシール(233)のうちの一方が、前記チューブ構造(230)から遠位に距離(Y)だけ離れている、請求項7に記載の医療用注射装置。
【請求項9】
前記遠位の穿孔可能なシール(232)または前記近位の穿孔可能なシール(233)を前記離れた距離(Y)だけ互いに向かって移動させることによって、前記洗浄リザーバ(231)が密封される、請求項8に記載の医療用注射装置。
【請求項10】
前記出口(338、438)が、前記洗浄リザーバ(331、431)を半径方向開口部(338、438)を介してオーバーフローチャネル(372、472)に接続する、請求項1から9のいずれか一項に記載の医療用注射装置。
【請求項11】
前記半径方向開口部(338、438)は、シール要素(370、470)によって密封可能である、請求項10に記載の医療用注射装置。
【請求項12】
前記洗浄リザーバ(331、431)を含む前記チューブ構造(330、430)は、前記シール要素(370、470)によって取り囲まれている、請求項11に記載の医療用注射装置。
【請求項13】
前記チューブ構造(330、430)および前記シール要素(370、470)は、互いに対して回転可能である、請求項11または12に記載の医療用注射装置。
【請求項14】
前記シール要素(370、470)および前記チューブ構造(330、430)は、前記互いに対する回転に続いて回転可能にロックされる、請求項13に記載の医療用注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護された針カニューレを有する医療用注射装置に関する。本発明は、特に、保護された針カニューレが反復使用のために設けられ、注射中に使用者の皮膚の中に貫入する針カニューレの遠位先端が、後続の注射と注射との間に洗浄されるような注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
後続の注射と注射の間に針カニューレの先端が洗浄溶媒中に維持される注射装置は、米国特許第3,354,881号、米国特許第4,416,663号、およびWO2014/064100において開示されている。これらの先行技術の注射装置から分かるように、洗浄チャンバまたはリザーバは通常、後続の注射と注射との間に針カニューレの先端を被覆する格納式シールドの遠位に保持される。
【0003】
WO2014/064100は、後続の注射と注射との間に針カニューレの遠位先端を被覆する軸方向に移動可能なシールドを有する充填済みの使い捨て注射装置を開示している。この軸方向に移動可能なシールドは、ばねによって遠位被覆位置へと付勢される。さらに、一実施形態では、軸方向に移動可能なシールドは、後続の注射と注射との間に針カニューレの先端を洗浄する化学消毒剤または殺生物剤などの液体溶媒を収容する中空チャンバを備える。このような洗浄溶媒の例は、WO2014/029018において提供されている。
【0004】
WO2015/062845は、カートリッジの内部に収容された液体医薬品を洗浄溶媒として使用する可能性を開示している。これは、液剤が、しばしばそうであるように防腐剤を含有することを必要とする。一実施形態では、洗浄リザーバは、最初の使用を開始するときに、使用者によって注射装置のカートリッジから直接、液剤が充填される。しかし、洗浄リザーバは製造業者によって充填される可能性もある。
【0005】
後続の注射と注射との間に、針カニューレの遠位先端が洗浄リザーバ内に維持され、近位部分がカートリッジ内に維持される。したがって、液体システムは、洗浄リザーバ、針カニューレのルーメンおよびカートリッジの内部を備える。
【0006】
洗浄リザーバは、WO2015/062845に開示されているように可変容積を有していても、またはWO2015/173151に開示されているように容積が固定されてもよい。いずれの場合においても、カートリッジから防腐剤含有液剤のある体積を洗浄リザーバに移すとき、移される体積は、洗浄リザーバの容積よりも多くなることがあり、その結果、液体システム内に過圧が生じ、これによって、特に最初の注射を行うときに、不正確な用量が吐出され得る。WO2015/173151では、これは、洗浄リザーバをオーバーフローチャンバに接続することによって、または単にその周囲環境にのみ接続することによって解決される。
【0007】
洗浄リザーバが周囲環境に接続されている場合、洗浄リザーバ内に閉じ込められた空気はすべて、洗浄リザーバが液剤で充填されているときに出ていくことができる。しかし、洗浄リザーバが周囲環境に接続されていると、細菌が洗浄リザーバに侵入し得る。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の一目的は、洗浄リザーバを備えた注射装置であって、最初の注射を行う前に洗浄リザーバを充填している間に発生する過圧を自動的に均一にすることによって、液体システム内、特に洗浄リザーバ内の過圧の永続的な蓄積を防止することができる注射装置を提供することである。
【0009】
さらに、洗浄リザーバが充填された後に洗浄リザーバに細菌が侵入するのを防止することが目的である。
【0010】
本発明は、請求項1において定義される。したがって、一態様では、本発明は、好ましくは自己注射によって、使用者が設定用量の液剤を使用者に分配できる医療用注射装置に関する。医療用注射装置は、
