特許第6888013号(P6888013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6888013AL(1−x)Si(x)Oゲート絶縁体を有するエンハンスメントモードIII族窒化物デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6888013
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】AL(1−x)Si(x)Oゲート絶縁体を有するエンハンスメントモードIII族窒化物デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20210603BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20210603BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20210603BHJP
   H01L 21/337 20060101ALI20210603BHJP
   H01L 29/808 20060101ALI20210603BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20210603BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20210603BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
   H01L29/80 W
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 618E
   H01L29/78 617T
   H01L29/78 618C
   H01L29/78 617V
   H01L29/78 627F
   H01L29/78 627B
   H01L29/78 301B
   H01L29/78 301G
【請求項の数】45
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-536814(P2018-536814)
(86)(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公表番号】特表2019-505992(P2019-505992A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】US2017013509
(87)【国際公開番号】WO2017123999
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2019年12月6日
(31)【優先権主張番号】62/279,578
(32)【優先日】2016年1月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510219556
【氏名又は名称】トランスフォーム テクノロジー,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニューフェルド,カール ジョーセフ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,モー
(72)【発明者】
【氏名】吉川 俊英
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ,ウメシュ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シアン
(72)【発明者】
【氏名】ローズ,デヴィッド,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】グリッターズ,ジョン,カーク
(72)【発明者】
【氏名】ラル,ラケシュ,ケー.
【審査官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−529639(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0147710(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/147802(WO,A1)
【文献】 特開2014−022413(JP,A)
【文献】 特開2010−093247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/337
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/78
H01L 29/786
H01L 29/808
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタであって、
III−Nチャネル層、
前記III−Nチャネル層上のIII−Nバリア層、
前記III−Nチャネル層に対して電気的に接続されたソースコンタクトとドレインコンタクト、
前記III−Nバリア層上の絶縁層、
部分的に前記絶縁層上にかつ部分的に前記III−Nチャネル層上に配置されたゲート絶縁体であって、前記ゲート絶縁体はアモルファスAl1−xSiO層を有し、0.2<x<0.8である、ゲート絶縁体、
前記ゲート絶縁体上において前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトとの間に配置されたゲート電極、
を備え、
前記アモルファスAl1−xSiO層は、前記III−Nチャネル層に隣接する側にナノ結晶Al1−xSiO部分を有し、
前記トランジスタの第1部分における凹部は、前記絶縁層と前記III−Nバリア層を通過して延伸しており、
前記ゲート絶縁体は前記凹部の少なくとも一部に配置され、前記凹部において前記III−Nチャネル層と接触しており、
前記ゲート電極は、前記凹部の少なくとも一部に配置されている
ことを特徴とするトランジスタ。
【請求項2】
前記アモルファスAl1−xSiO層の厚さは、1nmから100nmである
ことを特徴とする請求項1記載のトランジスタ。
【請求項3】
前記ゲート電極は、半導体材料によって構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のトランジスタ。
【請求項4】
前記ゲート電極は、窒化チタニウム(TiN)、窒化インジウム(InN)、p型ポリシリコン、窒化タングステン(WN)、または酸化インジウムスズ(ITO)によって構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のトランジスタ。
【請求項5】
前記トランジスタは、off状態ブロック電圧が600V超となるように構成されている
ことを特徴とする請求項4記載のトランジスタ。
【請求項6】
前記ナノ結晶Al1−xSiO部分の厚さは、前記アモルファスAl1−xSiO層の厚さの40%未満である
ことを特徴とする請求項1記載のトランジスタ。
【請求項7】
トランジスタであって、
III−Nチャネル層、
前記III−Nチャネル層上のIII−Nバリア層、
前記III−Nチャネル層に対して電気的に接続されたソースコンタクトとドレインコンタクト、
前記III−Nバリア層上の絶縁層、
部分的に前記絶縁層上にかつ部分的に前記III−Nチャネル層上に配置されたゲート絶縁体であって、前記ゲート絶縁体はアモルファスAl1−xSiO層を有し、0.2<x<0.8である、ゲート絶縁体、
前記ゲート絶縁体上において前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトとの間に配置されたゲート電極、
を備え、
前記アモルファスAl1−xSiO層は窒素を含み、
前記トランジスタの第1部分における凹部は、前記絶縁層と前記III−Nバリア層を通過して延伸しており、
前記ゲート絶縁体は前記凹部の少なくとも一部に配置され、前記凹部において前記III−Nチャネル層と接触しており、
前記ゲート電極は、前記凹部の少なくとも一部に配置されている
ことを特徴とするトランジスタ。
【請求項8】
トランジスタであって、
III−Nチャネル層、
前記III−Nチャネル層上のIII−Nバリア層、
前記III−Nチャネル層に対して電気的に接続されたソースコンタクトとドレインコンタクト、
前記III−Nバリア層上の絶縁層、
前記III−Nバリア層とは別のIII−Nキャップ層であって、前記絶縁層と前記III−Nバリア層を通過して延伸する凹部において前記III−Nチャネル層上に形成された、III−Nキャップ層、
前記III−Nキャップ層上において少なくとも一部が前記凹部内に配置されているゲート絶縁体であって、アモルファスAl1−xSiO層を有し、0.2<x<0.8である、ゲート絶縁体、
前記ゲート絶縁体上に積層され少なくとも一部が前記凹部内に配置されているゲート電極であって、前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトとの間に配置されている、ゲート電極、
を備え、
前記アモルファスAl1−xSiO層は、前記III−Nチャネル層に隣接する側にナノ結晶Al1−xSiO部分を有する
ことを特徴とするトランジスタ。
【請求項9】
前記III−Nキャップ層はGaNを含む
ことを特徴とする請求項8記載のトランジスタ。
【請求項10】
前記III−Nキャップ層は、前記III−Nチャネル層に隣接する側にAlGaNを有し、前記III−Nチャネル層の反対側にp型GaNを有する
ことを特徴とする請求項8記載のトランジスタ。
【請求項11】
前記III−Nキャップ層の厚さは10nm未満である
ことを特徴とする請求項8記載のトランジスタ。
【請求項12】
前記ゲート電極は半導体材料を含む
ことを特徴とする請求項8記載のトランジスタ。
【請求項13】
前記ゲート電極は、窒化チタニウム(TiN)、窒化インジウム(InN)、p型ポリシリコン、窒化タングステン(WN)、または酸化インジウムスズ(ITO)によって構成されている
ことを特徴とする請求項12記載のトランジスタ。
【請求項14】
前記アモルファスAl1−xSiO層の厚さは、1nmから100nmである
ことを特徴とする請求項8記載のトランジスタ。
【請求項15】
前記トランジスタは、off状態ブロック電圧が600V超となるように構成されている
ことを特徴とする請求項8記載のトランジスタ。
【請求項16】
前記ナノ結晶Al1−xSiO部分の厚さは、前記アモルファスAl1−xSiO層の厚さの40%未満である
ことを特徴とする請求項8記載のトランジスタ。
【請求項17】
前記アモルファスAl1−xSiO層は窒素を含む
ことを特徴とする請求項8記載のトランジスタ。
【請求項18】
III−Nデバイスを製造する方法であって、
III−Nチャネル層上のIII−Nバリア層、前記III−Nバリア層上の絶縁層、を有する材料構造を提供するステップ、
前記デバイスの第1部分に凹部を形成するステップであって、前記凹部を形成するステップは、前記デバイスの前記第1部分において前記絶縁層と前記III−Nバリア層を除去して前記デバイスの前記第1部分において前記III−Nチャネル層を露出させるステップ、
