(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
【0012】
図1は、実施の形態に係るフィルタ装置1の回路構成図である。
図1に示されるように、フィルタ装置1は、フィルタFLT1(第1フィルタ)と、フィルタFLT2(第2フィルタ)と、入出力端子T1(第1端子),入出力端子T2(第2端子)とを備える。フィルタFLT1およびFLT2は、入出力端子T1とT2との間で並列に接続されている。具体的には、フィルタFLT1の一方端子は入出力端子T1に接続され、フィルタFLT1の他方端子は入出力端子T2に接続されている。また、フィルタFLT2の一方端子は入出力端子T1に接続され、フィルタFLT2の他方端子は入出力端子T2に接続されている。
【0013】
フィルタFLT1は、複数の弾性波共振子を含む。フィルタFLT2は、弾性波共振子を含んでもよいし、LC共振回路を含んでもよい。弾性波共振子は、たとえば弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振子、バルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)共振子、FBAR(Film Bulk Acoustic Wave Resonator)、あるいはSM(Solidly Mounted)共振子である。
【0014】
図2は、
図1のフィルタ装置1の通過帯域PB1(第1通過帯域)、およびフィルタFLT1,FLT2それぞれの通過帯域PB2(第2通過帯域),通過帯域PB3(第3通過帯域)との関係を示す図である。
図2において、周波数Cf1〜Cf3は、通過帯域PB1〜PB3それぞれの中心周波数である。なお、通過帯域とは、挿入損失が、挿入損失の最小値以上、当該最小値に3dBを加算した値以下の範囲内に収まる任意の連続した周波数帯である。
【0015】
図2に示されるように、通過帯域PB1は、通過帯域PB2の一部および通過帯域PB3の一部を含んでいる。通過帯域PB2は、通過帯域PB1よりも狭い。通過帯域PB3は、通過帯域PB1よりも狭い。通過帯域PB3の中心周波数Cf3は、通過帯域PB2の中心周波数Cf2よりも高い。通過帯域PB1のうち、中心周波数Cf1よりも低い周波数帯は主にフィルタFLT1によって形成され、中心周波数Cf1よりも高い周波数帯は主にフィルタFLT2によって形成されている。フィルタFLT1は通過帯域PB2を形成するフィルタであり、低域側フィルタと呼ぶ。フィルタFLT2は通過帯域PB3を形成するフィルタであり、高域側フィルタと呼ぶ。
【0016】
通常、弾性波共振子を有する並列腕回路、および弾性波共振子を有する直列腕回路を用いてフィルタを構成した場合、当該フィルタを構成する弾性波共振子の反共振周波数よりも高い周波数帯では、弾性波共振子のインピーダンスが容量性となり、弾性波共振子はキャパシタとして機能する。ここで、反共振周波数より高い周波数帯において、弾性波共振子の反射係数が反共振周波数における反射係数よりも低下する。
【0017】
図3は、
図1のフィルタFLT1に含まれる弾性波共振子の(a)インピーダンスの絶対値の周波数特性を示すグラフおよび(b)インピーダンスの周波数特性を示すスミスチャートを併せて示す図である。
図3において周波数fr,faは、それぞれ弾性波共振子の共振周波数および反共振周波数を示す。また、周波数Hf1は、反共振周波数faより高く、当該弾性波共振子におけるストップバンドの高域端の周波数である。
【0018】
図3(a)に示されるように、弾性波共振子のインピーダンスは、共振周波数frにおいて極小となり、反共振周波数faにおいて極大となる。
図3(b)に示されるように、当該弾性波共振子のインピーダンスは、共振周波数frにおいて実部成分および虚部成分が非常に小さくなる点に位置し、反共振周波数faにおいて実部成分または虚部成分が非常に大きくなる点に位置している。周波数が反共振周波数faより高くなると、弾性波共振子のインピーダンスはスミスチャート上を時計回りに移動し、容量性のインピーダンスとなる。
【0019】
ここで、上述したように、弾性波共振子のストップバンドの高域端である周波数Hf1より高い周波数において、弾性波共振子の反射係数が反共振周波数faにおける反射係数よりも小さくなる。これは、弾性波共振子におけるバルク波が弾性波共振子の外部に漏洩することによって、反射損失が大きくなることにより、当該弾性波共振子のQ特性が悪化する(漏洩損失)ためである。その結果、通過帯域PB1高域端でのフィルタ装置1の挿入損失が悪化する。
【0020】
そこで、実施の形態では低域側フィルタに含まれる弾性波共振子に、キャパシタを並列に接続する。弾性波共振子の反共振周波数faより高い周波数帯において、キャパシタのQ特性は悪化しない。負荷される電力が弾性波共振子およびキャパシタに分散されるため、弾性波共振子におけるバルク波損失が減少し、並列に接続された弾性波共振子およびキャパシタを含む回路のQ特性が向上する。その結果、実施の形態に係るフィルタ装置の通過帯域の高域端での挿入損失を低減することができる。
【0021】
実施の形態1〜4において、実施の形態に係るフィルタ装置の低域側フィルタの構成を具体的に説明する。以下では、並列腕回路を、第1入出力端子および第2入出力端子を結ぶ経路上の接続点とグランドとの間に配置された回路とする。また、直列腕回路を、第1入出力端子または第2入出力端子と、並列腕回路が接続される上記経路上の接続点との間に配置された回路、または、並列腕回路が接続される上記経路上の接続点と、他の並列腕回路が接続される上記経路上の他の接続点との間に配置された回路とする。直列腕回路および並列腕回路の各々は、1つの弾性波共振子、またはリアクタンス素子(たとえばインダクタあるいはキャパシタ)から形成される場合もある。直列腕回路および並列腕回路の各々は、直列または並列に分割された複数の弾性波共振子を含んでいてもよい。
【0022】
[実施の形態1]
実施の形態1においては、並列腕回路に含まれる弾性波共振子にキャパシタが並列に接続されている場合について説明する。
【0023】
図4は、
図1のフィルタFLT1の構成を具体的に示す回路構成図である。
図4に示されるように、フィルタFLT1は、直列腕共振子s1,s2と、並列腕共振子p1(第1弾性波共振子)と、キャパシタCp1(第1容量素子)とを含む。
