特許第6888038号(P6888038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6888038
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】蒸気発生器具及び揮発性材料のプラグ
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/10 20060101AFI20210603BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20210603BHJP
【FI】
   A24B15/10
   A24F40/20
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-28182(P2019-28182)
(22)【出願日】2019年2月20日
(62)【分割の表示】特願2016-511093(P2016-511093)の分割
【原出願日】2014年5月2日
(65)【公開番号】特開2019-141039(P2019-141039A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年2月20日
(31)【優先権主張番号】13166239.7
(32)【優先日】2013年5月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】JT INTERNATIONAL S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(74)【代理人】
【識別番号】100169100
【弁理士】
【氏名又は名称】辰川 肇
(72)【発明者】
【氏名】バンクス,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】クロフォード,ケリー
(72)【発明者】
【氏名】イルマス,ウゴルハン
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−505874(JP,A)
【文献】 特表2007−507231(JP,A)
【文献】 特開平05−184675(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102972861(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102813278(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B1/00−A24F47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器具のための揮発性材料のプラグであって、
タバコ及び保湿剤を含み、
含水量が1から4wt%であり、
前記保湿剤の含有量が20から60wt%であり、
前記タバコの含水量が3から5wt%の範囲内であり、
ユーザによって開封可能な包装材内又はディスペンサ内に収容されている、
揮発性材料のプラグ。
【請求項2】
前記保湿剤がプロピレングリコールである、請求項1に記載の揮発性材料のプラグ。
【請求項3】
チャンバを備える蒸気発生器具であって、該チャンバには、請求項1又は2に記載の揮発性材料のプラグが挿入されていて、該チャンバは、該プラグを燃焼させることなく加熱することで蒸気を発生する蒸気発生器具。
【請求項4】
タバコ加熱具である、請求項3に記載の蒸気発生器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生器具及びそれに用いられる揮発性材料のプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性材料、例えばタバコを含む材料を燃焼させることなく加熱し、吸引蒸気を発生させる器具が普及しつつある。これらの器具は通常、ガス又は電気を用いる熱源と、蒸気発生物を含む揮発性材料を受容するチャンバとを備えている。使用時には、この材料を器具に挿入し、上記熱源で加熱して吸引蒸気を発生させる。この種の器具の一例が、PCT国際公開第2009/079641号に記載されている。
【0003】
この種の器具とそれに用いられる材料とが普及しつつあるのは、タバコ等の植物材料を燃焼させることなく、揮発性材料を喫煙する行為に極めて近い体験をユーザにもたらすことができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】PCT国際公開第2009/079641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種の器具は、蒸気の発生レベルが一定でなく、揮発性材料の使用可能時間がばらついており、ユーザに提供される風味/味が不安定で一貫していないことが多いため、必ずしも消費者に好評ではない。
【0006】
本発明は、風味に関する格段に優れた一貫性と品質とをユーザに提供する蒸気発生器具等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の側面によれば、本発明は、蒸気発生器具のための揮発性材料のプラグであって、タバコ及び保湿剤を含み、含水量が1から4wt%であり、前記保湿剤の含有量が20から60wt%であり、前記タバコの含水量が3から5wt%の範囲内であり、ユーザによって開封可能な包装材内又はディスペンサ内に収容されている、揮発性材料のプラグを提供する。
