(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理デバイスは、前記被検体が、PHを患っていない被検体と比較して、前記VTFに関して上昇した平均高周波数マグニチュード(MHFM)を有するかどうかに基づいて、前記被検体が肺高血圧症(PH)を有するかどうかということを決定するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
前記処理デバイスは、前記被検体が、PHを患っていない被検体と比較して、前記VTFに関して上昇した平均高周波数マグニチュード(MHFM)を有する場合に、前記被検体がCOPDを有するということを決定するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
前記処理デバイスは、前記被検体が、被検体と比較して、前記VTFに関して上昇した平均高周波数マグニチュード(MHFM)を有するかどうかに基づいて、前記被検体が前記血管の前記セクションにおいて増加したPAスティフネスを有するかどうかということを決定するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【背景技術】
【0004】
正常な動脈は、弾性的であり、増加した血流量に応答して、心室収縮期の間に膨張し、次いで、その元の状態に跳ね返る。多くの疾患は、コンプライアンスおよび他の動脈材料特性に対する変化を結果として生じさせる。たとえば、動脈は、肺高血圧症(PH)において見られるような、アテローム性動脈硬化または増加した血圧に起因して、硬くなる可能性があり、または、冠状動脈疾患において見られるように、病変によって閉塞させられる。それに加えて、動脈材料特性に対する変化は、疾患の早期の生理学的な兆候である可能性がある。動脈材料特性を測定することは、臨床的な決定を行うための、および、動脈疾患を患う患者を管理するための、重要な情報を医師に提供することが可能である。
【0005】
臨床的な状況において、PHは、右心焼灼(RHC)手技によって測定される上昇した肺動脈(PA)圧力および/または肺血管抵抗(PVR)に基づいて定義される。しかし、PVR測定は、PHに関して偽の生理学的情報を提供する。というのも、その導出は、脈動性の圧力−容積の関係ではなく、静的な圧力−容積の関係を有する均一な肺導管の仮定に基づいているからである。
【0006】
肺インピーダンスZ(f)は、PAフローに対する抵抗の尺度であり、それは、動脈の中の所定のポイントにおける血流量Q(f)に対する血圧P(f)のフーリエ変換の比率として定義される。PVRと比較して、それは、肺循環における後負荷のより正確な尺度である。肺インピーダンス・マグニチュードは、抵抗と同じ単位を有しているが、それは、肺血管床の中の脈動に対する抵抗も説明する。インピーダンスは、周波数依存性であり、a)心拍数、b)血管スティフネスまたは血管の粘弾性の特性、およびc)波反射によって変調される。また、肺インピーダンスは、心室の幾何学形状、機能およびチャンバー圧力に緊密に関連している。
【0007】
動物実験は、低酸素症が、その初期の段階において、主に遠位肺動脈床の血管収縮、および、近位血管のスティフネスの増加につながるということを示している。これらの効果は、疾患の進行とともに顕著になり、a)遠位肺動脈床の緊張の増加に起因する、上昇した平均PA圧力、ならびに、b)減少した肺の伸展性(distensiblity)による、上昇した脈圧、増加した動脈脈波伝播速度、および、近位肺動脈系の中の異常な反射波につながる。MRIアプローチおよび右心カテーテル法(RHC)の組み合わせを使用した、人間における最近の研究は、(PHが運動によってのみ検出可能であるときでも、および、安静時に過大な圧力上昇が起こる前にも)PHの過程の早期においてPAスティフネスが増加するということを実証した。
【0008】
脈波伝播速度(PWV)は、動脈スティフネスの別の尺度である。特定の理想的な仮定の下で、PWVは、平方根による動脈のヤング率(E)に関係付けられる:
【0009】
【数1】
ここで、ρ=血液の密度(おおよそ1.05g/ml)およびh/2rは、壁部厚さ/直径である。PWVは、脈の進行の線の中の2つの記録サイトの間の差を、(圧力またはフローの)波の上の対応するポイント(波反射によって影響を与えられない)同士の間の遅れによって割ったものとして測定される。PWVを測定する上での1つの大きな困難は、距離に伴う圧力およびフローの波の形状の変化に関係付けられ、それは、波全体に関して決定的な単一の値を割り当てることを困難にする。
【0010】
インピーダンス計算は、交流電流(AC)電気回路分析の類似に基づいており、ここでは、抵抗器、インダクタ、およびキャパシタのネットワークを横切る時間的に変化する電圧は、時間的に変化する電流がネットワークを通って流れることを引き起こす(
図1A)。ネットワークを横切る電圧、および、ネットワークを通って流れる電流は、インピーダンスと呼ばれる周波数依存性の量によって関係付けられる。時間的に変化する電圧は、フーリエ分析を使用して周波数成分へと分解され得る。電気回路では、インピーダンスは、どのように、電圧の中のそれぞれの周波数成分が、マグニチュードおよび位相の観点から、電流の中のその対応物に関係付けられるかということを説明する。インピーダンス・マグニチュードは、どのように、それぞれの周波数成分が回路によって増幅されるか(マグニチュード>1)または減衰されるか(マグニチュード<1)ということを説明する。インピーダンス位相は、どのように回路がそれぞれの周波数成分を時間的にシフトさせるかということを説明する。
【0011】
PA系では、インピーダンスは、圧力(電圧に類似する)とフロー(電流に類似する)との間の周波数依存性の関係を説明する。肺動脈のコンプライアンス/スティフネス、および、血液粘度からの抵抗、および遠位毛細血管床は、周波数依存式の圧力およびフローが関連付けられる(抵抗器、キャパシタ、インダクタ・ネットワークに類似する)ということを決定する。したがって、インピーダンスは、血流量の脈動性質を考慮する。0ヘルツの周波数において、インピーダンスは、平均PA圧力と平均PAフローとの間の関係を説明しており、肺血管抵抗(PVR)に等しい。低い周波数において、PA半径の変化に起因して、抵抗の項が支配しており、また、それよりも低い程度に、血液粘度が、インピーダンス・マグニチュードを支配する。動脈スティフネスの増加とともに、ゼロ周波数マグニチュードが増加し、マグニチュードの最初の最小が起こるときに、対応する周波数の増加とともに、マグニチュードの低下率の減少が存在する(非特許文献1)。また、低い周波数において、インピーダンス位相は、マイナスになっている。その理由は、圧力の発現の前にフローの発現が起こり、低い周波数の傾きが2つの発現の間の時間遅延に比例した状態になっているからである。PAコンプライアンスに関係付けられる項が、より高い周波数インピーダンス・マグニチュードを支配する。結果として、セロトニン下のまたは血管抵抗およびPAスティフネスを増加させる誘発された低酸素症の下の動物の研究におけるインピーダンス・マグニチュードは、コントロールよりも大きくなっている(非特許文献1)。同様の結果が、PHを患う人間にも示され、ここで、これらの患者グループにおけるインピーダンス・マグニチュードは、コントロールにおけるものよりも大きくなっている(非特許文献1;非特許文献2)。
【0012】
PAスティフネスおよび肺インピーダンスは、高血圧性肺血管疾患の進展の早期において変更される。現在では、肺インピーダンスは、それが侵襲的な測定を必要とするので、日常的には測定されていない。VTFを使用して肺インピーダンスを非侵襲的に測定する能力は、正常なPA圧力または軽度のPH(たとえば、COPDおよび慢性の左側心不全を患う患者におけるものなど)を有する患者の評価において、基本的な洞察を提供することが可能である。検証されると、それは、早期のPAスティフネスの検出における最適な非侵襲性ツールになる可能性を有している。したがって、右心室(RV)−PA軸を非侵襲的に評価する能力、および、RV機能障害を発達させる可能性のある患者を検出する能力は、通常では軽度のPHにおける心臓の構造および機能の早期の変化をターゲットとする治療的介入に関する機構原理を提供することとなる。
【0013】
また、インピーダンスおよびPWVは、左心カテーテル法(LHC)によって、たとえば、大動脈など、全身動脈の材料特性を評価するために使用され得る。しかし、より高い全体的な抵抗および全身血管のより低い伸展性に起因して、全身循環の中に比較的により低い脈動エネルギー損失が存在する。犬では、合計の外部心室仕事(external ventricular work)に対する脈動の比率は、肺血管床において25%であり、全身循環において10%である。
【0014】
また、病変、たとえば、冠状動脈疾患における病変などが、動脈材料特性に影響を与える。冠状動脈疾患では、狭窄がどこにあるか、どれぐらい多く存在しているか、および、閉塞の程度を知ることが重要である。他の要因とともに、この情報は、疾患が医学的に治療されるべきであるか、ステントによって治療されるべきか、または、冠動脈バイパス手術によって治療されるべきかということを決定するために、心臓専門医によって使用される。狭窄に関する情報は、従来から血管造影図によって取得され、それは、動脈がX線透視装置によってイメージングされている間に、動脈の中へ染料を導入するために侵襲性カテーテルを使用する。しかし、この手順は、狭窄の幾何学形状に関する情報を提供するのみであり、どれくらいの量の血液が狭窄を通って流れているかということを評価しない。より最近では、冠血流予備量比(FFR)が、狭窄を評価するために使用されている。FFRは、充血の間に2つのポイント(1つは、狭窄の近位にあり、1つは、狭窄の遠位にある)において取得される平均圧力測定値の比である。FFRは、どれくらい狭窄が動脈の機能に影響を与えるかということを査定するために使用され得るが、狭窄は、圧力波形の振幅を変化させるだけでなく、波形の形状も変化させる可能性があり、それは、動脈の機能的な能力についての重要な情報を含有する。瞬時血流予備量比(iFR)は、抵抗が心周期の中で一定であり最小化されているときの無波期間の間の瞬間的な圧力比を提供する。しかし、iFRは、圧力波の一部分のみを見ており、場合によっては、狭窄の機能的な能力に関する有用な情報を提供し得る圧力波の特徴を見逃す可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
現在の技術に関連付けられる問題を考慮して、本開示は、血管を評価するための方法およびシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様では、本開示は、被検体の中の第1のポイントと血流の方向に沿った第2のポイントとの間の血管のセグメントにおいて、血管の生理学的特性を評価するための方法を提供する。この方法は、
【0018】
第1のポイントおよび第2のポイントにおいて、第1の測定値および第2の測定値をそれぞれ獲得するステップと、
【0019】
第1の測定値および第2の測定値を入力および出力としてそれぞれ使用して、入力を所与とした出力を作り出すように構成されている伝達関数を取得するステップと、
【0020】
伝達関数に基づいて血管のセクションの生理学的特性を決定するステップと、
を含む。
【0021】
この方法において、第1の測定値および第2の測定値の各々は、血流速度波形、血流量波形、または血圧波形のうちの1つであることが可能である。
【0022】
方法のいくつかの実施形態によれば、第1の測定値および第2の測定値の各々は、血流速度波形または血流量波形であり、第1のポイントおよび第2のポイントにおいて、第1の測定値および第2の測定値をそれぞれ獲得するステップは、位相コントラスト磁気共鳴イメージング、ドップラー超音波法、または侵襲的カテーテルによって行われる。これらの従来の手段の他に、血流速度波形または血流量波形を取得することができる他のデバイスおよびアプローチも可能であるということが留意される。
【0023】
方法のいくつかの他の実施形態によれば、第1の測定値および第2の測定値の各々は、血圧波形であり、第1のポイントおよび第2のポイントにおいて、第1の測定値および第2の測定値をそれぞれ獲得するステップは、侵襲的カテーテル、眼圧測定デバイス、または、血圧を測定することができるフィットネス・リストバンドによって行われる。これらの従来のデバイスの他に、血圧波形を取得することができる他のデバイスおよびアプローチも可能であるということが留意される。
【0024】
本明細書で開示されている方法において、伝達関数は、線形または非線形であることが可能であるが、好ましくは、線形である。
【0025】
方法のいくつかの実施形態によれば、伝達関数は、自己回帰移動平均(ARMA)モデル
【0026】
【数2】
として、タイム・ドメインで実施され、
ここで、kは、サンプル・インデックスであり、X
kは、第1の測定値のサンプルであり、Y
kは、第2の測定値のサンプルであり、pは、移動平均項の次数であり、qは、自己回帰項の次数であり、a
iおよびb
iは、係数である。したがって、伝達関数に基づいて血管のセクションの生理学的特性を決定するステップは、
【0027】
パラメータp、q、a
i、およびb
iに基づいて血管のセクションの生理学的特性を決定するステップ、
を含む。
【0028】
方法のいくつかの他の実施形態によれば、伝達関数は、周波数ドメインで実施され、以下の通りに表現され、
S
M(f)=M
output(f)/M
input(f)、
ここで、fは、周波数であり、M
output(f)は、第2の測定値であり、M
input(f)は、第1の測定値である。
【0029】
上記に説明されているような方法のいくつかの実施形態では、第1の測定値および第2の測定値の各々は、血流速度波形であり、伝達関数は、以下の通りに表現される血流速度関数であり、
