特許第6889105号(P6889105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6889105ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルム及び合わせガラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889105
(24)【登録日】2021年5月24日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルム及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/14 20060101AFI20210607BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20210607BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20210607BHJP
   C08F 16/38 20060101ALI20210607BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   C08L29/14
   C08K5/103
   C08J5/18CEX
   C08F16/38
   C03C27/12 D
【請求項の数】15
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-518582(P2017-518582)
(86)(22)【出願日】2017年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2017013710
(87)【国際公開番号】WO2017171041
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2019年12月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-70660(P2016-70660)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 郁
(72)【発明者】
【氏名】永井 康晴
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−052091(JP,A)
【文献】 特開昭60−006707(JP,A)
【文献】 特開平02−187480(JP,A)
【文献】 特開昭55−108443(JP,A)
【文献】 特開2015−189803(JP,A)
【文献】 米国特許第04968754(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 29/14
C03C 27/12
C08F 16/38
C08J 5/18
C08K 5/103
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性官能基を有し、かつ、中和度が10%以上、90%以下となる量の金属を有するポリビニルアセタールアイオノマー樹脂を含み、
前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂のアセタール環構造のメゾ比率が80%以上である、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材。
【請求項2】
前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂のイオン性官能基の含有率が10モル%以下である、請求項1に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材。
【請求項3】
前記イオン性官能基が、カルボキシル基、カルボキシル基の塩基、スルホン酸基、スルホン酸基の塩基、スルフィン酸基、スルフィン酸基の塩基、スルフェン酸基、スルフェン酸基の塩基、リン酸基、リン酸基の塩基、ホスホン酸基、ホスホン酸基の塩基、又はアミノ基である、請求項1又は2に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材。
【請求項4】
前記金属が、Na、Li、K、Mg、Zn、Cu、Co、Al、Fe、Ni、Cr又はMnである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材。
【請求項5】
前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の水酸基の含有率が10モル%以上、35モル%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材。
【請求項6】
前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂のアセタール基が、ホルマール基、アセトアセタール基、ブチラール基、シクロヘキシルアセタール基、2−エチルヘキシルアセタール基、又はベンズアセタール基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材。
【請求項7】
前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の重量平均分子量が100000以上、500000以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材。
【請求項8】
イオン性官能基を有さないポリビニルアセタール樹脂を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材。
【請求項9】
前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂と前記ポリビニルアセタール樹脂との合計100重量%中、前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の含有量が50重量%以上である、請求項8に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材。
【請求項10】
可塑剤を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材。
【請求項11】
前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂とポリビニルアセタールアイオノマー樹脂以外の熱可塑性樹脂との合計100重量部に対して、前記可塑剤を10重量部以上含む、請求項10に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材。
【請求項12】
前記可塑剤が、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートを含む、請求項10又は11に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材の成形体である、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルム。
【請求項14】
合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜である、請求項13に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルム。
【請求項15】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項13又は14に記載のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムとを備え、
前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムが配置されている、合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜に関する。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムが様々な用途に用いられている。また、合わせガラスに用いられる樹脂フィルムとして、合わせガラス用中間膜が知られている。合わせガラスは、2つのガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
上記合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。
【0004】
上記合わせガラス用中間膜としては、1層の構造を有する単層の中間膜と、2層以上の構造を有する多層の中間膜とがある。
【0005】
上記合わせガラス用中間膜の一例として、下記の特許文献1には、アセタール化度が60〜85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001〜1.0重量部と、30重量部を超える可塑剤とを含む遮音層が開示されている。この遮音層は、単層で中間膜として用いられ得る。
【0006】
さらに、下記の特許文献1には、上記遮音層と他の層とが積層された多層の中間膜も記載されている。遮音層に積層される他の層は、アセタール化度が60〜85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001〜1.0重量部と、30重量部以下である可塑剤とを含む。
【0007】
下記の特許文献2には、33℃以上のガラス転移温度を有するポリマー層である中間膜が開示されている。特許文献2では、上記ポリマー層が、厚みが4.0mm以下であるガラス板の間に配置されることが記載されている。
【0008】
また、下記の特許文献3には、化学的に結合したアイオノマー基を有するポリビニルブチラール成分を含むポリビニルブチラールポリブレンドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−070200号公報
【特許文献2】US2013/0236711A1
【特許文献3】US4968744
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1,2に記載のような従来の中間膜(樹脂フィルム)では、耐衝撃性が低く、衝撃が付与されると傷や割れが生じるという問題がある。特に、−40℃程度の低温での耐衝撃性が低くなりやすい。
【0011】
本発明の目的は、低温での耐衝撃性を高めることができるポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材を提供することである。また、本発明は、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材を用いたポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルム及び合わせガラスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、イオン性官能基を有し、かつ、中和度が10%以上、90%以下となる量の金属を有するポリビニルアセタールアイオノマー樹脂を含み、前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂のアセタール環構造のメゾ比率が80%以上である、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材(以下、樹脂材と記載することがある)が提供される。
