(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889538
(24)【登録日】2021年5月25日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】線材供給装置および医療用線状体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21F 23/00 20060101AFI20210607BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20210607BHJP
【FI】
B21F23/00 D
A61M25/10 500
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-208083(P2016-208083)
(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公開番号】特開2017-127904(P2017-127904A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2019年8月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-6208(P2016-6208)
(32)【優先日】2016年1月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】梶原 豪介
(72)【発明者】
【氏名】善木 智義
【審査官】
石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04879809(US,A)
【文献】
国際公開第2016/009705(WO,A1)
【文献】
米国特許第04757845(US,A)
【文献】
特表2013−533794(JP,A)
【文献】
特開平03−060939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 23/00
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端側に加工部位を有する複数の線状ワークから一部のワークを選択するワーク選択機構であって、
1または複数のワークを、ワークの一方端側である加工部位側で選択的に屈曲させ所定の姿勢に変更させる姿勢変更手段と、
ワークの他方端側に位置し、ワークを固定するワーク姿勢固定部を含む固定具とを備え、
上記姿勢変更手段は、ワークの加工部位と上記ワーク姿勢固定部との間に位置し、
上記姿勢変更手段は、ワークを保持する選択部と、上記選択部を変位させる駆動部とを含み、
上記駆動部は、上記選択部に保持されるワークを屈曲させるように上記選択部を変位させ、かつ、上記選択部を変位前の状態に戻すように構成されているワーク選択機構。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク選択機構であって、
光源とワーク加工部位後端を検出する受光装置と演算装置を含む位置検出手段を持つワーク選択機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のワーク選択機構であって
ワークの他方端側である非加工部側を固定する固定箇所を1個以上備えるワーク選択機構。
【請求項4】
請求項3に記載のワーク選択機構であって、
前記固定箇所が、ワークの他方端側である非加工部側を湾曲状態で固定する手段を備えるワーク選択機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のワーク選択機構により、他と異なる姿勢に変更されたワークの加工を行う加工機を備える線材加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載の線材加工装置であって、光源とワーク加工部後端を検出する受光装置と、演算装置を含む位置検出手段を備えることを特徴とする線材加工装置。
【請求項7】
1または複数のワークを、ワークの一方端側である加工部位側で選択的に屈曲させ所定の姿勢に変更させる姿勢変更手段を備えるワーク選択機構を備える線材加工装置を用いた、一方端側に加工部位を有する医療用線状体の製造方法であって、