【0024】
直列腕共振子s1とs2とは、入出力端子T1とT2との間で直列に接続されている。直列腕共振子s1およびs2の各々は、直列腕回路を形成している。並列腕共振子p1とキャパシタCp1とは、接地点と、直列腕共振子s1およびs2の接続点との間で並列に接続されている。並列腕共振子p1とキャパシタCp1とは、並列腕回路pc1を形成している。
【0025】
以下の表1に、実施の形態1における直列腕共振子s1,s2、並列腕共振子p1、および並列腕回路pc1各々の共振周波数fr,反共振周波数fa,比帯域幅BWR,静電容量を示す。キャパシタCp1については静電容量のみを示す。なお、比帯域幅BWRとは、反共振周波数faと共振周波数frとの差を共振周波数frで除した値をパーセント表示したものである。
【0027】
図5は、実施の形態1に係る低域側フィルタFLT1、高域側フィルタFLT2、およびフィルタ装置1の通過特性を併せて示す図である。
図5(a)は、低域側フィルタFLT1の通過特性(挿入損失および減衰量の周波数特性)を示す図である。
図5(b)は、高域側フィルタFLT2の通過特性を示す図である。
図5(c)は、
図4のフィルタ装置1の通過特性を示す図である。なお、「フィルタの通過特性」とは、フィルタ単体の通過特性であり、フィルタを他の回路から切り離した場合における通過特性である。
【0028】
図5(a)に示されるように、低域側フィルタFLT1は、フィルタ装置1の通過帯域PB1の低域側を形成し、通過帯域PB2を有する。
図5(b)に示されるように、高域側フィルタFLT2は、フィルタ装置1の通過帯域PB1の高域側を形成し、通過帯域PB3を有する。
【0029】
図6は、比較例に係るフィルタ装置900の回路構成図である。フィルタ装置900の構成は、
図4のフィルタ装置1のフィルタFLT1,FLT2がフィルタFLT91,FLT92にそれぞれ置き換えられた構成である。FLT91に含まれる直列腕共振子s1a,s2a、および並列腕共振子p1aは、
図4の直列腕共振子s1,s2、および並列腕共振子p1の比較対象としてそれぞれ対応する。フィルタ装置900においては、並列腕共振子p1aにキャパシタが並列に接続されていない。フィルタ装置900,フィルタFLT91,FLT92は、通過帯域PB1,PB2,PB3を有するようにそれぞれ設計されている。以下の表2に、実施の形態1における直列腕共振子s1a,s2a、および並列腕共振子p1a各々の、共振周波数fr,反共振周波数fa,比帯域幅BWR,静電容量を示す。
【0031】
図7は、実施の形態1および比較例に係るフィルタ装置の通過特性、低域側フィルタの反射特性、および並列腕回路の反射特性を併せて示す図である。
図7(a)は、減衰量0〜5dBの範囲における、フィルタ装置1の通過特性およびフィルタ装置900の通過特性を併せて示す図である。
図7(b)は、
図4のフィルタFLT1の反射特性(反射損失の周波数特性),
図6のフィルタFLT91の反射特性を併せて示す図である。
図7(c)は、
図4のフィルタFLT1の並列腕回路pc1の反射特性、および
図6のフィルタFLT91の並列腕共振子p1aの反射特性を併せて示す図である。なお、「フィルタの反射特性」とは、フィルタ単体の反射特性であり、フィルタを他の回路から切り離した場合における反射特性である。また、「並列腕回路の反射特性」とは、並列腕回路単体の反射特性であり、並列腕回路を他の回路から切り離した場合における反射特性である。
【0032】
図7(a)において、実線はフィルタ装置1の通過特性を示し、点線はフィルタ装置900の通過特性を示している。
図7(b)において、実線はフィルタFLT1の反射特性を示し、点線はフィルタFLT91の反射特性を示している。
図7(c)において、実線は並列腕回路pc1の反射特性を示し、点線は並列腕共振子p1aの反射特性を示す。
【0033】
図7(a)に示されるように、通過帯域PB1の高域端において、フィルタ装置1の挿入損失は、フィルタ装置900の挿入損失よりも小さい。
図7(b)に示されるように、通過帯域PB1の高域端において、フィルタFLT1の反射損失は、フィルタFLT91の反射損失よりも小さい。
図7(c)に示されるように、通過帯域PB1の高域端において、並列腕回路pc1の反射損失は、並列腕共振子p1aの反射損失よりも小さい。
【0034】
通過帯域PB1の高域端において、並列腕回路pc1の反射特性が
改善されることにより、フィルタFLT1の反射特性が
改善される。その結果、フィルタ装置1の通過特性が
改善される。
【0035】
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1に係るフィルタ装置の通過帯域は可変であってもよい。
図8は、実施の形態1の変形例に係るフィルタ装置1Aの回路構成図である。フィルタ装置1Aの構成は、
図4のフィルタ装置1の構成にスイッチSW1〜SW4が加えられた構成である。それ以外の構成は同様であるため説明を繰り返さない。
【0036】
図8に示されるように、スイッチSW1(第2スイッチ)は、入出力端子T1とフィルタFLT1との間に接続されている。スイッチSW2(第3スイッチ)は、入出力端子T2とフィルタFLT1との間に接続されている。スイッチSW3(第4スイッチ)は、入出力端子T1とフィルタFLT2との間に接続されている。スイッチSW4(第5スイッチ)は、入出力端子T2とフィルタFLT2との間に接続されている。スイッチSW1およびSW2の導通状態(オンまたはオフ)は同期している。スイッチSW3およびSW4の導通状態は同期している。
【0037】
スイッチSW1〜SW4は、たとえば不図示のRF信号処理回路(RFIC:Radio Frequency Integrated Circuit)に含まれる制御回路からの制御信号に応じて、導通状態が切り替えられる。当該制御回路は、RFICとは別個に設けられてもよい。
【0038】
スイッチSW1およびSW2の導通状態がオンであり、スイッチSW3およびSW4の導通状態がオフである場合、フィルタ装置1Aの通過帯域はフィルタFLT1の通過帯域PB2となる。スイッチSW1およびSW2の導通状態がオフであり、スイッチSW3およびSW4の導通状態がオンである場合、フィルタ装置1Aの通過帯域はフィルタFLT2の通過帯域PB3となる。スイッチSW1〜SW4の導通状態がオンである場合、フィルタ装置1Aの通過帯域はPB1となる。
