(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889533
(24)【登録日】2021年5月25日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】紫外線発光装置及び紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20210607BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20210607BHJP
C02F 1/32 20060101ALI20210607BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
H01L33/48
H01L23/02 F
C02F1/32
A61L2/10
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-164366(P2016-164366)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2017-147432(P2017-147432A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-206883(P2015-206883)
(32)【優先日】2015年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-25535(P2016-25535)
(32)【優先日】2016年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】大久保 努
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和与至
(72)【発明者】
【氏名】松田 純司
【審査官】
百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0234274(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/203974(WO,A1)
【文献】
特開2014−036226(JP,A)
【文献】
特開2007−317816(JP,A)
【文献】
特開2015−018872(JP,A)
【文献】
特開2011−016074(JP,A)
【文献】
特開2017−011200(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0380168(US,A1)
【文献】
特開2012−227511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
A61L 2/10
C02F 1/32
H01L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成され、該凹部を囲む上部を有する基板と、
前記基板の凹部内に設けられた紫外線発光素子と、
前記基板の凹部を覆うように前記基板の上部に設けられた紫外線透過窓部材と、
前記基板の上部と前記紫外線透過窓部材との間に設けられた樹脂接着層と、
前記樹脂接着層と前記紫外線透過窓部材との間に設けられた遮光層と
を具備し、
前記紫外線透過窓部材は前記基板の凹部に対応した凸部を有し、前記紫外線透過窓部材の凸部は前記基板の凹部内に嵌込められ、
前記遮光層は前記紫外線透過窓部材の凸部の側壁にも設けられると共に前記樹脂接着層の側辺は前記遮光層によって覆われ、
前記遮光層は前記紫外線透過窓部材内で反射した紫外線を反射及び吸収できると共に、前記遮光層は前記紫外線発光素子から前記樹脂接着層を直接照射する紫外線を抑制できるようにした紫外線発光装置。
【請求項2】
凹部が形成され、該凹部を囲む上部を有する基板と、
前記基板の凹部内に設けられた紫外線発光素子と、
前記基板の凹部を覆うように前記基板の上部に設けられた紫外線透過窓部材と、
前記基板の上部と前記紫外線透過窓部材との間に設けられた樹脂接着層と、
前記樹脂接着層と前記紫外線透過窓部材との間に設けられた遮光層と
を具備し、
