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特許6888091スルホニル尿素系薬の医薬組成物及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6888091
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】スルホニル尿素系薬の医薬組成物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/64 20060101AFI20210603BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20210603BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20210603BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20210603BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20210603BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   A61K31/64
   A61K47/69
   A61K47/02
   A61K47/04
   A61K47/12
   A61K47/18
   A61K9/08
   A61K9/19
   A61P25/00
   A61P3/10
【請求項の数】23
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2019-532920(P2019-532920)
(86)(22)【出願日】2017年12月13日
(65)【公表番号】特表2020-511417(P2020-511417A)
(43)【公表日】2020年4月16日
(86)【国際出願番号】CN2017115993
(87)【国際公開番号】WO2018108111
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2019年12月23日
(31)【優先権主張番号】201611149802.4
(32)【優先日】2016年12月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519214754
【氏名又は名称】チアンスー アオサイカン ファーマシューティカル カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】チョン ウー
(72)【発明者】
【氏名】カオ チュンション
(72)【発明者】
【氏名】コン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リー ソン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ホンユイ
【審査官】 参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05773029(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第101658487(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0131089(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0034560(US,A1)
【文献】 特表2011−505424(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1600801(CN,A)
【文献】 米国特許第06464988(US,B1)
【文献】 国際公開第2006/038552(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0219482(US,A1)
【文献】 米国特許第06555139(US,B1)
【文献】 特表2008−540499(JP,A)
【文献】 特開2003−321364(JP,A)
【文献】 E Redenti et al.,Cyclodextrin complexes of salts of acidic drugs. Thermodynamic properties, structural features, and pharmaceutical applications,Journal of Pharmaceutical Sciences,2001年,90(8),979-986
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホニル尿素系薬、シクロデキストリン及び添加剤を含む医薬組成物であって、
前記スルホニル尿素系薬は、グリベンクラミドであり、
前記添加剤は炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ砂、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸一水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、メグルミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、リジン、アルギニン及びヒスチジンから選ばれ、
前記スルホニル尿素系薬とシクロデキストリンの重量比は1:25〜1000であり;
前記スルホニル尿素系薬と添加剤の重量比は1:0.5〜100である、医薬組成物
【請求項2】
前記添加剤とシクロデキストリンの重量比は1:0.1〜4000である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記スルホニル尿素系薬と添加剤の重量比は1:1〜100である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記スルホニル尿素系薬とシクロデキストリンの重量比は1:50〜1000である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記スルホニル尿素系薬:添加剤:シクロデキストリンの重量比は1:0.5〜50:25〜250である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記添加剤は炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及び/又はメグルミンである、である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記シクロデキストリンはα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン及びその薬学的に許容されるシクロデキストリン誘導体から選ばれる請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記添加剤は酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ砂及びメグルミンから選ばれる請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
さらにグルコース、塩化ナトリウム、凍結乾燥添加剤pH調整剤び/又は水を含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
注射剤である請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
溶液型注射剤である請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
以下の一つ又は複数の特徴を有する:
a)前記添加剤の濃度は0.01〜0.5%(w/v)であり、前記シクロデキストリンの濃度は0.5〜10%(w/v)であり、前記スルホニル尿素系薬の濃度は前記溶液型注射剤での該スルホニル尿素系薬の飽和濃度下であり、
