(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
花壇や庭等の植栽のデザインを適正に行うためには、植栽に携わる複数の関係者の間で植栽デザインに関する情報を伝え合う必要がある。従来は、専門用語を含む言葉や設計図面、またはコンピュータ(設計用ソフトウェア)を用いて情報の伝達が行われていた。しかし、このような、従来の植栽デザインの実施方法においては、以下に示す問題点(イ)ないし(ハ)があった。
【0003】
(イ)花壇や庭の植栽デザインを行い、この植栽デザインに関する情報を他人に伝えるためには、花などの植物に関する知識や園芸に関する知識、さらには造園に関する知識が必要であり、未経験者にとって植栽デザインに参加すること自体が容易でない。
【0004】
(ロ)植栽デザインは、私人から委託を受けた専門業者によって行なわれ、または公共花壇を設置する際に市民の手で行われるなど、様々な状況の下で実施されるが、いずれの場合においても、知識や経験の異なる複数の関係者の間で、専門用語を含む言葉や設計図面を交えながら作業を進めていく必要がある。このため、未経験者のみならず経験者にとっても、周囲の者との意思疎通が容易でない。
【0005】
(ハ)近年は、地域住景観に関する取り組みの一環として市民活動による公共花壇づくりが広く行われているが、前記問題点(イ)および(ロ)が障壁となって参加者の幅が狭められている。
【0006】
そこで本発明者は、前記問題点(イ)ないし(ハ)を解消するために、植栽される花などの植物(以下、植栽される花などの植物を「植材」という。)に関する知識や園芸に関する知識を持たない者であっても、花壇や庭(以下、これら花壇や庭のように、前記植材を植えて植栽デザインが施される領域を、「植栽対象」という。)の植栽デザインに関する具体的イメージを視認可能な形で簡単に具現化することのできるツールとして、特許文献1に示す植栽デザインツールを創作した。
【0007】
この植栽デザインツールは、植栽対象である花壇等の平面図が簡易的に表された植栽デザインシート(1)と、このデザインシート(1)の上に着脱自在に載置されるセロハンピース(9、10、11)と、植栽する植材の情報が表示された花材カード(12)とから構成されている。
【0008】
前記植栽デザインシート(1)の表面には、植栽デザインに必要な花壇の状況や、植材を植える間隔(1株の植材を植える領域)を示すグリッド(格子)等が記されており、一方前記花材カード(12)の表面には、植材の高さに比例した上下寸法を持つ写真(13)が載置されている。また、前記セロハンピース(9、10、11)は、同種の植材が複数植えられた(以下、同種の植材を一定の場所に複数本植えることを、「群植」という。)領域であって、植栽対象である花壇等を所定の距離から眺めたときに、群植された植材の色彩が一つの塊として視認できる最小面積の領域を表す要素である。
【0009】
前記構成からなる植栽デザインツールによれば、デザインシート(1)上にセロハンピース(9、10、11)および花材カード(12)を配置するだけの簡単な作業によって、使用者がイメージする植栽デザインを視認可能な形で表現することができる。このため、植物や園芸に関する知識や経験の乏しい者であっても、この植栽デザインツールを用いることで自身の植栽デザインについてイメージを簡単に表現することができるようになる。この結果、専門用語を含む言葉や設計図面および複雑なパソコン操作を要せずとも、周囲の者と植栽デザインに関する情報を共有することができるようになり、前記問題点(イ)ないし(ハ)を解消することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の植栽デザインツールによれば、前述したように、簡単な作業によって自分がイメージする植栽デザインを視認可能な形で表現することができるようになる。しかし、前記植栽デザインツールにあっては、その表現内容が平面的なものにとどまり、立体物を表現するツールとしては十分でないといった問題、特に、植物の高さに関する情報(イメージ)が十分に表現できないといった問題がある。
【0012】
