(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、微多孔膜や高強度繊維等に使用される高分子量エチレン系重合体パウダー(以下、「エチレン系重合体パウダー」とも称す)は、未溶融物の無いことや、製造工程中に延伸工程が含まれうる高強度繊維の用途においては、延伸後の繊維が、糸切れや毛羽立ちが少ない均一な繊維であることが望まれている。一方、エチレン系重合体パウダーにはステアリン酸カルシウムなどの塩素キャッチャー剤を添加することが一般的である。しかし、ポリマー溶解後に回収リサイクルされる溶媒中にステアリン酸カルシウムが濃縮されることがあり、微多孔膜や高強度繊維の用途等においては濃縮したステアリン酸カルシウムが成型体中に存在すると欠点(例えば微多孔膜中の比較的大きな穴(す)や高強度繊維の糸切れ等)が生じ得るため、ステアリン酸カルシウム等の塩素キャッチャー剤を添加しないことを要望されている。しかし、従来のチーグラー・ナッタ型の触媒を用いて製造されるエチレン系重合体パウダーは、固体触媒にチタン−塩素を含むため、塩素キャッチ
ャー剤を添加しない場合、成型品にチタン−塩素が多く残存し得た。そして、当該残存により、成型直後や成型後、白色から黄色への色調変化を起こる虞が生じるため、加工後の色調変化抑制も求められている。
【0007】
一方で、上記の課題を解決するに当たっては、エチレン系重合体パウダーを連続的且つ高い生産性で生産できることも肝要であるところ、エチレン系重合体パウダーの生産の際
、ポリエチレンの重合速度が速い場合(生産性を高めた場合)には、重合反応器内部で局部的な急重合により塊などのスケールが発生し、それにより、エチレン系重合体を含むスラリーを抜き取るための抜取ラインが閉塞したり、凝集パウダーが多くなったりすることがあった。その結果として、エチレン系重合体パウダーの連続生産性に劣ることがあり、その改良も求められている。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、溶融時の未溶融物、延伸加工時の糸切れや毛羽立ちが十分少なく、延伸後の強度が高く、ステアリン酸カルシウムなどの塩素キャッチャー剤を用いなくても、高生産性で連続安定運転が可能で、成形品の色調変化を抑制できる、エチレン系重合体パウダー、及び、そのようなエチレン系重合体パウダーを用いて得られる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、所定のエチレン系重合体パウダーであれば上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
1)粘度平均分子量が200,000以上であり、
2)硫黄含有量が
0.20ppm以上5ppm以下であり、
3)塩素含有量が10ppm以上80ppm以下であり、
4)塩素含有量/硫黄含有量比が10超80以下である、
エチレン系重合体パウダー。
〔2〕
エチレン単独重合体(A);及びエチレン共重合体(B)のいずれか一方であって、
該エチレン共重合体(B)は、
a)エチレン90.00重量%以上100質量%未満と、
b)炭素数3〜20のα−オレフィン、炭素数3〜20の環状オレフィン、式CH
2=
CHR(但し、Rは炭素数6〜20のアリール基である。)で表される化合物、及び炭素
数4〜20の直鎖状、分岐状または環状のジエン、よりなる群から選ばれる少なくとも1
種のオレフィンであるコモノマー0質量%超10.00重量%以下と、
を共重合して得られる、上記[1]に記載のエチレン系重合体パウダー。
〔3〕
該エチレン系重合体パウダーのJIS K−6721:1997で測定された嵩密度が
、0.35kg/m
3以上0.60以下kg/m
3である上記[1]あるいは[2]に記
載のエチレン系重合体パウダー。
〔4〕
上記[1]〜[3]のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダーを用いて得られる、
成型体。
〔5〕
上記[1]〜[3]のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダーを用いて得られる、
リチウムイオン二次電池用セパレーター。
[6]
上記[1]〜[3]のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダーを用いて得られる、
鉛蓄電池用セパレーター。
[7]
上記[1]〜[3]のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダーを用いて得られる、
繊維。
[8]
上記[1]〜[3]のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダーを用いて得られる、
プレス成型体。
[9]
上記[1]〜[3]のいずれかに記載のエチレン系重合体パウダーを用いて得られる、
ラム押出し成型体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶融時の未溶融物が、延伸時の糸切れや毛羽立ちが十分少なく、延伸後の強度が高く、ステアリン酸カルシウムなどの塩素キャッチャー剤を用いなくても、高生産性で連続安定運転が可能で、成形品の色調変化を抑制できる、エチレン系重合体パウダー、及び、そのようなエチレン系重合体パウダーを用いて得られる成型体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
