(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性爪はそれぞれ、前記磁石保持部の底面に対して平行に突出する弾性変形可能な腕と、該腕の先端に形成されて前記磁石保持部に収容された前記磁石の前記張出部に係合する爪部とからなることを特徴とする請求項3に記載の電動ステアリングロック装置。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には盗難防止の目的で駐車時にステアリングホイールの回転を電動でロックするための電動ステアリングロック装置を備えるものがある。この電動ステアリングロック装置は、例えばエンジン作動状態で運転者がエンジンスタートスイッチをOFF操作すると、これを検知して電動モータを駆動し、該電動モータによってロック部材を移動させてステアリングシャフトに係合させることによってステアリングホイールの回転をロックし、エンジン停止状態で運転者がエンジンスタートスイッチをON操作すると、これを検知して電動モータを駆動し、該電動モータによってロック部材を移動させて該ロック部材のステアリングシャフトへの係合を解除し、ステアリングホイールをアンロックしてステアリング操作を可能とするものである。
【0003】
ところで、斯かる電動ステアリングロック装置においてステアリングホイールのロック/アンロックを電動で行うためには、ロック部材がロック位置又はアンロック位置にあるか否かを検知して電動モータを駆動制御する必要があり、そのためにロック部材の位置検知機構が設けられている。この位置検知機構としては、例えばロック部材や該ロック部材を移動させる連動部材に磁石を取り付け、ロック位置とアンロック位置に対応する箇所にホール素子等の磁気センサをそれぞれ配置し、これらの磁気センサによって磁石の磁力を検出することによって、ロック部材がロック位置にあるかアンロック位置にあるかを検知するものが使用されている。
【0004】
ここで、磁石を固定する手段として、例えば特許文献1には
図9に示すものが開示されている。
【0005】
即ち、
図9は特許文献1において提案された電動ステアリングロック装置のスライダとロック部材の分解斜視図であり、図示のスライダ18は、駆動源である不図示の電動モータによって回転駆動される不図示のねじ軸に螺合挿通してロック部材19をロック位置とアンロック位置との間で往復移動させる部材である。このスライダ18は、ねじ軸に螺合する螺合部材50とこれを覆うマグネット保持部材51によって構成されており、マグネット保持部材51に一対のマグネット(磁石)20が収容保持されている。
【0006】
具体的には、マグネット保持部材51には、側面に開口する一対のマグネット収容凹部60が形成されており、これらのマグネット収容凹部60に各マグネット20が収容され、各マグネット20は、ホルダ61によって保持されて各マグネット収容部60からの脱落が防がれている。ここで、各ホルダ61は、銅合金等の常磁性体によって略U字状に成形されたものであり、その両側部には矩形の係合孔62がそれぞれ形成されている。
【0007】
而して、マグネット保持部材51の各マグネット収容部60に各マグネット20をそれぞれ収容した後、各マグネット20を覆うように各ホルダ61をマグネット保持部材51にそれぞれ嵌装し、各ホルダ61の両側部に形成された係合孔62をマグネット保持部材51の両側部(各ホルダ61の係合孔62に対応する部位)に突設された係合突起63に係合させる。すると、各ホルダ61がマグネット保持部材51にそれぞれ装着され、各マグネット20は、各ホルダ61によって保持されてマグネット保持部材51からの脱落が防がれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された
図9に示す構成では、各マグネット20の保持にホルダ61が必要となるため、その分だけ部品点数や組付工数が増加してコストアップを招くという問題がある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、部品点数や組付工数の増加を招くことなく、磁石をワンタッチで簡単且つ確実に取り付けることができる電動ステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
車両のステアリングシャフトに係合するロック位置とその係合が解除されるアンロック位置との間を移動可能なロック部材と、