【0039】
実施の形態1に係るフィルタ装置の通過帯域を可変とするために、スイッチSW1〜SW4の全てが必要であるわけではない。たとえば、スイッチSW1,SW2、あるいはスイッチSW3,SW4の一方の組み合わせを備えることにより、フィルタ装置の通過帯域を可変とすることができる。
【0040】
スイッチSW1およびSW2を備え、スイッチSW3およびSW4を備えない場合、スイッチSW1,SW2がオンのとき、フィルタ装置の通過帯域はPB1となる。スイッチSW1,SW2がオフのとき、フィルタ装置の通過帯域はフィルタFLT2の通過帯域PB3となる。
【0041】
スイッチSW1およびSW2を備えず、スイッチSW3およびSW4を備える場合、スイッチSW3,SW4がオンのとき、フィルタ装置の通過帯域はPB1となる。スイッチSW3,SW4がオフのとき、フィルタ装置の通過帯域はフィルタFLT1の通過帯域PB2となる。
【0042】
以上、実施の形態1および変形例に係るフィルタ装置によれば、通過帯域の高域端での挿入損失を低減することができる。
【0043】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、直列腕回路に含まれる弾性波共振子にキャパシタが並列に接続されている場合について説明する。
【0044】
図9は、実施の形態2に係るフィルタ装置2の回路構成図である。フィルタ装置2の構成は、
図4のフィルタFLT1,FLT2が、フィルタFLT21,FLT22に置き換えられた構成である。フィルタ装置2、フィルタFLT21(第1フィルタ)、およびフィルタFLT22(第2フィルタ)の通過帯域は、それぞれ通過帯域PB21(第1通過帯域)、通過帯域PB22(第2通過帯域)、通過帯域PB23(第3通過帯域)である。フィルタFLT22は、弾性波共振子を含んでもよいし、LC共振回路を含んでもよい。フィルタFLT21は低域側フィルタであり、フィルタFLT22は高域側フィルタである。
【0045】
通過帯域PB21は、通過帯域PB22の一部および通過帯域PB23の一部を含んでいる。通過帯域PB22は、通過帯域PB21よりも狭い。通過帯域PB23は、通過帯域PB21よりも狭い。通過帯域PB23の中心周波数は、通過帯域PB22の中心周波数よりも高い。
【0046】
図9に示されるように、フィルタFLT21は、
図4のフィルタFLT1の構成からキャパシタCp1が除かれているとともに、キャパシタCs1(第1容量素子)が追加されている。キャパシタCs1は、直列腕共振子s1(第1弾性波共振子)に並列に接続されている。直列腕共振子s1およびキャパシタCs1は、直列腕回路sc1を形成している。
【0047】
以下の表3に、実施の形態2における直列腕共振子s1,s2、並列腕共振子p1、および直列腕回路sc1各々の共振周波数fr,反共振周波数fa,比帯域幅BWR,静電容量を示す。キャパシタCs1については静電容量のみを示す。
【0049】
以下では、フィルタ装置2、および
図6に示されるフィルタ装置900との比較を行なう。フィルタ装置900の構成は、
図9のフィルタ装置2からキャパシタCs1が除かれた構成である。フィルタ装置900、フィルタFLT91、およびフィルタFLT92は、通過帯域PB21、PB22、およびPB23をそれぞれ有するように設計されている。以下の表4に、実施の形態2における直列腕共振子s1a,s2a、および並列腕共振子p1a各々の、共振周波数fr,反共振周波数fa,比帯域幅BWR,静電容量を示す。
【0051】
図10は、
図9の低域側フィルタFLT21、高域側フィルタFLT22、およびフィルタ装置2の通過特性を併せて示す図である。
図10(a)は、低域側フィルタFLT21の通過特性を示す図である。
図10(b)は、高域側フィルタFLT22の通過特性を示す図である。
図10(c)は、
図9のフィルタ装置2の通過特性を併せて示す図である。
【0052】
図10(a)に示されるように、低域側フィルタFLT21は、フィルタ装置2の通過帯域PB21の低域側を形成し、通過帯域PB22を有する。
図10(b)に示されるように、高域側フィルタFLT22は、フィルタ装置2の通過帯域PB21の高域側を形成し、通過帯域PB23を有する。
【0053】
図11は、実施の形態2および比較例に係るフィルタ装置の通過特性、低域側フィルタの反射特性、および直列腕回路の反射特性を併せて示す図である。
図11(a)は、
図10(c)の減衰量0〜5dBの範囲が拡大された
図9のフィルタ装置2の通過特性、および
図6のフィルタ装置900の通過特性を示す図である。
図11(b)は、
図9のフィルタFLT21の反射特性、および
図6のフィルタFLT91の反射特性を併せて示す図である。
図11(c)は、
図9の直列腕回路sc1の反射特性、および
図6の直列腕共振子s1aの反射特性を併せて示す図である。
図11(a)において、実線は
図9のフィルタ装置2の通過特性を示し、点線は
図6のフィルタ装置900の通過特性をしている。
図11(b)において、実線はフィルタFLT21の反射特性を示し、点線はフィルタFLT91の反射特性を示している。
図11(c)において、実線は直列腕回路sc1の反射特性を示し、直列腕共振子s1aの反射特性を示す。なお、「直列腕回路の反射特性」とは、直列腕回路単体の反射特性であり、直列腕回路を他の回路から切り離した場合における反射特性である。
【0054】
図11(a)に示されるように、通過帯域PB21の高域端において、フィルタ装置2の挿入損失は、フィルタ装置900の挿入損失よりも小さい。
図11(b)に示されるように、通過帯域PB21の高域端において、フィルタFLT21の反射損失は、フィルタFLT91の反射損失よりも小さい。
図11(c)に示されるように、通過帯域PB21の高域端において、直列腕回路sc1の反射損失は、直列腕共振子s1aの反射損失よりも小さい。
【0055】
通過帯域PB21の高域端において、直列腕回路sc1の反射特性が改善されることにより、フィルタFLT21の反射特性が改善される。その結果、通過帯域PB21の高域端におけるフィルタ装置2の通過特性が改善される。
【0056】
以上、実施の形態2に係るフィルタ装置によれば、通過帯域の高域端での挿入損失を低減することができる。
【0057】
