(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0010】
まず、本実施形態に係る建築板1の構成について説明する。
【0011】
建築板1の形状は特に限定されないが、例えば、平面視矩形状である。建築板1には、必要に応じて他の建築板1と嵌合するための嵌合部が設けられていてもよい。
【0012】
建築板1は、
図1に示すように、水硬性無機質材料を含む成形材料から形成されるコア層2と、コア層2を覆う水硬性無機質材料を含む成形材料から形成されるスキン層3とを備える。
【0013】
コア層2は、その厚み方向を向く面(以下、第一面21という)と、第一面21とは反対方向を向く第二面22とを備える。スキン層3は、コア層2の全体を覆っている。スキン層3における第一面21上にある部分を最外部31という。
【0014】
本実施形態では、コア層2の絶乾比重とスキン層3の絶乾比重とを比較すると、スキン層3の絶乾比重の方がコア層2の絶乾比重よりも大きい。これにより、コア層2を軽量化して建築板1全体を軽量化することができると共に、スキン層3をコア層2よりも高密度化してスキン層3の強度をコア層2よりも高くすることができる。スキン層3の絶乾比重が0.8以上であることが好ましい。スキン層3の絶乾比重の上限値は、特に限定されないが、例えば2.0である。コア層2の絶乾比重は特に限定されず、例えば0.7〜1.9の範囲内である。
【0015】
スキン層3の最外部31は、20mm
2あたり135Nの力が掛かっても破損しない強度を有する。これにより、スキン層3の最外部31の強度を十分に確保することができる。
【0016】
建築板1が建物に設置される場合、例えば
図2Aに示すように、釘、ビス、ボルト等の固定具6が建築板1を貫通して建物の胴縁5に打ち込まれる。建物に設置された建築板1に強風等によって負圧が掛かると、スキン層3の最外部31に固定具6から強い力が掛かる。このように最外部31に固定具6から強い力が掛かると、
図2Bに示すように、最外部31における固定具6が打ち込まれた部分の周辺が陥没するといった破損が生じることがある。また、建築板1に固定具6を打ち込む際にスキン層3の最外部31に固定具6から強い力が掛かる場合にも、
図2Bに示されるように、最外部31に破損が生じることがある。
【0017】
しかし、本実施形態の建築板1は、スキン層3の最外部31が20mm
2あたり135Nの力が掛かっても破損しない強度を有するため、スキン層3の最外部31の強度が十分に確保されている。このため、強風等によって建築板1に負圧が掛かり、固定具6から最外部31に強い力が掛かっても、最外部31に
図2Bに示されるような破損が生じにくい。更に、建築板1に固定具6を打ち込む際に固定具6から最外部31に強い力が掛かっても、最外部31に
図2Bに示されるような破損が生じにくい。特に、スキン層3の絶乾比重が0.8以上であり、且つ最外部31の厚みが1.5mm以上である場合、最外部31が特に破損しにくい。
【0018】
次に、建築板1について更に詳しく説明する。
【0019】
建築板1のコア層2は、上記の通り、水硬性無機質材料を含む成形材料から形成される。本明細書では、コア層2の形成に用いる成形材料をコア材料という。このコア材料は、例えば、無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、補強繊維、及び水を含有することができる。
【0020】
無機質系主材は、ケイ素とカルシウムのうち少なくとも一方を含む化合物からなる。無機質系主材は、水硬性無機質材料であるセメントを主成分とする。無機質系主材は、更に、フライアッシュ、シリカヒューム、けい石粉からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0021】
無機質系混和材は、例えば、マイカ、けい酸ソーダ等が含まれる。
【0022】
有機質系混和材は、例えば、メチルセルロース、有機質系発泡粒子等が含まれる。有機系発泡粒子は、例えば、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、及びアクリロニトリル系樹脂からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0023】
補強繊維は、例えば、パルプ、ポリプロピレン繊維等が含まれている。
【0024】
コア材料には、上記の原料以外に、更に無機質系発泡体が含まれていてもよい。無機質系発泡体は、例えば、パーライト、フライアッシュバルーン、及びバーミキュライトからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0025】