本発明は、前記問題に鑑み創作された発明であって、その目的は、誰もが簡単な作業によって自身が思い描く植栽デザインを視認可能かつ立体的に表現でき、かつ専門用語や設計図面および複雑なパソコン操作を要することなく植栽デザインに関する情報を他人に伝達することのできる植栽デザインツール及びその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、植栽対象の平面図が記された植栽デザインシートと、植材の群植を表す要素であって前記植栽デザインシート上に着脱自在に載置される有色の植材ピースと、前記植材を立体的に表現する植材模型と、を含
み、前記植材模型は、逆錘状部分を有し、この逆錘状部分の天端に前記植材の写真または図柄が表示されていることを特徴とする植栽デザインツールである。
このような特徴を有する植栽デザインツールによれば、植栽デザインシートおよび植材ピースを用いた平面的な表現に加え、植材模型を用いた立体的な表現を伴う植栽デザインを行うことができるので、植栽デザインをより実際のものに近いデザインとして把握することができる。
また植材の実物の形状に近い逆錘状を呈した前記植材模型を用いることで、植栽デザインの立体感が実物に近い形で強調され、植栽デザインをより具体的イメージで立体的に表現することができる。
なお、前記有色の植材ピースとは、群植される同種の植材の色彩を有した植材ピースを意味する。
【0014】
また、本発明は、前記特徴に加え、前記植材模型が前記植材の丈に応じて決定される高さを有するように構成してもよい。
植材模型が植栽の丈に応じた高さを有することで、複数の植材を用いて植栽デザインを行う際、植材同士の相対的な高さの違いが視認可能となり、実物に近い形で植栽デザインをイメージ及び伝達することができる。
花壇などの植栽対象は、一般に、これを側方(斜め上方)から鑑賞することが多いので、立体的な高低を有する表現を伴う植栽デザインは非常に効果的である。さらに、高低差を間違えると蒸れて枯れる原因になって実際の植栽として成立しなくなる虞があるが、これを防止することも可能になる。
即ち、高低差を間違えると、植栽デザインとしても、実際の植栽としても成立しなくなるが、本発明によれば、これらのいずれも成立させることが可能になる。
なおさらに、前記植栽デザインシートの表面に前記植材が植栽される領域を区分するグリッド(格子)を記し、また前記植材ピースが前記群植の最小面積に対応した大きさを有するように構成することが好ましい。
前記グリッド(格子)を備えることで、植栽対象の大きさ(面積)を具体的に把握し易くなる。グリッドによって区画される領域としては、植栽の1株の領域が好ましいが、これに限定されず、グリッドの間隔、設定はこれを変えることもできる。
【0016】
また、本発明は、前記特徴に加え、植栽する植材を平面的に表示する植材カードをさらに含み、前記植材カードは、前記植材と同じ色を有し、かつ前記植材の高さに比例した上下寸法を有する写真または図柄が表面に表示されている、といった特徴を備えていてもよい。
このような特徴を備えることで、さらに実物に近い形で植栽デザインをイメージすることができる。
またこのとき、植栽デザインシートと前記植材カードとに同一の表面処理が施されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記特徴に加え、前記植栽デザインシートに前記植栽対象の周辺状況を表すことが好ましい。
このような構成を備えることで、周辺状況も含めた形で植栽デザインをイメージすることができる。
【0018】
また、本発明は、少なくとも、植栽対象の平面図が記された植栽デザインシートと、植材の群植を表す要素であって前記植材の色に応じた色を有し前記植栽デザインシート上に着脱自在に載置される複数種類の植材ピースと、前記植材ピースによって表現される植材を立体的に表現
し、且つ逆錘状部分を有し、この逆錘状部分の天端に前記植材の写真または図柄が表示されている植材模型と、を用意し、前記植栽デザインシート上に前記複数種類の植材ピースを配置して植栽デザインを行う植栽デザインステップと、前記植栽デザインシート上に配置した植材ピースに対応する植材模型を、前記配置した植材ピースの位置と整合させながら配置する植材模型配置ステップと、を有することを特徴とする植栽デザインツールの使用方法である。