− 注射される防腐剤含有液剤を収容する、例えばガラス製であるカートリッジを支持するハウジングと、
− 好ましくはステンレス鋼製であり、長手方向ルーメンとともに遠位部分および近位部分とを有し、好ましくは、鋭利な先端を形成して使用者の皮膚に貫入するように遠位端部が研削されており、少なくとも注射中に、遠位部分が遠位方向に延び、近位部分が近位方向に、カートリッジの中へ延びるように、ハウジングに対して設置される針カニューレと、
− ハウジングに対して第1の展開位置から第2の収縮位置まで伸縮自在に移動可能な軸方向に移動可能なシールドと
を備え、
軸方向に移動可能なシールドは、遠位の穿孔可能なシールによって遠位が密封され、近位の穿孔可能なシールによって近位が密封される洗浄リザーバを保持し、2つのシールは、互いに長手方向に離間して洗浄リザーバを形成し、洗浄リザーバは、カートリッジ内に存在するある量の防腐剤含有液剤を収容する。
【0011】
第1の展開位置では、針カニューレの遠位先端が洗浄リザーバ内に位置したまま維持され、第2の位置では、軸方向に移動可能なシールドは、近位に移動して遠位先端を露出させ、それにより、第2の位置で遠位先端は、洗浄リザーバの遠位に位置する。
【0012】
洗浄リザーバは、防腐剤含有液剤が洗浄チャンバの充填中に洗浄リザーバから出ていくことができるように、出口を備え、さらなる防腐剤含有液剤が洗浄リザーバから出ていくのを防止するように、出口を密封する手段をさらに備える。
【0013】
洗浄リザーバがカートリッジから直接防腐剤含有液体で充填される場合、注射装置における種々の公差により洗浄リザーバ内に防腐剤含有液剤の余剰が存在する可能性があるため、しばしば過圧が液体システム、特に洗浄リザーバ内で生じる。この過圧を排除するために、洗浄リザーバの充填中に空気および薬物を逃がすことができる出口が設けられている。しかしながら、注射装置をさらに後続の注射に使用する場合、洗浄リザーバに充填された薬物が、洗浄溶媒としてのさらなる使用のために洗浄リザーバ内に残るように、洗浄リザーバの充填後に出口を密封することが重要である。
【0014】
したがって、一旦、リザーバが充填され過圧が均一にされると、洗浄リザーバからの出口を密閉することができる密封手段を有することが必要である。
【0015】
これらの密封手段は、多数の異なる方法で想定することができ、それらのいくつかの特定の実施形態を以下で説明する。
【0016】
密封手段は、好ましくは、使用者が作動させる動作によって密封されるように構成される。起動後に洗浄リザーバからの出口を恒久的に密封するために、本発明は、注射装置の初回の使用時に、および注射装置の初回の使用に応じて洗浄リザーバから出口を密封するように作動する密封手段を有することを示唆する。
【0017】
一実施形態では、洗浄リザーバは、遠位の穿孔可能なシールによって遠位が密封され、近位の穿孔可能なシールによって近位が密封されるチューブ構造であって、軸方向に移動可能なシールドによって保持されるチューブ状構造として構成される。このようにして、出口の閉鎖を、軸方向に移動可能なシールドの軸方向への移動に結びつけることができる。
【0018】
洗浄リザーバから空気および液剤の余剰を遠ざける出口は、チャンバ内へ、または周囲環境へと直接導くことができる。周囲環境につながっている場合、追加の滅菌バリアを設けてもよい。
【0019】
一実施例では、出口はオーバーフローチャンバと液体連通しており、出口およびオーバーフローチャンバの両方は、軸方向に移動可能なシールドに結合された取り外し可能な部分として設けられている。取り外し可能な部分は、一実施例では、最初の注射を行う前に使用者が取り外す必要があるカバーであってもよい。したがって、カバーが取り外し可能であるとき、使用者は出口およびオーバーフローチャンバの両方を移動させ、それによって洗浄リザーバを密封する。好ましい実施例では、取り外し可能な部分は、注射装置の保護キャップの一部として形成される。
【0020】
洗浄リザーバとオーバーフローチャンバとの間の接続は、好ましくは、使用者が洗浄リザーバの充填につながる動作を行うことに応じて閉鎖されるか、または他の方法で密封され得るルーメンを有するチューブによって形成される。
【0021】
さらなる実施形態では、遠位が穿孔可能なシールまたは近位のシールのいずれかは、注射装置が使用されていないときにチューブからある距離(Y)だけ離れている。最初の注射を行う動作、すなわち伸縮自在な針シールドを使用者の皮膚に押し付ける動作により、洗浄リザーバを形成するチューブに対してシールを移動させる。この動作は、開いた距離(Y)を閉じることによって、洗浄リザーバを密封する。移動される穿孔可能なシールは、好ましくは、軸方向に移動可能な要素によって保持され、それによって移動される穿孔可能なシールの軸方向への移動を導き、案内する。
【0022】
さらなる実施形態では、洗浄リザーバの密封は、回転可能な移動の結果である。
【0023】
洗浄リザーバは、好ましくは、半径方向開口部によってオーバーフローチャネルに接続される。オーバーフローチャネルは、閉じた区画を形成しても、周囲環境に直接つながっていてもよい。
【0024】