該ロック部材を作動させる電動モータと、
該電動モータの出力軸の回転力を前記ロック部材の進退力に変換する
ギア部材と、
該
ギア部材内に収容された磁石と、
該磁石の磁力を検出する磁気センサと、
を備えた電動ステアリングロック装置
であって、
前記
ギア部材は、前記磁石を収容する磁石保持部
を備え、
前記磁石保持部は、前記磁石を収容する際、弾性変形した後、形状復帰して
前記磁石を保持する弾性爪を
有することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ギア部材は、回転部材であって、
前記磁気センサ側に回転軸を中心とする同心円状の装着配置孔を有し
、前記磁石保持部は、
前記装着配置孔の径方向外側に隣接して形成され、前記装着配置孔に
空間的に連通す
る溝状を呈し、前記弾性爪は、前記磁石の前記磁気センサ側に位置し、前記磁石保持部における前記装着配置孔の向かい側から前記装着配置孔に向けて突出していることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記磁石は、本体部と、該本体部から一体に張り出した一対の張出部とを備え、
前記磁石保持部
の前記弾性爪は、前記張出部の前記磁気センサ側に位置して前記
一対の張出部に
それぞれ係合する
ように一対
設けられており、
前記一対の弾性爪の間
から前記磁石の
前記本体部の一部
が前記磁気センサ側に露出
していることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記弾性爪は、前記磁石保持部の底面に対して平行に突出す
る弾性変形可能な腕と、
該腕の先端に形成されて前記磁石保持部に収容された前記磁石の
前記張出部に係合する爪部とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、
ギア部材に形成された磁石保持部内に磁石を収容すれば、
ギア部材に一体に形成された弾性爪が磁石の一端縁に係合して該磁石を固定し、その
ギア部材からの脱落を防ぐため、磁石の脱落を防ぐための別部品が不要となり、部品点数が削減される。又、磁石をギア部材の磁石保持部内へと押し込むだけで該磁石をワンタッチで簡単且つ確実にギア部材に組み付けることができるため、組付工数が削減され、部品点数の削減とも相俟って当該電動ステアリングロック装置のコストダウンを図ることができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、回転するギア部材の磁石保持部内に組み付けられた磁石には、ギア部材の回転による径方向外方(ギア部材の回転中心から外側)に向かう遠心力が作用する。ここで、ギア部材の磁石保持部
は装着配置孔に連通
する溝状を呈し、弾性爪は磁石保持部における装着配置孔の向かい側から装着配置孔に向けて突出しているため、磁石に作用する遠心力による磁石保持部からの磁石の脱落が防がれ、弾性爪の係止とも相俟って磁石のギア部材からの脱落が確実に防がれる。
【0018】
請求項3及び4記載の発明によれば、磁石を、その本体部の一部が
ギア部材の磁気センサ側開口部から磁気センサ側に露出する状態で組み付けることができるため、該磁石の磁気センサへの磁束が遮られることがなく、磁気センサによって磁石の磁力が確実に検出されてロック部材の位置(ロック/アンロック位置)が正確に検知されるとともに、小型の磁石を用いることができるためにコストダウンと軽量化を実現することができる。尚、磁石は、一対の張出部に一対の弾性爪がそれぞれ係合することによって、
ギア部材にワンタッチで簡単且つ確実に組み付けられる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明に係る電動ステアリングロック装置の分解斜視図、
図2は同電動ステアリングロック装置のロック状態を示す縦断面図、
図3は同電動ステアリングロック装置の駆動機構の斜視図、
図4は同電動ステアリングロック装置のギア部材に磁石を組み付ける前の状態を示す斜視図、
図5は同電動ステアリングロック装置のギア部材に磁石を組み付けた後の状態を示す斜視図、
図6(a)〜(c)は同電動ステアリングロック装置のギア部材に磁石を組み付ける手順をその工程順に示す部分断面図、
図7は同電動ステアリングロック装置の駆動機構のロック状態を示す平面図、
図8は同電動ステアリングロック装置の駆動機構のアンロック状態を示す平面図である。