S
V(f)=V
output(f)/V
input(f)、
ここで、V
output(f)は、第2の測定値であり、V
input(f)は、第1の測定値である。
【0030】
上記に説明されているような方法のいくつかの他の実施形態では、第1の測定値および第2の測定値の各々は、血圧波形であり、伝達関数は、以下の通りに表現される血圧関数であり、
S
P(f)=P
output(f)/P
input(f)、
ここで、P
output(f)は、第2の測定値であり、P
input(f)は、第1の測定値である。
【0031】
上記に説明されているような方法のさらにいくつかの他の実施形態では、第1の測定値および第2の測定値の各々は、単一の心拍圧力波形であり、伝達関数は、以下の通りに表現される単一の心拍圧力関数であり、
S
P(f)=P
output(f)/P
input(f)、
ここで、P
output(f)は、第2の測定値であり、P
input(f)は、第1の測定値である。
【0032】
伝達関数が以下の通りに表現される方法のいくつかの実施形態では、
S
M(f)=M
output(f)/M
input(f)、
伝達関数に基づいて血管のセクションの生理学的特性を決定するステップは、
【0033】
第1の測定値を一連の第1のハーモニック成分へと分解し、第2の測定値を第2のハーモニック成分へと分解するステップであって、一連の第1のハーモニック成分および一連の第2のハーモニック成分は、各々のハーモニック数において互いに対応している、サブ・ステップと、
【0034】
各々の第2のハーモニック・マグニチュードを対応する第1のハーモニック・マグニチュードによって割ることによってそれぞれの取得される、一連の伝達関数ハーモニックを形成するサブ・ステップと、
【0035】
一連の伝達関数ハーモニックの1つまたは線形の組み合わせに基づいて、血管のセクションの生理学的特性を決定するサブ・ステップと、
を含む。
【0036】
ここにおいて、一連の伝達関数ハーモニックの線形の組み合わせは、たとえば、ハーモニック5および6の平均であることが可能であるが、いくつかの他のハーモニックの平均であることも可能である。
【0037】
上記に説明されているような方法のいくつかの実施形態によれば、血管は、肺動脈であり、第1のポイントおよび第2のポイントにおいて、第1の測定値および第2の測定値をそれぞれ獲得するステップは、
【0038】
第1の血流速度波形および第2の血流速度波形をそれぞれ取得するために、肺動脈の第1のポイントおよび第2のポイントにおいてPC−MRI(位相コントラスト磁気共鳴イメージング)を実施するステップを含む。
【0039】
それに対応して、第1の測定値および第2の測定値を入力および出力としてそれぞれ使用して、入力を所与とした出力を作り出すように構成されている伝達関数を取得するステップは、
【0040】
第1の血流速度波形および第2の血流速度波形に基づいて速度伝達関数(VTF)を取得するステップを含む。
【0041】
ここにおいて、肺動脈のセグメントは、主肺動脈(MPA)と分岐の近位の右肺動脈(RPA)との間にあるか、MPAと分岐の近位の左肺動脈(LPA)との間にあるか、分岐の近位のRPAと分岐の遠位のRPAとの間にあるか、または、分岐の近位のLPAと分岐の遠位のLPAとの間にあることが可能である。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、伝達関数に基づいて血管のセクションの生理学的特性を決定するステップにおいて、一連の伝達関数ハーモニックの1つまたは線形の組み合わせに基づいて、血管のセクションの生理学的特性を決定するサブ・ステップは、
【0043】
被検体が、PHを患っていない被検体と比較して、VTFに関して上昇した平均高周波数マグニチュード(MHFM)を有する場合には、被検体が肺高血圧症(PH)を有するということを決定するステップを含む。
【0044】
いくつかの他の実施形態によれば、伝達関数に基づいて血管のセクションの生理学的特性を決定するステップにおいて、一連の伝達関数ハーモニックの1つまたは線形の組み合わせに基づいて、血管のセクションの生理学的特性を決定するサブ・ステップは、
【0045】
被検体が、COPDを患っていない被検体と比較して、VTFに関して上昇した平均高周波数マグニチュード(MHFM)を有する場合には、被検体が慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有するということを決定するステップを含む。
【0046】
方法のいくつかの実施形態によれば、血管は、肺動脈である。肺動脈のセグメントは、主肺動脈(MPA)と分岐の近位の右肺動脈(RPA)との間にあるか、MPAと分岐の近位の左肺動脈(LPA)との間にあるか、分岐の近位のRPAと分岐の遠位のRPAとの間にあるか、または、分岐の近位のLPAと分岐の遠位のLPAとの間にあることが可能である。好ましくは、肺動脈のセグメントは、分岐の近位のRPAと分岐の遠位のRPAとの間にある。
【0047】
第1のポイントおよび第2のポイントにおいて、第1の測定値および第2の測定値をそれぞれ獲得するステップは、
【0048】
第1の血流速度波形および第2の血流速度波形をそれぞれ取得するために、肺動脈の第1のポイントおよび第2のポイントにおいて心臓MRI(CMR)を実施するステップを含み、
【0049】
それに対応して、第1の測定値および第2の測定値を入力および出力としてそれぞれ使用して、入力を所与とした出力を作り出すように構成されている伝達関数を取得するステップは、
【0050】
第1の血流速度波形および第2の血流速度波形に基づいて速度伝達関数(VTF)を取得するステップを含む。
【0051】
ここにおいて、CMRは、シネ・ベースまたは位相コントラスト・ベースであることが可能である。
【0052】
上記に説明されているような方法では、伝達関数に基づいて血管のセクションの生理学的特性を決定するステップにおいて、一連の伝達関数ハーモニックの1つまたは線形の組み合わせに基づいて、血管のセクションの生理学的特性を決定するサブステップは、
【0053】
被検体が、PAインピーダンスのない被検体と比較して、VTFに関して上昇した平均高周波数マグニチュード(MHFM)を有する場合には、被検体が血管のセクションにおいてPAインピーダンスを有するということを決定するステップを含む。
【0054】
方法の上記の実施形態のいずれかにおいて、平均高周波数マグニチュード(MHFM)は、伝達関数に基づいて、ハーモニック5および6の平均として定義され、調査中の被検体からのMHFMが、関心の疾患(たとえば、PHまたはCOPDなど)を患っていない被検体の母集団からのMHFMの平均値よりも、少なくとも30%高い場合、好ましくは、少なくとも50%高い場合には、「上昇したMHFM」が定義されるということが留意される。
【0055】
いくつかの特定の実施形態では、調査中の被検体から計算されたVTFに関するMHFMは、PHまたはCOPDを患っていない被検体の母集団からのMHFMの平均値よりも少なくとも30%高いことが観察され、被検体は、COPDを有することが疑われる。他の実施形態では、調査中の被検体から計算されたVTFに関するMHFMは、PHまたはCOPDを患っていない被検体の母集団からのMHFMの平均値よりも約50%高いことが観察され、被検体は、PHを有することが疑われる。
【0056】
方法のいくつかの実施形態によれば、血管は、冠状動脈であり、第1のポイントおよび第2のポイントにおいて、第1の測定値および第2の測定値をそれぞれ獲得するステップは、
【0057】
冠状動脈の第1のポイントから第2のポイントへ侵襲的カテーテルを引っ張りながら、侵襲的カテーテルによって一連の単一の心拍波形を取得するステップを含む。
【0058】
それに対応して、入力を所与とした出力を作り出すように構成されている伝達関数を取得するステップは、
【0059】
以下に基づいて一連の単一の心拍圧力関数S
Pi(f)を計算するステップであって、
S
Pi(f)=P
outputi(f)/P
reference(f)、
ここで、fは、周波数であり、P
outputi(f)は、一連の単一の心拍波形の各々であり、P
reference(f)は、一連の単一の心拍波形のうちの最も早い時点の単一の心拍波形である、ステップを含む。
【0060】
そのうえ、伝達関数に基づいて血管のセクションの生理学的特性を決定するステップは、
【0061】
侵襲的カテーテルが1つのポイントに交差する間に、ハーモニック3マグニチュードの大きな変化が観察される場合には、被検体が冠状動脈のセグメントの中の1つのポイントにおいて狭窄を有するということを決定するステップを含む。
【0062】
ここにおいて、「ハーモニック3マグニチュードの大きな変化」は、ハーモニック3マグニチュードが冠状動脈の上流の健康なセクションの中の平均値よりも少なくとも100%高い状況として定義される。
【0063】
方法の実施形態のいずれかでは、血管は、動脈または静脈であることが可能であり、被検体は、人間または動物であることが可能である。
【0064】
第2の態様では、本開示は、被検体の中の血管のセグメントの生理学的特性を評価するためのシステムをさらに提供する。システムは、測定デバイスと処理デバイスとを含む。
【0065】
測定デバイスは、第1のポイントにおける第1の測定値、および、第2のポイントにおける第2の測定値を獲得し、処理デバイスへ送信するように構成されており、第1のポイントおよび第2のポイントは、血管のセグメントの中の血流方向に沿っている。処理デバイスは、第1の測定値および第2の測定値を入力および出力としてそれぞれ用いて、入力を所与とした出力を作り出すように構成されている伝達関数を計算するように構成されており、処理デバイスは、伝達関数に基づいて血管のセクションの生理学的特性を決定するように構成されている。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、処理デバイスは、伝達関数計算ユニットと生理学的特性決定ユニットとを含む。関数計算ユニットは、伝達関数を計算するように構成されており、生理学的特性決定ユニットは、伝達関数に基づいて血管のセクションの生理学的特性を決定するように構成されている。
【0067】
ここにおいて、システムは、測定デバイスおよび処理デバイスを含む、いくつかの別々に配設されたデバイスのアッセンブリであることが可能であり、または、測定デバイスおよび処理デバイスを含む、いくつかの別々に配設されたデバイスのそれぞれの機能性とそれぞれ比較できるいくつかの機能性を装備している一体化された装置であることが可能である。
【0068】
ここにおいて、処理デバイスは、プロセッサおよびメモリを含むことが可能であり、メモリは、ソフトウェア・プログラムを記憶するように構成されており、プロセッサは、メモリの中に記憶されているソフトウェア・プログラムに基づいて計算を実施し、それによって、特定のタスクを実施するように構成されている。伝達関数計算ユニットおよび生理学的特性決定ユニットの各々は、別々のプロセッサと、別々のソフトウェア・プログラムを記憶する別々のメモリとを含むことが可能であり、または、共通のプロセッサを共有することが可能であるが、別々のソフトウェア・プログラムが、共有された共通のメモリの中に記憶された状態になっている。ここでは、制限は存在していない。
【0069】
システムのいくつかの実施形態によれば、測定デバイスは、磁気共鳴イメージング(MRI)デバイス、ドップラー超音波法デバイス、または侵襲的カテーテルを含むことが可能であり、測定デバイスによって獲得される第1の測定値および第2の測定値のそれぞれは、血流速度波形または血流量波形であることが可能である。
【0070】
システムのいくつかの他の実施形態によれば、測定デバイスは、侵襲的カテーテル、眼圧測定デバイス、または、血圧を測定することができるフィットネス・リストバンドを含むことが可能であり、測定デバイスによって獲得される第1の測定値および第2の測定値のそれぞれは、血圧波形であることが可能である。
【0071】
システムのいくつかの実施形態によれば、処理デバイスは、線形のモデルに基づいて伝達関数を計算するように構成されている。
【0072】
上記に説明されているようなシステムのいくつかの実施形態では、伝達関数は、タイム・ドメインにあり、処理デバイスは、自己回帰移動平均(ARMA)モデル
【0073】
【数3】
に基づいて伝達関数を計算するように構成されており、
ここで、kは、サンプル・インデックスであり、X
kは、第1の測定値のサンプルであり、Y
kは、第2の測定値のサンプルであり、pは、移動平均項の次数であり、qは、自己回帰項の次数であり、a
iおよびb
iは、係数である。それに対応して、処理デバイスは、パラメータp、q、a
i、およびb
iに基づいて血管のセクションの生理学的特性を決定するように構成されている。
【0074】
上記に説明されているようなシステムのいくつかの他の実施形態では、伝達関数は、周波数ドメインにあり、処理デバイスは、以下の式に基づいて伝達関数を計算するように構成されており、
S
M(f)=M
output(f)/M
input(f)、
ここで、fは、周波数であり、M
output(f)は、第2の測定値であり、M
input(f)は、第1の測定値である。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、測定デバイスは、第1の測定値および第2の測定値の各々に関して血流速度波形を獲得するように構成されており、処理デバイスは、以下の式に基づいて伝達関数を計算するように構成されており、
S
V(f)=V
output(f)/V
input(f)、
ここで、V
output(f)は、第2の測定値であり、V
input(f)は、第1の測定値である。
【0076】