このさらなる実施例では、半径方向開口部は、シール要素を動作させることによって密封することができ、シール部材は、好ましくは、使用者による動作により半径方向開口部を密封することにより洗浄リザーバを密封する位置に移動させることができる。
【0025】
一実施例では、洗浄リザーバは、洗浄リザーバとシール要素との間の相対回転によって密封された位置に持って来ることができるシール要素によって取り囲まれている。したがって、シール要素を半径方向開口部に対して回転させることによって、またはこの逆を行うことによって、半径方向開口部を閉鎖し、密封することが可能である。
【0026】
さらに、針カニューレは、注射装置に恒久的にまたは取り外し可能に接続されたハブに設置され、シール要素は、ハブと洗浄リザーバを形成するチューブとの間に回転可能に挿入される。さらに、一実施例では、ハブは、第1の軸方向への移動中にシール要素をチューブに対して回転させる構成を有する。シール要素が一旦(軸方向および回転方向に)動かされると、さらなる注射時には厳密に軸方向に移動し続ける。したがって、シール要素は、注射装置の最初の動作中に螺旋状に動かさたときに、半径方向開口部を密封する。
【0027】
別の実施例では、シール要素は、ハウジングに回転可能に固定された状態で維持され、洗浄リザーバを構成するチューブ構造は、注射装置を起動するときに回転される。この回転の間、半径方向開口部は、シール要素内部に設けられたシール構造と整列する位置に回転される。このシール構造は、シール要素の内面に設けられたエラストマーであることが好ましい。
【0028】
定義:
「注射ペン」とは通常、やや筆記ペンのような楕円形または細長い形状を有する注射装置である。このようなペンは通常、管状断面を有するが、ペンは三角形、矩形、または正方形、またはこれらの幾何形状の任意の変形等の異なる断面を容易に有することができる。
【0029】
用語「針カニューレ」は、注射中に皮膚の穿孔を行う実際の導管について記述するために使用される。針カニューレは通常、例えば、ステンレス鋼等の金属材料から製造されるが、ポリマー材料またはガラス材料から製造することもできる。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「液剤」は、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液等の制御された方法で中空針等の送達手段を通過可能な任意の薬剤を含む流動性薬物を包含することを意味する。代表的な薬物としては、ペプチド、タンパク質(例えば、インスリン、インスリン類似体、およびC−ペプチド)、およびホルモン、生物学的に誘導された作用物質または活性物質、ホルモン剤および遺伝子に基づく作用物質、栄養フォーミュラ、ならびに(分散された)固体または液体の両方の形態の他の物質等の医薬品が挙げられる。
【0031】
用語「防腐剤含有液剤」は、任意量の防腐剤を含有する任意の液剤を包含することを意味する。薬物中で使用される防腐剤は、多くの場合、メタクレゾールまたはフェノールであるが、どんな種類の防腐剤であってよい。
【0032】
「カートリッジ」は薬物を実際に収容する容器を記述するために使用される用語である。カートリッジは通常、ガラスから製造されるが、任意の好適なポリマーからも成形できる。カートリッジまたはアンプルは好ましくは、例えば針カニューレの患者でない方の端部が穿孔可能な「隔壁」と呼ばれる穿孔可能膜によって一端が密封される。このような隔壁は通常、自己密封式であり、これは、針カニューレが隔壁から取り除かれると穿孔中に形成された開口部が固有の弾性によって自動的に塞がることを意味する。反対側の端部は典型的には、ゴムまたは好適なポリマーから製造されるプランジャまたはピストン等の密封部材によって閉鎖される。プランジャまたはピストンはカートリッジ内部で摺動可能に移動され得る。穿孔可能膜と可動プランジャとの間の空間は、薬物を保持する。薬物は、プランジャにより薬物を保持している空間の体積が減少すると押し出される。しかしながら、剛性または可撓性の任意の種類の容器を使用して、薬物を収容できる。
【0033】
カートリッジは通常、プランジャが内部に移動できない狭い遠位くびれ部を有するため、カートリッジ内部に含まれる液剤すべてが実際に吐出されることは不可能である。したがって、用語「初期定量」または「実質的に使用される」とは、カートリッジに含まれる注射可能な含有量を意味するため、必ずしも含有量全体を意味しない。
【0034】
「洗浄チャンバ」は、本明細書では、後続の注射と注射との間に針カニューレの少なくとも遠位先端を洗浄するための洗浄溶媒を収容する任意の種類のリザーバであることを広く意味する。そのような洗浄チャンバは、好ましくは、穿孔可能な隔壁によって遠位および近位の両方が密封される。しかしながら、穿孔可能な隔壁は、針カニューレの外面に対して密封する任意の種類の密封によって置き換えることができる。遠位隔壁および近位隔壁または洗浄チャンバのシールは、洗浄溶媒を含む閉じ込めを画定し、好ましい実施形態の洗浄溶媒が特定の注射装置に使用される液剤に含有される防腐剤と同一である。最も好ましい解決策では、同一の防腐剤含有液剤が、洗浄チャンバおよび注射装置のカートリッジの両方に存在し、それにより、カートリッジ内の防腐剤含有薬物の汚染を回避する。
