特許第6889495号(P6889495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6889495放射線療法のためのフルエンスマップ生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889495
(24)【登録日】2021年5月25日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】放射線療法のためのフルエンスマップ生成方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   A61N5/10 P
【請求項の数】32
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2018-547439(P2018-547439)
(86)(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公表番号】特表2019-507657(P2019-507657A)
(43)【公表日】2019年3月22日
(86)【国際出願番号】US2017021647
(87)【国際公開番号】WO2017156316
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2020年2月19日
(31)【優先権主張番号】62/305,974
(32)【優先日】2016年3月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510246448
【氏名又は名称】リフレクション メディカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】オコナー, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ボロネンコ, イェフゲン
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−522128(JP,A)
【文献】 特表2013−508804(JP,A)
【文献】 特表2003−534823(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/159455(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0207531(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0066892(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0085643(US,A1)
【文献】 特開2014−023741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線療法のための放射線強度マップを計算するためのシステムであって
前記システムは、プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
象の選択された体積内の複数のボクセルを選択することであって、前記複数のボクセルのそれぞれは、許容線量範囲を有する、ことと、
複数の初期小線束強度重みを有する複数の小線束のセットを選択することであって、前記複数の小線束のセットの各小線束は、bによって表され、前記複数の初期小線束強度重みの各初期小線束強度重みは、xによって表され、前記複数の小線束のそれぞれは、放射線ビームの一部に対応し、前記複数の初期小線束強度重みのうちの1つは、前記複数の小線束のセットのうちの対応する1つの小線束の強度の重みである、ことと、
前記複数の小線束のセットbに基づいて前記対象の体積に対する線量マトリクスAを計算することであって、前記線量マトリクスAは、前記複数の小線束のセットbによって前記複数のボクセルのそれぞれに送達されるボクセル当たりの線量を表す、ことと、
ナルティ関数を用いて、近接勾配法(xk−1→x)に従って前記複数の初期小線束強度重みを調整することにより、複数の小線束強度重みの最終セットxを有する放射線強度マップを計算することであって、前記ペナルティ関数は、複数の小線束強度重みの反復間の変化が所定の誤差基準未満となるように、調整される前記複数の小線束強度重みが複数の小線束強度重みの最終セットに収斂するまで、前記複数の初期小線束強度重みに対して反復する、こと
を行うように構成されており、
前記ペナルティ関数は、前記対象の体積に対する許容線量を取得するために、前記複数の初期小線束強度重みを調整することを指令する、システム
【請求項2】
前記近接勾配法は、加速近接勾配法である、請求項1に記載のシステム
【請求項3】
前記近接勾配法は、高速反復縮小閾値アルゴリズム(FISTA)である、請求項2に記載のシステム
【請求項4】
前記ペナルティ関数は、前記対象の体積に対する許容線量を取得するために、 前記複数の初期小線束強度重みを調整することを線形に指令する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム
【請求項5】
前記ペナルティ関数は、微分可能であるように平滑化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム
【請求項6】
前記複数の小線束強度重みの初期セット{xは、オールゼロベクトルである、請求項1〜のいずれか1項に記載のシステム
【請求項7】
前記複数の小線束のセットb中の前記複数の小線束は、前記複数の小線束のセットbよりも小さい複数の発射角度セット{f}間で分割されている、請求項1〜のいずれか1項に記載のシステム
【請求項8】
前記複数の発射角度のセット{fは、放射線治療装置の患者領域の周りの複数の角度を含む、請求項に記載のシステム
【請求項9】
前記近接勾配法ペナルティ関数は、1つ以上の2次のペナルティを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のシステム
【請求項10】
前記1つ以上の2次のペナルティは、1つ以上のペナルティを含む、請求項に記載のシステム
【請求項11】
前記ペナルティ関数は、前記許容線量範囲外であるボクセル線量ペナルティを科す、請求項1〜10のいずれか1項に記載のシステム
【請求項12】
前記ペナルティ関数は、前記対象の体積中の前記複数のボクセルの全ての前記許容線量範囲外である前記ボクセル線量集約する一価ペナルティ関数である、請求項11に記載のシステム
【請求項13】
前記複数のボクセルのそれぞれの前記許容線量範囲は、治療計画によっ決定される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のシステム
【請求項14】
前記対象の体積は、対象の第1の体積であり
前記プロセッサは、
対象の選択された第2の体積内の複数の第2のボクセルを選択することであって、前記複数のボクセルのそれぞれは、許容線量範囲を有する、こと
を行うようにさらに構成されており、
前記線量マトリックスAは、前記複数の小線束のセットbに基づいて、前記対象の第1の体積および前記対象の第2の体積に対して計算され、前記線量マトリクスAは、前記複数の小線束のセットbによって前記複数の第1のボクセルおよび前記複数の第2のボクセルのそれぞれに送達されるボクセル当たりの線量を表す、請求項1〜13のいずれか1項に記載のシステム
【請求項15】
前記プロセッサは、前記放射線強度マップ多分割コリメータおよび放射線源位置決め命令のセットに分割するようにさらに構成されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載のシステム
【請求項16】
放射線治療のための放射線強度マップを計算するためのシステムであって
前記システムは、プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
対象の体積を選択することと、
記対象の体積内の複数のボクセルを選択することであって、前記複数のボクセルのそれぞれは、許容線量範囲を有する、ことと、
複数の初期小線束強度重みを有する複数の小線束のセットを選択することであって、前記複数の小線束のセットの各小線束は、bによって表され、前記複数の初期小線束強度重みの各初期小線束強度重みは、xによって表され、前記複数の小線束のそれぞれは、放射線ビームの一部に対応し、前記複数の初期小線束強度重みのうちの1つは、前記複数の小線束のセットのうちの対応する1つの小線束の強度の重みである、ことと、
前記複数の小線束のセットbに基づいて前記対象の体積に対する線量マトリクスAを計算することであって、前記線量マトリクスAは、前記複数の小線束のセットbによって前記複数のボクセルのそれぞれに送達されるボクセル当たりの線量を表す、ことと、
ナルティ関数を用いて、近接勾配法更新(xk−1→x)に従って前記複数の初期小線束強度重みを調整することにより、複数の小線束強度重みの最終セットxを含む放射線強度マップを計算することであって、前記ペナルティ関数は、複数の小線束強度重みの反復間の変化が所定の誤差基準未満となるように、調整される前記複数の小線束強度重みが複数の小線束強度重みの最終セットに収斂するまで、前記複数の初期小線束強度重みに対して反復する、ことと、
前記放射線強度マップをプロセッサメモリに格納すること
を行なうように構成されており、
前記ペナルティ関数は、前記対象の体積に対する許容線量を取得するために、前記複数の初期小線束強度重みを調整することを指令する、システム。
【請求項17】
前記近接勾配法は、加速近接勾配法である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記加速近接勾配法は、高速反復縮小閾値アルゴリズム(FISTA)である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記ペナルティ関数は、前記対象の体積に対する許容線量を取得するために、前記複数の初期小線束強度重みを調整することを線形に指令する、請求項1618のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記ペナルティ関数は、微分可能であるように平滑化されている、請求項1619のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記ペナルティ関数は、前記許容線量範囲外であるボクセル線量ペナルティを科す、請求項1620のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記ペナルティ関数は、前記対象の体積内の前記複数のボクセルの全ての前記許容線量範囲外である前記複数のボクセル線量集約する一価ペナルティ関数である、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記複数のボクセルのそれぞれの前記許容線量範囲は、治療計画によっ決定される、請求項1622のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
前記プロセッサは、
対象の第2の体積を選択することと、
前記対象の第2の体積内の複数の第2のボクセルを選択することであって、前記複数のボクセルのそれぞれは、許容線量範囲を有する、ことと
行なうようさらに構成されており、
前記線量マトリックスAは、前記複数の小線束のセットbに基づいて、前記対象の第1の体積および前記対象の第2の体積に対して計算され、前記線量マトリクスAは、前記複数の小線束のセットbによって前記複数の第1のボクセルおよび前記複数の第2のボクセルのそれぞれに送達されるボクセル当たりの線量を表す、請求項1623のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記システムは、治療用放射線源を含む放射線治療システムをさらに備え、前記治療用放射線源は、患者領域の周りを移動可能であり、かつ前記放射線強度マップに従って前記患者領域に放射線小線束を照射するように構成されている、請求項1624のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
前記複数の小線束のセットb中の前記複数の小線束は、前記複数の小線束のセットbよりも小さい複数の発射角度のセット{f}間で分割されている、請求項16〜25のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
前記複数の発射角度のセット{fは、放射線治療装置の前記患者領域の周りの複数の角度を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記放射線治療システムは、前記治療用放射線源のビーム経路内に配置された多分割コリメータをさらに含み、前記プロセッサは、前記放射線強度マップを多分割コリメータ命令のセットに分割し、前記命令を前記放射線治療システムに送信するように構成されている、請求項2527のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項29】
前記放射線治療システムは、1つ以上のPET検出器をさらに含む、請求項2528のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項30】
前記治療用放射線源は、少なくとも約40RPMの速度で前記患者領域の周りで回転可能である、請求項2529のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項31】
前記近接勾配法ペナルティ関数は、1つ以上の指標関数を含み、前記1つ以上の指標関数は、以下の式



によって定義され、Iは、指標関数を表し、Cは、閉凸集合を表し、xは変数を表す、請求項1に記載のシステム
【請求項32】
前記近接勾配法ペナルティ関数は、1つ以上の指標関数を含み、前記1つ以上の指標関数は、以下の式



によって定義され、Iは、指標関数を表し、Cは、閉凸集合を表し、xは変数を表す、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年3月9日に出願された米国仮特許出願第62/305,974号に対する優先権を主張し、この仮特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
放射線治療計画におけるフルエンスマップ最適化(FMO)問題は、内点法により、または投射勾配法もしくは準ニュートン法などの勾配法により、ほとんどの場合、解決される。第1のアプローチでは、最適化問題は、典型的には線形プログラムまたは2次プログラムとして再定式化され、次いで、内点法を用いて解決される。内点法は、中小サイズの問題には極めてよく機能するが、各反復時に大きな線形方程式系を解く必要があるという欠点を有する。大きなフルエンスマップ最適化問題を含む大規模な問題の場合、これにより、計算が集中し、手に負えなくなる可能性がある。勾配法は、このような制限を受けないが、非可微分目的関数や複雑な制約を取り扱うことができない。このことは、フルエンスマップ最適化問題をどのように定式化することができるかに関して大きな制限を課し、結果として得られる治療計画の質を制限する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】A.Chambolle and T. Pock. A first-order primal-dual algorithm for convex problemswith applications to imaging. Journal of Mathematical Imaging and Vision,40(1):120-145, 2011.
【非特許文献2】N.Parikh and S. Boyd. Proximal algorithms. Foundations and Trends inoptimization, 1(3):123-231, 2013.