〔超高分子量エチレン系重合体パウダー〕
本実施形態に係る超高分子量エチレン系重合体パウダーは、下記1)〜4)を満たす。
1)粘度平均分子量が、200,000以上である;
2)硫黄含有量が0.10ppm以上5ppm以下である;
3)塩素含有量が10ppm以上80以下ppm以下である;
4)塩素含有量/硫黄含有量比が10超80以下である;
上記構成を有することにより、本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーは、成型時の未溶融物が無く、得られる成型体の強度に優れ、成型時の糸切れや毛羽たちが少なく製品ロスが少ない。更には、エチレン系重合体パウダー中に塩素が含まれていても、成型品の変色が少なく、製品としての品質の変化の十分少ないものが得られる。また、このような場合であっても、エチレン系重合体パウダーの製造において、高生産性で連続安定運転ができる。具体的には、上記エチレン系重合体パウダーを生産する際において、重合反応の活性を維持して生産性を高めるとともに、重合反応器内部で局部的な急重合により発生する塊などのスケールにより、スラリー抜取ライン閉塞を起こすことなく、また凝集パウダーが少なく、連続安定生産ができる。
【0014】
[粘度平均分子量]
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーの粘度平均分子量(Mv)は200,000以上である。粘度平均分子量(Mv)は、200,000以上15,000,000以下であることが好ましく、250,000以上、10,000,000以下であることがより好ましい。粘度平均分子量が200,000以上であることにより、本実施形態のエチレン系重合体パウダーが超高分子量となり、成型品の強度が向上し、また、15,000,000以下であることにより、延伸加工性が向上する。さらに粘度平均分子量が上記範囲であることにより、生産性により優れ、成形した場合には、延伸性及び膜強度により優れる。このような特性を有するエチレン系重合体パウダーは、例えばリチウムイオン二次電池セパレーターや高強度繊維に好適に用いることができる。
【0015】
粘度平均分子量を上記範囲に制御する方法としては、エチレン系重合体パウダーを重合する際の反応器の重合温度を変化させることが挙げられる。一般には、重合温度を高温にするほど粘度平均分子量は低くなる傾向にあり、重合温度を低温にするほど粘度平均分子量は高くなる傾向にある。また、粘度平均分子量を上記範囲にする別の方法としては、エチレン系重合体パウダーを重合する際に使用する助触媒として、有機金属化合物種を変更することが挙げられる(例えば、特許第05829295号公報等参照)。
【0016】
そしてまた、粘度平均分子量を上記範囲にする別の方法としては、エチレン系重合体パウダーを重合する際、重合反応器内に連鎖移動剤(例えば水素など)を添加することが挙げられる。このように連鎖移動剤を添加することで、同一重合温度でも生成するエチレン系重合体の粘度平均分子量を制御できる。
本実施形態においては、両者を組み合わせて制御する方が好ましい。
【0017】
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーの粘度平均分子量(Mv)は、デカヒドロナフタレン溶液中にエチレン系重合体パウダーを異なる濃度で溶解させ、135℃で求めた還元粘度を濃度0に外挿して求めた極限粘度[η](dL/g)から、以下の数式Aにより算出することができる。より詳細には、実施例に記載の方法により求めることができる。
Mv=(5.34×10
4)×[η]
1.49 ・・・数式A
【0018】
[硫黄含有量]
本実施形態のエチレン系重合体パウダーの硫黄含有量は、0.10ppm以上5ppm以下であることが好ましく、0.20ppm以上2ppm以下であることがより好ましく、0.50ppm以上1.5ppm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
本実施形態において、理由は定かではないが、この硫黄成分がポリマー中に存在することで、成型品中の未溶融物や糸切れや毛羽立ちの要因と成り得る、重合反応器内の淀み部分などに付着して重合成長する異常重合物等を抑制する効果が有ることが見出された。そして、この効果をより十分に発揮させるには、硫黄成分をポリマー中に存在させるとともに、その含有量を0.10ppm以上の範囲にすることが見出された。また、ポリエチレンの重合速度が速すぎる(活性が高すぎる)とエチレン系重合体パウダーの連続生産性に影響し得るところ、硫黄成分の含有量を0.10ppm以上にすることにより、重合速度が速すぎることを抑制することもできる。それにより、局部的な急重合により発生し得るスケールの発生を抑制し、エチレン系重合体パウダーの連続生産性を向上させることができる。また、硫黄成分の含有量を5ppm以下にすることにより、ポリエチレンの重合速度が低下しすぎる(活性が低下しすぎる)ことを防止し、生産性を向上することができる
。また、活性が低下するとパウダーが微粒子化する傾向があり、微粒子化するとパウダーの搬送中にブリッジしやすくなり流動性が低下するところ、活性が低下しすぎるのを防止するので、パウダーの取扱い性を向上させることができる。