b)前記添加剤の濃度は0.1〜0.5%(w/v)であり、前記シクロデキストリンの濃度は0.5〜10%(w/v)であり、前記スルホニル尿素系薬の濃度は前記溶液型注射剤での該スルホニル尿素系薬の飽和濃度下であり、
c)前記添加剤の濃度は0.1〜0.3%(w/v)であり、前記シクロデキストリンの濃度は1〜5%(w/v)であり、前記スルホニル尿素系薬の濃度は前記溶液型注射剤での該スルホニル尿素系薬の飽和濃度下であり、
d)前記添加剤の濃度は1〜10%(w/v)であり、前記シクロデキストリンの濃度は1〜30%(w/v)であり、前記スルホニル尿素系薬の濃度は前記溶液型注射剤での該スルホニル尿素系薬の飽和濃度下であり、
e)前記添加剤の濃度は4〜6%(w/v)であり、前記シクロデキストリンの濃度は5〜20%(w/v)であり、前記スルホニル尿素系薬の濃度は前記溶液型注射剤での該スルホニル尿素系薬の飽和濃度下である請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
pH値が5〜11である請求項10−12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
添加剤及びシクロデキストリンを溶剤中に溶解するステップa)と、
ステップa)の製品にスルホニル尿素系薬を加えて、撹拌して混合するステップb)と、
必要に応じて、ステップb)の製品に凍結乾燥添加剤を加えて、pH値を調整するステップc)と、
ステップb)又はc)の製品を殺菌するステップd)とを含み、
必要に応じて、ステップd)の製品を乾燥させて、所望組成物を得
求項1−13のいずれか一項に記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項15】
請求項1−13のいずれか一項に記載の医薬組成物の急性脳卒中、神経障害、外傷性脳損傷、脳浮腫、脊髄損傷、心筋梗塞、ショック、臓器虚血、心室性不整脈、I型糖尿病又はII型糖尿病を予防及び/又は治療するための薬物の調製における使用。
【請求項16】
急性脳卒中、神経学的欠損、外傷性脳損傷、脳浮腫、脊髄損傷、心筋梗塞、ショック、臓器虚血、心室性不整脈、I型糖尿病又はII型糖尿病を予防及び/又は治療するための方法における使用のための、請求項1−13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
添加剤はスルホニル尿素系薬と相互作用を発生させて、シクロデキストリンの包接効率を高め、さらに薬物溶解度を改善する物質である請求項1−13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容されるシクロデキストリン誘導体はβ−シクロデキストリン及びその薬学的に許容されるシクロデキストリン誘導体である請求項1−13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記薬学的に許容されるシクロデキストリン誘導体はジメチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン及びトリメチル−β−シクロデキストリンから選ばれる請求項1−13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記薬学的に許容されるシクロデキストリン誘導体は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン及び/又はスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンである請求項1−13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記薬学的に許容されるシクロデキストリン誘導体は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである請求項1−13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
溶液型注射剤又は粉末注射剤である請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項23】
pH値が7〜11である請求項10−12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬の技術分野に関し、特にスルホニル尿素系薬の注射用医薬組成物及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホニル尿素系薬はインスリン分泌促進剤であり、II型糖尿病の臨床治療に幅広く適用されている。臨床治療に幅広く適用されているスルホニル尿素系薬類の血糖降下薬はグリベンクラミド(Glibenclamide又はGliburide)、グリクラジド(Gliclazide)、グリピジド(Glipizide)、グリキドン(Gliquidone)、グリボルヌリド(Glibornuride)、グリメピリド(Glimepiride)などを含む。市販のスルホニル尿素系薬類の血糖降下薬はいずれも経口固形製剤である。
【化1】
【0003】
ここ数年の研究によると、グリベンクラミド(式1、別称:グリブリド、化学名:5−クロロ−N−(4−{N−(シクロヘキシルホルムアミド)アミノスルホニル}フェニルエチル)−2−メトキシベンズアミド)の静脈注射投与は脳卒中患者の脳水腫(Shethら、Pilot study of intravenous glyburide in patients witha large ischemic stroke. Stroke, 2014, 45: 281−283)を予防できる。スルホニル尿素系薬はスルホニル尿素受容体(SURs)に作用することで役割を果たすものである。スルホニル尿素系薬は弱酸性を呈し、水溶性が悪く、特に中性と酸性のpH値の条件で溶解度が非常に低い。グリベンクラミドの水での溶解度は5μg/mlより低い。Schrageらは0.1M NaOHを用いてlmg/mlグリベンクラミド注射液(Schrageら、Effects of combined inhibition of ATP−sensitive potassium channels,nitric oxide,and prostaglandins on hyperemia during moderate exercise。J Appl Physiol, 2006, 100:1506−1512)を調製することを報道した。しかし、該溶液のpH値が注射液のpH値の正常範囲(pH4〜pH9)を超える11と大きい。酸性pH調整剤を用いてpH値を低下させる場合、薬物を析出させるおそれがある。且つPVC製輸液バッグは低濃度のグリベンクラミドに対して顕著な吸着性を有する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は添加剤、シクロデキストリンを含む新規スルホニル尿素系薬、特にグリベンクラミドの注射用組成物を提供する。発明者は、従来技術に比べて添加剤とシクロデキストリンとの併用がシクロデキストリン又は添加剤の単独使用の場合よりも水への不溶性スルホニル尿素系薬の溶解度及び安定性を大幅に向上させ、且つグリベンクラミドに対するPVC製輸液バッグの吸着性を顕著に抑制できることを予想以外に見出した。
【0005】
本開示の一態様は、スルホニル尿素系薬、シクロデキストリン及び添加剤を含む医薬組成物を提供する。
【0006】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記添加剤とシクロデキストリンの重量比は1:0.1〜4000、例えば、1:1〜400、1:1〜100、1:1〜50、1:5〜50、1:50〜400、1:1〜10、1:1〜8、1:1〜6、1:1〜4、1:6〜8である。
【0007】
好ましくは、前記添加剤がメグルミンである場合、前記添加剤とシクロデキストリンの重量比は1:1〜400である。
【0008】
好ましくは、前記添加剤は炭酸ナトリウムである場合、前記添加剤とシクロデキストリンの重量比は1:50〜400である。
【0009】
好ましくは、前記添加剤が水酸化ナトリウムである場合、前記添加剤とシクロデキストリンの重量比は1:50〜4000である。
【0010】
好ましくは、前記添加剤が炭酸水素ナトリウムである場合、前記添加剤とシクロデキストリンの重量比は1:0.1〜10である。