このような特徴を有する植栽デザインツールの使用方法によれば、植栽デザインシートおよび植材ピースを用いた平面的な表現に加え、植材模型を用いた立体的な表現を伴う植栽デザインを容易かつ確実に行うことができる。これによって、植栽デザインをより実際のものに近いデザインとして把握することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、専門用語を含む言葉や設計図面および複雑なパソコン操作を要することなく、デザインシート上に植材ピースおよび植材模型を配置するだけの簡単な作業によって、植栽デザインを視認可能かつ立体的に表現することができる。即ち、植栽デザインのイメージを表現できる。また人に伝達することが容易になり、ファシリテーションを推進できる。また植材模型により高低差の確認ができ、より実際に成立する植栽デザイン(植栽計画)となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1ないし
図8を参照しながら、本発明に係る実施の形態を説明する。なお、説明文中の上下および左右は、参照する図面に示された内容を基準に定義されるものとする。
【0022】
<植栽デザインツールTの構成>
はじめに、本実施の形態に係る植栽デザインツールTの構成について、
図1ないし
図5を参照しながら説明する。
【0023】
植栽デザインツールTは、
図1に示すように、植栽デザインシート1と、植材ピース10、11および12と、植材模型20、21および22と、植材カード30、31および32とから主に構成されている。
【0024】
植栽デザインシート1は、植栽デザインを施す対象領域である植栽対象の平面図が記されたシートであって、例えば、略A2サイズの横長の略長方形を呈した紙製シートまたは樹脂製シートからなり、好ましくは、表面にラミネート加工が施されている。ラミネート加工が施されることで、例えば、植栽デザインシート1上へ載置される植材ピース10、11および12がセロハン製の場合に、その着脱が静電気によって簡単かつ確実に行うことができるようになり、また、同じく詳細については後述する植材カード30、31および32との統一感を生み出すことができる。
【0025】
なお、植栽デザインシート1とセロハン製の植材ピース10、11および12とが静電気で付着することで、完成した植栽デザインの平面図をカラーコピーすることが容易となる。このため、1つの植栽デザインを(暫定的に)完成させた後に、植栽デザインシート1と植材ピース10、11および12とを含む平面図をカラーコピーして保存し、次に別の植栽デザインを(暫定的に)完成させてカラーコピーすることを繰り返すことができる。これにより、1つの植栽デザインツールTを用いて異なる数種の植栽デザインを作成・保存し、そののちこれら数種の植栽デザインを比較してその中から最適なデザインを選定するなど、その活用の幅を広げることができる。
【0026】
植栽デザインシート1の表面1aには、
図2に示すように、植栽対象である花壇2と、花壇2の周囲に配設されているベンチ等の設置物3、園路4および樹木5といった周辺状況が表示されており、さらに、植栽対象である花壇2の内側に、複数の垂直線と水平線とによって形成された複数のグリッド(格子)6が記されている。このグリッド(格子)6は、1株の植材が植栽される領域を区分するものであって、1マスが、25cm四方の領域面積に対応した大きさで記されている。このため、直径が略30マスで区分けされた
図2に示される花壇3は、直径が略7.5mで面積が略44m
2の円形花壇ということになる。なお、植栽対象の面積を、250m
2程度(直径略18mの円形の花壇等)にまで拡大してもよい。グリッド6の寸法は変更可能であり、例えば20cm四方の領域面積に対応した大きさなどで記してもよい。
【0027】
植栽デザインシート1の表面1aには、前記各種周辺状況に加え、後述するように、植栽デザインを行う上で特に考慮すべき視認方向Pを、矢印等を用いて書き記してもよい(
図7参照)。
【0028】
なお、前記植栽対象の周辺の情報(周辺状況)は、例えばカラー印刷を用いて表面1aに表現されるが、これに限定されるわけではない。また、植栽対象の周囲に配設されているベンチなどの設置物3、園路4および樹木5等を、写真を用いて表現してもよい。
【0029】
植材ピース10、11および12は、植栽された花壇2を所定の距離から眺めた際、同種または同色の植材が群植された領域が所定の色彩(主としてその植材の花の色彩)の塊(所定の色彩を放つ一群)として視認できる様子を表す要素であり、その大きさ(面積)は、例えば植栽デザインにおける群植の最小面積に対応して決定される。植材ピース10、11および12は、例えば有色のセロハンから形成されている。