【0020】
硫黄含有量については、後述する添加可能な硫黄化合物を重合系に存在させ又は添加しつつ、次の方法を行うこと、具体的には、固体触媒と硫黄化合物を高速で重合系に添加する方法、助触媒と共に硫黄化合物を重合系に添加する方法、重合反応器の撹拌翼の形状を三枚後退翼やアンカー翼など、より撹拌強度の高い撹拌翼を使用する方法、重合するエチレンのフィード口を複数にしそれぞれからエチレンを供給する方法などを行うことにより
、エチレン系重合体ポリマー中の硫黄含有量を制御することができる。なお、上記の「固体触媒と硫黄化合物を高速で重合系に添加する方法」では、固体触媒と硫黄化合物を線速1m/s以上で添加することが好ましい。
【0021】
また、エチレン系重合体パウダーの硫黄含有量を上記範囲に制御する別の方法としては
、後述する添加可能な硫黄化合物を重合系に存在させ又は添加しつつ、次の方法、即ち、重合触媒や助触媒、重合温度、重合圧力、スラリー濃度、滞留時間などにより制御する方法が挙げられる。
【0022】
また、エチレン系重合体パウダー中の硫黄成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン系重合体パウダーを重合する際に重合系に添加し得る、硫黄成分を含有する硫黄化合物を由来とすることができる。当該硫黄化合物としては、有機硫黄化合物が好ましい。添加可能な硫黄化合物がエチレン系重合体の重合時に系内に存在するとき
、触媒に対する、当該硫黄化合物中の硫黄成分の接近の程度(重合時のスラリーにおいて
、硫黄成分がエチレン系重合体側に含まれるか、溶媒側に含まれるか)により触媒の活性が変動し得る。
有機硫黄化合物としては、チオエーテル、チオフェン、チオール、スルホキシド、スルホン及びチオケトン、スルホン酸やスルホン酸エステル及びアミド化合物が好ましい。特に、スルホン酸やスルホン酸エステル及びアミド化合物がより好ましい。このような化合物として、エチレン系重合体パウダーを重合する際に、重合反応器へのポリマーの静電気付着を抑制するためInnospec社製(代理店丸和物産)のStadis450等の静電気防止剤を使用することも可能であり、このStadsi450等の静電気防止剤の中には、硫黄化合物の成分が存在する。
なお、パウダーの硫黄含有量や後述の塩素含有量は、それぞれ硫黄原子や塩素原子を含む化合物のパウダーに対する含有量ではなく、それぞれ硫黄原子や塩素原子のパウダーに対する含有量を指す。
【0023】
[塩素量]
本実施形態のエチレン系重合体パウダーの塩素含有量は、10ppm以上80ppm以下である。また、エチレン系重合体パウダーの塩素含有量は、10ppm以上70ppm以下であることが好ましく、10ppm以上65ppm以下であることがより好ましい。塩素含有量を10ppm以上とすることにより、重合反応の活性(触媒1g当たりのエチレン系重合体パウダーの生成量)が高くなりすぎるのを抑制できるので、局部的な急重合により発生し得るスケールの発生を抑制し、エチレン系重合体パウダーの連続生産性を向上させることができる。また、塩素含有量を80ppm以下とすることにより、重合反応反の活性が低くなりすぎるのを抑制できるので、生産性を向上することができ、また、パウダーの取扱い性を向上させることができる。さらに、塩素含有量を80ppm以下とすることにより、ポリエチレン中の固体触媒由来の塩素による色調変化を抑制することができる。
エチレン系重合体パウダーの塩素含有量を上記範囲に制御する方法としては、エチレン系重合体を重合する際の、重合触媒や助触媒、重合温度、重合圧力、スラリー濃度、滞留時間などにより制御する方法が挙げられる。
【0024】
[塩素含有量/硫黄含有量比]
本実施形態のエチレン系重合体パウダーの塩素含有量(ppm)/硫黄含有量(ppm
)比は、10超80以下であることが好ましく、10超74以下であることがより好ましく、10超70以下であることがさらに好ましい。エチレン系重合体パウダーの塩素含有量/硫黄含有量の比を上記範囲内にすることで、理由は定かではないが、塩素に対し硫黄が一定量割合存在することとなり、ポリエチレン中の固体触媒由来の塩素による色調変化を抑制できると推定される。また、塩素含有量/硫黄含有量比を80以下にすることにより、エチレン系重合体パウダーが粗粉化するのを抑制することができる。
エチレン系重合体パウダーの塩素含有量/硫黄含有量比を上記範囲内に制御する方法としては、添加可能な硫黄化合物を重合系に存在させ又は添加しつつ、次の方法を行うこと
、具体的には、硫黄化合物と固体触媒を高速で重合反応場に添加する方法、助触媒と共に硫黄化合物を重合系に添加する方法、重合反応器の撹拌翼の形状を三枚後退翼やアンカー翼などより撹拌強度の高い撹拌翼を使用する方法、重合するエチレンのフィード口を複数にしそれぞれからエチレンを供給する方法などを行うことにより、制御することができる。
【0025】
また、エチレン系重合体パウダーの塩素含有量/硫黄含有量の比を上記範囲に制御する別の方法としては、添加可能な硫黄化合物を重合系に存在させ又は添加しつつ、次の方法
、即ち、重合触媒や助触媒、重合温度、重合圧力、スラリー濃度、滞留時間などにより制御する方法が挙げられる。
【0026】
[嵩密度]
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーの嵩密度は、0.35g/cm
3以上0.