【0011】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記スルホニル尿素系薬と添加剤の重量比は1:0.01〜100、例えば、1:0.05〜100、1:0.5〜100、1:1〜50、1:1〜10である。
【0012】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記スルホニル尿素系薬とシクロデキストリンの重量比は1:0.2〜1000、例えば、1:25〜250、1:0.5〜100、1:1〜50、1:1〜10である。
【0013】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記スルホニル尿素系薬、添加剤及びシクロデキストリンの重量比は1:0.05〜100:0.2〜1000、例えば、1:0.5〜50:25〜250、1:0.1〜20:10〜100である。
【0014】
一実施形態において、スルホニル尿素系薬は細胞膜にあるスルホニル尿素受容体を経由して信号を伝達することによって膵臓β細胞のインスリン分泌を活性化させる化合物である。
【0015】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記スルホニル尿素系薬はグリベンクラミド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン、グリボルヌリド、グリメピリド、グリソキセピド、アセトヘキサミド、グリヘキサミド、グリサムリド、グリセンチド、グリソラミド、グリオクタミド、クロルプロパミド、トラザミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニドから選ばれる。
【0016】
好ましくは、前記スルホニル尿素系薬はグリベンクラミドである。
【0017】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記シクロデキストリンはα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン及びその薬学的に許容されるシクロデキストリン誘導体から選ばれる。
【0018】
好ましくは、前記薬学的に許容されるシクロデキストリン誘導体はジメチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、トリメチル−β−シクロデキストリンから選ばれる。
【0019】
好ましくは、前記シクロデキストリンはβ−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、トリメチル−β−シクロデキストリンから選ばれる。
【0020】
さらに好ましくは、前記シクロデキストリンは2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン及び/又はスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンから選ばれる。
【0021】
特に好ましくは、前記シクロデキストリンは2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである。
【0022】
『中華人民共和国薬局方』によれば、特に断らない限り、本開示におけるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとは2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを指す。
【0023】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記添加剤は炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ砂、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸一水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、メグルミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、リジン、アルギニン及びヒスチジンから選ばれる。
【0024】
好ましくは、前記添加剤は水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ砂及びメグルミンから選ばれる。
【0025】
好ましくは、前記添加剤は炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム及び/又はメグルミンである。
【0026】
好ましくは、前記添加剤は炭酸ナトリウムである。
【0027】
好ましくは、前記添加剤は炭酸水素ナトリウムである。
【0028】
好ましくは、前記添加剤は水酸化ナトリウムである。
【0029】
好ましくは、前記添加剤はメグルミンである。
【0030】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、グルコース、塩化ナトリウム、凍結乾燥添加剤(例えば、マンニトール、乳糖又はゼラチン)、pH調整剤(例えば塩酸)及び/又は水をさらに含む。
【0031】
一実施形態において、凍結乾燥添加剤は、活性物質の冷凍又は貯蔵過程での損失又は変性を防止できる物質であり、例えば、活性物質が水蒸気とともに昇華逸散することを防止するとともに、活性物質の有効成分を成形させる物質である。
【0032】
一実施形態において、pH調整剤は、溶液のpH値を調整することによって最後に必要なpH範囲にする物質を指し、例えば、無機酸、無機塩基、有機酸、有機塩基及びその緩衝塩類が挙げられる。一般的には、水酸化ナトリウム、塩酸、グリシン、フッ化水素酸、トリエチルアミン、酢酸、リン酸、リンゴ酸、クエン酸、酢酸緩衝塩、リン酸緩衝塩など、及びそれらの水溶液が使用される。
【0033】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、注射剤であり、好ましくは溶液型注射剤(例えば、水溶液型注射剤)又は粉末注射剤である。
【0034】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、溶液型注射剤(例えば、水溶液型注射剤)である。
【0035】
好ましくは、前記医薬組成物における前記シクロデキストリンの濃度は0.5%〜40%(w/v)、例えば、1%〜40%(w/v)、2.5%〜40%(w/v)、5%〜20%(w/v)、1%〜5%(w/v)である。
【0036】
好ましくは、前記添加剤の濃度は0.01%〜20%(w/v)、例えば、0.01%〜15%(w/v)、0.01%〜10%(w/v)、0.01%〜5%(w/v)、0.1%〜5%(w/v)、0.03%〜5%(w/v)、0.2%〜4%(w/v)、0.1%〜1%(w/v)である。
【0037】
好ましくは、前記医薬組成物における前記シクロデキストリンの濃度は0.5%〜40%(w/v)、例えば1%〜40%(w/v)、2.5%〜40%(w/v)、5%〜20%(w/v)、1%〜5%(w/v)であり、その中でも、前記添加剤の濃度は0.01%〜20%(w/v)、例えば0.01%〜15%(w/v)、0.01%〜10%(w/v)、0.01%〜5%(w/v)、0.1%〜5%(w/v)、0.2%〜4%(w/v)、0.1%〜1%(w/v)である。
【0038】
さらに好ましくは、前記医薬組成物における前記スルホニル尿素系薬の濃度は前記溶液型注射剤での該スルホニル尿素系薬の飽和濃度以下である。さらに、好ましくは、前記スルホニル尿素系薬の濃度は0.01〜50mg/ml、例えば、0.01〜10mg/ml、0.01〜5mg/ml、0.01〜2.5mg/ml、0.0l〜2mg/mlである。
【0039】
当業者であれば、必要に応じて、添加剤及びシクロデキストリンを含有する水溶液にスルホニル尿素系薬を溶解してもよく、スルホニル尿素系薬の濃度はその飽和濃度以下である。飽和濃度とは溶液でのスルホニル尿素系薬の飽和状態になるときの濃度(単位mg/ml)を指す。
【0040】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、以下の一種又は複数種の特徴を有する。
【0041】
