(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889021
(24)【登録日】2021年5月24日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換装置を用いた無効電力補償装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20210607BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20210607BHJP
H02J 3/18 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K7/20 B
H05K7/20 H
H05K7/20 G
H02J3/18 164
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-85673(P2017-85673)
(22)【出願日】2017年4月24日
(65)【公開番号】特開2018-186602(P2018-186602A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000164483
【氏名又は名称】株式会社キューヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】林 秀美
(72)【発明者】
【氏名】金澤 一伸
(72)【発明者】
【氏名】福島 浩
(72)【発明者】
【氏名】百武 宏記
【審査官】
麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−220519(JP,A)
【文献】
特開2014−220334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02J 3/18
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ冷却装置を備えた2台のインバータ装置が組になって構成される1以上のインバータユニットと、
前記1以上のインバータユニットの前記2台のインバータ装置のインバータ回路に含まれる複数の電力変換素子を制御するインバータ制御部と、
前記1以上のインバータユニットにおける、前記2台のインバータ装置の2台の前記冷却装置に前記複数の電力変換素子を装着する装着部分及び前記インバータ制御部が少なくとも収納されているインバータ用ケースを備え、
前記1以上のインバータユニットにおける、前記2台のインバータ装置の2台の前記冷却装置は、それぞれ前記装着部分を有するヒートシンクと前記ヒートシンクに空冷用空気を吹き付けるように前記ヒートシンクに沿って並ぶ複数台の送風機を備えた強制空冷装置を有しており、
前記インバータ用ケースの側面には、上下方向に並んで配置される前記1以上のインバータユニットにおける前記2台の冷却装置のための吸気口と排気口を備え、内部に前記1以上のインバータユニットにおける前記2台の冷却装置の前記装着部分を除いた主要部を収容する風洞が設けられており、
前記風洞の形状、前記吸気口及び排気口の数と位置、及び前記風洞内における前記1以上のインバータユニットの前記2台の冷却装置の配置は、1つの前記インバータユニットにおける前記2台の冷却装置の間に設けられた内部空間と連通する1つの前記吸気口から、前記2台の冷却装置の2台の前記強制空冷装置に含まれる前記複数台の送風機がそれぞれ吸い込んだ空気が、前記2台の冷却装置に対して前記風洞にそれぞれ設けられた1以上の前記排気口から外部空間に排気されるように定められていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記1以上のインバータユニットの前記2台の冷却装置のための1以上の前記吸気口は、前記風洞の前記インバータ用ケースの前記側面と対向しない1以上の側面に開口しており、前記1以上のインバータユニットの前記2台の冷却装置のそれぞれのための1つの前記排気口は、前記吸気口が設けられた前記風洞の前記1以上の側面以外の側面に開口している請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記1以上のインバータユニットの前記2台の冷却装置が前記上下方向に並んでおり、