【0035】
用語「充填済みの」注射装置とは、液剤を含んだカートリッジが、注射装置の恒久的な破壊なしでは液剤を除去できないように注射装置に恒久的に埋め込まれた注射装置を意味する。カートリッジ内の液剤の充填済み量が使用されると、使用者は通常注射装置全体を廃棄する。これは、カートリッジが空になる度に使用者が自分自身で液剤を含んだカートリッジを交換できる「耐久性のある」注射装置と対立するものである。充填済みの注射装置は通常、複数の注射装置を含むパッケージで販売されるが、耐久性のある注射装置は通常1度に1つずつ販売される。充填済みの注射装置を使用する場合、標準的な使用者は1年に50〜100個もの注射装置を必要とし得るが、耐久性のある注射装置を使用すれば単一の注射装置は数年間持ちこたえられる。しかし、標準的な使用者は1年に50〜100個の新しいカートリッジを必要とすることになる。
【0036】
注射装置と合わせて用語「自動的」を使用することは、注射装置の使用者が投薬中に薬物を吐出するのに必要とされる力を送達することなく注射装置が注射を行うことが可能であることを意味する。この力は通常、電動モータまたはばね駆動によって自動的に送達される。ばね駆動用のばねは通常、用量設定中に使用者が荷重をかけるが、このようなばねは通常、非常に少ない用量しか送達しないという問題を避けるために予荷重がかけられている。あるいは、ばねは製造業者により、複数回の用量により薬物カートリッジ全体を空にするのに十分な予荷重を完全にかけることが可能である。典型的には、使用者は、注射装置の例えば近位端部にある、例えばボタンの形態のラッチ機構を作動させて、注射を行うときにばねに蓄積された力を完全にまたは部分的に解放させる。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「恒久的に接続される」または「恒久的に埋め込まれる」とは、本願においてハウジングに恒久的に埋め込まれたカートリッジとして具現化される部品が、分解するために工具の使用を必要とし、また部品が分解された場合には、部品の少なくとも1つが恒久的な損傷を受けることを意味することが意図される。
【0038】
本明細書にて引用される刊行物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、あたかもそれぞれの参考文献が個々に具体的に参照によって組み入れられ、またその全文が本明細書で説明されるのと同程度に、その全文が参照によって本明細書に参考として組み入れられる。
【0039】
すべての見出しおよび小見出しは、本明細書において便宜的に使用されているにすぎず、いかなる意味でも本発明を制限するものとして解釈してはならない。
【0040】
本明細書で提供される任意のおよびすべての例、または例を挙げるための言葉(例えば「など」)の使用は、単に本発明を分かりやすく例示することを意図したものであって、別途記載がない限り本発明の範囲を制限するものではない。本明細書中のいずれの言葉も、特許請求の範囲に記載されない何らかの要素を、本発明の実施の必須要件であることを示すものと解釈してはならない。本明細書における特許文献の引用および組み入れは、単に便宜的に行われているのであって、このような特許文献の有効性、特許性および/または権利行使可能性の観点には何ら影響を及ぼさない。
【0041】
本発明は、適用法によって許される限り、添付の特許請求の範囲に記載の主題のすべての変形および均等物を含む。
【0042】
本発明は、好ましい実施形態と関連して、図面を参照することにより、以下でより完全に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】洗浄リザーバの充填中の、本発明の第1の実施例による注射装置の遠位端部の断面図である。
図2】洗浄リザーバを密封するために充填後に遠位カバーを取り外すときの、図1のペン型注射装置の遠位端部の断面図である。
図3】洗浄リザーバの充填中の、第2の実施例による注射装置の遠位端部の断面図である。
図4】最初の注射中の、図3の注射装置の遠位端部の断面図である。
図5】最初の注射に続く、図3の注射装置の遠位端部の断面図である。
図6】洗浄リザーバの充填中の、第3の実施例による注射装置の遠位端部の斜視図である。
図7図6の断面図である。
図8】洗浄リザーバの密封中の、図6の注射装置の遠位端部の断面図である。
図9】洗浄リザーバが密封されている、図6の注射装置の遠位端部の断面図である。
図10】注射中の、図6の注射装置の遠位端部の断面図である。
図11】洗浄リザーバの充填中の、第4の実施例による注射装置の遠位端部の斜視図である。
図12】第4の実施形態のチューブ部分の斜視図である。
図13】第4の実施形態の回転可能なシール要素の斜視図である。
図14】第4の実施例における洗浄リザーバの充填中のハブと回転可能なシール要素との係合の切欠図である。
図15】第4の実施例における洗浄リザーバの密封中のハブと回転可能なシール要素との係合の切欠図である。
図16】洗浄リザーバの充填中の、図11の端面図である。
図17】洗浄リザーバの密封中の、図11の端面図である。
図18】第5の実施例による、軸方向に移動可能なシールドに取り付けられた洗浄ユニットの断面図である。
