(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水性溶媒(c)が、水と、水溶性アルコール、水溶性多価アルコール及びピロリドン類から選択された少なくとも一種の有機溶媒とを含む請求項1〜4のいずれかに記載のインキ組成物。
インキ組成物をインクジェット方式で印字又は印刷し、印字部又は画像を形成する方法であって、インキ受容層を有する光沢紙である被印刷体に、請求項1〜6のいずれかに記載のインキ組成物をインクジェット方式で印字又は印刷する画像形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[インキ組成物]
本発明のインキ組成物(又はインク組成物)は、銀ナノ粒子(a)と、この銀ナノ粒子(a)を分散させるためのカルボキシル基又はその塩を有する分散剤(b)と、分散媒としての水性溶媒(c)と、被膜形成能を有する水溶性又は水分散性高分子(d)とを含んでいる。
【0022】
[銀ナノ粒子(a)]
銀ナノ粒子(a)の平均粒子径(平均一次粒子径)は、ナノメーターサイズであり、例えば、1〜100nm(例えば、2〜80nm)、好ましくは3〜70nm(例えば、4〜50nm)、さらに好ましくは5〜40nm(例えば、10〜30nm)程度であってもよい。銀ナノ粒子(a)は粗大粒子をほとんど含んでおらず、前記銀ナノ粒子(a)の最大一次粒子径は、例えば、200nm以下、好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。さらに、銀ナノ粒子(a)において、一次粒子径が100nm以上の粒子の割合は、質量基準で、例えば、10質量%以下(例えば、0〜8質量%程度)、好ましくは5質量%以下(例えば、0.01〜3質量%程度)、さらに好ましくは1質量%以下(例えば、0.02〜0.5質量%程度)であってもよい。
【0023】
銀ナノ粒子(a)は、分散剤(b)に対する配位性が高いためか、分散剤(b)と組み合わせることにより、銀ナノ粒子(a)の分散安定性を高めることができる。
【0024】
なお、必要であれば、銀ナノ粒子(a)は、他の金属ナノ粒子を含んでいてもよい。このような金属ナノ粒子としては、例えば、周期表第8族金属(鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金など)、周期表第1B族金属(銅、金など)、周期表第3B族金属(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)及び周期表第4B族金属(ゲルマニウム、スズ、鉛など)などであってもよい。なお、金属(金属原子)は、分散剤(b)に対する配位性の高い金属、例えば、周期表第8族金属、周期表第1B族金属などである場合が多い。
【0025】
[分散剤(b)]
分散剤(又は保護コロイド)(b)は、カルボキシル基又はその塩を有しており、カルボキシル基を有する有機化合物(b1)及び/又はカルボキシル基を有する高分子分散剤(b2)を含んでいてもよい。分散剤(b)は非揮発性分散剤である場合が多い。
【0026】
有機化合物(b1)のカルボキシル基の数は、1分子中に、1以上、例えば、1〜10、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3程度であってもよい。
【0027】
また、有機化合物(b1)は、カルボキシル基以外の官能基(又は銀ナノ粒子に対する配位性基など)を有していてもよい。このような官能基(又は配位性基)としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、アミノ基、ジアルキルアミノ基、イミノ基(−NH−)、窒素含有ヘテロ環基(ピリジル基、モルホリニル基などの5〜8員窒素ヘテロ基、カルバゾール基などの5〜8員窒素ヘテロ基を含む縮合環基)、アミド基(−CON<)、シアノ基、ニトロ基など]、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのC
1−6アルコキシ基)、ホルミル基、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、酸素含有ヘテロ環基(テトラヒドロピラニル基などの5〜8員酸素含有ヘテロ環基など)、チオ基、チオール基、チオカルボニル基(−SO−)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基などのC
1−4アルキルチオ基など)、スルホ基、スルファモイル基、スルフィニル基(−SO
2−)などの他、これらの塩を形成した基(アンモニウム塩基など)などが挙げられる。有機化合物(b1)は、これらの官能基を、単独で又は2種以上(同種又は異種の複数の官能基)組み合わせて有していてもよい。有機化合物(b1)は、カルボキシル基と塩を形成可能な塩基性基(アミノ基、置換アミノ基、イミノ基、アンモニウム塩基など)を有していないのが好ましい。
【0028】
代表的な有機化合物(b1)には、カルボン酸、例えば、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸(又はオキシカルボン酸)などが挙げられる。
【0029】
モノカルボン酸としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸[飽和モノカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプロン酸、ヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、シクロヘキサンカルボン酸、ステロイド核を有するカルボン酸(デヒドロコール酸、コラン酸、アロコラン酸などの胆汁酸)などのC