前記風洞の底部には、下に位置する前記冷却装置のための追加の排気口が設けられている請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記1以上のインバータユニットの前記2台の冷却装置が前記上下方向に並んでおり、
前記風洞の上部には、上に位置する前記冷却装置のための追加の排気口が設けられている請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
一つの前記インバータユニットの前記2台の冷却装置と、該一つのインバータユニットに隣接する他の1つの前記インバータユニットの前記2台の冷却装置との間には、隣り合う2つの前記外部空間の連通を阻止する空間分離壁が前記風洞の内部に設けられている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記1以上のインバータユニットは一つあり、
前記2台の冷却装置は、前記上下方向に並んで配置されており、
前記風洞は前記上下方向の両端部に一対の開口部を有しており、
前記一対の開口部がそれぞれ前記排気口の少なくとも一部を構成している請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記風洞は、前記1以上のインバータユニットの前記2台の冷却装置が並ぶ並設方向の両端に一対の開口部を有しており、
前記風洞の内部には、前記並設方向及び前記複数の送風機が並ぶ方向と直交する方向に延びて、前記一対の開口部と前記風洞の内部空間を二分する空間分離壁が設けられており、
前記空間分離壁は、前記1以上のインバータユニットの2以上の前記ヒートシンク及び2以上の前記強制空冷装置に含まれる前記複数の送風機それぞれの機能を阻害しないように構成されている請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記ヒートシンクは、熱伝達流体が内部を循環する構造を有しており、
前記複数の送風機と対応する前記ヒートシンクとの間の空間は、前記複数の送風機毎に個別の流路を構成するように複数の仕切り壁によって仕切られている請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記インバータ用ケース内には、該インバータ用ケース内の温度を下げるために外気と熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器に対して該インバータ用ケース内の空気を接触させるために該インバータ用ケース内で空気を循環させる空気循環装置が配置されている請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記インバータ用ケース内には、前記2台の冷却装置の前記装着部分に装着された複数の電力変換素子を含む前記インバータ回路と前記制御ユニットとが、両者間に前記空気の循環路を形成するように間隔をあけて配置されている請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の電力変換装置を備えて系統の無効電力を補償する無効電力補償装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無効電力補償装置等の電力機器に使用される放熱性能の高い電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
実公昭63−30231号公報(特許文献1)、実開平3−122596号公報(特許文献2)及び特開2004−356130号公報(特許文献3)には、送風機でインバータを構成する電力変換素子からの熱を強制的に放熱する従来の電力変換装置が開示されている。
【0003】
また特開平9−307038号公報(特許文献4)には電力変換素子を装着したヒートシンクを有する複数台のモジュールを風ガイド(風洞)の内部に上下方向に間隔を開けて配置し、しかも各モジュールを水平方向に対して傾斜させた状態にして空冷性能を向上させた電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭63−30231号公報
【特許文献2】実開平3−122596号公報
【特許文献3】特開2004−356130号公報
