(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0016】
1、人造大理石用不飽和ポリエステル樹脂組成物
本発明の人造大理石用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、人造大理石用途に使用されるものであって、不飽和ポリエステル、重合性単量体及び低収縮化剤を含有する。必要に応じ、更に他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよく、各含有成分はそれぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
以下では、人造大理石用不飽和ポリエステル樹脂組成物を「樹脂組成物」とも称し、不飽和ポリエステルと重合性単量体との混合物を「不飽和ポリエステル樹脂」とも称す。また本明細書中、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味する。
【0017】
本発明では、重合性単量体として単官能重合性単量体と多官能重合性単量体とを必須とし、かつ多官能重合性単量体の含有量が、不飽和ポリエステル、単官能重合性単量体、多官能重合性単量体及び低収縮化剤の総量(以下では「成分(A)〜(D)の総量」とも称す。)100質量%に対し、3〜20質量%であることに重要な意義がある。多官能重合性単量体を含まない場合や含有量が3質量%未満である場合には、これを用いて得た成形品において反りや捩じれが大きく、たとえ一旦矯正したとしても、経日的に変形が生じるおそれがある。また含有量が20質量%を超えると、樹脂組成物の粘度が高すぎて強化繊維や充填材との混練が困難になり、生産性が低下するおそれがある。これらに対し、多官能重合性単量体の含有量が上記範囲にあれば、生産性良く成形品を製造することができるとともに、得られた成形品において、表面平滑性や透明性等の各種物性を低下させることなく、反りや捩じれの発生を充分に抑制することが可能になる。本発明では成形後の反り矯正工程を省略又は簡略化することもできるため、成形品の製造面でも極めて有利である。このような効果をより発揮する観点から、多官能重合性単量体の含有量は、成分(A)〜(D)の総量100質量%に対し、好ましくは4質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0018】
1)不飽和ポリエステル
本発明の樹脂組成物は、不飽和ポリエステル(A)を含有する。その含有量は、成分(A)〜(D)の総量100質量%に対し、20〜65質量%であることが好ましい。これにより、成形品の衝撃強度が向上するとともに、樹脂組成物と強化繊維との含浸性がより良好になる。より好ましくは25〜60質量%、更に好ましくは30〜55質量%である。
【0019】
不飽和ポリエステル(A)としては特に限定されないが、例えば、多塩基酸と多価アルコールとの反応により得られる化合物が好適である。この反応で使用される各原料は、それぞれ1種又は2種以上使用してもよい。また、ジシクロペンタジエン(DCPD)により変性されていてもよい。
【0020】
上記多塩基酸としては、不飽和多塩基酸や飽和多塩基酸が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
不飽和多塩基酸としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、イタコン酸等のα,β−不飽和多塩基酸;ジヒドロムコン酸等のβ,γ−不飽和多塩基酸;これらの酸の無水物;これらの酸のハロゲン化物;これらの酸のアルキルエステル;等が挙げられる。
【0021】
飽和多塩基酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、ヘキシルコハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和多塩基酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族飽和多塩基酸;ヘット酸、1,2−ヘキサヒドロフタル酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環式飽和多塩基酸;これらの酸の無水物;これらの酸のハロゲン化物;これらの酸のアルキルエステル;等が挙げられる。
【0022】
上記多塩基酸は特に、不飽和二塩基酸及び/又はその無水物と、アルキル置換アルキレングリコール類及び/又はビスフェノール類とを含むことが好ましい。より好ましくは、不飽和二塩基酸及び/又はその無水物と、ネオペンチルグリコール及び/又は水素化ビスフェノールAとを含むことである。これにより、成形品外観がより良好なものとなるため、人造大理石用途に更に有用なものとなる。中でも、多塩基酸の総量100モル%に対し、不飽和二塩基酸又はその無水物を65〜100モル%、ネオペンチルグリコール及び/又は水素化ビスフェノールAを20〜70モル%含むことが更に好ましい。特に好ましくは、多塩基酸の総量100モル%に対し、不飽和二塩基酸又はその無水物を80〜100モル%、ネオペンチルグリコール及び/又は水素化ビスフェノールAを25〜70モル%含むことである。
【0023】
