特許第6888459号(P6888459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6888459
(24)【登録日】2021年5月24日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20210603BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20210603BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K3/04
   B60C1/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-143544(P2017-143544)
(22)【出願日】2017年7月25日
(65)【公開番号】特開2019-26653(P2019-26653A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 典大
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−123090(JP,A)
【文献】 特開平10−77363(JP,A)
【文献】 特開2015−206029(JP,A)
【文献】 特開2001−181534(JP,A)
【文献】 特開平5−230290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00〜101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレンゴムを60質量%以上含むゴム成分とカーボンブラックを含有するタイヤ用ゴム組成物であって、DBP吸油量(OAN)が133〜153cm3/100g、外部比表面積(STSA)が124〜144m2/g、かつ窒素吸着比表面積(N2SA)とヨウ素吸着量(IA)との比N2SA/IAが1.02〜1.16m2/mgであるカーボンブラックをカーボンブラック全体の25質量%以上含有するタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
DBP吸油量(OAN)が133〜153cm3/100g、かつ外部比表面積(STSA)が124〜144m2/gであるカーボンブラックが以下の特性をさらに有する、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物:
(1)窒素吸着比表面積(N2SA)が131〜151m2/g、
(2)ヨウ素吸着量(IA)が130〜150mg/g、
(3)STSA/IAが0.83〜1.11m2/mg、かつ
(4)N2SA/IAが1.02〜1.16m2/mg。
【請求項3】
ゴム成分100重量部に対するカーボンブラックの配合量が30〜70重量部である、請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラックのDBP吸油量(OAN)が140〜153cm3/100gである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分がさらにブタジエンゴムを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム成分とカーボンブラックとを含有し、耐摩耗性、低燃費性および加工性が改良されたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ用ゴム組成物の耐摩耗性を向上させるための方法としては、例えば、カーボンブラックの小粒径化、カーボンブラックの配合量の増加、カーボンブラック凝集体の高ストラクチャー化、カーボンブラック粒子表面の高活性化(表面官能基数の増大)等の方法が知られている。
【0003】
一方、タイヤのヒステリシスロスを低減し、低燃費性を改良するための方法としては、例えば、ゴム補強剤として使用するカーボンブラックの配合量の低減、カーボンブラックの大粒径化、カーボンブラック凝集体の低ストラクチャー化、シリカおよび界面活性剤の併用等の方法が知られている。
【0004】
上記のように、カーボンブラックの粒径やストラクチャー等の特性を制御することでタイヤの諸物性の向上を試みた場合、耐摩耗性と低燃費性とは二律背反の関係にあり、これらを両立することは困難であった。
【0005】
加えて、カーボンブラックの特性や配合量の調整、さらにはシリカ等の併用に伴い、タイヤの加工性が悪化する場合があり、これらのタイヤ特性をバランス良く向上することは非常に困難であった。
【0006】
これまでに、カーボンブラックの特性を最適化することにより、ゴム組成物の耐摩耗性と低燃費性を両立する試みがなされているが(例えば、特許文献1)、これに加工性の改良を加味すると、さらなる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−231179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐摩耗性、低燃費性および加工性が改良されたタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題解決のため鋭意検討した結果、所定のDBP吸油量(OAN)および外部比表面積(STSA)を有するカーボンブラックをタイヤ用ゴム組成物に配合することにより、耐摩耗性、低燃費性および加工性が改良されたタイヤ用ゴム組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
〔1〕ゴム成分とカーボンブラックを含有するタイヤ用ゴム組成物であって、DBP吸油量(OAN)が133〜153cm3/100g、かつ外部比表面積(STSA)が124〜144m2/gの特性を有する特殊カーボンブラックをカーボンブラック全体の25質量%以上含有するタイヤ用ゴム組成物、
〔2〕DBP吸油量(OAN)が133〜153cm3/100g、かつ外部比表面積(STSA)が124〜144m2/gであるカーボンブラックが以下の特性をさらに有する、〔1〕に記載のタイヤ用ゴム組成物:
(1)窒素吸着比表面積(N2SA)が131〜151m2/g、