【0013】
本発明に係る樹脂材のある特定の局面では、前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂のイオン性官能基の含有率が10モル%以下である。
【0014】
本発明に係る樹脂材のある特定の局面では、前記イオン性官能基が、カルボキシル基、カルボキシル基の塩基、スルホン酸基、スルホン酸基の塩基、スルフィン酸基、スルフィン酸基の塩基、スルフェン酸基、スルフェン酸基の塩基、リン酸基、リン酸基の塩基、ホスホン酸基、ホスホン酸基の塩基、アミノ基、又はアミノ基の塩基である。
【0015】
本発明に係る樹脂材のある特定の局面では、前記金属が、Na、Li、K、Mg、Zn、Cu、Co、Al、Fe、Ni、Cr又はMnである。
【0016】
本発明に係る樹脂材のある特定の局面では、前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の水酸基の含有率が10モル%以上、35モル%以下である。
【0017】
本発明に係る樹脂材のある特定の局面では、前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂のアセタール基が、ホルマール基、アセトアセタール基、ブチラール基、シクロヘキシルアセタール基、2−エチルヘキシルアセタール基、又はベンズアセタール基である。
【0018】
本発明に係る樹脂材のある特定の局面では、前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の重量平均分子量が100000以上、500000以下である。
【0019】
本発明に係る樹脂材のある特定の局面では、前記樹脂材は、イオン性官能基を有さないポリビニルアセタール樹脂を含む。
【0020】
本発明に係る樹脂材のある特定の局面では、前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂と前記ポリビニルアセタール樹脂との合計100重量%中、前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の含有量が50重量%以上である。
【0021】
本発明に係る樹脂材のある特定の局面では、前記樹脂材は、可塑剤を含む。
【0022】
本発明に係る樹脂材のある特定の局面では、前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂とポリビニルアセタールアイオノマー樹脂以外の熱可塑性樹脂との合計100重量部に対して、前記可塑剤を10重量部以上含む。
【0023】
本発明に係る樹脂材のある特定の局面では、前記可塑剤が、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートを含む。
【0024】
本発明の広い局面によれば、上述したポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材の成形体である、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムが提供される。
【0025】
本発明に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムは、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であることが好ましい。
【0026】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上述したポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムとを備え、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムが配置されている、合わせガラスが提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材は、イオン性官能基を有し、かつ、中和度が10%以上、90%以下となる量の金属を有するポリビニルアセタールアイオノマー樹脂を含み、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂のアセタール環構造のメゾ比率が80%以上であるので、低温での耐衝撃性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムを模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムを模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1に示すポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムを用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図2に示すポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムを用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
本発明に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材(樹脂材と記載することがある)は、イオン性官能基を有し、かつ、中和度が10%以上、90%以下となる量の金属を有するポリビニルアセタールアイオノマー樹脂を含む。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂では、イオン性官能基と金属とがイオン結合していることが好ましい。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、金属含有ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂である。
【0031】
本発明に係る樹脂材は、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂を含む樹脂物質である。本発明に係る樹脂材は、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂単体であってもよい。本発明に係る樹脂材は、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂以外の熱可塑性樹脂や可塑剤を含んでいてもよい。
【0032】
本発明に係る樹脂材は、合わせガラス用中間膜(以下、中間膜と記載することがある)に用いられることが好ましい。上記中間膜は、合わせガラスを得るために用いられる。本発明に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルム(以下、樹脂フィルムと記載することがある)は、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂材を成形することにより得られる。上記樹脂フィルムは、上記樹脂材の成形体である。本発明に係る樹脂フィルムは、合わせガラスを得るために用いられる中間膜であることが好ましい。但し、本発明に係る樹脂フィルムの用途は、中間膜に限定されない。本発明に係る樹脂フィルムは、例えば、中間膜以外に、太陽電池の封止剤、コーティング剤、又はクッション材等として用いることができる。
【0033】
本発明では、上記の構成が備えられているので、低温においてもイオン結合の切断によるエネルギー吸収により、樹脂フィルム及び中間膜の低温での耐衝撃性を高めることができる。また、広い温度範囲にわたり、樹脂フィルム及び中間膜の耐衝撃性を高めることができる。さらに、本発明では、上記の構成が備えられているので、イオン結合が切断されたとしても、近傍のイオン基とイオン結合が再生することにより自己修復性を高めることができる。自己修復性とは、例えば樹脂フィルム及び中間膜に傷や変形が生じたときに、傷や変形が小さくなる又は無くなることを示す。さらに、本発明では、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂がアイオノマー化されていることによって、樹脂フィルム及び中間膜の弾性率と、破断伸度及び曲げ剛性も高くなる。
【0034】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、アイオノマー化されたポリビニルアセタール樹脂である。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、酸基が導入されたポリビニルアセタールを含むことが好ましい。
【0035】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、例えば−CH−CH−基を主鎖に有する。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、ポリビニルアセタール骨格を有する。上記ポリビニルアセタール骨格が、例えば−CH−CH−基を主鎖に有する。−CH−CH−基における「−CH−」部分の炭素原子には、1つの他の基が結合している。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂では、主鎖において、−CH−CH−基が連続していることが好ましい。
【0036】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の中和度は10%以上、90%以下である。上記中和度が上記下限以上及び上記上限以下であることで、本発明の効果が奏される。上記中和度は、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。上記中和度が上記下限以上であると、低温での耐衝撃性及び自己修復性が効果的に高くなる。上記中和度が上記上限以下であると、柔軟性が発現し、引張変形時の破断伸度及び成形性がより一層良好になる。
【0037】
上記中和度は、FT−IR等を用いて測定することができる。FT−IRでは、例えば、カルボキシル基(1715cm−1)と、カルボキシル基の金属塩(金属により異なる、Znの場合:1568cm−1、Naの場合1550cm−1)とのシグナル高さから、中和度を算出することができる。
【0038】
上記中和には、金属が用いられる。低温での耐衝撃性及び自己修復性を効果的に高める観点からは、上記金属は、Na、Li、K、Mg、Zn、Cu、Co、Al、Fe、Ni、Cr又はMnであることが好ましい。上記金属は、特にNaを含有することが好ましい。
【0039】
ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂のアセタール環構造のメゾ比率は、80%以上である。低温での耐衝撃性及び自己修復性を効果的に高める観点からは、メゾ比率は、好ましくは83%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは91%以上である。なお、本発明において、アセタール環構造の「メゾ比率」とは、アセタール環の立体構造において、シンジオタクティック構造を有する水酸基から形成されるアセタール環構造(ラセモアセタール環)を有するアセタール基の量の比率と、アイソタクティック構造を有する水酸基から形成されるアセタール環構造(メゾアセタール環)を有するアセタール基の量の比率の和を100%とした際の、アイソタクティック構造を有する水酸基から形成されるアセタール環構造(メゾアセタール環)を有するアセタール基の量の比率である。メゾ比率は、例えば、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂をジメチルスルホシキド−d6等の溶剤に溶解させ、測定温度150℃においてプロトンNMRを測定し、4.5ppm付近に現れるメゾアセタール環構造に由来するピークと、4.2ppm付近に現れるラセモアセタール環構造に由来するピークとの積分値から算出することや、カーボンNMRを測定し、100ppm付近に現れるメゾアセタール環構造に由来するピークと、94ppm付近に現れるラセモアセタール環構造に由来するピークとの積分値から算出することによって測定することができる。
【0040】
上記ポリビニルアセタールユニットにおけるアセタール環構造のメゾ比率を上記範囲とするためには、アセタール化度を適宜調整することが必要であり、アセタール化度は低すぎても高すぎてもよくなく、また、同様に水酸基量も低すぎても高すぎてもよくない。適正な範囲のメゾ比率とするためには、アセタール化度は50〜80モル%とし、水酸基量は10〜40モル%とする。また、メゾ比率を調整するためには、アセタール化工程の熟成温度と熟成時間を適宜調整することが有効であり、これらを調整することによって目的のメゾ比率を得ることができる。特に、熟成温度が低く熟成時間が短い場合には、メゾ比率は上記範囲を外れる場合がある。
【0041】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の製造方法としては、例えば、ポリ酢酸ビニルと、イオン性官能基になり得る基を有するモノマーとを共重合させ、けん化し、アルデヒドによりアセタール化した後、アイオノマー化する方法、ポリビニルアルコール(PVA)を、イオン性官能基になり得る基を有するアルデヒドによりアセタール化した後、アイオノマー化する方法、並びにポリビニルアセタールを、イオン性官能基になり得る基を有するアルデヒドによりアセタール化した後、アイオノマー化する方法等が挙げられる。
【0042】
上記アイオノマー化の方法としては、溶液中に、金属含有化合物を添加する方法、並びに、混練中に、金属含有化合物を添加する方法等が挙げられる。上記金属含有化合物は、溶液の状態で添加されてもよい。
【0043】
上記金属含有化合物は、金属塩又は金属酸化物であることが好ましい。
【0044】
上記金属含有化合物における金属としては、特に限定されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属等が挙げられる。ヤング率及び成形性をより一層良好にする観点からは、Na、Li、K、Mg、Zn、Cu、Co、Al、Fe、Ni、Cr又はMnが好ましい。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、Na、Zn、Mg又はKを含むことが好ましい。アイオノマー化に上記金属が用いられていることが好ましい。特にNaを用いることが好ましい。
【0045】
上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.9モル%である。
【0046】
アイオノマー化の効果が効果的に発現し、本発明の効果が効果的に発現することから、上記イオン性官能基は、カルボキシル基、カルボキシル基の塩基、スルホン酸基、スルホン酸基の塩基、スルフィン酸基、スルフィン酸基の塩基、スルフェン酸基、スルフェン酸基の塩基、リン酸基、リン酸基の塩基、ホスホン酸基、ホスホン酸基の塩基、アミノ基、又はアミノ基の塩基であることが好ましい。
【0047】
低温での耐衝撃性及び自己修復性を効果的に高める観点からは、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂のイオン性官能基の含有率は好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下である。
【0048】
上記イオン性官能基の含有率は、樹脂中のイオン性官能基になり得る基、及び、イオン性官能基の金属塩を構成しているイオン性官能基の割合の和を意味する。上記イオン性官能基の含有率は、NMR等を用いて測定することができる。例えば、カーボンNMRでイオン性官能基に由来するピーク(カルボキシル基では45ppm付近に現れる)と、30ppm付近に現れる主鎖に由来するピークとの積分値から算出することができる。
【0049】
低温での耐衝撃性及び自己修復性を効果的に高める観点からは、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の水酸基の含有率は10モル%以上、35モル%以下であることが好ましい。
【0050】
低温での耐衝撃性及び自己修復性を効果的に高める観点からは、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂のアセタール基が、ホルマール基、アセトアセタール基、ブチラール基、シクロヘキシルアセタール基、2−エチルヘキシルアセタール基、又はベンズアセタール基であることが好ましい。
【0051】
本発明に係る樹脂フィルムは、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る樹脂フィルムは、1層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る樹脂フィルムは、2層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、多層の樹脂フィルムであってもよい。
【0052】
上記樹脂フィルムは、第1の層のみを備えていてもよく、第1の層に加えて第2の層を備えていてもよい。上記樹脂フィルムは、第2の層をさらに備えることが好ましい。上記樹脂フィルムが上記第2の層を備える場合に、上記第1の層の第1の表面側に、上記第2の層が配置される。
【0053】
上記樹脂フィルムは、第1の層及び第2の層に加えて第3の層を備えていてもよい。上記樹脂フィルムは、第3の層をさらに備えることが好ましい。上記樹脂フィルムが上記第2の層及び上記第3の層を備える場合に、上記第1の層の上記第1の表面とは反対の第2の表面側に、上記第3の層が配置される。
【0054】
上記第2の層の上記第1の層側とは反対の表面は、合わせガラス部材又はガラス板が積層される表面であることが好ましい。上記第2の層に積層されるガラス板の厚みは2.0mm以下であることが好ましい。上記第1の層の第1の表面(上記第2の層側の表面)とは反対の第2の表面は、合わせガラス部材又はガラス板が積層される表面であってもよい。上記第1の層に積層されるガラス板の厚みは2.0mm以下であることが好ましい。上記第3の層の上記第1の層側とは反対の表面は、合わせガラス部材又はガラス板が積層される表面であることが好ましい。上記第3の層に積層されるガラス板の厚みは2.0mm以下であることが好ましい。
【0055】
上記樹脂フィルムは、第1のガラス板と第2のガラス板との間に配置されて、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であることが好ましい。樹脂フィルムに起因して曲げ剛性を充分に高くすることができるので、上記第1のガラス板の厚みと上記第2のガラス板の厚みとの合計が4mm以下であることが好ましい。上記樹脂フィルムは、第1のガラス板と第2のガラス板との間に配置されて、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であることが好ましい。樹脂フィルムに起因して曲げ剛性を充分に高くすることができるので、上記樹脂フィルムは、厚みが1.8mm以下である第1のガラス板を用いて、該第1のガラス板と第2のガラス板との間に配置されて、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であることが好ましい。樹脂フィルムに起因して曲げ剛性を充分に高くすることができるので、上記樹脂フィルムは、厚みが1.8mm以下である第1のガラス板と厚みが1.8mm以下である第2のガラス板とを用いて、上記第1のガラス板と上記第2のガラス板との間に配置されて、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であることが好ましい。
【0056】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0057】
図1に、本発明の第1の実施形態に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムを模式的に断面図で示す。
【0058】
図1に示す樹脂フィルム11は、2層以上の構造を有する多層の樹脂フィルムである。樹脂フィルム11は、合わせガラスを得るための合わせガラス用中間膜であることが好ましい。樹脂フィルム11は、第1の層1と、第2の層2と、第3の層3とを備える。第1の層1の第1の表面1aに、第2の層2が配置されており、積層されている。第1の層1の第1の表面1aとは反対の第2の表面1bに、第3の層3が配置されており、積層されている。第1の層1は中間層である。第2の層2及び第3の層3はそれぞれ、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層1は、第2の層2と第3の層3との間に配置されており、挟み込まれている。従って、樹脂フィルム11は、第2の層2と第1の層1と第3の層3とがこの順で積層された多層構造(第2の層2/第1の層1/第3の層3)を有する。
【0059】
なお、第2の層2と第1の層1との間、及び、第1の層1と第3の層3との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。第2の層2と第1の層1、及び、第1の層1と第3の層3とはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。他の層として、ポリエチレンテレフタレート等を含む層が挙げられる。
【0060】
図2に、本発明の第2の実施形態に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムを模式的に断面図で示す。
【0061】
図2に示す樹脂フィルム11Aは、1層の構造を有する単層の樹脂フィルムである。樹脂フィルム11Aは、第1の層である。樹脂フィルム11Aは、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜であることが好ましい。
【0062】