[実施の形態3]
実施の形態3においては、低域側フィルタにおいて所望の通過帯域を確保しながら、弾性波共振子に並列に接続する容量素子の容量を大きくして、通過帯域の高域端での挿入損失をさらに低減する構成について説明する。
【0058】
図12は、弾性波共振子のインピーダンス特性(点線)と、並列に接続された当該弾性波共振子およびキャパシタから構成される回路のインピーダンス特性(実線)を併せて示す図である。
図12に示されるように、並列に接続された弾性波共振子およびキャパシタから構成される回路の共振周波数は、弾性波共振子の共振周波数frとほとんど同じである。一方、当該回路の反共振周波数fa1は、弾性波共振子の反共振周波数faよりも小さい。当該キャパシタの容量が大きくなるほど、反共振周波数fa1が小さくなり、反共振周波数fa1とfaとの差が大きくなる。当該回路の共振周波数と反共振周波数fa1との差が小さくなると、当該回路を含むフィルタにおいて、所望の通過帯域を維持することが困難になり得る。
【0059】
そこで、実施の形態3においては、低域側フィルタにおいて、キャパシタが並列に接続された弾性波共振子の比帯域幅を、キャパシタが並列に接続されていない弾性波共振子の比帯域幅よりも大きくする。これにより、低域側フィルタに含まれる弾性波共振子に並列に接続するキャパシタの容量に関して、所望の通過帯域を維持可能な容量の限度を大きくすることができる。そのため、当該キャパシタが並列に接続される弾性波共振子のバルク波損失をより低減することができる。その結果、実施の形態3に係るフィルタ装置の通過帯域の高域端での挿入損失をさらに低減することができる。
【0060】
図13は、一般的な弾性波共振子の共振周波数と比帯域幅(BWR)との関係を示す図表である。弾性波共振子の共振周波数を変化させると比帯域幅BWRが変化する。複数の弾性波共振子を用いて一般的なフィルタ装置を構成する場合、複数の弾性波共振子の共振周波数の周波数差は、概ね100MHz以下である。
図13に示されるように、共振周波数を100MHz変化させると、比帯域幅は0.7%程度変化する。そこで、以下では、2つの比帯域幅の差が0.8%以上である場合に、当該2つの比帯域幅が異なるとする。2つの比帯域幅の差が0.8%未満である場合、当該2つの比帯域幅は等しいとする。
【0061】
弾性波共振子がSAW共振子の場合、櫛歯電極と圧電性を有する基板との間に、絶縁体または誘電体で構成される第1調整膜を設け、その第1調整膜の膜厚を変えることで、弾性波共振子の比帯域幅を変えることができる。なお、第1調整膜が無い場合に比帯域幅が最も大きく、第1調整膜の膜厚が厚いほど比帯域幅が小さくなる。また、櫛歯電極を覆うように、絶縁体または誘電体で構成される第2調整膜が設けられ、第2調整膜の膜厚を変えることで、SAW共振子の比帯域幅を変えることができる。なお、第2調整膜が無い場合に比帯域幅が最も大きく第2調整膜の膜厚が厚いほど比帯域幅が小さくなる。
【0062】
弾性波共振子がBAW共振子の場合、対向する電極間の圧電体の材料を変更することで比帯域幅を変えることができる。
【0063】
以下では、
図14および
図15を用いて、実施の形態3に係るフィルタ装置に関する周波数特性と、
図9のフィルタ装置2に関する周波数特性との比較を行なう。実施の形態3に係るフィルタ装置の回路構成は
図9のフィルタ装置2と同じである。比帯域幅について、
図9のフィルタ装置2において、キャパシタCs1が並列に接続されている直列腕共振子s1の比帯域幅は、キャパシタが並列に接続されていない直列腕共振子s2(第3弾性波共振子)の比帯域幅と等しい。実施の形態3に係るフィルタ装置においては、直列腕共振子s1の比帯域幅は、直列腕共振子s2の比帯域幅よりも大きい。実施の形態3におけるキャパシタCs1の容量は、
図9のキャパシタCs1の容量よりも大きい。以下の表5に、実施の形態3における直列腕共振子s1,s2、並列腕共振子p1、および直列腕回路sc1各々の共振周波数fr,反共振周波数fa,比帯域幅BWR,静電容量を示す。キャパシタCs1については静電容量のみを示す。これら以外の構成は、実施の形態2と同様であるため、説明を繰り返さない。
【0065】
図14は、実施の形態2,3に係るフィルタ装置の通過特性、低域側フィルタの反射特性、および直列腕回路の反射特性を併せて示す図である。
図14(a)は、実施の形態3に係るフィルタ装置の通過特性(実線)および
図9のフィルタ装置2の通過特性(点線)を示す。
図14(b)は、実施の形態3に係る低域側フィルタの反射特性(実線)および
図9のフィルタFLT21の反射特性(点線)を示す。
図14(c)は、実施の形態3における直列腕回路sc1の反射特性(実線)および
図9の直列腕回路sc1の反射特性(点線)を併せて示す図である。
図15は、
図14(a)の1.53GHz〜1.56GHzの範囲の通過特性を拡大して示す図である。
【0066】
図14(b)に示されるように、通過帯域PB21の高域端において、実施の形態3に係る低域側フィルタの反射損失は、フィルタFLT21の反射損失よりも小さい。
図14(c)に示されるように、実施の形態3における直列腕回路sc1の反射損失は、実施の形態2における直列腕回路sc1の反射損失よりも小さい。
図15に示されるように、通過帯域PB21の高域端において、実施の形態3に係るフィルタ装置の挿入損失は、実施の形態2に係るフィルタ装置2の挿入損失よりも小さい。
【0067】
実施の形態3の直列腕共振子s1について、比帯域幅を実施の形態2の直列腕共振子s1よりも大きくすると、共振周波数とバルク波損失が発生する周波数との周波数差を実施の形態2よりも大きくすることができる。ここで、実施の形態3の直列腕共振子s1と実施の形態2の直列腕共振子s1とでは、共振周波数が概ね同じである。このため、実施の形態3によれば、上記のように直列腕共振子s1について共振周波数とバルク波損失が発生する周波数との周波数差を大きくすることにより、バルク波損失が発生する周波数を通過帯域PB21の高域端から遠ざけることができる。そのため、実施の形態3に係るフィルタ装置の通過帯域PB21内におけるバルク波損失の影響が実施の形態2に係るフィルタ装置2よりも小さくなる。
【0068】