複数のワークを前記線材加工装置に固定する工程と、
1または複数のワークを、ワークの一方端側である加工部位側で選択的に屈曲させ所定の姿勢に変更させる工程と、
1のワークの一方端を加工する工程と、
前記ワークを、前記所定の姿勢に変更させる工程の前の姿勢に戻す工程と、
を含む医療用線状体の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の医療用線状体の製造方法であって、
検出光をワークに照射する工程と、ワーク所定部位を検出する工程と、を含む医療用線状チューブ体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の線状ワークの中から加工するワークを選択する機構に関する。加えて、上記選択機構を含む加工機器への供給装置に関する。さらに、ワークの位置決め方法および機構に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医療用のカテーテルなどの線状ワークの加工には、レーザーやバーナー等の加熱器による溶着や金型等による成形・折畳などの加工機を用いた加工、さらに手作業による成形、組立などが行われている。
【0003】
各種加工装置または治具へワークをセットする際には、人が手作業で行っておりワークのセットに多くの時間がかかっている。時間が掛る理由としては、(1)複数ワークを加工機で同時加工できない、(2)加工機に複数ワークを取り付けることができない、(3)装置に取り付ける際にワーク位置決めに時間が掛る、などが挙げられる。
【0004】
これに対し長尺ワークの加工装置への挿入機構として、加工位置に設けた加工用クランパ上に長尺ワークを高精度に供給する装置が提案されている。しかしながら、複数本のワークが着脱式の収納・保持具であるマガジンに固定されているものには適用できないという問題がある。また、接触式のワーク位置検出を用いる場合には、ワークへの傷発生の可能性がある。また、柔らかいワークに対しては、検出センサがワークに接した際にワークが変形したり、移動したりしてワーク位置を誤検知してしまう課題がある。さらに、長尺ワークの場合、長さに応じて装置サイズが大きくなってしまう課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−60939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、線材のワークの選択機構を含む装置であって、ワークの取り付けが簡単で複数本同時取り付けが可能であり、各種加工機まで選択したワークを供給する装置および当該装置を用いた医療用線状体の製造方法を提供する点にある。
【0007】
装置化を行うにあたり次の課題がある。ワーク供給装置にワークを複数本同時に固定する場合、加工機に投入する際、被加工ワークと隣り合う他のワークが加工機に接触してしまう課題がある。ワーク同士が接触すると、ワークが固定位置から脱落したり、加工位置がずれてしまうなどの問題が起こり得る。特に、ワークが長尺であったり、装置設置スペースが限られている場合、またはワークを並列に複数本まとめたマガジンのような治具を用いてハンドリングを行う際には、ワーク同士の接触の回避が困難である。
【0008】
また、ワークを同じ位置で固定しても、ワーク自体に長さ方向の誤差があったり、ワーク先端から加工したい箇所までの距離がすべてのワークで一定でない場合などは、ワークが所定の加工位置からずれてしまい、加工がうまくいかずワークを破損させてしまうという課題がある。
【0009】
加えて、ワークが線材なので接触式で検知する方法では、ワークが柔らかく、検知部材からワークが逃げてしまい検知が難しいという課題がある。加えて、検知部材の接触により、ワークを傷つけるリスクがある。このように、ワークが線材であるために接触式の検知方法では、ワークの先端が検知しにくいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前述の課題解決の為に鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。本発明は、次の(1)から(8)に関する。