【0030】
植材ピース10、11および12は、植栽される種々の植材、例えば、赤色の花の植材、黄色の花の植材および青色の花の植材の各色彩(より具体的には、これら植材の群植が発する各色彩)に対応できるように、例えば、植材ピース10は赤色、植材ピース11は黄色、植材ピース12は青色にそれぞれ着色されている。また、群植される様々な形に対応できるよう種々の形状、例えば、
図3に示すように、植材ピース10a、11aおよび12aは円形、植材ピース10b、11bおよび12bは三角形、植材ピース10c、11cおよび12cは四角形をそれぞれ呈している。植材ピースの形状や色の種類は、前述したものに限定されるわけではなく、必要に応じて他の形状や色を有する植材ピースに変更または植材ピース10、11および12に追加してもよい。
【0031】
植材模型20、21および22は、植栽される植材を立体的に表現する要素である。植材模型20、21および22は、無色透明で、その上面(天端)にセロハンと写真が設置されている。セロハンは有色で、写真はセロハンの上に重ねられ、これらセロハンと写真は前記植材模型20、21および22を構成する合成樹脂内にインサート成形されている。即ちセロハンと写真の上には、薄く透明な合成樹脂の層が形成されている。植材ピース10、11および12と同様に、植栽される種々の植材、例えば、赤色の花の植材、黄色の花の植材および青色の花の植材の各色彩(より具体的には、これら植材の群植が発する各色彩)に対応できるように、例えば、植材模型20のセロハンは赤色、植材模型21のセロハンは黄色、植材模型22のセロハンは青色にそれぞれ着色されている。即ち、各植材模型20の上面は、植材の色彩に合わせた色彩となっている。また、植栽される種々の植材の実際の丈に対応できるように、その高さが異なっている。例えば、実際の植材の丈に比例する高さなどにする。なお、これら植材模型20、21および22の基本形態は、セロハンの色と写真の内容と高さを除いて共通である。
【0032】
以下、植材模型20,21,22を代表して植材模型20の構成について説明すると、植材模型20は、
図4(a)に示すように、例えば本体部分20aと足部20bとを備え、透明な合成樹脂、例えばアクリルによって形成されている。
【0033】
本体部分20aは、逆錘状を呈しており、特許請求の範囲に記載の「逆錘状部分」を形成している。また、その天端(上面)20cには、セロハンからなる色付きシートと植栽される植材の写真20dが設置され、その上面は本体部分20aを構成する透明な合成樹脂がこれを覆っている。色付きシートの色は、植材(主としてその花)の色と同一となるように構成されている。なお、本体部分20aの形状は、逆錘状に限定されるわけではなく、おおよそ植材を立体的に表現し得る形状であれば他の形状でもよく、例えば錘状または柱状であってもよい。但し、本実施の形態に係る逆錘状の本体部分20aは、一般的な植材の実物の形状に近く、植栽デザインの立体感が実物に近い形で強調されるので、特に好適である。
【0034】
植材模型20の高さ20Hは、写真20dによって表された植材の実際の丈に対応(例えば比例)するように決定される。この高さ20Hと実際の丈HRとのスケール比K2(K2=高さ20H/丈HR)と、他の植材模型21,22それぞれのスケール比K2とを同一にすることによって、植栽される種々の植材の実際の丈に対応する高さとなる。
【0035】
なお、本体部分20aの天端20cに設置される写真20dを手書きの図柄等に替えてもよい。また、本体部分20aの側面20eに植材(花)の写真や図柄を貼り付けるなどして表示してもよい。さらに、本体部分20aの天端20cまたは側面20eに植材に関する情報、例えば、その種類(名称)や草丈の数値を表示してもよい。但し、側面20eに何ら装飾を施さず透明なままとする方が、デザインを行う人に対する情報を極力少なくすることができ、デザインを考えることの邪魔にならず、デザインのための情報の認知が楽になる。
【0036】