また、比帯域幅を大きくすると、弾性波共振子のインピーダンスを大きくする(弾性波共振子の静電容量値を小さくする)ことができるとともに、弾性波共振子に並列に接続されるキャパシタの静電容量値を大きくすることができる。並列に接続された弾性波共振子およびキャパシタに負荷される電力のうち、キャパシタが負担する電力の割合が大きくなるため、弾性波共振子に負荷される電力が低減される。
【0069】
実施の形態3に係るフィルタ装置によれば、弾性波共振子におけるバルク波損失を実施の形態2に係るフィルタ装置よりも低減することができる。その結果、通過帯域の高域端での挿入損失を実施の形態2に係るフィルタ装置よりも低減することができる。
【0070】
以上、実施の形態3に係るフィルタ装置によれば、通過帯域の高域端での挿入損失を低減することができる。
【0071】
[実施の形態4]
実施の形態に係るフィルタ装置の低域側フィルタにおいて、入出力端子に最も近い弾性波共振子を有する直列腕回路は、当該入出力端子から入力される電力を直接的かつ集中的に受ける。そのため、直列腕回路に含まれる弾性波共振子においてバルク波損失が大きくなり易い。そこで、実施の形態4においては、低域側フィルタにおいて、入出力端子に最も近い直列腕回路に含まれる弾性波共振子にキャパシタを並列に接続することにより、バルク波損失をより効果的に抑制する場合について説明する。
【0072】
図16は、実施の形態4に係るフィルタ装置4の回路構成図である。フィルタ装置4の構成は、実施の形態3において参照された
図9のフィルタ装置2のフィルタFLT21がフィルタFLT41に置き換えられた構成である。フィルタFLT41の構成は、
図2のフィルタFLT21の構成にキャパシタCs2が加えられた構成である。これら以外の構成は、実施の形態3と同様であるため説明を繰り返さない。
【0073】
図16に示されるように、キャパシタCs2(第2容量素子)は、直列腕共振子s2(第2弾性波共振子)に並列に接続されている。直列腕共振子s2およびキャパシタCs2は、直列腕回路sc2(第2直列腕共振子)を形成している。直列腕共振子s2の比帯域幅は、並列腕共振子p1の比帯域幅よりも大きい。
【0074】
直列腕回路sc1(第1直列腕共振子)および直列腕回路sc2は、入出力端子T1とT2との間で、各々を両端として直列に接続されている。直列腕回路sc1は、入出力端子T1に最も近い。直列腕回路sc2は、入出力端子T2に最も近い。以下の表6に、実施の形態4における直列腕共振子s1,s2、並列腕共振子p1、直列腕回路sc1,sc2各々の共振周波数fr,反共振周波数fa,比帯域幅BWR,静電容量を示す。キャパシタCs1,Cs2については静電容量のみを示す。
【0076】
図17は、実施の形態3,4に係るフィルタ装置の通過特性および低域側フィルタの反射特性を併せて示す図である。
図17(a)は、
図16のフィルタ装置4の通過特性(実線)および実施の形態3に係るフィルタ装置の通過特性(点線)を示す。
図17(b)は、一方の入出力端子T1から信号が入力された場合の、
図16のフィルタFLT41の反射特性(実線)および実施の形態3における低域側フィルタの反射特性(点線)を示す。
図17(c)は、他方の入出力端子T2から信号が入力された場合の、
図16のフィルタFLT41の反射特性(実線)および実施の形態3における低域側フィルタの反射特性(点線)を併せて示す図である。
図18は、
図17(a)の1.53GHz〜1.56GHzの範囲の通過特性を拡大して示す図である。
【0077】
図17(b)および
図17(c)に示されるように、通過帯域PB21の高域端において、フィルタFLT41の反射損失は、実施の形態3に係る低域側フィルタの反射損失よりも小さい。
図18に示されるように、通過帯域PB21の高域端において、フィルタ装置4の挿入損失は、実施の形態3に係るフィルタ装置の挿入損失よりも小さい。
【0078】
通過帯域PB21の高域端において、フィルタFLT41の反射特性が実施の形態3よりも改善されることにより、フィルタ装置4の通過特性が実施の形態3よりも改善される。
【0079】
[実施の形態4の変形例]
実施の形態4に係るフィルタ装置の低域側フィルタにおいては、一方の入出力端子から低域側フィルタを経由してもう一方の入出力端子に至る経路に複数の直列腕回路が直列に配置され、複数の直列腕回路の両端の直列腕回路に含まれる弾性波共振
子にキャパシタが並列に接続されていればよい。
【0080】
図19は、実施の形態4の変形例に係るフィルタ装置4Aの回路構成図である。フィルタ装置4Aの構成は、
図16のフィルタ装置4のフィルタFLT41がFLT41A(第1フィルタ)に置き換えられた構成である。フィルタFLT41Aの構成は、フィルタFLT41の構成に直列腕共振子s3および並列腕共振子p2が追加された構成である。これら以外の構成は実施の形態4と同様であるため説明を繰り返さない。
【0081】
図19に示されるように、直列腕共振子s3は、直列腕回路sc1とsc2との間に接続されている。並列腕共振子p2は、接地点と、直列腕共振子s3および直列腕回路sc2の接続点との間に接続されている。直列腕回路sc1、直列腕共振子s3、および直列腕回路sc2は、入出力端子T1とT2との間において、直列腕回路sc1およびsc2を両端として直列に接続されている。
【0082】
以上、実施の形態4および変形例に係るフィルタ装置によれば、通過帯域の高域端での挿入損失を低減することができる。
【0083】
[実施の形態5]
実施の形態5においては、低域側フィルタに含まれる弾性波共振子に並列に接続されたキャパシタにスイッチを直列に接続し、当該スイッチの導通状態を切り替えることによって、低域側フィルタの通過特性を変化させる場合について説明する。
【0084】
図20は、実施の形態5に係るフィルタ装置5の回路構成図である。
図20に示されるように、フィルタ装置5は、フィルタFLT51(第1フィルタ),フィルタFLT52(第2フィルタ),フィルタFLT53と、スイッチ回路SWC1(第2スイッチ),スイッチ回路SWC2(第3スイッチ)と、共通端子T51(第1端子)と、入出力端子T52(第2端子)および入出力端子T53(第3端子)とを備える。フィルタ装置5、フィルタFLT51、およびフィルタFLT52は、通過帯域PB51(第1通過帯域)、通過帯域PB52(第2通過帯域)、および通過帯域PB53(第3通過帯域)をそれぞれ有する。フィルタFLT51は低域側フィルタであり、フィルタFLT52は高域側フィルタである。フィルタFLT53は、通過帯域PB53を有する。