【非特許文献3】Beck, A. et al. ( 2009 ). "A fast iterative shrinkage - thresholding algorithmfor linear inverse problems. SIAM journal on imaging sciences," 2 :183-202.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書では、フルエンスマップを生成するための方法、及び/または放射線治療計画のためのフルエンスマップ最適化(FMO)が記載されている。FMOのための方法の一変形例は、平滑化された非可微分ペナルティ関数を用いた近接勾配法(例えば、FISTAなどの加速近接勾配法)を含み、放射線療法システムが使用することができるフルエンスマップを計算し、指定された放射線量を、1つまたは複数の対象の領域(ROI)または対象の体積(VOI)に照射することができる。このフルエンスマップは、所定の放射線量計画(例えば、治療計画)に由来する放射線小線束データ(例えば、小線束強度データ)のセットを含むことができる。フルエンスマップを使用して、ROIに対して1つまたは複数の選択された角度に放射線源を位置決めし、所望の放射線量がROIに照射するように、放射線源のビーム強度を調整し、同時に放射線被曝による臓器の危険性(OAR)を低減することができる。本明細書に記載された方法は、OARの放射線被曝が、予め選択された閾値未満となるように、フルエンスマップを計算することができ、同時に、依然として、選択された放射線量をROIに送達することができる。いくつかの変形例が、1つまたは複数のL型ペナルティまたはコスト関数を使用することができ、これに対して、他の変形例は、1つまたは複数のL型ペナルティまたはコスト関数を使用することができる。
【0005】
放射線療法のためのフルエンスマップを計算または生成することには、対象の体積を選択すること、対象の体積内の複数のボクセルを選択すること、及び候補小線束のセットb={b}を選択することが含まれる。小線束は、(例えば、図1Bに示すように)多分割コリメータ分割開口により画定される全放射線ビームの一部とすることができる。複数のボクセルの各々が、許容線量範囲(例えば、最大放射線量基準及び最小放射線量基準)を有することができ、この許容線量範囲は、治療計画及び/または臨床医により画定される。候補小線束のセットは、初期小線束強度重みx={x}を有することができる。この方法は、候補小線束のセットbに基づいて、対象の体積に対する線量マトリクスAを計算することを含むことができる。この線量マトリクスAは、候補小線束のセットbにより複数のボクセルの各々に送達されるボクセル当たりの線量を表す。n個の候補小線束{b}及びk個の予め選択されたボクセルを有するVOIに対する線量計算マトリクスAの一例は、(k×n)マトリクスである。線量計算マトリクスAの第i番目の列(k個の要素を有する)は、単一重み付け小線束bからk個の各ボクセルへの線量寄与を表す。線量マトリクスAは、例えば、患者の体積を貫通する経路に沿って各小線束のアパーチャを光線追跡し、k個のボクセルの各々に対する単一重み付け小線束の寄与を計算することによって、列単位で計算されることができる。この線量計算処理のためのいくつかの既知のアルゴリズムが存在し、それらの精度及び速度には、違いがある。本明細書に記載された任意の方法で用いることができる線量計算アルゴリズムのいくつかの例としては、モンテカルロシミュレーション、コラプストコーンコンボリューションスーパーポジション、ペンシルビームコンボリューションなどを挙げることができる。
【0006】
また、フルエンスマップ生成方法は、1つまたは複数の線形ペナルティを含むペナルティ関数を用いる近接勾配法(xk−1→x)に従って、初期小線束強度重みを調整することによって、小線束強度重みの最終セットxを有するフルエンスマップを計算することも含むことができる。この近接勾配法は、高速反復縮小閾値アルゴリズム(FISTA)などの加速近接勾配法とすることができる。近接勾配法は、小線束強度重みの反復間の変化が所定の誤差基準未満となるように、調整される小線束強度重みが小線束強度重みの最終セットに収斂するまで、初期小線束強度重みに関して反復することができる。より一般的には、この方法は、任意の近接方法を用いることができる。最適化問題を解くことは、実数値関数を最小化または最大化する入力値を見つけることを必要とする。最小化が使用される場合、関数は、多くの場合、「コスト関数」または「ペナルティ関数」と呼ばれる。凸最適化は、様々な種類の関数をいわゆる凸関数に限定する。凸最適化のためのアルゴリズムは、グローバル最小値への収斂を保証し、他の有用な特性を有することができる。近接アルゴリズムまたは方法は、凸最適化問題を解くためのアルゴリズムであり、フルエンスマップ生成において、例えば凸ペナルティ関数を最小化するためのアルゴリズムであり得る。近接アルゴリズムは、ペナルティ関数の成分の近接演算子を使用する。関数の近接演算子を評価するには、小規模な凸最適化問題を解く必要がある。これらの小規模なサブ問題の場合、通常、閉形式解が存在し、アルゴリズム全体を効率よくする。近接勾配アルゴリズムは、近接アルゴリズムの一例であり、コストまたはペナルティ関数は、f(x)+g(x)として分離されることができると仮定され、ここで、f(x)は、微分可能であり、g(x)は、近接演算子の単純な閉形式を有する。放射線療法フルエンスマップ最適化及び/またはフルエンスマップ生成の場合、最適化問題は、多重小線束及び多重ボクセルを必要とするが、ペナルティ関数は、スカラ実数値関数である必要がある。通常使用されるペナルティ関数(またはコスト関数)は、多重成分の総和を含むことができ、各成分は、反復処理を実行して特定の問題目標を満たすような解に誘導する。放射線療法の場合において、満たされるべき問題目標は、患者内のVOI(または複数のVOI)に対する処方標的線量である。そして次にまた、各成分は、多重ボクセルの多重小線束にわたる総和でもある。ペナルティ関数成分の一般的な選択は、Lペナルティであり、2次ペナルティとしても知られている。二次ペナルティまたはコスト関数は、二乗和であり、例えばsum(d)は、線量全体を最小化する傾向があるペナルティである。ペナルティまたはコスト関数のいくつかの成分は、また、線形ペナルティとしても知られているLペナルティとすることができ、このペナルティは、単純な総和、例えばsum(d)である。ペナルティまたはコスト関数は、1つのまたは複数のLペナルティ、及び/または1つもしくは複数のLペナルティを含むことができる。加速近接勾配法は、(運動量項などの)加算項を含み、解集合への収斂に直接関連し、かつ/または加速させる(すなわち、反復の割合を増加させる、反復の回数を減少させる)のに役立つことができる。
【0007】
フルエンスマップを生成または計算することは、ペナルティ関数が微分可能となるように、そのペナルティ関数を平滑化することを含むことができる。例えば、ペナルティ関数は、Moreau−Yosida正則化を用いて平滑化されることができる。小線束強度重みの初期セット{x}は、オールゼロベクトルである。候補小線束のセットb中の小線束が、発射位置または発射角度のより小さいセット{f}間で分割されている。発射位置は、放射線源が、小線束を発射するように(例えば、患者領域に対して)位置決めされることができる場所である。放射線源が円形の回転可能なガントリ上に搭載されている放射線治療システムでは、発射位置は、発射角度であり、患者治療領域の周りの円形ガントリの周りの場所(0度から360度まで)によって特定されることができる。例えば、発射角度のセット{f}は、放射線治療装置の患者領域の周りの複数の角度を含むことができる。この複数の発射角度は、患者領域の周りに360度均一に分布されることができる。
【0008】
本明細書に記載された任意の近接勾配法ペナルティ関数は、1つまたは複数の二次またはLペナルティを含むことができる。ペナルティ関数は、許容線量範囲外のボクセル線量エクスカーションにペナルティを科すことができる。すなわち、近接勾配法反復の一部として、許容線量範囲外の線量偏差の大きさが、小線束重みのセットの計算の中に組み込まれる。そのようなペナルティ関数は、結果として許容線量範囲内にないボクセルまたはVOIへの線量送達となる小線束を抑止することができる。いくつかの方法は、対象の体積内の全ボクセルのうちの許容線量範囲外のボクセル線量エクスカーションを集約する一価ペナルティ関数を含むペナルティ関数を有することができる。複数のボクセルの各々の許容線量範囲は、治療計画によって少なくとも部分的に決定されることができる。
【0009】
フルエンススマップの生成または計算は、第2の対象の体積を選択すること、ボクセルの各々が許容線量範囲を有する、第2の対象の体積内の第2の複数のボクセルを選択すること、ならびに第2の対象の体積及び第2の複数のボクセルを含むように線量マトリクスAを計算することを含むことができる。すなわち、線量マトリクスAは、候補小線束のセットbによって第1及び第2の複数のボクセルの各々に送達されるボクセル当たりの線量を表すことができる。別の選択肢として、いくつかの方法は、フルエンスマップを分割して多分割コリメータ及び放射線源位置決め命令のセットにすることを含むことができる。
【0010】
また、放射線治療のためのフルエンスマップを計算または生成するためのシステムが、本明細書に記載されている。システムは、プロセッサであって、対象の体積を選択することと、対象の体積内の複数のボクセルを選択することであって、ボクセルの各々が許容線量範囲を有する複数のボクセルを選択することと、初期小線束強度重みx={x}を有する候補小線束のセットb={b}を選択することと、候補小線束のセットbに基づいて対象の体積に対する線量マトリクスAを計算することであって、この線量マトリクスAは、候補小線束のセットbによって複数のボクセルの各々に送達されるボクセル当たりの線量を表す、計算することと、小線束強度重みの反復間の変化が所定の誤差基準未満となるように、調整される小線束強度重みが小線束強度重みの最終セットに収斂するまで、前記初期小線束強度重みに対して反復する1つまたは複数の線形ペナルティを含むペナルティ関数を用いて、近接勾配法更新(xk−1→x)に従って前記初期小線束強度重みを調整することにより、小線束強度重みの最終セットxを含むフルエンスマップを計算することと、を行なうように構成されたプロセッサ、を含むことができる。また、このプロセッサは、フルエンスマップをプロセッサメモリに保存するように構成されることもできる。小線束は、(例えば、図1Bに示すように)多分割コリメータ分割開口により画定される全放射線ビームの一部とすることができる。複数のボクセルの各々が、許容線量範囲(例えば、最大放射線量基準及び最小放射線量基準)を有することができ、この許容線量範囲は、治療計画及び/または臨床医により画定される。候補小線束のセットは、初期小線束強度重みx={x}を有することができる。この線量マトリクスAは、候補小線束のセットbにより複数のボクセルの各々に送達されるボクセル当たりの線量を表す。n個の候補小線束{b}、及びk個の予め選択されたボクセルを有するVOIに対する線量計算マトリクスAの一例は、(kxn)マトリクスである。線量計算マトリクスAの第i番目の列(k個の要素を有する)は、単一重み付け小線束bから各k個のボクセルへの線量寄与を表す。線量マトリクスAは、例えば、患者の体積を貫通する経路に沿って各小線束のアパーチャを光線追跡し、k個のボクセルの各々に対する単一重み付け小線束の寄与を計算することによって、列単位で計算されることができる。この線量計算処理のためのいくつかの既知のアルゴリズムが存在し、それらの精度及び速度には、違いがある。本明細書に記載された任意の方法で用いることができる線量計算アルゴリズムのいくつかの例としては、モンテカルロシミュレーション、コラプストコーンコンボリューションスーパーポジション、ペンシルビームコンボリューションなどが挙げられる。
【0011】
システムプロセッサが、高速反復縮小閾値アルゴリズム(FISTA)などの加速近接勾配法とすることができる近接勾配法の上で反復するように構成されることができる。近接勾配法は、小線束強度重みの反復間の変化が所定の誤差基準未満となるように、調整される小線束強度重みが小線束強度重みの最終セットに収斂するまで、初期小線束強度重みに関して反復することができる。より一般的には、この方法は、任意の近接方法を用いることができる。最適化問題を解くことは、実数値関数を最小化または最大化する入力値を見つけることを必要とする。最小化が使用される場合、関数は、多くの場合、「コスト関数」または「ペナルティ関数」と呼ばれる。凸最適化は、様々な種類の関数をいわゆる凸関数に限定する。凸最適化のためのアルゴリズムは、グローバル最小値への収斂を保証し、他の有用な特性を有することができる。近接アルゴリズムまたは方法は、凸最適化問題を解くためのアルゴリズムであり、フルエンスマップ生成において、例えば凸ペナルティ関数を最小化するためのアルゴリズムであり得る。近接アルゴリズムは、ペナルティ関数の成分の近接演算子を使用する。関数の近接演算子を評価するには、小規模な凸最適化問題を解く必要がある。これらの小規模なサブ問題の場合、通常、閉形式解が存在し、アルゴリズム全体を効率よくする。近接勾配アルゴリズムは、近接アルゴリズムの一例であり、コストまたはペナルティ関数は、f(x)+g(x)として分離されることができると仮定され、ここで、f(x)は、微分可能であり、g(x)は、近接演算子の単純な閉形式を有する。放射線療法フルエンスマップ最適化及び/またはフルエンスマップ生成の場合、最適化問題は、多重小線束及び多重ボクセルを必要とするが、ペナルティ関数は、スカラ実数値関数である必要がある。通常使用されるペナルティ関数(またはコスト関数)は、多重成分の総和を含むことができ、各成分は、反復処理を実行して特定の問題目標を満たすような解に誘導する。放射線療法の場合において、満たされるべき問題目標は、患者内のVOI(または複数のVOI)に対する処方標的線量である。そして次にまた、各成分は、多重ボクセルの多重小線束にわたる総和でもある。ペナルティ関数成分に対する一般的な選択は、Lペナルティであり、二次ペナルティとしても知られている。二次ペナルティまたはコスト関数は、二乗和であり、例えばsum(d)は、線量全体を最小化する傾向があるであろうペナルティである。ペナルティまたはコスト関数のいくつかの成分は、また、線形ペナルティとしても知られているLペナルティとすることができ、このペナルティは、単純な総和、例えばsum(d)である。ペナルティまたはコスト関数は、1つのまたは複数のLペナルティ、及び/または1つもしくは複数のLペナルティを含むことができる。加速近接勾配法は、(運動量項などの)加算項を含み、解集合への収斂に直接関連し、かつ/または加速させる(すなわち、反復の割合を増加させる、反復の回数を減少させる)のに役立つことができる。