植材カード30、31および32は、植栽される植材を平面的に表現する要素であって、植材ピース10、11および12、ならびに植材模型20、21および22と同様に、植栽される種々の植材、例えば、赤色の花の植材、黄色の花の植材および青色の花の植材の各色彩(より具体的には、これら植材の群植が発する各色彩)に対応できるように、例えば、植材カード30は赤色、植材カード31は黄色、植材カード32は青色にそれぞれ着色されている。また、植栽される種々の植材の実物の丈に対応できるように、各々に挿入される植材の写真30c,31c,32cの高さ(上下寸法)が異なっている(
図5参照)。なお、これら植材カード30、31および32の基本形態は、色と挿入される写真30c,31c,32cとそれらの高さ(上下寸法)を除いて共通である。
【0037】
以下、植材カード30,31,32を代表して、植材カード30の構成について説明する。この植材カード30は、
図5(a)に示すように、例えば、紙または樹脂からなる平板状の本体部30aと、この本体部30aの表面に覆設されたカバー部30bとを有して構成される。さらに、本体部30aとカバー部30bとの間に、表現する植材の写真30cが挿入できるように構成されている。
【0038】
本体部30aは、その表面の色を、表現する植材の花の色と同色とすることが望ましい。
なお、植材(花)の色と同色のセロハンシートを別途用意し、このセロハンシートを本体部30aとカバー部30bとの間に挿入するように構成してもよい。また、本体部30aの裏面に、植材に関する情報(種類、草丈の数値等)を記してもよい。
【0039】
カバー部30bは、透明な素材からなり、他の構成要素と視覚的および触覚的な統一感を持たせるために、例えば植材ピース10、11および12と同一の素材であってもよい。また、カバー部30bは、植栽デザインシート1と同様のラミネート加工によるものであってもよい。
【0040】
本体部30aとカバー部30bとの間に挿入される写真30cは、その高さ(上下寸法)30Hが、表現する植材の丈HRに対応するように決定される。この高さ30Hと実際の丈HRとのスケール比K3(K3=高さ30H/丈HR)と、他の植材カード31,32の写真31c,32それぞれのスケール比K3とを同一にすることによって、植栽される種々の植材の実際の丈に対応する(比例する)高さとなる。
【0041】
<植栽デザインツールTの使用方法>
次に、前記構成からなる植栽デザインツールTを用いた植栽デザインの実施方法について説明する。この植栽デザインツールTを用いた植栽デザインは、例えば
図6に示す手順を経て実施される。
【0042】
なお、以下の説明では、赤色の花の植材、黄色の花の植材および青色の花の植材を用いて植栽デザインを行うこととし、植材ピース10、植材模型20および植材カード30は、赤色の花の植材およびその群植を表し、植材ピース11、植材模型21および植材カード31は、黄色の花の植材およびその群植を表し、植材ピース12、植材模型22および植材カード32は、青色の花の植材およびその群植を表すものとする。また、植材ピース10、11および12については、
図3に示すように、赤色円形植材ピース10a、黄色円形植材ピース11aおよび青色円形植材ピース12a、赤色三角形植材ピース10b、黄色三角形植材ピース11bおよび青色三角形植材ピース12b、ならびに赤色四角形植材ピース10c、黄色四角形植材ピース11cおよび青色四角形植材ピース12cがそれぞれ用意されているものとする。
【0043】
まず、使用者は、植栽デザインシート1を広げてこれを机上等に載置する(第1のステップS1、シート設置ステップ)。花壇2の内側には、上述のように、グリッド(格子)6が記されている。グリッド(格子)6があることで、使用者は、1株の植材が植栽される領域の大きさ、植栽対象である花壇2の大きさおよび周辺の設置物の大きさを把握することができ、これによって、植栽デザインがイメージし易くなっている。
【0044】
なお、使用者は、
図7に示すように、必要に応じて、植栽デザインを行う上で特に考慮すべき視認方向Pを、矢印等を用いて植栽デザインシート1の表面1a上に書き記してもよい。
【0045】
次に、使用者は、植材カード30、31、32を、前記植栽デザインシート1上の任意の場所(例えば使用者が見易い位置)に配置する(第2のステップS2)。これによって、デザインを始める前に、今回のデザインに使用する植材を、使用者がより具体的に把握できる(植材把握ステップ)。またこのタイミングであれば、用意された植材よりも少ない種類の植材を選び取ることなども可能になる。
【0046】
