(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、運動機能の診断結果を受診者に伝えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る表示装置は、立位姿勢における受診者の頭部の第1軌跡と、該受診者の重心
を重力に沿った方向に垂直な平面に投影した点の第2軌跡とを特定する特定部と、前記第1軌跡及び前記第2軌跡から前記受診者の姿勢を示す第1数値を算出する第1算出部と、前記第1軌跡及び前記第2軌跡から前記受診者の平衡感覚を示す第2数値を算出する第2算出部と、運動機能に応じた複数の領域を表示部に表示させるとともに、算出された前記第1数値と前記第2数値との組に応じた点を該領域のいずれかに表示させる表示制御部と、
前記受診者が目を開けているときに前記第2算出部により算出された第2数値と、該受診者が目を閉じているときに前記第2算出部により算出された第2数値との差を示す第3数値を算出する第3算出部と、前記受診者が目を開けているときの表情の変化量を示す第4数値を算出する第4算出部と、を有
し、前記表示制御部は、認知機能に応じた複数の領域を決定するとともに、算出された前記第3数値と前記第4数値との組に応じた点を該領域のいずれかに表示させることを特徴とする。
本発明の請求項2に係る表示装置は、請求項1に記載の態様において、前記表示制御部は、前記受診者に課された条件に応じて前記複数の領域を決定することを特徴とする。
本発明の請求項3に係る表示装置は、請求項1又は2に記載の態様において、前記第1軌跡及び前記第2軌跡から前記受診者が身体の平衡を崩した回数を計数する計数部を有し、前記表示制御部は、前記回数に応じて前記複数の領域を決定することを特徴とする。
本発明の請求項4に係る表示装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載の態様において
、前記表示制御部は、前記点が表示される領域に応じた前記運動機能の情報を前記表示部に表示させることを特徴とする。
本発明の請求項
5に係る表示装置は、請求項1から
4のいずれか1項に記載の態様において、前記特定部は、前記頭部の位置によって推定された前記受診者の身長に応じて変換された前記第1軌跡及び前記第2軌跡を特定することを特徴とする。
本発明の請求項
6に係る診断システムは、表示装置と、立位姿勢における受診者の頭部の位置を検知する検知装置と、前記受診者の重心
を重力に沿った方向に垂直な平面に投影した点の位置を測定する測定装置と、を有し、前記表示装置は、前記検知装置により検知された前記頭部の位置の変化を示す第1軌跡と、前記測定装置により測定された前記
点の位置の変化を示す第2軌跡とを特定する特定部と、前記第1軌跡及び前記第2軌跡から前記受診者の姿勢を示す第1数値を算出する第1算出部と、前記第1軌跡及び前記第2軌跡から前記受診者の平衡感覚を示す第2数値を算出する第2算出部と、運動機能に応じた複数の領域を表示部に表示させるとともに、算出された前記第1数値と前記第2数値との組に応じた点を該領域のいずれかに表示させる表示制御部と、
前記受診者が目を開けているときに前記第2算出部により算出された第2数値と、該受診者が目を閉じているときに前記第2算出部により算出された第2数値との差を示す第3数値を算出する第3算出部と、前記受診者が目を開けているときの表情の変化量を示す第4数値を算出する第4算出部と、を有
し、前記表示制御部は、認知機能に応じた複数の領域を決定するとともに、算出された前記第3数値と前記第4数値との組に応じた点を該領域のいずれかに表示させることを特徴とする。
本発明の請求項
7に係るプログラムは、表示部を有するコンピュータを、立位姿勢における受診者の頭部の第1軌跡と、該受診者の重心
を重力に沿った方向に垂直な平面に投影した点の第2軌跡とを特定する特定部と、前記第1軌跡及び前記第2軌跡から前記受診者の姿勢を示す第1数値を算出する第1算出部と、前記第1軌跡及び前記第2軌跡から前記受診者の平衡感覚を示す第2数値を算出する第2算出部と、運動機能に応じた複数の領域を前記表示部に表示させるとともに、算出された前記第1数値と前記第2数値との組に応じた点を該領域のいずれかに表示させる表示制御部と、