以下、本発明に係る樹脂フィルムを構成する上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層の他の詳細、並びに上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層に含まれる各成分の他の詳細を説明する。
【0063】
(樹脂)
上記樹脂材及び上記樹脂フィルムは、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂を含む。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、ポリビニルブチラールアイオノマー樹脂であることが好ましい。上記第1の層、上記第2の層、及び上記第3の層は、樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂が挙げられる。上記樹脂材及び上記樹脂フィルムは、ポリビニルアセタール樹脂を含んでいてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂、上記樹脂、及び上記ポリビニルアセタール樹脂及び上記樹脂はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂及び上記樹脂の重量平均分子量は、好ましくは30000以上、より好ましくは100000以上、更に好ましくは120000以上、好ましくは1500000以下、より好ましくは1300000以下、更に好ましくは1200000以下、特に好ましくは1000000以下、最も好ましくは500000以下である。上記重量平均分子量が上記下限以上及び上記上限以下であると、押出成形により樹脂フィルムを容易に得ることができ、更に良好な耐衝撃性を発現させることができる。
【0065】
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0066】
ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂以外の樹脂を用いる場合に、上記樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル重合体などの(メタ)アクリル樹脂、ウレタン重合体、シリコーン重合体、ゴム、又は酢酸ビニル重合体であることが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂又は(メタ)アクリル樹脂であることがより好ましく、ポリビニルアセタール樹脂であることが更に好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の使用により、強靭性が効果的に高くなり、耐衝撃性、及び、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0067】
上記樹脂は、極性基を有することが好ましく、水酸基を有することが好ましい。このような基の存在により、水素結合切断、再生による自己修復性が発現するだけでなく、低温での耐衝撃性及び合わせガラスの曲げ剛性及び耐貫通性がより一層高くなる。
【0068】
上記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステルを含む重合成分の重合体であることが好ましい。上記アクリル重合体は、ポリ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
【0069】
上記ポリ(メタ)アクリル酸エステルは特に限定されない。上記ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸n−プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸i−プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸n−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸i−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸t−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、ポリ(メタ)アクリル酸ノニル、ポリ(メタ)アクリル酸イソノニル、ポリ(メタ)アクリル酸デシル、ポリ(メタ)アクリル酸イソデシル、ポリ(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリ(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、及びポリ(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。ポリビニルアセタールアイオノマーへの混合のしやすさから、ポリアクリル酸エステルが好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸n−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル又はポリアクリル酸オクチルがより好ましい。中間膜は、これらの好ましいアクリル重合体を含有することが好ましい。これらの好ましいポリ(メタ)アクリル酸エステルの使用により、樹脂フィルムの生産性と樹脂フィルムの特性のバランスとがより一層良好になる。上記ポリ(メタ)アクリル酸エステルは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
上記第1の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(以下、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)と記載することがある)を含むことがより好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(以下、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)と記載することがある)を含むことがより好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(3)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(3)として、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(以下、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)と記載することがある)を含むことがより好ましい。
【0071】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、(メタ)アクリル樹脂、酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0072】
上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂及び上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂及び上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.9モル%である。
【0073】
上記ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より一層好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、低温の耐衝撃性及び合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、樹脂フィルムの成形が容易になる。
【0074】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0075】
上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は2〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。
【0076】
上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、及びベンズアルデヒド等が挙げられる。アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは2モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、好ましくは45モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、樹脂フィルムの機械強度がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)の水酸基の含有率が5モル%以上であると反応効率が高く生産性に優れ、また35モル%以下であると、アイオノマーを効果的に形成でき耐衝撃性だけでなく、良好な自己修復性を発現する。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、樹脂フィルムの柔軟性が高くなり、樹脂フィルムの取扱いが容易になる。
【0078】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは13モル%以上、より好ましくは15モル%以上、より一層好ましくは18モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは22モル%以上、好ましくは37モル%以下、より好ましくは36.5モル%以下、更に好ましくは36モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、合わせガラスの曲げ剛性がより一層高くなり、樹脂フィルムのガラス接着力がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の水酸基の各含有率が10モル%以上であると反応効率が高く生産性に優れ、また37モル%以下であると、アイオノマーを効果的に形成でき耐衝撃性だけでなく、良好な自己修復性を発現する。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、樹脂フィルムの柔軟性が高くなり、樹脂フィルムの取扱いが容易になる。
【0079】
遮音性を良好に発現させる場合には、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは20モル%以下である。
【0080】
上記水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0081】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.05モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、更に好ましくは1モル%以上、好ましくは25モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、樹脂フィルム及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)のアセチル化度が0.1モル%以上、25モル%以下であると、耐衝撃性及び合わせガラスの耐貫通性に優れる。