【0085】
通過帯域PB51は、通過帯域PB52の一部および通過帯域PB53の一部を含んでいる。通過帯域PB52は、通過帯域PB51よりも狭い。通過帯域PB53は、通過帯域PB51よりも狭い。通過帯域PB53の中心周波数は、通過帯域PB52の中心周波数よりも高い。通過帯域PB52とPB53とは重なっていない。
【0086】
共通端子T51および入出力端子T52の間で、フィルタFLT52とスイッチ回路SWC1とがこの順に直列に接続されている。共通端子T51および入出力端子T52の間で、フィルタFLT51と、直列に接続されたフィルタFLT52およびスイッチ回路SWC1とが並列に接続されている。入出力端子T53と、フィルタFLT52およびスイッチ回路SWC1の接続点との間で、スイッチ回路SWC2とフィルタFLT53とがこの順に直列に接続されている。
【0087】
スイッチ回路SWC1は、スイッチSW51,SW52,SW5Gを含む。スイッチSW51,SW52は、フィルタFLT52と入出力端子T52との間で直列に接続されている。スイッチSW51,SW52は、フィルタFLT51と並列に接続されている。スイッチSW5Gは、接地点と、スイッチSW51およびSW52の接続点との間に接続されている。スイッチSW51およびSW52の導通状態は同期している。スイッチSW51(SW52)とスイッチSW5Gとは、排他的に導通状態が切り替えられる。
【0088】
スイッチ回路SWC2は、スイッチSW6,SW6Gを含む。フィルタFLT52、スイッチSW6、およびフィルタFLT53とは、共通端子T51および入出力端子T53の間でこの順に直列に接続されている。スイッチSW6Gは、接地点と、スイッチSW6およびフィルタFLT53の接続点との間に接続されている。スイッチSW6とSW6Gとは、排他的に導通状態が切り替えられる。
【0089】
フィルタFLT51は、直列腕共振子s11(第1弾性波共振子),直列腕共振子s12,直列腕共振子s13(第2弾性波共振子)と、並列腕共振子p11〜p14と、スイッチSW91(第1スイッチ),スイッチSW92(第1スイッチ),スイッチSW93(第1スイッチ)と、キャパシタCs11(第1容量素子),キャパシタCs12,キャパシタCs13(第2容量素子)とを含む。直列腕共振子s11〜s13は、共通端子T51と入出力端子T52との間で直列に接続されている。並列腕共振子p11は、接地点と、共通端子T51および直列腕共振子s11の接続点との間に接続されている。並列腕共振子p12は、接地点と、直列腕共振子s11およびs12の接続点との間に接続されている。並列腕共振子p13は、接地点と、直列腕共振子s12およびs13の接続点との間に接続されている。並列腕共振子p14は、接地点と、直列腕共振子s13および入出力端子T52の接続点との間に接続されている。
【0090】
スイッチSW91〜SW93は、キャパシタCs11〜Cs13とそれぞれ直列に接続されている。スイッチSW91とキャパシタCs11は、直列腕共振子s11と並列に接続されている。スイッチSW92とキャパシタCs12は、直列腕共振子s12と並列に接続されている。スイッチSW93とキャパシタCs13は、直列腕共振子s13と並列に接続されている。フィルタFLT51の通過特性は、スイッチSW91〜SW93がオンの場合と、スイッチSW91〜SW93がオフの場合とで異なる。
【0091】
スイッチSW51,SW52,SW5G、スイッチSW6,SW6G、およびスイッチSW91〜SW93は、たとえば不図示のRFICに含まれる制御回路からの制御信号に応じて、導通状態が切り替えられる。当該制御回路は、RFICとは別個に設けられてもよい。
【0092】
フィルタFLT52は、移相器PS21(第1移相器),移相器PS22(第2移相器)と、弾性波フィルタAS1とを含む。弾性波フィルタAS1は、直列腕共振子s21と、並列腕共振子p21,p22とを含む。移相器PS21は、共通端子T51と直列腕共振子s21との間に接続されている。移相器PS22は、直列腕共振子s21とスイッチSW6との間に接続されている。移相器PS21,PS22は、フィルタFLT51の通過帯域PB52におけるフィルタFLT52のインピーダンスを増加させるように構成されている。
【0093】
フィルタFLT53は、直列腕共振子s31と、縦結合型共振器32と、並列腕共振子p31とを含む。直列腕共振子s31と縦結合型共振器32とは、スイッチSW6と入出力端子T53との間で直列に接続されている。並列腕共振子p31は、接地点と、縦結合型共振器32および入出力端子T53の接続点との間に接続されている。縦結合型共振器32は、たとえば、2つの反射器の間において並置された複数のIDT(Interdigital Transducer)電極から形成されている。縦結合型共振器32は、反射器を有していなくてもよい。
【0094】
図21は、
図20のフィルタ装置5のモジュール構成の一例を示す図である。
図21に示されるように、配線基板50に、パッケージ(チップ)51〜55、およびインダクタLp21,Lp22が実装されている。
【0095】
パッケージ51〜53は、共振子用のパッケージである。パッケージ54,55は、スイッチ用のパッケージである。パッケージ51〜55は、配線基板50に実装されるための表面電極を底面に有する。当該表面電極は、
図21において丸印で示されている。なお、
図21においては、パッケージ構造を見易くするため、各パッケージに構成された回路素子および配線を模式的に示し、パッケージ51〜55の内部を透過させて、各パッケージの底面の表面電極を図示している。
【0096】
配線基板50は、共通端子T51、入出力端子T52およびT53のそれぞれを構成する外部接続電極を有する。この外部接続電極は、例えば、配線基板50をマザー基板等に実装するための表面電極、あるいは配線基板50と他の電子部品とを接続するコネクタである。
【0097】
パッケージ51には、直列腕共振子s11〜s13および並列腕共振子p11〜p14が実装されている。パッケージ55には、スイッチSW91〜SW93と、キャパシタCs11〜Cs13とが実装されている。パッケージ51,55は、フィルタFLT51を形成している。
【0098】
