【実施例】
【0042】
以下では、提示制御装置及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、提示制御装置が呼吸音モニタリング装置に適用される場合を例にとり説明する。
【0043】
<装置構成>
先ず、本実施例に係る呼吸音モニタリング装置の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、実施例に係る呼吸音モニタリング装置の構成を示すブロック図である。
【0044】
図1において、本実施例に係る呼吸音モニタリング装置10は、信号音取得部110と、信号解析部120と、呼気吸気判定部130と、表示制御部140と、表示部150とを備えて構成されている。
【0045】
信号音取得部110は、例えば電子聴診器を含んで構成されており、生体が発する呼吸音を示す呼吸音信号を取得可能に構成されている。信号音取得部110で取得された呼吸音信号は、信号解析部120及び呼気吸気判定部130にそれぞれ出力される構成となっている。なお、信号音取得部110は、「生体音取得部」の一具体例であり、呼吸音信号は「生体音情報」の一具体例である。
【0046】
信号解析部120は、信号音取得部110から入力される呼吸音信号に対して、各種解析処理(例えばスペクトラム解析処理)を実行可能に構成されている。信号解析部120の解析結果は、表示制御部140に出力される構成となっている。
【0047】
呼気吸気判定部130は、信号音取得部110から入力される呼吸音信号の、吸気期間及び呼気期間をそれぞれ判定可能に構成されている。呼気吸気判定部130の判定結果は、表示制御部140に出力される構成となっている。
【0048】
表示制御部140は、信号解析部120の解析結果及び呼気吸気判定部130の判定結果に基づいて、生体の肺の状態を表示させるための制御を行う。具体的には、表示制御部140は、肺の状態に関する表示態様を決定して、決定した表示態様で画像表示を行うための制御信号を表示部150に出力する。なお、表示制御部140は、「制御部」の一具体例である。
【0049】
表示部150は、例えば液晶ディスプレイ等のモニタとして構成されており、表示制御部140から入力される制御信号に応じた画像を表示する。なお、表示部150は、「提示手段」の一具体例である。
【0050】
なお、本実施例では、肺の状態を画像表示する装置について説明するが、画像以外の方法を用いて肺の状態を提示しても構わない。具体的には、肺の状態を提示する方法として、肺の模型を動かすような方法が用いられてもよい。
【0051】
<動的表示制御>
次に、本実施例に係る呼吸音モニタリング装置10で実施される動的表示制御について、
図2から
図5を参照して説明する。
図2は、実施例に係る呼吸音モニタリング装置による動的表示制御の流れを示すフローチャートであり、
図3は、呼吸音の取得方法の一例を示す概略図である。
図4は、呼吸音信号の解析処理の一例示す概念図であり、
図5は、呼吸音信号における吸気期間及び呼気期間の判別方法の一例を示す概念図である。
【0052】
図2において、本実施例に係る呼吸音モニタリング装置10の動作時には、先ず信号取得部110によって、生体の呼吸音を示す呼吸音信号が取得される(ステップS101)。
【0053】
図3に示すように、呼吸音信号は、生体200に信号取得部110を接触させて取得される。信号取得部110で取得された呼吸音信号は、信号解析部120、呼気吸気判定部130、表示制御部140、及び表示部150を含む装置本体部50に出力される。呼吸音信号は、図に示すように、呼吸音の振幅(強度)の経時的な変化を示す信号として取得される。
【0054】
図2に戻り、呼吸音信号が取得されると、呼気吸気判定部120によって、吸気期間及び呼気期間の判定が行われる(ステップS102)。即ち、呼吸音信号のどの部分が吸気期間に対応しており、どの部分が呼気期間に対応しているのか判定が行われる。
【0055】
図5に示すように、吸気期間には吸気極大値が存在しており、呼気期間には呼気極大値が存在している。平均的な呼吸音周期は4〜5秒程度であるので、例えば10msec毎に平均化して得られたデータを利用して閾値処理を行い、吸気極大値及び呼気極大値及びそれぞれ極大値前の振幅増加変化点を検出すれば、吸気期間及び呼気期間を判定することが可能である。なお、吸気期間及び呼気期間の判定には、既存の他の技術を適用することもできる。
【0056】
再び
図2に戻り、上述した呼気吸気判定に並行して、或いは相前後して、信号解析部120では、呼吸音信号の解析処理が実行される(ステップS103)。即ち、呼吸音信号から肺に関する情報を得るための各種解析処理が実行される。
【0057】
図4に示すように、信号解析部120では、例えばスペクトラム解析(時間周波数解析)が実行される。このような解析によれば、呼吸音に含まれる周波数成分の経時的な変化を示すスペクトラムを得ることができる。スペクトラムからは、図に示すように呼吸音に含まれる異常音(例えば、笛声音、捻髪音、水泡音、類鼾音等)の検出が行える。
【0058】
再び
図2に戻り、呼気吸気判定及び解析処理が終了すると、表示部制御部140において、呼吸音を発する肺の状態を表示する際の具体的な表示態様が決定される(ステップS104)。そして、表示制御部140で決定された表示態様に応じた表示が、表示部150で行われる(ステップS105)
以下では、上述した動的表示制御による具体的な表示例について、
図6から
図8を参照して詳細に説明する。
図6は、呼吸表示画面の表示例を示す平面図である。また
図7及び
図8は夫々、吸気量に応じた動的表示の一例を示す概念図である。
【0059】
図6に示すように、表示部150には、生体200の肺の状態を示す画像が表示される。本実施例に係る呼吸音モニタリング装置10では特に、このような画像が動的に表示される。即ち、呼吸音信号に応じて、肺を示す画像が動くように表示される。