コア材料に含まれる各物質の割合は特に限定されないが、例えば、コア材料に無機質系主材が73〜97重量%の範囲内、無機質系混和材が1〜20重量%の範囲内、有機質系混和材が1〜3.5重量%の範囲内、補強繊維が1〜3.5重量%の範囲内で含まれていることが好ましい。
【0026】
建築板1のスキン層3は、上記の通り、水硬性無機質材料を含む成形材料から形成される。本明細書では、スキン層3の形成に用いる成形材料をスキン材料という。このスキン材料は、例えば、無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、補強繊維、及び水を含有することができる。スキン材料は、更に添加剤を含んでもよい。
【0027】
スキン材料に含まれる無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、及び補強繊維は、例えば、コア材料に含まれる無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、及び補強繊維と同じである。
【0028】
スキン材料に含まれる各物質の割合は特に限定されないが、例えば、スキン材料に無機質系主材が69.5〜97.5重量%の範囲内、無機質系混和材が1〜20重量%の範囲内、有機質系混和材が1〜3.5重量%の範囲内、補強繊維が1〜7重量%の範囲内で含まれていることが好ましい。
【0029】
上記のコア材料及びスキン材料を成形することにより未硬化の成形体(グリーンシート)が作製される。この未硬化の成形体を養生して硬化させ、更に乾燥させることにより、コア層2及びスキン層3を備える建築板1が得られる。
【0030】
この未硬化の成形体を養生する工程では、例えば、常温養生、蒸気養生、オートクレーブ養生からなる群から選択される一種以上の養生を行う。本実施形態では特に、蒸気養生を行うことが好ましい。
【0031】
この蒸気養生の条件は、例えば、温度が40〜90℃の範囲内であり、養生時間が6〜48時間の範囲内であることが好ましい。
【0032】
成形体を養生した後、成形体を乾燥させる。乾燥方法は、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥、遠赤外線乾燥が挙げられる。成形体を乾燥させることにより、成形体に含まれる水の割合(含水率)を調節することができる。成形体の含水率は、3〜20%の範囲内であることが好ましい。この場合、成形体を軽く、且つ折れにくくすることができると共に、成形体の乾燥収縮による反り、収縮等の変形を小さくすることができる。
【0033】
本実施形態では、スキン材料に含まれる成分の選択、成分の量の調節、養生条件の調節、スキン層3の含水率の調節等の適宜の手法により、スキン層3の最外部31を20mm
2あたり135Nの力が掛かっても破損しない強度に調節することができる。
【0034】
特に、スキン層3の絶乾比重は0.8以上であることが好ましい。これにより、スキン層3の最外部31に高い強度が付与され、最外部31の20mm
2あたり135Nの力が掛かっても破損しない、という強度が実現可能となる。スキン層3の絶乾比重は2.0以下であることが好ましい。この場合、建築板1を軽くすることができ、建築板1を扱いやすくすることができる。このスキン層3の絶乾比重は、例えば、スキン材料に含まれる水、有機質系発泡粒子、及び無機質系発泡体の割合を変えることによって調節することができる。
【0035】
特に、スキン層3の最外部31の厚みは1.5mm以上であることが好ましい。これにより、スキン層3の最外部31に高い強度が付与され、最外部31の20mm
2あたり135Nの力が掛かっても破損しない、という強度が実現可能となる。最外部31の厚みは建築板1の全厚の1/3以下であることが好ましい。この場合、最外部31の強度の確保と、コア層2の軽量化による建築板1全体の軽量化とを、両立させることができる。
【0036】
更に、コア材料及びスキン材料にふくまれる補強繊維の種類及び配合量の調製、未硬化の成形体の養生条件の調製、建築板1の比重の調製等、任意の方法によって、上記の最外部31の強度を実現することができる。
【0037】
尚、建築板1の構造は、
図1に示すものに限られない。例えば、コア層2とスキン層3との界面が凹凸形状を有していてもよい。この凹凸形状は、例えば、断面が四角形の凹凸が複数並んだ凹凸であってもよく、断面が三角形の凹凸が複数並んだジグザグ形状であってもよく、断面が円弧状の凹凸が複数並んだ波形状であってもよい。この場合、凍害現象によって、コア層2とスキン層3との層間剥離が生じることを抑制することができる。