少なくとも前記凹部の一部においてアモルファスAl1−xSiO層を形成するステップであって、前記Al1−xSiO層は前記デバイスの前記第1部分において前記チャネル層上に形成される、ステップ、
少なくとも前記凹部の一部において前記Al1−xSiO層上にゲート電極を形成するステップであって、前記ゲート電極は複合半導体材料と金属を含むステップ、
を有し、
前記アモルファスAl1−xSiO層は、前記III−Nチャネル層に隣接する側にナノ結晶Al1−xSiO部分を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記アモルファスAl1−xSiO層を形成するステップは、有機金属気相成長法(MOCVD)成長リアクタを用いて実施される
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記方法はさらに、高温において前記III−Nデバイスをアニーリングするステップを有する
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記アモルファスAl1−xSiO層を形成するステップと前記III−Nデバイスをアニーリングするステップは、MOCVD成長リアクタにおいて空気に露出させることなく順次実施される
ことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記III−Nデバイスをアニーリングするステップは、800℃以上の温度で実施される
ことを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記ゲート電極の前記複合半導体材料は、窒化チタニウム(TiN)、窒化インジウム(InN)、p型ポリシリコン、窒化タングステン(WN)、または酸化インジウムスズ(ITO)を含む
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記方法はさらに、前記ゲート電極を形成した後、フォーミングガス内で前記III−Nデバイスをアニーリングするステップを有する
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項25】
前記アニーリングは、350℃以上の温度で実施される
ことを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記アモルファスAl1−xSiOを形成するステップは、500℃以上の積層温度で実施される
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項27】
前記ナノ結晶Al1−xSiO部分の厚さは、前記アモルファスAl1−xSiO層の厚さの40%未満である
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項28】
前記アモルファスAl1−xSiO層を形成するステップは、前記アモルファスAl1−xSiに対して窒素を組み込むステップを有する
ことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項29】
III−Nデバイスを製造する方法であって、
III−Nチャネル層上のIII−Nバリア層、前記III−Nバリア層上の絶縁層、を有する材料構造を提供するステップ、
前記デバイスの第1部分に凹部を形成するステップであって、前記凹部を形成するステップは、前記デバイスの前記第1部分において前記絶縁層と前記III−Nバリア層を除去して前記デバイスの前記第1部分において前記III−Nチャネル層を露出させるステップ、
前記III−Nチャネル層上において前記凹部内にIII−Nキャップ層を形成するステップ、
前記凹部内の少なくとも一部にアモルファスAl1−xSiO層を形成するステップであって、前記アモルファスAl1−xSiO層は前記デバイスの前記第1部分において前記III−Nキャップ層上に形成される、ステップ、
前記Al1−xSiO層上において前記凹部の少なくとも一部にゲート電極を形成するステップであって、前記ゲート電極は複合半導体材料を有する、ステップ、
を有し、
前記アモルファスAl1−xSiO層は、前記III−Nチャネル層に隣接する側にナノ結晶Al1−xSiO部分を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項30】
前記方法はさらに、前記アモルファスAl1−xSiO層を形成した後、酸素を含むガス環境下で高温において前記III−Nデバイスをアニーリングするステップを有する ことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記方法はさらに、前記チャネル層と電気的に接続されたソースコンタクトとドレインコンタクトを形成するステップを有し、前記ゲート電極は前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトとの間に配置される
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記III−Nキャップ層を形成するステップと前記アモルファスAl1−xSiO層を形成するステップは、金属有機気相成長法(MOCVD)によって実施される
ことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記III−Nキャップ層を形成するステップと前記アモルファスAl1−xSiO層を形成するステップは、MOCVD成長リアクタにおいて空気に露出させることなく順次実施される
ことを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記III−Nキャップ層を形成するステップ、前記アモルファスAl1−xSiO層を形成するステップ、前記III−Nデバイスをアニーリングするステップは、成長リアクタにおいてそのまま実施される
ことを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記III−Nキャップ層を形成するステップは、前記III−Nキャップ層を形成する前にMgプリカーソルガスを流し、前記III−Nキャップ層を形成する間はMgガスを流さないステップを有する
ことを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項36】
前記ゲート電極の前記複合半導体材料は、窒化チタニウム(TiN)、窒化インジウム(InN)、p型ポリシリコン、窒化タングステン(WN)、または酸化インジウムスズ(ITO)を含む
ことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項37】
前記III−Nデバイスをアニーリングするステップは、800℃以上の温度で実施される
ことを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項38】
前記III−Nキャップ層の厚さは1から10nmの範囲である
ことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項39】
前記III−Nキャップ層はAlGaNを含む
ことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項40】
前記III−Nキャップ層は、前記III−Nチャネル層に隣接する側にAlGaNを有し、前記III−Nチャネル層の反対側にp型GaNを有する
ことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項41】
前記デバイスの前記第1部分において前記凹部を形成するステップは、ドライエッチングにより前記デバイスの前記第1部分において前記絶縁層と前記III−Nバリア層を除去するステップを有する
ことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項42】
前記デバイスの前記第1部分において前記凹部を形成するステップはさらに、前記デバイスの前記第1部分において前記III−Nチャネル層を部分的にエッチングするステップを有する
ことを特徴とする請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記III−Nチャネル層の部分的なエッチングは5nm未満である
ことを特徴とする請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記方法はさらに、前記ゲート電極を形成した後、フォーミングガス内で前記III−Nデバイスをアニーリングするステップを有する
ことを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項45】
前記アニーリングは、350℃以上の温度で実施される
ことを特徴とする請求項44記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、半導体電子デバイスに関する。具体的には、アモルファスAl1−xSiOゲート絶縁体を有するIII族窒化物(III−N)半導体電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くのパワー半導体デバイス(例えば高電圧P−I−Nダイオード)、パワートランジスタ(例えばパワー金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET))、および絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)は、通常はシリコン(Si)半導体材料によって製造されてきた。炭化ケイ素(SiC)パワーデバイスも用いられている。III−Nデバイスは、大電流を搬送し高電圧をサポートする有望な半導体デバイスであり、非常に低いON抵抗、高電圧動作、高速スイッチング時間を提供する。
【0003】
III−Nデバイスのなかには(例えば高電子移動度トランジスタ(HEMT)や双方向スイッチ(four quadrant switcheまたはFQSとしても知られている))、空乏モード(Dモード)またはノーマリオンデバイス(例えば閾値電圧が負であるデバイス)であるものがある。すなわちデバイスは、ソース電極またはパワー電極と比較して十分な負電圧がゲート電極に対して印加されない限り、ON状態となる。多くのアプリケーションにおいて、特にパワースイッチング回路において、エンハンスメントモード(Eモード)またはノーマリオフデバイスを利用することが望ましい。例えば閾値電圧が正であるデバイスである。これにより、ゲート駆動回路からデバイスに対して印加する信号の形態を簡易化でき、デバイスまたは回路の故障時においてデバイスが偶発的にONすることを回避できるからである。ただし、高電圧III−N Eモードデバイスを信頼性高く製造することは、非常に困難であることが分かっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1側面において、トランジスタは、III−Nチャネル層、前記III−Nチャネル層上のIII−Nバリア層、前記III−Nチャネル層に対して電気的に接続されたソースコンタクトとドレインコンタクト、および前記III−Nバリア層上の絶縁層を備える。前記トランジスタはさらにゲート絶縁体を有し、前記ゲート絶縁体はアモルファスAl1−xSiO層を有し、0.2<x<0.8であり、前記トランジスタはさらに、前記ゲート絶縁体上において前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトとの間に配置されたゲート電極を備える。前記ゲート絶縁体はさらに窒素を含み、アモルファスAl1−xSiON層であってもよい。