(2)ヨウ素吸着量(IA)が130〜150mg/g、
(3)STSA/IAが0.83〜1.11m2/mg、かつ
(4)N2SA/IAが0.87〜1.16m2/mg、
〔3〕ゴム成分100重量部に対するカーボンブラックの配合量が30〜70重量部である、〔1〕または〔2〕に記載のタイヤ用ゴム組成物、
〔4〕ゴム成分中の、イソプレンゴムの含有量が50質量%以上である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、耐摩耗性、低燃費性および加工性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の構成について詳述する。
【0013】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分とカーボンブラックとを含有する。
【0014】
<ゴム成分>
本実施態様において使用されるゴム成分としては、ジエン系ゴムが好適に用いられる。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上のブレンドとして用いることができる。これらの例示したジエン系ゴムとしては、必要に応じて末端を水酸基、アミノ基等で変性したもの(例えば、末端変性BRや、末端変性SBR等)、あるいは所望の特性を付与すべく改質したもの(例えば、改質NR)も使用可能である。なかでも、耐久性、破断強度、湿熱劣化後の耐剥離性(湿熱耐剥離性)に優れるという理由から、イソプレンゴムが好ましい。
【0015】
ゴム成分中のイソプレンゴムの含有量は特に限定されないが、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0016】
本実施態様のゴム組成物には、例えば、分子構造中に少なくとも1種の金属配位能を有する官能基を含む複合材料等を配合してもよい。ここで、金属配位能を有する官能基としては、金属配位能を持つものであれば特に限定されず、例えば、酸素、窒素、硫黄等の金属配位性の原子を含む官能基が挙げられる。具体的には、ジチオカルバミン酸基、リン酸基、カルボン酸基、カルバミン酸基、ジチオ酸基、アミノ燐酸基、チオール基等が例示される。上記官能基は1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもよい。
【0017】
該官能基に対する配位金属としては、例えば、Fe,Cu,Ag,Co,Mn,Ni,Ti,V,Zn,Mo,W,Os,Mg,Ca,Sr,Ba,Al,Si等が挙げられる。例えば、このような金属原子(M1)を有する化合物が配合されかつ金属配位能を有する官能基(−COO等)を含む高分子材料では、各−COOM1が配位結合して多数の−COOM1が重なることにより、金属原子が凝集したクラスターが形成される。なお、上記金属原子(M1)の配合量としては、高分子材料中のポリマー成分100質量部に対して、0.01〜200質量部が好ましい。
【0018】
<カーボンブラック>
本実施態様において使用されるカーボンブラックのオイル吸収量(DBP吸油量(OAN))は133〜153cm3/100gであるため、耐摩耗性、低燃費性、および加工性をバランスよく両立することができる。DBP吸油量は、カーボンブラック凝集体のストラクチャーの指標となるものであり、DBP吸油量が133cm3/100g未満であると、カーボンブラック凝集体のストラクチャーが低すぎるため、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、DBP吸油量が153cm3/100gより大きいと、粘度上昇し加工性が悪化する傾向がある。DBP吸油量(OAN)は、好ましくは135cm3/100g以上、より好ましくは140cm3/100g以上である。また、該DBP吸油量は好ましくは150cm3/100g以下、より好ましくは145cm3/100g以下である。
【0019】
本実施態様において使用されるカーボンブラックの外部比表面積(STSA:統計的厚さ比表面積ともいう。)は124〜144m2/gであるため、耐摩耗性、低燃費性、および加工性をバランスよく両立することができる。STSAは、カーボンブラック粒子の粒径の指標となるものであり、STSAが124m2/g未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。またSTSAが144m2/gより大きいと、低燃費性能が悪化し、かつ、粘度上昇し加工性が悪化する傾向がある。カーボンブラックの外部比表面積(N2SA)は、好ましくは127m2/g以上、より好ましくは130m2/g以上である。また、該カーボンブラックの外部比表面積(N2SA)は好ましくは142m2/g以下、より好ましくは140m2/g以下である。
【0020】
カーボンブラックとしては、前記に規定したカーボンブラック(以下、必要に応じて「特殊カーボンブラック」という。)を単独で使用してもよく、他種のカーボンブラックをブレンドして使用してもよい。本実施態様において使用する特殊カーボンブラックは、カーボンブラック全体の25質量%以上、好ましくは50質量%以上含有することが好ましい。25質量%未満であると、本実施態様において使用する特殊カーボンブラックの性能を十分に発揮できないという問題がある。
【0021】
他種のカーボンブラックとしては、ゴム用として一般的なものを適宜利用することができる。具体的にはN110,N115,N120,N125,N134,N135,N219,N220,N231,N234,N293,N299,N326,N330,N339,N343,N347,N351,N356,N358,N375,N539,N550,N582,N630,N642,N650,N660,N683,N754,N762,N765,N772,N774,N787,N907,N908,N990,N991等を好適に用いることができ、これ以外にも自社合成品等も好適に用いることができる。
【0022】
カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は、30質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましい。30質量部未満であると、十分な補強性が得られず、耐久性が悪化する恐れがある。また、カーボンブラックの含有量は、70質量部以下が好ましく、65質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。70質量部より大きいと、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0023】