(1)一方端側に加工部位を有する複数の線状ワークから一部のワークを選択するワーク選択機構であって、1または複数のワークを、ワークの一方端側である加工部位側で選択的に屈曲させ所定の姿勢に変更させる姿勢変更手段を備えるワーク選択機構に関する。
(2)上記(1)に記載のワーク選択機構であって、光源とワーク加工部位後端を検出する受光装置と演算装置を含む位置検出手段を持つワーク選択機構に関する。
(3)上記(1)または(2)に記載のワーク選択機構であって、ワークの他端側に位置し、ワークを固定するワーク固定具と、上記姿勢変更手段を含み、上記姿勢変更手段は、ワークの加工部位とワーク姿勢固定部5との間に位置するワーク選択機構に関する。
(4)上記(1)に記載のワーク選択機構であって、上記姿勢変更手段は、ワーク姿勢固定部5よりワークの一方端側に位置し、ワークを保持する選択部と、上記選択部を変位させる駆動部を含み、上記駆動部は、上記選択部に保持されるワークを屈曲させるように上記選択部を変位させるワーク選択機構に関する。
(5)上記(1)から(4)のいずれか1項に記載のワーク選択機構であって、ワークの他方端側である非加工部側を固定する固定箇所を1個以上備えるワーク選択機構に関する。
(6)上記(5)に記載のワーク選択機構であって、上記固定箇所が、ワークの他方端側である非加工部側を湾曲状態で固定する手段を備えるワーク選択機構に関する。
(7)上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の、ワーク選択機構により、他と異なる姿勢に変更されたワークの加工を行う加工機を備える線材加工装置に関する。
(8)上記(7)に記載の線材加工装置であって、光源とワーク加工部後端付近の影を検出する受光装置と、演算装置を含む位置検出手段を備える線材加工装置に関する。
(9)1または複数のワークを、ワークの一方端側である加工部位側で選択的に屈曲させ所定の姿勢に変更させる姿勢変更手段を備えるワーク選択機構を備える線材加工装置を用いた、一方端側に加工部位を有する医療用線状体の製造方法であって、複数のワークを前記線材加工装置に固定する工程と、1または複数のワークを、ワークの一方端側である加工部位側で選択的に屈曲させる工程と、1のワークの一方端を加工する工程と、を含む医療用線状体の製造方法に関する。
(10)上記(9)に記載の医療用線状体の製造方法であって、検出光をワークに照射する工程と、ワーク所定部位を検出する工程と、を含む医療用線状体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、線状のワーク1本または複数本、またはマガジンなどに複数本まとめられたワーク集団を加工する際の加工装置への取付工数を低減することができる。非接触の位置検出によりワークを傷つける危険性を低減することができる。長尺ワークの際はUの字状に曲げて機器サイズを大きくならない様にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の1形態に係る装置全体の斜視図であって、加工前および加工後の状態を示す。
【
図2】本発明の1形態に係る装置全体の斜視図であって、加工準備時を示す。
【
図3】本発明の1形態に係る装置全体の斜視図であって、加工時を示す。
【
図4】本発明の1形態に係る装置全体の斜視図であって、次ワーク加工準備時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。以下の実施形態は、線状ワークとして医療用ワークであるバルーンカテーテルを例に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。また、装置はワークが水平方向で有る必要はない。したがって垂直方向でも良い。尚、説明は水平方向に設置する場合で説明する。
【0014】
本発明を含む線材加工装置は、次の構成を含むことができる。加工機1、ワーク選択機構、位置検出装置である受光装置31と光源32、および加工機への挿入ガイド8である。ワーク選択機構は、1または複数のワークを、ワークの一方端側である加工部位側で選択的に屈曲させながら所定の姿勢に変更させる手段を備えるワーク選択機構であって、ワークを固定するワーク姿勢固定部5と、ワーク姿勢固定部5よりワークの一方端側に位置し、ワークを保持する選択部61と、上記選択部61を変位させる駆動部62を含む。ワークが長尺である場合は、ワークの他方端側に固定箇所2を設けることができる。複数の長尺ワークが、固定具などによりまとめて固定されている場合は、上記固定箇所2で固定具を固定しても良い。