60g/cm
3以下であり、0.38g/cm
3以上0.55g/cm
3以下であることが好ましく、0.40g/cm
3以上0.50g/cm
3以下であることがより好ましい
。嵩密度が0.35g/cm
3以上であることにより、エチレン系重合体パウダーの流動性が充分に高くなり、ハンドリング性に優れ、押出機へのフィードが安定し、膜や繊維の延伸性や膜厚、繊維径が安定する。また、成形品へのガスの巻き込みが少なく気泡などの無い成形品が得られる。一方、嵩密度が0.60g/cm
3以下であることにより、電池セパレーターや繊維への加工等の際に、生産性及び/又は延伸性等に優れ、より良好な加工適用性を示す。
【0027】
一般的に、嵩密度は、使用する固体触媒によって異なるが、単位触媒あたりのエチレン系重合体の生産性により制御することが可能である。具体的には、エチレン系重合体の嵩密度は、重合する際の重合温度によって制御することが可能であり、重合温度を高くすることによりその嵩密度を低下させることが可能である。また、エチレン系重合体の嵩密度は重合器内のスラリー濃度によって制御することも可能であり、スラリー濃度を高くすることによりその嵩密度を増加させることが可能である。なお、エチレン系重合体の嵩密度はJIS K−6721:1997に準拠して測定するが、具体的には実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0028】
[コモノマー濃度]
本明細書中において、重合体を構成する各単量体単位の命名は、単量体単位が由来する単量体の命名に従う。例えば、「エチレン単位」とは、単量体であるエチレンを重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、エチレンの二つの炭素が重合体主鎖となっている分子構造である。また、「コモノマー単位」とは、単量体であるコモノマーを重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、コモノマーに含まれるオレフィンの二つの炭素が重合体主鎖となっている分子構造である。
【0029】
本実施形態で用いるエチレン系重合体パウダーとしては、特に限定されないが、具体的には、エチレン単独重合体、及びエチレンと、エチレンと共重合可能なオレフィンと、の共重合体が挙げられる。エチレンと共重合可能なオレフィンとしては、特に限定されないが、具体的には、炭素数3〜20のα−オレフィン、炭素数3〜20の環状オレフィン、式CH
2=CHR(ここで、Rは炭素数6〜20のアリール基である。)で表される化合物、及び炭素数4〜20のジエン、からなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィンが挙げられる。当該ジエンは、直鎖状、分岐状又は環状である。この中でも、共重合可能なオレフィンとしては、微多孔膜や高強度繊維に代表される成形体の耐熱性及び強度の観点から、プロピレン及び1−ブテンが好ましい。エチレン系重合体パウダーがエチレンとオレフィンとの共重合を含む場合は、共重合体パウダーに占めるエチレンの質量比は、90.00質量%以上100質量%未満が好ましく、95.00質量%以上100質量%未満がより好ましく、99.00質量%以上100質量%未満がさらに好ましい。エチレンの質量比が上記範囲内であることにより、耐熱性及び/又は強度により優れる傾向にある。
【0030】
エチレン系重合体パウダー中のb)コモノマー含有量を上記範囲に制御する方法としては、重合反応器内に添加する、b)コモノマー/[エチレン+b)コモノマー](質量%
)を変化させることが挙げられる。通常のチーグラー・ナッタ触媒を用いたエチレン系重合体パウダーの製造では、b)コモノマーにより分子量が低下する傾向にある。これはb
)コモノマーが一部連鎖移動剤として作用するためであると考えられる。エチレン系重合体パウダーの分子量を高めるには、できるだけ少ないb)コモノマーの含有量を少なくすることが好ましい。
【0031】
なお、b)コモノマー単位の含有量の測定は、G.J.RayらのMacromolecules, 10, 773 (1977)に開示された方法に準じて行われ、b)コモノマー単位の含有量は、
13C−NMRスペクトルにより観測されるメチレン炭素のシグナルを用いて、その面積強度より算出することができる。より具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0032】
[エチレン系重合体のパウダーの製造方法]
本実施形態に係るエチレン系重合体パウダーの製造に使用される触媒成分は、特に限定されず、一般的なチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒を用いて製造することが可能であり、チーグラー・ナッタ触媒およびメタロセン触媒としては、例えば、特許第578