上記多価アルコールとしては、例えば、グリコール(ジオールとも称す)や、エポキシ化合物が挙げられる。
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等のアルキル置換アルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等のアルキレングリコール類の縮合物;ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等のビスフェノール類;トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル等のアリル基含有アルコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール類;等が挙げられる。なお、プロピレングリコールを使用すると、不飽和ポリエステルと重合性単量体(好ましくはスチレンモノマー)との相溶性が向上し、ネオペンチルグリコールを使用すると、成形品の光沢や平滑性、耐水性が向上する。
【0024】
エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ) アクリレート、ビスフェノールAのグリシジルエーテル類が挙げられる。
【0025】
上記多塩基酸と多価アルコールとの反応では、これらの使用量比は特に限定されないが、例えば、多塩基酸100モル%に対し、多価アルコールを80〜120モル%とすることが好ましい。より好ましくは95〜110モル%である。
【0026】
上記反応は特に限定されず、通常の合成手段で行えばよい。一般には、加熱下で実施され、副生する水を除去しながら反応を進めることが好適である。具体的には、例えば、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、120〜250℃の温度範囲に加熱し、所望の酸価又は粘度(分子量)となるまで脱水縮合する方法が好ましい。温度範囲としてより好ましくは、150〜220℃である。なお、脱水縮合反応は、必要に応じて、トルエン、キシレン等の水共沸用溶剤や、シュウ酸スズ等のエステル化触媒の存在下で行ってもよいが、不存在下で行ってよい。
【0027】
不飽和ポリエステル(A)は、酸価が20mgKOH/g以上、40mgKOH/g未満であることが好ましい。酸価がこの範囲にあると、成形材料製造時、樹脂コンパウンドに増粘剤を添加後、強化繊維を含浸させる際の増粘挙動が緩やかで、且つ、その後の熟成工程において成形に適した粘度まで増粘させることができるため、強化繊維との含浸性が良好になり、混練が容易になるとともに、成形品外観が良好になる。酸価としてより好ましくは22mgKOH/g以上であり、また、好ましくは36mgKOH/g以下である。
本明細書中、酸価は、後述の実施例に記載した方法にて求めることができる。
【0028】
不飽和ポリエステル(A)はまた、重量平均分子量が8000以上、25000未満であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあると、成形品製造時に強化繊維との含浸性が良好になり、混練が容易になるとともに、成形品外観が良好になる。重量平均分子量としては10000以上であることがより好ましく、また、20000以下であることがより好ましい。
本明細書中、重量平均分子量は、後述の実施例に記載した方法にて求めることができる。
【0029】
2)重合性単量体
本発明では、重合性単量体として単官能重合性単量体(B)と多官能重合性単量体(C)とを必須に含み、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
ここで、多官能重合性単量体(C)の含有量については上述した通りであるが、単官能重合性単量体(B)の含有量は、成分(A)〜(D)の総量100質量%に対し、20〜65質量%であることが好ましい。これにより、成形品の衝撃強度が向上するとともに、樹脂組成物と強化繊維との含浸性がより良好になる。より好ましくは25〜60質量%、更に好ましくは25〜55質量%である。
【0030】
2−1)単官能重合性単量体
単官能重合性単量体(B)とは、分子内に重合性不飽和結合を1個有する化合物であり、具体的には、例えば、以下の化合物等が挙げられる。中でも、少なくともスチレンモノマーを用いることが特に好適である。
スチレンモノマー、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、ビニルトルエン等の単官能芳香族化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素原子数12又は13)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等の単官能(メタ)アクリレート化合物;グリセリンモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル等の単官能アリル化合物;下記式(1)で示されるジシクロペンタジエン化合物;等。
【0032】
式中、R
1は、水素原子又はメチル基を表す。R
2は、炭素原子数2〜5の低級アルキレン基を表す。nは、0〜5の整数である。炭素原子数2〜5の低級アルキレン基としては、例えば、エチレン基、ブチレン基等が好適である。