いくつかの他の実施形態によれば、測定デバイスは、第1の測定値および第2の測定値の各々に関して血圧波形を獲得するように構成されており、処理デバイスは、以下の式に基づいて伝達関数を計算するように構成されており、
S
P(f)=P
output(f)/P
input(f)、
ここで、P
output(f)は、第2の測定値であり、P
input(f)は、第1の測定値である。
【0077】
さらにいくつかの他の実施形態によれば、測定デバイスは、第1の測定値および第2の測定値のそれぞれに関して単一の心拍圧力波形を獲得するように構成されており、処理デバイスは、以下の式に基づいて伝達関数を計算するように構成されており、
S
P(f)=P
output(f)/P
input(f)、
ここで、P
output(f)は、第2の測定値であり、P
input(f)は、第1の測定値である。
【0078】
システムのいくつかの他の実施形態では、処理デバイスは、
【0079】
第1の測定値を一連の第1のハーモニック成分へと分解し、第2の測定値を第2のハーモニック成分へと分解するように構成されており、一連の第1のハーモニック成分および一連の第2のハーモニック成分は、それぞれのハーモニック数において互いに対応しており、
【0080】
処理デバイスは、それぞれの第2のハーモニック・マグニチュードを対応する第1のハーモニック・マグニチュードによって割ることによってそれぞれの取得される、一連の伝達関数ハーモニックを形成するように構成されており、
【0081】
処理デバイスは、一連の伝達関数ハーモニックの1つまたは線形の組み合わせに基づいて、血管のセクションの生理学的特性を決定するように構成されている。
【0082】
本明細書で開示されているシステムのいくつかの実施形態によれば、血管は、肺動脈である。測定デバイスは、磁気共鳴イメージング(MRI)デバイスを含み、磁気共鳴イメージング(MRI)デバイスは、第1の血流速度波形および第2の血流速度波形をそれぞれ取得するために、肺動脈の第1のポイントおよび第2のポイントにおいて、PC−MRIを実施するように構成されている。処理デバイスは、第1の血流速度波形および第2の血流速度波形に基づいて速度伝達関数(VTF)を取得するように構成されている。
【0083】
ここにおいて、肺動脈のセグメントは、主肺動脈(MPA)と分岐の近位の右肺動脈(RPA)との間にあるか、MPAと分岐の近位の左肺動脈(LPA)との間にあるか、分岐の近位のRPAと分岐の遠位のRPAとの間にあるか、または、分岐の近位のLPAと分岐の遠位のLPAとの間にあることが可能である。
【0084】
システムのいくつかの実施形態によれば、処理デバイスは、被検体が、PHを患っていない被検体と比較して、VTFに関して上昇した平均高周波数マグニチュード(MHFM)を有するかどうかに基づいて、被検体が肺高血圧症(PH)を有するかどうかということを決定するように構成されている。
【0085】
システムのいくつかの他の実施形態によれば、処理デバイスは、被検体が、COPDを患っていない被検体と比較して、VTFに関して上昇した平均高周波数マグニチュード(MHFM)を有するかどうかに基づいて、被検体がCOPDを有するかどうかということを決定するように構成されている。
【0086】
本明細書で開示されているシステムのいくつかの実施形態によれば、血管は、肺動脈である。測定デバイスは、磁気共鳴イメージング(MRI)デバイスを含み、磁気共鳴イメージング(MRI)デバイスは、第1の血流速度波形および第2の血流速度波形をそれぞれ取得するために、肺動脈の第1のポイントおよび第2のポイントにおいて、心臓MRI(CMR)を実施するように構成されている。処理デバイスは、第1の血流速度波形および第2の血流速度波形に基づいて、速度伝達関数(VTF)を取得するように構成されている。
【0087】
肺動脈のセグメントは、主肺動脈(MPA)と分岐の近位の右肺動脈(RPA)との間にあるか、MPAと分岐の近位の左肺動脈(LPA)との間にあるか、分岐の近位のRPAと分岐の遠位のRPAとの間にあるか、または、分岐の近位のLPAと分岐の遠位のLPAとの間にあることが可能である。好ましくは、肺動脈のセグメントは、分岐の近位のRPAと分岐の遠位のRPAとの間にある。
【0088】
したがって、処理デバイスは、被検体が、PAインピーダンスのない被検体と比較して、VTFに関して上昇した平均高周波数マグニチュード(MHFM)を有するかどうかに基づいて、被検体が血管のセクションにおいてPAインピーダンスを有するかどうかということを決定するように構成されている。
【0089】
システムの上記の実施形態のいずれかにおいて、平均高周波数マグニチュード(MHFM)は、伝達関数に基づいて、ハーモニック5および6の平均として定義され、調査中の被検体からのMHFMが、関心の疾患(たとえば、PHまたはCOPDなど)を患っていない被検体の母集団からのMHFMの平均値よりも、少なくとも30%高い場合、好ましくは、少なくとも50%高い場合には、「上昇したMHFM」が定義されるということが留意される。
【0090】
いくつかの特定の実施形態では、調査中の被検体から計算されたVTFに関するMHFMは、PHまたはCOPDを患っていない被検体の母集団からのMHFMの平均値よりも少なくとも30%高いことが観察され、被検体は、COPDを有することが疑われる。他の実施形態では、調査中の被検体から計算されたVTFに関するMHFMは、PHまたはCOPDを患っていない被検体の母集団からのMHFMの平均値よりも約50%高いことが観察され、被検体は、PHを有することが疑われる。
【0091】
本明細書で開示されているシステムのいくつかの実施形態によれば、血管は、冠状動脈である。測定デバイスは、侵襲的カテーテルを含み、侵襲的カテーテルは、冠状動脈の第1のポイントから第2のポイントへ引っ張られている間に、一連の単一の心拍波形を取得するように構成されている。処理デバイスは、以下に基づいて一連の単一の心拍圧力関数S
Pi(f)を計算するように構成されており、
S
Pi(f)=P
outputi(f)/P
reference(f)、
ここで、fは、周波数であり、P
outputi(f)は、一連の単一の心拍波形の各々であり、P
reference(f)は、一連の単一の心拍波形のうちの最も早い時点の単一の心拍波形であり、処理デバイスは、侵襲的カテーテルが1つのポイントに交差する間に、ハーモニック3マグニチュードの大きな変化が観察されるかどうかに基づいて、被検体が冠状動脈のセグメントの中の1つのポイントにおいて狭窄を有するかどうかということを決定するようにさらに構成されている。ここにおいて、「ハーモニック3マグニチュードの大きな変化」は、被検体の中の1つのポイントにおけるハーモニック3マグニチュードが冠状動脈の上流の健康なセクションの中の平均値よりも少なくとも100%高い状況として定義される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1A】動脈インピーダンスの概念は、示されているような交流電流(AC)電気回路の類似に基づいており、ここで、R=抵抗、L=インダクタンス、G=コンダクタンス、およびC=キャパシタンスを示す図である。
【
図1B】肺動脈(PA)の中へのフローが、血管壁部の膨張を引き起こし、それは、次いで、元の状態に跳ね返り、それは、フロー・インピーダンスの脈動成分を結果として生じさせるということを示す図である。
【
図1C】入力波形および出力波形との間の数学的関係を提供し、したがって、血管壁部の粘弾性の特性の尺度を提供する、伝達関数H(f)を示す図である。
【
図1D】柔軟なPAと硬いPAとの間の比較を示す図であり、ここで、入力速度波形は、血管壁部の粘弾性の特性および血管の幾何学形状に起因して、予測可能な方式で形状が変化することを示す図である。
【
図2A】分岐の近位の右肺動脈に対して垂直のスライスの位相コントラスト磁気共鳴イメージング(PC−MRI)からのマグニチュード・イメージおよび速度イメージを示す図であり、ここで、001は、右肺動脈の輪郭を描いており、002は、右肺動脈の輪郭を描いており、それぞれのピクセルの値は、スライスに対して垂直の方向への対応する組織の速度であることを示す図である。
【
図2B】分岐の近位の右肺動脈に対して垂直のスライスの位相コントラスト磁気共鳴イメージング(PC−MRI)からのマグニチュード・イメージおよび速度イメージを示す図であり、ここで、001は、右肺動脈の輪郭を描いており、002は、右肺動脈の輪郭を描いており、それぞれのピクセルの値は、スライスに対して垂直の方向への対応する組織の速度であることを示す図である。
【
図3】位相コントラスト磁気共鳴イメージング(PC−MRI)を使用して取得される主肺動脈(003)および右肺動脈(004)の中の平均速度−時間プロファイルを示す図である。
【
図4A】硬い動脈において、出力波形は、入力波形のスケーリングおよびシフトされたバージョンであるということを示す図である。
【
図4B】これらの関係は、硬い動脈に関して対応する伝達関数(|H(f)|)の中に反映されているということを示す図である。
【
図4C】柔軟な動脈において、出力波形は、入力波形とより複雑な関係を有しているということを示す図である。
【
図4D】これらの関係は、柔軟な動脈に関して対応する伝達関数(|H(f)|)の中に反映されているということを示す図である。
【
図5】ハーモニック成分への圧力波形(004)の分解を示す図であり、ここで、最初の5つのハーモニック・マグニチュードが、005に示されており、最初の5つのハーモニック成分波形が、006に示されており、最初の5つのハーモニック(009、実線)から計算される波形の上に実際の波形(008、点線)を重ね合わせたものが、007に示されており、ここで、ハーモニック0は、平均圧力であり、より高い次数のハーモニックは、波形の中の微細な変化を説明しているということを示す図である。
【
図6】近位および遠位の圧力波形からの圧力伝達関数(PTF)の計算を示す図であり、ここで、それぞれの遠位ハーモニック・マグニチュードは、対応するPTFハーモニックを形成するために、対応する近位ハーモニック・マグニチュードによって割られており、ハーモニック0は、FFRに対応しており、より高い次数のハーモニックは、それが動脈のセクションを通過するときの波形の形状に対する変化を説明しており、010は、ダイクロティック・ノッチを示すということを示す図である。
【
図7A】PVR<2.5Wood単位(WU)を有する患者(
図7Aおよび
図7B)、および、PVR>2.5WUを有する患者(
図7Cおよび
図7D)からの、代表的な右PA速度曲線(
図7Aおよび
図7C)および対応するVTF(
図7Bおよび
図7D)を示す図であり、ここで、011および012は、
図7Aの中の近位波形および遠位波形をそれぞれ示す図である。
【
図7C】PVR<2.5Wood単位(WU)を有する患者(
図7Aおよび
図7B)、および、PVR>2.5WUを有する患者(
図7Cおよび
図7D)からの、代表的な右PA速度曲線(
図7Aおよび
図7C)および対応するVTF(
図7Bおよび
図7D)を示す図であり、ここで、013および014は、
図7Cの中の近位波形および遠位波形をそれぞれ示す図である。
【
図8】PH患者(017、n=8)、COPD患者(016、n=8)、および正常なボランティア(015、n=4)のグループに関して、VTFマグニチュード−対−ハーモニックを示す図である。ゼロ・ハーモニックにおけるVTFは、正常またはCOPDよりも、PHにおいて大きくなっており、それは、PHにおいて予期される高いPVR値と一貫している。しかし、より高いハーモニックにおいて、COPDグループは、PHグループと同様に振る舞い、増加したPAスティフネスを示唆する。
【
図9A】主肺動脈(018、020、022)および分岐の近位の右肺動脈(019、021、023)の中のポイントにおける代表的な個々の平均速度プロファイルを示す図であり、正常における速度プロファイルのシフトの差が示されている図である。
【
図9B】主肺動脈(018、020、022)および分岐の近位の右肺動脈(019、021、023)の中のポイントにおける代表的な個々の平均速度プロファイルを示す図であり、COPDにおける速度プロファイルのシフトの差が示されている図である。
【
図9C】主肺動脈(018、020、022)および分岐の近位の右肺動脈(019、021、023)の中のポイントにおける代表的な個々の平均速度プロファイルを示す図であり、PHにおける速度プロファイルのシフトの差が示されている図である。
【
図10】臨床例2における患者フローを示す図である。
【
図11A】1つの心周期の中の主肺動脈圧力波形のデジタル化を示す図である。
【
図11B】1つの心周期の中の主肺動脈脈波ドップラー波形のデジタル化を示す図である。
【
図12】シネ心臓磁気共鳴イメージングから取得される右心室拡張期(024)および収縮期(025)フレームを示す図である。緑の線は、4腔スライスおよび左心室流出路スライスとの交差を示している。
【
図13】肺動脈圧および/または抵抗に基づく臨床例2に関する患者分配を示す図であり、ここで、mPAPは、平均肺動脈圧力であり、PCWPは、肺毛細血管楔入圧であり、PHは、肺高血圧症であり、PVHは、肺静脈高血圧症であり、PVRは、肺血管抵抗であることを示す図である。
【
図14A】RPAにおける、侵襲的インピーダンス・ハーモニック0−1の平均およびVTF平均高周波数マグニチュード(MHFM)(ハーモニック5および6のマグニチュードの平均)の散布図である。026および027は、2つの外れ値である。
【
図14B】LPAにおける、侵襲的インピーダンス・ハーモニック0−1の平均および速度伝達関数MHFMの散布図である。
【
図15】2つの外れ値の除去の後の平均侵襲的インピーダンス・ハーモニック0−1およびVTF MHFMの散布図である。
【
図16A】速度伝達関数の個々のハーモニックに関する観察者内の相関関係を示す散布図である。
【