前記受診者が目を開けているときに前記第2算出部により算出された第2数値と、該受診者が目を閉じているときに前記第2算出部により算出された第2数値との差を示す第3数値を算出する第3算出部と、前記受診者が目を開けているときの表情の変化量を示す第4数値を算出する第4算出部として機能させ
、かつ、前記表示制御部が、認知機能に応じた複数の領域を決定するとともに、算出された前記第3数値と前記第4数値との組に応じた点を該領域のいずれかに表示させるように前記コンピュータを機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1、
6、7に係る発明によれば、運動機能の診断結果を受診者に伝えることができ
、また、認知機能の診断結果を受診者に伝えることができる。
請求項2に係る発明によれば、受診者に課された条件に応じて運動機能の評価を示す領域を変化させることができる。
請求項3に係る発明によれば、身体の平衡を崩した回数によって運動機能の評価を示す領域を変化させることができる。
請求項4に係る発明によれば
、運動機能の診断結果についての情報を受診者に表示することができる。
請求項
5に係る発明によれば、受診者の身長のバラツキによる診断の誤りを訂正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施形態
1−1.診断システムの全体構成
以下、図において、各構成が配置される空間をxyz右手系座標空間として表す。また、図に示す座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表し、円の中に交差する2本の線を描いた記号は、紙面手前側から奥側に向かう矢印を表す。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を−x方向という。y、z成分についても、上述の定義に沿ってy軸方向、+y方向、−y方向、z軸方向、+z方向、−z方向を定義する。−z方向は重力の方向である。
【0009】
図1は、本実施形態に係る診断システム9の全体構成を示す図である。診断システム9は、表示装置1と、この表示装置1に接続された検知部2、及び測定部3を有する。また、診断システム9は、
図1に示す通り表示装置1に接続された撮像部5を有してもよい。表示装置1は、コンピュータ等である。
【0010】
測定部3は、上に乗った立位姿勢の受診者の体圧を感知する感圧面を有し、この感圧面により受診者の重心Pgのxy平面上における位置を測定する装置(測定装置)である。感圧面は例えば静電容量圧力センサ等により体圧を感知する。感圧面は例えば格子状に配置された複数の感圧点を有していてもよい。要するに感圧面は−z方向に受ける力とその力を受ける部分のxy平面上における位置とを測定すればよい。測定部3は、受診者の重心の位置を示すデータを表示装置1に供給する。
【0011】
検知部2は、床から上方向(+z方向)に伸びる支柱4に取付けられ、受診者の頭部に貼付等をすることによって固定されたマーカPvを検知して、この頭部の動きを観測する装置(検知装置)である。検知部2は、受診者の頭部の位置を示すデータを表示装置1に供給する。
【0012】
検知部2は、例えば3D距離センサ、ステレオカメラ等である。3D距離センサは、近赤外パルスレーザ等の電磁波を照射してから、対象物で反射したその電磁波をセンサが感知するまでの時間差に基づきその対象物までの距離と方向を特定する。ステレオカメラは、複数方向からの撮像画像を用いて被撮像物までの距離と方向を特定する。検知部2として3D距離センサを用いる場合、マーカPvは検知部2が照射する電磁波を反射する物体であればよい。
【0013】