【0082】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の各アセチル化度は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、樹脂フィルム及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0083】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0084】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは55モル%以上、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0085】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)及び上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは75モル%以下、より好ましくは71モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0086】
上記アセタール化度は、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
【0087】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396−92による測定を用いてもよい。ポリビニルブチラールアイオノマー樹脂又はポリビニルブチラール樹脂を用いる場合には、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0088】
上記樹脂材は、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂とともに、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
【0089】
上記樹脂材が、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む場合に、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂と上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂以外の熱可塑性樹脂との合計100重量%中、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは30重量%以上、最も好ましくは50重量%以上である。
【0090】
上記樹脂材は、ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂とともに、イオン性官能基を有さないポリビニルアセタール樹脂を含んでいてもよい。
【0091】
上記樹脂材が、イオン性官能基を有さないポリビニルアセタール樹脂を含む場合に、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂と上記ポリビニルアセタール樹脂との合計100重量%中、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂の含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは30重量%以上、最も好ましくは50重量%以上である。
【0092】
(可塑剤)
上記樹脂材及び上記樹脂フィルムは、可塑剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。可塑剤の使用により、更に樹脂と可塑剤との併用により、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む層の合わせガラス部材又は他の層に対する接着力が適度に高くなる。上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤等が挙げられる。有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0094】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0095】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0096】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0097】
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0098】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0099】
【化1】
【0100】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基であることが好ましく、炭素数6〜10の有機基であることがより好ましい。
【0101】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)又はトリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエートを含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート又はトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートを含むことがより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含むことが更に好ましい。
【0102】
上記樹脂材及び上記樹脂フィルムにおいて、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂とポリビニルアセタールアイオノマー樹脂以外の熱可塑性樹脂との合計100重量部に対して、上記可塑剤の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、更に好ましくは30重量部以上、好ましくは90重量部以下、より好ましくは85重量部以下、更に好ましくは80重量部以下である。上記含有量が上記下限以上であると、樹脂フィルムの柔軟性が高くなり、樹脂フィルムの取扱いが容易になる。上記含有量が上記上限以下であると、アイオノマーの形成を阻害し難く、良好な低温耐衝撃性と自己修復性を発現する。上記樹脂材及び上記樹脂フィルムがポリビニルアセタールアイオノマー樹脂以外の熱可塑性樹脂を含まない場合には、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂とポリビニルアセタールアイオノマー樹脂以外の熱可塑性樹脂との合計100重量部は、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂100重量部を示す。
【0103】
上記第2の層において、上記熱可塑性樹脂(2)100重量部、又は、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)と上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(2)以外の熱可塑性樹脂との合計100重量部に対する上記可塑剤(2)の含有量(以下、含有量(2)と記載することがある)、並びに上記第3の層において、上記熱可塑性樹脂(3)100重量部、又は、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)と上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(3)以外の熱可塑性樹脂との合計100重量部に対する上記可塑剤(3)の含有量(以下、含有量(3)と記載することがある)はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、更に好ましくは32重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記下限以上であると、樹脂フィルムの柔軟性が高くなり、樹脂フィルムの取扱いが容易になる。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記上限以下であると、アイオノマーの形成を阻害し難く、良好な低温耐衝撃性と自己修復性を発現するだけでなく、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0104】
上記第1の層において、上記熱可塑性樹脂(1)100重量部、又は、上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)と上記ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂(1)以外の熱可塑性樹脂との合計100重量部に対する上記可塑剤(1)の含有量(以下、含有量(1)と記載することがある)は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、更に好ましくは30重量部以上、好ましくは90重量部以下、より好ましくは85重量部以下、更に好ましくは80重量部以下である。上記含有量(1)が上記下限以上であると、樹脂フィルムの柔軟性が高くなり、樹脂フィルムの取扱いが容易になる。上記含有量(1)が上記上限以下であると、アイオノマーの形成を阻害し難く、良好な低温耐衝撃性と自己修復性を発現するだけでなく、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0105】
合わせガラスの遮音性を発現させるために、上記含有量(1)は上記含有量(2)よりも多いことが好ましく、上記含有量(1)は上記含有量(3)よりも多いことが好ましい。
【0106】
合わせガラスの遮音性を高める観点からは、上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上である。上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下、更に好ましくは70重量部以下である。
【0107】
(遮熱性化合物)
上記樹脂材及び上記樹脂フィルムは、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第1の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第2の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第3の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記遮熱性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0108】
