(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バインダー成分の含有量は、前記繊維強化プラスチック成形体用基材の全質量に対して1質量%以上20質量%以下である請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材。
前記熱可塑性樹脂を、空気中で開始温度を50℃とし、昇温速度10℃/分で400℃まで昇温し、400℃で10分間保持した場合に、前記熱可塑性樹脂の重量減少率が55%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材。
前記熱可塑性樹脂が、ナイロン6樹脂、ナイロン66樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂及びポリフェニレンスルフィド樹脂から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0012】
(繊維強化プラスチック成形体用基材)
本発明は、強化繊維と、熱可塑性樹脂と、バインダー成分と、を含む繊維強化プラスチック成形体用基材に関する。ここで、繊維強化プラスチック成形体用基材に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度もしくは融点は200℃以上であり、熱可塑性樹脂の限界酸素指数は20以上である。また、バインダー成分を、空気中で開始温度を50℃とし、昇温速度10℃/分で400℃まで昇温し、400℃で10分間保持した場合に、バインダー成分の重量減少率は50%以下である。
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材は、上記構成を有するため、ボイドの発生が少なく、表面性状が良好な繊維強化プラスチック成形体を成形することができる。すなわち、本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材は、外観に優れた繊維強化プラスチック成形体を成形することができる。
【0013】
また、本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材は、上記構成を有するため、高強度の繊維強化プラスチック成形体を成形することもできる。本発明で得られる繊維強化プラスチック成形体においては、ボイド含有率が低く抑えられるため、繊維強化プラスチック成形体を高密度化することが可能となり、繊維強化プラスチック成形体の機械的強度をより高めることができる。
【0014】
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材は、強化繊維の他に、熱可塑性樹脂と、バインダー成分を含むものである。本明細書において熱可塑性樹脂とは、ガラス転移温度もしくは融点が200℃以上であり、かつ限界酸素指数が20以上のものをいう。一方、バインダー成分は、ガラス転移温度もしくは融点が200℃未満であり、かつ限界酸素指数が20未満であるものをいう。本明細書において、熱可塑性樹脂とバインダー成分は、ガラス転移温度もしくは融点と、限界酸素指数において区別される。
なお、熱可塑性樹脂が融点を有する樹脂である場合は、「200℃以上」との温度は融点で判別する。熱可塑性樹脂が融点を有さない樹脂である場合は、「200℃以上」との温度はガラス転移温度で判別する。バインダー成分においても、熱可塑性樹脂と同様に、バインダー成分が融点を有する成分である場合は、「200℃未満」との温度は融点で判別し、バインダー成分が融点を有さない成分である場合は、「200℃未満」との温度はガラス転移温度で判別する。
【0015】
繊維強化プラスチック成形体用基材の坪量は特に制限がなく、用途に応じて適宜設定することができるが、繊維強化プラスチック成形体用基材の製造効率の観点から、20g/m
2以上であることが好ましく、30g/m
2以上であることがより好ましく、50g/m
2以上であることがさらに好ましい。また、繊維強化プラスチック成形体用基材の坪量は、1200g/m
2以下であることが好ましく、1000g/m
2以下であることがより好ましい。繊維強化プラスチック成形体用基材を成形する際には、所望の成形厚みに応じて積層される。
【0016】
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材は、湿式不織布であることが好ましい。繊維強化プラスチック成形体用基材を湿式不織布とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用基材の生産効率を高め、より高強度の繊維強化プラスチック成形体を成形し得る繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることができる。
【0017】
(バインダー成分)
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材は、バインダー成分を含有する。バインダー成分は、主に、繊維強化プラスチック成形体用基材において、強化繊維と熱可塑性樹脂を結着する役割を担う。
【0018】
バインダー成分を、空気中で開始温度を50℃とし、昇温速度10℃/分で400℃まで昇温し、400℃で10分間保持した場合、バインダー成分の重量減少率は50%以下である。上記加熱条件におけるバインダー成分の重量減少率は45%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。繊維強化プラスチック成形体用基材において、上記条件におけるバインダー成分の重量減少率を上記範囲とすることにより、ボイドの発生が少なく、表面性状が良好な繊維強化プラスチック成形体を成形することができる。さらに、機械的強度に優れた繊維強化プラスチック成形体を成形することもできる。