前記特殊カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、131m2/g以上が好ましく、133m2/g以上がより好ましく、135m2/g以上がさらに好ましい。N2SAが131m2/g未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、窒素吸着比表面積は、151m2/g以下が好ましく、149m2/g以下がより好ましく、147m2/g以下がさらに好ましい。151m2/gより大きいと、低燃費性が悪化し、かつ、粘度上昇し加工性が悪化する傾向がある。
【0024】
前記特殊カーボンブラックのヨウ素吸着量(IA)は、130mg/g以上が好ましく、132mg/g以上がより好ましく、134mg/g以上がさらに好ましい。N2SAが131m2/g未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、ヨウ素吸着量は、150mg/g以下が好ましく、148mg/g以下がより好ましく、146mg/g以下がさらに好ましい。150mg/gより大きいと、低燃費性能が悪化し、かつ、粘度上昇し加工性が悪化する傾向がある。
【0025】
前記特殊カーボンブラックの外部比表面積(STSA)とヨウ素吸着量(IA)との比は、カーボンブラック粒子の表面活性の指標となるものである。STSA/IAは、0.83m2/mg以上が好ましく、0.85m2/mg以上がより好ましく、0.87m2/mg以上がさらに好ましい。N2SAが0.83m2/mg未満であると、耐摩耗性および/または低燃費性が悪化する傾向がある。また、STSA/IAは、1.11m2/mg以下が好ましく、1.08m2/mg以下がより好ましく、1.05m2/mg以下がさらに好ましい。1.11m2/mgより大きいと、スコーチタイムが早くなり、押出工程での加工性が悪化する傾向がある。
【0026】
前記特殊カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)とヨウ素吸着量(IA)との比は、カーボンブラック粒子の表面活性の指標となるものである。N2SA/IAは、0.87m2/mg以上が好ましく、0.90m2/mg以上がより好ましく、0.93m2/mg以上がさらに好ましい。N2SAが0.87m2/mg未満であると、耐摩耗性および/または低燃費性が悪化する傾向がある。また、STSA/IAは、1.16m2/mg以下が好ましく、1.13m2/mg以下がより好ましく、1.10m2/mg以下がさらに好ましい。1.16m2/mgより大きいと、スコーチタイムが早くなり、押出工程での加工性が悪化する傾向がある。
【0027】
上記カーボンブラックの特性評価項目のうち、DBP吸油量(OAN)はJIS K 6217−4、外部比表面積(STSA)および窒素吸着比表面積(N2SA)はJIS K 6217−7、ヨウ素吸着量(IA)はJIS K 6217−1に準拠してそれぞれ測定したものである。
【0028】
<その他の配合剤>
本実施形態で作製されるゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、シリカ等の補強用充填剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、オイル、ワックス、加硫剤、加硫促進剤、架橋剤等を適宜配合することができる。
【0029】
充填剤としては、例えばmM2・xSiOy・zH2O(式中、M2はアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、チタンおよびジルコニウムよりなる群より選択された少なくとも1種の金属、又は該金属の酸化物、水酸化物、水和物若しくは炭酸塩を示し;mは1〜5、xは0〜10、yは2〜5、zは0〜10の範囲の数値を示す。)で表される充填剤等が挙げられる。
【0030】
上記mM2・xSiOy・zH2Oで表される充填剤の具体例としては、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、アルミナ(Al23、Al23・3H2O)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4(SiO23・5H2O等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、酸化カルシウム(CaO)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、酸化マグネシウム(MgO)、タルク(MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TinO2n-1)等が挙げられる。このような充填剤を含むゴム組成物では、充填剤が凝集したクラスターが形成される。なお、上記充填剤の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、10〜200質量部が好ましい。
【0031】
シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン等のビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン等のニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロ系等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。
【0032】
老化防止剤としては特に限定されず、ゴム分野で使用されているものが使用可能であり、例えば、キノリン系、キノン系、フェノール系、フェニレンジアミン系等の老化防止剤が挙げられる。
【0033】