2558号公報や国際公開第2015/005287号公報等に開示されているチーグラ
ー・ナッタ触媒及びメタロセン触媒を使用することができる。
【0033】
前記触媒成分は、固体触媒成分、及び、有機金属化合物成分(以下、触媒と省略する)をエチレン系重合体パウダーの重合条件下である重合系内に添加する際には、両者を別々に重合系内に添加してもよいし、予め両者を混合させた後に重合系内に添加してもよい。また組み合わせる両者の比率は、特に限定されないが、固体触媒中のチタン含有量に対して有機金属化合物成分のモル比は、1以上500以下が好ましく、10以上200以下がより好ましく、10以上100以下がさらに好ましい。両者を混合させる他の目的としては、保存タンクや配管等への静電付着を防止することも挙げられる。
【0034】
エチレン系重合体パウダーの製造方法における重合法としては、懸濁重合法により、エチレンを重合し、又はエチレンとb)コモノマーとを共重合する方法が挙げられる。重合又は、重合熱を効率的に除熱する観点から、懸濁重合が好ましい。懸濁重合法においては
、媒体として不活性炭化水素媒体を用いることができ、さらにオレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0035】
上記不活性炭化水素媒体としては、特に限定されないが、具体的には、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0036】
本実施形態のエチレン系重合体パウダーを得るための製造方法における重合温度は、4
0℃以上100℃以下であることが好ましく、50℃以上95℃以下であることがより好ましく、50℃以上90℃以下であることがさらに好ましい。重合温度が40℃以上であることにより、工業的に効率的な製造が可能である。重合温度が100℃以下であることにより、重合ポリマーが一部溶融した、抜出ラインを詰めるような塊状のスケールを抑制でき、連続的な安定した製造が可能である。
【0037】
本実施形態のエチレン系重合体パウダーを得るための製造方法における重合圧力は、常圧以上2MPa以下であることが好ましく、0.2MPa以上1.5MPa以下であることがより好ましく、0.3MPa以上1.0MPa以下であることがさらに好ましい。重合圧力が常圧以上であることにより、工業的に効率的な製造が可能である。重合圧力が2MPa以下であることにより、重合反応器内での急重合による塊状のスケールを発生させることがなくエチレン系重合体パウダーを安定的に生産できる傾向にある。
【0038】
一般的にエチレン系重合体パウダーを重合する際には、重合反応器へのポリマーの静電気付着を抑制するためInnospec社製(代理店丸和物産)のStadisやSTATSAFE等の静電気防止剤を使用することも可能である。その他、硫黄化合物としては
、有機硫黄化合物が好ましく、チオエーテル、イオフェン、チオール、スルホキシド、スルホン及びチオケトン、スルホン酸やスルホン酸エステル及びアミド化合物が好ましい。特に、スルホン酸やスルホン酸エステル及びアミド化合物がより好ましい。StadisやSTATSAFE等の静電気防止剤は、不活性炭化水素媒体に希釈したものをポンプ等により重合反応器に添加することもできる。この際の添加量は、固体触媒に事前に添加する方法や、重合反応器に添加するなど、単位時間当たりのエチレン系重合体パウダーの生産量に対して、1ppm以上500ppm以下が好ましく、10ppm以上100ppm以下がより好ましい。
【0039】
本実施形態のエチレン系重合体パウダーを含むスラリーは重合反応器から定量的に抜出し、遠心分離機等を用いて溶媒と分離後、乾燥機に送られる。この際の、溶媒含有率は、20重量%以上50重量%に制御することが好ましい。
【0040】
本実施形態のエチレン系重合体パウダーを得るための、重合後の乾燥方法としては、できるだけ熱をかけない乾燥方法が好ましい。乾燥機の形式としては、ロータリーキルン方式やパドル方式や流動乾燥機などが好ましい。乾燥温度としては50℃以上、150℃以下が好ましく、70℃以上100℃以下がさらに好ましい。また乾燥機に窒素等の不活性ガスを導入し乾燥を促進することも効果的である。その際に、固体触媒の失活剤としてスチーム等を同伴させる方法も更に効果的である。
【0041】
上記のようなエチレン系重合体パウダーは、必要に応じて公知の各種添加剤と組み合わせて用いてもよい。上記添加剤としては、熱安定剤、滑剤、及び、塩化水素吸収剤等が挙げられる。熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラキス[メチレン(3
