(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る電池の製造方法では、
図1に例示するように、所定の造形領域(加工範囲)に、粉体状、液体状又はペースト状の材料の吐出と固化とを繰り返して立体形状を造形する材料積層装置(いわゆる3Dプリンタ)が用いられる。
【0012】
この材料積層装置としては、液状の結合剤を粉末床に噴射して選択的固化を実現する結合剤噴射方式、材料を供給しつつビーム等で熱の発生位置を制御し、材料を選択的に溶融・固化(結合)させる指向性エネルギー堆積方式、流動性のある材料をノズルから押し出して、堆積させつつ固化させる材料押出方式、材料液滴を噴射し、選択的に堆積して固化する方法(インクジェット法等)を用いた材料噴射方式、粉末を敷いた領域を熱エネルギーによって選択的に溶融結合(固化)させる粉末床溶融結合方式、その他、シート積層方式、光重合方式等があるが(「平成25年度 特許出願技術動向調査報告書 3Dプリンター」,特許庁刊)、ここではそのどの方式のものであっても構わない。
【0013】
本発明は、材料積層装置を用いて電池外装を形成する工程を含み、電池の外装を構成する材料としては、電解液(電解質および溶媒)に対して耐久性の高い材料であれば特に制限はないが、ポリフェニルスルホン(PPSF)樹脂、架橋度の高いアクリレート系の光硬化性樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ABS樹脂及びPJP(植物由来プラスチック)樹脂から選択して用いることが好ましい。前記の電池の外装を構成する材料は、選択した材料に応じて異なる方式の材料積層装置10を用いることができる。例えば、上記アクリレート系の光硬化性樹脂を採用するのであれば、光重合方式を用いた材料積層装置10を用いる。また、ABS樹脂及びPJP(植物由来プラスチック)樹脂を用いるのであれば、粉末床溶融結合方式を用いた材料積層装置10を用い、ポリフェニルスルホン樹脂等の高耐熱樹脂を用いる場合には、粉末状の樹脂に液状の結合剤を噴射して選択的固化を実現する結合剤噴射方式を用いることができる。
【0014】
本実施の形態の電池の製造方法では、第1極集電体11、正極活物質12、セパレータ13、負極活物質14及び第2極集電体15が予め用意される。第1極集電体および第2極集電体(以下区別の必要のない場合は集電体と総称する)は、後述する第1の外装部および第2の外装部にそれぞれ内包される形状の主部を有し、さらにそれぞれの主部は、集電体に電気的に接続され、外部に電流を取り出す電流取り出し部(タブ部ともいう)を有する。なお、電流取り出し部は集電体と一体に形成されていても、異なる部材を電気的に接続しているものであっても良い。
【0015】
第1極集電体11及び第2極集電体15は、金属集電体や樹脂集電体を用いることができ、それぞれ公知の金属集電体並びに日本国特許公開第2012−150905号公報及び国際公開第WO2015/005116号等に記載の公知の樹脂集電体等を用いることができる。
【0016】
金属集電体としては、リチウムイオン電池に一般に使用する金属集電体を用いることができ、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン、およびこれらの一種以上を含む合金、ならびにステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属等からなる集電体を用いることができる。
【0017】
金属集電体の形状は、薄板状、金属箔状及びメッシュ状のいずれであってもよく、金属集電体の表面にさらにスパッタリング、電着、塗布等の手法により別の金属層が形成されたものであってもよい。
【0018】
樹脂集電体としては、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に導電性を付与した高分子を基材とした集電体を用いることができる。
【0019】
導電性高分子材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル及びポリオキサジアゾール等が挙げられる。なお、導電性の高分子材料を含む樹脂集電体の導電性を向上させる目的から、さらに後述する導電性フィラーを含んでいることが好ましい。
【0020】
非導電性高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0021】
非導電性高分子材料としては、電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、より好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0022】