【0038】
図3に示す建築板1のように、コア層2に複数の中空孔7が形成されていてもよい。すなわち、建築板1が中空構造を有していてもよい。建築板1が中空構造を有する場合、建築板1の更なる軽量化が可能となる。
【0039】
建築板1の表面、すなわちスキン層3の表面に、必要に応じて、表面仕上げのためのシーラー及び塗料が塗布されていてもよい。
【0040】
以下、本実施形態の建築板1の製造方法について詳しく説明する。
【0041】
図1に示す建築板1は、例えばコア材料及びスキン材料を、押出成形機10で押出成形することで製造される。
図4には、その押出成形機10の概略を示している。
【0042】
図4の押出成形機10は、第一押出機11及び第二押出機12を備える。第一押出機11はスキン材料を押出すものであり、第二押出機12はコア材料を押出すものである。第一押出機11及び第二押出機12は金型100に接続されている。
【0043】
図4に示すように、金型100は、その先端に流入口103を、後端に押出口104を備える。流入口103は第一押出機11と接続されている。このため、流入口103には第一押出機11からスキン材料が流れ込む。
【0044】
図5には、この金型100の概略の断面図が示されている。この金型100は上型101、下型102、中子105、流路106、流路107、及び流路108を備えている。上型101と下型102とは、上下に対向して重ねられている。
【0045】
金型100の内部には空洞が形成されている。この空洞内に中子105が設けられている。
図5の断面図に現れる上型101の下面と、中子105の上面との間が、流路106であり、下型102の上面と、中子105の下面との間が、流路107である。流路106及び流路107は、流入口103と繋がっている。このため、流路106及び流路107には、スキン材料が流れる。
【0046】
また
図5の断面図に現れるように、中子105は、その流入口103付近から流入口103に向かって厚みが徐々に小さくなっている。また、中子105の押出口104側の端部は、押出口104に向かって厚みが徐々に小さくなっている。中子105の押出口104側の先端は、押出口104と対向するように配置されている。中子105の先端部の上面は、先端に向かう平坦な傾斜面111として形成され、中子105の先端部の下面は先端に向かう平坦な傾斜面112として形成されている。
【0047】
図5の断面図に現れるように、中子105の内部に流路108が形成されている。この流路108は第二押出機12と接続されている。詳細には、中子105内の流路108は、第二押出機12とパイプ17を介して連結している。このため、流路108には、第二押出機12で混練されたコア材料が流れ込む。また、中子105の先端には、流路108に通じる矩形の開口部110が形成されている。
【0048】
これらの流路106、流路107、及び流路108は、
図5の断面図に現れるように、金型100内における流路106及び流路107に対して押出口104側に設けられた合流部109で合流している。このため、押出口104は、流路106、流路107、及び流路108と接続している。
【0049】
以下、上記の押出成形機10によって建築板1が製造される手順を説明する。
【0050】
まず、
図4に示す第一押出機11の投入口13にスキン材料を投入すると共に、
図4に示す第二押出機12の投入口15にコア材料を投入する。スキン材料及びコア材料は、それぞれ、第一押出機11内に設けられたスクリュー14、及び第二押出機12内に設けられたスクリュー16によって混練されながら搬送される。
【0051】
次に、コア材料は第二押出機12からパイプ17を介して流路108に流入する。また、スキン材料は第一押出機11から流入口103を通って流路106及び流路107に流入する。
【0052】
次に、流路108を通ったコア材料が開口部110に達する。開口部110から吐出されるコア材料は、開口部110の形状に合わせて板状に成形される。また、流路106を通ったスキン材料と流路107を通ったスキン材料とが合流部109において合流する。これにより、板状に成形されたコア材料の外側が、スキン材料によって包まれる。
【0053】
次に、コア材料がスキン材料によって包まれたまま、コア材料及びスキン材料が押出口104から押し出される。このコア材料及びスキン材料を任意の長さで切断することにより、未硬化の成形体(グリーンシート)が形成される。この未硬化の成形体を養生して硬化させることにより、コア層2とスキン層3とを備える建築板1が製造される。