図16B】速度伝達関数の個々のハーモニックに関する観察者内の一致度を示す散布図である。
【
図16C】速度伝達関数の個々のハーモニックに関する観察者間の相関関係を示す散布図である。
【
図16D】速度伝達関数の個々のハーモニックに関する観察者間の一致度を示す散布図である。
【
図17A】外れ値が除去されていない状態の右心室質量インデックス(RVESMI)およびVTF平均高周波数マグニチュード(MHFM)の適合プロットを示す図である。028および029は、2つの外れ値である。実線(064、067)は、最良適合線を示している。影付きの領域(065、068)は、95%信頼限界を示している。点線(066、069)は、95%予想限界を示している。
【
図17B】外れ値が除去された状態の右心室質量インデックス(RVESMI)およびVTF平均高周波数マグニチュード(MHFM)の適合プロットを示す図である。028および029は、2つの外れ値である。実線(064、067)は、最良適合線を示している。影付きの領域(065、068)は、95%信頼限界を示している。点線(066、069)は、95%予想限界を示している。
【
図18】上昇した(031)−対−正常な(030)平均肺動脈圧力グループに関する最初の6つのハーモニックにわたる速度伝達関数マグニチュード曲線を示す図である。
【
図19】上昇した(033)−対−正常な(032)肺血管抵抗グループを有する患者に関する最初の6つのハーモニックにわたる速度伝達関数マグニチュード曲線を示す図である。
【
図20】正常−対−高い肺血管抵抗に関する2項分類器として速度伝達関数の平均高周波数マグニチュードに関する受信者動作特性曲線を示す図である。
【
図21】早期の肺動脈リモデリングを示す正常な肺血管抵抗(036)または上昇した肺血管抵抗(037)のいずれかによる、正常な肺動脈圧力を有する患者の中の最初の6つのハーモニックにわたる速度伝達関数曲線を示す図である。
【
図22】正常な肺血管抵抗(038)または上昇した肺血管抵抗(039)のいずれかによる、上昇した肺毛細血管楔入圧を有する上昇した肺動脈圧力を有する患者の中の最初の6つのハーモニックにわたる速度伝達関数曲線を示す図である。
【
図23A】正常な肺血管抵抗(040、042)または上昇した肺血管抵抗(041、043)による、患者の中の最初の6つのハーモニックにわたる侵襲的インピーダンス曲線を示す図である。エラー・バーは、±1標準誤差を示している。
【
図23B】正常な肺血管抵抗(040、042)または上昇した肺血管抵抗(041、043)による、患者の中の最初の6つのハーモニックにわたる対応する速度伝達関数曲線を示す図である。エラー・バーは、±1標準誤差を示している。
【
図24A】正常な肺血管抵抗(044、046)または上昇した肺血管抵抗(045、047)のいずれかによる、正常な平均肺動脈圧力を有する患者の中の最初の6つのハーモニックにわたる侵襲的インピーダンス曲線を示す図である。
【
図24B】正常な肺血管抵抗(044、046)または上昇した肺血管抵抗(045、047)のいずれかによる、正常な平均肺動脈圧力を有する患者の中の最初の6つのハーモニックにわたる対応する速度伝達関数曲線を示す図である。
【
図25】通常では臨床的な肺高血圧症(19mmHgの平均PA圧力)のない、PCWP5mmHg、CO5.54L/min、PVR2.525WU(早期PAリモデリング)を有する、突発性肺線維症を患う患者の最初の6つのハーモニックにわたる速度伝達関数曲線を示す図である。
【
図26】通常では臨床的な肺高血圧症(22mmHgの平均PA圧力)のない、PCWP6mmHg、CO5.41L/min、PVR2.96WU(早期PAリモデリング)を有する、突発性肺線維症を患う患者の最初の6つのハーモニックにわたる速度伝達関数曲線を示す図である。
【
図27】通常では臨床的な肺高血圧症(18mmHgの平均PA圧力)のない、PCWP11mmHg、CO3.99L/min、PVR1.75WU(正常)を有する、古い左前下行枝の解離からの慢性の左心室虚血性心筋症を患う患者の最初の6つのハーモニックにわたる速度伝達関数曲線を示す図である。
【
図28】通常では臨床的な肺高血圧症(23mmHgの平均PA圧力)のない、PCWP12mmHg、CO5.96L/min、PVR1.85WU(正常)を有する、強皮症を患う患者の最初の6つのハーモニックにわたる速度伝達関数曲線を示す図である。
【
図29】上昇したPCWP20mmHg、CO9.98L/min、および正常PVR1.1WU(肺静脈高血圧症)の二次的な上昇した肺動脈圧(30mmHgの平均PA圧力)による、駆出率の保たれた心不全を患う患者の最初の6つのハーモニックにわたる速度伝達関数曲線を示す図である。
【
図30】上昇したPCWP23mmHg、CO3.64L/min、および上昇したPVR3.575WU(混合された肺静脈性高血圧および肺動脈性高血圧)の二次的な上昇した肺動脈圧(36mmHgの平均PA圧力)による心アミロイドーシスに起因する拘束型心筋症を患う患者の最初の6つのハーモニックにわたる速度伝達関数曲線を示す図である。
【
図31A】カテーテル先端部が遠位ポイント(048)から狭窄を横切って近位ポイント(049)へ引き戻されるときの一連の圧力波を示す図である。
【
図31B】PTF−対−時間の最大のマグニチュードハーモニック(ハーモニック3)を示す図であり、ここで、
図31Aの中の050の近くで、および、
図31Bの中の051の近くで、カテーテルが狭窄を横切るときに、ハーモニック3の変化があることを示す図である。
【
図31C】ハーモニック0(052)(それは、FFRでもある)、1(053)、2(054)、および4(055)を示す図であり、それらは、カテーテル先端部が狭窄を横切るときにほとんど変化していないことを示す図である。
【
図32A】カテーテル先端部が遠位ポイント(056)から狭窄を横切って近位ポイント(057)へ引き戻されるときの一連の圧力波を示す図である。
【
図32B】PTF−対−時間の最大のマグニチュードハーモニック(ハーモニック3)を示す図であり、ここで、
図32Aの中の058の近くで、および、
図32Bの中の059の近くで、カテーテルが狭窄を横切るときに、ハーモニック3の変化があることを示す図である。
【
図32C】ハーモニック0(060)(それは、FFRでもある)、1(061)、2(062)、および4(063)を示す図であり、それらは、カテーテル先端部が狭窄を横切るときにほとんど変化していないことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
本開示は、血管の上の空間的に分離されている2つのポイントにおける測定値から、被検体の中の血管の生理学的特性を検出するための方法を提供する。方法は、以下のステップを含む:
【0094】
S100:血管の上の空間的に分離されている2つのポイントにおいて、時間的に変化する測定値を獲得するステップ;
【0095】
S200:入力を所与とした出力を作り出すことができる線形のまたは非線形の伝達関数をコンピュータ計算するステップ;
【0096】
S300:2つのポイントの間の血管のセクションの材料特性を評価するために、伝達関数のパラメータを分析するステップ;
【0097】
以下のことが留意される。上記に説明されているような方法において、
図1Cに示されているように、一方の測定値は、システムの中への入力であると考えられ、他方は、出力であると考えられる。入力波形を所与とした出力波形を作り出す伝達関数がコンピュータ計算される。伝達関数のパラメータは、血管の生理学的特性に関係付けられる。
【0098】
本明細書において、血管は、動脈または静脈であることが可能である。測定値は、血流速度、血流量、または血圧であることが可能である。被検体は、動物または人間であることが可能である。血流速度または血流量の測定値は、位相コントラスト磁気共鳴イメージング、ドップラー超音波法、侵襲的カテーテルから取得され得る。血圧の測定値は、侵襲的カテーテル、または、他の関連のバイタル・サインの測定デバイス(それに限定されないが、眼圧測定デバイス、フィットネス・リストバンド、または別のタイプの血圧測定デバイスを含む)から取得され得る。伝達関数は、線形または非線形であり、時間的に変化しないかまたは時間的に変化することが可能である。伝達関数は、タイム・ドメインまたは周波数ドメインで動作することが可能である。
【0099】
本明細書では、血管の生理学的特性を評価することによって、方法は、肺高血圧症(PH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、駆出率の保たれた心不全、駆出率の低下した心不全、結合組織病、冠状動脈疾患、または、血管の生理学的特性に影響を与える任意の他の疾患などのような、血管疾患を検出するために使用され得る。
【0100】
1つの実施形態では、血流速度は、肺動脈(PA)樹の中の2つのポイントにおいて、位相コントラスト心臓磁気共鳴イメージング(PC−MRI)によって非侵襲的に測定される。PC−MRIは、任意の配向に身体を通るスライスが定められ、スライスを通って移動する組織の特定の方向の速度のイメージが作り出される技法である。PC−MRIでは、それぞれのスライス、すなわち、マグニチュード・イメージ(
図2A)および位相イメージ(
図2B)の2つのイメージが作り出される。マグニチュード・イメージは、標準的なMRIイメージと同様の解剖学的なイメージである。位相イメージ(
図2B)では、それぞれのピクセルは、組織の小さい立方体を表しており、ピクセルのグレースケール値は、特定の方向の組織の速度に対して既知の線形の関係を有している。速度は、プラスまたはマイナスであることが可能である。PC−MRIでは、静止した組織(速度=0)は、通常、50%グレーである。1つの方向に移動している組織は明るくなっており、反対側方向に移動している組織は暗くなっている。獲得は、被検体の心電図信号に同期化され、イメージのシーケンスが、心周期の中の等しく間隔を置いて配置された時点において取得される。典型的に、20〜32の時点が獲得される。この実施形態では、2つのそのようなイメージ・シーケンスが取得される:1つは、右PA(RPA)分岐の近位のものであり、1つは、分岐の遠位のものである。また、測定値が、分岐の近位および遠位の左PA(LPA)から取得され得る。スライスは、それぞれのポイントにおいて動脈に対して垂直に定められ、スライスに対して垂直の速度が測定される。
図2Bに示されているように、結果として生じるイメージは、動脈の断面の中の血流速度場を含有する。ユーザーは、シーケンスのそれぞれのイメージの中で、コンピュータの支援によって、動脈の境界線を画定する。それぞれの時点における動脈の中の速度場の統計が、
図3に示されているように、心周期にわたって速度対時間の曲線を作り出すようにコンピュータ計算される。
【0101】
図4A〜
図4Dは、正常な人間のボランティア、および、肺高血圧症(PH)を患う患者の中の、分岐の近位のポイントおよび分岐の遠位のポイントにおいて、右PA(RPA)の中で測定される脈動速度対時間の曲線を図示している。柔軟なPAを有する正常なボランティアでは、速度プロファイルは、2つのサイトの間で移行時間においてシフトされるだけでなく、波全体にわたって複雑な形状変化も存在している。PHを患う患者では、PAがより硬くなっており、時間シフトおよび形状変化の両方が低減される。これらの時間シフトおよび形状変化は、2つのポイントの間の動脈のコンプライアンスおよび幾何学形状に関係付けられる。
【0102】
これらの変化は、位相コントラストMRIによって非侵襲的に測定される2つの速度プロファイルの間の伝達関数によってコンパクトに説明され得る。伝達関数は、入力波形を所与とした出力波形を発生させる、線形のまたは非線形の演算子である。この実施形態では、伝達関数、S
V[]、は、以下の通りに、入力波形v
proximal(t)および出力波形v
distal(t)に関係付けられる:
v
distal(t)=S
V[v
proximal(t)]
【0103】
いくつかの実施形態では、伝達関数は、線形の時不変系としてモデル化される。このケースでは、伝達関数は、インパルス応答関数S
V(t)によって入力をコンボリューションする:
v
distal(t)=S
V(t)*v
proximal(t)
ここで,*は、コンボリューション演算子を示している。両辺のフーリエ変換を行うと以下になる。
V
distal(f)=S
V(f)V
proximal(f)
ここで、fは、ヘルツで表された周波数であり、S
V(f)は、伝達関数である。S
V(f)は、複素数値関数であり、S
V(f)のマグニチュードと周波数とのプロット、および、S
V(f)の位相と周波数とのプロットとして表示されることが多い。この実施形態では、速度伝達関数(VTF)は、測定された入力波形および出力波形から、以下の通りにコンピュータ計算され得る:
【0105】
上記の伝達関数は、連続的な周波数の複素数値関数である。しかし、伝達関数は、複雑なマグニチュード−対−ハーモニック周波数として表示される。ハーモニック周波数は、心臓周波数の整数倍であり、それは、心臓周期の逆数に等しい。伝達関数をハーモニックで表現することは、被検体同士の間の比較、または、時間の経過による同じ被検体の中の比較が、個々の心拍数から独立して行われることを可能にする。
【0106】
いくつかの実施形態では、伝達関数は、自己回帰移動平均(ARMA)モデルとして、タイム・ドメインで実施される:
【0107】
【数5】
ここで、X
kは、入力信号のサンプルであり、Y
kは、出力信号のサンプルである。pは、移動平均項の次数であり、qは、自己回帰項の次数である。a
iおよびb
iは、係数である。パラメータp、q、a
i、およびb
iは、測定される入力信号および出力信号に基づいてコンピュータ計算され、これらのパラメータの関数は、血管の材料特性に関係付けられる。
【0108】