上記遮熱性化合物は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むか、又は遮熱粒子を含むことが好ましい。この場合に、上記成分Xと上記遮熱粒子との双方を含んでいてもよい。
【0109】
成分X:
上記樹脂材及び上記樹脂フィルムは、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むことが好ましい。上記第1の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記成分Xは遮熱性化合物である。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0110】
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。
【0111】
上記樹脂材、樹脂フィルム及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フタロシアニン及びフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。
【0112】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。樹脂材、樹脂フィルム及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
【0113】
上記樹脂材100重量%中、上記樹脂フィルム100重量%中、及び、上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
【0114】
遮熱粒子:
上記樹脂材及び上記樹脂フィルムは、遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第2の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第3の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記遮熱粒子は遮熱性化合物である。遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0115】
上記樹脂材、上記樹脂フィルム及び合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。
【0116】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
【0117】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
【0118】
樹脂材、樹脂フィルム及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
【0119】
樹脂材、樹脂フィルム及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。樹脂フィルム及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs0.33WOで表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
【0120】
上記遮熱粒子の平均粒子径は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、遮熱粒子の分散性が高くなる。
【0121】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA−EX150」)等を用いて測定できる。
【0122】
上記樹脂材100重量%中、上記樹脂フィルム100重量%中、及び、上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。上記遮熱粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。
【0123】
(金属塩)
上記樹脂材及び上記樹脂フィルムは、マグネシウム塩、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも1種の金属塩(以下、金属塩Mと記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記表面層が、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記金属塩Mの使用により、樹脂フィルムと合わせガラス部材との接着性又は樹脂フィルムにおける各層間の接着性を制御することが容易になる。上記金属塩Mは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0124】
上記金属塩Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。樹脂フィルム中に含まれている金属塩は、K及びMgの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0125】
また、上記金属塩Mは、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩又は炭素数2〜16の有機酸のアルカリ土類金属塩であることがより好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩又は炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩であることが更に好ましい。
【0126】
上記炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチル酪酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム及び2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0127】
上記樹脂材100重量%中、上記樹脂フィルム100重量%中、及び、上記金属塩Mを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)におけるMg及びKの含有量の合計は、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上、好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。Mg及びKの含有量の合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂フィルムと合わせガラス部材との接着性又は樹脂フィルムにおける各層間の接着性をより一層良好に制御できる。
【0128】
(紫外線遮蔽剤)
上記樹脂材及び上記樹脂フィルムは、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、樹脂フィルム及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。上記紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0129】
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。上記紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0130】
上記紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属原子を含む紫外線遮蔽剤、金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾトリアゾール化合物)、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾフェノン化合物)、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤(トリアジン化合物)、マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤(マロン酸エステル化合物)、シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤(シュウ酸アニリド化合物)及びベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾエート化合物)等が挙げられる。
【0131】
上記金属原子を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
【0132】
上記紫外線遮蔽剤は、好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤であり、より好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤であり、更に好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤である。
【0133】
上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤に関して、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0134】
上記ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等が挙げられる。紫外線を吸収する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤は、ハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
【0135】
上記ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
【0136】
上記トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、ADEKA社製「LA−F70」及び2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(BASF社製「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0137】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤としては、2−(p−メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル−2,2−(1,4−フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2−(p−メトキシベンジリデン)−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル4−ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