【0033】
2−2)多官能重合性単量体
多官能重合性単量体(C)とは、分子内に重合性不飽和結合を2個以上有する化合物である。衝撃強度向上の観点から、2〜6官能のものが好ましく、より好ましくは2〜4官能、更に好ましくは2〜3官能、特に好ましくは2官能のものである。
【0034】
多官能重合性単量体(C)として具体的には、例えば、以下の化合物等が挙げられる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=4〜23)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=4〜10)、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=8,9)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペントールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン(n=3〜30)、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン等の多官能(メタ)アクリレート化合物;グリセリンジアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル等の多官能アリル化合物;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の多官能芳香族化合物;下記式(2)で示されるジシクロペンタジエン化合物;等。
【0036】
式中、R
1は、水素原子又はメチル基を表す。R
2及びR
3は、同一若しくは異なって、炭素原子数2〜5の低級アルキレン基を表す。n及びmは、同一若しくは異なって、0〜5の整数である。炭素原子数2〜5の低級アルキレン基としては、例えば、エチレン基、ブチレン基等が好適である。
【0037】
上記多官能重合性単量体の中でも、多官能(メタ)アクリレート化合物及び/又は多官能芳香族化合物を少なくとも用いることが好適である。これにより、成形時の反りや捩じれの発生を抑制するとともに、表面平滑性や透明性が優れる成形品を与えることができるという本発明の効果をより一層発揮することができる。この効果を更に発揮する観点から、より好ましくは、多官能(メタ)アクリレート化合物を少なくとも用いることである。すなわち上記多官能重合性単量体は、多官能(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。
【0038】
3)低収縮化剤
本発明の樹脂組成物は、低収縮化剤(D)を含有する。その含有量は、例えば、成分(A)〜(D)の総量100質量%に対し、3〜20質量%であることが好ましい。3質量%以上であることで、成形時の硬化収縮や熱収縮をより抑制できるため、クラック発生がより抑制され、かつ寸法安定性に優れる成形品を与えることが可能になる。また、20質量%以下であることで、樹脂組成物と強化繊維との混練がより容易になり、生産性が向上する。
【0039】
低収縮化剤(D)としては、例えば架橋構造を有する化合物(架橋化合物)を用いることが好適である。より好ましくは架橋ポリスチレンである。これにより、成形時に不飽和ポリエステルと低収縮化剤との相分離が生じるおそれが充分に抑制されるため、表面平滑性や透明性により一層優れるとともに、色むらの少ない成形品を与えることが可能になる。
【0040】
架橋ポリスチレンとは、スチレンモノマーを単独で、又は、スチレンモノマーと共重合可能な重合性単量体とを、架橋剤の存在下重合させることにより得られる3次元の網目構造を有する架橋重合体である。架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等のジビニルベンゼン誘導体;エチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキレンジメタクリレート類;ジアリルフタレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0041】
架橋ポリスチレンが後者の共重合体(すなわちスチレンモノマーと共重合可能な重合性単量体との共重合体)である場合、単量体成分の総量100質量%中、スチレンモノマーが50質量%以上を占めることが好適である。スチレンモノマーと共重合可能な重合性単量体としては特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。配合量は特に限定されるものではない。
【0042】
架橋ポリスチレンとしては、例えば、綜研化学社製のSGP−70C、SGP−150C等が挙げられる。
【0043】
4)その他の成分
本発明の樹脂組成物はまた、必要に応じ、硬化剤、重合禁止剤、充填材、離型剤、着色剤、増粘剤等の他、柄剤(加飾粒)、難燃剤、抗菌剤(有機系及び/又は無機系)、親水剤、光触媒、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、粘度低下剤、分離防止剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、潤滑分散剤、チクソ付与剤、チクソ安定剤、重合促進剤等の添加剤を1種又は2種以上更に含むものであってもよい。また必要に応じて、可塑剤を含有してもよい。