,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、ジステアリルチオジプロピオネート等の耐熱安定剤;又はビス(2,2’,6,6’−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、2−(2−ヒドロキシ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の耐候安定剤等が挙げられる。また、滑剤や塩化水素吸収剤等として公知であるステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸塩も、好適な添加剤として挙げることができる。
【0042】
本実施形態のエチレン系重合体パウダーから、成型品及び高強度繊維及びリチウムイオン電池セパレーターを得ることができる。
【0043】
[エチレン系重合体パウダーの成形体]
本実施形態においては、上記のエチレン系重合体パウダーを用いて、成型体を得ることができ、具体的には、リチウムイオン電池セパレーター、繊維(高強度繊維など)及びプレス成型品を得ることができる。上記のエチレン系重合体パウダーを用いることにより、未溶解物が抑制されているので、上記の成型品において欠点を低減させることができる。また、エチレン系重合体パウダー中に塩素が少ないので、成形品の変色が少なく、製品としての品質の変化の無いものが得られる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例及び比較例によって本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
まず、エチレン系重合体パウダーの物性の評価方法について説明する。
【0045】
[エチレン系重合体パウダーの粘度平均分子量(Mv)の測定方法]
エチレン系重合体パウダーの分子量は、ISO1628−3(2010)従って、以下に示す方法によって求めた。
まず、溶融管にエチレン系重合体パウダー10mgを秤量し、溶融管を窒素置換した後
、20mLのデカヒドロナフタレン(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを1g/Lとなるように加えたもの)を加え、150℃で2時間攪拌して該エチレン系重合体パウダーを溶解させた。該エチレン系重合体パウダーの溶液を135℃の恒温槽で、キ
ャノン−フェンスケの粘度計(柴田科学器械工業社製:製品番号−100)を用いて、標線間の落下時間(ts)を測定した。同様に、上記エチレン系重合体パウダー量を7mg
、5mg、3mgと変えたサンプルついても同様に標線間の落下時間(ts)を測定した
。ブランクとしてデカヒドロナフタレンのみの落下時間(tb)を測定した。以下の式に従って求めたエチレン系重合体パウダーの還元粘度(ηsp/C)をそれぞれプロットして濃度(C)(単位:g/dL)とエチレン系重合体パウダーの還元粘度(ηsp/C)の直線式を導き、濃度0に外挿し、極限粘度[IV]を求めた。
ηsp/C=(ts/tb−1)/C (単位:dL/g)
この極限粘度を下記式に代入し粘度平均分子量(Mv)を求めた。
Mv=(5.34×10
4)×[η]
1.49
【0046】
[エチレン系重合体パウダーの硫黄含有量の測定]
エチレン系重合体パウダーを100mg秤量し、燃焼管内で燃焼させ、発生したガスを薄い過酸化水素を含む純水に吸収させ、吸収液の一部を自動的にイオンクロマトグラフに注入し測定した。
燃焼システム :燃焼炉(SQ−1型)、吸収ユニット(HSU−35型)
燃焼管 :石英製
燃焼炉温度 :移動炉内400→900℃、16分 固体炉内 1,000℃、4 分
イオンクロマトシステム:ICA−2000東亜ディーケーケー(株)製
カラム :Shodex IC SI−90 4E
(4.0mm ID*250mm) 35℃
溶離液:1.0mMol/L Na
2CO
3 1.7mMol/L NaHCO
3
流速 :1.2ml/min
注入量 :100μl
吸収液 :少量のH
2O
2添加純水(25ml+15ml、total40ml)
検出 :電気伝導度検出
尚、検量線作成には標準試料(C
12H
8NO
2FClBrS、分子量364.62、S=8.79%)を用いた。
【0047】
[エチレン系重合体パウダーの塩素含有量の測定]
エチレン系重合体パウダーを自動試料燃焼装置(三菱化学アナリテック社製 AQF−100)で燃焼後、吸収液に吸収させ、その吸収液をイオンクロマトグラフ装置(ダイオネクス社製、ICS1500、カラム(分離カラム:AS12A、ガードカラム:AG12A)サプレッサー ASRS300)に注入させ全塩素含有量を測定した。
【0048】
[エチレン系重合体パウダーの白点測定]