【0005】
第2側面において、トランジスタは、III−Nチャネル層、前記III−Nチャネル層上のIII−Nバリア層、前記III−Nチャネル層に対して電気的に接続されたソースコンタクトとドレインコンタクト、および前記III−Nバリア層上の絶縁層を備える。前記トランジスタはさらに、前記トランジスタの第1部分において凹部を有し、前記凹部は前記絶縁層と前記III−Nバリア層をともに通過して延伸している。前記トランジスタはさらに、前記III−Nバリア層とは別に前記III−Nチャネル層上の前記凹部内に形成されたIII−Nキャップ、前記III−Nキャップ層上において前記凹部の少なくとも一部に配置されているゲート絶縁体、を備え、前記III−Nキャップ層上の前記ゲート絶縁体は前記凹部の少なくとも一部に配置されている。前記ゲート絶縁体はアモルファスAl1−xSiO層を有し、0.2<x<0.8である。前記ゲート絶縁体はさらに窒素を含み、アモルファスAl1−xSiON層であってもよい。前記トランジスタはさらに、前記ゲート絶縁体上に積層され少なくとも一部が前記凹部内に配置されているゲート電極を備え、前記ゲート電極は前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトとの間に配置されている。
【0006】
第3側面において、III−Nデバイスを製造する方法は、III−Nチャネル層上のIII−Nバリア層、前記III−Nバリア層上の絶縁層、を有する材料構造、前記デバイスの第1部分に凹部を形成するステップ、を有する。前記凹部を形成するステップは、前記デバイスの前記第1部分において前記絶縁層と前記III−Nチャネル層を除去して前記デバイスの前記第1部分において前記III−Nチャネル層を露出させるステップを有する。前記III−Nデバイスを形成するステップはさらに、少なくとも前記凹部の一部においてアモルファスAl1−xSiO層を形成するステップであって、前記Al1−xSiO層は前記デバイスの前記第1部分において前記チャネル層上に形成される、ステップ、少なくとも前記凹部の一部において前記Al1−xSiO層上にゲート電極を形成するステップであって、前記ゲート電極は複合半導体材料を含むステップ、を有する。前記Al1−xSiO層を形成するステップは、窒素を含むソースガスを用いるステップと、前記窒素を前記Al1−xSiO層に組み込んでアモルファスAl1−xSiON層を形成するステップを有する。
【0007】
第4側面において、III−Nデバイスを製造する方法は、III−Nチャネル層上のIII−Nバリア層、前記III−Nバリア層上の絶縁層、を有する材料構造、前記デバイスの第1部分に凹部を形成するステップ、を有する。前記凹部を形成するステップは、前記デバイスの前記第1部分において前記絶縁層と前記III−Nチャネル層を除去して前記デバイスの前記第1部分において前記III−Nチャネル層を露出させるステップを有する。前記III−Nデバイスを形成するステップはさらに、前記III−Nチャネル層上において前記デバイスの前記第1部分上の前記凹部内にIII−Nキャップ層を形成するステップ、前記デバイスの前記第1部分において前記III−Nキャップ層上の前記凹部内の少なくとも一部にアモルファスAl1−xSiO層を形成するステップ、を有する。前記方法はさらに、高温において酸素を含むガス環境下で前記III−Nデバイスをアニーリングするステップ、前記Al1−xSiO層上において前記凹部の少なくとも一部にゲート電極を形成するステップ、を有し、前記ゲート電極は複合半導体材料を有する。
【0008】
上記およびその他の実施形態は、以下に説明する1以上の特性を、単独または組み合わせでオプションとして備えることができる。前記バリア層を通過する前記凹部または溝の一部は垂直または傾斜側壁を備え、前記絶縁層を通過する前記凹部または溝の一部は傾斜側壁を備える。前記凹部を形成するステップは、前記デバイスの前記第1部分において前記チャネル層の上面を露出させるステップを有する。前記デバイスの前記第1部分において前記絶縁層を除去するとともに前記バリア層の一部を除去するステップは、前記デバイスの前記第1部分において前記絶縁層と前記バリア層をドライエッチングするステップを有する。前記デバイスの前記第1部分において前記絶縁層を除去するとともに前記バリア層の一部を除去するステップは、第1ガス環境においてドライエッチングして前記バリア層の第2上面を露出させることにより、前記デバイスの前記第1部分において前記絶縁層を除去するとともに、前記第1ガス環境とは異なる第2ガス環境においてドライエッチングすることにより、前記デバイスの前記第1部分において前記バリア層の一部を除去するステップを有する。前記絶縁層は窒化ケイ素層を有し、前記バリア層は窒化アルミニウムガリウム(AlGa1−xN)層を有し、前記第1ガス環境はSFを有し、前記第2ガス環境はClを有する。
【0009】
絶縁層を形成するステップは、有機金属気相成長法(MOCVD)によって前記絶縁層として第1窒化ケイ素層を形成するステップを有する。前記III−Nデバイスを製造するステップは、前記凹部の少なくとも一部にゲート絶縁体を形成するステップを有し、前記ゲート絶縁体は前記デバイスの前記第1部分において前記チャネル層の前記上面上に形成される。前記ゲート絶縁体を形成するステップは、前記凹部においてアモルファスアルミニウムケイ素酸化物(Al1−xSiO)層を積層するステップを有する。前記アモルファスAl1−xSiO層の厚さは、1nmから100nmの間である。前記アモルファスAl1−xSiO層におけるケイ素組成のAl組成に対する割合(1−x)/xは、0.2<x<0.8である。前記アモルファスAl1−xSiO層を積層するステップは、500°よりも高い成長温度または積層温度において前記アモルファスAl1−xSiO層を形成するステップを有する。前記III−Nデバイスを製造するステップは、前記チャネル層に対して電気的に接続されたソースコンタクトとドレインコンタクトを形成するステップ、前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトとの間において前記凹部内の少なくとも一部に前記ゲート絶縁体上においてゲート電極を形成するステップ、を有する。前記ゲート絶縁層を形成するステップは、窒素を含むガス環境を用いるステップ、アモルファスAl1−xSiON層を形成するステップ、を有する。前記III−Nバリア層を形成するステップは、前記チャネル層よりも大きいバンドギャップで前記III−Nバリア層を形成して、前記チャネル層に導電チャネルが誘起されるようにするステップを有し、前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトを形成するステップは、前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトそれぞれについて前記導電チャネルと電気的に接続された抵抗コンタクトを形成するステップを有する。
【0010】
デバイスを製造するステップは、前記凹部内に電極を形成するステップを有する。第2絶縁層が前記電極を形成する前に形成され、前記第2絶縁層は前記電極と前記凹部内の前記第1III−N層の上面との間に配置される。前記電極はゲート電極であり、導電チャネルは、前記第1III−N層と前記第2III−N層との間の組成差に起因して、前記第1および第2III−N層の境界に隣接して誘起される。デバイスを製造するステップはさらに、ソース電極とドレイン電極を形成するステップを有し、前記ソース電極と前記ドレイン電極は前記ゲート電極の各反対面に配置され、前記導電チャネルと電気的に接続されている。前記導電チャネルは、前記ソース電極との関係において前記ゲート電極に対して0Vが印加されると前記凹部下において可動電荷の多くが欠乏するが、前記ソース電極との関係において前記ゲート電極に対して十分な正電圧が印加されると可動電子が供給される。前記電極は、前記絶縁層上で前記ドレイン電極に向かって延伸する延伸部を有する。前記第2絶縁層は、前記電極の前記延伸部と前記絶縁層との間に配置された延伸部を有する。デバイスを製造するステップは、前記デバイスの前記第1部分において前記絶縁層を除去した後かつ前記デバイスのアニーリング前に、前記デバイスの前記第1部分において前記第2III−N−層を部分的に除去して、前記デバイスの前記第1部分における前記第2III−N層の残部が、前記凹部の反対側における前記第2III−N層の第2厚さよりも小さい第1厚さを有するようにするステップを有する。前記第1厚さは3nmから10nmの間である。
【0011】
前記III−Nデバイスにおいて、前記凹部の前記第1側壁は垂直または傾斜しており、前記凹部の前記第2側壁は傾斜している。前記ゲート電極は、前記凹部の外に配置され前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトに向かって延伸し前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトから分離された延伸部を有する。前記バリア層は、前記チャネル層よりも大きいバンドギャップを有し、これにより前記チャネル層内に導電チャネルが誘起される。前記ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトは、前記導電チャネルに対して電気的に接続された抵抗コンタクトをそれぞれ形成する。前記導電チャネルは、前記ソースコンタクトとの関係において前記ゲート電極に対して0Vが印加されると、前記凹部下方の前記チャネル層領域において非連続となり、前記ソースコンタクトとの関係において前記デバイスの閾値電圧よりも大きい電圧が前記ゲート電極に対して印加されると連続となり、前記閾値電圧は0Vよりも大きい。前記III−Nデバイスは、2Vよりも大きい前記閾値電圧を有し0.5V未満の閾値電圧ヒステリシスを有するエンハンスメントモード電界効果トランジスタとして機能する。前記ゲート絶縁体は、アモルファスAl1−xSiON層を有する。前記アモルファスAl1−xSiO層の厚さは、1nmと100nmの間である。前記III−Nチャネル層は、アルミニウム(Al)を含まないIII−N層を有し、前記III−Nバリア層はAlベースIII−N層を有する。前記閾値電圧ヒステリシスは、負ゲートバイアス電圧からターンオン電圧よりも大きい正ゲートバイアス電圧へスイープしたときの電圧変化として定義され、正ゲートバイアス電圧から前記デバイスの前記ターンオン電圧よりも小さい負ゲートバイアス電圧へスイープしたときの閾値電圧と比較されるものである。
【0012】
本明細書において、III族窒化物、III−N材料、層、デバイスなどの用語は、正規組成式BAlInGaN(w+x+y+zは約1、0≦w≦1,0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)に基づく複合半導体材料に含まれる材料またはデバイスのことである。III−N材料、層、またはデバイスは、適当な基板上に直接成長させる(例えば有機金属気相成長法により)かまたは適当な基板上に成長させ、元の基板を取り除き、他の基板に接着することにより、形成または作成することができる。