【0012】
フルエンスマップを生成するために構成されたいくつかのプロセッサは、ペナルティ関数が微分可能となるように、そのペナルティ関数を平滑化するように構成されることができる。例えば、ペナルティ関数は、Moreau−Yosida正則化を用いて平滑化されることができる。小線束強度重みの初期セット{x}は、オールゼロベクトルである。候補小線束のセットb中の小線束が、発射位置または発射角度のより小さいセット{f}間で分割されている。発射位置は、放射線源が、小線束を発射するように(例えば、患者領域に対して)位置決めされることができる場所である。放射線源が円形の回転可能なガントリ上に搭載されている放射線治療システムでは、発射位置は、発射角度であり、患者治療領域の周りの円形ガントリの周りの場所(0度から360度まで)によって特定されることができる。例えば、発射角度のセット{f}は、放射線治療装置の患者領域の周りの複数の角度を含むことができる。この複数の発射角度は、患者領域の周りに360度均一に分布されることができる。
【0013】
フルエンスマップを生成するように構成されたシステムプロセッサは、1つまたは複数の二次またはLペナルティを有する、本明細書に記載された任意の近接勾配法ペナルティ関数を使用することができる。ペナルティ関数は、許容線量範囲外のボクセル線量エクスカーションにペナルティを科すことができる。すなわち、近接勾配法反復の一部として、許容線量範囲外の線量偏差の大きさが、小線束重みのセットの計算の中に組み込まれる。そのようなペナルティ関数は、結果として許容線量範囲内にないボクセルまたはVOIへの線量送達となる小線束を抑止することができる。いくつかの方法は、対象の体積内の全ボクセルのうちの許容線量範囲外のボクセル線量エクスカーションを集約する一価ペナルティ関数を含むペナルティ関数を有することができる。複数のボクセルの各々の許容線量範囲は、治療計画によって少なくとも部分的に決定されることができる。
【0014】
フルエンスマップを生成するためのシステムが、プロセッサであって、第2の対象の体積を選択し、第2の対象の体積内の第2の複数のボクセルであって前記ボクセルの各々が許容線量範囲を有する第2の複数のボクセルを選択し、そして第2の対象の体積及び第2の複数のボクセルを含むように線量マトリクスAを計算するように構成されるプロセッサを含むことができる。すなわち、線量マトリクスAは、候補小線束のセットbによって第1及び第2の複数のボクセルの各々に送達されるボクセル当たりの線量を表すことができる。放射線システムが、治療用放射線源のビーム経路内に配設された多分割コリメータをさらに含み、プロセッサが、フルエンスマップを分割して多分割コリメータ命令のセットにし、放射線治療システムにそれらの命令を送信するように構成されることができる。放射線治療システムは、1つまたは複数のPET検出器を含むことができる。放射線治療システムの治療用放射線源は、少なくとも約40RPMの速度で患者領域の周りで移動可能とすることができる。
【0015】
1つまたは複数の平滑化された線形ペナルティ(例えば、正則化されたLペナルティ)を有するペナルティ関数(コスト関数としても知られている)を用いた近接勾配法を含むフルエンスマップ生成方法は、重み付け二次ペナルティを使用するフルエンスマップ生成方法をしのぐ利点を有することができる。フルエンスマップ生成方法は、通常、ペナルティ関数全体の成分としてユーザが特定した線量制限に由来する重み付け二次ペナルティ(例えば、Lペナルティ)を使用する。ボクセルにおける最小及び最大線量制約をモデル化するために二次ペナルティを使用することは、多くの場合、結果として所望の線量制約(例えば、最小線量、または最大線量または他の線量)のうちで多くのわずかな大きさの違反を伴う解を生じさせ、臨床上望まれるものを越えるペナルティ関数の最小線量を増加するように、または最大線量を減少するように、ユーザに要求し、その結果、問題が、元の臨床的に望ましい制約に違反することなく、解に収斂させることができる。ユーザが採用する別の方策としては、ペナルティ関数成分の重み付けを手入力で調整することである。二次ペナルティは、また、小線束重みのセットに収斂する前に、より多くの反復回数を要求することもできる。場合によっては、二次ペナルティまたはコスト関数を含むフルエンスマップ生成方法は、結果として、ユーザが課した制約のうちより多くの違反をもたらす小線束重みのセットを生成する可能性がある。対照的に、ペナルティ関数内に線形(例えば、Lペナルティ)成分を有する近接勾配法(例えば、FISTAである加速近接勾配法)を含む本明細書に記載されるフルエンスマップ生成方法は、小線束重みのセットにより速く(すなわち、より少ない反復で)収斂させることができ、結果として、臨床治療の線量の違反がより少なく、かつユーザが必要となる介入(重み付け調整など)がより少ない解とすることができ、プロセッサ内での実行をより単純に、かつ計算処理量を少なくし、ならびに/またはマルチコアCPU及び/もしくはGPU上での並列化に一層適用可能とすることができる。1つまたは複数のLペナルティを有するペナルティまたはコスト関数を伴う近接勾配法を含むフルエンスマップ生成方法は、1つまたは複数のLペナルティを有するペナルティまたはコスト関数を伴う方法と比較すると、ユーザが特定した計画目標、例えば最小標的ROI線量またはVOI線量、最大OAR線量に対してより良好な計画適合性を促進することができる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
放射線療法のためのフルエンスマップを計算するための方法であって、前記方法は、
対象の体積を選択することと、
前記ボクセルの各々が許容線量範囲を有する、前記対象の体積内の複数のボクセルを選択することと、
初期小線束強度重みx={x}を有する候補小線束のセットb={b}を選択することと、
前記線量マトリクスAは、前記候補小線束のセットbによって前記複数のボクセルの各々に送達されるボクセル当たりの線量を表す、前記候補小線束のセットbに基づいて前記対象の体積に対する線量マトリクスAを計算することと、
小線束強度重みの反復間の変化が所定の誤差基準未満となるように、調整される小線束強度重みが小線束強度重みの最終セットに収斂するまで、前記初期小線束強度重みに対して反復する1つまたは複数の線形ペナルティを含むペナルティ関数を用いて、近接勾配法(xk−1→x)に従って前記初期小線束強度重みを調整することにより、小線束強度重みの最終セットxを有するフルエンスマップを計算することと、を含む、方法。
(項目2)
前記近接勾配法が、加速近接勾配法である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記近接勾配法が、高速反復縮小閾値アルゴリズム(FISTA)である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記1つまたは複数の線形ペナルティが、1つまたは複数のLペナルティを含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(項目5)
前記ペナルティ関数が、微分可能であるように平滑化されている、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
前記ペナルティ関数が、Moreau−Yosida正則化を用いて平滑化されている、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記小線束強度重みの初期セット{x}が、オールゼロベクトルである、項目1〜6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記候補小線束のセットb中の前記小線束が、発射角度のより小さいセット{f}間で分割されている、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記発射角度のセット{f}が、放射線治療装置の患者領域の周りの複数の角度を含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記複数の発射角度が、前記患者領域の周りに360度均一に分布している、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記近接勾配法ペナルティ関数が、1つまたは複数の2次のペナルティを含む、項目1〜10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記1つまたは複数の2次のペナルティが、1つまたは複数のLペナルティを含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記ペナルティ関数が、前記許容線量範囲外のボクセル線量エクスカーションにペナルティを科す、項目1〜12のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記ペナルティ関数が、前記対象の体積中のボクセルの全ての前記許容線量範囲外の前記ボクセル線量エクスカーションを集約する一価ペナルティ関数である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記複数のボクセルの各々の前記許容線量範囲が、治療計画によって少なくとも部分的に決定される、項目1〜14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記対象の体積が、第1の対象の体積であり、前記方法が、
第2の対象の体積を選択することと、
前記ボクセルの各々が許容線量範囲を有する、前記第2の対象の体積内の第2の複数のボクセルを選択することと、をさらに含み、
前記線量マトリックスAを計算することは、前記候補小線束のセットbに基づいて前記第1及び第2の対象の体積に対する前記線量マトリクスAを計算することをさらに含み、前記線量マトリクスAは、前記候補小線束のセットbによって前記第1及び第2の複数のボクセルの各々に送達されるボクセル当たりの線量を表す、項目1〜15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記フルエンスマップを分割して、多分割コリメータ及び放射線源位置決め命令のセットにすることをさらに含む、項目1〜16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
放射線治療のためのフルエンスマップを計算するためのシステムであって、前記システムは、
プロセッサであって、前記プロセッサは、
対象の体積を選択することと、
前記ボクセルの各々が許容線量範囲を有する、前記対象の体積内の複数のボクセルを選択することと、
初期小線束強度重みx={x}を有する候補小線束のセットb={b}を選択することと、
前記線量マトリクスAは、前記候補小線束のセットbによって前記複数のボクセルの各々に送達されるボクセル当たりの線量を表す、前記候補小線束のセットbに基づいて前記対象の体積に対する線量マトリクスAを計算することと、
小線束強度重みの反復間の変化が所定の誤差基準未満となるように、調整される小線束強度重みが小線束強度重みの最終セットに収斂するまで、前記初期小線束強度重みに対して反復する1つまたは複数の線形ペナルティを含むペナルティ関数を用いて、近接勾配法更新(xk−1→x)に従って前記初期小線束強度重みを調整することにより、小線束強度重みの最終セットxを含むフルエンスマップを計算することと、
前記フルエンスマップをプロセッサメモリに保存することと、を行なうように構成された、プロセッサを備える、システム。
(項目19)
前記近接勾配法が、加速近接勾配法である、項目18に記載のシステム。
(項目20)
前記加速近接勾配法が、高速反復縮小閾値アルゴリズム(FISTA)である、項目19に記載のシステム。
(項目21)
前記1つまたは複数の線形ペナルティが、1つまたは複数のLペナルティを含む、項目18〜20のいずれか1項に記載のシステム。
(項目22)
前記ペナルティ関数が、微分可能であるように平滑化されている、項目18〜21のいずれか1項に記載のシステム。
(項目23)
前記ペナルティ関数が、Moreau−Yosida正則化を用いて平滑化されている、項目22に記載のシステム。
(項目24)