【特許文献4】特開平9−307038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1乃至4に開示された従来の電力変換装置の空冷技術を組み合わせても、複数台のインバータ装置のインバータ回路に含まれる複数の電力変換素子を冷却する複数のヒートシンクをそれぞれ冷却装置を用いて空冷する場合に、各冷却装置を有効に活用して各ヒートシンクをむらなく冷却でき、しかも寸法をコンパクトにすることができる構造を得ることができない問題がある。
【0006】
本発明の目的は、複数台のインバータ装置が備える冷却装置をできるだけ有効に活用できるようにして放熱性能が高く且つ寸法がコンパクトな電力変換装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、雨によって自己洗浄作用を発揮することができる電力変換装置を提供することにある。
【0008】
本発明の更に他の目的は、電力変換装置の放熱性能が高く且つ寸法がコンパクトな無効電力補償装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電力変換装置は、それぞれ冷却装置を備えた2台のインバータ装置が組になって構成される1以上のインバータユニットと、1以上のインバータユニットの2台のインバータ装置のインバータ回路に含まれる複数の電力変換素子を制御するインバータ制御部と、1以上のインバータユニットにおける、2台のインバータ装置の2台の冷却装置にそれぞれ複数の電力変換素子を装着する装着部分及びインバータ制御部が少なくとも収納されているインバータ用ケースを備えている。1以上のインバータユニットにおける、2台のインバータ装置の2台の冷却装置は、それぞれ装着部分を有するヒートシンクとヒートシンクに空冷用空気を吹き付けるようにヒートシンクに沿って並ぶ複数台の送風機を備えた強制空冷装置を有している。そしてケースの外壁には、上下方向または横方向に並んで配置される1以上のインバータユニットにおける2台の冷却装置のための吸気口と排気口を備え、内部に1以上のインバータユニットにおける2台の冷却装置の装着部分を除いた主要部を収容する風洞が設けられている。風洞の形状、吸気口及び排気口の数と位置、及び風洞内における1以上のインバータユニットの2台の冷却装置の配置は、1つのインバータユニットにおける2台の冷却装置の間に設けられた内部空間と連通する1つの吸気口から、2台の冷却装置の複数台の送風機がそれぞれ吸い込んだ空気が、2台の冷却装置に対して風洞にそれぞれ設けられた1以上の排気口から外部空間に排気されるように定められている。
【0010】
本発明によれば、2台の冷却装置の間に設けられた内部空間に吸い込んだ空気を2台の冷却装置に対して風洞にそれぞれ設けられた1以上の排気口から外部空間に排気するので、1つの内部空間を吸い込み流路として兼用することができる。そして内部空間の容積を大きくして複数台の送風機からヒートシンクに十分な空気を送風することができるようにしたとしても、2台の冷却装置が並ぶ方向の風洞の寸法をコンパクトにすることができる。その結果、本発明によれば、電力変換装置の放熱性能を高めて、しかも寸法もコンパクトに構成することができる。
【0011】
1以上のインバータユニットの2台の冷却装置のための1以上の吸気口は、ケースの外壁と対向しない風洞の一つの側面に開口しており、1以上のインバータユニットの2台の冷却装置のそれぞれのための1つの排気口は、吸気口が設けられた風洞の1以上の側面以外の側面に開口しているのが好ましい。このようにすると1以上のインバータユニットの2台の冷却装置を用いる場合に、吸気する空気として排気された空気を直接的に吸い込むことを防止できる。
【0012】
1以上のインバータユニットの2台の冷却装置が上下方向に並んでいる場合には、風洞の底部には、下に位置する冷却装置のための追加の排気口が設けられていてもよい。この構造は、特に電力変換装置が設置面から浮いた状態で設置される場合に、追加の吸気口を有効に活用して、吸気量を増大させることができる効果を発揮する。
【0013】
1以上のインバータユニットの2台の冷却装置が上下方向に並んでいる場合には、風洞の上部には、上に位置する冷却装置のための追加の排気口が設けられていてもよい。
【0014】
一つのインバータユニットの2台の冷却装置と、該一つのインバータユニットに隣接する他の1つのインバータユニットの2台の冷却装置との間には、隣り合う2つの