a)前記添加剤の濃度は0.01〜0.5%(w/v)であり、前記シクロデキストリンの濃度は0.5〜10%(w/v)であり、前記スルホニル尿素系薬の濃度は前記溶液型注射剤での該スルホニル尿素系薬の飽和濃度(好ましくは、前記スルホニル尿素系薬の濃度は0.0l〜3mg/ml、例えば、0.1〜3mg/ml、l〜3mg/ml)以下である。
【0042】
b)前記添加剤の濃度は0.1〜0.5%(w/v)であり、前記シクロデキストリンの濃度は0.5〜10%(w/v)であり、前記スルホニル尿素系薬の濃度は前記溶液型注射剤での該スルホニル尿素系薬の飽和濃度(好ましくは、前記スルホニル尿素系薬の濃度は0.0l〜3mg/ml、例えば0.1〜3mg/ml、l〜3mg/ml)以下である。
【0043】
c)前記添加剤の濃度は0.1〜0.3%(w/v)であり、前記シクロデキストリンの濃度は1〜5%(w/v)であり、前記スルホニル尿素系薬の濃度は前記溶液型注射剤での該スルホニル尿素系薬の飽和濃度(好ましくは、前記スルホニル尿素系薬の濃度は0.0l〜2.5mg/ml、例えば0.1〜2.5mg/ml、l〜2.5mg/ml)以下である。
【0044】
d)前記添加剤の濃度は1〜10%(w/v)であり、前記シクロデキストリンの濃度は1〜30%(w/v)であり、前記スルホニル尿素系薬の濃度は前記溶液型注射剤での該スルホニル尿素系薬の飽和濃度(好ましくは、前記スルホニル尿素系薬の濃度は0.01〜50mg/ml、例えば、0.1〜50mg/ml、10〜50mg/ml)以下である。
【0045】
e)前記添加剤の濃度は4〜6%(w/v)であり、前記シクロデキストリンの濃度は5〜20%(w/v)であり、前記スルホニル尿素系薬の濃度は前記溶液型注射剤での該スルホニル尿素系薬の飽和濃度(好ましくは、前記スルホニル尿素系薬の濃度は0.01〜50mg/ml、例えば0.1〜50mg/ml、25〜50mg/ml)以下である。
【0046】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の組成物であって、本開示のいずれか一項に記載の溶液型注射剤を乾燥(例えば、凍結乾燥)させて得る。
【0047】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、そのpH値は5〜11、好ましくは6〜10、さらに好ましくは7〜9、特に好ましくは7〜8である。
【0048】
本開示の別の態様は、
添加剤及びシクロデキストリンを溶剤に溶解するステップa)と、
ステップa)の製品にスルホニル尿素系薬を加えて、撹拌して混合するステップb)と、
必要に応じて、ステップb)の製品に凍結乾燥添加剤を加えて、pH値を調整するステップc)と、
ステップb)又はc)の製品を殺菌するステップd)とを含み、
必要に応じて、ステップd)の製品を乾燥させて、所望組成物を得て、
好ましくは、前記乾燥は凍結乾燥であり、
好ましくは、前記溶剤は水、生理食塩水又はグルコース溶液である本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物の調製方法を提供する。
【0049】
本開示の別の態様は、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物の、急性脳卒中、外傷性脳損傷、脳浮腫、脊髄損傷、心筋梗塞、ショック、臓器虚血、心室性不整脈、I型糖尿病又はII型糖尿病を予防及び/又は治療するための薬物の調製における用途を提供する。
【0050】
本開示の別の態様は、急性脳卒中、神経障害、外傷性脳損傷、脳浮腫、脊髄損傷、心筋梗塞、ショック、臓器虚血、心室性不整脈、I型糖尿病又はII型糖尿病を予防及び/又は治療するための薬物における方法であって、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物をこれを必要とする被験者に治療及び/又は予防有効量で投与することを含む方法。
【0051】
一実施形態において、これを必要とする被験者に医薬組成物を投与する方法は経口又は注射、例えば、注射を含む。
【0052】
一実施形態において、用語「治療有効量」とは特定の疾患及びその併発症の臨床症状を治癒、軽減又は部分的に抑制する量を指す。該目的を達成できる量を「治療有効量」として定義する。各目的有効量は疾患又は損傷の重症度及び被験者の体重や一般的な健康状態によって決まる。なお、適切な用量の決定は一般的な試験を使用して数値のマトリクスを作成して該マトリクスの各点について試験を行うことによって行われてもよく、以上の内容はいずれもプロの医者又は獣医の通常の技術範囲に属する。
【0053】
本開示の別の態様は、急性脳卒中、神経障害、外傷性脳損傷、脳浮腫、脊髄損傷、心筋梗塞、ショック、臓器虚血、心室性不整脈、I型糖尿病又はII型糖尿病を予防及び/又は治療するための本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物を提供する。
【0054】
一実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物の調製方法は
添加剤とシクロデキストリンを水中に溶解し、均一に混合するステップa)と、
ステップa)の製品に活性成分であるスルホニル尿素系薬を加えて撹拌するステップb)と、
ステップb)で得られた製品のpH値を調整するステップc)と、
ステップc)で得られた溶液に対して無菌濾過又はオートクレーブ殺菌を行うステップd)と、
ステップd)で得られた製品をそれぞれバイアル又はアンプル瓶に入れて、シール/カバーするステップe)とを含む。
【0055】
別の実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物の調製方法は
添加剤とシクロデキストリンを水中に溶解し、均一に混合するステップa)と、
ステップa)の製品に活性成分であるスルホニル尿素系薬を加えて撹拌するステップb)と、
ステップb)で得られた製品に凍結乾燥剤を加えてpH値を調整するステップc)と、
ステップc)で得られた製品をそれぞれペニシリン瓶又はアンプル瓶に入れるステップd)と、
ステップd)で得られた溶液を凍結乾燥させて水分を除去し、シール/カバーするステップe)とを含む。
【0056】
一つの具体的な実施形態において、本開示のいずれか一項に記載の医薬組成物の調製方法は
添加剤(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ砂、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸一水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、メグルミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジンのうち一種又は複数種から選ばれる)、シクロデキストリン(例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン及びその薬学的に許容されるシクロデキストリン誘導体のうち一種又は複数種から選ばれる)を撹拌しながら水に溶解するステップa)と、
次に、活性成分であるスルホニル尿素系薬(例えば、グリベンクラミド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン、グリボルヌリド、グリメピリド、グリソキセピド、アセトヘキサミド、グリヘキサミド、グリサムリド、グリセンチド、グリソラミド、グリオクタミド、クロルプロパミド、トラザミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニドの一種又は複数種から選ばれる)を加えて、撹拌して溶解すると、得られるステップb)とを含む。
【0057】
一実施形態において、用語「添加剤」とは、活性成分とある相互作用を発生させることで、シクロデキストリンの包接効率を高め、さらに薬物溶解度を改善する物質を指す。
【0058】
一実施形態において、添加剤はシクロデキストリンを含まない。
【0059】
一実施形態において、用語「医薬組成物」又は「組成物」とは、一種又は複数種の活性成分、一種又は複数種の不活性成分、及びいかなる生成物を指し、いずれか二種又は複数種の成分の組合せ、錯化又は凝集、あるいは一種又は複数種の成分の解離、あるいは一種又は複数種の成分の他の反応又は相互作用のような方式によって直接又は間接的に生成される。従って、本開示の医薬組成物は、本開示の化合物及び薬学的に許容される補助材料を混合して調製したいかなる組成物を含む。