図19図18の洗浄ユニットの分解図である。
図20】洗浄ユニットのための隔膜を打ち抜く手順の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図面は明確さを期して概略的で簡略化されたものであり、本発明の理解に必須である詳細のみを示しており、他の詳細は省略されている。全体を通して、同様の参照符号が、同一または対応する部分に対して使用される。
【0045】
「上部」および「下部」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」、「時計回り」および「反時計回り」のような用語または同様の相対的表現を使用する場合、これらは添付の図面のみを指し示すものであり、実際の使用状況に対するものではない。示される図面は略図であるため、異なる構造の構成およびそれらの相対的寸法は例示目的のためだけに役に立つことが意図される。
【0046】
その関係で、添付図面における用語「遠位端部」は、注射時に使用者の皮膚の方を指し、通常注射針を保持する注射装置の端部を指すことが意図され、それに対し、用語「近位端部」は、通常用量設定ボタンを保持する、注射装置の反対側の端部を指すことが意図されると定義することが便利であろう。「遠位」および「近位」は、注射装置の長手方向軸に沿って延びる軸方向配向に沿っていることを意味し、さらに図に示されている。
【0047】
実施形態1、図1〜2:
図1および図2は、ペン型注射装置1の遠位端部を概略的に開示する。図示されていないハウジングは、注射される液剤が充填されたカートリッジ10を支持する。注射を容易にするために、針カニューレ20は、カートリッジ10内に貫入した近位部分21と、注射中に使用者の皮膚に貫入される遠位先端23を有する遠位部分22とを備える。使用者の皮膚の表面は、概して、以下で「S」によって表される。
【0048】
注射と注射の間に、遠位部分22または少なくとも遠位先端23は、軸方向に移動可能なシールド40によって保持される洗浄リザーバ31内に維持される。この移動可能なシールド40は、注射中に近位方向に移動され、注射それ自体は、移動可能な針シールドの近位移動に応じてカートリッジ10から設定用量の液剤を駆出するように解放されるばねエンジンによってばね駆動され得る。
【0049】
図1から分かるように、針カニューレ20のルーメン24は、少なくとも注射と注射の間に、カートリッジ10の内部11と洗浄リザーバ31との間の液体連通を形成する。
【0050】
この液体連通を用いて、液剤を洗浄リザーバ31に送り込む。注射装置1は、通常、空の滅菌洗浄リザーバ31を用いて使用者に送達される。注射装置1の起動時に、液剤中に存在する防腐剤が、注射と注射の間に針カニューレ20の遠位先端23を清浄にするために使用されるように、所定量の液剤がカートリッジ10から洗浄リザーバ31内に送り込まれる。しかしながら、洗浄リザーバ31に液剤を充填するとき、洗浄リザーバ31に充填された液剤の余剰が出ていくことができなければならないのと同様に、洗浄リザーバ31に閉じ込められた空気は出ていくことができなければならない。
【0051】
シールド40は、矢印「A」によって示されるように、図示されていないハウジングおよびカートリッジ10に対して伸縮自在に移動可能である。さらに、針カニューレ20は、ハブ25に、または恒久的にまたは取り外し可能に図示されていないハウジングに固定された類似の手段によって固定される。針カニューレ20は、ハブ25を使用することなく、ハウジングに恒久的に、かつ直接固定することもできる。
【0052】
洗浄リザーバ31は、軸方向に移動可能なシールド40によって保持された長手方向チューブ30から作られ、注射中に針カニューレ20の遠位先端23によって穿孔される遠位隔膜32によって遠位が密封され、針カニューレ20が貫入する近位隔膜33によって近位が密封される。これらの隔壁32、33は、針カニューレ20の外面に対して密封する任意の種類の密封によって置き換えることができる。
【0053】
最も遠位には、軸方向に移動可能なシールド40は、近位方向に延びるルーメン53を備えたチューブ52を有する中空空間51を含む取り外し可能なカバー50によって閉鎖されている。チューブ52は、可撓性または剛性のいずれであってもよい。
【0054】
このチューブ52は、洗浄リザーバ31と取り外し可能なカバー50の中空空間51との間に液体連通がさらに確立されるように、遠位隔壁32を通って洗浄リザーバ31内に貫入する。
【0055】
あるいは、チューブ52は、チャンバの存在なしに周囲環境に直接つながっていてもよい。チューブ52が直接自由につながっている場合、何らかの他の滅菌手段を設けることもできる。
【0056】
使用者が、好ましくはカートリッジ10の内部11から洗浄リザーバ31に液剤を送り込むことによって、カートリッジ10から液剤を洗浄リザーバ31に充填すると、空気および送り込まれた液剤の余剰分の両方をチューブ52のルーメン53を通して逃がし、中空空間51(または単に周囲環境に)に流入させることができる。その結果、洗浄リザーバ31内の過圧の蓄積は、チューブ52のルーメン53およびオーバーフローチャンバとして機能する中空空間51を介して均一にされる。
【0057】