【0008】
第2の側面によれば、本発明は、チャンバを備える蒸気発生器具であって、該チャンバには、第1の側面に係る揮発性材料のプラグが挿入されていて、該チャンバは、該プラグを燃焼させることなく加熱することで蒸気を発生する蒸気発生器具を提供する。
【0009】
第3の側面によれば、本発明は、タバコ加熱具である第2の側面に係る蒸気発生器具を提供する。

【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明にかかるカプセルを有する加熱具の模式的な側断面図である。
図2】プラグと本発明にかかるカプセルとを通して見た側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、「含水量」なる用語は、タバコ等の植物材料を含む任意の材料(例えば、揮発性材料)中に存在する水分(即ち、水)の量を指す。
【0012】
ここで用いる「揮発性」なる用語は当該技術分野における通常の意味で用いられ、加熱により固体状態又は液体状態から気体状態へと変換され得る材料を指すものとする。
【0013】
含水量は、揮発性材料、特にタバコ等の植物材料の化学組成物の重要なパラメータである。揮発性材料の含水量、及び揮発性材料の成分は、下記のような当該材料の様々な性質に影響を及ぼし得る。
微粉化の容易さ。乾燥の進んだ材料ほど微粉末に粉砕し易い。
質感と密度。より湿潤な材料ほど密度が高く、粘着性が高い。
加熱時の蒸気発生効率。含水量は、揮発性材料及び/又はその成分が所望の気化温度に達するために必要な時間とエネルギーに影響するため。
【0014】
本発明者らはまた、揮発性材料のタバコ成分の含水量が多いと蒸気発生器具のマウスピース部が熱くなってしまうことを見出している。これは、蒸気中に含まれる水の流れが、熱をオーブン又は熱源からマウスピースに伝えているためであると考えられる。
【0015】
本発明者らは更に、揮発性材料のタバコ成分の含水量の減少が、ユーザが吸引する際の揮発性材料の風味及び/又は味に影響を及ぼすことも見出している。タバコの風味及び/又は味は、含水量が少な過ぎるとえぐ味が増し不快になる場合がある。
【0016】
そこで本発明は、蒸気発生器具に用いるのに好適な揮発性材料を提供するものであり、当該揮発性材料は、含水量約3から5wt%のタバコを含む。好ましくは、このタバコは、約4wt%の含水量を有する。誤解の無いように述べるならば、これらwt%の値はタバコ成分のみの総重量に基づく値であって、揮発性材料の総重量に基づく値ではない。
【0017】
タバコの好ましい形態としては、葉タバコ、STEM、エキスパンドタバコブレンド(expanded tobacco blend)及び再形成タバコブレンド(reconstituted tobacco blend)が挙げられる。
【0018】
本発明者らはまた、蒸気発生器具において本発明の揮発性材料を用いると、加熱により蒸気を発生させる際の雑音が著しく低減又は回避できることも見出している。
【0019】
風味の度合いはタバコ重量に応じて決まるので、含水量が少ない場合に揮発性材料を含む蒸気発生器具の一服目で知覚される風味のレベルは、含水量の多いタバコ材に比べて強くなることを本発明者らは提唱している。これは、含水量の少ない材料においては蒸気の希釈が少ない為である。更に、水分が多いと一服目の蒸気の量が少なく、これにより一服目の印象が薄く、消費者の満足感が薄くなる。加えて、本発明者らは、含水量が約3wt%よりも少ないタバコを含む揮発性材料はえぐ味があり、吸引時の刺激の増大に関連していることを見出している。このような知見は驚くべきものである。揮発性材料のタバコ成分の最適含水量が、喫煙時に燃焼を伴う製品(最適含水量が約12.5wt%であるシガレットのように)の最適含水量よりも低いとは予想しえないことだからである。
【0020】
ここで、「味」なる用語は通常の意味で用いられ、本発明の揮発性材料の加熱により発生し吸入された蒸気が、ユーザの口内の味蕾(受容体)と化学的に反応して生ずる化学的感覚を指すものとする。味覚は、5つの基本的な味、即ち甘味、酸味、塩味、苦味、及び旨味に分類される。味と、臭い(嗅覚)及び三叉神経刺激とが相俟って、知覚される風味(flavour)が決まる。本発明で用いられる「風味」なる用語は、ユーザに知覚される吸入蒸気の感覚的印象を指し、主に、味と臭いとの化学的感覚により決定される。
【0021】
当業者は、タバコ等の植物材料の含水量を決定するための適切な方法に精通しているであろうし、材料が変われば異なる方法を適用するであろう。誤解の無いように、タバコの含水量を決定する方法が次のように説明される。
【0022】
熱源、好ましくはハロゲンランプの温度を105oCに設定し、約2gのタバコサンプルを計量のためのチャンバに置き、当該ランプで加熱する。水分の離脱に伴うこのサンプルの重量を、一定値となるまで測定する。当該含水量は、サンプルの初期重量(W)からサンプルの乾燥重量(W)を減算し、乾燥重量で除し、100を乗ずることで求められる。
【数1】
【0023】
本発明にかかる揮発性材料は、上述の含水量を有するタバコを含み、また保湿剤を含む。
【0024】