【0060】
図7に示すように、肺の画像は、肺に含まれている空気量(即ち、吸気量・呼気量)に応じて肺の大きさが変わるように表示される。具体的には、吸気期間の開始時点では、吸気量が最小となるため、肺が小さく表示される。その後、吸気期間がある程度経過し吸気量が中程度になると、肺が中程度の大きさのものとして表示される。そして、吸気量が最大となると、肺が大きく表示される。即ち、吸気期間中は、肺が徐々に膨らむような表示が行われる。一方で、吸気期間が終了し呼気期間が開始されると、肺に含まれる空気量は少なくなっていく。このため、呼気期間には、肺が徐々に萎んでいくような画像が表示される。
【0061】
図8に示すように、肺の大きさに加えて、肺の色及び濃淡が変更されてもよい。例えば、吸気期間と呼気期間とで肺が相異なる色で表示され、吸気量に応じて色の濃淡が変化するように表示されてもよい。
【0062】
図に示す例では、吸気期間においては肺が赤色で表示され、呼気期間においては肺が青色で表示される。また、吸気量が少ない場合には薄い色で表示され、吸気量が多い場合には濃い色で表示される。このように色及びその濃淡を変化させることで、より容易に肺の状態を判別することが可能となる。
【0063】
肺に含まれている空気量からは、例えば無呼吸状態(胸部が動いているように見えるが、実際には空気が肺に送られていない状態)等を判別することができる。
【0064】
<左右差及び異常音表示制御>
次に、本実施例に係る呼吸音モニタリング装置10で実施される左右差及び異常音表示制御について、
図9から
図12を参照して説明する。
図9は、実施例に係る呼吸音モニタリング装置による左右差及び異常音表示制御の流れを示すフローチャートであり、
図10は、呼吸音の取得箇所及び順序の表示例を示す平面図である。
図11は、肺の左右差の表示例を示す平面図であり、
図12は、異常音検出箇所の表示例を示す平面図である。
【0065】
図9において、呼吸音モニタリング装置10では、上述した動的表示と併せて、肺の左右差(左の肺と右の肺との呼吸の大きさの違い)、及び異常音の検出箇所を示す制御が行われる。
【0066】
左右差及び異常音表示制御では、生体200の複数箇所から生体音を取得することが求められる。このため、制御が開始されると、まず呼吸音を取得すべき箇所が表示部150で表示される(ステップS201)。
【0067】
図10に示すように、呼吸音を取得すべき箇所の一例は、生体の画像上に表示されたマーク(丸印)で示される。なお、マーク内の数字は、呼吸音を取得する順番であってもよい。呼吸音を取得する医師等は、この順番通りに生体200から呼吸音を取得していく。なお、現時点での呼吸音を取得すべき箇所については、マークが強調表示される(図中の2番を参照)。
【0068】
図9に戻り、表示されている位置で呼吸音信号が取得されると(ステップS202)、呼吸音の吸気極大値が検出される(ステップS203)。即ち、
図5で示したような吸気期間における振幅のピーク値が検出される。また、呼吸音信号からは、異常音も検出される(ステップS204)。即ち、
図4で示したような解析処理によって、呼吸音に含まれている異常音が検出される。
【0069】
吸気極大値及び異常音の検出が終了すると、呼吸音を取得すべき全ての箇所において呼吸音信号が取得されたか否かが判定される(ステップS205)。呼吸音が全ての箇所で取得されていない場合には(ステップS205:NO)、次の取得箇所について、ステップS201の処理が繰り返される。
【0070】
一方、呼吸音が全ての箇所で取得されている場合には(ステップS205:YES)、各箇所の吸気極大値情報、肺への空気流入量(吸気開始から吸気終了期間の呼吸音振幅レベルの絶対値の積分値等)等の参照情報データが比較されることで、肺の左右差が算出される(ステップS206)。また、各箇所の異常音の音量(振幅)が比較されることで、異常音の最大箇所が検出される(ステップS207)。そして、算出された左右差及び異常音の最大箇所が、表示部150において表示される(ステップS208)。
【0071】
図11に示すように、肺の左右差は、左の肺及び右の肺の大小をそれぞれ変化させることで表示される。図に示す例では、右の肺(図では左側)が左の肺(図では右側)よりも小さく表示されている。これは、右の肺の吸気極大値、空気流入量等が左の肺の吸気極大値、空気流入量等よりも小さいことを示している。このように、肺の左右差が生じている場合には、例えば肺の一方に穴が空いている等の診断が行える。
【0072】
図12に示すように、異常音最大箇所は、異常音の発生箇所として画面上に表示される。このように異常音の発生箇所を明確に表示することができれば、生体200の病状をより正確に診断することが可能である。
【0073】
なお、上述した例では、複数箇所の検出結果を用いて1つの結果を表示させる場合について説明したが、複数箇所の各々における検出結果が、それぞれ別々に表示されるようにしてもよい。
【0074】
<実施例の効果>
以上説明したように、本実施例に係る呼吸音モニタリング装置10によれば、生体200から取得した呼吸音情報に基づいて、肺の状態を視覚的に分かり易い態様で表示させることが可能である。これにより、例えば医療現場での診断等が極めて好適に行えるようになる。
【0075】
なお、本実施例では呼吸音を発する肺の状態を示す装置について説明したが、音を発する臓器であれば同様の表示を実現可能である。
【0076】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う及び方法、並びにコンピュータプログラム及び記録媒体もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。