なお、マーカPvは、頭頂部等の「頭部を代表する位置」に固定される。頭頂部とは、具体的には、ドイツ水平線、フランクフルト水平線、リード基準線、解剖学的基準線、又は人類学的基準線等と呼ばれる線であって、眼窩下縁の最低点と外耳孔上縁の中点とを結ぶ耳眼窩水平線を重力方向(−z方向)に対して水平に保った場合に、正中矢状面を通って頭部の最も上方に位置する点である。正中矢状面とは、正中に沿って身体を左右に分ける面である。
【0014】
また、マーカPvは、ジャイロセンサ又は加速度センサを有してもよい。この場合、マーカPvそのものが検知部2として空間における頭部の位置を検知してもよい。ジャイロセンサ又は加速度センサによって検知された頭部の位置のデータは、無線によって表示装置1に供給されてもよいし、検査中はマーカPvに内包されたメモリに記憶され、検査後に有線によって表示装置1に供給されてもよい。
【0015】
撮像部5は、支柱4に取付けられ、受診者の顔を撮像してその顔を示すデータを表示装置1に供給する装置である。受診者は−y方向に顔を向けて立位姿勢をとり、撮像部5は+y方向に向けたカメラによってその顔を撮像する。
【0016】
1−2.表示装置の構成
図2は、表示装置1の構成の一例を示す図である。表示装置1は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、表示部14と、操作部15とを有する。
【0017】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有し、CPUがROMや記憶部12に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより表示装置1の各部を制御する。
【0018】
通信部13は、検知部2及び測定部3と接続して、検知部2から受診者の頭部の動きを示すデータを、測定部3から受診者の重心Pgの動きを示すデータを、それぞれ受取るインタフェースである。また、通信部13は
図2に示す通り、上述した撮像部5と接続して、この撮像部5で撮像された受診者の顔を示すデータを受取るインタフェースとして機能してもよい。なお、
図1に示す通信部13は、有線により検知部2、測定部3及び撮像部5に接続しているが、無線によりこれらと接続してもよい。
【0019】
操作部15は、各種の指示をするためのキーボード、マウス、操作ボタン等の操作子を備えており、利用者による操作を受付けてその操作内容に応じた信号を制御部11に供給する。また、操作部15は、利用者の指やスタイラスペン等の操作体を検知するタッチパネルを有していてもよい。
【0020】
表示部14は、液晶ディスプレイを有しており、制御部11の制御の下、画像を表示する。表示部14の液晶ディスプレイの上には、操作部15の透明のタッチパネルが重ねて配置されてもよい。
【0021】
記憶部12は、ハードディスクドライブ等の大容量の記憶手段であり、制御部11のCPUに読み込まれるプログラムを記憶している。
【0022】
また、記憶部12は、定数表121、及びアドバイス表122を記憶する。
図3は、定数表121の一例を示す図である。
図3に示す定数表121は、診断に用いる様々な定数(パラメータ)を記憶する表であり、例えば標準的な受診者の身長として定められた標準身長を記憶している。また、定数表121は、移動量及び距離の上限をそれぞれ記憶している。
【0023】
制御部11は、定数表121に記憶された標準身長と、推定又は予め入力された受診者の身長に基づいて観測の結果を変換(正規化ともいう)する。この正規化とは、観測の結果を示す数値を、受診者の身長が標準身長であったと仮定した場合の数値に変換することをいう。
【0024】
例えば、観測の結果が移動量及び距離等、単位が一次元である場合に、制御部11は、観測の結果を受診者の身長で除算し、標準身長を乗算することにより正規化を行う。また例えば、観測の結果が面積等、単位が二次元である場合に、制御部11は、観測の結果を受診者の身長で二回除算し、標準身長で二回乗算することにより正規化を行う。
【0025】
また、制御部11は、頭部又は重心の移動量又は距離等、観測の結果を示す数値及びその数値を正規化した数値が定数表121に記述された上限を超えた場合に、これらの数値がそれぞれの上限であったと見なしてもよい。