【0022】
(電動ステアリング装置の構成)
本発明に係る電動ステアリングロック装置1は、電動によって車両の不図示のステアリングシャフト(ステアリングホイール)の回転をロック/アンロックするものであって、
図1及び
図2に示すように、ケース2とその上部に組み付けられたカバー3によって画成される空間内に、プリント基板4、ギアカバー5、連動部材であるギア部材6、ロック部材であるロックボルト7、駆動源である電動モータ8等を収容して構成されている。尚、
図1に示すように、ケース2の外周の複数箇所には係合突起2aが形成されており、カバー3は、これの周囲の複数箇所(ケース2の係合突起2aに対応する箇所)に形成された係合孔3aにケース2に突設された係合突起2aを係合させることによって
図2に示すようにケース2の上部に組み付けられる。
【0023】
上記ケース2とカバー3は、マグネシウム合金等の非磁性金属によって構成されており、ケース2の下部には、円弧状の凹部2bが形成されている。そして、この凹部2bには不図示のコラムチューブが嵌め込まれ、このコラムチューブは、ケース2に結着される不図示の円弧状のブラケットによってケース2に固定される。尚、図示しないが、コラムチューブ内にはステアリングシャフトが挿通しており、該ステアリングシャフトの上端にはステアリングホイールが結着され、ステアリングシャフトの下端は、ステアリングギヤボックスに連結されている。そして、運転者がステアリングホイールを回動操作すれば、その回転はステアリングシャフトを経てステアリングギヤボックスに伝達され、操舵機構が駆動されて車両の前輪が転舵されて所要の操舵がなされる。
【0024】
又、
図1に示すように、ケース2の内面(上面)には、円筒状の軸部2A(
図2参照)とその外周に配置された円筒状のギア収納筒2Bが同軸的に立設され、その軸部2Aとギア収納筒2Bとの間にギア部材6の傾きを阻止するガイド筒部2Eが設けられている。又、このギア収納筒2Bの側面の一部は、開放されており、後述する電動モータ8のウォーム13が進出可能に構成されている。そして、ギア収納筒2Bに隣接して、上面が開口する矩形枠状のモータ収納部2Cが一体に形成されている。更に、ケース2の前記モータ収納部2Cの側方で、且つ、ギア収納筒2Bの外周に隣接して、前記凹部2bに連通する断面矩形の貫通孔2Dが貫設されており、この貫通孔2Dと前記ギア収納筒2Bとの間には、後述するロックボルト7の係合部材7Aに突設された係合部7aがスライド方向にガイドされるガイド溝部2Fが形成され、
図2に示すように、前記ロックボルト7が上下動可能に嵌装されている。
【0025】
ところで、ギア部材6と電動モータ8は、ロックボルト7をロック位置とアンロック位置との間で直線移動(上下動)させる駆動機構を構成している。
【0026】
上記ギア部材6は、樹脂製の回転部材であって、
図2に示すように、これをケース2のギア収納筒2B内に収納することによって、底面部に形成された駆動ガイド溝6Fがガイド筒部2Eに嵌合される。そして、その中心に貫設された軸支孔6aにケース2の軸部2Aを通した後、ワッシャ9に挿通するネジ10をケース2の軸部2Aにねじ込むことによって、当該ギア部材6がケース2に対して傾くことなくガイドされて、回転可能に支持されるとともに、ケース2からの抜けが防がれる。
【0027】
そして、
図3に詳細に示すように、ギア部材6の上半部には、傾斜した螺旋カム6Cが形成されており、その螺旋カム6Cの上端部に連続してギア部材6の底面部から高い位置に設けられた水平面(ギア部材6の回転軸に直交する平面)であるアンロック保持部6Aと、螺旋カム6Cの下端部に連続してギア部材6の底面部から低い位置に設けられた水平面であるロック保持部6Bとが周方向にそれぞれ設けられており、これらのアンロック保持部6Aとロック保持部6Bとが回転軸方向に螺旋状に傾斜する螺旋カム6Cによって接続され、連続的に変化する螺旋カムを構成している。
【0028】
ここで、前記ロックボルト7の上端部には、別部材であるブロック状の係合部材7Aが連結されており、該係合部材7Aには、直角方向に突設された係合部7aが設けられている。即ち、ロックボルト7は、
図2に示すように、カバー3との間に縮装されたスプリング11によってロック方向(
