(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6888962
(24)【登録日】2021年5月24日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】炭化炉
(51)【国際特許分類】
C10B 47/02 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
C10B47/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-11460(P2017-11460)
(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公開番号】特開2018-119060(P2018-119060A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】517027550
【氏名又は名称】株式会社ムラサン
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】村山 聖
【審査官】
厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−104879(JP,A)
【文献】
特開2006−111770(JP,A)
【文献】
特開2003−336073(JP,A)
【文献】
特開2005−298586(JP,A)
【文献】
特開2005−179407(JP,A)
【文献】
特開2001−323276(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3102079(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 1/00 − 57/18
B09B 1/00 − 5/00
C08J 11/00 − 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材や籾殻等の燃料が燃えてしまうことなく炭化する炭化炉であって、
内部空間を有し、前記内部空間を加熱することが可能な薪等の加熱用燃料を燃焼させる燃焼室を備えた外枠炉と、
前記外枠炉の前記内部空間に配置され、前記木材や籾殻等の燃料が内部に収容される内枠炉と、を備え、
前記内枠炉は、前記内枠炉の内部と、前記内枠炉の外部であって前記外枠炉の前記内部空間と、を連通するともに、前記内枠炉の底部の外縁側において、底の外縁に沿った方向に循環筒が複数設けられ、
これらの循環筒は、前記内枠炉の外部側の端部に当該端部を塞ぐ第1状態から、当該端部を開放する第2状態に変動する蓋部をそれぞれ有し、その上端側から前記内枠炉の底部に延び、底部を貫通して配置されるとともに、当該内枠炉の底部を貫通して内枠炉の外部側に突出し、かつ屈曲し、この突出した側の端部が、内枠炉の底部側に向かい、かつ複数の循環筒は、それぞれ隣接する他の循環筒の方向に向けて屈曲され、
前記循環筒の蓋部は、通常は前記第1状態になるように付勢されており、前記内枠炉の内圧により、前記第1状態から、前記第2状態に変動する炭化炉。
【請求項2】
内枠炉は、側壁の内径と略同一寸法の外径である内蓋と、側壁の内径より大きい寸法である外蓋とを有し、側壁を内側から塞ぐ内蓋と、側壁を外側から塞ぐ2重の蓋を備えた請求項1に記載の炭化炉。
【請求項3】
内枠炉の2重の蓋の固定部は、蓋の外縁に沿って複数設けられ、側壁の外表面の上端近傍に回動自在に取り付けられている側壁側係合部と、蓋の外縁に設けられ、側壁側係合部と係合する蓋側係合部とを有し、前記側壁側係合部は、環形状に形成された使用者に把持される把持部と、把持部に一端が接続され、ねじ山が形成された軸部と、当該軸部と螺合し、側壁に回動自在に取り付けられているベースとを備え、蓋側係合部は、前記側壁係合部の軸部が挿入可能であり、かつ側壁側係合部の把持部の外形の幅よりも小さな寸法の内法寸法で形成された凹所が形成されている請求項2に記載の炭化炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化炉に関し、詳しくは、燃料を炭化する炭化炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物(例えば、木材や籾殻等)による燃料を炭化する炭化炉が知られている。