【0026】
図4は、アドバイス表122の一例を示す図である。
図4に示すアドバイス表122には、受診者に課された条件ごとの判定結果と、これら判定結果の組合せを総合した最終の判定結果、及び、この最終の判定結果に対して受診者に通知されるアドバイスの文言とが、対応付けられている。
【0027】
制御部11は、例えば
図3に示す定数表121を用いて上述した条件ごとに受診者の運動機能を判定し、受診者が複数の条件で診断を受けた後にその受診者に対して最終の判定結果とともに、
図4に示すアドバイス表122に記載された、その判定結果に対応するアドバイスの文言を通知する。
【0028】
1−3.測定部
図5は、測定部3を説明するための図である。測定部3は、受診者が乗る感圧面を有する。
図5に示す通り、測定部3の感圧面は、重力に沿った方向、すなわちz軸方向に垂直な平面であるxy平面に沿って設置される。測定部3は、感圧面の上に乗った受診者の足から受診者の体重に応じた圧力を感知して、重心Pgのxy平面上における位置を測定する。なお、感圧面には、
図5に示す通り受診者が両足を乗せる位置を示した印が描かれていてもよい。
【0029】
1−4.撮像部
図6は、撮像部5を説明するための図である。
図6には撮像部5が撮像する受診者の顔を示すデータに基づいた表情の解析の例が示されている。表示装置1の制御部11は、例えばHilditchの細線化アルゴリズム等の画像解析アルゴリズムを用いて、顔を示すデータから、眉毛、瞼、鼻、唇等、顔の各部位の輪郭線を検出する。そして制御部11は、これらの輪郭線を構成する特徴点を予め決められた規則に従って特定する。
【0030】
例えば、
図6に示す点P1及び点P2は受診者の右眉毛を示す輪郭線を構成する2つの特徴点である。撮像部5は、受診者に対して「笑顔を作って下さい」という呼び掛けをする前後の顔をそれぞれ示す画像データを表示装置1に供給する。表示装置1の制御部11は、上述した呼び掛けの前後の画像データに対し、それぞれ
図6に示す解析を行って顔の各部位の輪郭線を構成する複数の特徴点を特定し、各特徴点が呼び掛けの前後でどの程度、変化したかを示す変化量を算出する。制御部11は、算出した変化量を、例えば合計することで、認知症の程度を示す指標を算出する。
【0031】
具体例として立位姿勢の受診者は顔を−y方向を向ける。撮像部5は、受診者の顔の高さに配置されて+y方向に向かってその顔を撮像する。これにより撮像部5は、受診者の顔を示すデータであって、xz座標面で表される画像データを得る。制御部11は、撮像部5から供給される画像データに対して上述した画像解析アルゴリズムを用いて複数の特徴点を特定し、この複数の特徴点から次式(1)を用いて、顔の表情から受診者の認知症の傾向を評価するための指標である表情指標SUMを算出する。
【0033】
ただし、x
i,z
iは呼び掛け前におけるi番目の特徴点のx座標値とz座標値、X
i,Z
iは呼び掛け後におけるi番目の特徴点のx座標値とz座標値、i=13は鼻先を示す特徴点であって顔の基準となる位置(基準位置)を意味する。また、d
i,D
iはそれぞれ呼び掛けの前後におけるi番目の特徴点の基準位置からの距離を意味し、表情指標SUMは、この呼び掛けの前後の距離の合計を意味する。
【0034】
1−5.表示装置の機能的構成
図7は、表示装置1の機能的構成を示す図である。
図7において通信部13、及び操作部15を省略する。
図7に示す表示装置1の制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、特定部110、第1算出部111、第2算出部112、及び表示制御部115として機能する。また、
図7に示す通り制御部11は、第3算出部113、第4算出部114、推定部116、変換部117、及び計数部118として機能してもよい。
【0035】