次に、使用者は、机上に広げられた植栽デザインシート1の上に、赤色の植材、黄色の植材および青色の植材に対応する植材ピース10(10a,10b,10c)、11(11a,11b,11c)、12(12a,12b,12c)を配置していく(第3のステップS3、植栽デザインステップ)。
【0047】
例えば、
図7および
図8に示すように、花壇2の中央部に位置する4マス四方の領域に、赤色四角形植材ピース10cを配置する。ここで、1マスは、前述したように、1株の植材が植えられる25cm四方の領域に相当することから、実際には、花壇2の略中央部の1m四方の領域に16本の赤色の植材を植栽(群植)することになる。
さらに、この赤色四角形植材ピース10cの上下に位置する領域に、それぞれ赤色円形植材ピース10aを配置し、前記赤色四角形植材ピース10cの左右に位置する領域にそれぞれ青色円形植材ピース12aを配置する。
さらにこれら赤色,青色円形植材ピース10a,12aの外側に位置する領域に、それぞれ4枚の赤色三角形植材ピース10bからなる1群、4枚の黄色三角形植材ピース11bからなる1群、4枚の青色三角形植材ピース12bからなる1群、および2枚の赤色三角形植材ピース10bと2枚の黄色三角形植材ピース11bとからなる1群をそれぞれ配置する。
【0048】
なお、異なる色の植材ピース10、11、12が重なる部分(図では示していない)は、いずれか一方の1つの色の植材を植栽し、または両植材を混在させて植栽することとする。
また、必要に応じて植材ピース10、11、12を、重なり合わないように、所定の形にカットしてもよい。
【0049】
次に、使用者は、これら植材ピース10、11、12によって表現された植材を表す植材模型20、21、22を、配置した植材ピース10、11、12と整合させながら所定の位置に配置していく(第4のステップS4、植材模型配置ステップ)。
【0050】
植材模型20、21、22は、例えば以下のようにして配置される。すなわち、植材模型20、21、22は、1組ずつ用意されており、赤色の植材、黄色の植材および青色の植材の群植をそれぞれ表現する植材ピース10、植材ピース11および植材ピース12が配置された場所に、植材模型20、21、22が配置される。植材ピース10、植材ピース11および植材ピース12が複数の異なる場所に点在する場合、すなわち、同色の植材が群植された場所が複数箇所に点在している場合は、最も面積が大きい場所に、植材模型20、21、22が配置される。
【0051】
図7および
図8に示す例では、植材ピース10を用いて表現される郡植のうち、最大面積を有する領域(主要領域)上に植材模型20が配置され、植材ピース11を用いて表現される郡植のうち、最大面積を有する領域(主要領域)上に植材模型21が配置され、植材ピース12を用いて表現される郡植のうち、最大面積を有する領域(主要領域)上に植材模型22が配置されている。また
図7、
図8に示すように、植材ピース10を用いて表現される郡植のうち、最大面積を有する領域(主要領域)の近傍に植材カード30を配置し、植材ピース11を用いて表現される郡植のうち、最大面積を有する領域(主要領域)近傍に植材カード31を配置し、植材ピース12を用いて表現される郡植のうち、最大面積を有する領域(主要領域)近傍に植材カード32を配置してもよい。
【0052】
次に、使用者は、第1のステップS1ないし第4のステップS4を経ることで表現された植栽デザインが、自身の思い描くデザインであるか否かを判定する(第5のステップS5、デザイン判定ステップ)。
植栽デザインシート1上に表現された植栽デザインが、使用者の思い描くデザインであれば、一連の作業は終了する。他方、植栽デザインシート1上に表現された植栽デザインが、使用者の思い描くデザインでなければ、従前の第2のステップS2ないし第4のステップS4(または第3のステップS3および第4のステップS4)を繰り返す。
【0053】
以上のステップを経ることで、使用者の思い描く植栽デザインが、視認可能な形、すなわち、植栽デザインシート1上に植材ピース10、11および12、植材模型20、21および22、場合によってはさらに植材カード30、31および32が載置された形で具現化される。
【0054】
<植栽デザインツールTの効果>