前記樹脂接着層は前記基板の上部の外周部の段差に設けられると共に、前記樹脂接着層上は前記遮光層によって覆われ、
前記遮光層は前記紫外線透過窓部材内で反射した紫外線を反射及び吸収できると共に、前記遮光層は前記紫外線発光素子から前記樹脂接着層を直接照射する紫外線を抑制できるようにした紫外線発光装置。
【請求項3】
前記遮光層は金属層を具備する請求項1又は2に記載の紫外線発光装置。
【請求項4】
前記遮光層は紫外線反射多層膜を具備する請求項1又は2に記載の紫外線発光装置。
【請求項5】
前記紫外線透過窓部材の凸部に凹部が形成された請求項1に記載の紫外線発光装置。
【請求項6】
前記紫外線透過窓部材の外周部の一端を面取り、該面取りした外周部にも前記遮光層を設けた請求項1〜5のいずれかに記載の紫外線発光装置。
【請求項7】
前記紫外線発光素子は深紫外線発光素子であり、前記紫外線透過窓部材は深紫外線透過窓部材である請求項1又は2に記載の紫外線発光装置。
【請求項8】
前記紫外線発光素子は深紫外線発光素子であり、前記紫外線透過窓部材は深紫外線透過窓部材であり、
前記遮光層は深紫外線反射多層膜を具備する請求項1又は2に記載の紫外線発光装置。
【請求項9】
処理ガス又は処理水を流すためのケーシングと、
前記ケーシングの外面に設けられた請求項1〜8のいずれかに記載の紫外線発光装置の少なくとも1つと
を具備する紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は深紫外線発光装置を含む紫外線発光装置及び紫外線照射装置(深紫外線照射装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、210〜310nmの短波長領域の深紫外線を発する発光装置は、消毒、殺菌、浄化等に用いられ、他方、310nm以上の長波長領域の紫外線を発する発光装置は、露光等に用いられる。
【0003】
図12は第1の従来の紫外線発光装置を示す断面図である(参照:特許文献1)。
図12において、紫外線発光装置100は、凹部101aが形成され、凹部101aを囲む上部101bを有する基板101と、基板101の凹部101a内に設けられた紫外線発光ダイオード(LED)素子102と、基板101の凹部101aを覆うように設けられた紫外線透過窓部材103と、基板101の上部101bと紫外線透過窓部材103との間に設けられた封止部材としての樹脂接着層104とによって構成される。樹脂接着層104は、たとえばAgペースト、紫外線接着剤、Pbフリー低温ガラス、アクリル樹脂、又はセラミック接着剤等を用いている(参照:特許文献1の段落0086)。
図12においては、紫外線LED素子102から発生した紫外線UV1は紫外線透過窓部材103を透過して外部へ出射される。他方、紫外線UV2は紫外線透過窓部材103内で反射し、樹脂接着層104に向かう。また、紫外線UV3は紫外線LED素子102から直接樹脂接着層104に向かう。
【0004】
図13は第2の従来の紫外線発光装置を示す断面図である(参照:特許文献2)。
図13の紫外線発光装置200においては、
図12の封止部材としての樹脂接着層104の代りに、基板101側に設けられた金属層201、紫外線透過窓部材103側に設けられた金属層202、及び金属層201、202間に設けられた金錫(AuSn)共晶接合層(又はAgSn共晶接合層)203を設けてある(参照:特許文献2の段落0026、0027、0028)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−227511号公報
【特許文献2】特開2015−18873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12に示す第1の従来の紫外線発光装置100においては、紫外線LED素子102からの紫外線UV2が紫外線透過窓部材103に入射後、紫外線透過窓部材103内で反射して樹脂接着層104を照射する。また、紫外線LED素子102からの紫外線UV3が樹脂接着層104を直接照射する。但し、樹脂接着層104の横方向面積が縦方向面積より大きいので、紫外線UV2の方が紫外線UV3より影響が大きい。このとき、樹脂接着層104が有機物を含む場合、その有機物の結合種の一部が切断されて変質することがある。たとえば、