【0060】
一実施形態において、組成物は、本技術分野における一般的な意味で使用する場合、2種以上の物質の混合物を指す。従って、組成物において、上記活性薬剤及び添加剤を除き、本発明の目的に合致する限り、本技術分野に一般的に使用された他の賦形剤、緩衝剤又はpH調整剤、浸透圧調整剤、防腐剤、抗酸化剤などをさらに含んでもよい。
【0061】
一実施形態において、前記医薬組成物は、薬学的に許容される補助材料と共に、例えば、経口剤又は注射剤などの任意の剤形に調製できる。経口剤は例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、内服液であってもよい。注射剤は例えば液体注射剤又は凍結乾燥粉末(注射)剤であってもよい。
【0062】
一実施形態において、注射剤は患者体に注射可能な製剤であればよく、その投与経路、投与部位、投与方式などにより限定されないが、特に静脈内、動脈内、膀胱内に投与する製剤が好ましい。
【0063】
一実施形態において、本発明の組成物を生理食塩水溶液に溶解して注射剤に調製してもよく、それを注射用水又はブドウ糖注射液に溶解して注射剤に調製してもよい。
【0064】
一実施形態において、生理食塩水、注射用水、ブドウ糖注射液は『中華人民共和国薬局方』の規定に合致する。
【0065】
本出願において別段の定めがない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、本開示において使用された用語「一つ」「一種」「該」及び類似の用語は単数及び複数を含むと理解されるところである。
【0066】
本開示において、添加剤とシクロデキストリンの濃度「%」又は「%(w/v)」とは質量体積濃度を指し、100mlあたりの溶液に含有する溶質グラム数を示す。例えば、20%(w/v)は100mlあたりの溶液に20gの溶質を含有することを示す。
【0067】
従来技術に比べ、本開示の医薬組成物は以下の一つ又は複数の有益な効果を有する。
1)スルホニル尿素系薬の水溶性、特に中性又は酸性水溶液での水溶性を顕著に向上させる。
2)医薬組成物の安定性を顕著に向上させ、薬物の析出、特に中性又は酸性水溶液での析出が少ない。
3)PVC製輸液バッグでの薬物の吸着性を顕著に抑制する。
4)処方がシンプルであり、品質が安定している。
5)調製方法は再現性に優れ、操作しやすく、制御性が高い。
6)神経障害、例えば脳梗塞による神経行動学的障害を顕著に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1図7は、25℃、各種溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線である。
図1図1はメグルミンのみを含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線である。
図2図2は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのみを含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線である。
図3図3は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとメグルミン(メグルミンの濃度が0.1%)を含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線である。
図4図4は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとメグルミン(メグルミンの濃度が5%)を含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線である。
図5図5は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンと炭酸ナトリウム(炭酸ナトリウムの濃度が0.1%)を含有する溶液でのグリベンクラミドでの溶解度曲線である。
図6図6は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンと炭酸水素ナトリウム(炭酸水素ナトリウムの濃度が4%)を含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線である。
図7図7は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンと水酸化ナトリウム(水酸化ナトリウムの濃度が0.01%)を含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線である。 図において、MEGとはメグルミンを指す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、実施例を参照しながら本開示の実施形態を詳細に説明するが、以下の実施例及び実験例は本開示を説明するものに過ぎず、本開示の範囲を限定するものではないことは、当業者にとって理解されるべきである。実施例及び実験例において、特に説明しない限り、一般的な条件又は製造メーカーにより推薦された条件に応じて行われ、使用された試験薬又は器具には製造メーカーを明記しない限り、いずれも市販で購入できる通常の製品である。
【0070】
以下の実施例において、添加剤は処方における前記メグルミン、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムである。
【0071】
実施例1:グリベンクラミド注射用組成物の調製
処方:
【表1】
調製方法:処方に基づき、添加剤とシクロデキストリンを50〜70mlの水中に溶解し、次にグリベンクラミド粉末を加え、撹拌して溶解し、溶液を得た。0.1Mの塩酸を用いて上記溶液のpH値を7.0に調整し、水を用いて100mlまでに定容し、グリベンクラミド注射用組成物を得た。
【0072】
実施例2:グリベンクラミド注射用組成物の調製
処方:
【表2】
実施例2において、処方に基づいて調製された溶液のpH値を8.0に調整する以外、組成物の調製方法は実施例1と類似した。
【0073】
実施例3:グリベンクラミド注射用組成物の調製
【表3】
実施例3において、処方に基づいて調製された溶液のpH値を7.5に調整する以外、組成物の調製方法は実施例1と類似した。
【0074】
実施例4:グリベンクラミド注射用組成物の調製
処方:
【表4】
実施例4において、処方に基づいて調製された溶液のpH値を9.0に調整する以外、組成物の調製方法は実施例1と類似した。
【0075】
実施例5:グリベンクラミド注射用組成物の調製
処方:
【表5】
実施例5において、組成物の調製方法は実施例1と類似した。
【0076】
実施例6:グリベンクラミド注射用組成物の調製
処方:
【表6】
実施例6において、処方に基づいて調製された溶液のpH値を6.5に調整する以外、組成物の調製方法は実施例1と類似した。
【0077】
実施例7:グリベンクラミド注射用組成物の調製
処方:
【表7】
実施例7において、処方に基づいて調製された溶液のpH値を6.0に調整する以外、組成物の調製方法は実施例1と類似した。
【0078】
実施例8:グリベンクラミド注射用組成物の調製
処方:
【表8】
実施例8において、処方に基づいて調製された溶液のpH値を7.5に調整する以外、組成物の調製方法は実施例1と類似した。
【0079】
実施例9:グリベンクラミド注射用組成物の調製
処方:
【表9】
実施例9において、処方に基づいて調製された溶液のpH値を7.5に調整する以外、組成物の調製方法は実施例1と類似した。
【0080】
実施例10:グリベンクラミド注射用組成物の調製
処方:
【表10】
調製方法は以下のとおりであった。処方に基づき、添加剤とシクロデキストリンを体積50〜70mlの水中に溶解し、次にグリベンクラミド粉末を加えて撹拌して溶解し、第一溶液を得た。第一溶液に凍結乾燥添加剤としてマンニトールを加えて撹拌して溶解し、第二溶液を得た。0.1Mの塩酸を用いて第二溶液のpH値を7.5に調整し、100mlに定容し、第三溶液を得た。第三溶液をそれぞれペニシリン瓶に入れ、表1の凍結乾燥プロセスにしたがって凍結乾燥させて製品を得た。
【表11】
【0081】
実施例11:グリベンクラミド注射用組成物の調製
処方:
【表12】