保湿剤は、水分子に対してこれと水素結合をするのに親和性を有する吸湿性物質であり、本品の使用時に可視化された吐出エアロゾル(即ち、蒸気)を発生させるために用いられる。本発明の揮発性材料に用いるのに好適な保湿剤としては、プロピレングリコール(別名1、2−プロパンジオール又はプロパン−1、2−ジオール、化学式はC又はHO−CH−CHOH−CH)、及びグリセロール(別名グリセリン、化学式はC)が挙げられる。好ましい実施形態において、上記保湿剤はプロピレングリコールである。
【0025】
本発明の揮発性材料は少なくとも20wt%の保湿剤を含み、該保湿剤の含有量は20から60wt%であることが好ましく、約40から50wt%であることが最も好ましい。ここで、これらwt%の値は、タバコ材と保湿剤とを含めた、揮発性材料の総重量に基づく値である。
【0026】
保湿剤を添加すると揮発性材料の含水量はブレンド毎に異なるが、タバコ成分の含水量を約3から5wt%とし、保湿剤の含有量を約20wt%から約60wt%とした場合、1から4wt%の範囲であることが好ましい。通常、タバコ材と保湿剤とを含む揮発性材料の総含水量(wt%)は、含水量の少ない保湿剤のおかげで、タバコ材単体の含水量よりも低くなる。
【0027】
当業者であれば、最終的な揮発性タバコ製品中の含水量は、メタノール等の適当な溶媒での揮発性材料の抽出、又はストロンボリ(Stromboli)サンプルオーブンで揮発性材料を加熱することに続けて、カール・フィッシャー滴定法で求め得ることに気付くであろう。カール・フィッシャー滴定法については Fischer, K., Angew.Chem.(1935)48(26):394−396に記載されている。
【0028】
本発明の揮発性材料は、タバコ加熱具のような蒸気発生器具に用いるのに適している。かかる器具の一例が、PCT国際公開第2009/079641号に見ることができる。
【0029】
好ましい一実施態様において、当該器具は、揮発性材料のタバコ成分の含水量を約3から5wt%の範囲に、最も好ましくは約4wt%に維持することができる。
【0030】
本発明者らは、蒸気発生器具を用いてここで述べられた揮発性材料を吸引した場合、当該材料の含水量の多さが、風味におけるえぐ味の増加に対応していることを見出している。これは、エアロゾル中の凝縮された水滴がプロピレン又はグリコールのいずれか(即ち、製品中の保湿成分)よりもかなり速く気化してしまう為と考えられる。この水滴中に含まれるニコチンも一緒に気化し、この気化ニコチンが、吸引される製品の味/風味の中のえぐ味を増大させる。
【0031】
当該揮発性材料は好ましくは、時間が経っても含水量及び風味を保たせる絶対バリアとして機能する気密パッケージ中に設けられる。「気密パッケージ」なる用語は、密閉手段を備えた気体不透過性の入れ物を指し、本発明においては好ましくはカプセルである。この気密パッケージは、加熱器で加熱されると容易に開封されて蒸気を放出する構成とされている。理想的には、当該揮発性材料は、当該材料に大気中の水分が吸収されないよう、できるだけ速やかに加工・パッケージ化されるべきである。
【0032】
図1によれば、PCT国際公開第2009/079641号に概説されているタイプのタバコ加熱具1が示されている。この器具は、マウスピース10、本体11、ヒータ12、加熱室13及び燃料源14を備える。また、この器具は通常、その器具の温度、特に、使用時に当該器具内に置かれるコンテナ20を制御する加熱室内の温度を調節する制御部品群を備える。ここに例示した器具では熱源として可燃燃料を用いているが、上記器具は別のタイプの熱源や電源、例えば電熱器やバッテリを備えていてもよい。
【0033】
使用時には、カプセル20を上記加熱室13に挿入し、ユーザによる制御下で、ヒータ12に燃料タンク14から燃料を供給して当該加熱室13を加熱する。このカプセル20は、本発明に応じて、含水量約3から5wt%のタバコ材を含む揮発性材料のプラグを備える。カプセルの中身がヒータ12で加熱されると、当該コンテナの中身に基づいてエアロゾルが発生し、このエアロゾルがマウスピース10を通じてユーザに吸引される。
【0034】
図2によれば、本発明に対応して含水量約3から5wt%のタバコ材を含む揮発性材料25のプラグが示される。本例では、当該プラグはカプセル20内に設けられている。このプラグ25は、器具1の加熱室13へそのプラグ25を挿入する前にユーザによって開封される包装材に包まれた構成とすることができ、又は、ユーザの手に触れないよう、該プラグ25をディスペンサに収納した構成とし、これを用いて該プラグ25を器具1内へ挿入するようにしてもよい。
【0035】
上述の内容は、次のように特定することもできる。
(1)
蒸気発生器具に用いられる揮発性材料であって、含水量約3から5wt%のタバコを含み、更に少なくとも20wt%の保湿剤を含む揮発性材料。
(2)
前記保湿剤がプロピレングリコールである、(1)に記載の揮発性材料。
(3)
前記保湿剤の含有量が約20から60wt%である、(1)又は(2)に記載の揮発性材料。
(4)
(1)から(3)のいずれか1つに記載の揮発性材料を含む気密パッケージ。
(5)
蒸気発生器具内にて、(1)から(3)のいずれか1つに記載の揮発性材料を使用する方法。
(6)
(1)から(3)のいずれか1つに記載の揮発性材料を有する蒸気発生器具。
(7)
前記揮発性材料又は製品が(4)に記載の気密パッケージ内に収容された、(6)に記載の蒸気発生器具。
(8)
前記揮発性材料のタバコ成分の含水量を約3から5wt%の範囲、好ましくは約4wt%に維持することが可能な、(6)又は(7)に記載の蒸気発生器具。
(9)
タバコ加熱具である、(6)から(8)のいずれか1つに記載の蒸気発生器具。
図1
図2