【0044】
硬化剤としては特に限定されないが、有機過酸化物が好ましい。具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度72℃)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(97℃)、t−アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(96℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(95℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(91℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート(72℃)、アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(70℃)、2−エチルヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(70℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(104℃)、t−へキシルパーオキシベンゾエート(99℃)、t−へキシルパーオキシアセテート(98℃)等が挙げられる。中でも、成形品の外観、平滑性向上、反り低減の観点から、10時間半減期温度が90〜100℃である化合物が好適である。硬化剤の含有量は、例えば、成分(A)〜(D)の総量100質量部に対し、0.3〜5質量部であることが好ましい。より好ましくは0.7〜2.5質量部である。
【0045】
重合禁止剤(禁止剤とも称す)としては特に限定されないが、例えば、パラベンゾキノン、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、メチル−t−ブチルハイドロキノン、t−ブチルカテコール、2,6−ジ−tーブチル−4−メチルフェノール等の他、N−オキシル化合物等が挙げられる。N−オキシル化合物としては特に限定されず、例えば、特開2004−269662号公報段落0027に記載された化合物が挙げられる。重合禁止剤の含有量は、例えば、成分(A)〜(D)の総量100質量部に対し、0.001〜1質量部であることが好ましい。より好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0046】
充填材としては、少なくとも無機充填材を用いることが好ましいが、有機充填材と併用してもよい。無機充填材としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレー、タルク、セラミック、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ、金属粉末、カオリン、タルク、ミルドファイバー、珪砂、珪藻土、ガラスバルーン、ガラス粉、シリカ(例えば、結晶性シリカ、溶融シリカ、フュームドシリカ等)、リン酸カルシウム、ホタル石、アエロジル、スメクタイト等が挙げられる。中でも、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムは、成形性に優れる点で好適である。充填材の含有量は、例えば、成分(A)〜(D)の総量100質量部に対し、5〜500質量部であることが好ましい。より好ましくは50〜400質量部、更に好ましくは100〜300質量部である。
【0047】
離型剤(内部離型剤とも称す)としては特に限定されないが、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸及びステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩等の他、パラフィン、液体ワックス、フッ素ポリマー、シリコン系ポリマー等の熱硬化性樹脂用途の内部離型剤を用いることもできる。離型剤の含有量は、例えば、成分(A)〜(D)の総量100質量部に対し、1〜10質量部であることが好ましい。
【0048】
着色剤としては特に限定されず、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂に通常使用されている種々の着色剤を用いることができる。具体的には、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄、フタロシアニンブルー等の公知の顔料が用いられる。着色剤の添加量は特に限定されるものではなく、成形品の用途により適宜設定されない。例えば、成分(A)〜(D)の総量100質量部に対し、30質量部以下であることが好ましい。なお、意匠性が求められる用途では、着色剤を含むことが好ましい。
【0049】
増粘剤としては特に限定されないが、例えば、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物が挙げられ、より具体的には酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が用いられる。場合によりペースト状にして使用する。増粘剤の含有量は特に限定されないが、例えば、成分(A)〜(D)の総量100質量部に対し、0.3〜5質量部であることが好ましい。