図14に示すように、紫外線によってエネルギー換算波長310nm以上の有機物の結合種が切断され、特に、210〜310nmの深紫外線によってエネルギー換算波長210nm以上の有機物の多くの結合種が切断される。従って、樹脂接着層104が変質劣化し、この結果、クラックの発生、変色等によって樹脂接着層104の接着能力が低下して装置の信頼性が低下するという課題がある。
【0007】
また、
図15の(A)に示すごとく、
図12に示す第1の従来の紫外線発光装置100を紫外線照射装置の処理ガス、処理水等の殺菌対象物を矢印のごとく流す紫外線透過ケーシング111の外側に配置すると共に、紫外線発光装置100に対向して反射板112を配置すると、紫外線発光装置100から発生した紫外線UVは反射板112にて反射されて紫外線が再び紫外線発光装置100に入射する。また、
図15の(B)、(C)に示すごとく、2つの紫外線発光装置100を紫外線透過ケーシング111に対向して配置すると、一方の紫外線発光装置100から発生した紫外線UVは他方の紫外線発光装置100に入射する。この結果、やはり、紫外線発光装置100の樹脂接着層104は紫外線UVで照射され、樹脂接着層104の接着能力が低下して装置の信頼性が低下するという課題もある。
【0008】
さらに、基板101の上部101bに紫外線透過窓部材103を樹脂接着層104によって接合する際に、樹脂接着層104の一時的な粘度の低下により紫外線透過窓部材103が横方向にずれてしまうという課題もある。
【0009】
他方、
図13に示す第2の従来の紫外線発光装置200においては、紫外線LED素子102からの紫外線UV2が紫外線透過窓部材103に入射後、紫外線透過窓部材103内で反射して金属層202を照射し、紫外線UV2は金属層202によって反射及び吸収され、たとえ金属層202の温度が高くなっても、また、紫外線UV3がAuSn共晶接合層203を直接照射しても、AuSn共晶接合層203が変質することはない。しかしながら、AuSn共晶接合層203の製造工程は製造コストの上昇を招き、この結果、紫外線発光装置200の製造コストが高いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明に係る紫外線発光装置は、凹部が形成され、凹部を囲む上部を有する基板と、基板の凹部内に設けられた紫外線発光素子と、基板の凹部を覆うように基板の上部に設けられた紫外線透過窓部材と、基板の上部と紫外線透過窓部材との間に設けられた樹脂接着層と、樹脂接着層と紫外線透過窓部材との間に設けられた遮光層とを具備するものである。これにより、紫外線通過窓部材内で反射して樹脂接着層を照射する紫外線は抑制される。
【0011】
また、紫外線透過窓部材は基板の凹部に対応した凸部を有し、紫外線透過窓部材の凸部は基板の凹部内に嵌込められると共に樹脂接着層の側辺は遮光層によって覆われ、遮光層は紫外線透過窓部材内で反射した紫外線を反射及び吸収できると共に、
遮光層は紫外線発光素子から
樹脂接着層を直接照射する紫外線を抑制できるようにした。また、樹脂接着層は基板の上部の外周部の段差に設けられると共に、樹脂接着層上は遮光層によって覆われ、遮光層は紫外線透過窓部材内で反射した紫外線を反射及び吸収できると共に、
遮光層は紫外線発光素子から
樹脂接着層を直接照射する紫外線を抑制できるようにした。
【0012】
さらに、本発明に係る紫外線照射装置は、処理ガス又は処理水を流すためのケーシングと、ケーシングの外面に設けられた上述の紫外線発光装置の少なくとも1つとを具備するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紫外線透過窓部材内で反射した紫外線及び紫外線発光素子からの直接照射される紫外線は遮光層及び基板によって反射及び吸収されて遮光されるので、樹脂接着層は紫外線照射を受けず、従って、樹脂接着層は変質することがない。この結果、樹脂接着層の接着能力の低下を防止して装置の信頼性を向上できる。
【0014】
また、基板の上部に紫外線透過窓部材を樹脂接着層によって接合する際の樹脂接着層の一時的な粘度の低下による紫外線透過窓部材の横方向のずれを紫外線透過窓部材の凸部によって抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る深紫外線発光装置の第1の実施の形態を示す上面図である。