1−34脂肪族モノカルボン酸、好ましくはC
2−30脂肪族モノカルボン酸など)、不飽和モノカルボン酸(例えば、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、アビエチン酸などのC
4−34不飽和脂肪族モノカルボン酸、好ましくはC
10−30不飽和脂肪族モノカルボン酸)]、芳香族モノカルボン酸(安息香酸、ナフトエ酸などのC
7−12芳香族モノカルボン酸など)などが挙げられる。
【0030】
ポリカルボン酸としては、例えば、脂肪族ポリカルボン酸[例えば、飽和ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのC
2−14脂肪族飽和ポリカルボン酸、好ましくはC
2−10脂肪族飽和ポリカルボン酸など)、不飽和ポリカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸、テトラヒドロフタル酸などのC
4−14脂肪族不飽和ポリカルボン酸、好ましくはC
4−10脂肪族不飽和ポリカルボン酸など)など]、芳香族ポリカルボン酸(例えば、フタル酸、トリメリット酸などのC
8−12芳香族ポリカルボン酸など)などが挙げられる。
【0031】
ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシモノカルボン酸[脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、グリセリン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、ステロイド核を有するヒドロキシカルボン酸(コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、12−オキソケノデオキシコール酸、グリココール酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、アポコール酸、タウロコール酸、ピオコール酸、ピトコール酸などの胆汁酸)などのC
2−50脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、好ましくはC
2−34脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、さらに好ましくはC
2−30脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸など)、芳香族ヒドロキシモノカルボン酸(サリチル酸、オキシ安息香酸、没食子酸などのC
7−12芳香族ヒドロキシモノカルボン酸など)など]、ヒドロキシポリカルボン酸[脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸(例えば、タルトロン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸などのC
2−10脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸など)など]などが挙げられる。
【0032】
なお、これらのカルボン酸(有機化合物(b1))において、少なくとも一部のカルボキシル基は、塩(例えば、トリエチルアミンとの塩などの第三級アミン塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩などの塩基性化合物との塩)を形成していてもよく、無水物、水和物などであってもよい。なお、カルボン酸のカルボキシル基が、塩を形成していない遊離のカルボン酸であってもよい。
【0033】
有機化合物(b1)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0034】
これらの有機化合物(b1)のうち、脂肪族ヒドロキシカルボン酸(脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸および脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸)などのヒドロキシカルボン酸が好ましく、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の中でも、さらに、脂環族ヒドロキシカルボン酸(又は脂環族骨格を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、胆汁酸(コール酸など)などのC
6−34脂環族ヒドロキシカルボン酸、好ましくはC
10−34脂環族ヒドロキシカルボン酸、さらに好ましくはC
16−30脂環族ヒドロキシカルボン酸)が好ましい。
【0035】
また、ステロイド核を有するヒドロキシカルボン酸及びカルボン酸、例えば、ヒドロキシ基及びカルボキシル基を有する胆汁酸(コール酸など)などの多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸(例えば、縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、好ましくはC
10−34縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、さらに好ましくはC