【0019】
バインダー成分を繊維強化プラスチック成形体用基材から単離して重量減少率を測定する場合は、光学顕微鏡下で観察しながらピンセットを用いて取り出す方法や、熱可塑性樹脂成分が溶解せずバインダー成分のみが溶解する溶媒をもちいて抽出する方法等が例示される。
その後、集めたバインダー成分を空気中(流量200mL/分)で、加熱開始温度50℃で10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温し、400℃で10分間保持する。加熱前後のバインダー成分の重量は、TGA(Thermo Gravimetry Analyzer:熱重量測定)により測定し、以下の式から重量減少率を算出する。
【0020】
なお、繊維強化プラスチック成形体用基材からバインダー成分を単離することが困難な場合は、繊維強化プラスチック成形体用基材中に含まれるバインダー成分をIR分析等により特定し、既知の値から上記重量減少率を算出することもできる。
【0021】
バインダー成分の含有量は、繊維強化プラスチック成形体用基材の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが一層好ましく、2質量%以上であることが特に好ましく、3質量%以上であることが最も好ましい。また、バインダー成分の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。なお、繊維強化プラスチック成形体用基材に、強化繊維、熱可塑性樹脂及びバインダー成分以外の成分が含まれている場合は、バインダー成分の含有量は、強化繊維、熱可塑性樹脂及びバインダー成分の合計質量に対して、上記範囲内であることが好ましい。バインダー成分の含有量を上記範囲内とすることにより、ボイドの発生が少なく、表面性状が良好な繊維強化プラスチック成形体を成形することができる。さらに、機械的強度に優れた繊維強化プラスチック成形体を成形することもでき、製造工程における繊維強化プラスチック成形体用基材のハンドリング性を向上させることもできる。
【0022】
バインダー成分は、熱融着性接着剤であることが好ましい。この場合、熱融着性接着剤の融点は200℃未満であることが好ましい。なお、熱可塑性樹脂が融点を有さない樹脂である場合、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は200℃未満であることが好ましい。バインダー成分として熱融着性樹脂を用いることにより、繊維強化プラスチック成形体用基材において、強化繊維と熱可塑性樹脂をより強固に結着することができる。また、バインダー成分として熱融着性樹脂を用いることにより、ボイドの発生が少なく、表面性状がより良好な繊維強化プラスチック成形体を成形することができる。
【0023】
バインダー成分が熱融着性接着剤である場合、バインダー成分としては、例えば、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂を挙げることができる。ポリアミド系樹脂としては、ナイロン樹脂を挙げることができ、低融点ナイロン樹脂を用いることが好ましい。低融点ナイロン樹脂としては、例えば、「Gryltex D1993A」(EMS社製、融点110℃)や、「ジョイナー Lタイプ」(フジボウ愛媛社製、繊維長5mm、繊維径40μm、融点98℃)を用いることができる。
【0024】
バインダー成分が熱融着性接着剤である場合、熱融着性接着剤は、水溶性高分子であってもよく、水分散性高分子であってもよい。また、熱融着性接着剤、水不溶性高分子であってもよく、熱融着性接着剤はエマルジョンとして用いられてもよい。
【0025】
バインダー成分は、熱硬化性接着剤であってもよい。熱硬化性接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、シリコン樹脂を挙げることができる。
【0026】
バインダー成分は、上述したように有機系高分子である樹脂を含むものであることが好ましいが、無機系接着剤であってもよい。無機系接着剤としては、無機酸化物ゾル(シリカゾル、アルミナゾルなど)、水ガラス(ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなど)、リン酸塩(リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウムなど)、粘土鉱物(カオリナイト、モンモリナイト、スメクタイト、セピオライト、雲母)等が挙げられる。
【0027】
バインダー成分は、粒子状やエマルジョンあるいは水溶液であってもよいが、抄紙工程の歩留りの観点からは、バインダー繊維であることが好ましい。バインダー繊維は、上述したバインダー成分を溶融紡糸等の既知の方法で繊維化することができる。
【0028】
バインダー繊維の質量平均繊維長は、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、6mm以上であることがさらに好ましい。また、バインダー繊維の質量平均繊維長は、100mm以下であることが好ましく、75mm以下であることがより好ましく、55mm以下であることがさらに好ましい。また、バインダー繊維の質量平均繊維径は、5μm以上であることが好ましく、50μm以下であることが好ましい。バインダー繊維の繊維長及び繊維径を上記範囲内とすることにより、ボイドの発生が少なく、表面性状が良好な繊維強化プラスチック成形体を成形することができる。さらに、機械的強度に優れた繊維強化プラスチック成形体を成形することもできる。なお、本明細書において、質量平均繊維長は、無作為に得られた100本の繊維について計測した質量平均繊維長であり、質量平均繊維径は、無作為に得られた100本の繊維について計測した質量平均繊維径である。