非導電性高分子材料に導電性を付与した高分子は、非導電性高分子材料と導電性フィラーとを混合することで得ることができ、導電性フィラーは、導電性を有する材料から得られるフィラーから選択される。好ましくは、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から得られるフィラーからを用いるのが好ましい。具体的には、カーボン材料、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ニッケル及びステンレス(SUS)等の合金材等から得られるフィラーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なかでも耐食性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン材料又はニッケルから得られるフィラー、より好ましくはカーボン材料から得られるフィラーである。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。なお、導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに、上記で示される金属をメッキ等でコーティングしたものを用いることもできる。
【0023】
導電性フィラーの形状は粒子状、繊維状及びこれらの凝集体のいずれの形状であってもよい。
【0024】
樹脂集電体は、日本国特許公開第2012−150905号公報及び国際公開第WO2015/005116号等に記載の公知の方法で得ることができ、具体例としては、ポリプロピレンに導電性フィラーとしてアセチレンブラックを5〜20部分散させた後、熱プレス機で圧延したもの等が挙げられる。また、その厚みも特に制限されず、公知のものと同様、あるいは適宜変更して適用することができる。
【0025】
正極集電体7及び負極集電体8は、金属集電体又は樹脂集電体をそのまま用いても、その表面に後述する導電層を形成したものを用いてもよく、電池特性等の観点から、導電層を形成した金属集電体又は樹脂集電体であることが好ましい。
【0026】
正極活物質組成物12は、正極活物質粒子と電解液とを混合して得られる。ここで正極活物質粒子としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2及びLiMn
2O
4)、遷移金属酸化物(例えばMnO
2及びV
2O
5)、遷移金属硫化物(例えばMoS
2及びTiS
2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリフッ化ビニリデン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン及びポリカルバゾール)等を用いることができる。
【0027】
また、負極活物質組成物14は、当該負極活物質粒子を電解液と混合して得られる。ここで負極活物質粒子としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、スズ、シリコン、及び金属合金(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金及びリチウム−アルミニウム−マンガン合金等)、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLi
4Ti
5O1
2等)等がある。
【0028】
本実施の形態においては、正極活物質組成物12及び負極活物質組成物14にそれぞれ含まれる正極活物質粒子および負極活物質粒子は、それぞれその表面の少なくとも一部が被覆用樹脂及び導電助剤を含む被覆剤で被覆されてなる被覆活物質粒子であることが好ましい。
【0029】
活物質粒子の周囲が被覆剤で被覆されていると、充放電時に生じる電極の体積変化が緩和され、充放電を繰り返すことによる電極の劣化を抑制することができる。また、PVdF等のバインダーを用いて結着させることなく電極を形成することができるため、前記第1の枠部に囲まれた領域内に、第1の電極活物質と電解液とを含んでなる第1の電極活物質組成物を充填する工程と、前記第2の枠部に囲まれた領域内に、第2の電極活物質と電解液とを含んでなる第2の電極活物質組成物を充填する工程とを行うことが容易になり好ましい。
【0030】
なお、バインダーを添加しないことによって、活物質が電極内に固定化されないため電極活物質の体積変化に対する緩和能力がさらに良好となる効果も有し、好ましい。
【0031】
被覆用樹脂としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの中ではビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂が好ましい。
【0032】
被覆剤に含まれる導電助剤としては、導電性を有する材料から選択して用いることができる。
【0033】
導電性を有する材料としては、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、導電性カーボン[カーボンナノファイバー、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ケッチェンブラック(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック、カーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブ等)、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、ハードカーボン及びフラーレン等]及びこれらの混合物等があるが、これらに限定されない。