前記ペナルティ関数が、前記許容線量範囲外のボクセル線量エクスカーションにペナルティを科す、項目18〜23のいずれか1項に記載のシステム。
(項目25)
前記ペナルティ関数が、前記対象の体積内の前記ボクセルの全ての前記許容線量範囲外の前記ボクセル線量エクスカーションを集約する一価ペナルティ関数である、項目24に記載のシステム。
(項目26)
前記複数のボクセルの各々の前記許容線量範囲が、治療計画によって少なくとも部分的に決定されている、項目18〜25のいずれか1項に記載のシステム。
(項目27)
前記プロセッサが、
第2の対象の体積を選択することと、
前記ボクセルの各々が許容線量範囲を有する、前記第2の対象の体積内の第2の複数のボクセルを選択することと、を行なうように、さらに構成され、
前記線量マトリックスAを計算することは、前記候補小線束のセットbに基づいて、前記第1及び第2の対象の体積に対する前記線量マトリクスAを計算することをさらに含み、前記線量マトリクスAは、前記候補小線束のセットbによって前記第1及び第2の複数のボクセルの各々に送達されるボクセル当たりの線量を表す、項目18〜26のいずれか1項に記載のシステム。
(項目28)
患者領域の周りを移動可能であり、かつ前記フルエンスマップに従って前記患者領域に放射線小線束を照射するように構成された治療用放射線源を含む放射線治療システムをさらに備える、項目18〜27のいずれか1項に記載のシステム。
(項目29)
前記発射角度のセット{f}が、放射線治療装置の前記患者領域の周りの複数の角度を含む、項目28に記載のシステム。
(項目30)
前記複数の発射角度が、前記患者領域の周りに360度均一に分布している、項目29に記載のシステム。
(項目31)
前記放射線治療システムが、前記治療用放射線源のビーム経路内に配設された多分割コリメータをさらに備え、前記プロセッサが、前記フルエンスマップを分割して多分割コリメータ命令のセットにし、前記放射線治療システムに前記命令を送信するように構成されている、項目28〜30のいずれか1項に記載のシステム。
(項目32)
前記放射線治療システムが、1つまたは複数のPET検出器をさらに備える、項目28〜31のいずれか1項に記載のシステム。
(項目33)
前記治療用放射線源が、少なくとも約40RPMの速度で前記患者領域の周りで移動可能である、項目28〜32のいずれか1項に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】フルエンスマップ最適化の概略図である。
図1B】フルエンスマップ最適化の概略図である。
図1C】フルエンスマップを生成するための方法の一変形例を示す図である。
図1D】フルエンスマップの一例を示す図であり、図1Eは、図1Dのフルエンスマップに基づいて患者に送達される、シミュレーションされた線量の軸方向スライスを示す図である。
図1E】フルエンスマップの一例を示す図であり、図1Eは、図1Dのフルエンスマップに基づいて患者に送達される、シミュレーションされた線量の軸方向スライスを示す図である。
図2】表1、すなわち、ペナルティ関数の例を示す図である。
図3】表2、すなわち、表記及び定義を示す図である。
図4】表3、すなわち、近接演算子微積分ルールを示す図である。
図5】固定ステップサイズを有する近接勾配法の変形例を示す図である(アルゴリズム1)。
図6】ラインサーチを有する近接勾配法の変形例を示す図である(アルゴリズム2)。
図7】固定ステップサイズを有するFISTAの変形例を示す図である(アルゴリズム3)。
図8】ラインサーチを有するFISTAの変形例を示す図である(アルゴリズム4)。
図9】過緩和法を有するChambolle−Pock法の変形例を示す図である(アルゴリズム5)。
図10】Chambolle−Pockアルゴリズムを含むフルエンスマップ生成方法から得られた線量分布を示す図である。
図11図10の線量分布の線量−体積ヒストグラムを示す図である。
図12】パラメータt=1及びt=0.5の場合のランプペナルティ関数のMoreau−Yosida正則化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
放射線療法システムにより使用され、小線束強度及び角度のセットを有するフルエンスマップを生成するための方法が、本明細書に開示されており、このフルエンスマップは、選択された/所定の放射線線量がROI(例えば、腫瘍領域などの標的体積、照射標的体積)に照射され、同時に、1つまたは複数のリスク臓器またはOAR(例えば、照射回避体積)に照射された放射線総量を制限するように、放射線源を位置決めし、生成された放射線ビームの強度を制御することができる。すなわち、照射されるべき標的(複数可)の場所(複数可)及び形状(複数可)、標的(複数可)への処方線量(複数可)、OARの場所及びOARへの線量制限(ならびに他の線量制約)に関する情報を含む患者の画像(例えば。3−Dデジタル画像)が与えられると、FMOまたはフルエンスマップ生成方法は、処方線量を標的(複数可)に送達する一方で、OAR線量制限及び他の制約を満たす、小線束強度及び角度のセットを計算する。
【0018】
いくつかの変形例では、フルエンスマップを生成するように構成されたシステム(例えば、治療計画システム)が、放射線治療システムと通信することができる。放射線治療システムの一変形例は、患者治療領域の周りを移動可能(例えば、回転可能)なガントリ、ガントリ上に搭載された放射線源、ならびにガントリ及び放射線源と通信するコントローラを含むことができる。別の選択肢として、放射線治療システムは、コントローラと通信することもできる放射線源と反対側に設置された検出器を含むことができる。このコントローラは、放射線治療領域に対して特定の場所に放射線源を位置決めするようにガントリモーションシステムに信号を提供することができ、フルエンスマップ(例えば、本明細書に記載された任意のフルエンスマップにより生成されたフルエンスマップ)に従って、放射線源に放射線小線束データ(例えば、パルス強度、幅、持続時間等)のシーケンスを提供することができる。放射線源は、放射線ビームを成形するための多分割コリメータを含むことができる。システムコントローラが、(例えば、分割法を使って)フルエンスマップをガントリモーション及び/または多分割コリメータ命令のセットに変換するように構成されることができる。放射線療法システム100の治療領域内に配置された患者102の概略図が、図1A及び1Bに示されている。
【0019】
線量最適化問題を解くために、患者に送達され得る放射線ビームは、複数の小線束に分割されることができる。図1Bに示すように、小線束107は、特定の発射位置(例えば、患者領域111に対する発射位置106a)の多分割コリメータ101開口により画定される全放射線ビーム105の一部とすることができる。ガントリ104の周りのあらゆる可能なビーム角度(例えば、発射場所)の離散したセット(または、より一般的には、患者領域の周りの発射場所)が与えられると、あらゆる可能な小線束のセット(106a、106b、106c、106dにより示されたそれらのサブセット)が選択されることができる。例えば、m個の発射位置(例えば、回転可能な/円形のガントリ周りの発射角度)を有する放射線療法システム100は、m個の発射位置の各々において位置決めされることができる多分割コリメータ103を含むことができる。このMLCは、n個のリーフを有することができ、よって、全部でmxn個の可能な小線束が存在し得る。いくつかの変形例では、100個の発射位置を有する円形または回転可能なガントリ上に配置されている64個のリーフ有する2値多分割コリメータを含む放射線治療システムは、全部で6400個の可能な小線束を有することができる。任意の選択肢として、また、可能な小線束の全数は、p個の患者台位置を有するシステムが、合計mxnxp個の可能な小線束を有するように、治療システム内を通る患者台の移動も考慮に入れることができる。例えば、上述した放射線治療システムは、約10から約100箇所の患者台位置を有することができ、その結果、約64,000(64x100x10)から約640,000(64x100x100)個の可能な小線束数となり得る。したがって、個々の小線束は、その発射位置または角度、コリメータリーフインデックス、及び必要に応じて患者台位置により、一意的に識別されることができる。いくつかの変形例では、フルエンスマップ生成のための候補小線束のセットは、可能な小線束の全数のうちのサブセットとすることができる。たとえば、候補小線束のセットは、可能な小線束の全数から対象の体積を横断しない小線束を取り除くことによってもたらされることができる。いくつかの変形例では、すべての小線束重み(すなわち、小線束強度)がゼロである小線束は、省略されることができる。数学上の最適化問題は、候補小線束のセットに基づいて解くことができ、標的領域/ROI108に所定の放射線線量を照射する小線束重み(例えば、小線束強度)を計算する。フルエンスマップ最適化(FMO)は、「最適な」(すなわち、課せられた制約を満たす)小線束重みのセットを見つけるための方法である。いくつかの変形例では、FMOまたはフルエンスマップ生成方法は、標的に所定の線量を送達し、同時にOAR110a、110b、110cに対する放射線線量を制限する小線束重みのセットを計算することを含むことができる。小線束106a〜106dの陰影は、その小線束の重み(例えば、強度)を表すことができ、そこでは、より暗い陰影は、より大きな小線束重み(すなわち、より大きな小線束強度)を表す。FMO法により生成されたフルエンスマップは、結果として、図1Aに示すプロファイルに応じた放射線の照射をもたらすことができ、そこでは、標的108は、所定の放射線線量を受け取り、同時にOAR110a、110b、110cの被爆が(例えば、選択された閾値未満に)低減される。
【0020】
いくつかの変形例では、対象の体積(照射標的領域及び照射回避領域を含む)は、複数のボクセルに分割されることができる。患者内の各VOIに対して処方された線量分布及びプロファイルを略述している、治療計画で提供されたデータに基づいて、各ボクセルは、許容線量範囲を有することができる。例えば、照射標的領域のボクセルは、治療目標を満たす治療期間に対する最小線量閾値、及び患者が望ましくない放射線リスクを被る可能性がある最大線量閾値を有することができる。照射回避領域のボクセルは、望ましくない組織損傷が起こると思われる最大線量閾値を有することができる。いくつかの変形例では、この最大線量閾値は、照射標的領域に対する最大線量閾値よりも低くすることができ、その理由は、照射回避領域の組織は、放射線損傷に対して特に敏感であり、またはその傾向があるためである。1つのボクセルの許容線量範囲は、治療計画により特定されたように、その対象の体積に対する所定の線量に基づいて計算されることができる。対象の体積(VOI)におけるボクセルの線量制約は、本明細書に記載されたフルエンスマップ生成方法の中で使用され、これらのボクセル線量制約を満たす小線束重みのセットをもたらすことができる。いくつかの変形例では、フルエンスマップ生成方法は、小線束重みのセットが臨床上の目標を満たすかどうかを評価するための制約として、ボクセル当たりの許容線量範囲を利用することができる。別の方法または追加の方法として、フルエンスマップ生成方法は、小線束重みのセットが臨床目標を満たすかどうかを評価するための一価制約(例えば、一価ペナルティまたはコスト関数)として、対象の体積のすべてのボクセルの許容線量範囲を集約することができる。一変形例では、フルエンスマップ生成方法は、小線束重みのセットを初期値のセット(例えば、ゼロまたは基礎値)に割り当てること、小線束重みのセットの現在値に基づいてボクセル当たりの線量を計算すること、計算されたボクセル当たりの線量をボクセル当たりの許容線量範囲と比較して、現在の小線束重みのセットが臨床目標を満たすかどうか、かつ/または現在の小線束重みのセットが1つまたは複数の停止基準を満たすかどうかを判定すること、もし満たさない場合には、小線束重みのセットを新しい値のセットに更新することを含む反復方法を含むことができる。停止基準の例としては、以下に限定されないが、反復全体にわたって収束していく(例えば、現在の反復の小線束重みのセットと、前回の反復の小線束重みのセットとの間の差が、所定の閾値未満となり、すなわち、残余rが閾値εより十分小さくなった場合の)小線束重みのセット、及び/または反復の上限または回数に達した小線束重みのセットが挙げられる。前回の反復からの小線束重みのセット(xk−1)を、現在の反復に対する小線束重みのセット(x)に更新することは、加速近接勾配法(FISTAなど)、または1つもしくは複数の線形ペナルティ関数を有する任意の近接アルゴリズム(Chambolle−Pock法など)に基づくものとすることができる。本明細書に記載されたフルエンスマップ生成方法を使用して、各VOIの許容線量範囲内で1つまたは複数のVOIに線量を到達させるための小線束重みを計算することができる。VOIの例としては、照射標的領域、照射回避領域(例えば、リスク臓器、特定の放射線感度)、及び/またはそのような領域の任意の組み合わせが挙げられる。単一のVOIに対する許容線量範囲に基づいて小線束重みのセットを生成する文脈の中で説明されているフルエンスマッピング方法は、多重VOIに対する許容線量範囲に基づいて小線束重みのセットを生成するように拡張されることができる。
【0021】