【0013】
本明細書において、2以上のコンタクトまたはその他要素(例えば導電チャネルや部品)は、十分な導電性を有することにより、任意のバイアス条件下において常に各コンタクトまたはその他要素の電位が等しくなるように意図されている(例えば略等しい)材料によって接続されている場合、“電気的に接続されている”ものとする。
【0014】
本明細書において、“ブロック電圧”は、トランジスタ、デバイス、または部品の機能として、トランジスタ、デバイス、または部品に対して電圧が印加されたとき過電流(例えば正常導通状態における動作電流の0.001倍よりも大きい電流)がトランジスタ、デバイス、または部品を流れることを防ぐ能力のことである。換言すると、トランジスタ、デバイス、または部品が電圧印加時にブロックしているとき、トランジスタ、デバイス、または部品を通過する総電流は正常導通状態における動作電流の0.001倍以下である。この値よりも大きいoff状態電流を有するデバイスは、損失が大きいとともに効率が悪く、通常は多くのアプリケーションに適しておらず、特にパワースイッチングアプリケーションには適していない。
【0015】
本明細書において、“高電圧デバイス”(例えば高電圧スイッチングトランジスタ、HEMT、双方向スイッチ、またはfour quadrant switch(FQS))は、高電圧アプリケーションに最適化された電子デバイスである。すなわち、デバイスがoffのとき、高電圧をブロックすることができる。例えば約300V以上、約600V以上、または約1200V以上である。デバイスがonのとき、アプリケーションにとって十分小さいon抵抗(RON)を有する。例えば、デバイスを電流が通過するとき、導電損失は十分小さい。高電圧デバイスは、デバイスを使用する回路における高電圧源または最大電圧に等しい電圧を少なくともブロックすることができる。高電圧デバイスは、300V、600V、1200V、1700V、2500V、その他アプリケーションにおいて求められる適当なブロック電圧をブロックすることができる。換言すると高電圧デバイスは、0Vと少なくともVmaxとの間の全ての電圧をブロックすることができる。Vmaxは回路または電源から供給される最大電圧である。Vmaxは例えば300V、600V、1200V、1700V、2500V、その他アプリケーションにおいて求められる適当なブロック電圧である。
【0016】
本明細書において、“III−Nデバイス”は、III−Nヘテロ構造に基づくデバイスである。III−Nデバイスは、Eモードトランジスタまたはスイッチとして動作するように設計することができる。III−Nデバイスは、高電圧アプリケーションに適した高電圧デバイスである。高電圧デバイスにおいて、デバイスがoffバイアスされると(例えばソースとの関係においてゲート電圧がデバイス閾値電圧未満になると)、デバイスを用いるアプリケーションにおける高電圧以下の全てのソース−ドレイン電圧を少なくともサポートすることができる。この高電圧は例えば、100V、300V、600V、1200V、1700V、2500V、またはそれ以上である。高電圧デバイスがonバイアスされると(例えばソースまたは関連する電力端子との関係においてゲート電圧がデバイス閾値電圧よりも大きくなると)、デバイスは低いon電圧(すなわち、ソース端子とドレイン端子との間の低電圧または反対パワー端子間の低電圧)で電流を流すことができる。最大許容on電圧は、デバイスを用いるアプリケーションにおいて持続できる最大on状態電圧である。
【0017】
本明細書が記載する主題の1以上の実装例の詳細は、添付する図面と以下の説明に記載されている。その他特徴や変形例も実装例に含めることができる。その他の特徴、側面、利点は、以下の説明、図面、および特許請求範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】III−Nデバイスの例の断面図である。
【0019】
図2A】III−Nデバイスを形成する部分プロセスの例のフロー図である。
図2B】III−Nデバイスを形成する部分プロセスの例のフロー図である。
【0020】
図3A】III−Nデバイスを形成する部分プロセスの例のフロー図である。
図3B】III−Nデバイスを形成する部分プロセスの例のフロー図である。
【0021】
図4】III−Nデバイスの例の断面図である。
【0022】
図5】III−Nデバイスの他例の断面図である。
【0023】
図6】III−Nデバイスの他例の断面図である。
【0024】
図7】III−Nデバイスの他例の断面図である。
【0025】
図8】Al1−xSiOとAl1−xSiNのゲート絶縁材料のフラットバンド電圧を、異なる仕事関数(eV)を有するゲート電極材料と比較する図である。
【0026】
図9A】Al1−xSiOとAl1−xSiNのIII−Nデバイスの低電圧(VLF)を、Si組成を変えて示す図である。
【0027】
図9B図7AのVLFの定義を示す。
【0028】
図10】Al1−xSiOの組成を変えたときの閾値電圧とヒステリシスの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面における同様の参照番号と符号は同様の要素を示す。
【0030】
本明細書は、エンハンスメントモードIII−Nデバイス、およびそのデバイスを形成する方法について記載する。デバイスは、2次元電子ガス(2DEG)チャネルを有するIII−Nヘテロ構造を備える。デバイスのゲート領域において、III−N材料構造に凹部が形成される。アモルファスAl1−xSiOゲート絶縁体が凹部内に形成され、ゲート絶縁層上にゲート電極が形成される。以下に詳述するように、アモルファスAl1−xSiOゲート絶縁層により、高い閾値電圧と低いヒステリシスを実現し、ゲート絶縁体を利用する他のエンハンスメントモードIII−Nトランジスタと比較して信頼性を高めることができる。
【0031】
図1は、III−Nデバイス100の例の断面図である。III−Nデバイス100は例えばIII−Nトランジスタまたはスイッチであり、具体的には高電圧III−Nエンハンスメントモード電界効果トランジスタである。
【0032】
III−Nデバイス100は、基板層110を有する。基板層110は、例えばシリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、サファイア(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、などによって作られた基板、その他III−N材料を形成するのに適した基板である。
【0033】
バッファ層112が基板層110上に形成される。バッファ層112は、例えばGaN層、AlGa1−xN層などのIII−Nバッファ層である。バッファ層112は、例えばバッファ層112内に転位または欠陥点を含め、および/または補償元素(例えば鉄(Fe)、炭素(C)、および/またはマグネシウム(Mg))をバッファ層112に対してドープすることにより、絶縁化または実質的にn型可動キャリアを含まないようにすることができる。バッファ層112は、層全体にわたって実質的に均一な組成を有する。実装例において、バッファ層112全体にわたって1以上の組成が変化する。例えばバッファ層112は、Al組成を階級的に構成することにより、階層分けすることができる。バッファ層112は実質的に、III−Nデバイス100内の他のIII−N層よりも厚い。
【0034】
III−Nデバイス100は、バッファ層112上に形成されたチャネル層114を有する。チャネル層114はIII−N層であり、例えばドープしていないGaN層または若干もしくは意図せずドープしたGaN層である。実施例においてチャネル層114は、例えばGaNやInGa1−zNなどのようにAlを含まないIII−N層である。
【0035】
バリア層116がチャネル層114上に形成されている。バリア層116とチャネル層114は、互いに異なる組成またはIII−N材料を有する。この組成またはIII−N材料は、バリア層116がチャネル層114よりも大きいバンドギャップを有するように選択される。実施例において、バリア層116はAlベースIII−N層であり、例えばAlGa1−xN層、AlIn1−yN層、またはAlInGaN層である。バリア層はドープしていないGaN層であってもよい。バリア層116はnドープであってもよいし、ドープ不純物を有意な濃度で含んでいなくともよい。バリア層116がドープされていない場合、チャネル層114とバリア層116との間に分極場が存在し、これにより層114と116との間の境界においてまたはこれに隣接して、固定電荷が誘起される。
【0036】
III−N材料構造の導電バンドにおけるエネルギーバンドエッジ非連続性が、層114と116との間のバンドギャップ差および/または電子親和性の差によって生じ、これとともにバリア層116をドープするか分極を導入することにより、チャネル層において導電チャネル119が誘起される。これは図1に示すように、例えばチャネル層114とバリア層116との間の境界付近において生じる。導電チャネル119は、ソースコンタクト121とゲートコンタクト123との間、およびゲートコンタクト123とドレインコンタクト122との間において、2次元電子ガス(2DEG)チャネルを誘起させる。図1に示すように、デバイス100がOFF状態にあるとき(すなわちゲートコンタクト123がソースコンタクト121との関係においてデバイス閾値電圧未満の電圧にバイアスされているとき)、導電チャネル119はゲート電極123下方において可動電荷が欠乏し、これにより2DEGはソースコンタクト121とドレインコンタクト122との間で非連続となる。デバイス100がON状態にあるとき(すなわちゲートコンタクト123がソースコンタクト121との関係においてデバイス閾値電圧よりも高い電圧にバイアスされているとき)、ゲート電極123下方の導電チャネル119は可動電荷を供給され(図1には示していない)、2DEGはソースからドレインまでの全過程において連続となる。実装例において、ソースコンタクト121とドレインコンタクト122はそれぞれ、2DEGチャネルと電気的に接続しまたは接触する抵抗コンタクトを形成する。ゲートコンタクト123は、ゲート領域(例えばゲートコンタクト123の直下)において、2DEGチャネルの位置を変更することができる。
【0037】
III−Nデバイス100は、絶縁層118を有する。絶縁層118は例えばパッシベーション層であり、III−N最上面における電圧変動を阻止または抑制することにより、分散を阻止または抑制する。絶縁層118は、Si、Al、SiO、AlSiN、AlSiO、AlSiONなどによって作成することができ、有機金属気相成長法(MOCVD)、低圧化学気相成長法(LPCVD)、プラズマCVD(PECVD)、化学気相成長法(CVD)、スパッタリング、原子層体積(ALD)、高密度化学気相成長法、その他任意の適当な積層プロセスによって形成することができる。具体例として、絶縁層118はMOCVDによって形成された窒化ケイ素(Si)層である。
【0038】