図2の下方)に常時付勢されているため、係合部7aが後述のようにギア部材6が回転することに応じて、該ギア部材6のアンロック保持部6Aとロック保持部6B及び螺旋カム6Cの何れかに係合し、ロック位置又はアンロック位置に作動する構成となっている。尚、この係合部7aは、後述する磁石保持部6Dには重ならないように形成されている。
【0029】
又、ギア部材6の下半部には、ウォームホイール12が一体に形成されており、このウォームホイール12には、ケース2に組み付けた状態で、前記電動モータ8から延びる出力軸(モータ軸)8aに結着された小径のウォーム13が噛合している。ここで、電動モータ8は、ケース2に形成されたモータ収納部2Cに収納されており、出力軸8aは、基端部がモータ収納部2cに形成された不図示の軸保持溝に保持され、先端部がケース2に形成された不図示の軸保持部に回転可能に保持されている。そして、出力軸8aのウォーム13がギア収納筒2B内で前記ギア部材6のウォームホイール12に噛合する構造となっている。これにより、電動モータ8が起動されて出力軸8aが回転すると、その回転がウォーム13とウォームホイール12を経てギア部材6に伝達されるために該ギア部材6がケース2の軸部2A(
図2参照)を中心として回転する。
【0030】
而して、本実施の形態では、
図3に示すように、ギア部材6のアンロック保持部6Aには磁石14が収容保持されている。即ち、
図2及び
図4に示すように、ギア部材6のアンロック保持部6Aの一部には、磁石14を収納するための矩形の磁石保持部6Dが形成されており、この磁石保持部6Dの両側には、磁石保持部6Dに収容された磁石14に係合して該磁石14の磁石保持部6Dからの脱落を阻止するための一対の弾性爪6Eが一体に形成されている。ここで、
図6に示すように、各弾性爪6Eの先端部には、楔状の爪部6eがそれぞれ一体に形成されている。
【0031】
ところで、
図2及び
図4に示すように、ギア部材6の上半部の中央には、軸支孔6aよりも大径の装着配置孔6bが当該ギア部材6の回転軸中心周りに軸支孔6aと同軸に形成されている。
前記磁石保持部6Dは、装着配置孔6bの底面部側に後述する磁石14の高さと同程度の深さを有し、ギア部材6の回転軸中心に向かって開口している。そして、磁石保持部6Dには、取付用平面部6Gが形成され、前記一対の弾性爪6Eは、取付用平面部6Gと平行に磁石保持部6Dの上端縁から装着配置孔
6bに向かってそれぞれ延設されている。これにより、弾性爪6Eと取付用平面部6Gとの間に磁石14を挿入可能
な取付用開口部6cが形成される。尚、装着配置孔6bは、磁石14を磁石保持部6Dへ挿入可能に配置するためのものである。
【0032】
ここで、
図4に示すように、磁石14は、本体部14aと、該本体部14aから左右に一体に張り出した一対の張出部14bとを備えて
おり、ギア部材6の一対の弾性爪6Eの間
には、磁石14の本体部14aの一部を上方(プリント基板4の裏面側)に向けて露出させる磁気センサ側開口部6dが形成されている。
【0033】
ここで、磁石14のギア部材6への組付手順について説明する。
【0034】
磁石14をギア部材6に組み付けるには、先ず、
図6(a)に示すように、磁石14をギア部材6の装着配置孔6bに配置し、取付用平面部6Gからスライドさせるように、この磁石14を装着配置孔6b側から磁石保持部6Dへと図示矢印方向に押し込む。
【0035】
すると、
図6(b)に示すように、磁石14の左右一対の張出部14bが一対の弾性爪6Eの爪部6eに当接して各弾性爪6Eを上側に撓ませるため、該磁石14の磁石保持部6Dへの押し込みが許容される。そして、
図6(c)に示すように、磁石14がギア部材6の磁石保持部6Dの奥側まで押し込まれ、該磁石14が左右の弾性爪6Eの爪部6eを通過すると、各弾性爪6Eは、自身の弾性復元力によって元の状態に復帰し、その爪部6eが磁石14の各張出部14bの縁部に係合するため、磁石14が
図5に示すように取付用平面部6Gと弾性爪6Eとの間に挟持された状態でギア部材6の磁石保持部6D内に確実に固定保持され、その磁石保持部6Dからの脱落が阻止される。
【0036】
ところで、
図2に示すように、ギア部材6は、前記ギアカバー5によって上方から覆われるが、このギアカバー5は、ギア部材6に塗布されたグリスのプリント基板4への飛散を防ぐためのものであって、ギア部材6の一部と、電動モータ8及び出力軸8aと、ウォーム13を覆うように構成されている。又、ギアカバー5には、磁石14の磁力を遮らないための切欠円状の貫通孔5a(