【
図2】
図1の深紫外線発光装置のII−II線断面図である。
【
図3】
図1、
図2の金属層の代りの深紫外線反射多層膜の断面図である。
【
図4】本発明に係る深紫外線発光装置の第2の実施の形態を示す上面図である。
【
図5】
図4の深紫外線発光装置のV−V線断面図である。
【
図6】
図4、
図5の深紫外線透過
窓部材の変更例を示す断面図である。
【
図7】本発明に係る深紫外線発光装置の第3の実施の形態を示す上面図である。
【
図8】
図7の深紫外線発光装置のVIII−VIII線断面図である。
【
図9】
図8の深紫外線発光装置の変更例を示す断面図である。
【
図10】本発明に係る深紫外線発光装置の第4の実施の形態を示す上面図である。
【
図11】
図10の深紫外線発光装置のXI−XI線断面図である。
【
図12】第1の従来の紫外線発光装置を示す断面図である。
【
図13】第2の従来の紫外線発光装置を示す断面図である。
【
図14】有機物の主な結合種の分子結合エネルギーを示す表である。
【
図15】
図12の紫外線発光装置が設けられた紫外線照射装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係る深紫外線発光装置の第1の実施の形態を示す上面図、
図2は
図1の深紫外線発光装置のII−II線断面図である。
【0017】
図1、
図2において、低温同時焼成セラミック(LTCC)基板1は4層の基板1−1、1−2、1−3、1−4の積層よりなり、基板1−3、1−4によって凹部1aが形成される。
【0018】
LTCC基板1の凹部1aの基板1−1、1−2の上下には放熱パッド2−1、2−2、2−3が設けられ、放熱パッド2−1、2−2、2−3は金属ビア3−1、3−2によって結合される。この場合、下側の金属ビア3−1は直径0.3mmと大きく、上側の金属ビア3−2は直径0.25mmと小さくしてあり、これにより、放熱効率を高くする。金属ビア3−1、3−2はAg又はAg合金よりなり、焼結を阻害しない範囲でPt、Rh、Pd、Ru等を添加してもよい。
【0019】
LTCC基板1の凹部1aを囲み上部をLTCC基板1の上部を構成する基板1−3、1−4の下の基板1−1、1−2の上下には、電極パッド4−1、配線パッド4−2、4−3が設けられ、金属ビア(図示せず)によって電気的に接続される。尚、この金属ビアは金属ビア3−1、3−2と同一層よりなる。
【0020】
たとえば6個の深紫外線LED素子5は波長210〜310nmの領域の深紫外線を発生するものであり、たとえばその発光層はAlGaN系材料で構成される。これらの深紫外線LED素子5はAuSn共晶接合層又はバンプ(図示せず)を用いてサブマウント6に搭載される。また、サブマウント6はAlN又は酸化シリコンを有するシリコンより構成され、放熱性能がよいAuSn共晶接合層(図示せず)によって放熱パッド2−3に接合される。従って、深紫外線LED素子5から発生した熱はサブマウント6、放熱パッド2−3、金属ビア3−2、放熱パッド2−2、金属ビア3−1及び放熱パッド2−1を介して外部へ放熱される。
【0021】
深紫外線LED素子5はサブマウント6上の配線層6a、6b間に電気的に接続され、配線層6a、6bはワイヤ7a、7bによって基板1−
2上のワイヤボンディングパッド8a、8bに電気的に接続される。尚、ワイヤボンディングパッド8a、8bは配線パッド4−3の一部であり、配線パッド4−3、4−2を介して2つの電極パッド4−1に電気的に接続される。従って、深紫外線LED素子5は2つの電極パッド4−1間に電気的に接続されることになる。
【0022】
ツェナダイオード素子9は深紫外線LED素子5を逆電圧から保護するためのものであり、深紫外線LED素子5に電気的に逆並列に接続される。つまり、ツェナダイオード素子9の一方の電極はLTCC基板1の凹部1aのサブマウント6が搭載されていない領域上の配線パッド4−3’上に搭載され、ツェナダイオード素子9の他方の電極はワイヤ7cによってワイヤボンディングパッド8bに電気的に接続される。
【0023】