外部空間の連通を阻止する空間分離壁が風洞の内部に設けられていてもよい。この空間分離壁を設けると、
外部空間の容積を大きくしなくても、排気をスムーズに行うことができる。
【0015】
1以上のインバータユニットが一つであり、2台の冷却装置が、上下方向に並んで配置される場合に、風洞は上下方向の両端部に一対の開口部を有しており、一対の開口部がそれぞれ排気口の少なくとも一部を構成してもよい。この構造を採用すると、電力変換装置が屋外に配置される電力機器に適用される場合、上側に位置する開口部から雨水が入ると、雨水は2台の冷却装置を通過して下側の開口部から流れ落ちることになり、この雨水の流れによって、風洞の内部の粉塵を洗い流すことが可能になる。
【0016】
また風洞に、1以上のインバータユニットの2台の冷却装置が並ぶ並設方向の両端に一対の開口部を有しており、風洞の内部には、並設方向及び複数の送風機が並ぶ方向と直交する方向に延びて、一対の開口部と風洞の内部空間を二分する空間分離壁を設けることができる。この空間分離壁は、1以上のインバータユニットの2以上のヒートシンク及び2以上の複数の送風機それぞれの機能を阻害しないように構成する。このような構成を採用すると、風洞の内部に上下方向に貫通する2本の流路を構成することができる。この2本の流路は、電力変換装置が屋外に配置された場合には、雨水が横断面積の小さい2本の流路内を全体的に流れるため、雨水による洗浄を偏りなく実施することができる。
【0017】
さらに2台の冷却装置が上下方向に並んでいる場合に、ヒートシンクとして、上下方向と直交する水平方向に延びており、且つ熱伝達流体が内部を循環する構造を有しているものを用いることができる。この場合には、複数の送風機と対応するヒートシンクとの間の空間は、複数の送風機毎に個別の流路を構成するように複数の仕切り壁によって仕切られているのが好ましい。このような仕切り壁を設けると、複数台の送風機のうち1台以上の送風機が故障により停止したときに、健全な送風機から送り出した送風が停止した送風機を回転させて、逆流を生じさせることを防止できる。このような仕切り壁を設けても、ヒートシンクが部分的に冷却されないだけで、ヒートシンク内の熱伝達流体はヒートシンク全体を流れているので、結果としてヒートシンクは全体に冷却されることになる。
【0018】
インバータ用ケース内には、該インバータ用ケース内の温度を下げるために外気と熱交換を行う熱交換器と、該熱交換器に対して該インバータ用ケース内の空気を接触させるために該インバータ用ケース内で空気を循環させる空気循環装置が配置されていてもよい。このようにするとインバータ用ケース内を密封状態にすることができるので、インバータ装置の防塵及び防水を完全なものとすることができる。
【0019】
インバータ用ケース内には、
2台の冷却装置の装着部分に装着された複数の電力変換素子を含むインバータ回路とインバータ制御部とが、両者間に空気の循環路を形成するように間隔をあけて配置されているのが好ましい。このようにするとインバータ用ケース内を密封状態にした場合に、電力変換素子から出る熱の一部がインバータ用ケース内に局部的に留まることを防止して、温度上昇が原因になって発生する回路または電子部品の誤動作の発生を防止できる。
【0020】
本発明の電力変換装置は、系統の無効電力を補償する無効電力補償装置に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の電力変換装置が使用される無効電力補償装置の回路図である。
【
図2】(A)乃至(C)は、実施の形態の無効電力補償装置の外観の正面図、平面図及び左側面図である。
【
図3】(A)は、二本の電柱に装荷される第1の実施の形態の無効電力補償装置の内部を透視した概略図であり、
図3(B)は二本の電柱に装荷した実施の形態の無効電力補償装置の装着状況の概略を示す図である。
【
図4】実施の形態の無効電力補償装置のインバータ用ケースの内部の配置構成を示す概略図である。
【
図6】(A)は冷却装置の構造を説明するための概念図であり、(B)は仕切り壁が無い場合に起きる現象を説明するための図である。
【
図7】(A)乃至(C)は、複数台の冷却装置を上下方向に配置する場合の冷却構造の変形例を示す図である。
【
図8】(A)及び(B)は複数台の冷却装置を横方向に配置する場合の冷却構造の変形例を示す図である。