フルエンスマップの生成におけるVOIの線量範囲制限及び/または複数のボクセルは、ペナルティ関数により表すことができる。ペナルティ関数は、VOIもしくはボクセル基準を表す複数のペナルティ、またはフルエンスマップ生成方法が満たすように探し求める条件を含むことができる。いくつかの変形例では、フルエンスマップ生成に対する近接勾配法(例えば、FISTAなどの加速近接勾配法)と一緒に含まれるペナルティ関数は、臨床上に由来する制約もしくは条件、及び/または数学上の制約もしくは条件に基づくことができる。いくつかの変形例では、ペナルティ関数は、ボクセル及び/またはVOI当たりの許容線量範囲に基づいて制約を表す1つまたは複数の線形または非線形(例えば、二次)のペナルティ(例えば、治療計画から抽出され得るように)、ならびに小線束重みのセットの平滑化に基づいて制約を表す1つまたは複数の線形または非線形(例えば、二次)のペナルティを含むことができる。解が要求条件のセットを満たすかどうかを評価する場合に、線形ペナルティは、所望の制約セットからの偏差が直線的に重み付けられているペナルティとなることがあり、これに対して、非線形ペナルティ(例えば、二次ペナルティ)は、所望の制約セットからの偏差が、高次倍数因子により非線形に重み付けられているペナルティとなり得る。例えば、解(例えば、小線束重みのセット)が要求条件セット(例えば、治療計画で特定された線量)を満たすかどうかを評価する場合に、二次(またはL)タイプのペナルティは、所望の制約セットからの大きな偏差(例えば、ボクセルまたはVOI当たりの許容線量範囲からの大きな偏差)を増幅し、または重く重み付けすることがある。フルエンスマップ生成方法に含まれる線形(またはLタイプ)のペナルティは、到達された線量が許容線量範囲を越える場合のボクセル及び/またはVOIの数を低減させる小線束重みのセットに収束するのを手助けすることができる。このことは、ボクセル毎またはVOI毎の基準に基づく線量違反数におけるスパース性を促進するように説明されることができる。いくつかの変形例では、ペナルティ関数は、線形ペナルティ関数(例えば、線形ペナルティ関数のみを有する)とすることができ、これに対して、他の変形例では、ペナルティ関数は、非線形ペナルティ関数(例えば、1つまたは複数の非線形ペナルティ関数を含む)とすることができる。フルエンスマップを生成するための方法のいくつかの変形例は、一価ペナルティ関数を有する加速近接勾配法を含むことができ、この一価ペナルティ関数は、注目体積内の各ボクセルの線量制約を集約することによってもたらされることができる。例えば、VOIにより課された制約は、一価ペナルティ関数により表すことができ、加速近接勾配法は、患者内の各VOIの一価ペナルティ関数に基づいて小線束重みのセットに対して反復することができる。ペナルティ関数内に含まれ得る他のタイプのペナルティは、以下により詳細に説明され、かつ/または図2の表1に一覧化されている。本明細書に記載された任意のフルエンスマップ生成方法は、特定の患者に適切な臨床上及び/または数学上の制約、ならびに/または治療計画で略述されたVOIのセットを表す1つまたは複数のペナルティ関数(例えば、多重VOIに対応する一価ペナルティ関数、ボクセル多重セットに対する多重ペナルティ関数)を生成するステップを、必要に応じて含むことができる。1つまたは複数のペナルティ関数が、加速近接勾配法を使ったフルエンスマップ生成のための平滑化基準を満たさない場合のいくつかの変形例では、平滑化関数(例えば、凸正則化、Moreau−Yosida正則化)が、1つまたは複数のペナルティ関数に適用されることができる。
【0022】
いくつかの変形例では、凸最適化技術を使用して、放射線計画の間に生じることがあるフルエンスマップ生成問題を扱うことができる。例えば、近接アルゴリズムは、非可微分の目的関数を有する極めて大規模で、制約された凸最適化問題を解くために使用されることができる。いくつかの変形例は、近接アルゴリズムを使用することを含み、放射線計画中のフルエンスマップ生成問題を扱うことができる。いくつかの変形例では、フルエンスマップ生成のための方法は、Alternating Direction Method of Multipliers(ADMM)の使用を含むことができ、他の変形例では、フルエンスマップ生成のための方法は、Chambolle−Pock法などの近接アルゴリズムの使用を含むことができる。Chambolle−Pock法は、目的関数内に非可微分のLベースペナルティ、また、計画標的体積(PTV)及びOARに送達された放射線総量に対する厳しい制約を含む、非二次線量ペナルティ項を取り扱うことができる。別のクラスのアルゴリズムである加速近接勾配法(例えば、FISTAを含む)もまた、フルエンスマップ生成方法で使用されることができる。これらの加速された方法は、収束速度を有し、この収束速度は、一次方法に対する最適な意味で存在することが示された。
【0023】
VOI毎に対する放射線線量をそのVOIの許容線量範囲内で送達する小線束強度のセット含むフルエンスマップを生成するための方法が、本明細書に開示されている。例えば、これらの方法は、照射標的領域(例えば、計画標的体積PTV、腫瘍領域、など)に対する所定の放射線線量が、必ずしも照射回避領域(例えば、リスク臓器OAR)に対する最大線量を越えないようにフルエンスマップを生成することができる。VOIに対する(及び/またはVOI内の個々のボクセルに対する)許容放射線量範囲は、治療計画によって少なくとも部分的に決定されることができる。いくつかの変形例では、治療計画は、治療期間前(例えば、診断撮影期間中)及び/または前回の治療期間もしくは一部の間に取得された患者の画像に基づいて作り出すことができる。
【0024】
フルエンスマップを生成するためのいくつかの変形例は、FISTAなどの加速近接勾配法、またはChambolle−Pock法などの近接法を使って、小線束重みまたは強度のセットを生成することを含むことができる。FISTAは、信号または画像処理、特に圧縮、ノイズ除去、画像復元、信号のスパース近似、圧縮検知などにおける逆問題を解くために使用されてきた。加速近接勾配法は、信号を圧縮することができるように信号スパース性を促進する線形またはLのペナルティ項を有するペナルティ関数を含むことができる。信号スパース性、及び/またはデータ圧縮、及び/または画像再構築は、フルエンスマップ最適化の第1の目標ではないため、FISTAなどの加速近接勾配法、及びChambolle−Pockなどの近接法は、放射線治療計画及びシステムのための小線束重みまたは強度のセットを生成するためには考慮されていなかった。しかしながら、本明細書に記載されているように、FISTAなどの加速近接勾配法は、フルエンスマップを生成するのに計算上効率的な方法を提供することができる可能性がある。本明細書に記載されているフルエンスマップ生成方法は、1つまたは複数の線形またはLペナルティ項を有するFISTAなどの加速近接勾配法を使用することを含むことができる。いくつかの変形例では、このLペナルティ項は、正則化法により平滑化され、FISTA法における不連続性を低減するのに役立たせることができる。1つまたは複数のLペナルティ項を有する線形ペナルティ関数を伴うFISTAは、マルチコアプロセッサ(CPU及び/またはGPU)上で直ちに実行され、小線束重みの最終セットへのより速い収束を容易にすることができ、かつ/またはユーザに対するより良好な計画整合性、または臨床医指定の計画目標もしくは治療計画を推進することができる。例えば、Lペナルティ項を有するFISTAは、結果として、Lペナルティ項を有する加速近接勾配法と比較して、治療計画仕様書により良く一致する、VOIへ線量を送達する小線束重みのセットをもたらすことができる。Lペナルティ項を有するフルエンスマップ生成方法は、結果として、VOIまたはボクセルのより高い割合が、許容線量範囲外にある線量レベルを受け入れるように、フルエンスに送達する小線束重みのセットをもたらすことができる(Lペナルティ項を有する方法と比較して)。Lペナルティ項を有するフルエンスマップ生成方法は、ユーザまたは臨床医に問題の制約を終わらせ、または目的とする重みを反復して調整等するように要求し、結果として、プロセッサにかかるより大きな計算上の負荷、及び治療計画仕様書に近づくようには機能しないフルエンスマップをもたらすことになる。
【0025】
図1Cは、フルエンスマップを生成するための方法の一変形例を示す。方法150は、1つまたは複数の対象の体積(VOI)を選択すること152を含むことができる。VOIは、1つまたは複数の照射標的(例えば、PTV、腫瘍領域等)を含むことができ、かつ/または1つまたは複数の照射回避領域を含むことができる。方法150は、1つまたは複数のVOI内のボクセルを選択すること154を含むことができる。いくつかの変形例では、選択されたボクセルは、VOIの各々の全体の大きさ、形状、及び場所を累積的に見積もることができる。方法150は、初期小線束強度重みx={x}を有する候補小線束のセットb={b}を選択すること156を含むことができる。方法150は、候補小線束のセットbに基づいて各対象の体積に対する線量マトリクスAを計算すること158を含むことができる。線量マトリクスAは、候補小線束のセットbによって複数のボクセルの各々に送達されるボクセル当たりの線量を表すことができる。いくつかの変形例では、この方法は、小線束強度重みをゼロに初期化すること160を含むことができる(例えば、小線束重みの初期セットxがオールゼロベクトルとすることができる)。次に、この方法は、加速近接勾配法などの、1つまたは複数の線形ペナルティを含むペナルティ関数を用いて、近接勾配法更新(xk−1→x)に従って初期小線束強度重みを調整することにより、小線束強度重みのセットxを計算すること162を含むことができる。これは、1つまたは複数の停止基準が一致するまで、小線束強度重みのセットがペナルティ関数に基づいて調整される反復方法とすることができ(ステップ164)、以下に記載された任意の方法とすることができる。例えば、加速近接勾配法は、1つまたは複数のLコストまたはペナルティ関数を有するFISTA法とすることができる(例えば、さらに以下に説明し、図7〜8に示している)。いくつかの変形例では、小線束強度重みのセットを計算すること162は、近接勾配法、またはより一般的には、近接法に従って、小線束強度重みを調整することを含むことができる。いくつかの変形例では、停止基準は、強度値のセットに対する小線束強度重みのセットの収束を含むことができる。1回の反復から次の反復への収束は、例えば、反復xの小線束強度重みのセットと反復x−1のそれを比較し、これら2つのセット間の値の差(例えば、残余)を取ることによって、判定されることができる。その差が所定の閾値より小さい場合は、停止基準が満たされており、その反復は停止することができる。他の停止基準について以下に説明する。別の方法または追加の方法として、反復は、反復回数が上限に到達するときに停止する。停止基準を満たした後、方法150は、小線束強度重みの最終セットxを含むフルエンスマップを計算することを含むことができる。
【0026】
例示的な例を含めて、これらのステップに関する追加の詳細は、以下に示されている。
【0027】
図1Dは、平滑化されたLペナルティ関数を有するFISTA法を使って生成されたフルエンスマップ(すなわち、小線束強度のセット)の一例を示す。このフルエンスマップは、100個の発射位置(例えば、円形ガントリの周りに100個の発射角度)、及び60個のリーフを有する多分割コリメータを有する放射線治療システムの場合として生成された。この例では、多分割コリメータは、2値多分割コリメータである。図1Dのフルエンスマップは、単一の患者台位置、例えば単一断層撮影スライスの場合の小線束強度を表している。プロット内のピクセルの濃度は、小線束強度に比例している。ガントリが発射位置1から発射位置100まで放射線源を移動させるに従って、多分割コリメータは、それらの各発射場所において特定のリーフを開く。特定のリーフに対する特定の発射位置における放射線ビームの強度は、フルエンスマップのピクセルの濃淡によって表している(そこでは、黒いピクセルはゼロの小線束強度を表し、白いピクセルは最大許容強度を有する小線束を表す)。図1Eは、放射線小線束が図1Dのフルエンスマップに基づいて送達された、シミュレーションされた患者身体の軸方向スライスを示す。図1Dのフルエンスマップは、結果として、他の患者領域にほとんどまたは全く照射のない、ROI130上に集中する線量送達をもたらした。
【0028】
フルエンスマップ最適化の計算上の挑戦的な取り組みの1つとして、線量計算マトリクス、すなわち(そのスパース性にもかかわらず)極めて多くの非ゼロのエントリを有する巨大マトリクスと協働することである。フルエンスマップ最適化に適用される場合、Alternating Direction Method of Multipliersは、各反復においてこの線量計算マトリクスを含む式の線形システムを解くことを要求する。これは、重大で、かつ潜在的に高額な計算費用となる。分解方法は、この計算負担を低減するのに有効であるが、そのような方法は、実行するにはより困難であるより複雑なアルゴリズムをもたらし、ADMMの直接的な実行(線量計算マトリクスのサイズにより実行不可能と思われる)と比較すると、収束するのにより多くの反復回数を必要とする。これに反して、Chambolle−Pockアルゴリズム及び加速近接勾配法(例えば、FISTA)は、それらが、各反復において線量計算マトリクスと一緒にマトリクス−ベクトル乗法を実行する点で有利である可能性がある。これらの方法は、各反復において線形システムを解くことを含まなくてもよく、よって、そのような計算を扱いやすくする分解方法を含まなくてもよい。本明細書に記載されたフルエンスマップ生成方法は、自然に並列処理し、特に放射線療法システムのコントローラにおいて容易に実行することができる効果的なアルゴリズムとすることができる。