尚、放熱パッド2−1、電極パッド4−1は同一層であり、放熱パッド2−2、
配線パッド4−2は同一層であり、放熱パッド2−3、
配線パッド4−3、4−3’、ワイヤボンディングパッド8a、8bは同一層である。
【0024】
LTCC基板1の凹部1aを覆うようにLTCC基板1の上部つまり基板1−4上に平板状の深紫外線透過窓部材10を設けてある。深紫外線透過窓部材10の材料は、深紫外線を透過する材料、たとえば、石英ガラス、サファイヤ、MgO、MgF
2、CaF
2、合成
フューズドシリカ等である。
【0025】
基板1−4と深紫外線透過窓部材10との間に封止部材として樹脂接着層11を設ける。樹脂接着層11の材料は、たとえば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂、有機/無機(たとえばシリコーン/シリカ)ハイブリッド樹脂、フッ素系樹脂等である。
【0026】
さらに、樹脂接着層11と深紫外線透過窓部材10との間に、遮光層として深紫外線に対して反射率が高い金属層12を設ける。金属層12は、たとえば、Al、Ni、Ti、Cu、Au、Cr、Mo、Ta等よりなる単層又は複層よりなる。この場合、
金属層12は深紫外線透過部材10上に予め形成し、樹脂接着層11は金属層12及びLTCC基板1の基板1−4のいずれか一方又は両方に塗布する。
【0027】
このように、樹脂接着層11上に遮光層としての金属層12を設けているので、深紫外線透過窓部材10内で反射した深紫外線は金属層12によって反射及び吸収されて遮光され、樹脂接着層11は深紫外線照射を受けない。従って、樹脂接着層11は変質劣化せず、この結果、樹脂接着層11の接着能力の低下を防止して装置の信頼性を向上できる。
【0028】
また、
図1、
図2の金属層12の代りに、
図3に示す深紫外線反射多層膜13を用いることができる。
【0029】
図3において、深紫外線反射多層膜13は、深紫外線を透過する誘電体層である高屈折率層131、低屈折率層132よりなる組13−1、13−2、…、13−Nを積層することによって構成されている。各組13−i(i=1、2、…、N)は、所定の中心波長λ
iを有する深紫外線を光の干渉を利用して反射する。このときの反射条件は、
n
131・d
131=n
132・d
132=λ
i/4
但し、n
131は高屈折率層131の屈折率、
d
131は高屈折率層131の厚さ、
n
132は低屈折率層132の屈折率、
d
132は低屈折率層132の厚さ
である。つまり、広い波長範囲の深紫外線を反射するためには、中心波長λ
iが少し異なる複数組13−1、13−2、…、13−Nが必要となる。この場合、高屈折率層131と低屈折率層132との屈折率差が大きい程、反射できる深紫外線の波長幅が大きくなるので、反射したい深紫外線の波長幅に応じて高屈折率層131、低屈折率層132の材料を選択する。
【0030】
たとえば、高屈折率層131を屈折率2.0のHfO
2層とし、低屈折率層132を屈折率1.5の酸化シリコン(SiO
2)層とする。また、HfO
2層131、SiO
2層132の組数Nを15とし、さらに、1つのHfO
2層131を付加し、合計31層積層し、この場合、HfO
2層131の厚さd
131を徐々に異なる値とし、また、SiO
2層132の厚さd
132を徐々に異なる値とする。このとき、深紫外線反射多層膜13の上側の深紫外線透過窓部材10もたとえば石英ガラスよりなる低屈折率であり、また、深紫外線反射多層膜13の下側の樹脂接着層11もたとえばアクリル系樹脂よりなる低屈折率であるので、深紫外線反射多層膜13においては、始端及び終端はHfO
2層131とする。従って、N×2+1=31層となる。尚、深紫外線反射多層膜13の反射率は層数に応じて指数関数的に増加し、層数31の深紫外線反射多層膜13により、260nm〜300nmの範囲で十分な深紫外線反射特性を得ることができる。
【0031】
尚、高屈折率層131としては、HfO
2の代りに、ZrO
2、Y
2O
3、Sc
2O
3等の酸化物系材料を用いることもできる。また、低屈折率層132としては、SiO
2の代りに、CaF
2、MgF
2、BaF
2等の低屈折率材料を用いることもできる。
【0032】
図4は本発明に係る深紫外線発光装置の第2の実施の形態を示す上面図、