14−34縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、特にC
18−30縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸)、カルボキシル基を有する胆汁酸(デヒドロコール酸、コラン酸など)などの多環式脂肪族カルボン酸(例えば、縮合多環式脂肪族カルボン酸、好ましくはC
10−34縮合多環式脂肪族カルボン酸、さらに好ましくはC
14−34縮合多環式脂肪族ヒドロキシカルボン酸、特にC
18−30縮合多環式脂肪族カルボン酸)などの多環式脂肪族カルボン酸(例えば、C
10−50縮合多環式脂肪族カルボン酸、好ましくはC
12−40縮合多環式脂肪族カルボン酸、さらに好ましくはC
14−34縮合多環式脂肪族カルボン酸、特にC
18−30縮合多環式脂肪族カルボン酸)は、嵩高い構造を有しており、銀ナノ粒子の凝集を抑制する効果が大きいためか好ましい。
【0036】
なお、有機化合物(b1)の分子量は、例えば、1000以下(例えば、46〜900程度)、好ましくは800以下(例えば、50〜700程度)、さらに好ましくは600以下(例えば、100〜500程度)であってもよい。
【0037】
また、有機化合物(b1)のpKa値は、例えば、1以上(例えば、1〜10程度)、好ましくは2以上(例えば、2〜8程度)であってもよい。
【0038】
(b2)高分子分散剤
高分子分散剤(又は高分子型分散剤)(b2)は、少なくともカルボキシル基を有し、銀ナノ粒子(a)を分散可能であればよく、銀ナノ粒子(a)を被覆して保護コロイドを形成してもよい。高分子分散剤(又は高分子型分散剤)(b2)としては、両親媒性の高分子分散剤(又はオリゴマー型分散剤)を好適に使用できる。
【0039】
高分子分散剤としては、通常、塗料、インキ分野などで着色剤の分散に用いられている高分子分散剤が例示できる。代表的な高分子分散剤(両親媒性の高分子分散剤)としては、親水性モノマーで形成された親水性ユニット(又は親水性ブロック)を含む水溶性又は水分散性樹脂が含まれる。
【0040】
前記親水性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基又は酸無水物基含有単量体((メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸又はその酸無水物など)、スルホ基を有する単量体(スチレンスルホン酸など)、ヒドロキシル基含有単量体(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルフェノールなど)などの付加重合性モノマー;エチレンオキシドなどの縮合重合性モノマーなどが例示できる。前記縮合重合性モノマーは、ヒドロキシル基などの活性水素(例えば、前記ヒドロキシル基)との反応により、親水性ユニット(又はブロック)を形成していてもよい。親水性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて親水性ユニット(又はブロック)を形成していてもよい。好ましい親水性モノマーは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、エチレンオキシドなどであってもよい。
【0041】
なお、高分子分散剤(b2)は、少なくともカルボキシル基又は酸無水物基を有していればよく、前記親水性モノマーの官能基、例えば、酸基(スルホ基)、ヒドロキシル基を有していてもよい。これらの官能基は、単独で又は2種以上組み合わせて高分子分散剤(b2)に導入してもよい。
【0042】
高分子分散剤は、少なくとも親水性ユニット(又は親水性ブロック)を含んでいてもよく、親水性モノマーの単独又は共重合体(例えば、ポリアクリル酸又はその塩など)であってもよく、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマーであってもよい。疎水性モノマー(非イオン性モノマー)としては、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C
1−20アルキル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−フェニルエチルなどの(メタ)アクリル酸アラルキルなど]などの(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;α−C
2−20オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセンなど)などのオレフィン系モノマー;酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル系モノマーなどの付加重合性モノマー:プロピレンオキシドなどのC
3−6アルキレンオキサイドなどの縮合重合性モノマーが挙げられる。疎水性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて疎水性ユニットを構成していてもよい。
【0043】
コポリマー(例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマー)の高分子分散剤は、ランダムコポリマー、交互共重合体、ブロックコポリマー(例えば、親水性モノマーで構成された親水性ブロックと、疎水性モノマーで構成された疎水性ブロックとで構成されたコポリマー)、くし型コポリマー(又はくし型グラフトコポリマー)などであってもよい。前記ブロックコポリマーの構造は、特に限定されず、ジブロック構造、トリブロック構造(ABA型、BAB型)などであってもよい。また、前記くし型コポリマーにおいて、主鎖は、前記親水性ブロック又は前記疎水性ブロックで形成してもよく、親水性ブロックおよび疎水性ブロックで形成してもよい。