パッケージ52には、直列腕共振子s21、並列腕共振子p21,p22、およびキャパシタCs21,Cs22が実装されている。インダクタLp21とキャパシタCs21は、移相器PS21を形成している。インダクタLp22とキャパシタCs22は、移相器PS22を形成している。パッケージ52、およびインダクタLp21,Lp22は、フィルタFLT52を形成している。
【0099】
パッケージ53には、直列腕共振子s31、並列腕共振子p31、および縦結合型共振器32が実装されている。パッケージ53は、フィルタFLT53を形成している。パッケージ54には、スイッチSW51、SW52、SW5G、SW6、およびSW6Gが形成されている。
【0100】
スイッチSW51、SW52、SW5G、SW6、SW6G、スイッチSW91〜SW93、キャパシタCs11〜Cs13、Cs21、およびCs22は、上記と異なる構成でモジュール化されていてもかまわない。たとえば、キャパシタCs11〜Cs13は、スイッチ用のパッケージではなく、共振子用のパッケージに実装されてもよいし、配線基板50の内部に実装されてもよい。
【0101】
図22は、
図20のフィルタ装置の通過特性と、スイッチSW51,SW52,SW5G、SW6,SW6G,SW91〜SW93の各導通状態を示す表とを併せて示す図表である。
【0102】
図20および
図22を参照しながら、
図22(a)は、スイッチSW51,SW52,SW6Gがオンであり、スイッチSW5G,SW6,SW91〜SW93がオフである場合の、共通端子T51および入出力端子T52間の通過特性を示す図である。
図22(a)に示されるスイッチの導通状態における共通端子T51および入出力端子T52間の通過帯域は、フィルタFLT51およびFLT52によって形成された通過帯域PB51となる。なお、この場合、入出力端子T53には高周波信号は入出力されない。
【0103】
図22(b)は、スイッチSW51,SW52,SW6G,SW91〜SW93がオフであり、スイッチSW5G,スイッチSW6がオンである場合の共通端子T51およびT52間の通過特性IL51、およびスイッチSW51,SW52,SW6Gがオフであり、スイッチSW5G,スイッチSW6,SW91〜SW93がオンである場合の共通端子T51および入出力端子T52間の通過特性IL52を併せて示す図である。
図22(b)に示されるスイッチの導通状態における共通端子T51および入出力端子T52間の通過帯域は、フィルタFLT51によって形成された通過帯域PB52となる。
【0104】
図22(c)は、スイッチSW51,SW52,SW6G,SW91〜SW93がオフであり、スイッチSW5G,SW6がオンである場合の共通端子T51および入出力端子T53間の通過特性を示す図である。
図22(c)に示されるスイッチの導通状態における共通端子T51および入出力端子T53間の通過帯域は、フィルタFLT52によって形成された通過帯域PB53となる。なお、SW91〜SW93がオンの場合であっても同様の通過特性となる。
【0105】
図22(b)を参照しながら、通過帯域PB52における通過特性IL51とIL52とはほぼ同様に変化している。通過帯域PB52より大きい周波数においては、通過特性IL52の方が通過特性IL51より低い周波数で減衰極が生じる。その結果、通過帯域PB52と通過帯域PB53との間の周波数帯における通過特性IL52の増加の態様は通過特性IL51の増加の態様よりも急峻である。通過帯域PB53においては、通過特性IL51とIL52とは異なる態様で変化している。フィルタ装置5によれば、スイッチSW91〜SW93の導通状態を切り替えられることにより、フィルタFLT51の通過特性を変化させることができる。
【0106】
フィルタ装置5によれば、
図22(a)に示されるスイッチの導通状態において、通過帯域PB51の高域端の挿入損失を低減することができる。また、フィルタ装置5によれば、通過帯域PB51のバンドパスフィルタ構成(
図22(a)のスイッチの導通状態)と、通過帯域PB52および通過帯域PB53を有するマルチプレクサ構成(
図22(b)および
図22(c)に示されるスイッチの導通状態)とを切り替えることができる。
【0107】
以上、実施の形態5に係るフィルタ装置によれば、通過帯域の高域端での挿入損失を低減することができる。
【0108】
[実施の形態6]
実施の形態6においては、実施の形態1〜5おいて説明したフィルタ装置を用いて実現可能な高周波フロントエンド回路および通信装置について説明する。
【0109】
図23は、実施の形態6に係る通信装置1000の構成図である。
図23に示されるように、通信装置1000は、高周波フロントエンド回路300と、RFIC400と、BBIC(Baseband Integrated Circuit)500と、アンテナ素子200とを備える。
【0110】
高周波フロントエンド回路300は、フィルタ装置6と、スイッチ回路SWC6と、デュプレクサ67と、送信増幅回路60Tおよび62Tと、受信増幅回路60Rおよび62Rとを含む。
【0111】
スイッチ回路SWC6は、アンテナ素子200、フィルタ装置6、およびデュプレクサ67に接続されている。スイッチ回路SWC6は、アンテナ素子200とフィルタ装置6との接続、および、アンテナ素子200とデュプレクサ67との接続を切り替える。
【0112】
フィルタ装置6は、フィルタFLT61(第1フィルタ),フィルタFLT62(第2フィルタ)と、共通端子T61(第1端子)と、入出力端子T62(第2端子),入出力端子T63(第3端子)と、スイッチSW61(第2スイッチ),スイッチSW62(第3スイッチ)とを含む。フィルタ装置6、フィルタFLT61、およびフィルタFLT62の通過帯域は、それぞれ通過帯域PB61(第1通過帯域),通過帯域PB62(第2通過帯域),通過帯域PB63(第3通過帯域)である。フィルタFLT61は低域側フィルタであり、フィルタFLT62は高域側フィルタである。
【0113】
通過帯域PB61は、通過帯域PB62の一部および通過帯域PB63の一部を含んでいる。通過帯域PB62は、通過帯域PB61よりも狭い。通過帯域PB63は、通過帯域PB61よりも狭い。通過帯域PB63の中心周波数は、通過帯域PB62の中心周波数よりも高い。通過帯域PB62とPB63とは重なっていない。
【0114】