【0015】
加工機1については、様々な種類の加工を想定しており、形状付与のための金型などの各種加工機、加工治具や作業員にワークを供給することも含む。特に、ワークの先端部分を加工する加工手段を備えることが好ましい。例えば、先端部分を加熱する装置、着色する装置、切断する装置、他の部材を接着する装置などが挙げられるが、これらに限られない。尚、ワークを装置に配置した際の加工機側の部位を先端、その反対側を後端という。加工機1は、ワークと向かい合うように配置し、ワークの加工位置に応じて、移動可能であることが好ましい。
【0016】
ワークは、線状の形状であるものであればよく、ワークの用途を問わず、種々のものを対象とすることができる。特に位置検出においては、ワークのいずれかの箇所に径変化やつなぎ目のある、ワイヤやチューブなどの線状のワークを対象にすることができる。特に、ワークの加工部位後端に径変化やつなぎ目があるワークを対象とすることが好ましい。
【0017】
ワークは、本発明のワーク選択機構、線材加工装置や、製造方法において取り扱いの対象となる物品である。ワークとして、医療用線状体を用いることができる。医療用線状体とは、医療用途で用いられるワイヤやチューブなどを含む線状物であり、バルーンカテーテルを含む各種カテーテル、カテーテルを用いる処置などで用いられるガイドワイヤを含むワイヤ類、内視鏡を通じて体内で処置を行うための内視鏡処置具、血液や体液などのドレーンチューブ、医療機器に用いられるチューブなどが挙げられるがこれらに限定されない。ワークの製造工程、検査工程などにおいて本発明を用いることができる。
【0018】
ワーク選択装置として、ワーク姿勢変更部61、62およびワーク姿勢固定部5が含まれる。加工機1による加工対象とするワークW1、姿勢変更部により姿勢が変化する非加工対象のワークをW2で示す。
【0019】
ワーク姿勢固定部5は、線材加工装置において、加工を行う前の状態では、加工機1の外側に位置し、作業者がワークを取付および取り外しする場所である。ワーク姿勢固定部5は、ワーク配置部上に配置された複数本のワークW1、W2を、ワークW1の加工位置後端が姿勢変更部よりも加工機側に位置し、位置検出装置31、32の撮像範囲内にワーク加工位置後端が位置する状態で全ワークの各ワークの1ヶ所または複数個所を固定する。この時ワークが接する箇所であるワーク姿勢変更部選択部61およびワーク姿勢固定部5では各ワークが混ざらない様に、溝やガイド壁などを設けることが好ましい。
【0020】
ワークW1、W2は、少なくともワーク姿勢変更部選択部61またはワーク姿勢固定部5のいずれかで固定する。固定箇所は姿勢変化時にワークW2に負荷がかからない様に各ワークに対し何れか1ヶ所であることが好ましい、但し、完全に固定せずワークが動ける半固定状態にする固定は複数個所合っても良くまた、ワークが伸縮可能な場合は完全固定が複数個所合っても良い。固定方法はクランプやマグネットなど種々採用できる。例えば、マグネットで固定する場合は、ワーク姿勢固定部5を例えば400系ステンレスとし、固定部材としてフェライト磁石を用いることができる。ワーク姿勢固定部5上のワークW1、W2に固定部材を配置し、固定することができる。
【0021】
ワーク姿勢変更部は、選択部61と、選択部61を跳ね上げまたは下げるなどして、選択部61の位置を変化させる駆動部62を含む。選択部61を省略して、駆動部のみで直接ワークの位置を変化させても良い。複数のワークが水平に横方向に並列に固定される場合は、駆動部62として、ワークを水平方向に対し、上または下方向に移動させることが好ましい。複数のワークが、垂直に上下方向に並列に固定される場合は、駆動部62として、ワークを右または左方向に移動させることが好ましい。加工機1による加工対象とするワークW1、姿勢変更部により姿勢が変化するワークをW2としても良いし、加工対象とするワークW1を姿勢変更部により姿勢を変化させるワークとしても良い。ワークW1の姿勢を変化させる場合、加工対象外のワークW2は、姿勢変更の対象とする場合は、ワークW1と異なる方向への姿勢変化することが好ましく、姿勢変更の対象とならなくても良い。
【0022】