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0034】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又はキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、チアゾール系が好ましく、スルフェンアミド系、チアゾール系を併用することがより好ましい。
【0035】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
【0036】
スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜2.5質量部がより好ましい。
【0037】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2−メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0038】
チアゾール系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜3質量部が好ましく、0.2〜1質量部がより好ましい。
【0039】
本実施形態において使用されるゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロール等で前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造することができる。
【実施例】
【0040】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
IR:日本ゼオン(株)製のニッポールIR2200
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B
汎用カーボンブラック:キャボットジャパン社製ショウブラックN234
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)(6PPD)
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0042】
<カーボンブラックの調製>
カーボンブラック(CB)1〜5は、ファーネスプロセス(J.B.Donnet、R.C.Bansal、M.J.Wang、「Carbon Black」、SCIENCE AND TECHNOLOGY、2nd Edition、Marcel Dekker、NY、1993;および、M.J.Wang、C.A.Gray、S.A.Reznek、K.Mahmud、Y.Kutsovsky、「Carbon Black」in KIRK−OTHMER ENCYLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY、John Willey&Sons、2005、4、761)に記載の方法に準じて調製した。カーボンブラックの諸元表は表1のとおりである。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例および比較例
表2に示す配合に従い、3Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を加えた後、オープンロールを用いて、80℃で5分間混練りし、各実施例および各比較例に係る配合の未加硫ゴム組成物を得た。さらに、得られた未加硫ゴム組成物を140℃の条件下で50分間プレス加硫し、各試験用ゴム組成物を得た。
【0045】
得られた未加硫ゴム組成物および試験用ゴム組成物について下記(1)〜(3)の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0046】
(1)ムーニー粘度指数
各未加硫ゴム組成物について、JIS K 6300−1の「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度およびスコーチタイムの求め方」に準じて、ムーニー粘度試験機を用いて、1分間の余熱によって熱せられた130℃の温度条件にて、小ローターを回転させ、4分間経過した時点での上記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4/130℃)を測定した。結果は、実施例1のムーニー粘度指数を100とし、下記計算式による指数で示した。ムーニー粘度指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。なお、90以上を性能目標値とする。
(ムーニー粘度指数)=(実施例1のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
【0047】
(2)低燃費性指数
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、各試験用ゴム組成物の動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度60℃でtanδを測定した。結果は、実施例1の低燃費性指数を100とし、下記計算式による指数で示した。低燃費性指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性能が高いことを示す。なお、90以上を性能目標値とする。
(低燃費性指数)=(実施例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0048】
(3)耐摩耗性指数
ランボーン型摩耗試験機を用いて、各試験用ゴム組成物の室温、負荷荷重1.0kgf、スリップ率30%の条件における摩耗量を測定した。摩耗量の逆数を、実施例1を100として指数表示をした。数値が大きいほど耐摩耗性能が高いことを示す。なお、90以上を性能目標値とする。
(耐摩耗性指数)=(各配合の摩耗量の逆数)/(実施例1の摩耗量の逆数)×100
【0049】
【表2】
【0050】
表2の結果より、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加工性、低燃費性能および耐摩耗性能がバランスよく優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、耐摩耗性、低燃費性および加工性に優れる。