取り外し可能なカバー50は、使用者が中空空間51の充填を検査することができる透明領域54を遠位に備える。洗浄リザーバ31の充填中、中空空間51内に液剤が存在することは、洗浄リザーバ31が適切に充填されていることを使用者に示す。
【0058】
以後、使用者は、図2に開示されているようにタブ55を引っ張ることによって取り外し可能なカバー50を簡単に取り外すことができ、その後注射装置1の使用準備が整う。簡便さのため、カートリッジ10は図2には示されていない。
【0059】
カバー50は、一実施例では、キャップが取り外されて注射を行うときにカバー54が自動的にとれるように、注射装置1の遠位部分を覆う保護キャップの一部であることができる。
【0060】
カバー50の取り外し後、注射は、針カニューレ20の遠位先端23が遠位隔膜32を通って使用者の皮膚に貫入するように、軸方向に移動可能なシールド40の遠位面41を使用者の体に押し付けることによって行われる。注射それ自体は、自動的にまたは手動で行うことができる。
【0061】
実施形態2、図3〜5:
異なる実施形態が図3図5に開示されており、類似の要素には同じ参照符号が付されているが、番号の前に「1」が付されている。
【0062】
図3で明らかなように、針カニューレ120は、ハウジング102に恒久的にまたは取り外し可能に取り付けられたハブ125に固定されている。
【0063】
使用者が、図3に開示されているように、針カニューレ120のルーメン124を通って洗浄リザーバ131内に液剤を送り込むと、空気および液剤の余剰は、半径方向開口部134を通って、チューブ130に設けられた平行チャンバ135へ内に流入する。この平行チャンバ135を介して、液剤は、チューブ152のルーメン153を通って、軸方向に移動可能なシールド140に設けられたオーバーフローチャンバ142内に流入し、充填中に洗浄リザーバ131内に蓄積される圧力が迅速に均一にされる。
【0064】
洗浄リザーバ131の充填は、注射のために注射装置を準備するときに自動的に、例えば、注射装置のハウジングから保護キャップの取り外しにつなげることにより、行われることが好ましい。
【0065】
図4に開示されるように注射が行われると、軸方向に移動可能なシールド140の遠位面141が使用者の皮膚(図4の「S」で示される)に押し付けられ、したがって、針カニューレ120の遠位先端123は、図4に示すように、遠位隔膜132を通って使用者の皮膚(「S」)に貫入する。
【0066】
同時に、チューブ152の遠位端部156もまた、遠位隔膜132を通って、軸方向に移動可能なシールド140に設けられたチャンバ143に貫入する(図4参照)。このようにして、洗浄リザーバ131が密封される。
【0067】
このように、チューブ152がこの位置に、すなわち、遠位端部156が密封されたチャンバ143に挿入され、それによってオーバーフロー逃し経路が閉鎖される位置に留まるように、種々の摩擦が設計される。
【0068】
注射が終了し、使用者が軸方向に移動可能なシールド140を皮膚(「S」)から取り除くと、軸方向に移動可能なシールド140は、好ましくはハウジングと軸方向に移動可能なシールド140との間に組み込まれている図示されていない圧縮ばねによって遠位方向に付勢される。軸方向に移動可能なシールド140が図5に開示されている初期位置に戻ると、チューブ150の遠位端部156が密封チャンバ143内に維持される。
【0069】
このように、洗浄リザーバ131の内部に過圧を蓄積させるであろう空気および余剰物がオーバーフローチャンバ142に移動するように、洗浄リザーバ131を充填することが可能である。最初の注射の間、洗浄リザーバ131とオーバーフローチャンバ142との間の液体連通は、洗浄リザーバ131が以後恒久的に密封されるように閉鎖される。
【0070】
実施形態3、図6〜10:
さらなる実施形態が図6〜10に開示されている。この第3の実施形態では、類似の要素は、番号の前に「2」を付した上で同じ参照符号を用いて番号付けされる。
【0071】
チューブ230の遠位部分の斜視図が図6に開示されている。チューブ230は、第1の実施形態のように軸方向に移動可能なシールドによって保持されている。遠位隔膜232は、チューブ230と遠位隔膜232との間に隙間「Y」が設けられるため、チューブ230から軸方向に離れた初期位置にある。これはおそらく図7で最もよく分かる。
【0072】
遠位隔膜232は、遠位隔膜232を金属クリップ260に固定する複数の近位方向を指す短いアーム261と、金属クリップ260をチューブ230に固定する複数の長いアーム262とを有する金属クリップ260によって保持される。金属クリップ260の中央には、注射中に針カニューレ220の遠位先端223が貫通する開口部264が設けられている。長いアーム262は、図6および図7に示される初期位置にあり、チューブ230によって半径方向外側に曲げられ、フック263が近位に設けられている。
【0073】
さらに、チューブ230は、後述するように、金属ばね260のフック263が嵌合する複数の窪み243を備えた外面上にある。
【0074】
最初の注射を行う前に、注射装置201は、図6および図7に開示されているように、遠位隔膜232がチューブ230から距離「Y」に配置された状態で使用者に送達される。