【0034】
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物が用いられてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及び導電性カーボンであり、さらに好ましくは導電性カーボンである。
【0035】
また導電助剤としては、粒子系セラミック材料、樹脂材料等の非導電性材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をメッキ等でコーティングしたもの及び非導電性材料と導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)とを混合したものも用いることができる。
【0036】
また、導電助剤として合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、合繊繊維等の有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維等を用いることもできる。
【0037】
被覆剤に含まれる被覆用樹脂と導電助剤との重量比は、被覆用樹脂:導電助剤=100:1〜100:200が好ましく、さらに好ましくは100:5〜100:100である。この範囲にあると正極活物質層5及び負極活物質層6の導電性が良好となる。
【0038】
被覆活物質粒子は、例えば、活物質粒子を万能混合機に入れて30〜500rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂を含む樹脂溶液を1〜90分かけて滴下混合し、さらに導電助剤を混合し、撹拌したまま50〜200℃に昇温し、0.007〜0.04MPaまで減圧した後に10〜150分保持することにより得ることができる。
【0039】
被覆活物質粒子が得られたことは、走査型電子顕微鏡等を用いて得られた被覆活物質粒子の拡大観察画像を観察することで確認することができる。
【0040】
また、正極活物質粒子または負極活物質粒子を、電解液と混合して正極活物質組成物12または負極活物質組成物14とする場合、電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する電解液を使用することができる。
【0041】
電解質としては、通常のリチウムイオン電池用電解液に用いられているもの等が使用でき、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6及びLiClO
4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2及びLiC(CF
3SO
2)
3等の有機酸のリチウム塩等がある。これらのうち、電池出力及び充放電サイクル特性の観点からはLiPF
6が好ましい。
【0042】
また非水溶媒としては、通常のリチウムイオン電池用電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。この非水溶媒は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上の非水溶媒を併用してもよい。
【0043】
上記の非水溶媒の例のうち、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、より好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、さらに好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。特に好ましいのはプロピレンカーボネート(PC)、またはプロピレンカーボネートとエチレンカーボネート(EC)の混合液である。
【0044】
電解液に含まれる電解質の濃度は、電解液の容量に基づいて0.1〜3mol/Lが好ましく、0.5〜2mol/Lがより好ましい。
【0045】
本発明において正極活物質層12及び負極活物質層14は、イオン抵抗を低減できる等の観点からそれぞれ前記の被覆活物質粒子とともに繊維状導電性フィラーを含むことが好ましい。繊維状導電性フィラーとしては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維のなかでも炭素繊維が好ましい。
【0046】
正極活物質層12及び負極活物質層14に繊維状導電性フィラーを含む場合、繊維状導電性フィラーの割合は、被覆活物質粒子の重量に基づいて0.5〜5重量%であることが好ましい。
【0047】
正極活物質層12及び負極活物質層14の厚さは、200μm以上であることが好ましい。より好ましくは500μm以上、さらに好ましくは1000μm以上である。この厚さ以上であると、単位体積あたりの活物質量が多くなり、蓄電容量が大きい電池とできる。
【0048】