100ccのポリカップに、エチレン系重合体パウダー4.0g、及び酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフ
ェニル)プロピオネート]を0.012g(0.3質量%)投入して、ドライブレンドすることにより、ポリマー等混合物を得た。さらに、該混合物に流動パラフィン(37.7
8℃における動粘度7.59×10
−5m
2/s)36.0g(ポリエチレン濃度10質
量%)を投入し、室温にてスパチュラで撹拌することにより、均一なスラリーを得た。
当該スラリーを190℃に設定したラボプラストミル((株)東洋精機製作所製4C150−01型)に投入し、窒素雰囲気下、回転数50rpmで30分間混練した。混練によって得られた混合物(ゲル)を165℃に加熱したプレス機で圧縮することにより、厚さ1.0mmのゲルシートを作製した。作製したゲルシートから10cm×10cmの試験片を切り出し、120℃に加熱した同時二軸テンター延伸機にセットし、3分間保持した。その後、12mm/secのスピードでMD倍率7.0倍、TD倍率7.0倍(即ち、7×7倍)になるように延伸した。次に延伸後のシートをノルマルヘキサン中に充分に浸漬して流動パラフィンを抽出除去し、その後ノルマルヘキサンを乾燥除去した。抽出完了後の薄膜を室温で10時間乾燥した。乾燥後の薄膜を光にかざして、30cm×30cm中に存在する直径1mm以上の白点(溶け残り、欠点)の数をカウントした。
溶解性の評価は以下の基準で実施した。
○:白点の数、5個以下
×:白点の数、5個超
【0049】
[エチレン系重合体パウダーの耐変色性]
日本電色工業(株)製カラーマシーン(Z−300A型)を使用し、標準白板をレファレンスとして、同大きさのエチレン系重合体ポリマーのプレス成形体をサンプルとして測定し算出されるb値をもって、耐変色性確認する。
耐変色性:○ b値:1未満
× b値:1以上
【0050】
尚、エチレン系重合体ポリマーのプレス成形体は下記方法にて成形した。
上下に260mm*260mm*厚さ5mmのSUS鉄板と、300mm*300mm*厚さ0.1mmのアルミ箔、厚み50μmのPETフィルムを置き、エチレン系重合体パウダーを160g流し込み平らにならし、神藤金属鉱業所製圧縮成型機(型式SFA−37)を用いて、温度200℃にて、(1次加圧)圧力15MPa、300秒の条件で加圧した後脱気(0MPa)し、(2次加圧)圧力15MPa、5秒の条件で加圧した後脱気(0MPa)する操作を5サイクル行い、(3次加圧)圧力15MPa、900秒の条件で加圧して常圧にする、という工程で圧縮成型した後、同所圧縮成型機(同形式)の25℃に冷却された圧縮成型機にて15MPaで600秒冷却した。
【0051】
[凝集パウダー含有量]
エチレン系重合体パウダー100gをJIS X 8801−1(2006年)に記載された、目開き35メッシュの篩(目開き425μm)を用い、通過しない割合を算出した。
凝集粒子割合:○ 1wt%未満
× 1wt%以上
【0052】
[参考例]
固体触媒成分[A]の調製
(1)(A−1)担体の合成
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに2mol/Lのヒドロキシトリクロロシランのヘキサン溶液1,000mLを仕込み、65℃で500rpmで攪拌しながら組成式AlMg
5(C
4H
9)
11(OC
4H
9)
2で表される有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液2,550mL(マグネシウム2.68mol相当)を4時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間攪拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄した。この固体((A−1)担体)を分析した結果、固体1g当たりに含まれるマグネシウムが8.31mmolであった。
【0053】
(2)固体触媒成分[A]の調製
上記(A−1)担体150gを含有するヘキサンスラリー1,970mLに10℃で攪拌しながら1mol/Lの四塩化チタンヘキサン溶液110mLと1mol/Lの組成式AlMg
5(C
4H
9)
11(OSiHCH
3)
2で表される有機マグネシウム化合物の
ヘキサン溶液110mLとを同時に400rpmで撹拌しながら1時間かけて添加した。添加後、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を1,100mL除去し、ヘキサン1,100mLで2回洗浄することにより、固体触媒成分[A]を調製した。この固体触媒成分[A]1g中に含まれるチタン量は0.75mmolであった。
【0054】
[実施例1]