【0029】
(強化繊維)
繊維強化プラスチック成形体用基材は、強化繊維を含有する。強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及びアラミド繊維から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、ガラス繊維及び炭素繊維から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。強化繊維としては、二種以上を併用してもよく、例えば、ガラス繊維と炭素繊維を併用してもよい。また、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維等の耐熱性に優れた有機繊維を用いてもよい。
【0030】
強化繊維として、例えば、ガラス繊維や炭素繊維等の無機繊維を使用した場合、繊維強化プラスチック成形体用基材に含まれる熱可塑性樹脂の溶融温度で加熱加圧処理することにより繊維強化プラスチック成形体を形成することが可能となる。
【0031】
強化繊維の質量平均繊維長は、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、6mm以上であることがさらに好ましい。また、強化繊維の質量平均繊維長は、100mm以下であることが好ましく、75mm以下であることがより好ましく、55mm以下であることがさらに好ましい。強化繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用基材から強化繊維が脱落することを抑制することができ、強度に優れた繊維強化プラスチック成形体を形成することが可能となる。また、強化繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、強化繊維の分散性を良好にすることができ、これによっても、強度に優れた繊維強化プラスチック成形体を形成することが可能となる。なお、本明細書において、質量平均繊維長は、無作為に得られた100本の繊維について計測した質量平均繊維長である。
【0032】
強化繊維は、上記繊維長となるように、一定の長さにカットされたチョップドストランドであることが好ましい。チョップドストランドは、50本以上1万本以下、好ましくは100本以上5000本以下の単繊維の束をロービングとして巻取り、所定の繊維長にカットすることで得られる。強化繊維をこのような形態とすることにより、強化繊維の分散性を良好にすることができる。
【0033】
強化繊維は、表面処理が施されたものであってもよい。強化繊維に表面処理を行うことにより、強化繊維と熱可塑性樹脂との接着性を高めることができる。本発明においては、強化繊維表面を酸化処理することにより、熱可塑性樹脂との接着性を高めることができ、繊維強化プラスチック成形体の曲げ強度を高めることができる。特に炭素繊維表面の酸化処理は、炭素繊維と熱可塑性樹脂との接着性の向上に有効である。
【0034】
炭素繊維の酸化処理の程度は、例えば、ESCA(X線光電子分光分析)による表面分析で確認することができる。ESCAによる結合(束縛)エネルギーによる電子強度スペクトルでは、未処理の炭素繊維はC−C結合に対応する287eV付近のピークがみられる。酸化処理によって、電気陰性度の高い酸素原子が導入されるとC−O結合、COO結合に相当する、高エネルギー側にシフトした288〜294eV付近の光電子強度が増加する。このため、C−O結合及びCOO結合の電子強度と、C−C結合の電子強度の比率を算出することによって酸化処理の程度を確認することができる。ESCA(X線光電子分光分析)法により測定した炭素繊維の表面のC−O結合の電子強度をPとし、COO結合の電子強度をQとし、C−C結合の電子強度をRとした場合、(P−Q)/Rで表される値は酸化処理の程度を表すものである。
炭素繊維と熱可塑性樹脂との接着性の向上効果を得るためには、(P−Q)/Rで表される値が、0.05以上であることが望ましい。
【0035】
強化繊維表面の酸化処理としては、具体的には、電解酸化処理、薬液酸化処理、オゾンマイクロバブル処理などの液相酸化処理;プラズマ処理、コロナ処理、紫外線処理、フレーム処理、イトロ処理、ブラスト処理、オゾンガス処理などの気相酸化処理;等を挙げることができる。強化繊維表面には、上述した処理から選ばれる少なくとも1種の処理を施すことが好ましい。中でも繊維強化プラスチック成形体用基材の製造工程での処理の容易さ、酸素含有官能基の導入のしやすさなどの観点から、オゾンガス処理、オゾンマイクロバブル処理及びプラズマ処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行うことが好ましい。
【0036】
強化繊維の質量平均繊維径は、特に限定されないが、一般的には質量平均繊維径が5μm以上であることが好ましい。また、強化繊維の質量平均繊維径は20μm以下であることが好ましい。また、強化繊維の断面が扁平形状である場合は、長径と短径の平均値が上記範囲内であることが好ましい。なお、本明細書において、質量平均繊維径は、無作為に得られた100本の繊維について計測した質量平均繊維径である。