正極活物質組成物12及び負極活物質組成物14において、活物質粒子及び導電助剤を、その合計重量が電解液の重量に基づいて10〜60重量%の濃度で含有することが好ましい。
【0049】
また、正極活物質組成物12及び負極活物質組成物14がさらに熱または光硬化性化合物を含有することも好ましい。正極活物質組成物12及び負極活物質組成物14がさらに熱または光硬化性化合物を含有する場合、正極活物質組成物12及び負極活物質組成物14をそれぞれ所定の領域に充填した後、さらに加熱または紫外線照射を行うことによって正極活物質組成物12及び負極活物質組成物14をゲル化させることができる。正極活物質組成物12及び負極活物質組成物14をゲル化すると、セパレータの配置及び集電体の配置が容易になり好ましい。
【0050】
さらに本実施の形態では、所望の形状に切断されたセパレータ13が用意される。このセパレータ13としては、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂及びポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等)製の多孔性フィルム、多孔性フィルムの多層フィルム(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体等)、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)及びガラス繊維等からなる不織布並びにこれらの表面にシリカ、アルミナ及びチタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用セパレータ等を用いることができる。このセパレータ13の形状については後に述べる。
【0051】
以上の用意の下、本実施の形態では次の工程により電池を製造する。
【0052】
本実施の形態では
図1に例示するように、まず第1極集電体11を配した電池外装の下部21が形成され(
図1、工程aから工程c)、第1の電極組成物(例えば正極活物質12を含む)を充填し(工程d)、セパレータ13を配する(工程e)。そして、第2極集電体15を配した電池外装の上部22が、第2の電極組成物(例えば負極活物質14を含む)を内包させつつ形成される(工程fから工程j)。これにより、電池外装20により、第1極集電体11、正極活物質12の層、セパレータ13、負極活物質14の層及び第2極集電体15が積層されてなる積層体が封じられる。
【0053】
さらに詳細に
図1の例では、まず、所定の造形領域に、電池外装20を形成する前記の材料を材料積層装置10を用い、電池外装下部21の底部21a(第1の外装部材に相当)を形成する(
図1:工程a)。ここで底部21aの形状は、電池形状として所望の形状に合わせておく。例えば電池形状を、底面がハート型の柱状体とする場合、底部21aをハート型の平板状とする。
【0054】
次に、第1極集電体11がこの底部21a上に配される(
図1:工程b)。第1極集電体11は、
図4に例示するように、底部21aの形状(所定形状)に内包される位置に配される(突出する箇所がないように重ね合わせられる)主部11aと、主部11aの周縁部の少なくとも一部から外側へ延伸され(
図4の例では凸状をなす)、底部21aより外側へ突出するよう配されるタブ部11bとを有する。なお、
図4では、第1極集電体11,セパレータ13,第2極集電体15を重ねて図示しているため、第1極集電体11(及びセパレータ13)の外形が一部隠されているが、当該隠された部分は破線で示している。
【0055】
次に、第1極集電体11の主部の周縁部(主部11aの外周縁から所定長さの範囲、主部11a全体を覆わないものとする)に、材料積層装置10を用いて、前記第1極集電体上に配置した前記第1極集電体の主部の周縁部を前記第1の外装部との間で挟み込むことで前記第1の外装部上に固定する第1の枠部[電池外装下部21の枠部(枠体下部に相当)]21bを形成する(
図1:工程c)。
図1は、第1極集電体11の中心部を通る面で破断した断面を図示しているため、枠部21bの間には空間が生じているが、枠部21bは、第1極集電体11の周縁部を全周に亘って封止(底部21aと枠部21bとで挟み込むように)しており、ここでは実質的に柱状の空間が生じていることとなる。
【0056】
そして第1極集電体11の周縁部に配した枠部21bにて囲まれた領域(上記柱状の空間)内に、第1の電極活物質(例えば正極活物質12)と電解液とを含んでなる第1の電極組成物を充填する(
図1:工程d)。
【0057】
次に、外装下部21上(枠部21b上)に、セパレータ13をその周縁部が前記第1の枠部に重なるように位置決めして配する(
図1:工程e)。ここでセパレータ13は、少なくとも前記第1の枠部の内縁で囲まれた領域を覆い、前記第1の枠部の外縁で囲まれた領域に内包される形状を有し、例えば第1極集電体11の主部11aと相似形状、または、枠部21bとの間に隙間を生じない形状としておく。このセパレータ13により第1の電極組成物が封じられる。
【0058】