特定部110は、第1特定部1101及び第2特定部1102を有する。第1特定部1101は、マーカPvを検知する検知部2から受診者の頭部の位置を示すデータの供給を継続的に受けて、この受診者の頭部の動きを示す第1軌跡を特定する。
【0036】
第2特定部1102は、測定部3の感圧面上に乗った受診者の重心の位置を示すデータの供給を継続的に受けて、この受診者の重心の動きを示す第2軌跡を特定する。すなわち、第1特定部1101及び第2特定部1102を有する特定部110は、第1軌跡及び第2軌跡を特定する。
【0037】
第1算出部111は、第1軌跡及び第2軌跡から受診者の姿勢を示す姿勢評価値(第1数値)を算出する。
図8は、決められた時間に表示装置1が検知部2及び測定部3から取得した受診者の頭部及び重心の位置の動きを示す図である。
図8に示す通り、頭部の位置の動きに基づきxy平面に第1軌跡T1が特定され、重心の位置の動きに基づきxy平面に第2軌跡T2が特定される。
【0038】
第1算出部111は、例えば、第1軌跡の代表点と第2軌跡の代表点との距離を、受診者の姿勢を示す姿勢評価値として算出する。代表点は、x方向及びy方向のそれぞれの相加平均値をx座標、y座標とする点でもよいし、それぞれの最頻値をx座標、y座標とする点でもよい。また、それぞれの測定時刻におけるxy平面上の頭部と重心との距離を平均することで、上述した姿勢評価値を算出してもよい。
【0039】
例えば、検知部2は、頭部の位置として「頭頂部」をxy平面に投影した点を表示装置1に供給する場合に、xy平面において頭頂部と重心とが重なる姿勢が基準となる良好な姿勢であると仮定すれば、xy平面における頭頂部と重心との距離が遠いほど、受診者の姿勢が悪いことを意味する。第1算出部111は、受診者の姿勢の指標として、この頭頂部と重心との距離を算出すればよい。制御部11は、診断の前に測定された第1軌跡の代表点と第2軌跡の代表点について実際の受診者の姿勢に合うように調整するキャリブレーションを行ってもよい。
【0040】
なお、頭部の重心をxy平面に投影した点と、身体の重心をxy平面に投影した点とが一致する姿勢が良好な姿勢であると仮定する場合に表示装置1は、「頭頂部」と頭部の重心との関係を調整してもよい。
【0041】
第2算出部112は、第1軌跡及び第2軌跡から受診者の平衡感覚を示すバランス評価値(第2数値)を算出する。平衡感覚とは、視覚、前庭感覚、体性感覚(深部感覚及び皮膚感覚)等を総合して、人が自分の身体の重力に対する傾き等を感知する感覚である。
【0042】
第2算出部112は、例えば
図8に示す第1軌跡T1に外接する矩形R1の面積と、第2軌跡T2に外接する矩形R2の面積とをそれぞれ算出し、より大きい方の面積を受診者の平衡感覚を示すバランス評価値として算出してもよい。この場合、頭部又は重心の軌跡が移動する範囲の面積が大きいほど、受診者は自分の身体を制御できていないので平衡感覚が衰えていることを意味する。
【0043】
なお、第2算出部112は、第1軌跡T1及び第2軌跡T2のそれぞれの移動距離をバランス評価値として算出してもよいし、第1軌跡T1及び第2軌跡T2のそれぞれによってxy平面上に描かれる図形の面積をバランス評価値として算出してもよい。
【0044】
第3算出部113は、受診者が目を開けているとき(開眼時)に第2算出部112により算出されたバランス評価値と、この受診者が目を閉じているとき(閉眼時)に第2算出部112により算出されたバランス評価値との差を示すバランス差評価値(第3数値)を算出する。バランス差評価値は、例えば開眼時のバランス評価値と閉眼時のバランス評価値との差を定数で除算した百分率で表される。
【0045】
第4算出部114は、受診者が目を開けているときの表情の変化量を示す表情評価値(第4数値)を算出する。表情評価値は、例えば上述した表情指標SUMを定数で除算した百分率で表される。
【0046】
表示制御部115は、運動機能に応じた複数の領域を表示部14に表示させる。また、表示制御部115は、第1算出部111により算出された姿勢評価値と、第2算出部112により算出されたバランス評価値との組に応じた点を、上述した領域のいずれかに表示させる。