このような炭化炉として、燃料料を加熱する加熱燃焼室を設け、その高温燃焼ガスを、天井蓋近くまで伸びる加熱燃焼室の燃焼ガス排気筒により、天井空間まで上昇させ、上昇した高温燃焼ガスが、二重構造の側壁の外壁と細かい孔の開いた内壁の間の循環空間を通り、炉底面と炭材載置ロストルの間の底面空間を通り、加熱燃焼室側面の流通孔を通って加熱燃焼室に入る炭化炉が提案されている(特許文献1)。
この炭化炉によれば、炭化木ガスが加熱燃焼室内で燃焼しながら燃料を立体的に短時間で炭化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−77231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の炭化炉のように、燃料を直接的に高温燃焼ガスに曝した場合、燃料が炭化ではなく、燃えてしまい、燃料の表面に灰が発生してしまう。この場合、別行程で灰を取り除くことが必要である。ところが、密度の高い燃料、例えば、籾殻を高密度で圧縮したモミガライトのように、中心に穴が開いている燃料(製造工程において中心の穴が必要)の場合は、中心の穴の表面の灰を取り除くことは事実上、不可能である。
【0005】
本発明は、燃料の表面に灰を発生させずに炭化することが可能な炭化炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
木材や籾殻等の燃料
が燃えてしまうことなく炭化する炭化炉であって、
内部空間を有し、前記内部空間を加熱することが可能な
薪等の加熱用燃料を燃焼させる燃焼室を備えた外枠炉と、
前記外枠炉の前記内部空間に配置され、前記
木材や籾殻等の燃料が内部に収容される内枠炉と、を備え、
前記内枠炉は、前記内枠炉の内部と、前記内枠炉の外部であって前記外枠炉の前記内部空間と、を連通する
ともに、前記内枠炉の底部の外縁側において、底部に外縁に沿った方向に複数設けられ、
これらの循環筒は、前記内枠炉の外部側の端部に当該端部を塞ぐ第1状態から、当該端部を開放する第2状態に変動する蓋部を
それぞれ有し、
その上端側から前記内枠炉の底部に延び、底部を貫通して配置されるとともに、当該内枠炉の底部を貫通して内枠炉の外部側に突出し、かつ屈曲し、この突出した側の端部が、内枠炉の底部側に向かい、かつ複数の循環筒は、それぞれ隣接する他の循環筒の方向に向けて屈曲され、
前記
循環筒の蓋部は、
通常は前記第1状態になるように付勢されており、前記内枠炉の内圧により、前記第1状態から、前記第2状態に変動する炭化炉。
【0007】
(1)の発明によれば、炭化炉は、燃料を炭化し、外枠炉と、内枠炉と、を備える。
外枠炉は、内部空間を有し、内部空間を加熱することが可能である。
内枠炉は、外枠炉の内部空間に配置され、燃料が内部に収容される。
そして、内枠炉は、内枠炉の内部と、内枠炉の外部であって外枠炉の内部空間と、を連通する循環筒を有する。
循環筒は、内枠炉の外部側の端部に当該端部を塞ぐ第1状態から、当該端部を開放する第2状態に変動する蓋部を有する。
蓋部は、第1状態になるように付勢されており、内枠炉の内圧により、第1状態から、第2状態に変動する。
【0008】
これにより、外枠炉からの熱が、外枠炉の内部空間を介して、内枠炉に伝わり、内枠炉の内部に収容された燃料に伝わり、燃焼し、炭化する。よって、燃料に直接的に熱源(例えば、炎等)に曝されないので、燃料に着火せず、表面に灰が発生しない。
【0009】
また、例えば、燃料をモミガライトとした場合、燃焼することで、タールを含む可燃性ガスが発生する。この可燃性ガスが、内枠炉の内部側端部から循環筒内に入り込み、蓋部を塞ぐ第1状態から、当該端部を開放する第2状態に変動させ、外枠炉の内部空間に流出し、内部空間内の酸素と反応して、炎が発生する。この炎が、更に、内部空間の温度を上昇させるので、炭化効率が向上する。
【0010】
また、蓋部は、内枠炉の内圧が上昇するまで、循環筒の端部を塞ぐ第1状態に付勢されている。これにより、内枠炉の内部が冷やされず、かつ、内枠炉の内部に酸素が入りにくい状態となっているので、内枠炉の内部に収容された燃料が炭化し易く、かつ、着火しない。
したがって、燃料の表面に灰を発生させずに炭化することが可能な炭化炉を提供できる。
【0011】
(2) 前記循環筒の前記内枠炉の外部側の前記端部は、前記内枠炉の底部側に向いている(1)に記載の炭化炉。