【0050】
2、成形材料
本発明はまた、上述した本発明の樹脂組成物を含む成形材料でもある。成形材料としては、BMC(Bulk Molding Compound)、TMC(Thick Molding Compound)又はSMC(Sheet Molding Compound)が好適である。つまり本発明の樹脂組成物は、BMC、TMC又はSMCの樹脂成分(マトリックス樹脂)として使用することが好適である。より好ましくはBMC又はTMCである。
【0051】
本発明の成形材料は、上述した本発明の樹脂組成物(樹脂コンパウンドとも称す)とともに、強化繊維を含むことが好ましい。各含有成分はそれぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
【0052】
強化繊維の素材は特に限定されず、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維等の無機繊維;ポリビニルアルコール系、ポリエステル系、ポリアミド系(全芳香族系も含む)、フッ素樹脂系、フェノール系の各種有機繊維;麻、ケナフ等の天然繊維;を適宜選択して使用できる。強化繊維の形状は、クロス;チョップドストランドマット、プリフォーマブルマット、コンティニュアンスストランドマット、サーフェーシングマット等のマット状;チョップ状;ロービング状;不織布状;ペーパー状;等のいかなる形状であっても差し支えない。
【0053】
本発明では、ロービング状のガラス繊維を成形材料製造装置に附属するロータリーカッターにより連続的に切断してチョップドストランドとし、樹脂組成物に含浸させることにより成形材料とすることが好ましい。チョップドストランドの繊維長は2〜50mmであることが好ましい。繊維長が2mm以上であると、成形材料を成形した場合、強度物性がより優れたものとなり、50mm以下であると、成形品表面の外観がより良好になる。
【0054】
強化繊維は、成形材料の総量100質量%に対して3〜30質量%の範囲で使用することが好ましい。これにより、成形品の強度や各種物性がより良好になる。3質量%以上であれば、充分な補強効果を得ることができ、30質量%以下であると、樹脂組成物の強化繊維への含浸がより良好になり、成形品の外観がより良好になる。より好ましくは5〜25質量%である。
【0055】
本発明の成形材料の製造方法は特に限定されないが、例えば、不飽和ポリエステルに、重合性単量体及び低収縮化剤の他、必要に応じて添加される各種添加剤(増粘剤を除く)を混合した後、増粘剤を添加して混合し、得られた樹脂組成物(樹脂コンパウンド)を強化繊維に含浸させ、増粘させることが好適である。増粘工程では、例えば25〜50℃で、8〜96時間熟成することが好適である。混合、含浸方法は特に限定されず、通常の手段を採用すればよい。
【0056】
3、人造大理石成形品
本発明はまた、上述した本発明の成形材料を用いてなる人造大理石成形品でもある。上記成形材料を用いて成形品を成形する方法としては、通常用いられる圧縮成形法や射出成形法等の成形加工法を採用することができる。中でも、成形材料を、所望の形状を有する金型に充填して加熱加圧成形(加熱圧縮成形)することにより、より容易に硬化、成形することができる。加熱加圧成形において、成形品にかかる圧力としては、0.1〜20MPaとすることが好適である。より好ましくは1〜15MPaである。
【0057】
人造大理石成形品は、例えば、浴槽、キッチンカウンター天板、キッチンカウンターシンク、洗面カウンター等の住宅設備用途に特に好適に適用することができる。この中でも、キッチンカウンター天板等の平板状の成形品であることが好ましい。特に上記人造大理石成形品がキッチンカウンター天板である形態は、本発明の好ましい実施形態の一つである。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を、それぞれ意味するものとする。
なお、実施例等で採用した各種物性の測定・評価方法を下記する。
【0059】
1、不飽和ポリエステルの物性
(1)酸価
酸価は、JIS K6901(2008年)に準拠して測定した。
【0060】
(2)重量平均分子量
重量平均分子量は、測定対象物をTHF(テトラヒドロフラン)溶剤に溶解し、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー:東ソー社製 HLC−8320GPC、検出器:示差屈折率計)により測定した。その際、市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、ポリスチレン換算法により求めた。
【0061】
2、成形材料の評価
(1)硬化収縮率
BMC又はTMCを、300×300mm平板金型を用いて加熱圧縮成形して板厚4mmの平板成形品を成形した。成形は、金型温度が製品面、裏面とも140℃、成形圧力10MPa、金型内保持時間420秒の条件で実施した。成形品は金型から脱型後、ただちに鉄板の間に挟んで冷却した。平板成形板を25℃で24時間放置したのち、25℃で成形品の四辺の寸法を測定し、上記平板金型寸法との比率により収縮率を測定した。
【0062】
(2)反り評価