VTFのような伝達関数は、一方向演算子である。それらは、入力を所与とした出力を作り出すが、必ずしも、出力を所与とした入力を作り出さない。動脈では、血圧波の一部は、毛細血管床に反射し、動脈を通って上流に進行する。ときには、これは、速度波形または圧力波形の中のいわゆるダイクロティック・ノッチとして見ることができる(たとえば、
図9C、および、
図6の中の010を参照)。VTFに対する反射波の影響を調査するために、形状または振幅の変化のない、および、25msの移行時間を有する、PAのセクションを通って進行する速度プロファイルのシミュレーションが実施された。VTFは、反射波が存在しないときの理想的なケースに関して、および、一次波の振幅10%を有する、500msだけ遅れた反射波が存在しているときの、より現実的なケースに関して、入力および出力速度プロファイルからコンピュータ計算された。反射波は、パラメータが所定の範囲のハーモニックにわたってコンピュータ計算されるときに平均的な線に落ち着く波及効果を結果として生じさせる。
【0109】
インピーダンスは、2つの関数が、電圧および電流であるか、または、動脈の中の同じポイントにおいて測定される圧力およびフローであるときの、伝達関数の特定のケースである:
【0111】
VTFは、インピーダンスのようなものである。その理由は、それが、血管幾何学形状およびコンプライアンス/スティフネスの影響を主に説明し、それが動脈を通って進行するときに、入力速度プロファイルの中に周波数依存性の変化を引き起こし、それによって、出力速度プロファイルを作り出すからである。
【0112】
いくつかの実施形態では、VTFの中の単一のハーモニック・マグニチュード、または、ハーモニック・マグニチュードの線形の組み合わせが、動脈コンプライアンスのサロゲート・メジャー(surrogate measure)として計算および使用される。
【0113】
他の実施形態では、血圧波形(y軸に圧力をとり、x軸に時間をとる)が、動脈樹の中の2つのポイントにおいて、侵襲的カテーテルによって直接的に測定される。上流(近位)ポイントにおける、時間的に変化する血圧波形は、入力と考えられ、下流(遠位)ポイントにおける血圧波形は、出力と考えられる。
【0114】
この実施形態では、
図5および
図6に示されているように、圧力伝達関数(PTF)S
P(f)が、以下の通りに、それぞれの圧力プロファイルのフーリエ変換を行い、一方を他方で割ることによって、測定された2つの圧力プロファイルの間でコンピュータ計算される:
【0115】
【数7】
図5は、ハーモニック成分への圧力波形(004)の分解を図示しており、ここで、最初の5つのハーモニック・マグニチュードが、005に示されており、最初の5つのハーモニック成分波形が、006に示されており、最初の5つのハーモニック(009、実線)から計算される波形の上に実際の波形(008、点線)を重ね合わせたものが、007に示されている。ハーモニック0は、平均圧力である。より高い次数のハーモニックは、波形の中の微細な変化を説明している。
図6は、近位および遠位の圧力波形からの圧力伝達関数(PTF)の計算を図示している。それぞれの遠位ハーモニック・マグニチュードは、対応するPTFハーモニックを形成するために、対応する近位ハーモニック・マグニチュードによって割られている。ハーモニック0は、FFRに対応している。より高い次数のハーモニックは、それが動脈のセクションを通過するときの波形の形状に対する変化を説明している。
【0116】
いくつかの実施形態では、PTFの中の単一のハーモニック・マグニチュード、または、ハーモニック・マグニチュードの線形の組み合わせが、動脈コンプライアンスのサロゲート・メジャーとして計算および使用される。
【0117】
いくつかの実施形態では、単一の心拍圧力波形が、冠状動脈の中の疑わしい狭窄の遠位のポイントにおいて、侵襲的カテーテルによって測定され、基準波形であると考えられる。次いで、カテーテルが、疑わしい狭窄のエリアを通して引き戻され、一連の単一の心拍波形を生み出す。次いで、以下をコンピュータ計算することによって、一連のPTF(S
Pi(f))がコンピュータ計算される。
【0118】
【数8】
この実施形態では、冠状動脈の中の移動する血液と、血管壁部、冠動脈分岐、および狭窄との基本的な相互作用を反映する圧力波の総合的な分析を取得するために、全体的な一連の圧力波形が分析される。この実施形態は、FFRと同様のパラメータの評価を可能にするだけでなく、動脈材料パラメータに関係付けられるパラメータの評価も可能にする。
【0119】
いくつかの実施形態では、PTFの中の単一のハーモニック・マグニチュード、または、ハーモニック・マグニチュードの線形の組み合わせが計算される。ハーモニックの変化、または、ハーモニックの線形の組み合わせが、狭窄の場所および重症度を決定するために使用される。
【0121】
原発性肺高血圧症(PH)を患う患者(n=8)、PHの臨床的エビデンスのない慢性閉塞性肺疾患(COPD)Gold Stage I−IIIを患う患者(n=8)、および正常コントロールの患者(n=4)が、検討された。それぞれの被検体は、PC−MRIを受け、主肺動脈(MPA)の中のスライスを通る速度プロファイル、および分岐の近位の右肺動脈(RPA)を通るスライスを取得した。
【0122】
図8は、PH患者(017、n=8)、COPD患者(016、n=8)、および正常なボランティア(015、n=4)のグループに関して、VTFマグニチュード−対−ハーモニックを示している。ゼロ・ハーモニックにおけるVTFは、正常またはCOPDよりも、PHにおいて大きくなっており、それは、PHにおいて予期される高いPVR値と一貫している。しかし、より高いハーモニックにおいて、COPDグループは、PHグループと同様に振る舞い、増加したPAスティフネスを示唆する。
【0123】
図8は、正常なボランティア(正常、015)、PHを患う患者(017)、および、COPDを患う患者(016)からコンピュータ計算される、平均VTFマグニチュードおよび位相を示している。これらのスペクトルが、ハーモニック数に対してプロットされている。予期されるように、はるかに硬い動脈を有するPH患者において、マグニチュードスペクトルは、ほぼ一定になっており、位相は、最初の6つのハーモニックにわたって比較的に線形になっている(017に図示されている)。ゼロ・ハーモニックにおいて、VTFのマグニチュードは、正常と比較して、PHグループにおいて、より高くなっている。ゼロ・ハーモニックにおいて、COPDグループのVTFのマグニチュードは、正常と同様であるが、COPD患者において、より高いハーモニック・マグニチュードは、正常のように振る舞うというよりもむしろ、PHを患う者のように振る舞うということに留意することは興味深い。したがって、従来のPVR測定に相関するゼロ・ハーモニックにおいて、このパイロット研究の中のCOPD患者は、正常なPVR、PA圧力、および血管スティフネスを有すると考えられることとなる。しかし、より高いハーモニックにおけるVTF分析によって、それが血管スティフネスに関しては正しくない可能性があるということが明らかであった。これらの結果に基づいて、VTFは、PA圧力またはPVRの従来の侵襲的な測定よりも早い時間に、血管壁部スティフネスを非侵襲的に検出する有望な方法である。VTFを組み込むこれらの予備的な結果は、硬いチューブ・モデルの理論的な予想と一貫している(
図1A、
図1B、
図1C、および
図1D、ならびに、
図4A、
図4B、
図4C、および
図4D)。
【0124】
同様の結果が、
図9A、
図9B、および
図9Cに示されている個々の速度プロットの中に見られ得、
図9A、
図9B、および
図9Cにおいて、RPA速度は、MPA速度のタイム・シフトおよびスケーリングされたバージョンである。
【0125】
図9A、
図9B、および
図9Cは、主肺動脈(018、020、022)および分岐の近位の右肺動脈(019、021、023)の中のポイントにおける代表的な個々の平均速度プロファイルを示している。正常(
図9A)−対−COPD(
図9B)−対−PH(
図9C)における速度プロファイルのシフトの差に留意されたい。
【0126】
図9Aに示されているように、柔軟な動脈を有する正常な被検体では、RPA速度プロファイル(019)は、MPA速度プロファイル(018)と比較して広がっている。
図8は、3つのグループに関して、平均VTFマグニチュード−対−ハーモニックのプロットを示している。COPD(それは、PHの臨床的エビデンスのないGold Stage I−IIIであった)では、VTFマグニチュード(016)の結果は、PH(017)と正常(015)との間の中間にあることが見出され、PAが正常よりも硬いということを示した。
【0128】
この研究では、非侵襲性のPC−MRI由来のVTFの実施形態が、PAスティフネス/抵抗の増加に相関し、したがって、肺動脈回路およびRV−PAカップリングの非侵襲性の査定を提供することが可能であるという仮説を立てられ、それは、増加した動脈スティフネスに起因してRV血液ポンピング機能が損なわれているという状態である。このパイロット研究では、臨床的に必要な右心カテーテル法(RHC)を受けた患者が、心臓MRI(CMR)によって将来を見越して評価された。以下の特定の目的がテストされた:
【0129】
特定の目的1:新規の非侵襲性のCMR由来のVTF(S
V(f))が、侵襲的インピーダンスによって測定されるようなPAスティフネス/抵抗の変化と相関しているという仮説をテストすること。
【0130】
副目的1:関係が肺毛細血管楔入圧(PCWP)の評価から独立しているかどうかをテストすること。
【0131】
副目的2:VTF測定の観察者間および観察者内の信頼性をテストすること。
【0132】
特定の目的2:VTF(S
V(f))がRV構造および機能の変化と相関するという仮説をテストすること。
【0134】
サンプル母集団:治験への組み入れ基準:Birmingham HospitalおよびThe Kirklin Clinicにおいて、Alabama大学において、成功的に臨床的に必要な外来患者RHCを受け、CMRを受ける意思のある患者。除外基準:患者がCMRに関する任意の禁忌(MRI非対応の金属プロテーゼ、閉所恐怖症)を有するか、変力性療法を受けているか、心室補助デバイスを装着しているか、または、心臓移植もしくは肺移植の履歴を有する場合には、患者は研究から除外された。
【0135】
合計で104人の患者がスクリーニングされ、そのうちの39人は、研究に参加するのに適格であった。26人の患者は、参加することに同意し、そのうちの6人の患者は、彼らが以前は知らなかった閉所恐怖症の認識に起因して、CMR試験を試みたが不成功に終わった。したがって、合計で20人の患者が登録された(10人は、PVR<2.5:正常PVRグループであり、10人は、PVR≧2.5:高PVRグループである)。これらの20人の患者のうち、1人の患者は、位相コントラストシーケンスによって測定された侵襲的インピーダンスおよびCMR VTFを有していたが、MRIスキャナに伴う予期しない技術的な問題に起因して、RV質量、容積、および機能査定に関して、シネ定常状態自由歳差運動シーケンスを完了することができなかった。
【0136】
患者フロー:研究に同意した適格な患者は、臨床的に必要なRHCを受けた。PA圧力測定値が、MPAの中でSwan−Ganz PAカテーテルを使用して取得された。フロー測定に関して、血流量速度プロファイルが、RHCの時間の間または周りにおいて、MPAの中で経胸腔的な肺動脈脈波ドップラーを使用して取得された。これらの2つの測定値の分析(下記に詳述されるように)は、侵襲的インピーダンスの計算を結果として生じさせた。次いで、彼らは、VTF、RV構造および機能分析に関するPCシーケンスを含むCMR試験を同じ日に受けた。患者フローは、
図10に可視化され得る。研究は、Birmingham Institutional Review Boardにおいて、Alabama大学によって承認された。
【0137】
RHC、ドップラー心エコー法および侵襲的インピーダンス測定:侵襲的なRHCから取得されたMPA圧力、および、脈波ドップラーから取得されたMPA血流量速度プロファイルが、心電図アーチファクトを使用して同期化された。次いで、これらの波形は、
図11Aおよび
図11Bに示されているように、WebPlotDigitizerバージョン3.8を使用してデジタル化された。
【0138】
デジタルデータは、カンマ区切りされた数値フォーマットとして抽出された。速度プロファイルは、補正因子を使用してフロープロファイルへ変換された(Hunter,K.S.ら、肺血管入力インピーダンスは、肺血管抵抗およびスティフネスの組み合わせた尺度であり、肺高血圧症を患う小児科患者において、肺血管抵抗単独よりも良好に臨床アウトカムを推測する。Am Heart J, 2008.155(1):p.166−74)。
Q(t)=A
corrV(t)
A
corr=CO V
mean
ここで、Q(t)は、計算されたフロー−時間の履歴であり、V(t)は、デジタル化された脈波ドップラー波形から取得される速度−時間の履歴であり、A
corrは、速度−時間をフロー−時間へ変換するために適用される補正因子であり、COは、右心カテーテル法から取得される心臓出力であり、V
meanは、正中線の速度−時間の履歴からコンピュータ計算される平均速度である。次いで、インピーダンスが、Matlabバージョン2015aを使用してデジタル化されたデータについての離散フーリエ変換を取得することによって計算された。
【0139】
RHCプロトコル:インフォームド・コンセントの後に、患者は、静脈内鎮静法なしに局所麻酔のみの下で、右内頸静脈を介して、5FのSwan−Ganz流体充填カテーテルによって、臨床的に必要な右心カテーテル法を受けた。
【0140】