【0047】
図9は、表示装置1により表示される診断結果の一例を示す図である。
図9(a)に示す通り、表示装置1の表示部14には、姿勢評価値を横軸に、バランス評価値を縦軸にした座標面が表示される。姿勢評価値及びバランス評価値は、いずれも0%から100%までの数値として表される。表示制御部115は、境界線Ea及び境界線Ebを描画する。境界線Eaは、受診者の運動機能に問題がないと診断する領域Raと、受診者の運動機能に若干の問題があると診断する領域Rbとの境界を示す線である。境界線Ebは、上述した領域Rbと、受診者の運動機能に深刻な問題があると診断する領域Rcとの境界を示す線である。
【0048】
境界線Ea及び境界線Ebはそれぞれ次式(2)(3)によって示される。
【0049】
ただし、αは姿勢評価値であり、βはバランス評価値である。そして添字a及び添字bはそれぞれ境界線Ea及び境界線Ebを示す。これら式中のr
a、k
a、r
b、k
bというパラメータは定数表121に記述されている。これらのパラメータは、受診者に課せられる条件に応じてそれぞれ定められてもよい。受診者に課せられる条件とは、例えば眼の開閉、及び両足立ち又は片足立ちの別といった立位姿勢における条件である。また、これらのパラメータは受診者の年齢、性別等といった属性ごとに定められてもよい。
【0050】
境界線Ea及び境界線Ebによって区別される3つの領域Ra、Rb、Rcのいずれに測定結果がプロットされるかによって、受診者の診断結果が決まる。例えば、測定点Paは領域Raの内側にプロットされるため、この結果を出した受診者の運動機能には問題がないと診断される。一方、測定点Pcは領域Rcの内側にプロットされるため、この結果を出した受診者の運動機能には深刻な問題があると診断される。
【0051】
また、表示制御部115は、認知機能に応じた複数の領域を表示部14に表示させるとともに、第3算出部113により算出されたバランス差評価値と、第4算出部114により算出された表情評価値との組に応じた点を、上述した領域のいずれかに表示させる。
【0052】
バランス差は、平衡感覚における視覚の依存の程度を示しており、バランス差が大きいほど受診者が視覚に頼って身体のバランスを保っていること、すなわち、体性感覚、皮膚感覚、及び前庭感覚が衰えていることを示している。
【0053】
また、表情評価値は「笑顔を作って下さい」という呼び掛けに対する表情の変化を示しているから、変化量が大きいほど認知症が発生している可能性が低いことを示している。
【0054】
図9(b)に示す通り、表示装置1の表示部14には、バランス差評価値を横軸に、表情評価値を縦軸にした座標面が表示される。バランス差評価値及び表情評価値は、いずれも0%から100%までの数値として表される。表示制御部115は、境界線Ed及び境界線Eeを描画する。境界線Edは、受診者の認知機能に問題がないと診断する領域Rdと、受診者の認知機能に若干の問題があると診断する領域Reとの境界を示す線である。境界線Eeは、上述した領域Reと、受診者の認知機能に深刻な問題があると診断する領域Rfとの境界を示す線である。
【0055】
境界線Ed及び境界線Eeはそれぞれ次式(4)(5)によって示される。
【0056】
ただし、δはバランス差評価値であり、εは表情評価値である。そして添字d及び添字eはそれぞれ境界線Ed及び境界線Eeを示す。これら式中のq
d、h
d、q
e、h
eというパラメータは定数表121に記述されている。これらのパラメータは、受診者に課せられる条件に応じてそれぞれ定められてもよい。また、これらのパラメータは受診者の年齢、性別等といった属性ごとに定められてもよい。
【0057】
境界線Ed及び境界線Eeによって区別される3つの領域Rd、Re、Rfのいずれに測定結果がプロットされるかによって、受診者の診断結果が決まる。例えば、測定点Pdは領域Rdの内側にプロットされるため、この結果を出した受診者の認知機能には問題がないと診断される。一方、測定点Pfは領域Rfの内側にプロットされるため、この結果を出した受診者の認知機能には深刻な問題があると診断される。