図1参照)が形成されている。即ち、磁石14は、この貫通孔5aの内周側を回転するように構成されている。
【0037】
そして、
図2に示すように、ケース2のギアカバー5の上方には前記プリント基板4が水平に取り付けられている。このプリント基板4の一端には、ケース2から露出して外部制御装置と接続される給電用のコネクタ15が取り付けられている。又、プリント基板4の裏面の所定箇所(ロック位置とアンロック位置)には、
図7及び
図8に示すように、1つのロック用磁気センサ16と2つのアンロック用磁気センサ17がそれぞれ実装されている。そして、プリント基板4には、ロックボルト7の通過を許容するための略矩形の貫通孔4aが形成されており(
図1参照)、この貫通孔4aを介してロックボルト7は、カバー3との間に配置されたスプリング11に係合することによって、ケース2の貫通孔2Dから突出するように付勢されている。尚、本実施の形態では、ロック用磁気センサ16とアンロック用磁気センサ17には、ホールICが用いられており、これらのロック用磁気センサ16及びアンロック用磁気センサ17とギア部材6に収容保持された磁石14は、ロックボルト7の位置(ロック/アンロック位置)を検知するための位置検知機構を構成している。又、このロック用磁気センサ16とアンロック用磁気センサ17も前記ギアカバー5の貫通孔5aの内周側に位置するように配置されている。
【0038】
(電動ステアリングロック装置の作用)
次に、以上のように構成された電動ステアリングロック装置1の作用(ロック/アンロック動作)について説明する。
【0039】
図2に示すようにロックボルト7が下限(ロック位置)に位置してケース2の凹部2bへと突出している状態では、該ロックボルト7が不図示のステアリングシャフトの係合溝に係合するため、ステアリングシャフト(ステアリングホイール)の回転がロックされ、運転者によるステアリング操作が不可能となるために車両の盗難が防がれる。
【0040】
尚、ステアリングロック状態では、ロックボルト7は、
図7に示すように、その係合部7aがギア部材6のロック保持部6Bに係合しており、ギア部材6に組み付けられた磁石14は、プリント基板4のロック用磁気センサ16に対向している。このため、ロック用磁気センサ16によって磁石14の磁界が検出され、これによってロックボルト7がロック位置にあることが検知される。
【0041】
次に、運転者が車両を走行させるために、不図示のエンジンスタートスイッチをON操作すると、車載の不図示のコントローラ(マイコン)が電動モータ8への給電を開始して該電動モータ8を起動する。すると、電動モータ8の出力軸8aの回転がウォーム13とウォームホイール12を経てギア部材6に伝達されるため、該ギア部材6がケース2の軸部2Aを中心として回転する。
【0042】
ここで、ロックボルト7は、スプリング11によってロック方向(
図2の下方)へと常時付勢されているため、上述のようにギア部材6が回転すると、ロックボルト7の係合部7aの係合位置は、ギア部材6のロック保持部6Bから螺旋カム6Cを経て底面部から高い位置に設けられたアンロック保持部6Aへと移行する。すると、ロックボルト7は、
図2に示すロック位置から上動してアンロック位置へと移動し、不図示のステアリングシャフトの係合溝から離脱して両者の係合が解除される。この結果、ステアリングシャフト(ステアリングホイール)のロックが解除されてアンロック状態となり、運転者によるステアリング操作が可能となる。
【0043】
そして、アンロック状態では、
図8に示すように、ギア部材6に組み付けられた磁石14がプリント基板4のアンロック用磁気センサ17に対向し、アンロック用磁気センサ17によって磁石14の磁力が検出されるため、ロックボルト7がアンロック位置にあることが検知される。すると、アンロック用磁気センサ17からの検知信号が不図示のコントローラへと送信され、コントローラによって電動モータ8への給電が遮断されるためにロックボルト7がアンロック位置に保持される。
【0044】
そして、車両が停止し、運転者がエンジンスタートスイッチをOFF操作してエンジンを切ると、コントローラがこれを検知して電動ステアリングロック装置1に対してロック信号を送信して電動モータ8への給電を開始する。すると、電動モータ8が起動され、その出力軸8aの回転がウォーム13とウォームホイール12を経てギア部材6に伝達されて該ギア部材6がケース2の軸部2Aを中心として回転する。すると、ロックボルト7の係合部7aの係合位置は、ギア部材6のアンロック保持部6Aから螺旋カム6Cを経て底面部から低い位置に設けられたロック保持部6Bへと移行するため、ロックボルト7がアンロック位置から下動してロック位置へと移動する。この結果、ロックボルト7が