3枚後退翼の撹拌翼と3枚の邪魔板が付いたベッセル型300L重合反応器を用いた。重合反応器の撹拌速度は230prmとした。重合温度はジャケット冷却により83℃に保った。溶媒としてノルマルヘキサンを80L/時間で供給した。固体触媒[A]を生産速度が10kg/時間となるように供給した。固体触媒には、Stadis450をノルマルヘキサンで希釈したものを、固体触媒に対して5wt%で添加した。助触媒成分としてトリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライド(9:1混合物
)を10mmol/時間で供給した。水素は13mol%(水素/エチレン+水素モル比
)で供給した。重合温度83℃、重合圧力0.5MPaG、平均滞留時間1.8時間の条件で行った。重合反応器にはエチレンを3本のフィード口から液相に供給し連続重合を行
った。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器内のレベルが一定に保たれるよう圧力0.05MPaG、温度60℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、水素を分離した。次にエチレン系重合体スラリーは、フラッシュタンクからポンプにより連続的に遠心分離機に送り、ポリマーと溶媒を分離し、分離された超高分子量エチレン系重合体パウダーは、80℃に制御された乾燥機に送り、窒素ブローしながら乾燥させた。
触媒の重合活性は、20,000g/gsで得られたエチレン系重合体PE1の粘度平均分子量は300,000、嵩密度は0.51g/cm
3であった。結果は、表1に記載する。
【0055】
[実施例2]
重合温度78℃に、水素濃度を5mol%になるように供給した以外は、実施例1と同様に行い超高分子量エチレン系重合体PE2を得た。結果は、表1に記載する。
【0056】
[実施例3]
水素を2000ppmとした以外は、実施例1と同様に行ないエチレン系重合体PE3を得た。結果は、表1に記載する。
【0057】
[実施例4]
重合温度を75℃とし、α−オレフィンとして、1−ブテンを、系内のエチレンに対する濃度(α−オレフィン/エチレン+α−オレフィン)として0.25mol%フィードとした以外は、実施例3と同様に行いエチレン系重合体PE4を得た。エチレン系重合体パウダー中の1−ブテン含有量は0.05mol%であった。結果は、表1に記載する。
【0058】
[実施例5]
重合温度を59℃、重合圧力を0.5MPaとし、助触媒として6Mg(C
4H
9)
12AL(C
2H
5)
3を用い、水素を添加しない以外は、実施例4と同様に行い、エチレン系重合体PE5を得た。結果は、表1に記載する。
【0059】
[実施例6]
固体触媒に添加するStadis450の代わりに、ジノニルスルホン酸を用いた以外は、実施例3と同様に行いエチレン系重合体PE6を得た。結果は、表1に記載する。
【0060】
[比較例1]
固体触媒にStadis450を添加しない以外は、実施例1と同様に行いエチレン系重合体PE7を得た。塊が生じ重合反応器からの抜取がしばしば詰まる傾向にあった。結果は、表1に記載する。
【0061】
[比較例2]
固体触媒に対して、Stadis450をノルマルヘキサンで希釈したものを、固体触媒に対して30wt%で添加したした以外は、実施例1と同様に行いエチレン系重合体PE8を得た。触媒の重合活性は、4,000g/gsと大幅に低下した。結果は、表1に記載する。
【0062】
[比較例3]
水素濃度を30mol%にした以外は、実施例1と同様に行いエチレン系重合体PE9を得た。結果は、表1に記載する。
【0063】
[比較例4]
重合反応器の撹拌翼を6枚タービン翼とした以外は、実施例1と同様に行いエチレン系重合体PE10を得た。塊が生じ重合反応器からの抜取がしばしば詰まる傾向にあった。結果は、表1に記載する。
【0064】
[比較例5]
エチレンのフィード口を1本とした以外は、実施例1と同様に行いエチレン系重合体PE11を得た。エチレンフィード口付近で塊が生じ、重合反応器からの抜取がしばしば詰まる傾向にあった。結果は、表1に示す。
【0065】
[比較例6]
固体触媒に対して、Stadis450をノルマルヘキサンで希釈したものを、固体触媒に対して20wt%で添加した以外は、実施例1と同様に行いエチレン系重合体PE12を得た。結果は、表1に記載する。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示す結果から明らかなように、粘度平均分子量、硫黄含有量、塩素含有量及び硫黄含有量/硫黄含有量を所定の範囲内にした実施例1〜6は、それらを範囲外とした比較例1〜6と比較して、耐変色性が良く、白点数が少なく、凝集パウダーの含有量が低いことが分かった。