経胸腔的なドップラー心エコー法プロトコル:患者が左側臥位にあり、トランスデューサーが左傍胸骨の肋骨間隙(通常は、3番目または4番目)の中にある状態で、心臓の短軸像が、大動脈弁のレベルにおいて取得された。次いで、脈波ドップラー心エコー法が、主肺動脈の中の肺動脈弁の遠位に0.5〜1cmに設置されている2mmサンプル体積によってこの像の中で取得された。ドップラー心エコー法が、Philips IE33超音波システムを使用して取得された。
【0141】
CMRイメージングおよび速度伝達関数測定:近い時間的関係を維持するために、および、血流力学状態の重大な変更を最小化するために、シネおよび位相コントラストシーケンスから構成される総合的CMRが、圧力−フロー測定の同じ日に実施された。それは、PC−CMR技法(
図2Aおよび
図2B)を使用した、MPA、近位(分岐の近位の)RPA、遠位RPA、および近位LPAの中のフローの査定を含んでいた。所定の心周期にわたる平均速度−時間プロファイル(
図3)、および、RV質量、容積、および機能の正確な査定(
図12)が取得された。
【0142】
MRIプロトコル:磁気共鳴イメージングが、心臓用途のために最適化された1.5−T磁気共鳴スキャナ(GE Signa、Milwaukee、Wisconsin)の上で実施された。Cine SSFP:以下の一般的なパラメータ、すなわち:将来的なECG同期、スライス厚さ=8mm、2mmスライス間ギャップ、視野=40x40cm、スキャン・マトリックス=224x128、フリップ角度=45°、繰り返し/エコー時間=3.8/1.6msを伴う、標準的な2腔像、4腔像、および短軸像を取得するために、心電図(ECG)同期式の息止め定常状態自由歳差運動技法が使用された。20個の心臓の位相が、1セグメント当たり8図によって再構築された。
【0143】
短軸スタックは、拡張終末期の4チャンバー・イメージから位置決めされ、僧帽弁輪に対して平行に、および、隔膜に対して垂直に中心を合わせられ、僧帽弁の近位1cmから開始して、心尖を1cm越えている。分析は、CAAS MRV3.4(Pie Medical Imaging、Netherland)を使用して実施された。位相コントラストMRI:それは、ECG同期式の息止め高速グラディエント・リコールド・エコー位相コントラスト・シーケンス(高速2D位相コントラスト)を使用して実施された。典型的なパラメータは、:視野=40cm、スキャン・マトリックス=256x128、エンコーディング速度150cm/s、NEX=1、フリップ角度=15°、繰り返し/エコー時間=7.6/3.1ms、バンド幅+/−31.25KHz、1セグメント当たり8図であった。20個の位相が再構築された。コンターが、CAAS MR Flow ver 1.2(Pie Medical Imaging、Netherland)を使用して描画され、MATLAB 2015aを使用する分析のためのcsvフォーマットとしてエクスポートされた。
【0144】
また、VTFおよび侵襲的な入力インピーダンスに加えて、表1の中の従来の肺動脈スティフネス・パラメータが検討された。
【0145】
表1.肺動脈スティフネス・パラメータ
【0146】
【表1】
A:面積、Ao:大動脈基部、MPA:主肺動脈、MRI:磁気共鳴イメージング、P:圧力、PA:肺動脈、PASP:肺動脈収縮期圧力、PADP:肺動脈拡張期圧力、PP:脈圧、Q:フロー、RHC:右心カテーテル法、RPA:右肺動脈、VTF:速度伝達関数、VRPA(f):RPAにおける速度関数、VMPA(f):MPAにおける速度関数。
【0147】
正常および高PVRグループの人工統計学的特徴、臨床的特徴、およびイメージング特徴が、連続型変数に関してt−検定またはWilcoxon検定(非正常のデータの場合)を使用して比較され、また、カテゴリー変数に関してFisherの正確確率検定を使用して比較された。SAS MIXED手順を使用する、繰り返される混合モデル分析が、従属変数として、両方の侵襲的インピーダンスのゼロおよび最初の6つのハーモニックについて実施され、予測変数としてVTFについて実施され、VTFと侵襲的インピーダンス(モデル:侵襲的インピーダンス=MRI Harmonics MRI*Harmonics)との関連性を査定する。エラー項に関する非構造化共分散構造が、同じ被検体からのさまざまなハーモニックの間の相関関係を収容するように適合させられた。侵襲的インピーダンスに関するゼロおよび第1のハーモニックの平均、ならびに、VTFに関する第5および第6のハーモニックの平均が、コンピュータ計算された。平均高周波数マグニチュードMHFMが、VTFの第5および第6のハーモニックの平均マグニチュードとして定義された。次いで、平均インピーダンスおよびMHFM曲線が、相関関係に関して検討された。すべての研究が、VTFの計算に関して独立した盲検方式で、心臓専門医(AGが2回、HGが1回)によって評価された。クラス内の相関関係が、VTFの計算における観察者間および観察者内の信頼性を調査するために使用された。クラス内の相関関係係数は、SAS macroを使用して計算された。線形回帰モデルが、RV質量、容積、および、関数パラメータとMHFMとの関連性を検討するために使用された。ロジスティック・モデルが、受信者動作特性(ROC)曲線を取得するために使用され、高いまたは正常なPVRを有する患者を差別化する際に、MHFMの性能を検討した。p<0.05は、統計的に有意であると考えられた。パイロット研究であることに起因して、p値の調節は、複数の統計学的テストに関して行われなかった。すべての統計学的分析は、SASバージョン9.4を使用して実施された。
【0149】
患者の臨床的特徴およびイメージング特徴:研究母集団は、表2、表3に概説されているような典型的な共存症を有する中高年の主に白色人種の個人から構成されていた。
【0150】
表2、表3.人工統計学的特徴および臨床的特徴
【0152】
【表3】
連続型変数は、平均±SDになっており、離散型変数は、個人の数になっており、正常−対−高PVRグループに関して、*p値<0.05になっている。ACEI:アンギオテンシン変換酵素阻害薬;ARB:アンギオテンシン受容体遮断薬;COPD:慢性閉塞性肺疾患;eGFR:推定糸球体濾過量、ml/min;PAP;肺動脈圧力;PCWP:肺毛細血管楔入圧;PH:肺高血圧症;PVR:肺血管抵抗。
【0153】
20人の患者のうち、10人の患者は、平均PA圧力<25mmHgによって定義されるような正常なPA圧力を有していた(
図13)。正常な平均PA圧力を有するこれらの10人の患者のPVRは、1.76±0.78(平均±SD)Wood単位(WU)であった。平均PVRの上方の1SDは、おおよそ2.5WUであった。また、臨床的に、早期PAリモデリングの検出(2.5から3の間のPVR)が興味深い。したがって、研究患者は、2つのグループ、すなわち、PVR<2.5WUを有する正常PVRグループ(10人の患者)、および、PVR≧2.5を有する高PVRグループ(10人の患者)へと分割された。
【0154】
RHCおよびドップラー、ならびに、RHCおよびMRIデータが、時間的に近くで獲得された(時間差:それぞれ、0.029±0.04時間、2.38±1.15時間)、表4。Bland−Altman分析は、表4に示されているように、インター・モダリティー心拍数、血圧、および心係数の間の優れた相関関係および一致度を明らかにした。
【0155】
表4.インター・モダリティー時間、心拍数、血圧および心係数差
【0156】
【表4】
時間差は、中央値±四分位範囲になっている。HRおよびBPの差は、平均±SDになっている。BP:血圧、CI:心係数;DBP:拡張期血圧、MBP:平均血圧、MRI:磁気共鳴イメージング、PA:肺動脈、PVR:肺血管抵抗、RHC:右心カテーテル法、SBP:収縮期血圧。
【0157】
RHCを使用する侵襲的な血流力学査定は、表5に示されているように、正常PVRグループと比較して、高PVRグループにおいて、より高いPA収縮期、拡張期、平均、脈圧、および、より低い心係数を明らかにした。
【0159】
【表5】
すべての圧力は、mmHgになっており、すべての値は、平均±SDになっており、正常PVR−対−高PVRグループに関して、*p値<0.05になっている;PVR:肺血管抵抗。
【0160】
CMR由来の右心室質量インデックス、拡張終末期の容積インデックス、および、質量−容積の比は、下記の表に示されているように、正常PVRグループと比較して、高PVRグループにおいて、より高くなっていた。左心室駆出率は、表6に示されているように、平均に関して、両方のグループにおいて保たれていた。
【0161】
表6.右心室および左心室の質量、容積、および機能
【0162】
【表6】
すべての値は、平均±SDになっており、正常PVR−対−高PVRグループに関して、*p値<0.05になっている。MRI:磁気共鳴イメージング;PVR:肺血管抵抗。
【0163】
PAスティフネスのいくつかの他の従来の測定値が検討された。PAのコンプライアンス、キャパシタンス、伸展性は、より低くなっており、弾性係数は、表7に示されているように、低PVRグループと比較して、高PVRグループにおいて、より高くなっていた。
【0165】
【表7】
すべての値は、平均±SDになっており、正常PVR−対−高PVRグループに関して、*p値<0.05になっている。PA:肺動脈、PVR:肺血管抵抗。
【0166】
速度伝達関数および侵襲的インピーダンス:アウトカム変数として侵襲的インピーダンスを用い、予測変数としてVTFおよびハーモニックを用いる、混合モデル統計学的分析が実行された。すべてのハーモニックがモデルの中に含まれているので、患者当たりに複数の観察が存在し、したがって、非構造化共分散構造が、モデルの中に利用された。右側VTF(近位RPAから遠位RPAへ、F比12.34、p値0.0023)に関して、VTFと侵襲的インピーダンスとの間に重要な関係が存在していたが、左側VTF(MPAから近位LPAへ、F比1.6、p値0.22)に関してはそうではなかった。VTF右と侵襲的インピーダンスとの間のこの関係は、PCWP(F比=8.08、p=0.01)の中の上昇に関する調節の後にも有意なままであった。
【0167】
また、VTFと侵襲的インピーダンスとの間の関係が評価された。侵襲的インピーダンスの0−1ハーモニックおよびMHFM(VTFハーモニック5−6の平均)の平均が計算された。初期調査において、侵襲的インピーダンスのインピーダンス・ハーモニック0−1の平均とRPA VTF MHFM(Pearson r=0.12、p=0.63)またはLPA VTF MHFM(Pearson r=−0.17、p=0.47)との間の相関関係は存在しなかった。対応する散布図が、
図14Aおよび
図14Bにおいて下記に示されている。散布図から明確に見られるように、平均侵襲的インピーダンス・ハーモニック0−1およびLPA VTF MHFMに関して、相関関係は存在していない(
図14B)。しかし、侵襲的インピーダンスおよびRPA VTF MHFMに関する散布図の精密試験において(
図14A)、平均侵襲的インピーダンス・ハーモニック0−1とRPA VTF MHFMとの間に強力な相関関係が存在するように見えるが、この関係は、0−1インピーダンス・ハーモニックおよび高いVTF MHFMの比較的に低い平均によって、2つの外れ値(緑の矢印、
図14A)によって影響を受けたように思われるということが見出された。これらの2つの外れ値は、正常な平均PA圧力および2.5から3の間のPVR(早期PAリモデリング)を有する患者に対応しており、ここでは、侵襲的インピーダンス・ハーモニック0−1の平均は、早期PAリモデリングに起因してではなく、わずかに上昇したPVRのみに起因して、低くなることとなり、それらは、MHFMの増加に伴いVTFの大きい高い周波数マグニチュードを有していた。これらの2つの外れ値が除去された状態では、VTF MHFMおよび侵襲的インピーダンス・ハーモニック0−1の平均の重要な相関関係が存在していた(Pearson r=0.74、95%CI=0.42−0.89、p=0.0002、
図15)。
【0168】
観察者間および観察者内の変動性。表8および
図16A、
図16B、
図16C、および
図16Dに示されているように、VTFの平均高周波数マグニチュードにおいて、高い観察者内および観察者間の信頼性が存在していた。
【0169】
表8.速度伝達関数の平均高周波数マグニチュードにおける観察者間および観察者内の変動性
【0171】
右心室構造および機能との関係。侵襲的インピーダンスは、RVMI、RVEDVI、および、容積に対するRV質量の比率との重要な関連性を示した(表9)。
【0172】
表9.右心室リモデリングと侵襲的インピーダンスおよび速度伝達関数との関連性の査定
【0173】
【表9】
*p値<0.05。RV:右心室;VTF:速度伝達関数。
【0174】
また、VTFは、増加するMHFMに伴ってRVEFが減少する状態で、RVEFとの重要な関連性を示したが、しかし、RVMIとの関連性は、初期には見られなかった(表8ならびに
図17Aおよび
図17B)。2つの外れ値が、RVMIおよびMHFMに関する適合曲線の中に留意された(
図17A、028、029)。これらの2つの外れ値は、早期PAリモデリングによる患者に対応している(2.5から3の間のPVRによる正常な平均PA圧力)。それらは、高いインピーダンスを有していたが、疾患プロセスの中の早期にあるということに起因して、同様に比例して増加させられるRVMIは有していなかった。これらの2つの外れ値が除去された後に、VTFは、RVMIとの重要な関連性を示した(R
2=0.32、F比=6.91、p=0.01、
図17B)。
【0176】