BMC又はTMCを、縦125mm、横625mmの平板金型を用いて加熱圧縮成形して板厚6mmの平板成形品を成形した。成形は、金型温度は製品面145℃、裏面130℃、成形圧力10MPa、金型内保持時間420秒の条件で実施した。成形品は金型から脱型後、強制冷却は行わず、25℃の室温で、裏面を下にして24時間放置した。
図2に示すように、水平なガラス板上に、平板成形品の裏面を下にした状態で乗せ、成形板製品面の四隅(位置A、B、C、Dとする。
図1参照。)のガラス板表面からの高さをハイトゲージ(ミツトヨ社製、デジタルハイトゲージHDM−30AX)を用いて測定した。
各位置の高さから成形品厚みを差し引いた値を、それぞれの位置の反り量とし、位置A〜Dの反り量及びその平均値により平板成形品の反り評価を行った。
【0063】
(3)成形品の表面平滑性
反り評価用に成形した平板成形品(125×625mm)の表面平滑性(製品面)を、目視及び指触により下記基準で評価した。
○:目視及び指触のいずれによっても凹凸が認められなかった。
△:目視では凹凸が認められないが、指触で凹凸感があった。
×:目視で凹凸が認められ、指触でも凹凸、引っ掛かりがあった。
【0064】
(4)成形品の色むら
反り評価用に成形した平板成形品(グレー色)の色むらを、目視により下記基準で評価した。
○:色むらが認められず、成形品製品面全体が均一であった。
△:成形品中央部には色むらは認められないが、成形品端部に部分的な色むらがあった。
×:成形品表面全体に色むらが認められた。
【0065】
(5)成形欠陥
反り評価用に成形した平板成形品の成形欠陥の有無を、目視にて下記基準で評価した。
○:成形品表面に欠陥(膨れ、ピンホール、カスレ)が認められなかった。
△:部分的に軽微な成形欠陥が認められた。
×:成形品全体に成形欠陥が認められた。
【0066】
(6)耐衝撃性評価
反り評価用に成形した平板成形品より試験片(長さ65mm、幅10mm)を切り出し、アイゾット衝撃試験をJIS K7062(1992年)に準拠して実施した。試験はフラットワイズ、ノッチなしの条件で行った。
【0067】
合成例1(不飽和ポリエステルA)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器及び攪拌機を備えたフラスコを反応器とした。この反応器に、イソフタル酸1.0モル、プロピレングリコール5.5モル、ネオペンチルグリコール3.0モル、水素化ビスフェノールA2.0モルを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら200〜210℃の温度で重縮合反応させると共に、反応物の酸価を所定の方法で随時測定した。酸価が20mgKOH/gになった時点で150℃まで冷却し、無水マレイン酸9.0モルを仕込み、再び210〜220℃で反応させ、酸価23.5mgKOH/g、重量平均分子量14500の不飽和ポリエステルAを得た。
【0068】
合成例2(不飽和ポリエステルB)
合成例1と同じ装置で、イソフタル酸2.0モル、プロピレングリコール5.5モル、ネオペンチルグリコール5.0モルを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら200〜210℃の温度で重縮合反応させた。酸価が10mgKOH/gになった時点で150℃まで冷却し、無水マレイン酸8.0モルを仕込み、再び210〜220℃で反応させ、酸価27.1mgKOH/g、重量平均分子量16000の不飽和ポリエステルBを得た。
【0069】
合成例3(不飽和ポリエステルC)
合成例1と同じ装置で、イソフタル酸4.0モル、プロピレングリコール10.5モルを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら200〜210℃の温度で重縮合反応させた。酸価が15mgKOH/gになった時点で150℃まで冷却し、無水マレイン酸6.0モルを仕込み、再び210〜220℃で反応させ、酸価25.9mgKOH/g、重量平均分子量13000の不飽和ポリエステルCを得た。
【0070】
合成例4(不飽和ポリエステルD)
合成例1と同じ装置で、無水マレイン酸10.0モル、プロピレングリコール10.5モルを仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら200〜210℃の温度で重縮合反応させ、酸価27.9mgKOH/g、重量平均分子量11000の不飽和ポリエステルDを得た。
【0071】
実施例1
不飽和ポリエステルA 40部にスチレン35部、重合禁止剤としてハイドロキノンを0.008部添加し、均一に混合した。この不飽和ポリエステル樹脂75部に、多官能重合単量体としてジエチレングリコールジメタクリレート10部、架橋ポリスチレン(綜研化学社製、SGP−70C)を15部、禁止剤としてパラベンゾキノン0.1部、硬化剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(10時間半減期温度97℃)1.0部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛5部、着色剤としてポリエステルトナー(酸化チタン、カーボンブラックを含有する顔料を不飽和ポリエステル樹脂に分散させたもの。グレー色)5部を混合して樹脂ペーストを得た。