【0044】
なお、前記のように、親水性ユニットは、親水性ブロック(ポリエチレンオキシドなど)で形成することもできる。親水性ブロック(ポリアルキレンオキシドなど)と疎水性ブロック(ポリオレフィンブロックなど)とは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合などの連結基を介して結合していてもよい。これらの結合は、例えば、疎水性ブロック(ポリオレフィンなど)を変性剤[不飽和カルボン酸又はその無水物((無水)マレイン酸など)、ラクタム又はアミノカルボン酸、ヒドロキシルアミン、ジアミンなど]で変性した後、親水性ブロックを導入することにより形成してもよい。また、ヒドロキシル基やカルボキシル基などの親水性基を有するモノマー(前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど)から得られるポリマーと、前記縮合系の親水性モノマー(エチレンオキシドなど)とを反応(又は結合)させることにより、くし型コポリマー(主鎖が疎水性ブロックで構成されたくし型コポリマー)を形成してもよい。
【0045】
さらに、共重合成分として、親水性の非イオン性モノマーを使用することにより、親水性と疎水性とのバランスを調整してもよい。このような成分としては、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(例えば、数平均分子量200〜1000程度)などのエチレンオキシユニットを有するモノマー又はオリゴマーなどを例示できる。また、親水性基(カルボキシル基など)を変性(例えば、エステル化)することにより親水性と疎水性とのバランスを調整してもよい。
【0046】
カルボキシル基を有する高分子分散剤(b2)において、少なくとも一部のカルボキシル基は、塩(アミンとの塩、金属塩など)を形成していてもよいが、カルボキシル基などの酸基が塩を形成していない高分子分散剤[すなわち、遊離のカルボキシル基を有する高分子分散剤]を好適に使用できる。
【0047】
カルボキシル基を有する高分子分散剤(b2)の酸価は、例えば、1mgKOH/g以上(例えば、2〜100mgKOH/g程度)、好ましくは3mgKOH/g以上(例えば、4〜90mgKOH/g程度)、さらに好ましくは5mgKOH/g以上(例えば、6〜80mgKOH/g程度)、特に7mgKOH/g以上(例えば、8〜70mgKOH/g程度)であってもよく、通常、3〜50mgKOH/g(例えば、5〜30mgKOH/g)程度であってもよい。なお、このような高分子分散剤(b2)において、アミン価は0(又はほぼ0)であってもよい。
【0048】
なお、高分子分散剤において、官能基の位置は、特に限定されず、主鎖であってもよく、側鎖であってもよく、主鎖および側鎖に位置していてもよい。このような官能基は、例えば、親水性モノマー又は親水性ユニット由来の官能基(例えば、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、エチレンオキサイドなどの共重合により導入された官能基)であってもよい。
【0049】
高分子分散剤(b2)は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0050】
なお、高分子分散剤として、特開2004−207558号公報などに記載の高分子分散剤(高分子量顔料分散剤)を使用してもよい。また、高分子分散剤は、合成してもよく、市販品を用いてもよい。以下に、市販の高分子分散剤(又は少なくとも両親媒性の分散剤で構成された分散剤)を具体的に例示すると、ソルスパース13240、ソルスパース13940、ソルスパース32550、ソルスパース31845、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース41090などのソルスパースシリーズ[アビシア(株)製];ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192、ディスパービック193、ディスパービック194、ディスパービック2001、ディスパービック2050などのディスパービックシリーズ[ビックケミー(株)製];EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49、EFKA−1501、EFKA−1502、EFKA−4540、EFKA−4550、ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453[EFKAケミカル(株)製];アジスパーPB711、アジスパーPAl11、アジスパーPB811、アジスパーPB821、アジスパーPW911などのアジスパーシリーズ[味の素(株)製];フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンTG−700、フローレンTG−720W、フローレン−730W、フローレン−740W、フローレン−745Wなどのフローレンシリーズ[共栄社化学(株)製];ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62などのジョンクリルシリーズ[ジョンソンポリマー(株)製]などが挙げられる。代表的な高分子分散剤には、ディスパービック190、ディスパービック194などが挙げられる。