【0075】
図7から分かるように、洗浄リザーバ231は、近位隔膜233によって近位が密封され、針カニューレ220の遠位先端223は、洗浄リザーバ231内に配置される。
【0076】
使用者が液剤をカートリッジ210から洗浄リザーバ231内に送り込む(またはこれが自動的に行われる)とき、空気および送り込まれた余剰物は、隙間「Y」を通って出ていくことができ、充填後には洗浄リザーバ231内に過圧は存在しない。
【0077】
隙間「Y」が周囲環境につながっているため、ある種の滅菌環境をチューブ230の周りに提供することができる。
【0078】
使用者が最初の注射を行うと、チューブ230の遠位面239(またはチューブを保持する軸方向に移動可能なシールド)が使用者の皮膚に押し付けられる。この動作により、図8に開示されているように、金属クリップ260、したがって遠位隔膜232を近位方向に移動させる。隙間「Y」が閉じると、図9に開示されるように、金属クリップ260のフック263がチューブ230の窪み243に係合し、それにより、洗浄リザーバ231を密封する。
【0079】
軸方向に移動可能なシールド240の遠位面239を近位方向に移動させる動作は、注射を行うこととは異なる手段でなされてもよい。したがって、チューブ230の遠位面239を近位方向に移動させるための別個の独立した手段が提供されてもよい。
【0080】
使用者が遠位面241を皮膚により強く押し付けると、針カニューレ220の遠位先端223は、図10に開示されるように、遠位隔膜232を通って使用者の皮膚「S」に貫入し、液剤を送達する。
【0081】
最初の注射に続いて、図示されていない圧縮ばねが、チューブ230を保持する軸方向に移動可能なシールドを洗浄リザーバ231とともに図9に開示される初期位置に押し戻し、その後、針カニューレ220の遠位先端223がここでは密封されている洗浄リザーバ231に出入りすることにより、さらなる注射を行うことができる。
【0082】
図6図10に関するさらなる実施例では、本明細書で遠位隔壁232とすべき隔壁が注射装置に当接するように、チューブ230を反転させることができる。そのような実施例では、隙間「Y」は、カートリッジ210に隣接して配置される。
【0083】
実施形態4、図11〜17:
さらに異なる実施形態が図11図17に開示されている。この実施形態では、類似の要素は、番号の前に「3」を付した上で同じ参照符号を用いて番号付けされる。
【0084】
ペン型注射装置の遠位部分が図11に開示されている。針カニューレ320の近位部分321は、カートリッジ310の内部311に挿入されており、針カニューレ320の遠位先端323は、洗浄リザーバ331の内部に設けられる。
【0085】
上記実施形態と同様に、液剤が通って流れ得る長手方向ルーメン324を有する針カニューレ320は、図11に示されるようにハブ325に固定される。
【0086】
洗浄リザーバ331はチューブ330内に形成され、遠位端部は遠位隔膜332によって密封され、近位端部は近位隔膜333によって密封される。中空チューブ330は、軸方向に移動可能なシールド340によって保持され、軸方向に移動可能なシールド340は、ハウジング302と、ハウジング302に固定されたカートリッジ310とに対して伸縮自在である。
【0087】
洗浄リザーバ331を形成するチューブ330は、半径方向開口338をさらに備えており、使用者が、液剤をカートリッジ310の内部311から、針カニューレ320のルーメン324を通って、洗浄リザーバ331内に送り込んだときに、送り込まれた空気および余剰液剤が、この半径方向開口部338を通って流れることができるように、洗浄リザーバ331内の空気および液剤は、半径方向開口338を通って出ていくことができ、それにより、洗浄リザーバ331の内部に過圧が維持されることを防止する。
【0088】
中空チューブ330の周囲には、シール要素370が配置されており、シール要素370は、チューブ330およびシール要素370が互いに対して回転できるように設置されている。図11図16に開示される実施形態では、シール要素370は回転可能な部分であるが、チューブ330が回転可能な部分であることができるように、運動学的な反転が可能である。
【0089】
このシール要素370は、その外面に長手方向トラック371を備える。その使用について説明する。内面には、長手方向窪み372およびゴムシール373が設けられる。
【0090】
ハブ325と回転可能なシール要素370との係合は、図14および図15にさらに開示されている。ハブ325は、複数の(この実施形態では2つの)垂直部材326を備える。これらの垂直部材236は、針ハブ325の周囲に設けられ、遠位には、傾斜面328につながるノーズ327を備える。
【0091】
図11図14および図16は、液剤が洗浄リザーバ331に送り込まれるのと同じ位置での注射装置を示す。見て分かるように、送り込まれた空気および余剰物は、半径方向開口部338を通って窪み372内に出ていくことができる。この位置では、ハブ325の垂直部材326のノーズ327は、回転可能なシール要素370の長手方向トラック371の近位部分に配置される。
【0092】