【0037】
強化繊維の含有量は、繊維強化プラスチック成形体用基材の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。また、強化繊維の含有量は95質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。強化繊維の含有量を上記範囲内とすることにより、より優れた機械的強度を有する繊維強化プラスチック成形体を得ることができる。
【0038】
(炭素繊維)
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材は、強化繊維として炭素繊維を含んでもよい。強化繊維に含まれる炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等の炭素繊維を用いることができる。これらの炭素繊維は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせ用いてもよい。また、これら炭素繊維の中でも、工業規模における生産性及び機械特性の観点から、ポリアクリロニトリル(PAN)系の炭素繊維を用いることが好ましい。
【0039】
炭素繊維の単繊維強度は、4500MPa以上であることが好ましく、4700MPa以上であることがより好ましい。単繊維強度とは、モノフィラメントの引っ張り強度をいう。このような炭素繊維を使用した場合、曲げ強度及び曲げ弾性率をより効果的に向上させることができる。なお、単繊維強度は、JIS R 7601「炭素繊維試験方法」に準じて測定することができる。
【0040】
(ガラス繊維)
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材は、強化繊維としてガラス繊維を含んでもよい。本発明で用いるガラス繊維としては、Eガラス(Electrical glass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)及び耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸してフィラメント状の繊維にしたものを挙げることができる。
【0041】
ガラス繊維は、丸ガラスであってもよく、扁平ガラスであってもよい。丸ガラスを用いることにより、コスト競争力に優れた繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることができる。また、扁平ガラスを用いることで、成形後の繊維強化プラスチック成形体の強度をより効果的に高めることができる。なお、ガラス繊維としては、丸ガラスと扁平ガラスを併用してもよい。
ここで、丸ガラスとは、繊維の断面形状が略円形のものである。なお、繊維の断面形状とは、ガラス繊維の長さ方向に対し、垂直方向のカット面の形状のことをいう。扁平ガラスとは、繊維の断面形状が扁平(異形)であるものであり、略円形ではないものをいう。具体的には、扁平形状とは、繊維の断面形状が、中心点を通過する最大長で定義される長径と、中心点を通過する最小長で定義される短径を有する形状をいう。扁平形状としては、例えば、ひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型等を例示することができる。
【0042】
(熱可塑性樹脂)
繊維強化プラスチック成形体用基材は、熱可塑性樹脂を含有する。本発明においては、熱可塑性樹脂のガラス転移温度もしくは融点は200℃以上であり、熱可塑性樹脂の限界酸素指数は20以上である。熱可塑性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂繊維として繊維強化プラスチック成形体用基材に含有されるほか、フィルムや不織布シートのような形態で含有されてもよい。また、発明の効果を損なわない範囲で、上記条件を満たす2種以上の熱可塑性樹脂を併用することができ、相溶性を示す2種以上の熱可塑性樹脂を組み合わせることもできる。
【0043】
熱可塑性樹脂が融点を有する樹脂である場合、「200℃以上」との温度は融点で判別する。熱可塑性樹脂が融点を有さない樹脂である場合は、「200℃以上」との温度はガラス転移温度で判別する。例えば、ポリエーテルイミド樹脂は、融点を有さず、ガラス転移温度のみを有する樹脂であることが知られている。この場合、ポリエーテルイミド樹脂はガラス転移温度が200℃以上であれば、上記条件を満たすこととなる。
【0044】
また、熱可塑性樹脂の限界酸素指数は20以上である。ここで、限界酸素指数とは、燃焼を続けるのに必要な酸素濃度を表し、JIS K 7201に記載された方法で測定した数値をいう。限界酸素指数が20以下は、通常の空気中で燃焼することを示す数値である。限界酸素指数は20以上の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。中でも、熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂及びポリフェニレンスルフィド樹脂から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、ナイロン6樹脂、ナイロン66樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂及びポリフェニレンスルフィド樹脂から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、ナイロン6樹脂、ポリエーテルイミド樹脂及びポリフェニレンスルフィド樹脂から選ばれる少なくとも一種であることがさらに好ましい。