このパイロット研究では、CMRに関するVTFを使用するPAインピーダンスの新規な非侵襲性の査定が提案され、PAインピーダンスがVTFを使用して完全に非侵襲的に検出され得るということが初めて示された。VTFは、インピーダンスのスペクトル同士の間を差別化することが可能であり、早期のPA機械的リモデリングによって患者を検出することが可能であるということが実証された。VTFを使用するPAインピーダンスのこの検出は、PCWPの上昇から独立しているということが示された。また、VTFとRVEFおよびRVMIとの重要な関連性によって、VTFは、RV−PAカップリングを非侵襲的に評価したということが示された。また、VTFは、盲検研究の繰り返される独立した測定に関して、観察者間および観察者内の高い一致度によって、その測定においてロバストであった。
【0177】
この研究では、主PAから近位LPAへのではなく、近位RPAから遠位RPAへの速度プロファイルの変化として測定されるときに、侵襲的インピーダンスとVTFとの重要な関連性が存在していた。これは、場合によっては、LPAが早期に分岐するということによって短いということに起因する可能性があり、したがって、円形の解剖学的プロファイルの欠如に起因して位相コントラストMRIの間の速度測定値における不正確さにつながる。
【0178】
20人の研究患者のうち、10人は、<25mmHgの平均PA圧力によって定義されるような正常なPA圧力を有しており、10人は、PVR<2.5WUによって定義されるような正常PVRを有していた。VTFは、正常なPA圧力グループと上昇したPA圧力グループとの間を差別化しなかったが(
図18)(ハーモニックとインピーダンスを予測するためのグループとの相互作用に関するp値=0.74)、正常PVRグループと上昇したPVRグループとの間を差別化した(
図19)(ハーモニックとインピーダンスを予測するためのグループとの相互作用に関するp値=0.001)。
【0179】
また、VTFの第5および第6のハーモニックの平均高周波数マグニチュード(MHFM)が検討された。
図19において見られるように、MHFMは、正常PVRグループと比較して、高PVRグループに関してより高くなっていた(それぞれ、2.15±1.64対0.84±0.3、t9.6=−2.3、p=0.04)。ROC分析において、MHFMは、高PVRを有する患者から正常PVRを有する患者を差別化するためのMHFMの有意な性能能力を示した(
図20、AUC=83%、カイ2乗=4.55、p=0.03)。これは、正常PVRを有する患者と高PVRを有する患者との間を非侵襲的に差別化するVTFの可能性を実証した。
【0180】
正常な平均PA圧力<25mmHgを有する10人の患者のうち、VTFは、
図21において見られるように、正常PVR<2.5を有する者(n=7)と2.5〜3の間の上昇したPVRを有する者(n=3)との間を差別化した。これは、通常では正常なPA圧力を有する患者の中の早期のPAスティフネスを検出するVTFの可能性を示している。
【0181】
この研究では、5人の患者が、上昇したPCWPを有していた。これらのうち、3人は、正常なPVRを有しており(肺静脈高血圧症)、2人は、上昇したPVRを有していた(混合された肺動脈高血圧および肺静脈高血圧)。VTFは、PCWPの上昇に関わらず、正常なPVRグループと上昇したPVRグループとの間を差別化した(
図22)。これは、PCWPの上昇に関係なくPAリモデリングを検出するVTFの可能性を示している。これは、慢性の左側心不全を患う患者の中のPAインピーダンスおよびリモデリングを検討するために非常に有用である可能性がある。留意すべき点として、これらのサブ・グループの中の小さいサンプル・サイズに起因して、
図21および
図22に関して推計統計は計算されなかったが、これらは、より大きい研究においてテストされるべき仮説を生むものである。
【0182】
この研究は、VTFが侵襲的インピーダンスとの強力な関連性を有することを示した。また、これは、正常なPVRおよび高PVRを有する患者(
図23Aおよび
図23B)、ならびに、上昇したPVRを有するかまたは有しない正常な平均PA圧力を有する患者(
図24Aおよび
図24B)の、対応する侵襲的インピーダンスおよびVTF曲線の中に見られ得る。
【0183】
図23Aおよび
図24Aにおいて見られるように、正常な侵襲的インピーダンス曲線は、ゼロ・ハーモニックにおいて低いマグニチュードを示しており、次いで、急速に降下し、第1の最小マグニチュードが低いハーモニック(1または2)において起こる状態になっている。高PVRを有する患者のインピーダンス・マグニチュード曲線は、ゼロ・ハーモニックにおいて高いマグニチュードを示しており、次いで、ゆっくりと降下し、第1の最小が後のハーモニック(3もしくは4またはそれ以上)において起こる状態になっている。これは、インピーダンス曲線の予期された挙動であり(Nichols, W. and M. O’Rourke, McDonald’s Blood Flow in Arteries. 5th ed. 2005, London: Hodder Arnold.)、この研究の中の侵襲的インピーダンス測定を支持している。
図23Bおよび
図24Bの中の対応するVTF曲線は、VTF曲線が、正常なPVRまたは高PVRを有する患者に関して、同様のゼロ・ハーモニックにおいて開始するが、次いで、高PVRを有する患者においてインピーダンス・マグニチュードが増加するときには、より高いハーモニック(5または6)における差別化を示すということを実証した。侵襲的インピーダンスに関して、圧力およびフロー曲線は、異なる平均値を有しており、それは、ゼロおよびより低いインピーダンス・ハーモニックにおける高いインピーダンス・マグニチュードとして反映している。それとは対照的に、VTFに関して、入力(近位RPA)および出力(遠位RPA)の速度曲線は、同じ平均値に近付いており、したがって、ゼロおよびより低いVTFハーモニックが、より高いハーモニックにおいて分離する前に1の近くになっている。
【0185】
この研究からの以下の個々の患者の例は、通常では正常な平均PA圧力を有する患者の中の正常PVR<2.5(
図27、
図28)から、早期の肺動脈リモデリング(2.5から3の間のPVR、
図25、
図26)を非侵襲的に検出するための強力なツールとして、VTFの潜在的な能力を図示している。また、それは、個々の患者の中の上昇したPCWPに関わらず高い肺血管抵抗と正常な肺血管抵抗とを区別するためのVTFの潜在的な能力を実証した(
図29、
図30)。
【0187】
この研究は、肺動脈インピーダンスを査定する、および、RV−PA軸の査定の、非侵襲性で非常に信頼性の高い方法として、VTFの実行可能性を初めて実証した。位相コントラストCMR研究を使用して取得するために、それは、再生でき、比較的に安価であり、電離放射線を必要とせず、10分未満を要し、それは、また、RV構造および機能の査定のための同じセッションにおいてシネ−CMRを含むように拡張され得る。
【0189】
VTFは、侵襲的インピーダンスのサロゲートであり、侵襲的インピーダンスの正確な尺度ではない。侵襲的インピーダンスは、周波数ドメインにおける圧力とフローのマグニチュードの比であり、一方、VTFは、周波数ドメインにおける入力速度プロファイルに対する出力速度プロファイルのマグニチュードの比である。この研究は、VTFが、PAインピーダンスの正確で信頼性の高い非侵襲性のサロゲートとして、より高価なまたは侵襲的なテストが考えられる前に、スクリーニング・ツールとして使用され得るということを実証した。この研究では、侵襲的インピーダンスが、RHCからの圧力データおよびドップラー心エコー法からのフロー・データのハイブリッド獲得を使用して測定された。PAインピーダンスの完全に侵襲的な査定が実行可能であり、動物(Milnor, W., D. Bergel, and J. Bargainer, Hydraulic power associated with pulmonary blood flow and its relation to heart rate. . Circ Res. , 1966. 19(3): p. 467−80; Caro, C.G. and D.D. Mc, The relation of pulsatile pressure and flow in the pulmonary vascular bed. JPhysiol, 1961. 157: p. 426−53; Patel, D.J., F.M. Defreitas, and D.L. Fry, Hydraulic input impedance to aorta and pulmonary artery in dogs. J Appl Physiol, 1963. 18: p. 134−40; Bergel, D.H. and W.R. Milnor, Pulmonary Vascular Impedance in the Dog. Circ Res, 1965. 16: p. 401−15; van den Bos, G.C., N. Westerhof, and O.S. Randall, Pulse wave reflection: can it explain the differences between systemic and pulmonary pressure and flow waves? A study in dogs. Circ Res, 1982. 51(4): p. 479−85; Maggiorini, M., et al., Effects of pulmonary embolism on pulmonary vascular impedance in dogs and minipigs. J Appl Physiol (1985), 1998. 84(3): p. 815−21; Santana, D.B., et al., Pulmonary artery smooth muscle activation attenuates arterial dysfunction during acute pulmonary hypertension. J Appl Physiol (1985), 2005. 98(2): p. 605−13; Greenwald, S.E., R.J. Johnson, and S.G. Haworth, Pulmonary vascular input impedance in the newborn and infant pig. Cardiovasc Res, 1985. 19(1): p. 44−50; Leather, H.A., et al., Effects of vasopressin on right ventricular function in an experimental model of acute pulmonary hypertension. Crit Care Med, 2002. 30(11): p. 2548−52.)および人間(Milnor, W.R., et al., Pulmonary Arterial Pulse Wave Velocity and Impedance in Man. Circ Res, 1969. 25(6): p. 637−649; Wilcox, B.R. and C.L. Lucas, Pulmonary input impedance in children with left−right shunt. J Surg Res, 1980. 29(1): p. 40−9; Murgo, J.P. and N. Westerhof, Input impedance of the pulmonary arterial system in normal man. Effects of respiration and comparison to systemic impedance. Circ Res, 1984. 54(6): p. 666−73; Kussmaul, W.G., J.M. Wieland, and W.K. Laskey, Pressure−flow relations in the pulmonary artery during myocardial ischaemia: implications for right ventricular function in coronary disease. Cardiovasc Res, 1988. 22(9): p. 627−38; Chen, Y.T., et al., Aortic and pulmonary input impedance in patients with cor pulmonale. Jpn Heart J, 1990. 31(5): p. 619−29; Kussmaul, W.G., 3rd, et al., Effects of pacing tachycardia and balloon valvuloplasty on pulmonary artery impedance and hydraulic power in mitral stenosis. Circulation, 1992. 86(6): p. 1770−9.)におけるより古い研究において利用されたが、PAインピーダンスについてのより最近の人間の研究(Hunter, K.S., et al., 肺血管入力インピーダンスは、肺血管抵抗およびスティフネスの組み合わされた尺度であり、肺高血圧症を患う小児科患者において、肺血管抵抗単独よりも良好に臨床アウトカムを予測する。Am Heart J, 2008. 155(1): p. 166−74; Huez, S., et al., Feasibility of routine pulmonary arterial impedance measurements in pulmonary hypertension. Chest, 2004. 125(6): p. 2121−8.)は、実用性および比較的に低い費用に起因して、ハイブリッド獲得を使用した。それに加えて、現在の研究の患者における侵襲的インピーダンスの挙動(
図23Aおよび