図5は
図4の深紫外線発光装置のV−V線断面図である。
【0033】
図4、
図5においては、
図1、
図2の平板状の
紫外線透過窓部材10の代りに、凸部10’aを有する深紫外線透過窓部材10’を設けてある。深紫外線透過窓部材10’の凸部10’aはLTCC基板1の凹部1aに対応し、凹部1a内に嵌込められる。この場合、金属層12’は基板1−4に対応した深紫外線透過窓部材10’の領域に設けられるが、
図5に示すごとく深紫外線透過窓部材10’の凸部10’aの側壁にも設けられる。このとき、金属層12’が必ずしも基板1−4に接触する必要性はないが、樹脂接着層11の側辺を覆っている。これにより、深紫外線透過窓部材10’内で反射した深紫外線をさらに反射及び吸収できると共に、深紫外線LED素子5からの深紫外線の直接照射を抑制できる。このようにして、基板1−4に深紫外線透過窓部材10’を樹脂接着層11によって接合する際に、樹脂接着層11の一時的な粘度の低下があっても、深紫外線透過窓部材10’の横方向のずれはその凸部10’aの側壁によって抑制できる。
【0034】
尚、
図5の深紫外線透過窓部材10’の凸部10’aの側壁は垂直となっているが、
図6の(A)に示すごとく、メサ状にしてもよく、また、
図6の(B)に示すごとく、逆メサ状にしてもよい。これにより、凸部10’aの側壁に形成された金属層12’によって深紫外線透過窓部材10’内で反射した深紫外線をさらに反射及び吸収できる。
【0035】
また、
図5、
図6の(A)、(B)の深紫外線透過窓部材10’の凸部10’aには、
図6の(C)、(D)、(E)に示すごとく、凹部10’bを設けることもできる。これにより、深紫外線透過窓部材10’を出射する深紫外線が増加すると共に、深紫外線透過窓部材10’内で反射して金属層12’に入射する深紫外線を減少させることができる。
【0036】
図5、
図6の(C)の深紫外線透過窓部材10’の垂直状の凸部10’aは、平板状窓部材たとえば石英ガラスに、ダイサー等を用いてハーフカットにより溝を格子状に形成し、溝の中心部をフルダイシングにより切断することで形成できる。
【0037】
また、
図6の(A)、(D)の深紫外線透過窓部材10’のメサ状の凸部10’aは、マスキングした平板状窓部材たとえば石英ガラスに、サンドブラストにより溝を格子状に形成し、溝の中心部を切断することにより、たとえば70°程度のテーパ角を有する凸部を形成できる。この際、サンドブラスト条件により、形成するテーパ角を変えることが可能である。
【0038】
さらに、
図6の(B)、(E)の深紫外線透過窓部材10’の逆メサ状の凸部10’aは、マスキングした平板状窓部材たとえば石英ガラスに、サンドブラストにてメサ構造を形成後、メサ側と平板状窓部材に貼り合せることにより形成できる。貼り合せ方法としては、原子拡散接合や表面活性化接合を用いることができる。その後メサ構造を形成した窓部材裏面の平板部を研磨して取り除くことにより逆メサ構造を形成できる。その後、所望のサイズに切断して作製する。
【0039】
また、加工部分のダメージ除去や平坦性を向上させるために、化学腐食によるエッチング、たとえばフッ酸混合液等を用いてエッチングしてもよい。
【0040】
尚、
図4、
図5の金属層12’の代りに、
図3に示す深紫外線反射多層膜13を用いることもできる。
【0041】
図7は本発明に係る深紫外線発光装置の第3の実施の形態を示す上面図、
図8は
図7の深紫外線発光装置のVIII−VIII線断面図である。
【0042】
図7、
図8においては、
図1、
図2のLTCC基板1の基板1−4の外周部に段差1−4aを設け、この段差1−4aに樹脂接着層11を塗布する。この段差1−4aは、樹脂接着層11の熱応力を小さくするために、0.1〜0.2mmとする。金属層12は樹脂接着層11を含めてLTCC基板1の基板1−4全体の上に位置する。この場合、金属層12を深紫外線透過窓部材10上に予め形成し、他方、樹脂接着層11はLTCC基板1の基板1−4の外周部段差に予め塗布し、深紫外線透過窓部材10の金属層12をLTCC基板1の基板1−4に樹脂接着層11によって接着する。
【0043】