【0058】
推定部116は、検知部2により検知された受診者の頭部の位置に基づいて、この受診者の身長を推定する。例えば、検知部2に3D距離センサ又はステレオカメラを用いる場合、検知部2はマーカPvをxy平面に投影した位置に加えて、
図1に示す検知部2からマーカPvまでのz軸方向に沿った距離ΔLを検知する。推定部116は、この距離ΔLを、検知部2が配置されている高さLeから減算することで、受診者の身長Lhを推定すればよい。
【0059】
変換部117は、推定部116が推定した受診者の身長に応じて、第1特定部1101が特定した第1軌跡と、第2特定部1102が特定した第2軌跡とを変換する。この変換は、例えば第1軌跡及び第2軌跡のそれぞれの数値を受診者の身長で除算して標準身長を乗算することにより行われる。
【0060】
計数部118は、特定部110によって特定された第1軌跡及び第2軌跡から受診者が身体の平衡を崩した回数を計数する。計数部118は、受診者の第1軌跡及び第2軌跡の経時変化を、例えば時間で微分することにより変化の速度を算出し、閾値を超える速度で変化した回数を「身体の平衡を崩した回数」として計数する。
【0061】
図10は、受診者の第1軌跡及び第2軌跡の経時変化を説明する図である。例えば
図10の縦軸は、第1軌跡T1及び第2軌跡T2のそれぞれの位置(x方向又はy方向)であり、横軸は時間である。
【0062】
図10において経時変化が緩やかな期間は、受診者の身体のバランスが安定していて頭部又は重心がぐらついていない期間である。一方、急な変化が起きている期間St1、St2、St3は、受診者の身体のバランスが不安定で頭部又は重心がぐらついている期間である。計数部118は、このぐらつきの回数、つまり受診者が身体の平衡を崩した回数を数える。
図10に示した例では頭部又は重心のいずれか一方についての「ぐらつきの回数」は3回である。
【0063】
表示制御部115は、計数部118が数えた回数に応じて複数の領域を決定してもよい。すなわち、計数部118が計数したぐらつきの回数に応じて、r
a、k
a、r
b、k
b、q
d、h
d、q
e、h
e等のパラメータが決定されてもよい。
【0064】
1−6.表示装置の動作
図11は、表示装置1の動作の流れを説明するフロー図である。表示装置1の制御部11は、診断者(操作者)による操作部15を介した操作を受付けて、診断のモードを選択する(ステップS101)。診断のモードとは受診者に課せられる条件を示すものであり、例えば「開眼・両足立ち」(モード1)、「閉眼・両足立ち」(モード2)、「開眼・片足立ち」(モード3)、及び「閉眼・片足立ち」(モード4)である。
【0065】
診断のモードが選択されると制御部11は、受診者の頭部の動きを示す第1軌跡を特定し(第1特定:ステップS102)、受診者の重心の動きを示す第2軌跡を特定する(第2特定:ステップS103)。ステップS102及びステップS103の順序は逆でもよい。
【0066】
制御部11は、第1軌跡及び第2軌跡から受診者の姿勢を示す姿勢評価値を算出し(第1算出:ステップS104)、第1軌跡及び第2軌跡から受診者の平衡感覚を示すバランス評価値を算出する(第2算出:ステップS105)。ステップS104及びステップS105の順序は逆でもよい。これらの評価値の算出に用いるパラメータはステップS101で選択されたモードに応じて決定されてもよい。
【0067】
制御部11は、両足立ち又は片足立ちのいずれかの条件下で開眼及び閉眼の両方の条件で特定された第1軌跡及び第2軌跡が既に記憶されている場合に、開眼時及び閉眼時のそれぞれのバランス評価値の差を算出し(第3算出:ステップS106)、「笑顔を作って下さい」と呼び掛ける前後における受診者の表情の変化を評価した表情評価値を算出する(第4算出:ステップS107)。ステップS106及びステップS107の順序は逆でもよい。
【0068】