【0029】
本書類内で熟考される一般的なフルエンスマップ最適化問題は、次式となる。
【数1】
ここで、マトリクスAは、1つまたは複数のVOI(例えば、計画標的体積PTV、照射標的領域もしくは体積、OAR、照射回避領域もしくは体積、腫瘍等)に対する線量−計算マトリクスであり、NはOARの数であり、マトリクスDは離散導関数または勾配演算子であり、関数ΓΦI、Ψ及びΘは、凸ペナルティ関数である。項Γ(Ax)は、PTVに送達されるべき放射線の最小レベルを促進し、または定義し、これに対して、項(Ax)は、最大放射線量を超えないように、PTV及びOARに送達される放射線を促進し、または要求する。正則化項Ψ(Dx)及びΘ(x)は、平滑化を促進し、または非負のフルエンスマップを区分的に平滑化する。問題(1)は、凸ペナルティ関数の単純でかつ利用可能な選択を伴う、特別な場合としてのほとんどの標準フルエンスマップ最適化定式を包含することができる。
【0030】
本明細書に記載された最適化アルゴリズムは、フルエンスマップ最適化において非二次及び非可微分のペナルティ項ΓΦ及びΨを扱うことができる可能性がある。ペナルティ関数を(式(4)で定義された)指標関数とみなすことによって、厳しい制約が、PTV及びOARに到達される放射線総量に課される可能性がある。Lノルムの利点は、さらに以下に記載されているように、フルエンスマップ最適化内に適用することができることである。
【0031】
ペナルティなどの1つまたは複数のペナルティを有する近接アルゴリズムを含むフルエンスマップ生成方法が、本明細書に開示されている。一変形例では、ペナルティ関数ΓΦI、Ψ及びΘが、効率的に評価され得る近接演算子を有する場合に、Chambolle−Pockアルゴリズムが、問題(1)を解くのに使用されることができる。これは、実際に直面するほとんどのフルエンスマップ最適化問題を含むことができ、厳しい制約及び非可微分の目的関数を伴う最適化問題を含んでいる。いくつかの変形例では、フルエンスマップ生成方法は、Moreau−Yosida正則化などの、凸解析からの平滑化技術を含み、ペナルティ関数ΓΦ及びΨを平滑化し、そして(FISTAなどの)加速近接勾配法が、(非二次のペナルティを使用することができる)平滑化された問題を解くことができる。この平滑化された問題は、特別な場合として、強度変調された放射線治療(IMRT)における逆問題に対する統合されたアプローチの中で考慮されるすべてのフルエンスマップ生成問題を包含することができる。
【0032】
フルエンスマップ生成方法は、ペナルティ関数ΓΦI、Ψ及びΘの選択を含むことができる。式(1)で定義された問題は、ペナルティ関数の単純でかつ利用可能な選択を伴う、特別な場合としてのほとんどの標準FMOモデルを包含することができる。本明細書に記載されたフルエンスマップ生成方法で使用することができるペナルティ関数の例が、表1にまとめられ、図2に示されている。
【0033】
多くの場合、Γは片側二次ペナルティであるとみなされる。
【化1】
ここで、
【化2】
は、腫瘍内の各ボクセルに送達されるべき所定の線量をまとめたベクトルであるが、まず問題なく優れた選択項目は、Γを片側L1ノルムベースペナルティと
【化3】
みなすべきである。
【化4】
【0034】
外れ値に対するロバスト性などの、Lノルムの通常の利益は、本文脈中でも同様に適用できる。Γを片側Lベースペナルティとみなすことによって、腫瘍内の少数のボクセルは、十分な被低線量となることが可能である。この追加の柔軟性により、OARに送達される放射線総量の低減が可能となり、全体的に優れた治療計画をもたらす。Lペナルティは、このような柔軟性を許容せず、どんなに十分な被低線量であっても、厳格にペナルティが課される。さらに、Lベースペナルティは、わずかに被低線量である極めて多数のボクセルを許容する傾向があり、これは望ましいことではなく、実際のFMO問題においては、首尾一貫して標的のわずかな被低線量、及びOARのわずかな被高線量をもたらしている。相対的に、Lベースペナルティは、わずかな残余の存在を阻止し、ほとんどの残余をゼロとなるように促進する。第3の重要な選択項目は、Γを指標関数とみなすことである。
【数2】
【0035】
このΓの選択肢を使って、
【化5】
という厳しい制約をフルエンスマップ生成方法に適用する、または強制することができる。
【0036】
同様な考察が、ペナルティ関数Φに適用し、このペナルティ関数は、腫瘍及びOARに送達される線量の上限を促進し、または強制するように選択される。いくつかの変形例ではΦ片面Lベースペナルティ
【化6】
片面L系ペナルティ
【化7】
、またはインジケータ機能ペナルティを含んでいてもよい。
【化8】
【0037】
この指標関数ペナルティは、厳しい制約
【化9】
を強制することができる。いくつかの変形例では、この方法は、以下のペナルティ関数を含むことができる。
【数3】
【0038】
上記に示したように、Φを選択することによって、
【化10】
【0039】
Aix<uiが容易に満足される場合、
【化11】
は、xを選択する方法について追加の指針を提供すると考えられることができる。(腫瘍に送達された放射線に対して追加のペナルティの必要がないため、我々は、β=0を取る。)
【0040】
フルエンスマップ最適化方法及び/またはフルエンスマップ生成方法のいくつかの変形例は、二次正則項を含むことができる。
【化12】
ここで、Mは、IMRTシステム内の小線束の数であり、xは、小線束強度のベクトルであり、xは、xの番目のブロック(m番目の小線束に対する小線束強度からなる)であり、各マトリックスDは、離散導関数または勾配演算子を表す。この正則化項は、同様な強度を有する隣接小線束を促進し、それによってより少ない雑多なフルエンスマップをもたらす。正則化項は、最適化アルゴリズムの収束を容易にする(すなわち、スピードアップする)ことができ、その結果、解(例えば、小線束重みまたは強度のセット)が、より少ない反復のうちに達成されることができる。しかしながら、二次ペナルティ関数を使用しているため、Dxの大きな成分は、(それらの成分が二乗になっているため)厳格にペナルティが課され、結果として、この正則化項は、隣接小線束間の強度におけるいかなる急増も許容しない傾向がある。これは、その腫瘍に極めて適合する治療計画の作成の価値を落とすことになる。同様な問題が、画像復元及び再構築問題において直面する可能性があり、そこでは、二次正則化項の使用により、画像中の鋭いエッジが保存されることができない。正則化項の一例として、全変動正則化項とすることができる。
【化13】
【0041】
別の方法として、Ψは、Lノルム球体に対する指標関数とすることができる。隣接小線束間の強度変化に関する厳しい上限は、強制されることがある。これらのΨの選択は、非二次かつ非可微分ペナルティ項を扱うことができる計算を容易にすることができる。
【0042】
一般的に、Θは、I≧0で表され、非負の象限に対する指標関数となるように選択される。この場合、目的関数内の項Θ(x)は単にx≧0という制約を強制する。また、Θは、小線束強度の上限を強制するように選択されることもでき、例えば、Θは、所与のベクトルa及びbに対して、セットS={x|a≦x≦b}の指標関数とすることができる。
【化14】
など、Θの他の選択も可能
【化15】
である。これらのΘの選択は、xのサイズを制御し、同時にまた、x≧0を強制する。xのLノルムにペナルティを科すことは、例えば、治療送達の間に発射する小線束の数を制限する(言い換えると、フルエンスマップ内のスパース性を促進する)のに有効である。xのLノルムにペナルティを科すことは、治療中に送達される全エネルギを制限するのに役立たせることができる。
【0043】
いくつかの変形例では、ペナルティ関数ΓΦI、Ψ及びΘが、効率よく評価されることができる近接演算子を有するという仮定の下で、問題(1)は、Chambolle−Pockアルゴリズムを使って解くことができる。これは、本明細書に記載された1つまたは複数(例えば、すべて)のペナルティ関数を含むことができる。また、FMO問題の場合の数値結果も開示されている。
【化16】
【0044】
これは、Φが式(3)により与えられる場合の問題(1)の特別な場合であり、
【化17】
、及びΘ=I≧0である。また、FMO問題の場合の数値結果も開示されている。
【化18】
【0045】
これは問題(1)の特別な場合であり、Γは式(2)によって与えられる指標関数とみなされ、
【化19】
、及びΘ=I≧0である。
【0046】
表2は、本明細書で使用される表記及び定義をまとめている。
【0047】
凸解析では、
【化20】
は、それがより小さい半連続的である場合、「閉じた」と呼ばれる。これは、実際に直面するほとんどの凸関数により満たされる緩い条件である。
【化21】
は、少なくとも1点
【化22】
に対して、f(x)<∞である場合、
【化23】
「適切」と呼ばれる。
【0048】
指標関数及び投射関数
【化24】
を閉凸集合とする。Cの指標関数は、次式で定義される
【化25】
である。
【数4】
【0049】
指標関数は、最適化変数xに厳しい制約を強制するための凸最適化(本明細書に記載された任意の方法を含む)に有用である。
【化26】
を制約とするf(x)を最小化する問題は、
【化27】
を最小化する問題と等価である。指標関数は、極めて非可微分であるが、これは、近接アルゴリズムに対しては問題を引き起こさず、近接アルゴリズムは、自然に指標関数を扱うことができる。
【0050】
【化28】
とすると、Cの指標関数はI[a、b]mによってではなく、I[a、b]によって表される。
【化29】
については、
【化30】
の指標関数を示し、
【化31】
を意味すると解釈される。
【0051】
Cに投射する関数は、次式のPで表される。
【化32】
【0052】
C=[a、b]のとき、Cに投射する関数はP[a、b]nではなく、P[a、b]で表される。
【化33】
は、
【化34】
に投射する関数を示す。
【化35】
であることに注意されたい。
【0053】
共役。
【化36】
の凸共役は、
【化37】
によって定義される。
【化38】
【0054】
凸共役f*は、凸最適化の双対問題を定式化するときに現れる傾向のあるfの「双対バージョン」である。fが閉凸であるとき、fはfから式f=f**を介して復元することができる。
【0055】
共役に対する以下の「区切り総和」規則は、後で有用となるであろう。fが、ブロック区切り総和であると仮定する。
【数5】
【0056】
このとき、
【化39】
である。入力ベクトルx、...、xは、より大きなベクトルxのブロックとして見ることができ、ベクトルz、...、zは、より大きなベクトルzのブロックとして見ることができる。
【0057】
近接演算子。
【化40】
を適切な閉凸関数とする。パラメータt>0を有するfの近接演算子(また、「prox−operator」としても知られている)は、次式により定義される。
【数6】
【0058】
近接アルゴリズムは、各反復における種々の近接演算子の評価を要求する反復アルゴリズムである。多くの重要な凸ペナルティ関数の場合、近接演算子は、単純な閉形式表現を有し、mで直線的な計算上のコストにおいて、極めて効率的に評価することができる。用語「近接可能」は、その近接演算子が効率的に評価されることができる関数を言い表している。
【0059】
近接演算子を評価するためのいくつかの有用な規則が、表3にまとめられ、図4に示している。この表では、関数fとfは、適切な閉凸であると仮定されている。式3.3は、Moreau分解として知られ、近接アルゴリズムにとって極めて有用であり、その理由は、それが、fの近接演算子に関するfの近接演算子を表現しているからである。fの近接演算子が効率的に評価されることができる場合、fの近接演算子も同等に効率的に評価することができる。(用語「分解」は、xが近接演算子の項の総和として分解されていることを示唆する。)式3.1において、関数gは、関数fの区切り総和である。入力ベクトルx、...、xは、より大きなベクトルxのブロックとして見ることができる。この規則によれば、区切り総和gの近接演算子を評価することは、関数fの近接演算子を別々に評価することに還元できる。規則3.4は、Moreau分解を使用することによって導出され、その共役f(z)I[0,1](z)の近接演算子に関して、
【化41】
の近接演算子を表現している。その表の最後の2行において、pは、ベクトルproxtg(x)のj番目の成分を表し、xはxのj番目の成分を表す。
【0060】
最も基本的な近接アルゴリズムの1つである近接勾配法は、次の形式の最適化問題を解く。
【数7】
ここで、f及びgは閉凸関数であり、fはリプシッツ連続勾配を有する微分可能である。固定ステップサイズt>0の場合の近接勾配反復は、アルゴリズム1(図5)に記録されている。
【化42】
の場合、ただし、Lは
【化43】
に対するリプシッツ定数であるが、そのとき、ミニマイザが存在すると仮定すると、近接勾配反復は、(7)のミニマイザに収束するように保証されている。
【0061】
g(x)=I(x)である特別な場合、ただしCは閉凸集合であり、IがCの指標関数である場合、問題(7)は、次式と等価である。
【数8】
【0062】
近接勾配の反復は、次式に低減し、
【化44】
ここで、PはCに投射する関数である。この場合、近接勾配法は投射勾配法として知られている。
【0063】
近接勾配法は、固定ステップサイズで使用することができるが、近接勾配法の重要な利点は、各反復において適応的にステップサイズを選択するように使用することができる単純で効果的なラインサーチ手順があることである。ラインサーチによる近接勾配法の1つの変形例が、アルゴリズム2(図6)に示されている。