ソースコンタクト121(例えばソース電極)とドレインコンタクト122(例えばドレイン電極)は、III−N層のいずれかと接触した金属積層によって形成することができる。例えばチャネル層114やバリア層116と接触すればよい。III−N層に凹部を形成して、金属積層が2DEGチャネルとより良好に接触するようにすることができる。金属積層は、Ti/Al/Ni/Au、Ti/Al、などである。ソースコンタクト121とドレインコンタクト122は、金属蒸着とその後のアニーリングプロセスによって形成することができる。その他の抵抗コンタクトプロセスを用いることもできる。例えばスパッタリングやドライエッチングプロセスである。
【0039】
III−Nデバイス100の高電圧電場領域の電場形状を定めるため、凹部または溝124を形成して、ピーク電場を減少させるとともにデバイス破壊電圧とデバイス閾値電圧を上昇させ、これにより高電圧動作を可能とする。凹部124により、デバイス100はエンハンスメントモードで動作することができる(すなわちEモードデバイスとなる)。凹部124は、絶縁層118の全てとバリア層116の全部または一部を溝形状に除去することにより形成できる。凹部124を形成している間にチャネル層114の一部を除去してもよい。チャネル層におけるダメージと凹部の深さおよび形状により、エンハンスメントモード動作とともに低いデバイスon抵抗Ronを実現できる。以下に詳述する。
【0040】
実装例において、ドライエッチング技術(例えばプラズマエッチング、デジタルプラズマエッチング、反応イオンエッチング(RIE))を用いて凹部構造を形成できる。ドライエッチング技術は、イオン衝突ダメージを生じさせ、これによりチャネルキャリア移動度が低下する。またこれら技術はIII族窒化物材料に対するエッチング選択性が低い。すなわち、III族窒化物の別の組成を実質的にエッチングすることなくIII族窒化物の1つの組成を選択的にエッチングすることが難しい。さらに、イオン衝突ダメージを受けた面を復元することが難しい。エッチング選択性はIII−Nエピタキシ層にとっても重要である。基板上でエピタキシャル成長する各層は、ウエハの中心からエッジにかけて厚さと組成が異なるからである。ドライエッチング技術は、バリア層とチャネル層との間でエッチング選択性がごくわずかであることもある。したがって、エッチング深さが異なることにより、閾値電圧が大きく変動する。
【0041】
III−Nデバイス構造を用いたエンハンスメントモードトランジスタを実現するためには、凹部のエッチング深さを制御することが重要である。デバイス100と同じIII−N材料構造を有し凹部124を有さないデバイスは、通常は空乏モードで動作する(すなわち負デバイス閾値電圧)。デバイスのゲート領域においてIII−N材料構造に凹部124を有することにより、デバイス閾値電圧はより正値へシフトする。エッチング深さが十分深くなく、閾値電圧のシフトが小さければ、III−Nデバイスは依然として空乏モードデバイスであり、ノーマリオン特性を示す。エッチング深さが深すぎてチャネル層まで達している場合、デバイスがON状態にバイアスされたときであっても、ゲートコンタクト下方の導電チャネルとデバイスアクセス領域(すなわちソースとゲートの間およびゲートとドレインの間の領域)における導電チャネルとの間の電流接続がカットされる。この場合、ノーマリオフEモード動作が実現できるとしても、III−Nデバイスは電流密度が小さくなり、あるいはON状態でも動作することができない。ドライエッチングレートを較正して妥当な精度を得ることができるが、III−Nエピタキシャル層の成長条件差に起因するウエハ間のバリア層厚さの違いと、単一ウエハにおけるばらつきとにより、製造歩留りが低くなる。
【0042】
凹部エッチング断面は通常、矩形または台形である。すなわち凹部は、垂直側壁または傾斜側壁を有するが、両方を持つことはない。デバイス100において、凹部全体が垂直側壁を有するのは望ましくない。欠陥がないゲート誘電体とゲート金属を同形状で積層するのは、垂直側壁の凹部を有するIII−Nデバイス構造においては困難だからである。
【0043】
図1に示すように、凹部124はバリア層116において垂直側壁を有し、絶縁層118において傾斜側壁を有する。凹部124は、バリア層116において傾斜側壁を有する(図示せず)。チャネル層114の上面は凹部124へ露出している。凹部124は、チャネル層114の上面からバリア層116と絶縁層118を通過し、絶縁層118の上面まで延伸している。
【0044】
ゲート絶縁体120(例えばゲート絶縁層またはゲート誘電層)は、凹部124の少なくとも一部において同じ形状で成長または積層されている。ゲート絶縁体120はチャネル層114の上面に配置されている。ゲート絶縁体120は、少なくともチャネル層114の上面から絶縁層118の上面まで延伸している。ゲート絶縁体120は、バリア層116と絶縁層118における凹部側壁と同様のプロファイルを有する。
【0045】
ゲート絶縁体120は例えば、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)、Si、Al1−xSiN、Al1−xSiON、その他任意の広バンドギャップ絶縁体によって形成されまたはこれらを含む。実施例において、ゲート絶縁体120はAl1−xSiO層であり、例えばアモルファスAl1−xSiO層または多結晶Al1−xSiO層であり、xと(1−x)はAl1−xSiO層における酸素以外の元素の組成比率を表している。すなわち(1−x)はAl1−xSiO層においてアルミニウムによって構成される要素のパーセントであり、xはAl1−xSiO層においてケイ素によって構成される要素のパーセントであり、(1−x)/xはAl1−xSiO層におけるケイ素に対するアルミニウムの比率である。具体例において、以下に詳細に説明するように、ゲート絶縁体120は、高閾値電圧と低ゲートリークを提供するアモルファスAl1−xSiO層を有する。実装例において、Al1−xSiO層は低濃度の窒素を有する。すなわち、Al1−xSiO層を形成している間において、低濃度の窒素を層に組み込み、この窒素濃度は層内のAl、Si、Oの濃度よりも実質的に低い。Al1−xSiOゲート絶縁層は、例えばSiN、Al、SiO、Al1−xSiNなどの他のゲート絶縁層と比較して、エンハンスメントモードデバイス特性が向上する。これらとその他の利点については以下に詳述する。アモルファスAl1−xSiO層は1nmから100nmの厚さを有し、例えば1nmから60nmである。積層後酸素アニーリングをゲート絶縁体120に対して実施してもよい。アニーリングプロセスは、MOCVD成長リアクタにおいて実施することができる。アニーリングプロセスは、MOCDV成長リアクタのゲート絶縁体積層間において空気へ露出せずに実施できる。アニーリング温度は例えば800°以上である。アニーリング時間は例えば10分、20分、またはそれ以上である。
【0046】
実装例において、ゲート絶縁体120は例えばAl1−xO層などの三元化合物であり、Aは周期表の第4群の元素である。例えばアモルファスAl1−xSiO層または多結晶Al1−xSiO層である。ゲート絶縁体120は、Al1−xSiONなどの広バンドギャップ四元絶縁体である。ゲート絶縁体120は、AlOなどの広バンドギャップ四元絶縁体であてもよく、Mは遷移金属元素であり、Aは周期表の第4群の元素であり、xyzはAlO層における酸素以外の元素の相対組成である。四元絶縁体は、yまたはzが0であれば三元絶縁体になる。アモルファス層が望ましいが、その他の混合相マトリクスを用いてもよい。
【0047】
次に、ゲートコンタクト123(例えばゲート電極)を、少なくとも凹部124の一部においてゲート絶縁体120上に同じ形状で形成する。ゲート絶縁体120と同様に、凹部内かつバリア層116に隣接しているゲートコンタクト123の部分は垂直であり、凹部内かつ絶縁層118に隣接しているゲートコンタクト123の部分は傾斜している。実装例において、ゲートコンタクト123は、凹部124の外に配置されソースコンタクト121および/またはドレインコンタクト122へ向かって延伸する延伸部を有する。延伸部は、ソースコンタクト121とドレインコンタクト122から分離している。ゲートコンタクト123の延伸部は、III−Nデバイス100のフィールドプレートとして機能する。実施例において、ゲートコンタクトの延伸部は、少なくとも一部に傾斜部を有し、傾斜フィールドプレートとして機能する。これによりデバイス性能を向上できる。
【0048】
ゲートコンタクト123は、例えばチタニウム/アルミニウム(Ti/Al)またはニッケル/金(Ni/Au)などの金属積層体として形成することができる。ゲートコンタクト123は、金属蒸着またはスパッタリングまたは化学気相法によって積層することができる。ゲートコンタクト123はこれに代えて、大きな仕事関数を有する他の導電材料または材料スタックであってもよい(例えばp型ポリシリコン、酸化インジウムスズ、窒化タングステン、窒化インジウム、窒化チタニウム)。ゲートコンタクト123を積層したのち、ゲート積層後アニーリングプロセスをオプションで実施してもよい。ゲート積層後アニーリングプロセスは、酸素またはフォーミングガス(H+N)を含むガス環境下で実施することができる。ゲート積層後アニーリング温度は、300℃以上または400℃以上である。最後にゲートコンタクト123をエッチングマスクとして用いてゲート絶縁体120をエッチングし、ゲート絶縁体120をゲートコンタクト123の直下に維持しつつその他の部分をエッチング除去し、または部分的にエッチング除去する(図示せず)。
【0049】
図1に示すように、ソースコンタクト121との関係においてゲートコンタクト123に対して0V(またはデバイス閾値電圧よりも小さい電圧)が印加されると、導電チャネル119はIII−Nデバイス100のゲート領域の凹部124直下のチャネル層114領域において非連続となる。導電チャネル119が非連続となる結果、ソースコンタクトとドレインコンタクトとの間のデバイスチャネルは、ソースコンタクト121との関係においてゲートコンタクト123に対して0Vが印加されたときは導通しないが、ソースコンタクト121との関係においてゲートコンタクト123に対して十分な正電圧(例えばデバイス閾値電圧以上)が印加されると容易に導通する。したがってIII−Nデバイス100は、高電圧アプリケーションのための高電圧エンハンスメントモードデバイスとして機能する。III−Nデバイス100は例えば、トランジスタ、双方向スイッチ、four quadrant switch(FQS)、および/または任意の適当な半導体デバイスである。
【0050】
図2Aと2B、図3Aと3Bは、III−Nデバイスを形成するプロセス200A−200Bと300A−300Bを示す。プロセス200A−200Bと300A−300Bを利用して、それぞれ図1図4図5図6に示すIII−Nデバイス100、400、500、600を形成することができる。
【0051】
図2Aにおいて、プロセス200Aは、基板上にバッファ層を形成するステップを有する(202)。このバッファ層と基板は、図1におけるバッファ層112と基板層110である。基板は例えばシリコンウエハである。バッファ層は、基板上にバッファ層を直接成長させるか、またはこれに代えて第1基板上にバッファ層を成長させて第1基板からバッファ層を取り除き、別の基盤にバッファ層を接着することによって、形成することができる。上記のように、バッファ層を形成するステップ(202)は、バッファ層に補償元素をドープするステップを有してもよい。