【0051】
高分子分散剤(b2)の数平均分子量は、例えば、1500〜100000、好ましくは2000〜80000(例えば、2000〜60000)、さらに好ましくは3000〜50000(例えば、5000〜30000)程度であってもよく、7000〜20000程度であってもよい。
【0052】
有機化合物(b1)と高分子分散剤(b2)との割合は、固形分換算(又は不揮発分換算)で、前者/後者(質量比)=99/1〜1/99(例えば、95/5〜5/95)、好ましくは85/15〜10/90(例えば、75/25〜15/85)、さらに好ましくは70/30〜20/80(例えば、60/40〜25/75)、特に55/45〜30/70(例えば、50/50〜35/65)程度であってもよい。
【0053】
分散剤(b)(有機化合物(b1)および高分子分散剤(b2)の総量)の割合は、銀ナノ粒子(a)100質量部に対して、例えば、0.1〜100質量部(例えば、1〜80質量部)、好ましくは2〜60質量部(例えば、3〜50質量部)程度の広い範囲から選択でき、通常、1〜30質量部(例えば、1〜20質量部)、好ましくは5〜20質量部(例えば、7〜17質量部)、さらに好ましくは10〜15質量部程度であってもよい。本発明では、比較的少量の分散剤であっても、粗大粒子が少なく、分散安定性の高い銀ナノ粒子とすることができる。
【0054】
なお、有機化合物(b1)の割合は、例えば、銀ナノ粒子(a)100質量部に対して、例えば、0.05〜50質量部(例えば、0.5〜30質量部)程度の範囲から選択でき、通常、1〜15質量部(例えば、2〜10質量部)、好ましくは2.5〜7.5質量部(例えば、3〜6質量部)程度であってもよい。
【0055】
また、高分子分散剤(b2)の割合は、例えば、銀ナノ粒子(a)100質量部に対して、例えば、0.1〜60質量部(例えば、1〜50質量部)程度の範囲から選択でき、通常、2〜30質量部(例えば、2.5〜20質量部)、さらに好ましくは3〜15質量部(例えば、5〜10質量部)程度であってもよい。
【0056】
なお、本発明では、必要であれば、他の分散剤を含んでいてもよく、他の分散剤は、無機化合物であってもよいが、通常、有機化合物である。他の分散剤としては、例えば、アルカノール類(ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノールなどのC
6−20アルカンモノオール)、アルデヒド類(カプリルアルデヒド、ラウリルアルデヒド、パルミトアルデヒドなどのC
6−20脂肪族アルデヒド)、高級脂肪酸又はその塩、スルホン酸類(例えば、アルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)が挙げられる。これらの他の分散剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0057】
他の分散剤の割合は、前記分散剤(b)100質量部に対して、例えば、0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜50質量部、さらに好ましくは1〜30質量部程度であってもよい。
【0058】
[水性溶媒(c)]
水性溶媒(c)は、水単独であってもよく、水と、水溶性有機溶媒とを含んでいてもよい。水溶性溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC
1−4アルカノールなど)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのアルカントリオール、ペンタエリスリトールなどのアルカンテトラオールなど)、アミド類(ホルムアミド、アセトアミドなどのアシルアミド類、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド,N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのモノ又はジC
1−4アシルアミド類など)、ピロリドン類(2−ピロリドン、3−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3−ピロリドンなど)、ケトン類(アセトンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、有機カルボン酸類(酢酸など)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのC
1−4アルキルセロソルブ類など)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC
1−4アルキルセロソルブアセテート類)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトールなどのC
1−4アルキルカルビトール類など)、カルビトールアセテート類(メチルカルビトールアセテートなどのC
1−4アルキルカルビトールアセテート)、ジメチルスルホキシドなどが例示できる。これらの有機溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0059】
水溶性有機溶媒は、水溶性アルコール(エタノール、イソプロパノールなど)、水溶性多価アルコール(グリセリンなど)及びピロリドン類(N−メチルピロリドンなど)から選択された少なくとも一種の有機溶媒とを含んでいてもよい。