【0064】
フルエンスマップ生成方法の一変形例が、投射勾配法の加速バージョン、及び放射線治療計画に対する近接勾配法を含むことができる。例えば、FISTA(「高速反復縮小閾値アルゴリズム」の略)である。FISTAは、問題(7)を解くための近接勾配法の加速バージョンであり、(以前のように)fとgは閉凸関数であり、fはリプシッツ連続勾配(リプシッツ定数L>0)で微分可能である。固定ステップサイズt>0に対するFISTA反復の一変形例が、アルゴリズム3(図7)に示されている。t=1/Lのとき、この反復は1/k2の速度で収束し、近接勾配の反復は1/kの速度でのみ収束する。FISTAの1/kという収束速度は、一次の方法として望ましく、または最適とすることができる。
【0065】
Chambolle−Pockアルゴリズムは、次の標準形式の最適化問題を解く。
【数9】
ここで、
【化45】
は、適切な閉凸関数であり、
【化46】
はマトリクスである。この標準問題形式は、信号や画像処理などの分野における多くの重要な問題が、f、g、及びAの特に単純な選択肢を用いて形式(9)で表現されることができるため、有用である。「単純」によって、具体的には、f及びgの近接演算子が安価に評価されることができ、A、及びATによる乗法が効率的に実行されることができることを意味する。本明細書で検討されたフルエンスマップ最適化問題は、この形式で都合よく表現することができる。(問題形式(9)は、双対性に対するFenchel−Rockafellarアプローチにより対処できる可能性があり、これはこの問題形式を開始点とみなす)
【0066】
Chambolle−Pockアルゴリズムは、主双対アルゴリズムであり、それは、主問題(9)及び双対問題を同時に解くことを意味する。
【化47】
【0067】
ステップサイズs及びt、ならびに過緩和パラメータ
【化48】
を有するChambolle−Pock反復の一変形例が、アルゴリズム5(図9)に表されている。各反復において、A及びAによるマトリクスベクトル乗算を実行するが、Aを含む線形システムを解く必要はない。これは、ADMMのようなDouglas−Rachfordベース法を越えるChambolle−Pockアルゴリズムの利点である。アルゴリズム5(図9)は、Chambolle−Pockアルゴリズムの過緩和バージョンである。ステップサイズs及びtは、
【化49】
を満たす必要があり、ここで
【化50】
はLノルムにより導入されたマトリクスノルムである。このステップサイズ制限が満たされると、アルゴリズム5は、問題(9)に対するミニマイザに収束すると予想することができる(ミニマイザが存在すると仮定して)。s及びtの1つの選択が、
【化51】
であるが、s及びtの値を調整することによって収束を実質的に改善することができる。
【0068】
Chambolle−Pockアルゴリズムは、フルエンスマップ最適化問題の解の生成を容易にすることができるが、(一次の方法の中で)最適な収束速度であるO(1/k)(ここで、kは反復回数)を有するFISTAのような加速方法を使用することによって、より速い収束を達成したいところである。加速方法が適用されることができると、このO(1/k)という収束速度は、Chambolle−Pockアルゴリズムの0(l/k)という収束速度よりも極めて速いことになる。FISTAの別の利点は、単純で効果的なラインサーチ手順が利用可能であることであり、これは、ステップサイズの選択に伴う難しさがないことを意味する。したがって、加速近接勾配法(具体的には、FISTA)の使用は、フルエンスマップ最適化にとって好ましいこととなる。
【0069】
フルエンスマップ最適化のために近接勾配法を使用する際の難しさは、まず、微分可能な関数f、及び単純な(すなわち、近接可能な)関数gを用いて形式(7)の最適化問題を表現する必要があり、これは必ずしも常に可能というわけではない。この挑戦的な取り組みは、問題(1)に現れる非可微分のペナルティ関数を平滑化することによって対処することができる。凸解析は、非可微分の凸関数を平滑化するエレガントな方法、すなわちMoreau−Yosida正則化を提供する。
【0070】
Moreau−Yosidaの正則化
【化52】
を閉凸にする。パラメータγ>0を有するΦのMoreau−Yosida正則化は、次式によって定義される。
【数11】
【0071】
【化53】
が、凸であり、Φの微分近似であることを示すことができ、そのΦγの勾配は、次式によって与えられる。
【数12】
【0072】
Φ(γ)の勾配は、リプシッツ定数L=1/tで連続するリプシッツである。パラメータγは、平滑量を制御し、γの値が小さい場合は平滑がほとんどなく、Φ(γ)はΦに近い近似値である。これに対応して、γが小さいとき、リプシッツ定数Lは大きい。図12は、パラメータt=1及びt=0.5の場合のランプペナルティ関数のMoreau−Yosida正則化を示す。Moreau−Yosida正則化は、微分可能であるが、ランプペナルティ関数は、微分可能ではない。
【0073】
次式であることに注されたい。
【化54】
【0074】
Φ=Iのとき、閉凸集合Cの指標関数の場合、次式を得る。
【数13】
【0075】
これは、提示されたIMRT中の逆問題への統一的アプローチの基礎として使用される近接関数である。近接関数の勾配は、式(12)から
【化55】
が得られる。
【0076】
平滑化されたFMO問題以下では、問題(1)を平滑化された問題に置き換える。
【数14】
【0077】
関数Γ(γ)Φ(γ)及びΨ(γ)は、問題(1)からの関数ΓΦ及びΨの(パラメータγ>0を用いた)Moreau−Yosida正則化である。関数Θは、平滑化されていない可能性がある。いくつかの変形例では、同じ平滑パラメータγを、各ペナルティ関数に使用することができるが、他の平滑パラメータもまた、使用することができる。それらの(恐らく、非可微分の)関数ΓΦI、Ψ及びΘを効率的に評価することができる近接演算子を有すると仮定する。
【0078】
ΓΦ及びΨが指示関数であるとみなされる特殊な場合として、それらのMoreau−Yosida正則化は、(式(13)で定義される)近接関数であり、IMRTの逆問題への統合アプローチの中で考慮されたフルエンスマップ最適化問題と一緒に使用することができる。平滑化問題は、加速投射勾配法ではなく、投射勾配法を使って解くことができる。
【0079】
式(14)に示されている平滑化問題は、加速近接勾配法を使って解くことができる。問題(14)は、形式(7)を有する。ただし、
【数15】
g =Θである。加速近接勾配法を使用する場合、各反復は、fの勾配、及びgの近接演算子を計算することを含むことができる。g=Θである近接演算子は、仮定により効率的に計算することができる。したがって、fの勾配がどのように効率的に計算されるかを示すことだけが残っている。
【0080】
連鎖法則により、fの勾配は、次式で与えられる。
【化56】
【0081】
右側の各勾配は、式(12)を使って計算することができる。
【化57】
【0082】
我々は、近接演算子Γ、Φ、及びΨが安価であると仮定しているため、これらの勾配はそれぞれ、効率的に計算することができる。
【0083】
問題(7)を解くために近接勾配法、または固定ステップサイズのFISTAを使う場合、ステップサイズは、通常、t=1/Lとなるように選択され、ここでLは
【化58】
に対するリプシッツ定数である。実際には、
【化59】
に対するリプシッツ定数は、通常、正確には分かっていないため、Lは、
【化60】
のリプシッツ定数に対する利用可能な最良の上限とみなされる。fが式(15)によって与えられるとき、
【化61】
の場合のリプシッツ定数に対する上限は、次式となる。
【化62】
【0084】
リプシッツ定数に関するこの上限は、あまりに悲観的かもしれないが、近接勾配法、またはFISTAによって問題(14)を解く場合に、ラインサーチ手順を使用することができる。
【0085】
以下に、一般的なフルエンスマップ最適化問題(1)を解くために、Chambolle−Pockアルゴリズムを使用する方法の一例が、凸ペナルティ関数Γ、Φ、Ψ、及びΘが、効率的に計算されることができる近接演算子を有するという条件の下で、記載され、示されている。これにより、前述の1つまたは複数(例えば、すべて)のペナルティ関数を含むことができる。
【0086】
アルゴリズム導出
問題(1)は、f=Θを取ることによって標準形式(9)で表すことができ、
【化63】
【0087】
(Aの中に、Aが2回現れることに注意されたい。)Chambolle−Pockアルゴリズムに好適な形式(9)でフルエンスマップ最適化問題を表現すると、f及びgの近接演算子をどのように計算するかを示すことだけが残っている。
【0088】
fの近接演算子は、Θの近接演算子にすぎず、いくつかの変形例では、効率的に評価することができる。gの近接演算子をどのように評価するかを知るためには、まず、gが区切り総和であることに注意されたい。共役に対する区切り総和規則により、次式となる。
【化64】
【0089】
t>0とする。近接演算子のための区切り総和規則
【化65】
【0090】
モロー分解定理は、関数Γ、Φ、及びΨの近接演算子に関して、
【化66】
の近接演算子を表わす。これらの近接演算子は、安価であると仮定する。したがって、gの近接演算子は、効率的に評価することができる可能性がある。
【0091】
図2で示した表1は、最も典型的なペナルティ関数Γ、Φ、Ψ、及びΘの近接演算子に対する定式を与える。これらの定式は、スケーリング則及びシフト則(3.2)を含むセクション3に列挙された結果に従う。
【0092】
数値結果
Chambolle−Pockアルゴリズムを用いて、フルエンスマップ最適化問題を解くことができる。
【数10】
【0093】
ここで図10を参照すると、PTVは、輪郭1000により描かれている。輪郭1002により描かれている少なくとも50グレイを受け取る領域は、PTV輪郭1000とほぼ正確に一致している。
【0094】
FISTAの停止基準
上述のように、フルエンスマップ生成方法の反復部分(例えば、FISTAのような加速近接勾配法、またはChambolle−Pockのような近接アルゴリズム)は、停止基準が達成されると終了することができる(方法150のステップ164)。FISTAを含むフルエンスマップ生成または最適化方法は、以下に記載されているように、停止基準を有することができる。
【0095】
近接勾配法(本明細書に記載されているように、FISTAを含む加速近接勾配法など)は、原初の問題を解こうと努める。
【化67】
反復を介して
【化68】
【0096】
(ここで、
【化69】
は適切な閉凸関数であり、
【化70】
は、凸であり、微分可能であり、リプシッツ連続勾配を持ち、t>0である)。(11)に対する主要な最適性条件は、
【化71】
【0097】
近接勾配法は、次式となるようなrを見つけるために反復することができる。
【化72】
rはほぼゼロに等しくなると、そのとき、式(13)がほぼ満たされ、xは最適値に近いことを意味する。
【化73】
【0098】
式(14)を用いると、式(12)は、
【化74】
【0099】
条件(15)は、ほぼ所望の形式を有し、その形式は、次式のように等価に書き換えることができる。
【化75】
【0100】
条件(16)は、xがほぼ最適であることを示しているが、残余
【化76】
が小さい。したがって、可能な停止基準は、
【化77】
とすることができる。いくつかの変形例では、停止基準は、「相対的」残余を含むことができ、その場合に、停止基準は、
【化78】
【0101】
FISTAは、反復によって(11)を解く。
【化79】
【0102】
式(17)は、次式と等価である。
【化80】
【0103】
したがって、残余は、次式のように書き換えられ、
【化81】
FISTAの停止基準を得る。
【0104】
あるいは、∇gに対するリプシッツ定数Lが既知であれば、より計算量が少ない停止基準(すなわち、xにおけるgの勾配の評価を必要としない)は、
【化82】
【0105】
Chambolle−Pockのための停止基準
Chambolle−Pockを含むフルエンスマップ生成または最適化方法は、以下に記載されている停止基準を有することができる。Chambolle−Pockは、原初問題を解く。
【化83】
同時に双対問題
【化84】
反復を介して
【化85】
である。
【0106】
一変形例では、双対実行可能変数が利用可能とすることができ、停止基準は、双対ギャップに基づくことができる。フルエンスマップ評価問題では、Gは非負の補間のための指標関数であり、Gは、非正の象限に対する指標関数であることを示す。条件−Kz≦0が満たされる場合、zは双対実現可能であり得る。いくつかの変形例では、これはzn+1によって満たされないことがある。また、フルエンスマップ評価問題では、z=(z、z、z)が
【化86】
を満たすときのみ、F(z)が有限であってもよい。これらは、zが双対実現可能でなければならない追加の制約である。
【0107】
別の方法として、停止基準は、KKT条件における残余に基づいてもよい。Karush−Kuhn−Tucker(KKT)条件は、最適化問題の解が最適になる必要条件の集合であり、コスト関数、及び入力における制約を意味する数式及び不等式のシステムとして表現することができる。これは、双対性ギャップに基づく停止基準が計算集約的であり得る場合、及び/または双対性ギャップに基づく停止基準の条件が満たされない場合、ある変形例において使用され得る。問題(18)のKKT条件は、次式として書き換えることができる。
【化87】
【0108】
この停止基準の重要な考え方は、r及びrを見つけることである。