【0045】
熱可塑性樹脂を、空気中で開始温度を50℃とし、昇温速度10℃/分で400℃まで昇温し、400℃で10分間保持した場合に、熱可塑性樹脂の重量減少率は55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、20%以下であることがよりさらに好ましく、10%以下であることが特に好ましい。上記条件における熱可塑性樹脂の重量減少率を上記範囲とすることにより、マトリックス樹脂としての働きを担う熱可塑性樹脂の重量を保持することができる。これにより、繊維強化プラスチック成形体の機械的強度をより効果的に高めることができる。
【0046】
繊維強化プラスチック成形体用基材から熱可塑性樹脂を単離して重量減少率を測定する場合は、光学顕微鏡下で観察しながらピンセットを用いて取り出す方法や、バインダー成分が溶解せず熱可塑性樹脂のみが溶解する溶媒をもちいて抽出する方法等が例示される。
その後、集めた熱可塑性樹脂を空気中(流量200mL/分)で、加熱開始温度50℃で10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温し、400℃で10分間保持する。加熱前後の熱可塑性樹脂の重量は、TG−DTA(Thermo Gravimetry−Differencial Thermal Analysis:示差熱−熱重量同時測定)により測定し、以下の式から重量減少率を算出する。
【0047】
熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂を溶融紡糸することによって得られる熱可塑性樹脂繊維として繊維強化プラスチック成形体用基材に含有されることが好ましい。
【0048】
熱可塑性樹脂繊維の質量平均繊維長は、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、6mm以上であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維の質量平均繊維長は、100mm以下であることが好ましく、75mm以下であることがより好ましく、55mm以下であることがさらに好ましく、30mm以下であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、繊維強化プラスチック成形体用基材から熱可塑性樹脂繊維が脱落することを抑制することができ、強度に優れた繊維強化プラスチック成形体を形成することが可能となる。また、熱可塑性樹脂繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、熱可塑性樹脂繊維の分散性を良好にすることができ、これによっても、強度に優れた繊維強化プラスチック成形体を形成することが可能となる。なお、本明細書において質量平均繊維長は、無作為に得られた100本の繊維について計測した質量平均繊維長である。
【0049】
熱可塑性樹脂繊維は、上記繊維長となるように、一定の長さにカットされたチョップドストランドであることが好ましい。熱可塑性樹脂繊維をこのような形態とすることにより、熱可塑性樹脂繊維の分散性を良好にすることができる。
【0050】
熱可塑性樹脂繊維の質量平均繊維径は、特に限定されないが、一般的には質量平均繊維径が5μm以上であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維の質量平均繊維径は50μm以下であることが好ましい。なお、本明細書において、質量平均繊維径は、無作為に得られた100本の繊維について計測した質量平均繊維径である。
【0051】
熱可塑性樹脂繊維の含有量は、繊維強化プラスチック成形体用基材の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維の含有量は90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂繊維の含有量を上記範囲内とすることにより、より優れた機械的強度を有する繊維強化プラスチック成形体を得ることができる。
【0052】
(繊維強化プラスチック成形体用基材の製造方法)
本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材の製造工程は、強化繊維と、熱可塑性樹脂と、バインダー成分と、を混合してスラリーを得る工程と、該スラリーを湿式抄紙法によって繊維強化プラスチック成形体用基材を形成する工程を含む。
【0053】
強化繊維と、熱可塑性樹脂と、バインダー成分と、を混合してスラリーを得る工程においては、強化繊維と、熱可塑性樹脂と、バインダー成分と、同時に投入して、撹拌を行ってもよいが、強化繊維と、熱可塑性樹脂を混合した後に、バインダー成分を混合して、撹拌を行ってもよい。
【0054】
強化繊維と、熱可塑性樹脂と、バインダー成分と、を混合してスラリーを得る工程においては、スラリーの粘度を調整するために、増粘剤を添加してもよい。増粘剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、ノニオン性ポリエチレンオキシド等を挙げることができる。中でも増粘剤としては、アニオン性ポリアクリルアミドを用いることが好ましい。増粘剤の添加量はスラリーの全質量に対して、10ppm以上であることが好ましく、20ppm以上であることがより好ましい。また、増粘剤の添加量は500ppm以下であることが好ましい。
【0055】
湿式抄紙法で繊維強化プラスチック成形体用基材を抄紙する際には、円網抄紙機、長網抄紙機又は傾斜型抄紙機を用いて抄紙することが好ましい。