図24A)は、予期されるインピーダンス曲線挙動(Nichols, W. and M. O’Rourke, McDonald’s Blood Flow in Arteries. 5th ed. 2005, London: Hodder Arnold.)と合致した。別の制限事項は、日常的な臨床実務において利用可能でなく、使用するのに高価なハイ・フィディリティー・カテーテルの使用とは対照的に、RHCの間の侵襲的なPA圧力測定値の獲得のために流体充填カテーテルを使用することである。この研究の他の制限事項は、侵襲的インピーダンス(RHC−ドップラー)およびVTF(CMR)の非同時の獲得である。非常に少ないハイブリッドMRI−RHC特別室が世界に存在している。したがって、すべての実用的な目的のために、所与の患者の中のRHCおよびMRIデータを獲得するための現在の唯一の方式は、順次的なものである。この研究では、RHC獲得とMRI獲得との間の血液動態の変化を最小化するために、所与の患者の中のすべての研究が、可能な限り互いに近い同じ日に取得された(表4)。RHCおよびMRIのときに、HR、BPおよびCIの血流力学パラメータの強力なクラス内の一致度が存在していた(表4)。それに加えて、インピーダンス分析は、タイム・ドメインというよりもむしろ周波数ドメインにあるので、生理学的範囲の中の血流力学パラメータの中の差が、RHCとMRIとの間のインピーダンス測定に悪影響を与えることとなるということはありそうもない。
【0191】
この研究では、以下の結論に到達した。
【0192】
結論1:侵襲的なPAインピーダンス測定のためのサロゲートとして非侵襲性のVTFを使用する実行可能性が初めて実証された。
【0193】
結論2:VTFがインピーダンス・マグニチュードのスペクトル同士の間を差別化することが可能であるということ、および、VTFが早期のPA機械的リモデリングを有する患者を検出することが可能であるということが実証された。
【0194】
結論3:PCWPの上昇から独立してPAインピーダンスを検出する際のVTFの可能性を示した。
【0195】
結論4:VTFは、RVEFおよびRVMIとの重要な関連性によって、RV−PAカップリングを非侵襲的に評価した。
【0196】
結論5:また、VTFは、盲検研究の繰り返される独立した測定に関して、高い観察者間および観察者内の一致度によって、その測定に関してロバストであった。
【0198】
1.これは、パイロット研究であった。VTFは、より大きい研究において検証される必要があることとなる。
【0199】
2.VTFの有用性およびロバスト性は、特別な患者母集団の中で評価される必要があることとなる。これらのいくつかは、慢性の閉塞性肺疾患、駆出率の保たれた心不全、駆出率の低下した心不全、結合組織病を患う患者であることとなる。
【0200】
3.臨床アウトカムに対するVTFの関係が、継断的研究において査定される必要がある。
【0201】
4.疾患進行または治療に伴うVTFの経時的変化は、継断的研究において調査される必要がある。
【0203】
この実施形態では、単一の心拍圧力波形が、冠状動脈の中の疑わしい狭窄の遠位のポイント(最も早い時点)において、侵襲的な左心カテーテルによって測定され、基準波形であると考えられる。次いで、カテーテルが、疑わしい狭窄のエリアを通して引き戻され、一連の単一の心拍を生み出した(後の時点)。次いで、一連のPTF(S
Pi(f))が、上述の公式を使用してコンピュータ計算された:
【0206】
図31Aは、カテーテル先端部が遠位ポイント(048)から狭窄を横切って近位ポイント(049)へ引き戻されるときの一連の圧力波を示している。
【0207】
図31Bは、PTF−対−時間の最大のマグニチュードハーモニック(ハーモニック3)を示している。
図31Aの中の050の近くで、および、
図31Bの中の051の近くで、カテーテルが狭窄を横切るときに、ハーモニック3(051)の変化があることに留意されたい。
【0208】
図31Cは、ハーモニック0(052)(それは、FFRでもある)、1(053)、2(054)、および4(055)を示しており、それらは、カテーテル先端部が狭窄を横切るときにほとんど変化していないことを示している。
【0209】
図32Aは、カテーテル先端部が遠位ポイント(056)から狭窄を横切って近位ポイント(057)へ引き戻されるときの一連の圧力波を示している。
【0210】
図32Bは、TF−対−時間の最大のマグニチュードハーモニック(ハーモニック3)を示している。
図32Aの中の058の近くで、および、
図32Bの中の059の近くで、カテーテルが狭窄を横切るときに、ハーモニック3の変化があることに留意されたい。
【0211】
図32Cは、ハーモニック0(060)(それは、FFRでもある)、1(061)、2(062)、および4(063)を示しており、それらは、カテーテル先端部が狭窄を横切るときにほとんど変化していないことを示している。
【0212】
両方のケースにおいて、ハーモニック3は、他のハーモニックよりも桁違いに大きく、ハーモニック3の変化は、狭窄の場所および重症度と相関していた。ハーモニック3の変化は、血管壁部との相互作用に起因して圧力波形の変化を表し、それは、狭窄において増加したスティフネスを有する。PTFは、血管の中の狭窄の総合的な査定を提供する。その理由は、ゼロ・ハーモニックが、FFRと同等であり、より高いハーモニックが、流れる血液の影響および血管壁部とのその相互作用を反映しているからである。
【0213】
参考文献:
1. Nichols, W. and M. O’Rourke, McDonald’s Blood Flow in Arteries. 5th ed. 2005, London: Hodder Arnold.
2. O’Rourke, M.F., Vascular impedance in studies of arterial and cardiac function. Physiological Reviews, 1982. 62(2): p. 570−623.
3. Milnor, W., D. Bergel, and J. Bargainer, Hydraulic power associated with pulmonary blood flow and its relation to heart rate. . Circ Res. , 1966. 19(3): p. 467−80.
4. Milnor, W.R., et al., Pulmonary Arterial Pulse Wave Velocity and Impedance in Man. Circulation Research, 1969. 25(6): p. 637−649.
5. Yin, F., Ventricular/ Vascular Coupling. Clinical, physiological and engineering aspects. 1987, New York: Springer− Verlag.
6. Dell’Italia, L.J. and W.P. Santamore, Can indices of left ventricular function be applied to the right ventricle? Progress in Cardiovascular Diseases, 1998. 40(4): p. 309−324.
7. Sanz, J., et al., Evaluation of Pulmonary Artery Stiffness in Pulmonary Hypertension With Cardiac Magnetic Resonance. J Am Coll Cardiol Img, 2009. 2(3): p. 286−295.
8. Piene, H., Pulmonary arterial impedance and right ventricular function. Physiological Reviews, 1986. 66(3): p. 606−652.
9. Hunter, K.S., et al., Pulmonary vascular input impedance is a combined measure of pulmonary vascular resistance and stiffness and predicts clinical outcomes better than pulmonary vascular resistance alone in pediatric patients with pulmonary hypertension. Am Heart J, 2008. 155(1): p. 166−74.
10. Caro, C.G. and D.D. Mc, The relation of pulsatile pressure and flow in the pulmonary vascular bed. J Physiol, 1961. 157: p. 426−53.
11. Patel, D.J., F.M. Defreitas, and D.L. Fry, Hydraulic input impedance to aorta and pulmonary artery in dogs. J Appl Physiol, 1963. 18: p. 134−40.
12. Bergel, D.H. and W.R. Milnor, Pulmonary Vascular Impedance in the Dog. Circ Res, 1965. 16: p. 401−15.
13. van den Bos, G.C., N. Westerhof, and O.S. Randall, Pulse wave reflection: can it explain the differences between systemic and pulmonary pressure and flow waves? A study in dogs. Circ Res, 1982. 51(4): p. 479−85.
14. Maggiorini, M., et al., Effects of pulmonary embolism on pulmonary vascular impedance in dogs and minipigs. J Appl Physiol (1985), 1998. 84(3): p. 815−21.
15. Santana, D.B., et al., Pulmonary artery smooth muscle activation attenuates arterial dysfunction during acute pulmonary hypertension. J Appl Physiol (1985), 2005. 98(2): p. 605−13.
16. Greenwald, S.E., R.J. Johnson, and S.G. Haworth, Pulmonary vascular input impedance in the newborn and infant pig. Cardiovasc Res, 1985. 19(1): p. 44−50.
17. Leather, H.A., et al., Effects of vasopressin on right ventricular function in an experimental model of acute pulmonary hypertension. Crit Care Med, 2002. 30(11): p. 2548−52.
18. Wilcox, B.R. and C.L. Lucas, Pulmonary input impedance in children with left−right shunt. J Surg Res, 1980. 29(1): p. 40−9.
19. Murgo, J.P. and N. Westerhof, Input impedance of the pulmonary arterial system in normal man. Effects of respiration and comparison to systemic impedance. Circ Res, 1984. 54(6): p. 666−73.
20. Kussmaul, W.G., J.M. Wieland, and W.K. Laskey, Pressure−flow relations in the pulmonary artery during myocardial ischaemia: implications for right ventricular function in coronary disease. Cardiovasc Res, 1988. 22(9): p. 627−38.
21. Chen, Y.T., et al., Aortic and pulmonary input impedance in patients with cor pulmonale. Jpn Heart J, 1990. 31(5): p. 619−29.
22. Kussmaul, W.G., 3rd, et al., Effects of pacing tachycardia and balloon valvuloplasty on pulmonary artery impedance and hydraulic power in mitral stenosis. Circulation, 1992. 86(6): p. 1770−9.
23. Huez, S., et al., Feasibility of routine pulmonary arterial impedance measurements in pulmonary hypertension. Chest, 2004. 125(6): p. 2121−8.