実施例11において、処方に基づいて調製された溶液のpH値を8.0に調整する以外、組成物の調製方法は実施例1と類似した。
【0082】
実施例12:グリベンクラミド注射用組成物の調製
処方:
【表13】
実施例12において、処方に基づいて調製された溶液のpH値を8.0に調整する以外、組成物の調製方法は実施例1と類似した。
【0083】
実施例13:グリベンクラミド注射用組成物の調製(凍結乾燥粉末注射剤)
実施例11において調製された溶液をそれぞれペニシリン瓶中に入れ、ペニシリン瓶あたり1mlとし、実施例10における表1の凍結乾燥プロセスにしたがってペニシリン瓶中の溶液に対して凍結乾燥を行い、凍結乾燥粉末注射剤を得た。
【0084】
実施例14:グリベンクラミド注射用組成物の調製(凍結乾燥粉末注射剤)
処方:
【表14】
調製方法
まず水酸化ナトリウムとヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを体積80mlの水中に溶解し、次にグリベンクラミド粉末を加えて撹拌して溶解し、第一溶液を得た。第一溶液にグリシン溶液を加えて溶液のpH値を8.8に調整し、l00mlに定容し、第二溶液を得た。第二溶液をそれぞれペニシリン瓶中に入れ、ペニシリン瓶あたり1mlとし、ペニシリン瓶中の第二溶液に対して凍結乾燥を行い、凍結乾燥粉末注射剤を得た。凍結乾燥粉末注射剤は白色っぽい粗目状のかたまりであった。
【0085】
実験例1:配合安定性試験
該試験はグリベンクラミド注射用組成物とブドウ糖注射液、生理食塩水との配合安定性を調べた。
試験方法:それぞれl00mlのブドウ糖注射液と生理食塩水注射液に上記の実施例2において調製された組成物1mlを加え、0h、24h、48h、72h、96hに注射液の外形を観察し、pH値と関連物質の変化を検査した。
試験結果:表2及び表3に示される。
【表15】
【表16】
表2及び表3において、注記:不純物I:4−[2−(5−クロロ−2−メトキシベンズアミド)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド;不純物II:4−[2−(5−クロロ−2−メトキシベンズアミド)−エチル]−ベンゼンスルホンアミド−ギ酸エチル
表2及び表3の結果によると、上記グリベンクラミド組成物はブドウ糖注射液及び生理食塩水との相溶性に優れた。
【0086】
実験例2:希釈安定性試験
試験方法:10本の試験管を取り、1〜10の番号を付けた。10本の試験管にそれぞれpH7.4のリン酸緩衝液を1ml加えた。次に試験管1に実施例2において調製されたグリベンクラミド注射用組成物を1ml加えて、試験管を振盪させて溶液を均一に混合し、試験管1から1mlの溶液を取って試験管2に入れた。試験管10まで上記操作を繰り返し、10本の試験管を静置して溶液の澄明度を観察した。
試験結果:10本の試験管はいずれも96h以内に薬物が析出せず、該処方の組成物はpH=7.4のリン酸緩衝液との相溶性に優れたことを示した。
【0087】
実験例3:溶解度試験
過量のグリベンクラミド粉末を各比率の添加剤(例えば、メグルミン、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム又は水酸化ナトリウム)とシクロデキストリン(ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)を含有する水溶液に加えて、懸濁液を形成した。懸濁液を恒温振盪培養器に投入して、25±1℃で1h振盪させた。0.45μm水性濾過膜を用いて振盪後の懸濁液を濾過し、初期ろ液を捨て、後続ろ液を取った。pH7.4のPBS緩衝液を用いて後続ろ液を適切な倍数まで希釈した後、波長225nmで希釈した後続ろ液の吸光度を測定し、且つ該吸光度に基づいて希釈した後続ろ液におけるグリベンクラミドの溶解度を計算した。グリベンクラミドの溶解度を縦座標、シクロデキストリン及び/又はメグルミンの濃度を横座標として、対応する溶解度曲線を描いた。試験結果:25℃でグリベンクラミドの溶解度曲線は図1図7に示され、対応する溶解度データは表4〜表10に示された。
【0088】
図1はメグルミンのみを含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線であった。表4は対応する溶解度データであった。図1から分かるように、グリベンクラミドの水中溶解度はメグルミンの濃度の増加に伴って向上した。メグルミンの濃度が0.1%(w/v)〜10%(w/v)範囲内にある場合、25℃条件でのグリベンクラミドの溶解度はそれぞれ0.96mg/ml〜19.05mg/mlであった。
【0089】
【表17】
【0090】
図2は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのみを含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線であった。表5は対応する溶解度データであった。図2から分かるように、グリベンクラミドの水中溶解度はシクロデキストリンの濃度の増加に伴って線形的に向上した。シクロデキストリンの濃度が0.5%(w/v)〜40%(w/v)範囲内にある場合、25℃条件でのグリベンクラミドの溶解度はそれぞれ0.0013mg/ml〜0.12mg/mlであった。
【0091】
【表18】
【0092】
図3は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとメグルミン(メグルミンの濃度が0.1%に保持された)を同時に含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線であった。表6は対応する溶解度データであった。図3から分かるように、シクロデキストリンとメグルミンを併用すると、グリベンクラミドの水中溶解度を顕著に増加させた。メグルミンの濃度が0.1%(w/v)であり且つシクロデキストリンの濃度が0.5%(w/v)〜5%(w/v)範囲内にある場合、25℃条件でのグリベンクラミドの水中溶解度は1.25mg/ml〜2.17mg/mlであった。シクロデキストリンの濃度が5%(w/v)から40%(w/v)まで引き続き増加する場合、グリベンクラミドの溶解度は約2.17mg/mlの程度まで保持された。
【0093】
【表19】
【0094】
図4は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとメグルミン(メグルミンの濃度が5%に固定する)を同時に含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線であった。表7は対応する溶解度データであった。図4から分かるように、シクロデキストリンとメグルミンを併用すると、グリベンクラミドの水中溶解度を顕著に増加させた。メグルミンの濃度が5%(w/v)であり且つシクロデキストリンの濃度が5%(w/v)〜30%(w/v)範囲内にある場合、25℃条件でのグリベンクラミドの水中溶解度は25.23mg/ml〜49.37mg/mlであった。シクロデキストリンの濃度は30%(w/v)から40%(w/v)まで引き続き増加する場合、グリベンクラミドの溶解度は約49.37mg/mlの程度まで保持された。
【0095】
【表20】
【0096】
図1〜4及び表4〜7の結果によると、メグルミンとシクロデキストリンの両方はグリベンクラミドの溶解性に予期せぬ相乗効果を果たすことを示した。メグルミンの添加はシクロデキストリンがグリベンクラミドへの包接作用を促進する可能性があり、さらにグリベンクラミドの溶解度を増加させた。図3〜4の結果によると、メグルミンがグリベンクラミドへのシクロデキストリンの包接作用を促進するのはメグルミンの濃度に関連する可能性があることを示した。
【0097】
図5は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンと炭酸ナトリウム(炭酸ナトリウムの濃度が0.1%に固定する)を同時に含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線であった。表8は対応する溶解度データであった。図5から分かるように、シクロデキストリンと炭酸ナトリウムを併用すると、グリベンクラミドの水中溶解度を顕著に増加させた。炭酸ナトリウムの濃度が0.1%(w/v)であり且つシクロデキストリンの濃度は5%(w/v)〜20%(w/v)範囲内にある場合、25℃条件でのグリベンクラミドの水中溶解度は2.35mg/ml〜10.63mg/mlであった。シクロデキストリンの濃度が20%(w/v)から40%(w/v)まで引き続き増加する場合、グリベンクラミドの溶解度は約10.63mg/mlの程度まで保持された。