【
図9】無効電力補償装置を1本の電柱に装荷する場合の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、無効電力補償装置等の電力機器に使用される放熱性能の高い本発明の電力変換装置の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
[無効電力補償装置の構成]
図1は、本発明の電力変換装置が使用される無効電力補償装置の回路図であり、
図2(A)乃至(C)は、実施の形態の無効電力補償装置の外観の正面図、平面図及び左側面図である。
図3(A)は、二本の電柱に装荷される第1の実施の形態の無効電力補償装置の内部を透視した概略図であり、
図3(B)は二本の電柱に装荷した実施の形態の無効電力補償装置の装着状況の概略を示す図である。
図4は、実施の形態の無効電力補償装置のインバータ用ケースの内部の配置構成を示す概略図である。なお、
図3(A)及び(B)並びに
図4では、説明の便宜上、各機器を接続しているケーブル類の図示は省略しており、高圧ブッシング、変成器の固定具、その他の各部品の固定具は省略している。また(A)及び(B)並びに
図4では、図示の関係から便宜上各部品の大きさ及び配置位置は異なっている。
【0024】
図1乃至
図4に示すように無効電力補償装置1は、6.6kVの系統2と接続されて、系統2の無効電力を補償するものであり、変圧器3と、電力変換器5と、直流リアクトル装置7と、変成器(VCT)9と、インバータ制御部11と、制御ユニット12と、油入収納ケース13と、インバータ用ケース15とを備えている。変圧器3は、3巻線変圧器であり、一次側が系統に電気的に接続されるものである。電力変換器5は、変圧器3の二次側に交流側が接続されている。直流リアクトル装置7は、電力変換器5の直流側に接続されている。変成器9は、系統2の電圧値及び電流値を検知するためのものであり、計器用変圧器9Aと計器用変流器9Bとから構成されており、変圧器3と後述の高圧ブッシングとの間に接続され、制御ユニット12内の機器に接続されている。制御ユニット12には、後述の柱上高圧遮断器等の無効電力補償装置1の各種設定・制御を行うための機器が収納されており、
図3に示すように、無効電力補償装置1とは分けて配置されるものである。制御ユニット12内の機器は、インバータ制御部11とも接続されており、変成器9によって得られた電圧値及び電流値をインバータ制御部11に出力している。インバータ制御部11は、電圧値及び電流値に基づいて、電力変換器5を制御する制御信号を出力する。なお
図2乃至
図4においては、インバータ制御部11は制御ユニット12内に内蔵されているものとして図示を省略してある。
【0025】
図2(A)乃至(C)に示すように、油入収納ケース13は、鉄板を加工して形成された直方体形状であり、各機器を収納し、絶縁油を充填した状態で鉄製の蓋を構成する上壁を閉じて密封するものである。油入収納ケース13内には、変圧器3と、直流リアクトル装置7と、変成器9(計器用変圧器9Aと計器用変流器9B)とが絶縁油と一緒に収納されている。このことにより、各機器の絶縁距離を短くし、油入収納ケース13内にコンパクトに各機器を収納できる。重量の重い変圧器3は、油入収納ケース13の底部に配置されており、変成器9及び直流リアクトル装置7は、変圧器3の上に並んで設置されている。本実施の形態で用いる直流リアクトル装置7は、小型であるため、変圧器3の上に設置することが可能になっており、直流リアクトル装置7は横向きに配置されている。さらに本実施の形態では、変圧器3の上の直流リアクトル装置7と、計器用変圧器9Aと、計器用変流器9Bとを絶縁距離を考慮して省スペースで配置する構成としている。油入収納ケース13の上壁13Bには、変圧器3の一次側と電気的に接続された3本の高圧ブッシング17が設けられている。油入収納ケース13の側壁13Aには、インバータ用ケース15と接続する接続部19が設けられている。
【0026】
電力変換器5は、それぞれ直流側が直列接続された2台の自励式電流形インバータ回路21A,21Bを備えた2台のインバータ装置5A及び5Bから構成されている。本実施の形態では、2台のインバータ装置5A及び5Bが組になって1つのインバータユニットを構成している。なお