【0056】
また、本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材の製造工程は、上記の他に、強化繊維と熱可塑性樹脂からなる不織布に、バインダー成分を含む溶液又はバインダー成分を含むエマルジョンを塗布するか、もしくは強化繊維と熱可塑性樹脂からなる不織布を、バインダー成分を含む溶液又はバインダー成分を含むエマルジョンに含浸させる工程を有するものであってもよい。このような工程を設けることにより、バインダー成分を繊維強化プラスチック成形体用基材の表面領域に偏在させることができ、繊維強化プラスチック成形体用基材の表面繊維の飛散、毛羽立ちや脱落を抑制することができ、ハンドリング性に優れた繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることができる。
【0057】
(繊維強化プラスチック成形体)
本発明は、上述した繊維強化プラスチック成形体用基材から成形される繊維強化プラスチック成形体に関するものでもある。
【0058】
繊維強化プラスチック成形体の厚みは、特に限定されないが、0.1mm以上50mm以下である。また、繊維強化プラスチック成形体の密度は、1.0g/cm
3で以上2.0g/cm
3以下であることが好ましい。本発明の繊維強化プラスチック成形体は、上記のような構成により、優れた機械的強度を発揮することができる。
【0059】
本発明の繊維強化プラスチック成形体の曲げ強度や曲げ弾性率は、強化繊維や熱可塑性樹脂の種類や配合量によって変動するものであるため、特に制限されるものではない。例えば、強化繊維として炭素繊維を用いる場合、曲げ強度は、150MPa以上であることが好ましく、200MPa以上であることがより好ましく、250MPa以上であることがさらに好ましい。また、曲げ弾性率は、15GPa以上であることが好ましく、18GPa以上であることがより好ましく、20GPa以上であることがさらに好ましい。強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、曲げ強度は、80MPa以上であることが好ましく、100MPa以上であることがより好ましく、150MPa以上であることがさらに好ましい。また、曲げ弾性率は、8GPa以上であることが好ましく、10GPa以上であることがより好ましく、12GPa以上であることがさらに好ましい。
【0060】
(繊維強化プラスチック成形体の成形方法)
本発明の繊維強化プラスチック成形体は、上述した繊維強化プラスチック成形体用基材を加熱加圧成形することにより成形される。繊維強化プラスチック成形体用基材は、目的とする形状や成形法に合わせて任意の形状に加工することができる。繊維強化プラスチック成形体は、繊維強化プラスチック成形体用基材を、1枚単独、或いは所望の厚さとなるように積層して熱プレスで加熱加圧成形したり、あらかじめ赤外線ヒーター等で予熱した金型によって加熱加圧成形したりすることで成形される。また、繊維強化プラスチック成形体が多層構造である場合、他種の繊維強化プラスチック成形体用基材を積層して熱プレスで加熱加圧成形することもできる。本発明の繊維強化プラスチック成形体は、一般的な繊維強化プラスチック成形体用基材の加熱加圧成形方法を用いて加工される。
【0061】
プレス成形の方法としては、各種存在するプレス成形の方法の中でも、大型の航空機などの成形体部材を作製する際によく使用されるオートクレーブ法や、工程が比較的簡便である金型プレス法が好ましく挙げられる。ボイドの少ない高品質な成形体を得るという観点からはオートクレーブ法が好ましい。一方、設備や成形工程でのエネルギー使用量、使用する成形用の治具や副資材等の簡略化、成形圧力、温度の自由度の観点からは、金属製の型を用いて成形をおこなう金型プレス法を用いることが好ましく、これらは用途に応じて選択することができる。
【0062】
金型プレス法には、ヒートアンドクール法やスタンピング成形法を採用することができる。ヒートアンドクール法は、繊維強化プラスチック成形体用基材を型内に予め配置しておき、型締とともに加圧、加熱をおこない、次いで型締をおこなったまま、金型の冷却により該シートの冷却をおこない成形体を得る方法である。スタンピング成形法は、予め該基材を遠赤外線ヒーター、加熱板、高温オーブン、誘電加熱などの加熱装置で加熱し、ポリオレフィン樹脂を溶融、軟化させた状態で、成形体型の内部に配置し、次いで型を閉じて型締を行い、その後加圧冷却する方法である。また、低密度の成形体を得る場合など、成形時の温度が比較的低い場合は、ホットプレス法を採用することもできる。
【0063】
成形用の金型は大きく2種類に分類され、1つは鋳造や射出成形などに使用される密閉金型であり、もう1つはプレス成形や鍛造などに使用される開放金型である。本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材を用いた場合、用途に応じていずれの金型も使用することが可能である。成形時の分解ガスや混入空気を型外に排除する観点からは開放金型が好ましいが、過度の樹脂の流出を抑制するためには、成形加工中においては開放部をできるだけ少なくし、樹脂の型外への流出を抑制するような形状を採用することも好ましい。
【0064】
さらに、金型には打ち抜き機構、タッピング機構から選択される少なくとも一種を有する金型を使用することができる。2段プレス機構を用いるなどの工夫で、熱プレス後に連続して、成形体を打ち抜き加工することも可能である。また、成形体は、その使用目的などによってはリブやボス等の強度補強・加工用の突起やネジ穴の形成、意匠性の付与を目的とした模様の付与を行うことができる。