【0012】
(2)の発明によれば、循環筒の内枠炉の外部側の端部から流出した可燃性ガスに着火した炎により、内枠炉の底部を加熱できるので、より効率的に、内枠炉の内部に収容された燃料を炭化できる。
【0013】
(3) 前記循環筒の前記内枠炉の外部側の前記端部は、前記内枠炉の外縁近傍に配置されている(1)又は(2)に記載の炭化炉。
【0014】
(3)の発明によれば、循環筒の内枠炉の外部側の端部から流出した可燃性ガスに着火した炎により、内枠炉の中心に比べ、熱が伝わり難い内枠炉の外縁近傍を加熱できるので、より効率的に、内枠炉の内部に収容された燃料を炭化できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、燃料の表面に灰を発生させずに炭化することが可能な炭化炉を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る炭化炉1の概要を説明する図である。
【
図2】前記実施形態に係る内枠炉20を下方から視た図である。
【
図3】前記実施形態に係る蓋部241の動作を説明する図である。
図3(a)は第1状態の蓋部241を示しており、
図3(b)は第2状態の蓋部241を示している。
【
図4】前記実施形態に係る炭化炉1の使用方法を説明する図である。
【
図5】前記実施形態に係る炭化炉1の使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0018】
まず、前記実施形態に係る炭化炉1の構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る炭化炉1の概要を説明する図である。
図1は、炭化炉1の断面を示している。
【0019】
本実施形態に係る炭化炉1は、燃料(例えば、籾殻を高密度で圧縮したモミガライト)を炭化し、外枠炉10と、内枠炉20と、を備える。
【0020】
外枠炉10は、内部空間10Aを有し、内部空間10Aを加熱することが可能である。
詳細には、外枠炉10は、円板形状の底部11と、底部11の外縁から立設する円筒形状の側壁12と、側壁12の上端に配置される蓋13と、底部11の下面に設けられ、薪等の加熱用燃料を燃焼させる燃焼室14と、側壁12の上端に蓋13を着脱自在に固定する固定部15と、外枠炉10を支持する脚部16と、を備える。
【0021】
内部空間10Aは、底部11、側壁12及び蓋13により囲まれた空間である。
底部11には、燃焼室14が設けられた部分に、開口部11Aが形成される。燃焼室14で加熱用燃料が燃やされることで、炎や熱気が開口部11Aから内部空間10Aに流入する。
【0022】
蓋13には、煙突13Aが設けられている。蓋13は、その内部に砂や石等の断熱材を詰めるのが望ましい。
燃焼室14で加熱用燃料が燃やされることで発生した熱気や煙は、内部空間10Aを通って、煙突13Aから外部に排出される。
【0023】
内枠炉20は、外枠炉10の内部空間10Aに配置され、燃料が内部に収容され、外枠炉10の内部空間10Aに出し入れ可能である。
詳細には、内枠炉20は、円板形状の底部21と、底部21の外縁から立設する円筒形状の側壁22と、側壁22の上端に配置される蓋23と、内枠炉20の内部と、内枠炉20の外部であって外枠炉10の内部空間10Aと、を連通する循環筒24と、側壁22の上端に蓋23を着脱自在に固定する固定部25と、内枠炉20を支持する脚部26と、を備える。
【0024】
蓋23は、その内部に砂や石等の断熱材を詰めるのが望ましい。
蓋23は、側壁22の内径と略同一寸法の外径である内蓋と、側壁22の内径より大きい寸法の外径である外蓋と、を有する。このように、蓋23を、側壁22を内側から塞ぐ内蓋と、側壁22を外側から塞ぐ外蓋と、の2重蓋とすることで、内枠炉20内の気密性が向上する。
【0025】
循環筒24は、上端側から底部21側に延び、底部21を貫通して配置されている。
循環筒24は、底部21を貫通し、内枠炉の外部側に突出し、屈曲し、この突出した側の端部24aが、内枠炉20の底部21側に向いている。
【0026】
図2は、前記実施形態に係る内枠炉20を下方から視た図である。
図2に示すように、循環筒24は、底部21の外縁側において、底部21に外縁に沿った方向に複数(本実施形態では4本)設けられている。