【0060】
前記アルコールの割合は、水100質量部に対して、例えば、1〜30質量部、好ましくは2〜20質量部、さらに好ましくは3〜15質量部(例えば、5〜10質量部)程度であってもよい。前記多価アルコール及びピロリドン類の割合は、それぞれ、水100質量部に対して、例えば、1〜50質量部、好ましくは3〜30質量部、さらに好ましくは5〜25質量部(例えば、10〜20質量部)程度であってもよい。
【0061】
[被膜形成能を有する水溶性又は水分散性高分子(d)]
本発明では、前記成分を含むインキ組成物(又はインク組成物)に被膜形成能を有する水溶性又は水分散性高分子(d)を添加することにより、耐擦過性に優れた印字部又は画像部を形成できる。その理由については明確ではないものの、銀粒子がナノ粒子であり、水溶性又は水分散性高分子(d)が被膜形成能(製膜性)を有するためか、水溶性又は水分散性高分子(d)が少量であっても、強固で密着性の高い印字部又は画像部を形成するものと推測される。
【0062】
水溶性又は水分散性高分子には、水溶性樹脂の他、樹脂エマルジョンも含まれる。水溶性又は水分散性高分子は、前記高分子分散剤(b2)とは異なる種類の高分子が使用される。水溶性又は水分散性樹脂には、例えば、スチレン系樹脂(スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体;スチレン−(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体などのスチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体;スチレン−無水マレイン酸共重合体;スチレン−スチレンスルホン酸共重合体など)、アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体などの(メタ)アクリル酸アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリアクリルアミドなど)、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレンイミン、ビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、ビニルピロリドン系樹脂(ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリエチレングリコール系樹脂(ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体など)、水溶性ウレタン樹脂、水溶性アクリルウレタン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、天然高分子(ゼラチン、アラビアゴム、トラガントゴム、デキストリン、アルギン酸など)、セルロースエーテル類(メチルセルロースなどのアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキル−アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、ポリエチレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物などが含まれる。これらの水溶性又は水分散性樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0063】
なお、水溶性又は水分散性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したとき、ポリスチレン換算で、0.5×10
4〜100×10
4、好ましくは0.7×10
4〜10×10
4程度であってもよい。なお、一部の高分子(例えば、セルロースエーテル類など)はGPCにより分子量を測定することが困難である場合がある。このような高分子では、重合度が、例えば、100〜100000、好ましくは200〜10000程度であってもよい。
【0064】
さらに、カルボキシル基が導入された水溶性又は水分散性樹脂の酸価は、10〜200mgKOH/g、好ましくは30〜150mgKOH/g、さらに好ましくは50〜120mgKOH/g程度であってもよい。また、塩基でカルボキシル基の塩を形成し、樹脂に水溶性又は水分散性を付与してもよい。塩基としては、アミン類(トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン、モルホリンなどの複素環式アミンなど)、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などであってもよい。
【0065】
これらの水溶性又は水分散性高分子のうち、水溶性スチレン系樹脂(スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体など)、水溶性アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体など)、ビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールなど)、ビニルピロリドン系樹脂(ポリビニルピロリドンなど)、天然高分子(ゼラチン、アラビアゴム、デキストリンなど)、セルロースエーテル類(ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキル−アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)などを用いる場合が多い。