この樹脂ペーストと、充填剤として水酸化アルミニウム250部、強化繊維としてチョップドストランド(繊維長3mm)40質量部、増粘剤として酸化マグネシウム1.0部を公知の双腕型ニーダーで30分混練後、押出し機により延べ板状に賦形してBMCを製造した。該BMCを40℃で48時間熟成し、BMCが加熱圧縮成形可能な状態まで増粘させた。このBMCを用いて、上述の方法により評価を行った。BMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。実施例1では平均反り量が1mm以下と非常に小さく、成形品に色むら、成形欠陥も認められず、表面平滑性も良好であった。
【0072】
実施例2
実施例1において、スチレンの使用量を30部、ジエチレングリコールジメタクリレートの使用量を15部に変更した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。
【0073】
実施例3
実施例1において、スチレンの使用量を40部、ジエチレングリコールジメタクリレートの使用量を5部に変更した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。
【0074】
実施例4
実施例1において、ジエチレングリコールジメタクリレート10部に替えてエチレングリコールジメタクリレート10部を使用した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。
【0075】
実施例5
実施例1において、ジエチレングリコールジメタクリレート10部に替えてトリメチロールプロパントリメタクリレート10部を使用した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。
【0076】
実施例6
実施例1において、ジエチレングリコールジメタクリレート10部に替えてジビニルベンゼン10部を使用した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。
【0077】
実施例7
実施例1において、不飽和ポリエステルAに替えて不飽和ポリエステルBを使用した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。
【0078】
実施例8
実施例1において、不飽和ポリエステルAに替えて不飽和ポリエステルCを使用した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。色むら、成形欠陥はなかったが、表面平滑性評価において指触で表面に軽微な凹凸感が認められた。
【0079】
実施例9
実施例1において、不飽和ポリエステルAに替えて不飽和ポリエステルDを使用した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。成形欠陥はなく、表面平滑性も良好であったが、成形品両端部に軽微な色むらが見られた。
【0080】
実施例10
実施例1において、禁止剤としてパラベンゾキノン0.1部に替えて、N−オキシル化合物(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラピペリジン−1−オキシル)0.1部を使用した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。
【0081】
実施例11
実施例1において、禁止剤としてパラベンゾキノン0.1部に替えて、t−ブチルハイドロキノン0.1部使用した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。成形品の反りは小さく、表面平滑性も良好であったが、成形品両端部に色むら、成形欠陥(カスレ)が認められた。
【0082】
実施例12
実施例1において、硬化剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート1.0部に替えて、t−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度105℃)1.0部を使用した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。色むら、成形欠陥はなかったが、表面平滑性評価において指触で表面に軽微な凹凸感が認められた。
【0083】
実施例13
不飽和ポリエステルA 40部にスチレン35部、重合禁止剤としてハイドロキノンを0.008部添加し、均一に混合した。この不飽和ポリエステル樹脂75部に、多官能重合単量体としてジエチレングリコールジメタクリレート10部、架橋ポリスチレン(綜研化学社製、SGP−70C)を15部、禁止剤としてパラベンゾキノン0.1部、硬化剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート1.0部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛5部、着色剤としてポリエステルトナー(酸化チタン、カーボンブラックを含有する顔料を不飽和ポリエステル樹脂に分散させたもの。グレー色)5部、充填剤として水酸化アルミニウム200部を混合して樹脂ペーストを得た。