図1には、図示を簡略化するためにインバータ装置と自励式電流形インバータ回路を代表する表記として「インバータ」の表記をしている。自励式電流形インバータ回路21A,21Bはそれぞれ150kVAであり、直流側が直列接続されることによって、電力変換器5は、300kVAの定格補償容量を有している。直流リアクトル装置7は、自励式電流形インバータ回路21A,21Bに直列接続された1台の直流リアクトル23からなる。このように構成することで、自励式電流形インバータ回路が1台の場合と比較して、自励式電流形インバータ回路21A,21Bを構成する各素子(IGBT)の耐電圧を1/2に下げることができる。また、1台の直流リアクトルで直流リアクトル装置7を構成することができ、また、1台の直流リアクトルに流れる電流値を1/2に下げることができる。
【0027】
図2(A)乃至(C)、
図3(A)及び
図4に示すように、インバータ用ケース15内には、自励式電流形インバータ回路21A,21B及びインバータ制御部11が収納されている制御ユニット12が配置されている。インバータ用ケース15の側壁15Aには、自励式電流形インバータ回路21A,21Bが発する熱を冷却する2台の冷却装置30A及び30Bの主要部を内部に備えた風洞16が設けられている。なお冷却装置30A及び30Bの詳細については後述する。
【0028】
また
図2(A)乃至(C)並びに
図3(A)及び
図4に示すように、インバータ用ケース15の点検用扉18には、インバータ用ケース15内の温度を下げるために外気と熱交換を行う熱交換器20A及び20Bが設置されている。またインバータ用ケース15内には、熱交換器20A及び20Bに対してインバータ用ケース15内の空気を接触させるためにインバータ用ケース15内で空気を循環させる空気循環装置22[
図3(A)及び
図4]が配置されている。この空気の流れは、
図2(C)及び
図4に符号FPで指した破線で示す流路となる。具体的には、2台の冷却装置30A,30Bの装着部分31a,31bに装着された複数の電力変換素子を含むインバータ回路と制御ユニットとが、両者間に空気の循環路を形成するように間隔をあけて配置されている。このようにするとインバータ用ケース16内を密封状態にした場合に、電力変換素子から出る熱の一部がインバータ用ケース内に局部的に留まることを防止して、温度上昇が原因になって発生する回路または電子部品の誤動作の発生を防止できる。
【0029】
このようにするとインバータ用ケース15内を密封状態にすることができるので、電力変換器5の防塵及び防水を完全なものとすることができる。
【0030】
本実施の形態の無効電力補償装置1は、油入収納ケース13とインバータ用ケース15とを分離した状態の分離型である。本実施の形態の無効電力補償装置1は、2本の電柱27,27の間に装架されている。高圧ブッシング17が、系統2と接続された柱上高圧遮断器HCに接続されており、柱上高圧遮断器HCを介して、無効電力補償装置1が系統2と接続されている。
【0031】
[冷却構造1]
本実施の形態の電力変換装置では、それぞれ冷却装置30A及び30Bを備えた2台のインバータ装置5A及び5Bと、2台のインバータ装置5A及び5Bのそれぞれのインバータ回路21A及び21Bに含まれる複数の電力変換素子を制御するインバータ制御部11を含む制御ユニット12と、2台のインバータ装置5A及び5Bの冷却装置30A及び30Bの図示しない複数の電力変換素子を装着するヒートシンク31A及び31Bの装着部分31a及び31bが少なくとも収納されている。
【0032】
本実施の形態の電力変換装置では、
図4及び
図5に示すように、2台のインバータ装置5A及び5Bの2台の冷却装置30A及び30Bが、それぞれ装着部分31a及び31bを有するヒートシンク31A及び31Bとヒートシンク31A及び31Bの放熱フィンに空冷用空気を吹き付けるようにヒートシンク31A及び31Bに沿って並ぶ複数台の送風機(
図6)を備えた強制空冷装置32A及び32Bを有している。送風機としては、主として軸流送風機を用いることができるが、送風機として遠心送風機、斜流送風機等を用いてもよいのは勿論である。
【0033】
そして
図5に示すように、インバータ用ケース15の側壁15Aに設けられた風洞16には、上下方向に並んで配置された2台の冷却装置30A及び30Bのための吸気口INと排気口OUT11,OUT12及びOUT21、OUT22を備えている。吸気口INと排気口OUT11,OUT12及びOUT12、OUT22は、鳥の侵入を防ぐために、網によって覆われている。なお