共通端子T61および入出力端子T62の間で、フィルタFLT62とスイッチSW61とがこの順に直列に接続されている。共通端子T61および入出力端子T62の間で、フィルタFLT61と、直列に接続されたフィルタFLT62およびスイッチSW61とが並列に接続されている。スイッチSW62は、入出力端子T63と、フィルタFLT62およびスイッチSW61の接続点との間に接続されている。
【0115】
フィルタ装置6は、実施の形態1〜4に係るフィルタ装置にスイッチSW61,SW62、および入出力端子T63を追加することによって実現可能である。また、フィルタ装置6は、実施の形態5に係るフィルタ装置によっても実現可能である。
【0116】
共通端子T61は、スイッチ回路SWC6に接続されている。入出力端子T62は、受信増幅回路60Rに接続されている。入出力端子T63は、送信増幅回路60Tに接続されている。
【0117】
送信増幅回路60Tは、所定の周波数帯域の高周波信号を電力増幅するパワーアンプである。受信増幅回路60Rは、所定の周波数帯域の高周波信号を電力増幅するローノイズアンプである。
【0118】
デュプレクサ67は、送信端子および受信端子を有する。デュプレクサ67は通過帯域PB61〜PB63とは異なる周波数帯域を送信帯域および受信帯域とする。
【0119】
送信増幅回路62Tは、デュプレクサ67の送信端子に接続されている。送信増幅回路62Tは、所定の周波数帯域の高周波送信信号を電力増幅するパワーアンプである。受信増幅回路62Rは、デュプレクサ67の受信端子に接続されている。受信増幅回路62Rは、所定の周波数帯域の高周波信号を電力増幅するローノイズアンプである。
【0120】
RFIC400は、アンテナ素子200で送信および受信される高周波信号を処理する。具体的には、RFIC400は、アンテナ素子200から受信側信号経路を介して入力された高周波信号を、ダウンコンバートなどにより信号処理し、BBIC500へ出力する。RFIC400は、BBIC500から入力された送信信号をアップコンバートなどにより信号処理して出力する。
【0121】
また、RFIC400は、導通状態を切り替える制御信号をスイッチ回路SWC6,スイッチSW61,SW62の各々に出力する。当該制御信号は、RFICとは別個に設けられた制御回路から出力されてもよい。
【0122】
[実施の形態6の変形例]
フィルタ装置6においては、第3スイッチが、第3入出力端子と、第2フィルタおよび第2スイッチの接続点との間に接続されている場合について説明した。実施の形態6に係るフィルタ装置は、
図24に示される実施の形態6の変形例に係るフィルタ装置6Aのように、スイッチSW62(第3スイッチ)が、入出力端子T62(第2端子)と、低域側フィルタFLT61(第1フィルタ)およびスイッチSW61(第2スイッチ)の接続点との間に接続されていてもよい。
【0123】
以上、実施の形態6および変形例に係る通信装置によれば、高域端における挿入損失が低減されたフィルタ装置により、通信品質を向上させることができる。
【0124】
[弾性波共振子の容量密度および容量素子の容量密度の関係について]
以下では、実施の形態1〜6の低域側フィルタにおいて、容量素子が並列に接続される弾性波共振子の容量密度と、当該容量素子の容量密度の関係について補足的に説明する。なお、容量密度とは、単位面積当たりの静電容量である。
【0125】
容量素子は、たとえば誘電体の表面に櫛歯状の電極を形成することによって構成することができる。あるいは、誘電体を介して対向するよう2つの電極を形成することによっても構成することができる。また、この場合において、誘電体の誘電率を弾性波共振子の誘電率より大きくすること、または、対向する電極の間隔を小さくすることにより、容量素子の単位面積当たりの静電容量が大きくなる。その結果、フィルタ装置を小型にすることができる。
【0126】
上記誘電体に圧電性を有する材料を用いた場合、当該容量素子においてもバルク波が発生する。そのため、当該容量素子が並列に接続される弾性波共振子においてバルク波が発生する周波数において当該容量素子にバルク波が発生しないように、容量素子の容量密度を弾性波共振子の容量密度よりも大きくして、容量素子の自己共振周波数を弾性波共振子の反共振周波数よりも高くする必要がある。
【0127】
たとえば、弾性波共振子にSAW共振子を用いた場合、弾性波共振子が、圧電性を有する基板上に形成された複数の電極指からなるIDT電極を有するとする。当該弾性波共振子に並列に接続される容量素子が、当該基板上に形成された複数の電極指からなる櫛歯容量電極を有するとする。当該容量素子のインピーダンスが極大となる周波数は、実施の形態に係るフィルタ装置の第1通過帯域より高い周波数帯となるように設計される。このような場合、櫛歯容量電極における複数の電極指の繰返しピッチ(電極指ピッチ)をIDT電極の電極指ピッチより小さくすることにより、容量素子の容量密度を弾性波共振子の容量密度よりも大きくすることができる。
【0128】
櫛歯容量電極における電極指の膜厚を、IDT電極の電極指の膜厚より小さくすることにより、櫛歯容量電極における電極指のピッチをさらに小さくできるため、容量素子の容量密度をさらに大きくすることができる。また、櫛歯容量電極における複数の電極指のピッチに対する複数の電極指の占有率(電極指デューティ比)を、IDT電極の電極指デューティ比より大きくすることにより、容量素子の容量密度をさらに大きくすることができる。
【0129】
たとえば、弾性波共振子にBAW共振子を用いた場合、弾性波共振子が、第1電極と、圧電体を介して第1電極に対向する第2電極とを有するとする。容量素子が、第3電極と、誘電体を介して第3電極に対向する第4電極とを有するとする。このような場合、容量素子の誘電体の膜厚を弾性波共振子の圧電体の膜厚よりも小さくすることにより、容量素子の容量密度を弾性波共振子の容量密度よりも大きくすることができる。あるいは、容量素子の誘電体の誘電率を弾性波共振子の圧電体の誘電率よりも大きくすることにより、容量素子の容量密度を弾性波共振子の容量密度よりも大きくすることができる。
【0130】
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わされて実施されることも予定されている。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。