【0098】
【表21】
【0099】
図6は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンと炭酸水素ナトリウム(炭酸水素ナトリウムの濃度が4%に固定する)を同時に含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線であった。表9は対応する溶解度データであった。図6から分かるように、シクロデキストリンと炭酸水素ナトリウムを併用すると、グリベンクラミドの水中溶解度を顕著に増加させた。炭酸水素ナトリウムの濃度が4%(w/v)であり且つシクロデキストリンの濃度は0.5%(w/v)〜10%(w/v)範囲内にある場合、25℃条件でのグリベンクラミドの水中溶解度は0.32mg/ml〜1.69mg/mlであった。シクロデキストリン濃度が10%(w/v)から40%(w/v)まで引き続き増加場合、グリベンクラミドの溶解度は約1.69mg/mlの程度まで保持された。
【0100】
【表22】
【0101】
図7は2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンと水酸化ナトリウム(水酸化ナトリウムの濃度が0.01%に固定する)を同時に含有する溶液でのグリベンクラミドの溶解度曲線であった。表10は対応する溶解度データであった。図7から分かるように、シクロデキストリンと水酸化ナトリウムを併用すると、グリベンクラミドの水中溶解度を顕著に増加させた。水酸化ナトリウムの濃度が0.01%(w/v)であり且つシクロデキストリンの濃度は0.5%(w/v)〜10%(w/v)範囲内にある場合、25℃条件でのグリベンクラミドの水中溶解度はそれぞれ0.14mg/ml〜1.26mg/mlであった。シクロデキストリン濃度が10%(w/v)から40%(w/v)まで引き続き増加する場合、グリベンクラミドの溶解度は約1.26mg/mlの程度まで保持された。
【0102】
【表23】
【0103】
図1〜7及び表4〜10の結果によると、添加剤(例えば、メグルミン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又は水酸化ナトリウム)とシクロデキストリンの両方はグリベンクラミドの溶解性に予期せぬ相乗効果を果たした。添加剤の添加はグリベンクラミドへのシクロデキストリンの包接作用を促進する可能性があり、さらにグリベンクラミドの溶解度を増加させた。図3〜7の結果によると、添加剤がグリベンクラミドへのシクロデキストリンの包接作用を促進するのは添加剤の濃度に関連する可能性があることを示した。
【0104】
実験例4:pH調整試験
各グリベンクラミド医薬組成物の各pHでの安定性を調べた。
【0105】
実施例1の方法を参照して、表11の処方に基づいて医薬組成物を調製した。ここで、グリベンクラミドの濃度は1mg/mlに固定された。各処方に基づいて調製された溶液を三等分し、0.1Mの塩酸を用いて三つの溶液のpH値をそれぞれ7.0、7.5及び8.0に調整して、各pH値のグリベンクラミド医薬組成物溶液を得た。上記各pH値のグリベンクラミド医薬組成物溶液を25℃に投入して、溶液中の沈殿析出の状況を観察した。
【0106】
表11に示すように、試験結果として、0.1%(w/v)のメグルミンのみを含有する医薬組成物溶液では、0.1Mの塩酸を用いてpH値を7.5まで調整すると、薬物沈殿が析出された。pH値を8.0まで調整した医薬組成物溶液を24h放置すると、白色沈殿が析出された。0.1%(w/v)のメグルミンと各濃度のシクロデキストリンを含有する組成物溶液では、pH値を8.0に調整し、96h放置した後、いずれも沈殿が析出されなかった。0.1%(w/v)のメグルミン+1.25%シクロデキストリンを含有する組成物溶液では、pH値を7.5まで調整し、96h放置した後、少量の薬物結晶が析出された。0.1%(w/v)のメグルミン+2.50%のシクロデキストリンを含有する組成物溶液では、pH値を7.0まで調整し、96h放置した後、極微量の薬物結晶が析出された。0.1%(w/v)のメグルミン+5.0%のシクロデキストリンを含有する組成物溶液では、pH値を7.0まで調整し、96h放置した後、薬物結晶が析出されなかった。以上の結果からわかるように、組成物におけるシクロデキストリンはグリベンクラミドの析出を抑制し、医薬組成物溶液を安定させる作用を果たすことができた。
【0107】
【表24】
注記:GB:グリベンクラミド;−:沈殿が析出しなかった。+〜++++:沈殿が析出された。+が多ければ多いほど、沈殿が多くなる。
【0108】
実験例5:輸液バッグの吸着性試験
5.1 シクロデキストリンと添加剤の併用の場合及び添加剤の単独使用の場合の比較
0.9%塩化ナトリウム溶液(生理食塩水)でそれぞれ実施例2、8及び9の組成物をグリベンクラミドの濃度5μg/mlに希釈し、得られた溶液を5a、5b、5cに番号付けた。同時に、表12の処方に基づいて対応するヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含有しない注射用組成物を調製した。0.9%塩化ナトリウム溶液でグリベンクラミドの濃度5μg/mlまで希釈し、5a’、5b’、5c’を番号付けた。希釈後の薬物溶液を二つの部分に分け、一部をPVC製輸液バッグに注入して25℃で置き、l00rpmで振盪させた。他の部分を計量フラスコに投入して、25℃、l00rpmで振盪させた(対照用)。96h後にサンプリングし、HPLC法(Agilent Eclipse XDB−C18カラム(5μm、4.6x250mm);流動相メタノール;50mMリン酸二水素アンモニウム(体積比)=72.5:27.5(2%のリン酸でpH値を3.5±0.1に調整する);検出波長300nm;流動相流速1ml/min;サンプル充填量20μl)により主薬ピークの面積を測定した。計量フラスコにおける薬物溶液を対照として、薬物吸着率(薬物吸着率=100×(計量フラスコにおける主薬ピークの面積−PVC製輸液バッグにおける主薬ピークの面積)/計量フラスコにおける主薬ピークの面積)を計算した。
【0109】
試験結果は表12に示された。ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含有しない3種類の低濃度薬物溶液(5a’、5b’、5c’)はいずれもPVC製輸液バッグにおいて顕著な薬物吸着作用を発生させ、吸着率がいずれも10%より高く、薬物濃度が顕著に低下した。それに対して、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含有する低濃度薬物溶液(5a、5b、5c)はPVC製輸液バッグにおいて顕著な薬物吸着を発生させ、吸着率が0.1%より低かった。以上の結果によると、組成物におけるシクロデキストリンはPVC製輸液バッグが薬物への吸着性を顕著に抑制できたことを示した。
【0110】
【表25】
【0111】
5.2 各シクロデキストリンの薬物への吸着性の比較
表13、14の処方に基づいて、添加剤とシクロデキストリンを体積50〜70mlの水中に溶解し、次にグリベンクラミドを加えて撹拌して溶解し、100ml定容し、医薬組成物(群5d〜5i)を得た。
【0112】
群5e〜5fの組成物溶液のpH値を8.0に調整して、医薬組成物(群5j及び5k)を得た。処方は表15に示された。
【0113】
5d〜5kの各群の医薬組成物を0.9%の塩化ナトリウム溶液で500倍希釈し、グリベンクラミドの濃度を2μg/mlに調整した。希釈後の薬物溶液を二つの部分に分け、一部をPVC製輸液バッグ中に注入して25℃で放置し、l00rpmで振盪させ、他の部分を計量フラスコに投入して、25℃、l00rpmで振盪させた(対照用)。5.1の方法にしたがって薬物の吸着率を測定した。
【0114】
【表26】
【0115】
【表27】
【0116】
【表28】
【0117】