【0052】
次にIII−Nチャネル層をバッファ層上に形成する(ステップ204)。このIII−Nチャネル層は図1のチャネル層114である。III−Nチャネル層は、例えばドープなしGaN層などのようなドープなしIII−N層である。具体例として、III−N層はドープなしGaN層であり、実質的にはAlを含まない。
【0053】
次にIII−Nバリア層がチャネル層上に形成される(ステップ206)。このIII−Nバリア層は図1におけるバリア層116である。III−Nバリア層は、チャネル層とは異なる組成またはIII−N材料を有し、これによりバリア層はチャネル層よりも大きいバンドギャップを有し、導電チャネル(例えば2DEGチャネル)がチャネル層内に誘起される。実施例において、バリア層はAl1−xSiN層である。バリア層は例えば厚さ約30nmである。具体例において、III−Nバリア層はAlInGa1−x−yN層であり、xとyはそれぞれアルミニウムとインジウムの組成比であり、x+yはガリウム組成比であり、0≦x≦1、0≦y<1、0≦x+y<1である。他実施形態においてIII−Nバリア層は初期組成AlGa1−xNを有し、最終組成はGaNであり、III−Nバリア層の上面において実質的にAlを含まない。
【0054】
次に絶縁層をバリア層上に形成する(ステップ208)。この絶縁層は図1の絶縁層118である。上述のように、絶縁層はSi、Al、SiO、AlSiN、AlSiO、AlSiONなどによって作成することができ、MOCVD、LPCVD、PECVD、CVD、HDPCVD、スパッタリング、アクティブ反応スパッタリング、ALD、プラズマアシストALD、その他適当な積層プロセスによって積層することができる。具体例として、絶縁層はMOCVDによって形成されたSiNである。
【0055】
図2Aに示すプロセス200Aは、オプションステップ(210)によって、デバイスのアクティブ領域において絶縁層を完全にまたは部分的に除去してもよい。デバイスのアクティブ領域は、図1に示すソースコンタクト121とドレインコンタクト122との間の領域である。絶縁層を部分的に除去するステップは、デバイスの第1領域においてIII−Nバリア層の上面を露出させるステップを有する。この領域は図1の凹部124の幅の2倍から50倍までのサイズである。絶縁層(118)を部分的に除去するステップは図5に示す領域126を規定する。
【0056】
次に凹部を形成して、チャネル層の上面を露出させる(ステップ212)。この凹部は図1の凹部124である。凹部を形成するステップは、ウエットエッチング技術またはドライエッチング技術またはこれらの組み合わせを用いることを含む。形成された凹部は、バリア層116において垂直または傾斜側壁を有し、絶縁層118において傾斜側壁を有する。凹部領域においてバリア層は除去され、チャネル層114の上面は凹部において露出される。実装例において、凹部124はチャネル層114まで延伸してもよい。例えば凹部124はチャネル層114に対して10nm未満の範囲で延伸してもよい。凹部124は、チャネル層114の上面からバリア層116と絶縁層118を通過して絶縁層の上面まで達する。実施例において導電チャネルは、デバイス電極(例えばソース、ゲート、またはドレイン)に対して電圧が印加されていないとき、凹部直下のチャネル層領域において非連続となる。
【0057】
図2Bにおいて、プロセス200Bはプロセス200Aの代替として実施することができる。プロセス200Bは、プロセス200Aと同様のステップを有するが、バリア層を形成するステップ206と溝を形成するステップ212との間に、絶縁層を形成するステップ208を有していない。プロセス200Bの実装例において、III−Nバリア層を形成するステップ(206)は、初期組成AlGa1−xNを形成するステップと、最終組成GaNを形成するステップを有する。最終組成GaNは、GaNキャップとして動作して、III−Nバリア層の酸化を防止し、III−Nバリア層206上に絶縁層208を形成しなかった結果として表面トラップが形成されるのを抑制できる。プロセス200Bを用いて形成されるデバイス600は図6に示し、以下に詳述する。
【0058】
図3Aにおいてプロセス300Aを示す。プロセス300Aは、プロセス200Aの後に実施して、図1のデバイス100を形成するために用いることができる。ゲート絶縁体をチャネル層の上面上に形成する(ステップ302)。このゲート絶縁体は、図1のゲート絶縁体120である。ゲート絶縁体は、凹部124の少なくとも一部において同じ形状で形成される。ゲート絶縁体は、チャネル層114の上面と直接接触し、バリア材料は両者の間に存在しない。ゲート絶縁体のうちバリア層116と接触している部分は、バリア層内の凹部と同じプロファイルを有し、ゲート絶縁体のうち絶縁層と接触している部分は、絶縁層内の凹部と同じプロファイルを有する。
【0059】
実装例において、高ゲートバイアスと低ゲートリークを実現するため、アモルファスアルミニウム酸化ケイ素(例えばAl1−xSiOであり、低濃度の窒素を含んでいてもよい)層をゲート絶縁体として成長させる。ゲート絶縁体としてアモルファスAl1−xSiO層を有するIII−Nデバイスは、以下に詳述するように、高破壊電界、低インターフェーストラップ、高温度安定性を実現できる。Al1−xSiOゲート絶縁体を有し、これと組み合わせて半導体材料(例えばTiNやInN)で形成されたゲート電極を有するIII−Nデバイスは、Alゲート絶縁体またはAlSiNゲート絶縁体を有する同様のデバイスと比較して、III−Nデバイスの閾値電圧を増加させることができる。
【0060】
アモルファスAl1−xSiO層は、CVD、LPCVD、MOCVD、分子ビームエピタキシ(MBE)、スパッタ堆積、その他適当な積層プロセスを用いて、成長させることができる。実施例において、成長させたAl1−xSiO層は、1nmから100nmの厚さを有し、例えば約1nmから60nmの範囲である。
【0061】
Al1−xSiO層を形成する間において、いくつかの成長条件と積層条件を最適化して、Al1−xSiO層がアモルファス(多結晶ではなく)となるようにする。例えば成長温度または積層温度、室圧、および/またはSi/Al比率とNおよびO比率の組み合わせを最適化して、アモルファスAl1−xSiO層を実現する。一般に、成長温度または積層温度を減少させ、Si/Al比率を増加させると、Al1−xSiO層は多結晶ではなくアモルファスとなる傾向がある。例えば成長温度または積層温度が900℃以上でありSi/Al比が1/4以上のときAl1−xSiOはアモルファスとなる。また成長温度または積層温度が700℃以上でありSi/Al比が1/9以上のときAl1−xSiOはアモルファスとなる。しかし、成長温度または積層温度を上げ、および/またはSi/Al比を下げたとき、III−NエンハンスメントモードデバイスのAl1−xSiOゲート絶縁層は、Al1−xSiOがアモルファスである限りは、デバイスのゲートリークを実質的に減少させることが分かった(多結晶層を有するデバイスはゲートリークを実質的に増加させることが分かった)。ゲート−ソースバイアスに対するデバイスの破壊電圧は、多結晶構造のゲート絶縁体を有するデバイスにおいては、アモルファスAl1−xSiOゲート絶縁体を有するデバイスと比較して、減少する。特定の成長条件下において、アモルファスAl1−xSiO層は、窒素−酸素境界においてナノ結晶層を有する。これはアモルファスAl1−xSiO層が、高配向された原子構造を有する単一の結晶窒素面上に直接積層されることによる。ナノ結晶層が存在する場合、数フェムトメートルから、アモルファスAl1−xSiO層厚さの40%までの範囲となる。多結晶層とは異なり、ナノ結晶層は強いX線回折信号を生成せず、したがって斜入射X線回折によって明瞭に検出することができない。ナノ結晶層の存在は、例えば高解像度透過電子顕微鏡(TEM)断面画像によって検出することができる。デバイスを最適化するためには、Al1−xSiO層における最小Si/Al比は1/4である(例えばx>0.2)。Si/Al比が高すぎると(例えば4以上(例:x>0.8))、閾値電圧が減少したデバイス特性となる。閾値電圧が実質的に減少した場合において、閾値電圧(Vth)は負値となる場合があり、このときデバイスは空乏モードで動作する。例えばエンハンスメントモードにおいてはゲートに0バイアスが印加されているときOFF状態となるのに対して、空乏モードにおいてはゲートに0バイアスが印加されているときON状態となる。したがって、Al1−xSiOゲート絶縁体の積層条件は、アモルファス層を実現しつつ高積層温度と最適なSi/Al比を維持するように、最適化することができる。実装例において、アモルファスAl1−xSiO層の成長温度と積層温度は500℃以上であり(例えば800℃以上または900℃以上)、および/または、Al組成に対するSi組成比(1−x)/xは4未満(例えば1未満、1/3未満)である。1実施形態において、Si/Al比は約2/3であり、このときSi成分は約40%である。この比を最適化して、閾値電圧を向上させ、トランジスタのゲート−ソース破壊電圧を増加させる。正方向スイープと負方向スイープとの間の閾値電圧ヒステリシスは、最適比でAl1−xSiOを成長させたIII−Nデバイスにおいて減少する。絶縁層を成長させる前に、プリカーソルガスを成長リアクタにおいて用い、絶縁層を成長させるときは用いず、これによりシートアクセプタ層を形成できる。このシートアクセプタ層は、III−Nチャネル層と絶縁層との間の境界における電荷を増やすことができる。これらガスの例としては、Mg、Fe、Zn、その他ガスが挙げられる。アモルファスAl1−xSiO層を成長させる間において、成長リアクタに対して別のガスを導入することもできる。例えばNO、NO、ヒドラジン、誘導体などである。これらソースガスにより、アモルファスAl1−xSiO層に対して組み込まれる窒素濃度を低くし、これにより層内の窒素濃度はAl、Si、O濃度よりも実質的に低くなる。その他の層を用いてゲート絶縁体を構築することもできる。例えばAl、AlSiNである。しかしゲート絶縁体としてのAl1−xSiO層の性能は、エンハンスメントモード動作においてより望ましいものをIII−Nデバイスに対して提供することができる。
【0062】