【0066】
樹脂エマルジョンとしては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョン(例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体などを含むエマルジョン)、スチレン系樹脂エマルジョン(例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体系単量体などを含むエマルジョン)、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を含むエマルジョン)アクリル−シリコーン系樹脂エマルジョン、ポリエステル−アクリル系樹脂エマルジョンなどが例示でき、スチレン−ブタジエン共重合体などのゴム粒子のエマルジョンであってもよい。これらの樹脂エマルジョンも単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。樹脂エマルジョンの樹脂粒子の平均粒径は、1nm〜1μm程度であってもよく、通常、10〜1000nm、好ましくは20〜800nm、さらに好ましくは30〜500nm程度であってもよい。また、樹脂エマルジョンは、室温(20℃)で造膜性を有している場合が多い。
【0067】
これらの樹脂エマルジョンのうち、(メタ)アクリル系樹脂エマルジョン(メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体エマルジョンなど)、スチレン系樹脂エマルジョン(スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体系単量体エマルジョンなど)を用いる場合が多い。
【0068】
水溶性又は水分散性高分子(d)の使用量は、固形分換算(又は不揮発分換算)で、銀ナノ粒子(a)100質量部に対して、1〜30質量部(例えば、2〜25質量部)、好ましくは2.5〜20質量部(例えば、3〜15質量部)程度であってもよく、通常、2〜12質量部(例えば、2.5〜10質量部、好ましくは3〜8.5質量部)程度であってもよい。本発明では、水溶性又は水分散性高分子(d)の使用量が少量であっても、高い耐擦過性の印字部又は画像を、光沢紙などの被印刷体に対して高い密着性で形成できる。
【0069】
水溶性又は水分散性高分子(d)の濃度は、組成物全体に対して、0.05〜0.75質量%(例えば、0.05〜0.7質量%)、好ましくは0.07〜0.5質量%(例えば、0.08〜0.4質量%)、さらに好ましくは0.1〜0.3質量%程度であってもよい。
【0070】
さらに、前記分散剤(b)と、水溶性又は水分散性高分子(d)との割合は、固形分換算で、前者/後者(質量比)=5/95〜95/5程度の範囲から選択でき、例えば、10/90〜95/5(例えば、30/70〜90/10)、好ましくは40/60〜90/10(例えば、50/50〜87/13)、さらに好ましくは55/45〜85/15(例えば、60/40〜80/20)程度であってもよい。本発明では、分散剤(b)に対する水溶性又は水分散性高分子(d)の割合が小さくても、高い耐擦過性を有する印字部又は画像部を高い密着性で形成できる。
【0071】
前記分散剤(b)及び水溶性又は水分散性高分子(d)の総量は、固形分換算で、銀ナノ粒子(a)100質量部に対して、5〜50質量部(例えば、7〜40質量部)、好ましくは10〜30質量部(例えば、15〜25質量部)程度であってもよく、通常、5〜30質量部(例えば、10〜25質量部、好ましくは15〜20質量部)程度であってもよい。本発明では、分散剤(b)及び水溶性又は水分散性高分子(d)の使用量が少量であっても、光沢紙などの被印刷体に対して高い密着性で、高い耐擦過性の印字部又は画像を形成できる。
【0072】
本発明のインキ組成物(分散液)は、高い分散安定性を有するため、インキ組成物(分散液)中の銀ナノ粒子(a)(金属の質量換算)の濃度は、特に制限されず、0.1〜50質量%程度の範囲から選択でき、例えば、0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは1.5〜10質量%(例えば、2〜5質量%)程度であってもよい。
【0073】
なお、本発明では、インキ組成物の固形分中の銀ナノ粒子濃度が高くても、高い分散性を維持できるとともに、金属光沢を有する印字部又は画像部を形成できる。インキ組成物(分散液)の固形分全体に対する銀ナノ粒子(a)の濃度は、特に限定されず、10〜90質量%(例えば、25〜88質量%、特に35〜85質量%)程度の広い範囲から選択でき、例えば、50〜90質量%、好ましくは55〜88質量%(例えば、60〜87質量%)、さらに好ましくは65〜87質量%程度であってもよい。
【0074】