本発明の実施の形態である植栽デザインツールTを用いれば、デザインシート1上に植材ピース10、11および12、植材模型20、21および22、場合によってはさらに植材カード30、31および32を配置するだけの簡単かつ直感的な作業によって、使用者がイメージする植栽デザインを視認可能かつ立体的な形で表現することができる。このため、植材(花)や園芸に関する専門知識のない者であっても、楽しみながら、簡単かつ確実に植栽デザインを作成することができる。
【0055】
特に、植材模型20、21および22を用いて立体的表現が可能になることで、草丈の面から植材の選択またはその配置を検討することができるといった、平面的表現のみでは招来されることのない効果がもたらされる。例えば、植栽対象である花壇2の中央から周縁に向かうにしたがって植材の草丈が次第に低くなっていく植栽デザインにおいて、隣接する2つの植材の草丈に不自然な高低差があるか否かを、作成中の植栽デザインツールTを水平方向から見ることで確認することができるようになる。これにより、草丈が連続的に変化するデザインに対して最適な植材の選択またはその配置を検討することができる。また、高低差を間違えて蒸れて枯れることが無いように考慮しながら、高低差をデザインすることも可能になるので、植材模型20、21および22の使用は有効である。
【0056】
また、専門用語を含む言葉や設計図面および複雑なパソコン操作を要することなく、視認可能かつ立体的な形で植栽デザインを表現することができるため、前述したような問題点、すなわち、(イ)花壇や庭の植栽デザインを行い、または植栽デザインに関する情報を他人に伝えるためには、植材(花)や園芸に関する知識が必要であり、未経験者にとって植栽デザインに参加すること自体が容易でない。(ロ)植栽デザインは、依頼を受けた専門業者によって私的に行なわれ、または公共花壇を設置する際に市民の手で行われるなど、様々な状況の下で実施されるが、いずれの場合においても、専門用語を含む言葉と図面とを交えながら知識および経験が異なる複数の者の間で作業を進める必要がある。このため、未経験者のみならず経験者にとっても、周囲の者との意思疎通が容易でない。(ハ)近年は、地域住景観に関する取り組みの一環として市民活動による公共花壇づくりが広く行われているが、前記問題点(イ)および(ロ)が障壁となって参加者の幅が狭められている。といった問題点を解消することができる。
【0057】
さらに、植栽デザインシート1上に、植材ピース10、11および12、植材模型20、21および22、場合によってはさらに植材カード30、31および32を自在に配置できるため、思考錯誤を繰り返すなかで、何度でも植栽デザインを試みることができる。
【0058】
また、植栽デザインシート1と植材ピース10、11および12とが静電気で付着していることから、完成した植栽デザインの平面図(植栽デザインシート1から前記植材模型20,21及び22を取り除いたもの)をカラーコピーすることが容易となる。このため、1つの植栽デザインツールTを用いて、植栽デザインを作成する度にそれぞれコピーしておき、事後的にこれら複数の植栽デザインの中から最適なデザインを選定するなどの活用方法が可能になる。
【0059】
上記完成した植栽デザイン(そのカラーコピーなど)のデザイン図は、そのまま実際の植え付け図面として使用することができる。また上記完成した植栽デザイン(そのカラーコピーなど)のデザイン図には、グリッド6が表示されているので、これらグリッド6により苗の数を簡単に把握することができ、植え付けに不慣れな人であっても、苗の発注がし易くなる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態で用いた植栽デザインシートのサイズを変更したり、また、用いる植材ピースや植材模型の形状、大きさ、色の種類を適宜変更したりすることもできる。また、直接明細書および図面に記載がない何れの構成であっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。さらに、前記記載および各図で示した実施の形態は、その目的および構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。加えて、前記記載および各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施の形態になり得るものであり、本発明の実施の形態は前記記載および各図を組み合わせた一つの実施の形態に限定されるものではない。