【0054】
また、
図3に示されるような中空構造を有する建築板1を製造する場合には、例えば
図6A及び
図6Bに示す中空形成体200が使用される。中空形成体200は、本体部201と、複数の突出棒202とを備える。この複数の突出棒202は、所定の間隔をあけて一列に並ぶと共に、互いに平行に設けられている。複数の突出棒202の寸法はいずれも同じである。この中空形成体200は、流路108の内部に配置可能な寸法を有する。
【0055】
中空形成体200は、例えば、
図5に示す中子105の流路108内に設けられる。この場合、複数の突出棒202の一部が開口部110から突出する。中空形成体200を流路108内に設けた中子105を金型100内に設け、この金型100を使用して押出成形することで、
図3に示すような中空構造を有する建築板1が製造される。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0057】
(実施例1〜4、比較例1、2)
無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、補強繊維、及び水を、下記の表1に示す割合で配合することで、コア材料及びスキン材料を調製した。尚、表1中の水含有量は、コア材料及びスキン材料の各々における全固形分に対する水の比率である。
【0058】
上記のコア材料及びスキン材料を、第一押出機11、第二押出機12、及び
図5に示す金型100を備える押出成形機1を使用して、成形体を作製した。この成形体を60℃、24時間の条件で蒸気養生して硬化させた後、更に乾燥機によって含水率を10%に調節することにより、幅480mm、厚み16mm、長さ3100mmの寸法を有し、且つ
図1に示すようにコア層2とスキン層3とを備えた建築板1を製造した。この建築板1の最外部31は、下記の表1に示す厚みを有する。
【0059】
(評価)
実施例1〜4、及び比較例1、2の建築板1について、コア層2及びスキン層3の絶乾比重をアルキメデス法によって測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0060】
実施例1〜4、及び比較例1、2の建築板1について、最外部31の強度を評価した。この強度を評価するため、以下の釘引抜き試験を行った。
【0061】
まず、胴部の直径が2.4mm、頭部の直径が5.0mm、長さが45mmの釘を、建築板1の最外部31から打ち込んで貫通させた。次に、建築板1を固定した状態で、釘の先端をチャックで挟み込んで固定して、このチャックを釘の先端の方向に引っ張ることにより、釘の頭部から最外部31に荷重をかけた。そして、
図2Bに示すように、最外部31における釘が打ち込まれた部分の周辺が陥没するといった破損が生じるまでの間に、最外部31に掛かった最大荷重を測定した。この結果、最大荷重が135N以上であったものを○、最大荷重が135N未満であったものを×と判定した。この判定結果を、最大荷重の値と共に、下記の表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示すように、実施例1〜4の建築板1は、最大荷重が135N以上である。このため、実施例1〜4の建築板1は、最外部31の強度を十分に確保することができる。一方、最大荷重が135N未満である比較例1、2の建築板1は、最外部31の強度を確保することができていない。
【0064】
特に、スキン層3の絶乾比重が0.80である実施例3の建築板1と、スキン層3の絶乾比重が0.80未満である比較例1の建築板1とを比較すると、実施例3の建築板1の方が最外部31の強度が高くなっている。
【0065】
特に、最外部31の厚みが1.5mmである実施例4の建築板1と、最外部31の厚みが1.5mm未満である比較例2の建築板1とを比較すると、実施例4の建築板1の方が最外部31の強度が高くなっている。
【0066】
すなわち、「スキン層3の絶乾比重がコア層2の絶乾比重よりも大きく、最外部31が20mm
2あたり135Nの力が掛かっても破損が生じない強度を有する」という条件を満たす実施例1〜4の建築板1は、これらの条件を満たしていない比較例1、2の建築板1よりも、最外部31の強度を十分に確保することができている。よって、実施例1〜4の建築板1は、強風等によって建築板1に負圧が掛かり、固定具6から最外部31に強い力が掛かっても、最外部31が破損しにくく、建築板1に固定具6を打ち込む際に最外部31に強い力が掛かっても、最外部31が破損しにくい。