このように、樹脂接着層11上に遮光層としての金属層12を設けているので、深紫外線透過窓部材10内で反射した深紫外線は金属層12によって反射及び吸収されて遮光され、樹脂接着層11は深紫外線照射を受けない。また、同時に深紫外線LED素子5からの直接の深紫外光はLTCC基板1の基板1−4によって遮光される。従って、樹脂接着層11は変質劣化せず、この結果、樹脂接着層11の接着能力の低下を防止して装置の信頼性を向上できる。
【0044】
図9は
図8の深紫外線発光装置の変更例を示す断面図である。
【0045】
図9においては、
図8の深紫外線透過窓部材10の外周部の一部を予め面取りして面取り部10aとする。従って、深紫外線透過窓部材10に予め形成される金属層12は深紫外線透過窓部材10の面取り部10aで上方へ曲る。この結果、深紫外線透過窓部材10の外周部から漏れようとする深紫外光UV4は上方へ曲った金属層12によって反射されて戻されることになる。従って、深紫外光の取り出し効率が上昇する。また、この深紫外線発光装置の横に配置される他の装置に、深紫外線透過窓部材10の外周部から漏れる深紫外光が照射されることを抑制できる。
【0046】
尚、紫外線透過窓部材10の外周部の一部を予め面取りし、その部分まで金属層12を形成する
図9に示す変更例は、
図1、
図4に示す第1、第2の実施の形態及び次の
図10に示す第4の実施の形態にも適用できる。
【0047】
図10は本発明に係る深紫外線発光装置の第4の実施の形態を示す上面図、
図11は
図10の深紫外線発光装置のXI−XI線断面図である。
【0048】
図10、
図11においては、
図1、
図2のLTCC基板1の基板1−4の凹部1−4bを設け、この凹部1−4bに樹脂接着層11を塗布する。この凹部1−4bは樹脂接着層11の熱応力を小さくするために、0.1〜0.2mmとする。金属層12は樹脂接着層11を含めてLTCC基板1の基板1−4全体の上に位置する。この場合も、金属層12を深紫外線透過窓部材10上に予め形成し、他方、樹脂接着層11はLTCC基板1の基板1−4の凹部1−4bに予め塗布し、深紫外線透過窓部材10の金属層12をLTCC基板1の基板1−4に樹脂接着層11によって接着する。
【0049】
尚、上述の実施の形態は210〜310nmの短波長領域の深紫外線発光装置に係るが、本発明は310nm以上の長波長領域の紫外線発光装置にも適用できる。この場合には、深紫外線LED素子5を紫外線LED素子に変更し、金属層12として当該長波長領域における反射率が良好な材料を用いるか、又は深紫外線反射多層膜13を紫外線の長波長領域に合わせた紫外線反射多層膜に変更する。
【0050】
さらに、上述の実施の形態においては、基板材料としてLTCCを用いる場合を示したが、高温同時焼成セラミックス(HTCC)やAlNを用いることもできる。また、HTCCやAlNの場合には、金属ビア材料としてW、Mo、Cu及びそれらの合金を用いることができる。さらに、AlNの場合には、熱伝導率が大きいので、金属ビアを用いなくても良い。
【0051】
さらにまた、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の紫外線発光装置、特に、深紫外線発光装置は、殺菌効果が大きいので、浄水器、ウォータクーラ、ウォータサーバ、医療用純水
製造装置、加湿器、食器洗浄機、デンタルチェア等における水の殺菌浄化装置に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1:LTCC基板
1−1、1−2、1−3、1−4:基板
1a:凹部
1−4a:段差
1−4b:凹部
2−1、2−2、2−3:放熱パッド
3−1、3−2:金属ビア
4−1:電極パッド
4−2、4−3、4−3':配線パッド
5:深紫外線LED素子
6:サブマウント
6a、6b:配線層
7a、7b:ワイヤ
8a、8b:ワイヤボンディングパッド
9:ツェナダイオード
10、10’:深紫外線透過窓部材
10a:面取り部
10’a:凸部
10’b:凹部
11:樹脂接着層
12、12’:金属層
13:深紫外線反射多層膜
100:紫外線発光装置
101:基板
101a:凹部
101b:上部
102:紫外線LED素子
103:紫外線透過窓部材
111:ケーシング
112:反射板
200:紫外線発光装置
201、202:金属層
203:AuSn共晶接合層