複数(4本)の循環筒24は、それぞれ、隣接する他の循環筒24の方向に向けて屈曲されている。
【0027】
図2に戻って、循環筒24は、内枠炉20の外部側の端部24aに当該端部24aを塞ぐ第1状態から、当該端部24aを開放する第2状態に変動する蓋部241を有する。
【0028】
図3は、前記実施形態に係る蓋部241の動作を説明する図である。
図3(a)は第1状態の蓋部241を示しており、
図3(b)は第2状態の蓋部241を示している。
蓋部241は、循環筒24に取り付けられた蝶番241aと、蝶番241aに回動自在に支持された蓋241bと、を有する。
【0029】
蝶番241aは、弾性部材(例えばバネ部材等)が設けられており、蓋241bを第1状態(
図3(a)に示す状態)になるように付勢している。
蓋241bは、循環筒24の内径と略同一寸法の外径である内蓋と、循環筒24の内径より大きい寸法の外径である外蓋と、を有する。このように、蓋241bを、循環筒24の端部24aを内側から塞ぐ内蓋と、端部24aを外側から塞ぐ外蓋と、の2重蓋とすることで、蓋241bが第1状態における内枠炉20の気密性が向上する。
【0030】
蓋241bは、第1状態(
図3(a)に示す状態)から、燃焼室14(
図1参照)で加熱用燃料が燃やされ、内枠炉20が加熱され、内枠炉20内に収容された燃料から可燃ガスが発生することで、内枠炉20の内圧が上昇する。そして、内枠炉20の内圧が上昇することで、内枠炉20の内圧により、蓋241bは、蝶番241aの弾性部材の弾性力に抗い第2状態(
図3(b)に示す状態)に変動する。
【0031】
図1に戻って、固定部25は、蓋23の外縁に沿って複数設けられ、側壁22の外表面の上端近傍に回動自在に取り付けられている側壁係合部251と、蓋23の外縁に設けられ、側壁側係合部251と係合する蓋側係合部252と、を有する。
側壁係合部251は、環形状に形成され、使用者に把持される把持部と、把持部に一端が接続され、ねじ山が形成された軸部と、軸部と螺
合し、側壁22に回動自在に取り付けられているベースと、を備える。
蓋側係合部252は、側壁側係合部251の軸部が挿入可能であり、側壁側係合部251の把持部の外形の幅より小さい寸法の内法寸法で形成された凹所が形成されている。
【0032】
次に、炭化炉1の使用方法について説明する。
図4及び
図5は、前記実施形態に係る炭化炉1の使用方法を説明する図である。
使用者は、内枠炉20の内部に燃料Cを入れ、側壁22の上端に蓋23を配置し、固定部25の側壁側係合部251を回動させ、側壁側係合部251の軸部を、蓋側係合部252の凹部に挿入し、側壁側係合部251の把持部を回転させ、側壁側係合部251を締め込むことで、側壁側係合部251と蓋側係合部252とを係合させる。そして、同様に、外枠炉10の側壁12の上端に蓋13を配置し、固定部15により、側壁12に蓋13を固定する。
【0033】
そして、使用者は、燃焼室14内において、加熱用燃料Fに着火することで、
図4に示す状態となる。
その後、内部空間10A内の温度が上昇し、内部空間10A内に配置されている内枠炉20の内部の温度も上昇し、内枠炉20の内部に収容されている燃料Cから可燃性ガスが発生する。この可燃性ガスは、循環筒24の上端側から流入し、蓋部241を、端部24aを塞ぐ第1状態から、当該端部24aを開放する第2状態に変動させ、内部空間10A内に流出する。
【0034】
内部空間10A内に流出した可燃性ガスは、内部空間10A内の酸素と反応して、炎が発生し、
図5に示す状態となる。そして、この炎が、更に、内枠炉20の底部21を暖める。このような自己循環する炭化炉1は、例えば、加熱用燃料Fを1時間燃焼させた後に、1時間30分ほど、燃料Cから発生した可燃性ガスにより、内枠炉20の底部21を暖めることで、内枠炉20の内部温度が略900℃まで上昇し、燃料Cが炭化する。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0036】
1 炭化炉
10 外枠炉
10A 内部空間
11 底部
11A 開口部
12 側壁
13 蓋
13A 煙突
14 燃焼室
15 固定部
16 脚部
20 内枠炉
21 底部
22 側壁
23 蓋
24 循環筒
24a 端部
25 固定部
26 脚部
241 蓋部
241a 蝶番
241b 蓋
251 側壁側係合部
252 蓋側係合部
C 燃料
F 加熱用燃料