表13〜15の結果によると、シクロデキストリンを含有しない医薬組成物に比べ、本開示に記載の添加剤とシクロデキストリンを含有する医薬組成物はPVC製輸液バッグが薬物への吸着性を顕著に抑制できたことを示した。且つヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの吸着性抑制効果はスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンよりも優れた。
【0118】
実験例6:シクロデキストリンの薬物析出抑制への緩衝能力の比較
実験例5の方法にしたがって医薬組成物(群5g、5h及び5i)を調製し、それぞれ0.1M塩酸を沈殿が析出されるまで滴下した。処方及び試験結果は表16に示された。
【0119】
【表29】
【0120】
結果によると、上記三種類の医薬組成物溶液の初期pH値が10〜11であり、グリベンクラミド沈殿が析出されたと観察されたとき、群5g、5h及び5i溶液のpH値はそれぞれ8.33、7.25及び6.27であった。本開示に記載の医薬組成物はグリベンクラミドの析出を防止する緩衝能力を有し、且つヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのグリベンクラミド析出防止のための緩衝能力はスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンより僅かに優れている。
【0121】
実験例7:ラット大脳MCAOモデルによる薬効研究
7.1 実験規範:本試験におけるすべての動物実験の操作は、実験機関IACUC(実験動物使用管理委員会、Institutional Animal Care and Use Committee)の規定に従って行われ、且つAAALAC(国際実験動物管理公認協会、Association for Assessment and Accreditationof Laboratory Animal Care)原則に合致した。
【0122】
7.2 実験動物:Sprague−Dawley(SD)雄ラット、清潔級、体重200〜230g。動物飼育室の温度を20〜24℃、湿度を30〜70%に維持した。毎日、12時間点灯/12時間消灯(06:00AM入、18:00PM切)のモードを繰り返した。試験過程において、動物を単一ケージで独立して飼育し、動物に水を自由に飲ませて、自由に餌を食べさせた。
【0123】
7.3 試験薬
GB群の試験薬の調製方法は以下のとおりである。少量のDMSO (dimethyl sulfoxide)を用いてグリベンクラミドを溶解し、得られた溶液を生理食塩水でDMSO濃度5vol%まで希釈し、NaOHを用いて溶液のpH値を8〜8.5に調整した。上記方法を用いてグリベンクラミドの濃度200μg/ml、10μg/mlの溶液をそれぞれ調製した。
【0124】
H−GB群の試験薬の調製方法は以下のとおりである。実施例13の凍結乾燥製品を取り、適量の生理食塩水を加え、グリベンクラミドの濃度が200μg/ml、10μg/mlの溶液をそれぞれ調製した。
【0125】
7.4 MCAOモデル(MCAO model,middle cerebral artery occlusion)の確立
ラットを一週間ぐらい適応飼育した後に実験を始めた。実験当日に、手術器具に対してオートクレーブ殺菌を行った。ラットの腹腔内に抱水クロラール(330mg/kg)を注射して動物を麻酔した。ラットの総頚動脈と外頸動脈を分離して、殺菌したMCAO専用栓糸を使用し、外頸動脈の開口部から内頸動脈に装入して、かつ栓糸の端部が大脳の動脈の開始部に至るまで挿入深さを約18mm程度とし、その後、外頸動脈の開口部を閉塞させて、栓糸を固定した。1.5時間後、再灌流のステップを行い、外頸動脈と内頸動脈との交差点が一定の抵抗力に遭うまで栓糸を引き抜いた。手術前、手術後及び再灌流時は、レーザードップラー流速計(型番moorVMS−LDF2、製造メーカーmoor)を用いてそれぞれ脳部血流を監視し、手術後の血流と手術前の血流との比が30%より小さいと合格すると見なされて、モデルを確立した。
【0126】
術後ケア:術後、すぐにラットを保温ブランケットに置き、メロキシカム(2mg/kg)を皮下注射して痛みを鎮め、腹腔にゲンタマイシン(6mg/kg)を注射した。
【0127】
7.5 動物の群分け及び投与
体重に基づいて動物24匹を3群にランダムに分け、一群あたり8匹(n=8)とした。表17に示された。
【0128】
【表30】
【0129】
腹腔内注射投与(intra−peritoneally、ip):グリベンクラミド10μg/kg(投与体積1ml/kg、薬物濃度10μg/ml)。
【0130】
持続皮下投与(subcutaneous,sc):グリベンクラミド200ng/h(投与体積1μl/h、100μl/浸透圧ポンプ/匹、ポンプ内薬物濃度200μg/ml)。前記浸透圧ポンプはALZET浸透圧ポンプ1003Dであり、製造メーカーはDURECT Corporationであった。
コントロール群において、生理食塩水を試験薬に代えた。腹腔内注射投与体積:1ml/kg、持続皮下投与体積:1μl/h(100μl/浸透圧ポンプ/匹)。
【0131】
4h虚血した時に腹腔内注射投与を行い、且つ浸透圧ポンプを動物皮下にインプラントし、持続皮下投与を44h行った。浸透圧ポンプのインプラント方法は、まず肩甲骨間の皮膚で小さな切り欠きを開いて、次に止血小鉗子で皮膚と皮下結締組織を分離して、小さなポケットを形成し、浸透圧ポンプを挿し入れ、流量調節器を裏にして、皮膚の開口部を縫合し又はクランプで挟んだ。
【0132】
7.6 神経学的スコア
24h、48h虚血した時に神経学的スコアを行った。Longaスコア法では、神経学検査は5つの等級に分けられた。0点:正常、神経障害なし。1点:左側前足は完全に伸展することができず、軽度神経障害が発生した。2点:歩く時、ラットは左側(麻痺側)にぐるりと回り、中程度の神経障害が発生した。3点:歩く時、ラット身体は左側(麻痺側)に傾いて倒れ、重度の神経障害が発生した。4点:自律的に歩くことができず、意識喪失がある。薬物によるMCAOラットの神経学的スコアへの影響は表18に示された。
【0133】
【表31】
【0134】
表18の結果によると、コントロール群に比べ、GB群、H−GB群の24h、48h神経学的スコアはいずれも低下し、それはGB群及びH−GB群のいずれもMCAOラットの神経障害を改善できることを示した。H−GB群のスコアは顕著に低下し、本開示の注射用医薬組成物は脳梗塞ラットの神経学的スコアを顕著に改善できることを示した。
【0135】
7.7 脳梗塞面積及び腫脹度
48h虚血した後、大脳を取って脳溝に入れて冠状脳切片(一枚2mm)を作成し、1%TTCを使用して日陰で15min37℃で染色し、写真を取って梗塞面積を分析した。梗塞領域の面積/脳の総面積は梗塞面積の比率であり、腫脹度は梗塞側脳半球面積が未梗塞面積に対する比率であった。薬物のMCAOラット脳梗塞面積と脳の腫脹度への影響は表19に示された。
【0136】
【表32】
【0137】
結果からわかるように、GB群、H−GB群はコントロール群に比べ、脳梗塞面積が顕著に低下した。各群のラットの脳の腫脹度の比較は統計的に有意ではなかった。本実験例の結果によると、本開示の医薬組成物は、スルホニル尿素系薬のラットの大脳中の動脈急性虚血再灌流モデルでの薬効に対していかなる消極的な影響を与えず、且つスルホニル尿素系薬が血脳関門に対して消極的な影響を与えなかった。
【0138】
実験例8:凍結乾燥製品の再溶解
実施例14の一つのペニシリン瓶における凍結乾燥製品を1ml注射用水(中華人民共和国薬局方における注射用水項目の規定に一致させる水)を用いて溶解したところ、再溶解後の溶液のpH値は8.8であった。
【0139】
実験例8によると、凍結乾燥製品を再溶解して得られた溶液のpH値は凍結乾燥前の溶液のpH値と同じであった。実施例14において、グリシンをpH調整剤として用いて、得られた薬物注射液のpH値はpH値の正常範囲(4〜9)内にあった。
【0140】
前記のとおり、本開示に提供されるスルホニル尿素系薬の注射用組成物では、シクロデキストリンと添加剤を併用する場合、シクロデキストリンを単独使用又は添加剤を単独使用する場合よりも、スルホニル尿素系薬の水中溶解度と安定性を大幅に向上させ、且つPVC製輸液バッグの薬物への吸着性を顕著に抑制することができた。該医薬組成物は、処方がシンプルであり、コストが低く、操作しやすく、品質が安定して制御可能であり、再現性に優れたという利点を有した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7