この樹脂ペーストに、増粘剤として酸化マグネシウム1.0部を添加後、強化繊維としてガラスロービングを連続的に6.4mm長に切断したガラスチョップをガラス含有率が10質量%となるように添加して、公知のTMC含浸機でTMCを製造後、40℃で48時間熟成させ、TMCが加熱圧縮成形可能な状態まで増粘させた。このTMCを用いて、上述の方法により評価を行った。TMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。
【0084】
実施例14
実施例11において、禁止剤としてパラベンゾキノン0.1部に替えて、N−オキシル化合物(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラピペリジン−1−オキシル)0.1部を使用した以外、同一の手順でTMCを製造し、評価を行った。TMC組成を表1−1に、評価結果を表1−2に示す。
【0085】
【表1-1】
【0086】
【表1-2】
【0087】
比較例1
実施例1において、スチレンを45部使用し、ジエチレングリコールジメタクリレートの使用を中止した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表2−1に、評価結果を表2−2に示す。反りが大きく、成形板長手方向で不均一な反りが見られた。
【0088】
比較例2
実施例1において、スチレンを42.5部、ジエチレングリコールジメタクリレートを2.5部使用した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表2−1に、評価結果を表2−2に示す。比較例1と比較して反りは改善したものの、平均3mmを超える反りが認められた。
【0089】
比較例3
実施例1において、スチレンを20部、ジエチレングリコールジメタクリレートを25部使用した以外、同一の手順でBMCの製造を試みたが、樹脂ペーストの粘度が著しく増大したため、ニーダーでの水酸化アルミニウム、ガラスチョップとの混練が困難で、BMCを製造することができなかった。
【0090】
比較例4
比較例1において、スチレン量を45部から40部、架橋ポリスチレン量15部から20部に変更した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表2−1に、評価結果を表2−2に示す。比較例1と比較して収縮率は低減したが、反りは増大した。
【0091】
比較例5
実施例1において、ジエチレングリコールジメタクリレート10部に替えて、単官能重合性単量体であるメチルメタクリレート10部を使用した以外、同一の手順でBMCを製造し、評価を行った。BMC組成を表2−1に、評価結果を表2−2に示す。大きな反りが見られた。
【0092】
比較例6
実施例13において、スチレンを45部使用し、ジエチレングリコールジメタクリレートの使用を中止した以外、同一の手順でTMCを製造し、評価を行った。TMC組成を表2−1に、評価結果を表2−2に示す。大きな反りが見られた。
【0093】
【表2-1】
【0094】
【表2-2】
【0095】
以上の実施例及び比較例より、以下の事項を確認した。
実施例1〜6は、不飽和ポリエステル、単官能重合性単量体、多官能重合性単量体及び低収縮化剤を使用し、かつ多官能重合性単量体の量を、不飽和ポリエステル、単官能重合性単量体、多官能重合性単量体及び低収縮化剤の総量100質量%に対し3〜20質量%として実施した例である。これに対し、比較例1、4及び5は、多官能重合性単量体を使用しない(つまり多官能重合性単量体の量が0質量%である)点で実施例1〜14と主に相違し、比較例2、3は、多官能重合性単量体を使用したものの、その量が本発明で規定した範囲外である点で実施例1〜14と主に相違する。このような相違の下、成形品としたときの評価結果を比較すると、実施例1〜6では、比較例1、2、4及び5に比較して、反り量が著しく低減されていることが分かる。TMCを評価した実施例13と比較例6との比較からも同様の傾向が読みとれる。また比較例4では衝撃強度が充分でないことや、多官能重合性単量体の量を多くした比較例3ではそもそもBMCを製造することができないことも分かった。実施例1〜6で得た成形品はまた、低収縮率を示し、衝撃強度や表面平滑性に優れ、色むらや欠陥が充分に抑制されたものであった。実施例1〜6とは原料の種類を異ならせた実施例7〜12でも同様のことがいえる。
【0096】
以上より、不飽和ポリエステル、単官能重合性単量体、多官能重合性単量体及び低収縮化剤を含み、かつ多官能重合性単量体の含有量が所定範囲にあるという本発明の構成の樹脂組成物であることによって初めて、成形時の反りや捩じれが少なく、表面平滑性や透明性に優れる人造大理石成形品を容易に与えることができることが分かった。
なお、表等には記載していないが、低収縮化剤としてポリスチレンを使用した例も検討した結果、実施例1のように低収縮化剤として架橋重合体(好ましくは架橋ポリスチレン)を用いることが、色むら低減や表面平滑性向上の観点で好ましいことが分かった。同様に多官能重合性単量体としてジアリルフタレートを使用した例も検討した結果、実施例1〜6のように多官能(メタ)アクリレート化合物や多官能芳香族化合物を用いることが、色むら低減や表面平滑性向上の他、反り低減の観点でも好ましいことが分かった。