窪み372は、一実施例では、洗浄リザーバ内の圧力が周囲の大気圧と等しくなることができるように周囲環境につながることができる。
【0093】
使用者が図15の矢印「P」で示す最初の注射を行うと、チューブ330および回転可能なシール要素370はハブ325に対して近位方向に移動する。ハブ325が回転しないように設置されているため、垂直部材326の傾斜面328は、回転可能なシール要素370を強制的に回転させる。
【0094】
回転可能なシール要素370のこの回転によって、窪み372が半径方向開口部338から離れるようにずれ、図15および図17に開示されるように、ゴムシール373を半径方向開口部338の正面に持って来ることによって洗浄リザーバ330を密封する。半径方向開口部338は、ゴムシール373に対してしっかりとした圧縮を生み出す密封リブをさらに備えることができる。
【0095】
続く注射では、回転可能なシール要素370は、使用者が最初の注射を行った後、洗浄リザーバ331が恒久的に密封されるようにその回転位置を維持する。この目的のために、回転可能なシール要素370は、回転可能なシール要素370が図15および図17に開示される回転位置になった後、さらなる回転を防止する図示されていない一方向機構を備えることができる。
【0096】
実施形態5、図18〜19:
閉鎖バルブのさらなる実施形態が図18および図19に開示されており、類似の要素は、番号の前に「4」を付した上で同じ参照符号を用いて番号付けされる。
【0097】
図18は、遠位隔膜432および近位隔膜433を備えた洗浄ユニットを開示している。これらの2つの隔膜432、433は、スペーサ要素480によって正確な距離に保たれ、隔壁432、433およびスペーサ要素480の両方がチューブ430に固定される。チューブ430は、好ましくは、チューブ430が軸方向に移動可能なシールド440と一緒に移動するように、軸方向に移動可能なシールド440に遠位が溶接される。
【0098】
製造中、シールド440とチューブ430とが一緒に溶接されると、しっかりとした密封が提供されるように、2つの隔壁432、433およびスペーサ要素480に圧力が印加される。
【0099】
チューブ430およびスペーサ要素480の両方は、半径方向開口部438を備え、半径方向開口部438を通って空気および余剰の液剤が洗浄リザーバの充填中に出ていくことができる。
【0100】
チューブ430の周囲にはシール要素470がある。前述の実施形態と同様に、シール要素470は、長手方向トラック472およびゴムシール473を備える。
【0101】
注射装置が使用者に送達されると、半径方向開口部438は、空気および余剰液剤が洗浄リザーバ431の充填中に出ていくことができるように、開いた長手方向トラック472の方を向く。
【0102】
長手方向トラック472は、閉鎖されたトラックであっても、または洗浄リザーバ内の圧力が周囲の大気圧と等しくなるように周囲環境につながっていてもよい。
【0103】
注射装置の起動中、ゴムシール473が半径方向開口部438を覆い、したがって洗浄リザーバ431を密封する位置にゴムシール473が来るように、チューブ430およびシール要素470が互いに対して回転される。
【0104】
欧州特許出願第16177273.6号に開示された特定の実施形態では、シール要素470は、リブ475によって回転固定されるのに対し、シールド440およびチューブ430は、起動中に回転する。半径方向開口部438が、軸方向に移動可能なシールド440、したがってチューブ430の回転によって密封されると、チューブ430およびシール要素470は、半径方向開口部438が将来の注射中に密封されたままであるように、摩擦によって、または図示しないクリック機構によって互いに対してロックされる。
【0105】
隔膜、図20
図18に開示されるように、2つの隔壁432、433は、組み立て中に軸方向に押圧される。隔壁432、433が軸方向の圧力を受けると、隔壁432、433はエラストマー材料で製造されているため、直径は半径方向に広がる。半径方向に十分な空間が利用可能であることを確実にするために、その直径は、隔壁が嵌合される区画の領域の直径よりもいくらか小さくなければならない。
【0106】
これらの隔壁432、433を製造するために、図20に開示された手順が使用される。
【0107】
第1のツール501をまず使用して、エラストマープレート502の一部を、洗浄ユニットに圧入されたときに隔壁432、433が有する高さに等しい高さ「h」まで押圧する。第1のツール501がプレート502を高さ「h」まで押圧した後、打ち抜きツール503がエラストマープレート502から隔壁532を打ち抜く。
【0108】
第1のツール501および打ち抜きツール503が後退すると、隔膜532は、エラストマープレート502の最初の高さまで軸方向に膨張する。しかし、膨張するとき、直径は、直径が配置される予定だと考えられる区画に嵌合するように半径方向に収縮する。
【0109】
いくつかの好ましい実施形態を上で示したが、本発明はこれらに限定されないが、以下の特許請求の範囲に定義される主題の範囲内における他の方法で具現化されてもよいことが強調されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20