図5には、これら吸気口及び排気口は、図示を簡略化するために、積極的には図示していない。
【0034】
風洞16の内部には、2台の冷却装置30A及び30Bのヒートシンク31A及び31Bの装着部分31a及び31bを除く主要部(31A〜32B)が収容されている。一方の冷却装置30Aと、他方の冷却装置30Bの間には、内部空間Sが形成されている。
【0035】
本実施の形態では、吸気口INは、風洞16のインバータ用ケース15の側壁15Aと対向しない一つの側面16Cに開口している。排気口OUT11及びOUT21は、風洞16の一つの側面16Cと対向する他の側面16Dに開口している。また本実施の形態では、2台の冷却装置30A及び30Bが上下方向に並んでいる場合において、風洞16の底部16Aと上部16Bに、一対の開口部OP1及びOP2を有しており、一対の開口部OP1及びOP2がそれぞれ排気口OUT12及びOUT22の少なくとも一部を構成している。この構造を採用することにより、2台の冷却装置30A及び30Bの間に設けられた内部空間S吸い込んだ空気を2台の冷却装置30A及び30Bに対して風洞16にそれぞれ設けられた1以上の排気口OUT11,12及びOUT21,22から外部空間OSに排気するので、1つの内部空間を吸い込み流路として兼用することができる。そして内部空間Sの容積を大きくして複数台の送風機からヒートシンクに十分な空気を送風することができるようにしたとしても、2台の冷却装置30A及び30Bが並ぶ方向の風洞16の寸法をコンパクトにすることができる。その結果、本発明によれば、電力変換装置の放熱性能を高めて、しかも寸法もコンパクトに構成することができる。また、この構造を採用すると、上側に位置する開口部OP1から雨水が入ると、雨水は2台の冷却装置30A及び30Bを通過して下側の開口部OP2から流れ落ちることになり、この雨水の流れによって、風洞16の内部の粉塵を洗い流すことが可能になる。
【0036】
本実施の形態では、
図2(B)に示すように、インバータ用ケース15は風洞16に設けた排気口OUT11,OUT21が油入収納ケース13の外面に排出空気を当てるように配置されている。このように風洞16からの排気が油入収納ケース13に当たっても、油入収納ケース13の熱容量は大きいため、油入収納ケース13の温度上昇には殆ど影響がない。そしてこの配置によれば、外の風が強いときに、油入収納ケース13が排気口OUT11,OUT21に強い風が直接当たることを防ぐ防護壁として機能する効果が得られる。
【0037】
[冷却装置の構造]
図6(A)は、本実施の形態で採用している冷却装置の構造を説明するための概念図である。本実施の形態では、2台の冷却装置30A,30Bは1以上のインバータユニットIUのインバータ装置の2台の冷却装置30A(30B)が上下方向に並んでいる場合において、ヒートシンク31A(31B)は、上下方向と直交する水平方向に延びており、且つ熱伝達流体が内部を循環する構造を有しているものを用いている。この場合には、強制冷却装置32A(32B)の複数の送風機F1乃至F4と対応するヒートシンク31A(31B)との間の空間S1は、複数の送風機F1乃至F4毎に個別の流路を構成するように複数の仕切り壁34によって仕切られている。
図6(B)のように仕切り壁を設けない場合には、複数台の送風機F1乃至F4のうち1台の送風機F2が故障により停止すると、健全な送風機F1,F3及びF4から送り出した送風が停止した送風機F2を回転させて、逆流を生じさせる。これに対して仕切り壁34を設けると、複数台の送風機F1乃至F4のうち1台の送風機F2が故障により停止したときでも、健全な送風機F1,F3及びF4から送り出した送風が停止した送風機F2を回転させて、逆流を生じさせることを防止できる。また仕切り壁34を設けても、ヒートシンク31Aが部分的に冷却されないだけで、ヒートシンク31A内の熱伝達流体はヒートシンク全体を流れているので、結果としてヒートシンク31Aは全体に冷却される。
【0038】
上記実施の形態では、2台の冷却装置30A及び30Bを備えているが、冷却装置の数は2台に限定されるものではなく、N台(Nは2以上の整数)以上の冷却装置が、上下方向に並べられて配置されていてもよい。
【0039】