【0138】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B−CAP、Hostavin PR−25、Hostavin PR−31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
【0139】
上記シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤としては、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−フェニル)シュウ酸ジアミド、2−エチル−2’−エトキシ−オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
【0140】
上記ベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(BASF社製「Tinuvin120」)等が挙げられる。
【0141】
期間経過後の可視光線透過率の低下をより一層抑制する観点からは、上記樹脂材100重量%中、上記樹脂フィルム100重量%中、及び、上記紫外線遮蔽剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。特に、上記紫外線遮蔽剤を含む層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、樹脂フィルム及び合わせガラスの期間経過後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。
【0142】
(酸化防止剤)
上記樹脂材及び上記樹脂フィルムは、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0143】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0144】
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
【0145】
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0146】
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、及び2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0147】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、堺化学工業社製「H−BHT」、並びにBASF社製「IRGANOX 1010」等が挙げられる。
【0148】
樹脂材、樹脂フィルム及び合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡り維持するために、上記樹脂材100重量%中、上記樹脂フィルム100重量%中、及び、酸化防止剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。また、酸化防止剤の添加効果が飽和するので、上記樹脂フィルム100重量%中、及び、上記酸化防止剤を含む層100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は2重量%以下であることが好ましい。
【0149】
(他の成分)
上記樹脂材、上記樹脂フィルム、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層はそれぞれ、必要に応じて、ケイ素、アルミニウム又はチタンを含むカップリング剤、分散剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0150】
(ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムの他の詳細)
上記樹脂フィルムの厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに合わせガラスの耐貫通性及び曲げ剛性を充分に高める観点からは、樹脂フィルムの厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。樹脂フィルムの厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性及び曲げ剛性が高くなる。樹脂フィルムの厚みが上記上限以下であると、樹脂フィルムの透明性がより一層良好になる。
【0151】
樹脂フィルムの厚みをTとする。上記第1の層の厚みは、好ましくは0.035T以上、より好ましくは0.0625T以上、更に好ましくは0.1T以上、好ましくは0.4T以下、より好ましくは0.375T以下、更に好ましくは0.25T以下、特に好ましくは0.15T以下である。上記第1の層の厚みが0.4T以下であると、曲げ剛性がより一層良好になる。
【0152】
上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、好ましくは0.3T以上、より好ましくは0.3125T以上、更に好ましくは0.375T以上、好ましくは0.97T以下、より好ましくは0.9375T以下、更に好ましくは0.9T以下である。上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、0.46875T以下であってもよく、0.45T以下であってもよい。また、上記第2の層及び上記第3の層の各厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、上記樹脂フィルム及び合わせガラスの剛性と遮音性がより一層高くなる。
【0153】
上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みは、好ましくは0.625T以上、より好ましくは0.75T以上、更に好ましくは0.85T以上、好ましくは0.97T以下、より好ましくは0.9375T以下、更に好ましくは0.9T以下である。また、上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、上記樹脂フィルム及び合わせガラスの剛性と遮音性がより一層高くなる。
【0154】
上記中間膜は、厚みが均一な中間膜であってもよく、厚みが変化している中間膜であってもよい。上記中間膜の断面形状は矩形であってもよく、楔形であってもよい。
【0155】
本発明に係る樹脂フィルムの製造方法としては特に限定されない。本発明に係る樹脂フィルムの製造方法としては、単層の樹脂フィルムの場合に、樹脂材を押出機を用いて押出する方法が挙げられる。本発明に係る樹脂フィルムの製造方法としては、多層の樹脂フィルムの場合に、各層を形成するための各樹脂材を用いて各層をそれぞれ形成した後に、例えば、得られた各層を積層する方法、並びに各層を形成するための各樹脂材を押出機を用いて共押出することにより、各層を積層する方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0156】
樹脂フィルムの製造効率が優れることから、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましく、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂が含まれていることが好ましく、上記第2の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第2の層と上記第3の層とが同一の樹脂材により形成されていることが更に好ましい。
【0157】
上記樹脂フィルムは、両側の表面の内の少なくとも一方の表面に凹凸形状を有することが好ましい。上記樹脂フィルムは、両側の表面に凹凸形状を有することがより好ましい。上記の凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、リップエンボス法、エンボスロール法、カレンダーロール法、及び異形押出法等が挙げられる。定量的に一定の凹凸模様である多数の凹凸形状のエンボスを形成することができることから、エンボスロール法が好ましい。
【0158】
(合わせガラス)
図3は、図1に示すポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムを用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0159】
図3に示す合わせガラス31は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、樹脂フィルム11とを備える。樹脂フィルム11は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0160】
樹脂フィルム11の第1の表面11aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。樹脂フィルム11の第1の表面11aとは反対の第2の表面11bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。第2の層2の外側の表面2aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。第3の層3の外側の表面3aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0161】
図4は、図2に示すポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムを用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0162】
図4に示す合わせガラス31Aは、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、樹脂フィルム11Aとを備える。樹脂フィルム11Aは、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0163】
樹脂フィルム11Aの第1の表面11aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。樹脂フィルム11Aの第1の表面11aとは反対の第2の表面11bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0164】
このように、本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、樹脂フィルムとを備えており、該樹脂フィルムが、本発明に係るポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルムである。本発明に係る合わせガラスでは、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上記樹脂フィルムが配置されている。
【0165】