制御部11は、検知部2により検知された受診者の頭部の位置に基づいて、この受診者の身長を推定し(ステップS108)、推定されたその身長と決められた標準身長とを用いて各算出結果を変換する(ステップS109)。また、制御部11は、第1軌跡及び第2軌跡から受診者の身体がぐらついた回数を計数する(ステップS110)。
【0069】
制御部11は、選択したモードでの検知及び測定の回数が、規定回数に達したか否かを判定する(ステップS111)。上述した回数が規定回数に達していないと判定する場合(ステップS111;NO)制御部11は、制御をステップS102に戻す。
【0070】
一方、上述した回数が規定回数に達していると判定する場合(ステップS111;YES)、制御部11は、例えば、その規定回数分の評価値の相加平均値をそれぞれ診断用の評価値として算出する。そして制御部11は、運動機能及び認知機能に応じた複数の領域を表示部14に表示させるとともに、算出した診断用の各平均値に基づき、姿勢評価値とバランス評価値とで示される運動機能の診断結果と、バランス差評価値と表情評価値とで示される認知機能の診断結果とを表示部14にプロットし(ステップS112)、アドバイス表122から読み出したアドバイスの文言を印字する(ステップS113)。
【0071】
なお、表示装置1の制御部11は、特徴点が表示される領域に応じた運動機能の情報を表示部14に表示させてもよい。例えば、制御部11によって実現する表示制御部115は、受診者の姿勢評価値とバランス評価値とで定まる点が領域Raに位置している場合、診断結果として運動機能に問題がないことを示す「○」という記号を表示部14に表示させてもよい。
【0072】
以上の動作により、診断システム9の表示装置1は、運動機能に応じた複数の領域を表示するとともに、診断の結果に応じた点をこれら複数の領域のいずれかに表示させる。従って、この表示を見た利用者は、専門知識を有しなくても、受診者の運動機能についての診断結果を把握する。
【0073】
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0074】
2−1.変形例1
上述した実施形態において、表示装置1は、姿勢評価値及びバランス評価値の組によって示される座標面を、運動機能に応じた複数の領域に分割して表示しており、この領域を決めるパラメータを受診者に課せられる条件に応じて定めていたが、これらのパラメータはこの条件に関わらず固定されていてもよい。
【0075】
2−2.変形例2
上述した実施形態において、制御部11は、特定部110によって特定された第1軌跡及び第2軌跡をから受診者が身体の平衡を崩した回数を計数していたが、計数しなくてもよい。すなわち、制御部11は、計数部118として機能しなくてもよい。
【0076】
2−3.変形例3
上述した実施形態において、表示装置1の制御部11は、第3算出部113及び第4算出部114として機能していたが、表示装置1は受診者の認知機能についての診断をしなくてもよい。この場合、診断システム9は撮像部5を有しなくてもよい。
【0077】
2−4.変形例4
上述した実施形態において、推定部116は、検知部2により検知された受診者の頭部の位置に基づいて、この受診者の身長を推定していたが、受診者の身長を推定しなくてもよい。この場合、制御部11は、受診者の身長と標準身長とを用いて第1軌跡及び第2軌跡を変換しなくてもよい。すなわち、制御部11は、推定部116及び変換部117として機能しなくてもよい。
【0078】
2−5.変形例5
表示装置1の制御部11によって実行されるプログラムは、磁気テープや磁気ディスク等の磁気記録媒体、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリ等の、コンピュータ装置が読取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムを、インターネット等の通信回線経由でダウンロードさせることも可能である。なお、上述の制御部11によって例示した制御手段としてはCPU以外にも種々の装置が適用される場合があり、例えば、専用のプロセッサ等が用いられる。