ワーク姿勢変更部の選択部61にワークを完全固定するとワークの姿勢を変えた際にワークが突っ張りワークを破損させてしまう可能性もあるので、各ワークごとに半円状のカバーをかぶせる様に設置し、ワークが軸方向に遊びが有る状態等の半固定とすることが好ましい。そのカバーの取付方法は、ワーク姿勢固定部5のワーク固定と同様で、マグネットなど種々採用できる。
【0023】
加工機1側に設置するワーク姿勢変更部の選択部61とワーク姿勢固定部5との間は、接続しても良いし、これらは隣接する必要はないので離れた位置で固定および稼働しても良い。選択部61とワーク姿勢固定部5とは、ヒンジなどを使用して接続し、選択部61のみが駆動部により変位するようにしても良いし、一体的に形成して、部材の弾性により選択部位のみが変位するようにしても良い。
【0024】
ワーク姿勢変更部駆動部62として、各ワーク毎に駆動機構を設けることが好ましい。駆動部62はシリンダーであることが好ましい。ワーク移動機構の選択部61を変位させる駆動部62の動力としては、エアシリンダやリニアスライダー等、種々のものを採用できる。
【0025】
シリンダーの駆動を選択部61に伝達することにより、選択部61の位置を変化させ、ワークの姿勢を変化させることができる。ワークの姿勢は、直線状態から、屈曲状態に変化させることが好ましい。ワークの屈曲状態は、曲線状の屈曲であることが好ましい。ワークを折って曲げると、ワークを破損する恐れがある。
【0026】
ワーク姿勢変更部駆動部62は、加工対象外のワークW2を屈曲する場合には、コネクションロットや面接触等を利用し選択部61を加工機1を避ける様に上向きに傾けるまたは下向きに傾けることが好ましい。駆動部62の機構を簡素化する為、駆動部を、加工対象ワークをガイドする挿入ガイド8が入る幅のスリット入りの板と、1つの動力源とすることができる。上記スリットは、加工対象ワークW1の下に配置することが好ましい。このような駆動部62を変位させることで、スリット上にある加工ワークW1の姿勢が変化せず、その他のワークW2を選択的に移動できる機構とすることができる。ワークW2を選択的に移動することにより、ワークを選択することができる。
【0027】
ワーク姿勢変更部駆動部62に用いられるワーク姿勢変更部の選択部61下に設置されたスリット入りの板は、スリットの開口部に挿入ガイド8が入るように配置され、加工対象のW1以外のワークW2が乗った姿勢変更部選択部61の姿勢を変化させる構造とすることができる。スリット板位置を変更またはワーク姿勢固定部5、選択部61の位置をスリット板に対してスライドさせることでワークの中から次の加工ワークW1を選択できる様にする方法でも良い。
【0028】
変位開始位置は、加工機1の加工部直近よりも距離を後端側に離し、ワークの曲げ半径を大きくする方が、ワークが折れる危険性が少なくなるので好ましい。加工機1とワーク姿勢固定部5との間に設置されるワーク姿勢変更部駆動部62は、直接ワークに接触させて姿勢変更部の選択部61を省略しても良い。駆動部62を直接ワークに接触させる場合は、駆動部62に、ワーク姿勢変更部選択部61の備えるワークを固定または把持する機能を持たせることが好ましい。この場合の駆動部62のワークとの接触部の形状は、板状でもあっても良い。板状体として薄いものを使用して曲線に曲げて上げても良い。さらに前述のような板状ではなく、使用するワーク決まった長さの物のみであれば、加工部およびその付近を1点または複数の点でワーク姿勢を変化させても良い。駆動部62のワークとの接触部は板状に変えて棒またはブロック状の物でも良い。
【0029】
挿入ガイド8は、加工対象ワークW1と加工機1との間に配置され、その間を移動して加工機1に挿入する加工対象ワークをガイドする。挿入ガイドは特に、加工対象ワークW1の加工部位を基準としたセンターと、加工機のセンターとを一致させるために用いる。
【0030】
ワークW1の加工を終え、次のワークの加工を行う際は、加工機1と挿入ガイド8またはワーク側のワーク姿勢固定部5およびワーク姿勢変更部61、62を、ワーク姿勢固定部5上にある加工が終わったワークの軸と加工機1センターが合っている状態から、次加工のワーク軸センターと加工機1のセンターを合わせる様に動作させる。その後、挿入ガイド8によりワークW1のセンターと加工機1のセンターを合わせる加工可能な状態にする。加工機1や各ワーク固定の動作機構は、種々選択でき、電動シリンダーとスライドガイドを使用した機構などがある。