上記第1の合わせガラス部材は、第1のガラス板であることが好ましい。上記第2の合わせガラス部材は、第2のガラス板であることが好ましい。
【0166】
上記合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラスには、2枚のガラス板の間に樹脂フィルムが挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に樹脂フィルムが挟み込まれている合わせガラスも含まれる。上記合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材がそれぞれ、ガラス板又はPETフィルムであり、かつ上記合わせガラスは、上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の内の少なくとも一方として、ガラス板を備えることが好ましい。
【0167】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0168】
上記合わせガラス部材の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0169】
本発明に係る樹脂フィルムの使用により、合わせガラスの厚みが薄くても、合わせガラスの曲げ剛性を高く維持することができる。合わせガラスを軽量化したり、合わせガラスの材料を少なくして環境負荷を低減したり、合わせガラスの軽量化によって自動車の燃費を向上させて環境負荷を低減したりする観点からは、上記ガラス板の厚みは、好ましくは2mm以下、より好ましくは1.8mm以下、より一層好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1.3mm以下、更に一層好ましくは1.0mm以下、特に好ましくは0.7mm以下である。合わせガラスを軽量化したり、合わせガラスの材料を少なくして環境負荷を低減したり、合わせガラスの軽量化によって自動車の燃費を向上させて環境負荷を低減したりする観点からは、上記第1のガラス板の厚みと上記第2のガラス板の厚みとの合計は、好ましくは3.2mm以下、より好ましくは3mm以下、更に好ましくは2.8mm以下である。
【0170】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、樹脂フィルムを挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバッグに入れて減圧吸引したりして、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材と樹脂フィルムとの間に残留する空気を脱気し、積層体を得る。その後、積層体を約70〜110℃で予備接着して、予備接着体を得る。次に、予備接着体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。上記合わせガラスの製造時に、第1の層と第2の層と第3の層とを積層してもよい。
【0171】
上記樹脂フィルム及び上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記樹脂フィルム及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記樹脂フィルム及び上記合わせガラスは、車両用又は建築用の樹脂フィルム及び合わせガラスであることが好ましく、車両用の樹脂フィルム及び合わせガラスであることがより好ましい。上記樹脂フィルム及び上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。上記樹脂フィルム及び上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。上記樹脂フィルムは、自動車の合わせガラスを得るために用いられる。
【0172】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0173】
以下の材料を用意した。
【0174】
(ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂、及びポリビニルアセタール樹脂)
下記の表1〜3に示すポリビニルアセタールアイオノマー樹脂、及びポリビニルアセタール樹脂を適宜用いた。具体的には、実施例1で用いたポリビニルアセタールアイオノマー樹脂は、以下のようにして得られている。
【0175】
(実施例1で用いたポリビニルアセタール樹脂)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアルコール(平均重合度800、けん化度98.9モル%)200重量部と、蒸留水1600重量部とを入れ、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。次に、この溶液に触媒として35重量%塩酸50重量部を添加し、攪拌しながらn−ブチルアルデヒド30重量部を添加したところ、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂が析出した。その後、50℃で2時間保持し、熟成させた。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させることにより、ポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0176】
(実施例1で用いたポリビニルアセタールアイオノマー樹脂)
後アセタール化によるイオン性官能基になり得る基の導入とアイオノマー化
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルブチラール(平均重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基の含有率30.8モル%、アセチル化度1.2モル%)20重量部と、メタノール100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、テレフタルアルデヒド酸を添加し、溶解させた後、35重量%の塩酸を0.1重量部添加した後、反応容器内を撹拌しながら60℃に加熱した。昇温終了後、60℃にて2時間反応させた。
【0177】
次いで、反応液を冷却することにより、イオン性官能基になり得る基を有するポリビニルアセタール樹脂を含有する固形分20重量%の溶液を得た。得られた溶液にナトリウムメトキシドを中和度が54%となるように添加した。中和度は、FTIR装置「NICOLET 6700」(Thermo Scientific社製)を用いて、測定波長4000〜400cm−1、スキャン回数32回で測定を行い、カルボキシル基(1715cm−1)と、カルボキシル基の金属塩基(Naの場合1550cm−1)とのシグナル高さから算出した。
【0178】
なお、得られたイオン性官能基になり得る基を有するポリビニルアセタール樹脂をジメチルスルホキシドで溶解し、プロトンNMRを測定することにより、反応後の組成を算出した。反応後の組成は、水酸基の含有率29.4モル%、アセチル化度1.1モル%、ブチラール化度62.3モル%、イオン性官能基になり得る基が3.6モル%で、メゾ比率が91.8%であった。重量平均分子量をカラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定したところ、16万であった。
【0179】
また、実施例1以外の実施例及び比較例では、ポリビニルアルコール(PVA)の重合度、アセタール化に用いたアルデヒドの種類(アセタール化の種類、Bu:ブチラール化、Ac:アセトアセタール化、Bz:ベンズアセタール化、EH:2−エチルヘキシルアセタール化)、水酸基の含有率、アセチル化度、アセタール化度、イオン性官能基の種類、イオン性官能基の含有率、中和に用いた金属種、中和度、メゾ比率、及び重量平均分子量を表1〜3に示すように設定した。なお、実施例1〜5及び23では、上記後アセタール化によりポリビニルアセタール樹脂にイオン性官能基になり得る基を導入し、その他の実施例及び比較例では、酢酸ビニルモノマーとアクリル酸を共重合し、その後、けん化、アセタール化する方法でイオン性官能基になり得る基を導入した。また、比較例5では、ポリビニルアセタール樹脂の作製時に熟成を30℃で10分行った。
【0180】
(可塑剤)
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)
ジオクチルフタレート(DOP)
【0181】
(紫外線遮蔽剤)
Tinuvin326(2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
【0182】
(酸化防止剤)
BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)
【0183】
(実施例1〜33,35〜37及び比較例1〜5)
下記の表1〜3に示す種類及び量のポリビニルアセタールアイオノマー樹脂又はポリビニルアセタール樹脂と、下記の表1〜3に示す種類及び量の可塑剤と、紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)を得られる樹脂フィルム中で0.2重量%となる量と、酸化防止剤(BHT)を得られる樹脂フィルム中で0.2重量%となる量とを配合し、押出機を用いて押出しすることにより、樹脂フィルム(厚み760μm)を作製した。
【0184】
(評価)
(1)低温での耐衝撃性
得られた樹脂フィルムを熱成形し、一辺が5mmの正六面体上の樹脂フィルムを用意した。液体窒素中に樹脂フィルムを10分間浸漬した後、取り出した。浸漬後の樹脂フィルムをハンマーで10回たたいた後の状態から、低温での耐衝撃性を以下の基準で判定した。
【0185】
[低温での耐衝撃性の判定基準]
○:割れがない
△:多少割れがある
×:粉砕
【0186】
(2)自己修復性
得られた樹脂フィルムの表面に、カミソリで傷をつけて、原子間力顕微鏡で深さ2μm±500nmの傷の位置を確認し、23℃及び湿度50%で1週間保管した。保管後に、同じ位置での傷の深さを原子間力顕微鏡で測定した。自己修復性を以下の基準で判定した。
【0187】
[自己修復性の判定基準]
○:保管後に深さが20nm以上減少
△:保管後に深さが10nm以上、20nm未満減少
×:保管後に深さが減少していないか、又は深さが10nm未満減少
【0188】
詳細及び結果を下記の表1〜3に示す。なお、下記の表1〜3では、紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤の記載は省略した。
【0189】
【表1】
【0190】
【表2】
【0191】
【表3】
【符号の説明】
【0192】
1…第1の層
1a…第1の表面
1b…第2の表面
2…第2の層
2a…外側の表面
3…第3の層
3a…外側の表面
11…樹脂フィルム(ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルム)
11A…樹脂フィルム(ポリビニルアセタールアイオノマー樹脂フィルム、第1の層)
11a…第1の表面
11b…第2の表面
21…第1の合わせガラス部材
22…第2の合わせガラス部材
31…合わせガラス
31A…合わせガラス
図1
図2
図3
図4