[冷却構造の変形例]
図7は、複数台の冷却装置を上下方向に配置する場合の冷却構造の変形例を示している。
図7(A)の例は、風洞16の底部16Aが構造物または設置物によって閉塞されている場合であり、この場合には吸気口INと3つの排気口OUT11、OUT12及びOUT2を備えている。
図7(B)の例は、2つのインバータユニットIUにおける、4台のインバータ装置の4台の冷却装置30A乃至30Dが上下方向に配置されており、風洞16の底部16Aと上部16Bが構造物または設置物によってそれぞれ閉塞されている場合である。この例では、冷却装置30Bからの排気が冷却装置30Cに当たることを遮る、また、冷却装置30Cからの排気が冷却装置30Bに当たることを遮る、空間分離壁33が設けられている。この場合には2つの吸気口IN1及びIN2と4つの排気口OUT1乃至OUT4を備えている。
【0040】
図8(A)乃至(C)は、複数台の冷却装置を横方向に配置する場合の冷却構造の変形例を示している。
図8(A)の例は、冷却構造の平面図であり、1つのインバータユニットIUにおける2台のインバータ装置の2台の冷却装置30A及び30Bを横方向に配置している。この場合には、吸気口INと、2つの排気口OUT1及びOUT2を備えている。
図8(B)の例は、冷却構造の平面図であり、2つのインバータユニットIUにおける、4台のインバータ装置の4台の冷却装置30A乃至30Dを横方向に配置している。この場合には、2つの吸気口IN1及びIN2と、4つの排気口OUT1乃至OUT4を備えている。
図8(C)の例は、冷却構造の正面図であり、2台の冷却装置30A及び30Bを横方向に配置している。この場合には、吸気口INと、2つの排気口OUT1及びOUT2を備えている。横方向に配置される複数台の冷却装置の台数は任意である。
【0041】
図9は、2台の冷却装置を上下方向に配置する場合の冷却構造の変形例を示している。風洞16は、1つのインバータユニットの2台の冷却装置30A,30Bが並ぶ並設方向の両端に一対の開口部OP1及びOP2を有している。そして風洞16の内部には、並設方向及び複数の送風機が並ぶ方向と直交する方向に延びて、一対の開口部OP1及びOP2と風洞の内部空間Sを二分する空間分離壁34が設けられている。空間分離壁34は、1つのインバータユニットの2つのヒートシンク31A,31B及び2つの強制空冷装置32A、32Bに含まれる複数の送風機それぞれの機能を阻害しないように構成されている。具体的には、空間分離壁34が設けられることにより、内部空間S1及びS2が形成されている。この場合には、2つの吸気口IN1及びIN2と、4つの排気口11,12,21,22を備えている。また、この構成を採用すると、風洞16の内部に上下方向に貫通する2本の流路を構成することができる。この2本の流路は、電力変換装置が屋外に配置された場合には、雨水が横断面積が小さい2本の流路内を全体的に流れるため、雨水による洗浄を偏りなく実施することができる。
【0042】
[電力変換装置の適用例]
上記実施の形態では、無効電力補償装置1の電力変換装置に本発明を提供したが、本発明の電力変換装置は、複数台のインバータ装置を使用する電源設備、電力機器その他の電気機器にも当然にして適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、2台の冷却装置の間に設けられた内部空間に吸い込んだ空気を2台の冷却装置に対して風洞にそれぞれ設けられた1以上の排気口から外部空間に排気するので、1つの内部空間を吸い込み流路として兼用することができる。そして内部空間の容積を大きくして複数台の送風機からヒートシンクに十分な空気を送風することができるようにしたとしても、2台の冷却装置が並ぶ方向の風洞の寸法をコンパクトにすることができる。その結果、本発明によれば、電力変換装置の放熱性能を高めて、しかも寸法もコンパクトに構成することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 無効電力補償装置
2 系統
3 変圧器
5 電力変換器
7 直流リアクトル装置
9 変成器
11 インバータ制御部
12 制御ユニット
13 油入収納ケース
15 インバータ用ケース
16 風洞
27 電柱
30A乃至30C 冷却装置
31A及び31B ヒートシンク
32A及び32B 強制空冷装置
33 空間分離壁