【0031】
加工機1の加工部への挿入ガイド8は、姿勢変更部選択部61から加工機1の間を移動する可動式であり、加工機1またはワーク選択機構、ワーク姿勢変更部61、62の動きと連動して加工機1に接触しない様に動作する。挿入ガイド8に、溝またはガイド壁、ガイドポールなどを設け、ワークW1の加工位置と加工機1の加工場所がずれないようにすることが好ましい。
【0032】
挿入ガイド8の作動構造は種々選択可能で、スライダーまたはパンタグラフ上にガイドを設けても良い。また、エアシリンダまたはスプリング付の挿入ガイドで加工機1またはワーク選択機構が挿入ガイド8を押し動かす構造として、ワークがガイド8上で滑り、ガイド先端よりワークを突出させ、その突出部を加工機1に供給する方法でも良い。また、複数のブロックに分かれた上下するガイドを設け、加工機1またはワーク選択機構の動きに合わせて上下させても良い。
【0033】
ワークの他方端側を固定する固定箇所として、長尺ワーク用固定部2を用いて、ワークの加工部位の反対側末端であるワークの後端側を、ワークをUの字状に曲げた状態で固定できる様にすることができる。固定の方法はワークを直接クランプする方法やマガジン等の治具を使い、マガジンをクリップやマグネットにより装置に間接的に固定する方法でも良い。
【0034】
位置検出機構31、32の検出対象に関しては、ワークの加工対象部の後端側に径変化または、透過光または反射光によりエッジが検出可能なワークの継ぎ目または、マーキングが有るものが好ましい。加工部対象部の後端から既知の値で離れた位置に径変化、マーキング等を検知し、既知の値を加味して移動量を決定しても良い。
【0035】
光源32の配置は、光源32、ワークW1、受光装置31の順が好ましく、受光装置31が透過光を検出することが、ワークが透明である場合にワークのエッジが強調され画像処理が行いやすい為好ましい。光源32の設置場所の確保が困難またはワークW1表面上にマーキングなどが有る場合は、受光装置31と同方向または横方向に光源32を設置し、検出光を反射光とすることが好ましい。光源32は、拡散光であっても、平行光であってもよく、ワークやワークの検出箇所に応じて光源や受光装置の種類を適宜選択できる。
【0036】
ワーク位置判定が難しい場合は、複数の光源31または複数の受光装置32いずれかまたは両方を利用した検知方法を取っても良い。尚、この時の光源32、受光装置31は、超音波またはレーザーを使用した距離測定器を利用しても良い。さらに光源32・受光装置31と前述の距離測定器を組み合わせても良い。位置検出の際は、ワークW1の加工予定位置の後端を撮像することが好ましいが、その他加工位置との関係が明確な所に形状特徴がある場合はその場所を撮像し、加工位置を算出しても良い。
【0037】
ワーク検知のアルゴリズムは、種々採用できる。一例としては、撮像した画像を前処理である2値化処理などを行い、ワークエッジまたはワークエッジの影(黒色部分)を目立たせる。次に、径方向に細かくスライスしてそのワークエッジ間(黒、白、黒と色が変化する部分の白色部の幅)の距離(ワーク径)を測定する。その隣接するスライスされた距離データの中からワーク距離が狭い所から大きく変化していく境界のスライス位置を特定しそこを加工位置後端として、加工機1をその位置まで動く様にスライス位置情報を装置に与える。
【0038】
位置検出装置31、32の撮像はワーク単体を撮像しても良い。また複数ワークを同時撮影して各ワークの位置を検出しても良い。1のワークを撮像して位置を検出する際には、他のワークは、ワーク選択装置により検出位置とは異なる位置に配置されていることが好ましい。ワークの有無についても検出し機器本体制御側にその有無についての情報を送信することが好ましい。
【0039】
加工機1の種類および構造は特に定めない。加工機1にワークW1を供給する際は、位置検出機構31、32により割り出された加工位置までワークW1を移動させる。加工位置までワークW1を移動させるために、移動する部分は加工機1であってもよく、またはワークW1が固定されているワーク選択機構であっても良い。両方が動作して、ワークW1が加工機に供給されても良い。動作機構は電動スライダや電動シリンダー等、種々選択できる。動作機構は加工精度にあった剛性および精度以上の能力を有した物であることが好ましい。
【0040】