次に、セパレータ13の周縁部(セパレータ13の外周縁から所定長さの範囲、セパレータ13全体を覆わないものとする)に、材料積層装置10を用いて、前記セパレータの周縁部を前記第1の枠部との間で挟み込むことで前記第1の枠部上に固定する第2の枠部[電池外装上部22の枠部(枠体に相当)]22aを形成する(
図1:工程f)。この工程では、枠部21bと平面視では同形状となるように(つまり第1の外装部材上に)枠部22aを形成してよい。
【0059】
図1は、第1極集電体11やセパレータ13の中心部を通る面で破断した断面を図示しているため、枠部22aの間には空間が生じているが、枠部22aは、セパレータ13の周縁部を全周に亘って封止(枠部22aと枠部21bとで挟み込むように)しており、ここでは実質的に柱状の空間が生じていることとなる。
【0060】
そしてセパレータ13の周縁部に配した枠部22aにて囲まれた領域(上記柱状の空間)内に、第2の電極活物質(例えば負極活物質14)と電解液とを含んでなる第2の電極組成物を充填する(
図1:工程g)。
【0061】
次に、第2極集電体15が当該主部の周縁部が前記第2の枠部22aに重なるように位置決めして、この枠部22a上に配される(
図1:工程h)。第2極集電体15は、枠部22aにその周縁部が支持されるよう配される。この第2極集電体15は、少なくとも前記第2の枠部の内縁で囲まれた領域を覆い、前記第2の枠部の外縁で囲まれた領域に内包される形状を有し、主部15aと、主部15aの周縁部の少なくとも一部から外側へ延伸され(一例では凸状をなし)、枠部22aより外側へ突出するよう配されるタブ部15bとを有する。一例として、この第2極集電体15は第1極集電体11と同形状のものであって、枠部22aとの間に隙間を生じない形状としておく。この第2極集電体15により第2の電極組成物が封じられる。
【0062】
そして次に、少なくとも前記第2極集電体の主部を覆う形状を有する第2の外装部として、第2極集電体15上に、材料積層装置10を用いて、電池外装上部22の平面部22b(第2の外装部材に相当する。また枠部21b,22aが第1の外装部材及び第2の外装部材の間に配された枠体に相当する)を形成する(
図1:工程i)。このように電池外装下部21と電池外装上部22とにより電池外装20が形成され、第1極集電体11、正極活物質12の層、セパレータ13、負極活物質14の層及び第2極集電体15が積層されてなる積層体が封止され、単電池セルを内包する電池外装とを有するリチウムイオン電池が得られる。また、このとき、第1極集電体11のタブ部11bと、第2極集電体15のタブ部15bとが電池外装20から外部へ突出した状態となる(
図1:工程j,
図3)。これらタブ部11b,15bがここで製造されるリチウムイオン電池の電流取り出し部(電極)として機能することとなる。なお、
図3では説明のため、電池の一部破断面を示している。
【0063】
このように本実施の形態の例によると、電池外装20が材料積層装置10により自由な形状で形成できるため、所望の形状を有したリチウムイオン電池が製造可能となる。
【0064】
なお、本実施の形態の以上の説明において、
図1の工程a,c,f,iについては、複数の材料積層装置10を用いて並行して複数の電池分の加工を行い、その他の工程(
図1の工程b,d,e,g,h)については、複数の材料積層装置10にて加工された複数の加工品に対して逐次的に加工処理を施すようにしてもよい(
図2)。このようにすると、製造の効率が向上する。
【0065】
なお、
図1の各工程a,c,f,iにおいて用いる材料積層装置10(複数でもよい)は工程a,c,f,iのそれぞれにおいて別々のものであってもよいし、共用されても構わない。
【0066】
また、ここまでの説明では、電池外装20の底面形状を平面状としていたが、本実施の形態は、これに限られない。例えば、電池外装20をアレイ状(ピーナッツ様の形状)とする場合、
図5に例示するように、カップ状部を一列に配した形状の電池外装下部21の底部21a(第1の外装部材に相当)を形成すればよい(
図5:工程a)。
【0067】
また、第1極集電体11,第2極集電体15及びセパレータ13も、それぞれの材料を積層する材料積層装置10′,10″を用いて形成することとしてもよい。
【0068】
すなわち、集電体の材料を積層する材料積層装置10′により第1極集電体11をこの底部21a上に形成する(
図5:工程b)。このとき第1極集電体11は、底部21aに内包される主部11aと、主部11aの周縁部の少なくとも一部から外側へ延伸され(一例では凸状をなし)、底部21aより外側へ突出するタブ部11bとを含む形状に加工する。
【0069】
次に、第1極集電体11の少なくともタブ部11bの主部11a側の一部を封じつつ(挟み込みつつ)、材料積層装置10を用いて、電池外装下部21の枠部(枠体下部に相当)21bを形成する(
図5:工程c)。
【0070】
そして第1極集電体11上、電池外装下部21にて囲まれた領域(上記2つ連なったカップ状の空間)内に、第1の電極活物質(例えば正極活物質12)と電解液とを含んでなる第1の電極組成物を充填する(
図5:工程d)。
【0071】
次にセパレータ13の材料を積層する材料積層装置10″を用いて、外装下部21上(枠部21b上)に、セパレータ13を形成する(