【0065】
繊維強化プラスチック成形体が多層構造である場合、他種の繊維強化プラスチック成形体用基材を積層して熱プレスで加熱加圧成形することもできる。また、繊維強化プラスチック成形体用基材を成形すると同時、或いは成形後にアウトサート成形やインサート成形によって、より複雑な形状部材を接着することも可能である。
【0066】
繊維強化プラスチック成形体用基材から繊維強化プラスチック成形体を成形する際には、具体的には、繊維強化プラスチック成形体用基材を150℃以上600℃以下の温度で加熱加圧成形することが好ましく、160℃以上250℃以下がより好ましい。なお、加熱温度は、繊維強化プラスチック成形体用基材内の熱可塑性樹脂が流動する温度であって強化繊維は溶融しない温度帯であることが好ましい。
【0067】
繊維強化プラスチック成形体を成形する際の圧力としては、5MPa以上20MPa以下が好ましい。また、所望の保持温度に到達するまでの昇温速度は3℃/分以上20℃/分以下が好ましく、所望の熱プレス温度での保持時間としては1分以上30分以下、その後、成形体を取り出す温度(200℃以下)までは圧力を維持しながら、3℃/分以上20℃/分以下の冷却速度とするのが好ましい。さらに、生産効率はやや落ちるものの、熱プレスの保持温度から熱可塑性樹脂のガラス転移温度までは空冷でゆっくりと0.1℃/分以上3℃/分以下で冷却することも、強度向上の観点からは好ましい。また、急速加熱、急速冷却(ヒートアンドクール)成形を用いて熱プレス成形することも可能であり、その場合の昇温、冷却速度はそれぞれ30℃/分以上500℃/分以下である。更に、赤外線ヒーターによる場合は、温度として150℃以上600℃以下、好ましくは160℃以上250℃以下で1分以上30分以下加熱し、その後30MPa以上150MPa以下の圧力で成形することができる。
【0068】
(繊維強化プラスチック成形体の用途)
本発明の繊維強化プラスチック成形体の用途としては、例えば、「OA機器、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末、タブレットPC、デジタルビデオカメラなどの携帯電子機器、エアコンその他家電製品などの筐体、及び筐体に貼り付けるリブ等の補強材、「支柱、パネル、補強材」などの土木、建材用部品、「各種フレーム、各種車輪用軸受、各種ビーム、ドア、トランクリッド、サイドパネル、アッパーバックパネル、フロントボディー、アンダーボディー、各種ピラー、各種フレーム、各種ビーム、各種サポート、などの外板またはボディー部品及びその補強材」、「インストルメントパネル、シートフレームなどの内装部品」、または「ガソリンタンク、各種配管、各種バルブなどの燃料系、排気系、または吸気系部品」、「エンジン冷却水ジョイント、エアコン用サーモスタットベース、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング」、などの自動車、二輪車用部品、「ウィングレット、スポイラー」などの航空機用部品、「鉄道車両用の座席用部材、外板パネル、外板パネルに貼り付ける補強材、天井パネル、エアコン等の噴出し口」などの鉄道車両用部品、「樹脂(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂)からなる成形体の補強材、樹脂と強化繊維からなる成形体の補強材、植物由来のシート(クラフト紙、段ボール、耐油紙、絶縁紙、導電紙、剥離紙、含浸紙、グラシン紙、セルロースナノファイバーシートなど)の補強材」などの部材等に好適に使用される。さらに、本発明の繊維強化プラスチック成形体は、電気絶縁性の高いガラス繊維を強化繊維として用いることで、電気絶縁用基板としても好適に用いることができる。本発明の繊維強化プラスチック成形体は、表面性状が良好であり、強度が高いので、電気、電子機器用の筐体、自動車用の構造部品、航空機用の部品、土木、建材用のパネル、その他多種多様な用途に好ましく用いられる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0070】
(実施例1)
以下のようにして、表1に示す割合で各成分を含む不織布を製造した。
まず、プロペラ型アジテーター付のタンクに、炭素繊維の濃度が0.25質量%となるように、PAN系炭素繊維(繊維長12mm、繊維径7μm)と水を投入した。さらに、分散剤として「エマノーン(登録商標)3199V」(花王社製、ポリエチレングリコールモノステアレート)の0.6質量%水溶液を、その固形分が炭素繊維100質量部に対して1質量部となるように添加し、プロペラ型アジテーターを用いて回転数500rpmで攪拌した。
次いで、ポリエーテルイミド樹脂繊維(PEI繊維)として、「UP201」(クラレ社製、繊維長15mm、繊維径15μm、ガラス転移温度220℃)を、表1の配合比(質量比)となるように投入し、回転数200rpmで攪拌を続けた。最後に、バインダー繊維として、「Gryltex D1993A」(EMS社製、融点110℃)を繊維化した熱融着ナイロン繊維(繊維長10mm、繊維径20μm、以下低融点ナイロン繊維1ともいう)を、表1の配合比(質量比)となるように投入し、回転数200rpmで攪拌を続けた。
【0071】
次いで、ポリアクリルアミド系粘剤として「FA−40MT」(アクアポリマー社製、質量平均分子量:1700万)の0.05質量%水溶液を、得られる原料液に対してポリアクリルアミドの固形分が30ppmとなるように投入し、回転数200rpmで攪拌し、均一な分散液を得た。その後、これに水を加え、固形分濃度が0.2質量%となるように調整し、原料液とした。