本発明の装置を用いた一方端側に加工部位を有する医療用長尺体の製造方法は、少なくとも以下の工程を含む。複数のワークを前記線材加工装置に固定する工程、1または複数のワークを、ワークの一方端側である加工部位側で選択的に屈曲させ所定の姿勢に変更させる工程、1のワークの一方端を加工する工程である。固定する工程は、ワーク姿勢固定部にワークを固定する工程である。所定の姿勢に変更する工程は、ワーク姿勢変更部によって、ワークの姿勢を変化させる工程である。加工する工程は、加工機により必要な加工を行う工程である。製造方法には、検出光をワークに照射する工程、ワーク所定部位を検出する工程が含まれていてもよい。
【0041】
本発明の装置の動作手順を図面に沿って説明する。
【0042】
図1は加工前の状態で、ワークをワーク姿勢固定部5、ワーク姿勢変更部選択部61の上に乗せ、各部でマグネットなどの押さえを取り付けた状態になっている。
図2は、加工機1にワークW2が接触しない様にワーク姿勢変更部61、62によりワークW2が持上げられた状態になっている。また、挿入ガイド8によりワークW1と加工機1の径センターを合わせると共に受光器31および光源32によりワークW1撮像し、ワーク加工位置を検知する。尚、加工機1のセンターとは加工機挿入口の径センターである。
【0043】
図3は、ワーク加工位置まで加工機1が移動し、ワークW1が加工機1の中に入りワークが加工されている状態になっている。挿入ガイド8は加工機1の邪魔にならない様に移動されている。尚、加工終了後は、加工機1が後退し、
図1の状態に戻る。
図4は、ワークW1の加工を終え、次のワークが加工準備に入った状態になっている。
図1の状態から、
図1での旧ワークW1の隣ワークであるこれから加工する新ワークW1と加工機1のセンターが合う様にワーク姿勢固定部5および61が水平に移動し、ワーク姿勢変更部61、62が上昇し非加工ワークW2を持ち上げ、挿入ガイド8によりワークW1のセンターを加工機1のセンターと合わせている。この後、加工機1が
図3と同様に動作し加工を行っていく。
【実施例】
【0044】
ワーク供給装置を使用したバルーンカテーテル折り畳みの一態様について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
加工機1として、バルーンカテーテル折り畳み装置を用いた場合について説明する。カテーテルの折畳は、径が変化する円筒形の金型にカテーテルのバルーン部を挿入し、金型を減径させ折り畳む。金型は、金型内にバルーンが挿入された後に、減径方向に動いて、バルーンを折りたたむ(例えば、金型内径が直径12mmから直径5mmに変化する)。つまり、加工機1の加工部は本機ではバルーン用の金型となる。ワークは、医療用のカテーテルであって、300mmから6000mmの長尺の線状物であり、先端にバルーンが配置されたバルーンカテーテルである。
【0046】
まず、バルーンカテーテルを5本まとめて取り付けたマガジン(図示しない)を長尺ワーク固定部2にクリップで取り付け、各ワークをワーク姿勢固定部5に乗せ、マグネットにより固定する。受光装置31および光源32を利用し、撮像しバルーン後端(カテーテルが既に減径されている部分、または、バルーンとチューブの接合部を検出し、加工機1の移動量を算出する。受光装置31として、画像処理装置付カメラ、光源32として、LEDフラット照明を用いる。
【0047】
加工ワークW1以外は姿勢変更を行い、挿入ガイド機構8により、加工機(金型)1とワークW1のワークセンターを合わせる。挿入ガイド8が後退しながら金型が前進しワークを金型内に挿入する。挿入ガイドは、ワークW1の加工部を露出するために、後退させる。
【0048】
加工機による加工が終了し、ワークのバルーンが折り畳めたら、金型の径を元に戻し、金型が後退する。その後、ワーク姿勢固定部5およびワーク姿勢変更部選択部61が動き、次のワークを選択し前記の加工を同様に行い、5本加工が終わったら、作業者がワークおよびマガジンを取り外す。この一連の流れでカテーテルを折り畳むことができる。
【符号の説明】
【0049】
1 加工機
2 長尺ワーク固定部
31 位置検出部 受光装置
32 位置検出部 光源
5 ワーク姿勢固定部
61 ワーク姿勢変更部選択部
62 ワーク姿勢変更部駆動部
8 挿入ガイド
W1 加工対象ワーク
W2 非加工(次加工)対象ワーク