図5:工程e)。ここでセパレータ13は、枠部21bとの間に隙間を生じない形状としておく。これによりセパレータ13が第1の電極組成物を封じる。
【0072】
次に、セパレータ13の周縁部(セパレータ13の外周縁から所定長さの範囲、セパレータ13全体を覆わないものとする)に、材料積層装置10を用いて、電池外装上部22の枠部(枠体に相当)22aを形成する(
図5:工程f)。
【0073】
そしてセパレータ13上であって、上記枠部22aにて囲まれた領域(上記柱状の空間)内に、第2の電極活物質(例えば負極活物質14)と電解液とを含んでなる第2の電極組成物を充填する(
図5:工程g)。
【0074】
次に、集電体の材料を積層する材料積層装置10′を用いて第2極集電体15を第2の電極活物質上に形成する(
図5:工程h)。このとき、第2極集電体15も、平面視において枠部22aで囲まれた範囲に内包される主部15aと、この主部15aの周縁部の少なくとも一部から外側へ延伸され(一例では凸状をなし)、枠部22aより外側へ突出するタブ部15bとを含む形状に加工しておく。
【0075】
次に、材料積層装置10を用いて、第2極集電体15の少なくともタブ部15bの主部15a側の一部を封じつつ(挟み込みつつ)、電池外装上部22の上体部22b′(第2の外装部材に相当する。またここでも枠部21b,22aが第1の外装部材及び第2の外装部材の間に配された枠体に相当する)を形成する(
図5:工程i)。この上体部22b′もまた、2つのカップ状体を一列に配した形状とするなど、所望の形状に加工する。
【0076】
そしてこれより電池外装下部21と電池外装上部22とにより電池外装20が形成され、第1極集電体11、正極活物質12の層、セパレータ13、負極活物質14の層及び第2極集電体15が積層されてなる積層体が封止された状態となる。また、このとき、第1極集電体11のタブ部11bと、第2極集電体15のタブ部15bとは電池外装20から外部へ突出した状態となる(
図5:工程j,
図6)。これらタブ部11b,15bがここで製造されるリチウムイオン電池の電流取り出し部(電極)として機能することとなる。なお、
図6では説明のため、電池を一部破断した状態を示している。
【0077】
また、この
図5の例においても、第1極集電体11、セパレータ13、第2極集電体15は、材料積層装置10を用いて形成する代わりに、予め所望の形状に加工しておいたものを用意し、
図5の工程b,e,hでは、それぞれ当該予め加工されたものを配置することとしてもよい。
【0078】
さらにここまでの説明において、電池外装20(底部21a,枠部21b,22a,及び平面部22bや上体部22b′を含む)と集電体11,15との間は直接接触している(場合によっては電解液がこの間に入り込む)こととしていたが、本実施の形態はこの例だけに限られない。
【0079】
すなわち、電池外装20(底部21a,枠部21b,22a,及び平面部22bや上体部22b′を含む)と集電体11,15との間に、シール部材30を配してもよい(
図7)。このシール部材としては、例えばエポキシ樹脂やウレタン樹脂等を用いることができる。
【0080】
この例では、シール部材30もまた、材料積層装置10を用いて形成する。具体的に
図7の例では、電池外装20を構成する底部21a,枠部21b,22a,及び平面部22bや上体部22b′と集電体11,15、並びにセパレータ13との間に、材料積層装置10を用いてシール部材30の層を形成した例を示している。この場合、シール部材30を形成する材料積層装置10は、例えば2液性のエポキシ樹脂を使用する場合、2つのノズルから同時に噴射させて、固化させる方式のものを採用する。
【0081】
このようにシール部材30を設けることとすれば、電池外装20には必ずしも電解液への耐性が要求されないので、電池外装20の材料としてより広く種々のものを採用可能となる。
【0082】
本実施の形態の方法で製造した電池は、さらにアルミラミネートフィルムおよび金属製容器等の防湿性容器に封入してもよい。防湿性容器に封入することで耐久性をさらに向上できる。
【0083】
さらに本実施の形態の一例においては、電池外装20の底部21aを形成する前に、平面状の底面を有し、底部21aの外形状に沿った凹部を有するサポート部40を予め形成し、このサポート部40上で、
図5等に例示した各工程により電池を形成してもよい。この場合、サポート部40は、例えば水溶性の粉体を水溶性の接着剤で固定したものとして、材料積層装置10を用いて形成してもよい。この例では、サポート部40上に電池を形成した後、サポート部40を(水溶性のものであれば水などにより)溶解させて電池を得る。またサポート部40は必ずしも溶解可能なものでなくてもよく、電池と分離可能なものであれば、どのようなものであってもよい。またサポート部40の材料も、密度を異ならせておけば、電池外装20の材料と同じものであってもよい。一例として、電池外装20と同じ材料を用いて、電池外装20よりも粗く、空気をより多く含むようにサポート部40を形成することで、電池外装20からサポート部40を分離できる。