図3Aにおいて、ゲート電極をゲート絶縁体上に形成する(ステップ304)。このゲート電極は図1のゲートコンタクト123である。上記のように、ゲート電極は凹部の少なくとも一部においてゲート絶縁体上に同じ形状で形成することができる。これは、チタニウム/アルミニウム(Ti/Al)または金属と半導体材料の組み合わせ、例えば窒化チタニウム/アルミニウム(TiN/Al)などの金属スタックを積層することにより実現され、このとき金属蒸着またはスパッタリングを用い、オプションとしてゲート積層後アニーリングプロセスを実施する。TiN/Alで形成されたゲート電極は、アモルファスAl1−xSiOと導通してインターフェースを形成し、III−Nデバイスの閾値電圧を増加させる。通常、仕事関数が大きい半導体ゲート電極(例えばTiN/Al)がAlSiNなどのゲート絶縁体と接続されると、誘電面におけるフェルミレベルピニングに起因して、仕事関数が小さいゲート電極(例えばチタニウム/アルミニウム(Ti/Al))と比較して、閾値電圧シフトはゼロに近くなる。しかしアモルファスAl1−xSiOが半導体ゲート電極(例えば窒化チタニウム/アルミニウム(TiN/Al))と接続されると、III−Nデバイスの閾値電圧は増加する。GaN上にAlSiNとAl1−xSiOを有し様々な仕事関数材料で形成されたゲート電極を有する金属−絶縁体−半導体キャパシタ構造を用いて、この効果を実証した(図8に示す)。酸素またはフォーミングガス(H+N)を含むガス環境下においてゲート積層後アニーリングプロセスを実施してもよい。アニーリングプロセスは、400℃以上の温度で実施できる。フォーミングガス内の水素は、アニーリングプロセスにおいてゲート電極を貫通し、酸素/ゲート電極境界のダングリングボンドに接着する。これらダングリングボンドを除去すると、酸素境界面品質が向上する。これにより、例えばVthスイープ曲線におけるより高いVthとヒステリシスなどのような、III−Nデバイスの性能が向上する。ゲート電極は、バリア層に隣接する凹部において垂直側壁を有し、絶縁層に隣接する凹部において傾斜側壁を有する。実装例においてゲート電極は、凹部の外に配置されソースコンタクトとドレインコンタクトに向かって延伸しソースコンタクトとドレインコンタクトから分離された延伸部を有する。これらゲート電極の延伸部は、フィールドプレートとして動作し、III−Nデバイスの空乏領域を交差する電場を減少させる。
【0063】
ゲート電極を積層したのち、ゲート電極はさらに、ゲート絶縁体をエッチングするためのエッチングマスクとして用いることができる。これによりゲート絶縁体はゲートコンタクト直下の位置を維持するが、図1に示すように他部分はエッチング除去される。これに代えてゲート絶縁体120は図6に示すように部分的にエッチングしてもよい。
【0064】
次に、チャネル層と電気的に接続されたソースコンタクトとドレインコンタクトを形成し、ゲート電極がソースコンタクトとドレインコンタクトとの間に配置されるようにする(ステップ306)。このソースコンタクトとドレインコンタクトは、図1のソースコンタクト121とドレインコンタクト122である。上記のように、ソースコンタクトとドレインコンタクトは、金属スタックとして形成できる。例えばTi/Al/Ni/AuまたはTi/Alである。金属スタックはIII−Nデバイスのチャネル層と接触している。金属スタックは、金属蒸着またはスパッタリング、オプションとして積層後アニーリングプロセスを実施することによって形成できる。ソースコンタクトとドレインコンタクトは、チャネル層内の導電チャネル(例えば2DEGチャネル)と電気的に接触しまたは接続された抵抗コンタクトを形成する。ソースコンタクトとドレインコンタクトを積層する前に、ドライエッチングにより凹部を形成することができる。次に凹部内にソースコンタクトとドレインコンタクトを形成して、金属/III−N境界における接触抵抗を減少させることができる。ソースコンタクトとドレインコンタクトは、オプションとして凹部を形成する前に形成してもよい。
【0065】
金属酸化物半導体エンハンスメントモードIII−Nパワーデバイスは、これまでAlをゲート絶縁層として用いて形成されてきた。しかしAl1−xSiOゲート絶縁層を有するIII−Nデバイスは、閾値電圧が増えゲート特性のヒステリシスが減少した。これらはいずれもエンハンスメントモード動作にとって望ましいものである。ゲート絶縁層にSiを加えることは難しく、ゲート絶縁層として高品質Alを積層するため従来必要ではなかった機器を必要とする。Si成分は最適値を超えて増加するので(図10Aに示すように)、閾値電圧は最適Si成分値に対応する閾値電圧よりも負側となる。またAl1−xSiOは、高仕事関数のゲート電極材料(例えば窒化チタニウム)とともに用いたとき、図8に示すように誘電体境界が固定しない。
【0066】
図3Bは、プロセス300Bを示す。プロセス300Bは、プロセス200Aまたは200Bを実施した後、III−Nデバイスを形成するために実施することができる。例えばステップ202、204、206、208、210、212とプロセス300Bを用いて、それぞれ図4図5図6に示すIII−Nデバイス400、500、または600を形成することができる。図3Bのプロセス300Bは、図3Aのプロセス300Aの代替として用いて、III−Nデバイス400n少なくとも一部を形成することができる。プロセス300Bは、プロセス300Aと同じステップ302、304、306を有するが、ステップ302の前に追加ステップ308を実施する。
【0067】
図3Bにおいて、プロセス300Bは、ステップ210で形成した凹部内に、チャネル層の上面においてIII−N層を再成長させるステップ(ステップ308)を有する。再成長したIII−N層は、III−Nキャップ層として動作し、図4とともに以下説明する任意の組成を有することができる。1実施形態において、III−Nキャップ層は、III−Nチャネル層に隣接するIII−Nキャップ層の側面にAlGaNを有し、III−Nチャネル層の反対側のIII−Nキャップ層の側面にGaNを有する。III−Nキャップ層は、例えばInAlGaNなどのような、三元化合物または四元化合物である。他実施形態においてIII−Nキャップ層は、III−Nチャネル層に隣接するIII−Nキャップ層の側面にAlNを有し、III−Nチャネル層の反対側のIII−Nキャップ層の側面に中間組成AlGaNとGaNを有する。III−Nキャップ層の成長は、MOCVD成長リアクタにおいて実施できる。III−Nキャップ層の厚さは1nmから10nmである。III−Nキャップ層の厚さは、III−Nバリア層の厚さよりも小さい。III−Nバリア層は30nmまでの厚さを有し、上述のように再成長したIII−Nキャップ層は1〜10nmの厚さを有する。図4の層117に示すように、III−Nキャップ層はIII−Nバリア層の側壁上で成長する。実装例において、III−Nキャップ層の成長前に成長リアクタにおいてプリカーソルガスを用い、III−Nキャップ層の成長中には用いず、これによりシートアクセプタを形成できる。これらガスの例としては、Mg、Fe、Zn、その他ガスが挙げられる。例えばIII−Nキャップ層成長の初期フェーズにおいて、AlGaNを成長させることができる。中間フェーズにおいて、Mgガスを成長リアクタに導入する。III−Nキャップ層の最終フェーズにおいて、GaNが成長し、これは実質的にMgドープがない。他実施形態において、III−Nキャップ層は、III−Nチャネル層の反対側のIII−N層の側壁上に、p型GaN層の最終組成を有する。このp型GaN層は、III−Nデバイスの閾値電圧(Vth)を向上させて、デバイスの適切なエンハンスメントモード動作を実現することができる。
【0068】
次に、アモルファスAl1−xSiOゲート絶縁体をIII−Nキャップ層上に形成する(ステップ302)。例えばアモルファスAl1−xSiOゲート絶縁体は、図3Aのプロセス300Aまたは図3Bのプロセス300Bのステップ302を用いて形成することができる。
【0069】
1実施形態において、ゲート絶縁体を形成した後、III−Nデバイスに対して積層後アニーリングプロセスを実施する。アニーリングプロセスは、ゲート絶縁体を形成する成長リアクタ内でそのまま実施することができ、このときゲート絶縁体の形成とアニーリングステップとの間においてIII−Nデバイスを空気へ露出させることはない。アニーリングプロセスは、少なくとも800℃で実施し、例えば850℃、900℃、950℃である。アニーリングプロセスは、少なくとも20分実施し、例えば25分、30分、40分である。
【0070】
他実施形態において、III−Nキャップ層の成長とアモルファスAl1−xSiOゲート絶縁体の成長は、III−Nキャップ層が成長する成長リアクタ内でそのまま実施できる。このように、III−Nデバイスは成長リアクタ内に保持され、III−Nキャップ層を成長させるステップとゲート絶縁体を形成するステップとの間において空気にさらされることはない。
【0071】
他実施形態において、III−Nキャップ層、アモルファスAl1−xSiOゲート絶縁体、およびIII−Nデバイスのアニーリングは、MOCVD成長リアクタ内で順次実施することができる。このとき、III−Nキャップ層を成長させるステップとゲート絶縁体を形成するステップとの間、およびゲート絶縁体を形成するステップとアニーリングとの間において、III−Nデバイスを空気に露出させることはない。
【0072】
III−Nキャップ層を形成した後、反応リアクタは通常、酸素層を安全に成長させることができる状態にする必要がある。III−Nキャップ層の成長中に存在する水素ガスは、酸素ソースガスを用いる前に、MOCVDリアクタから除去する必要がある。このとき、III−Nキャップ層を積層した後かつアモルファスAl1−xSiOゲート絶縁体を積層する前において、成長リアクタからIII−Nデバイスを除去する必要がある場合がある。III−Nデバイスを外気にさらすと、III−Nキャップ層上に欠陥が形成され、または不要な酸素層が形成される可能性がある。これら欠陥および/または酸素層は、デバイス性能を劣化させ、特にエンハンスメントモード動作にとって望ましいデバイス性能を劣化させる可能性がある。チャネル層114、再成長III−Nキャップ層117、およびゲート絶縁体120の間のIII−Nデバイス境界の表面品質が悪いと、閾値電圧シフトが減少し、表面電荷トラップが増加する。デバイス境界における表面電荷トラップが増加すると、特にIII−Nデバイスのスイッチング動作中におけるon抵抗Ronが増加する。
【0073】
図3Bに戻る。ゲート絶縁層上にゲート電極を形成する(ステップ304)。ゲート電極は、図3Aで説明したプロセス300Aのステップ304を用いて形成できる。上記のように、ゲート電極は少なくとも凹部の一部においてゲート絶縁体上に同じ形状で形成することができる。これは例えばチタニウム/アルミニウム(Ti/Al)または半導体材料と金属を組み合わせたもの(例えば窒化チタニウム/アルミニウム(TiN/Al))などの金属スタックを積層することにより実現でき、このとき金属蒸着またはスパッタリングを用い、オプションとして積層後アニーリングプロセスを実施する。具体例においてゲート電極は、窒化チタニウムとアルミニウム(TiN/Al)により形成される。窒化チタニウムは、アルミニウム(Al)とともに、空気に露出させることなくスパッタリングにより積層することができる。アルミニウム上面金属は導電層として動作し、ゲート電極の電子移動度を高めることができる。
【0074】
プロセス300Bのステップ308、302、304に戻る。これらステップを一緒に実施すると、III−Nチャネル層とIII−Nlキャップ層の境界において、表面トラップが減少する。アモルファスAl1−xSiO層をTi/Alなどの半導体ゲート材料と組み合わせて用いると、AlSiNなどの従来のゲート絶縁体を用いる場合と比較して、III−Nデバイス閾値電圧が向上する。
【0075】
図3Bに戻る。図3Aで説明したプロセス300Aのステップ306と同様に、ソースコンタクトとドレインコンタクトが形成される(ステップ306)。実装例において、ソースコンタクトとドレインコンタクトは、同じ材料を用いてプロセス300Aと同じプロセスで形成される。凹部抵抗コンタクトの利点は、プロセス300Aで説明したIII−Nデバイスを形成するときと同様である。