図2に示すようにケース2の凹部2bから突出し、不図示のステアリングシャフトの係合溝に係合するため、ステアリングシャフト(ステアリングホイール)がロックされて運転者によるステアリング操作が不能となる。
【0045】
そして、ロック状態では、
図7に示すように、ギア部材6に組み付けられた磁石14がプリント基板4のロック用磁気センサ16に対向し、ロック用磁気センサ16によって磁石14の磁力が検出されるため、ロックボルト6がロック位置にあることが検知される。すると、ロック用磁気センサ16からの検知信号が不図示のコントローラへと送信され、コントローラによって電動モータ8への給電が遮断されるためにロックボルト7がロック位置に保持される。
【0046】
而して、本発明に係る電動ステアリングロック装置1においては、ギア部材6に形成された磁石保持部6D内に磁石14を収容すれば、該ギア部材6に一体に形成された一対の弾性爪6Eが磁石14の左右一対の張出部14bの端縁に係合して該磁石14の半径方向への移動を阻止し、弾性爪6Eと磁石保持部6Dとの間で固定するため(
図6(c)参照)、磁石14のギア部材6からの脱落が防がれる。この結果、磁石14の脱落を防ぐための別部品が不要となり、部品点数が削減されるという効果が得られる。又、磁石14をギア部材6の磁石保持部6D内へと押し込むだけで該磁石14をワンタッチで簡単且つ確実にギア部材6に組み付けることができるため、組付工数が削減され、部品点数の削減と相俟って当該電動ステアリングロック装置1のコストダウンが図られる。
【0047】
ところで、本発明に係る電動ステアリングロック装置1においては、回転するギア部材6の磁石保持部6D内に組み付けられた磁石14には、ギア部材6の回転による径方向外方(ギア部材6の回転中心から外側)に向かう遠心力が作用する。ここで、本実施の形態では、ギア部材6の磁石保持部6D
に形成された取付用開口部6cは、遠心力が作用する方向とは反対側となるギア部材6の回転中心に向かって開口しているため、磁石14に作用する遠心力によって該磁石14の取付用開口部6cからの脱落が防がれ、弾性爪6Eの係止とも相俟って磁石14のギア部材6からの脱落が確実に防がれる。
【0048】
又、本実施の形態
のように、ギア部材6の磁石保持部6Dに取付用開口部6cを該ギア部材6の回転中心に向かって開口させる構成を採用しても、ギア部材6の回転軸中心周りに装着配置孔6bを同軸的に形成したため、この装着配置孔6bから磁石14を磁石保持部6Dへ容易に挿入してこれを磁石保持部6Dへと組み付けることができる。
【0049】
更に、本実施の形態では、
磁石14を、その本体部14aの一部がギア部材6の磁気センサ側開口部6dから磁気センサ16,17側に露出する状態で組み付けることができるため、磁石14のロック用磁気センサ16及びアンロック用磁気センサ17への磁束が遮られることがなく、これらのロック用磁気センサ16及びアンロック用磁気センサ17によって磁石14の磁力が確実に検出されてロックボルト7のロック位置とアンロック位置がそれぞれ正確に検知されるとともに、磁石14として小型のものを用いることができるためにコストダウンと軽量化を実現することができるという効果が得られる。
【0050】
尚、本実施の形態においては、連動部材として、ウォームホイール12及び螺旋カム6Cを有するギア部材6を採用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、螺旋カムの代わりに、雄ネジ部、雌ネジ部又は渦巻きカム等を設けたものであっても良く、種々の変更が可能である。又、ウォームホイール12の代わりにギアを設けたものであっても良い。又、連動部材は、平歯ギア、進退作動するスライドカム、ロック部材に一体的に取り付けられた樹脂部材等であっても良い。
【0051】
更に、本実施の形態においては、磁気センサとしてホールICを採用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ホール素子、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子等であっても良い。