【化88】
及びrは、ほぼゼロに等しい。これらの条件が満たされれば、これは(22)及び(23)がほぼ満足され、x及びzが最適に近いことを意味する。
【0109】
特に、xは次のように書くことができる。
【化89】
である。
【0110】
(24)を用いて、式(19)を以下のように書き直すことができる。
【化90】
と(20)は、等価である。
【化91】
【0111】
このように、方程式(25)は、以下のように表すことができる。
【化92】
【0112】
条件(26)及び(27)は、ここで、(xn+1、zn+1)が、主変数及び双対変数のほぼ最適な対であることを示しているが、
【化93】
小さい。このように、Chambolle−Pockに対する可能な停止基準の一変形例は、
【化94】
とすることができる。いくつかの変形例では、停止基準は、「相対的」残余を含むことができ、その場合に、停止基準は
【化95】
【0113】
この停止基準は、Kの各反復(例えば、K(x−xn+1))によるKによる追加の乗算を含むことができる。K及びKによる追加の乗算の計算負荷を軽減するのを助けるために、Chambolle−Pock法を含むフルエンスマップを生成するための方法の一変形例が、他の反復ではなく、いくつかの反復において、停止基準または残余をチェックするためとすることができる。例えば、残余は、すべての反復毎にではなく、20回程度の反復毎に一度計算されてもよい。他の変形例では、残余は、2回の反復毎に一度、5回の反復毎に一度、10回の反復毎に一度、12回の反復毎に一度、25回の反復毎に一度、30回の反復毎に一度、50回の反復毎に一度等、計算されることができる。別の方法としては、残余は、すべての反復毎に計算されることができる。
【0114】
本明細書に記載されたFMOまたはフルエンスマップ生成方法は、例えば、機械可読保存媒体に記憶されたコンピュータプログラムまたはソフトウエアにおいて、コンピュータまたはコントローラによって実施されてもよい。コンピュータまたはコントローラは、例えば、(放射線源が搭載されているガントリを回転させることによって)ROIまたは患者に対する特定の角度に放射線源を位置決めするため、またフルエンスマップに従って放射線源により発生されたビーム強度を調整するために、本明細書に記載されたFMOまたはフルエンスマップ生成方法により生成されたフルエンスマップを使用することができるように、放射線治療システムの一部とすることができる。別の方法または追加の方法として、本明細書に記載されたFMOまたはフルエンスマップ生成方法は、放射線治療システムから分離されたコンピュータまたはコントローラによって実施されてもよい。次いで、結果として得られたフルエンスマップは、例えば(以下に限定されないが)、電気的、光学的、音響的、または電子的情報を伝送するのに好適な他の種類の媒体のような機械可読伝送媒体を用いて、放射線治療システムのコントローラに転送されることができる。
【0115】
コントローラ
治療計画パラメータに基づいてフルエンスマップを生成するように構成されることができるシステム(例えば、治療計画システム)は、放射線治療システム及び/または臨床医及び/またはオペレータと通信できるコントローラを含むことができる。コントローラは、1つまたは複数のプロセッサ、及び1つまたは複数のプロセッサと通信できる、1つまたは複数の機械可読メモリを含むことができる。コントローラは、有線もしくは無線通信回線によって放射線治療システム及び/または他のシステムと接続されてもよい。いくつかの変形例では、治療計画システムのコントローラは、患者と同じ、または別の部屋に設置されてもよい。例えば、コントローラは、患者台に結合され、または患者及び/もしくはオペレータの近くにある台車もしくは医療用カートの上に配設されてもよい。
【0116】
コントローラは、多岐にわたる汎用目的、または特殊用途計算システムもしくは構成に合わせて実装することができる。本明細書に開示されたシステム及び装置と一緒の使用に好適な種々の例示的計算システム、環境、及び/または構成は、以下に限定されないが、例えば、ルーティング/相互接続コンポーネント、ポータブル(例えば、携帯型)もしくはラップトップ装置、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースシステム、及び分散処理ネットワークなどの、パーソナル計算装置、ネットワーク装置、サーバもしくはサーバ計算デバイスの内部またはそれらに実装されたソフトウエアまたは他のコンポーネントを含むことができる。
【0117】
ポータブル計算装置の例としては、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、移動電話、タブレットPC、ファブレット(スマートフォンよりも大型で、タブレットより小型のパーソナル計算装置)、スマートウォッチの形態を取るウエラブルコンピュータ、携帯用音楽機器、及び同類のものが挙げられる。
【0118】
プロセッサ
いくつかの実施形態では、プロセッサは、命令またはコードのセットを走らせる、かつ/または実行するように構成された任意の好適な処理装置とすることができ、1つまたは複数のデータプロセッサ、画像プロセッサ、グラフィックス処理装置、物理特性処理装置、デジタル信号プロセッサ、及び/または中央処理装置を含むことができる。プロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)等であってもよい。プロセッサは、アプリケーション処理及び/もしくは他のモジュール、システムと関連付けられた処理及び/もしくは機能、ならびに/またはそれと関連付けられたネットワーク(示さず)を走らせる、かつ/または実行するように構成されることができる。潜在的な装置技術は、様々なコンポーネント種類、例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)のような金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)技術、エミッタ結合論理回路(ECL)のようなバイポーラ技術、ポリマー技術(例えば、シリコン共役ポリマー、及び金属共役ポリマー金属構造)、混合アナログ及びデジタル、または同種のもので提供されてもよい。
【0119】
メモリ
いくつかの実施形態では、メモリは、データベース(表示せず)を含んでもよく、また、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、メモリバッファ、ハードドライブ、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能読み取り専用メモリ(EEPROM)、読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等であってもよい。メモリは、命令を保存して、プロセッサが、例えば、治療計画及び/または臨床目標に基づいたフルエンスマップの計算、フルエンスマップの放射線治療システム命令への分割(例えば、ガントリ、治療用放射線源、多分割コリメータ、及び/または放射線治療システムの任意の他のコンポーネント、及び/または診断もしくは治療計画システムの動作と関連することができる)、ならびに治療計画及び/もしくは送達と関連付けられた画像及び/もしくはデータ処理などの、システムと関連付けられたモジュール、処理、及び/または機能を実行することを可能にすることができる。
【0120】
本明細書に記載されたいくつかの実施形態は、各種のコンピュータ実行動作を実現するための命令またはコンピュータコードを実装する非一過性のコンピュータ読み取り可能媒体(非一過性のプロセッサ読み取り可能媒体とも呼ばれる)と一緒のコンピュータ記憶製品に関する。コンピュータ読み取り可能媒体(またはプロセッサ読み取り可能媒体)は、それが、一過性の伝搬信号(例えば、空間またはケーブルなどの伝送媒体上に情報を搬送する伝搬電磁波)それ自体を含まないという意味で、非一過性である。媒体及びコンピュータコード(コードまたはアルゴリズムとも呼ばれる)は、特定の目的または様々な目的のために設計及び構築されたものであってもよい。非一過性コンピュータ読み取り可能媒体の例としては、以下に限定されないが、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、及び時期テープなどの磁気記憶媒体、コンパクトディスク/デジタルビデオディスク(CD/DVD)、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)、及びホログラフィック装置などの光記憶媒体、光ディスクなどの光磁気記憶媒体、半導体ドライブ(SSD)、及び半導体ハイブリッドドライブ(SSHD)などの半導体記憶装置、搬送波信号処理モジュール、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラム可能論理回路(PLD)、読み取り専用メモリ(ROM)、及びランダムアクセスメモリ(RAM)装置などの、プログラムコードを記憶及び実行するように特別に構成されたハードウエア装置、が挙げられる。本明細書に記載された他の実施形態は、コンピュータプログラム製品と関し、これには、例えば本明細書に開示された命令及び/またはコンピュータコードが含まれる。
【0121】
ユーザインターフェースは、オペレータもしくは臨床医と治療計画システムとの間の通信インターフェースの役割を果たすことができる。ユーザインターフェースは、入力装置及び出力装置(例えば、タッチ式スクリーン及びディスプレイ)を含むことができ、支持アーム、外部マグネット、センサ、送達装置、入力装置、出力装置、ネットワーク、データベース、及びサーバのうちの1つまたは複数から入力データ及び出力データを受信するように構成されることができる。1つまたは複数のセンサからのセンサデータは、ユーザインターフェースにより受信され、1つまたは複数の出力装置により、視覚的に、聴覚的に、及び/または触覚フィードバックを通じて、出力されてもよい。別の例として、入力装置(例えば、ジョイスティック、キーボード、タッチ式スクリーン)のオペレータ制御は、ユーザによって受信され、次いでプロセッサ及びメモリによって処理され、ユーザインターフェースが、1つまたは複数の支持アーム、外部マグネット、腔内装置、及び送達装置に制御信号を出力する。
【0122】
フルエンスマップを生成するための治療計画システムのいくつかの変形例は、オペレータが、フルエンスマップの画像的かつ/または文字的な表示、及び/または線量分布、及び/または対象の領域、及び/または対象の体積、及び/または患者の解剖画像、及び/または患者データ(例えば、生理学的かつ/または生物学的)、ならびに同種のものをながめることを可能にする表示装置を含むことができる。いくつかの変形例では、出力装置は、発光ダイオード(LED)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマ表示パネル(PDP)、薄膜トランジスタ(TFT)、有機発光ダイオード(OLED)、電子ペーパ/電子インクディスプレイ、レーザディスプレイ、及び/またはホログラフィックディスプレイのうちの少なくとも1つを含むディスプレイ装置を含んでもよい。
【0123】
通信
いくつかの変形例では、治療計画システムは、例えば、1つまたは複数のネットワークを介して、他の計算装置(図示せず)と通信することができ、各ネットワークは、任意の種類のネットワーク(例えば、有線ネットワーク、無線ネットワーク)としてもよい。無線ネットワークは、いかなる種類のケーブルによっても接続されていない任意のデジタルネットワークを指すことができる。無線ネットワークの無線通信の例としては、以下に限定されないが、携帯電話、ラジオ、衛星、及びマイクロ波通信が挙げられる。しかしながら、無線ネットワークは、インターネット、他のキャリアの音声やデータネットワーク、ビジネスネットワーク、及びパーソナルネットワークと接続するために、有線ネットワークと接続することができる。有線ネットワークは、通常、銅のツイストペア、同軸ケーブル、及び/または光ファイバケーブルを介して搬送される。多くの異なった種類の有線ネットワークが存在し、それらには、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネットエリアネットワーク(IAN)、キャンパスエリアネットワーク(CAN)、インターネットに似たグローバルエリアネットワーク(GAN)、及び仮想プライベートネットワーク(VPN)が挙げられる。以降、ネットワークは、一般的にインターネットを介して相互接続されている無線、有線、公共、及びプライベートデータネットワークの任意の組み合わせを指し、統合ネットワーキング及び情報アクセスシステムを提供する。
【0124】
移動通信は、GSM(登録商標)、PCS、CDMAまたはGPRS、W−CDMA、EDGEまたはCDMA2000、LTE、WiMAX、及び5Gネットワーキング標準などの技術を包含することができる。いくつかの無線ネットワークの展開では、多重移動無線ネットワークからネットワークを組み合わせ、または移動無線、Wi−Fi、及び衛星通信の混在を使用する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されたシステム、装置、及び方法は、1つまたは複数の装置及び/またはネットワークと通信するための無線周波数受信機、送信機、ならびに/または光(例えば、赤外線)受信機及び送信機を含んでもよい。
図1A
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