【0076】
図4は、III−Nデバイス400の断面図である。デバイス400は図1のデバイス100と同様であるが、デバイス400は凹部内のチャネル層114の上面に形成されたIII−Nキャップ層117を有する。ゲート絶縁体120は、図4に示すようにIII−Nキャップ層117上に形成される。
【0077】
デバイス400の各層は、図1のデバイス100の同じ符号のものと同様の特性を有し、したがって図1のデバイス100と同じ材料と方法で形成することができる。III−Nデバイス400を生成するプロセスは、プロセス200A(オプションステップ210なし)とプロセス300Bを組み合わせたものである。III−Nキャップ層117は、チャネル層114とバリア層116とは異なるIII−N材料組成を有する。III−N層117は、III−Nバリア層116よりも低いAl比率を有する。III−Nキャップ層117は、GaNまたはAlGaNである。III−N層117は、例えばInAlGaNなどのような三元化合物または四元化合物である。実装例においてIII−Nキャップ層117は、III−Nチャネル層に隣接するIII−Nキャップ層の側面にAlGaNを有し、III−Nチャネル層の反対側のIII−Nキャップ層の側面にGaNを有する。III−Nキャップ層117にドープして、p型GaN層またはドープAlGaN層を形成できる。他実施形態において、キャップ層117はAlN/AlGaN/GaNを有し、AlN層はIII−Nチャネル層に隣接するIII−Nキャップ層の側面に配置される。III−Nキャップ層の望ましい実施形態は、III−Nチャネル層に隣接するAlGaN初期組成と、ゲート絶縁層120に隣接するp型GaN最終組成である。
【0078】
III−Nキャップ層117は、III−Nデバイスの凹部124を形成した後に積層される。凹部124を形成するためのドライエッチング技術はイオン衝突ダメージを生じさせ、チャネルキャリア移動度を減少させる場合がある。チャネル層114の表面上のイオン衝突ダメージは、デバイスの第1部分において凹部124を形成した後にIII−Nキャップ層117を追加することにより、修復することができる。キャップ層117はさらに、ゲート誘電体とチャネル材料との間にIII−Nヘテロ接合を導入することにより、チャネル移動度を向上させることができる。具体例において、凹部124を形成するステップは、デバイスの第1部分においてIII−Nチャネル層114を部分的にエッチングするステップを有する。このエッチングされたチャネル部分は、III−Nキャップ層によって置き換えることができる。III−Nキャップ層117は、凹部124の深さを最適化してデバイスのエンハンスメントモード動作を実現するために重要である。III−Nキャップ層は、図4の層117に示すように、III−Nバリア層の側壁上に成長する。ゲート絶縁体120は、図1のデバイス100と同様のIII−Nチャネル層114の直上に代えて、凹部内のIII−Nキャップ層117上に形成される。ゲート絶縁体120は、図1のデバイス100のゲート絶縁体と同様の形状と特性を有する。
【0079】
図5は、III−Nデバイス500の断面図である。デバイス500は図4のデバイス400と同様であるが、デバイス500はプロセス200Aで説明したステップ210を用いて生成される。ステップ210は、溝124を形成する前に絶縁層118を部分的に除去するステップを有する。絶縁層118を部分的に除去すると、図5の領域126が形成される。絶縁層118は、ゲートとドレインとの間のデバイス領域においてドレイン122近傍の領域にのみ残る。除去される絶縁層118の幅は、凹部124の幅の2倍から50倍である。凹部124におけるIII−Nキャップ層117の再成長は、ソースコンタクト121とドレインコンタクト122との間の全長と比較して凹部の開口領域が小さいことに起因して、実施するのは難しい。III−Nキャップ層は絶縁層118上で成長しない傾向があるので、凹部124におけるIII−Nキャップ層117の成長速度は非常に高く、開口領域が小さいマスク効果に起因して制御が難しい。凹部124よりも大きい幅で絶縁層118を除去すると、開口領域が大きくなり、III−Nキャップ層117の成長速度を減少させ、積層厚さがより正確になる。その結果としてIII−Nキャップ層は、領域126における絶縁層118の除去によって生じたIII−Nバリア層116の露出上面上で成長する。III−Nキャップ層の厚さ制御の精度が悪いと、デバイスの閾値電圧に影響する。III−Nキャップ層が厚すぎると、デバイスの閾値電圧が増加し、デバイスはエンハンスメントモードではなく空乏モードで動作する。ゲート絶縁層120が次にIII−Nキャップ層117上で形成される。ゲート絶縁体120は、ソースコンタクト121からドレインコンタクト122までの全域にわたって延伸する。次にゲートコンタクト123が、少なくとも凹部124の一部においてゲート絶縁体120上に同じ形状で形成される。最後にゲートコンタクト123をエッチングマスクとして用いてゲート絶縁体120をエッチングし、ゲート絶縁体120がゲートコンタクト123の直下に残りそれ以外の場所でエッチングされる。これに代えて、ゲート絶縁体を絶縁層118上でのみエッチング除去してIII−Nキャップ層117上で残し(図示せず)、またはゲート絶縁体を部分的にエッチング除去するとともにソースコンタクト121とドレインコンタクト122との間のアクティブ領域全体に残してもよい(図示せず)。
【0080】
図6は、III−Nデバイス600の断面図である。デバイス600は図5のデバイス500と同様であるが、デバイス500は図2Aのプロセス200Aのsy轍鮒210を用いて絶縁層118を完全に除去したのに対し、デバイス600は図2Bのプロセス200Bにしたがって生成される。これはプロセス200Aのステップ208のようにバリア層上に絶縁層を形成するステップを含まない。次にプロセス300Bを実施し、III−Nキャップ層117をチャネル層116直上にソース121からドレイン122まで成長させる。絶縁層120はIII−Nキャップ層117上に配置される。この実施形態において、絶縁層120は通常、ゲート電極123の外側領域において部分的にエッチングされ、これによりIII−Nキャップ層117を不動体化する。デバイス600の望ましい実施形態において、III−Nバリア層116は初期組成AlGa1−xNと最終組成GaNを有し、III−Nバリア層の上面において実質的にAlを有さない。
【0081】
図7はIII−Nデバイス700の断面図である。デバイス700は図1のデバイス100と同様であるが、デバイス700はパワー電極721と722の間において2つのゲート電極723と723’を有する。デバイス700は双方向スイッチ(すなわちfour quadrant switch(FQS))として動作し、第1ゲート電極723上の電圧が第1パワー電極との関係で印加され、第2ゲート電極723’上の電圧が第2パワー電極722との関係で印加され、パワー電極721と722はそれぞれデバイス700のソースとドレインとして動作する(デバイスの電圧極性および/または電流の向きに依拠する)。
【0082】
デバイス700の層710、721、714、716、718はそれぞれ、図1のデバイスの層110、112、114、116、118と同じ特性を有し、したがって図1のデバイス100について説明したものと同じ材料と同じ方法で形成することができる。凹部724と724’は、図1の凹部124と同じ形状と特性を有し、図1のデバイス100で説明したものと同じ方法で形成できる。ゲート電極723と723’、およびゲート絶縁層720と720’は、図1のゲート絶縁層120と同じ形状と特性を有し、図1のデバイス100で説明したものと同じ方法および/または同じ材料で形成できる。
【0083】
図8は、それぞれ異なる仕事関数を有するゲート電極材料のフラットバンド電圧800を示す。図8に示すように、AlSiNで形成されたゲート絶縁層のフラットバンド電圧は、金属仕事関数の範囲において比較的変化しない。しかしAl1−xSiOで形成されたゲート絶縁層のフラットバンド電圧は、金属仕事関数と強い正相関を有する。この図面における金属仕事関数4.3eVに対応するゲート電極はTi/Alである。この図面における金属仕事関数4.9eVと5.0eVに対応するゲート電極は、TiNとNiである。Al1−xSiOは金属と非固定誘電体面を有するのに対し、AlSiN誘電体面はフェルミレベルピニングによって固定される。図8の測定結果は、Al1−xSiOとともにTiNなどの高仕事関数を有するゲート電極材料を有するIII−Nデバイスは、ゲート絶縁体としてAl1−xSiNを用いるIII−Nデバイスよりもデバイス性能(例えば高閾値電圧)がよいことを示している。
【0084】
図9Aは、図10に示すVTH測定結果の条件を規定する。図9Aに示すように、VTHはIDS@10−5A/mmとなるVGSとして規定される(VTH=VGS@10−5A/mm)。図9Bは、図10に示す金属−絶縁体−半導体キャパシタ構造について、低電界電圧(VLF)限界を判定する条件を示す。比較的低いVにおいて(−10Vから10V)、ゲートリークは一定かつ小さい。Vが大きくなると(>10V)、デバイスが完全破壊に至るまでゲートリークが増加する。10−4A/cmのゲートリーク(I)Vは、VLFを定義するために用いられる。デバイス動作は低電界範囲が望ましい。低電界範囲外の動作はデバイスを不安定にし、ゲート絶縁誘電体にホール注入を生じさせる。この動作領域は、VLF範囲のデバイス動作よりも大きいヒステリシス特性を示した。
【0085】
図10は、Al1−xSiOゲート絶縁層を有するIII−Nデバイスの閾値電圧(VTH)の変化の第1グラフ1000Aと低電界電圧(VLF)の第2グラフ1000Bを示す。誘電成分Siを変化させており、xは%Siに相当する。第1グラフ1000Aによれば、Si成分が30%から80%へ増加するとVTHは増加し、Si成分が100%に近づくと減少する。III−NデバイスのVTHは、エンハンスメントモード動作をするためには正でなければならない。安定動作のための最小の望ましいVTHは、第1グラフ1000Aにおいて水平線で0.35Vとして示している。第2グラフ1000Bによれば、低電界電圧(VLF)は0%から50%Siにおいて増加し、Siが80%に近づくと減少する。100%Siの誘電層(SiO)は通常、VLFが非常に高いが、VTHは望ましくない。安定動作のための最小の望ましいVLFは、第2グラフ1000Bにおいて水平線で15Vとして示している。Si成分を最適化し、高VTHと高VLFを有するIII−Nデバイスを考慮する。図10のグラフ1000Aと1000Bが示すように、VTHとVLFの性能要求を満たす理想Si%範囲は、Al1−xSiOゲート絶縁層の約40%〜50%Si成分である。
【0086】
いくつかの実装例を説明した。ただし、本明細書が記載する技術とデバイスの要旨と範囲を逸脱することなく、様々な変形をなすことができることを理解されたい。実装例において説明した特徴は、独立してまたは組み合わせて用いることができる。したがって他実装例も特許請求範囲の範囲内である。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10