【0072】
この原料液に水(白水)を加え、固形分濃度が0.03質量%の分散液を得た。そして、この分散液を用いて湿式抄紙法でウェットウェブを形成し、140℃で加熱、乾燥して坪量100g/m
2の繊維強化プラスチック成形体用基材(不織布)を得た。
【0073】
得られた坪量100g/m
2の不織布を16枚積層し、150℃に予熱したホットプレス内に入れた後、温度:310℃、圧力:10MPa、時間:300秒間の条件で、加熱加圧成形を行った。その後、150℃に冷却し、厚み1mmの繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0074】
(実施例2)
炭素繊維、ポリエーテルイミド樹脂繊維、及び熱融着ナイロン繊維の割合を表1に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0075】
(実施例3)
実施例1で使用したポリエーテルイミド樹脂繊維の代わりに、ポリフェニレンサルファイド樹脂繊維(PPS繊維)(Fiber Innovation Technology社製、繊維長13mm、融点289℃)を使用し、各成分の割合を表1に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0076】
(実施例4)
実施例1で使用したポリエーテルイミド樹脂繊維の代わりに、ナイロン6繊維「アミラン」(愛知産業社製、繊維長15mm、繊維径19μm、融点220℃)を使用した以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0077】
(実施例5)
実施例1で使用した炭素繊維の代わりに、ガラス繊維(繊維長13mm、繊維径9μm)を使用し、各成分の割合を表1に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0078】
(実施例6)
実施例1で使用した低融点ナイロン繊維1の代わりに、低融点ナイロン繊維2「ジョイナー Lタイプ」(フジボウ愛媛社製、繊維長5mm、繊維径40μm、融点98℃)を使用した以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0079】
(実施例7)
実施例1で使用した低融点ナイロン繊維1の代わりに、セピオライト「PANKEL HV」(楠本化成社製)の水分散液(濃度2%)を調製して、表1の配合比(質量比)となるようにスプレー塗布法で添加した以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0080】
(比較例1)
実施例1で使用した低融点ナイロン繊維1の代わりに、PVA繊維「VPB105−2」(クラレ社製、繊維長3mm、繊維径11μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0081】
(比較例2)
実施例1で使用した低融点ナイロン繊維1の代わりに、変性PET繊維「N720」(クラレ社製、繊維長5mm、繊維径14μm、芯鞘比5:5)を使用した以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0082】
(比較例3)
実施例3で使用した低融点ナイロン繊維1の代わりに、PVA繊維「VPB105−2」(クラレ社製、繊維長3mm、繊維径11μm)を使用した以外は、実施例3と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0083】
(比較例4)
実施例4で使用した低融点ナイロン繊維1の代わりに、PVA繊維「VPB105−2」(クラレ社製、繊維長3mm、繊維径11μm)を使用した以外は、実施例4と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0084】
(比較例5)
実施例5で使用した低融点ナイロン繊維1の代わりに、変性PET繊維「N720」(クラレ社製、繊維長5mm、繊維径14μm、芯鞘比5:5)を使用した以外は、実施例5と同様にして繊維強化プラスチック成形体用基材及び繊維強化プラスチック成形体を得た。
【0085】
(評価及び分析)
<バインダー成分の重量減少率>
バインダー成分を、空気中で開始温度を50℃とし、昇温速度10℃/分で400℃まで昇温し、400℃で10分間保持した際の、バインダー成分の重量減少率は、以下のようにして求めた。
まず、バインダー成分を、空気中(流量200mL/分)で、加熱開始温度50℃で10℃/分の昇温速度で400℃まで昇温し、400℃で10分間保持した。加熱前後のバインダー成分の重量は、TG−DTA(Thermo Gravimetry− Differencial Analysis:示差熱−熱重量同時測定)により測定し、以下の式から重量減少率を算出した。
重量減少率(%)=(加熱前のバインダー成分−加熱後のバインダー成分の重量)/(加熱前の熱可塑性樹脂の重量)×100
【0086】
<外観評価>
得られた繊維強化プラスチック成形体の表面の外観を観察し、以下の基準で評価した。
○:ボイドがなく外観が良好。
△:ボイドの発生がみられ実用上問題となる可能性がある。
×:ボイドに起因して明らかに外観が悪く、製品として使用できない。
【0087】
【表1】
【0088】
実施例で得られた繊維強化プラスチック成形体においては、ボイドの発生が抑制されており、外観が優れていた。また、実施例で得られた繊維強化プラスチック成形体においては高強度及び高弾性率である傾向が見られた。