なお、インキ組成物(又はインク組成物)は、本発明の効果を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、可塑剤(又は造膜助剤)、光沢付与剤、金属腐食防止剤(防錆剤)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤など)、界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、特にアニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤)、分散安定化剤、増粘剤又は粘度調整剤、保湿剤、チクソトロピー性賦与剤、レベリング剤、浸透剤、消泡剤、pH調整剤、キレート剤、表面張力調整剤、着色剤(染顔料など)、色相改良剤、染料定着剤、殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、酸素吸収剤などを含んでいてもよい。なお、界面活性剤は、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリシロキサン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などであってもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0075】
インキ組成物の粘度は、インクジェット方式による記録において、液滴を安定に吐出可能であればよく、B型粘度計を用いて、室温(25℃)で測定したとき、例えば、2〜20mPa・s、好ましくは2.5〜15mPa・s(例えば、3〜12mPa・s)、さらに好ましくは3〜10mPa・s(例えば、3〜5mPa・s)程度であってもよい。
【0076】
[インキ組成物の製造方法]
なお、インキ組成物(又はインク組成物)は、例えば、慣用の方法で調製した銀ナノ粒子(a)を含む分散液に、水溶性又は水分散性高分子(d)を添加することにより調製できる。銀ナノ粒子(a)を含む分散液は、市販品を用いてもよく、前記特許文献2に記載の方法に準じて調製してもよい。より具体的には、前記銀ナノ粒子(a)に対応する金属化合物を、分散剤(b)および還元剤の存在下、溶媒中で還元することにより調製できる。
【0077】
前記銀ナノ粒子(a)に対応する金属化合物としては、ハロゲン化銀、銀塩[銀無機酸塩(硫酸銀、硝酸銀など)、銀有機酸塩(酢酸銀など)など]などを使用する場合が多い。なお、これらの銀化合物は、水溶液などの水性溶媒の溶液の形態で用いてもよい。
【0078】
還元剤としては、慣用の成分、例えば、水素化ホウ素ナトリウム類(水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウムなど)、水素化アルミニウムリチウム、次亜リン酸又はその塩(ナトリウム塩など)、ボラン類(ジボラン、ジメチルアミンボランなど)、ヒドラジン、ホルマリン、アミン類などが例示できる。これらの還元剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。還元剤としてはアミン類を用いる場合が多い。
【0079】
アミン類としては、脂肪族アミン類(例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパンなどのアルカンアミン;トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのポリアルキレンポリアミンなど)、脂環式アミン類(例えば、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N′−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリンなど)、芳香族アミン類(例えば、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジンなど)、芳香脂肪族アミン類(例えば、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルキシリレンジアミンなどのアラルキルアミン)、アルカノールアミン類[例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール(2−(ジメチルアミノ)エタノール)、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノールなどのC
2−10アルカノールアミン、好ましくはC
2−6アルカノールアミン]などが挙げることができる。これらのアミン類のうち、アルカノールアミン類が好ましい。
【0080】
還元剤の使用量は、金属原子換算で前記銀化合物1当量(又は1モル)に対して、1〜30モル、好ましくは1.5〜15モル、さらに好ましくは2〜10モル程度であってもよく、通常1〜5モル程度であってもよい。
【0081】
還元反応は、慣用の方法、例えば、攪拌しながら、温度10〜75℃(例えば、15〜50℃、好ましくは20〜35℃)程度で行うことができる。反応系の雰囲気は、空気、不活性ガス(窒素ガスなど)であってもよく、還元性ガス(水素ガスなど)を含む雰囲気であってもよい。
【0082】
なお、反応溶媒は、水と前記水溶性有機溶媒との混合溶媒を使用できるが、水単独である場合が多い。なお、必要であれば、反応溶媒の種類などに応じて、酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸などの有機酸)、アルカリ[水酸化ナトリウム、アンモニアなどの無機塩基、アミン類(例えば、アルキルアミン、アルカノールアミンなどの第三級アミン類などの有機塩基)などの塩基類]を用いて、反応系のpHを調整してもよい。
【0083】
還元反応の終了後、反応混合液を慣用の方法により、濃縮、濾過、精製してもよく、そのまま分散液として使用してもよい。前記特定の分散剤(b)を使用すると、比較的少量であっても、粗大粒子の少ない銀ナノ粒子を生成できる。
【0084】
このようにして調製された分散液に、前記水溶性又は水分散性高分子(d)を添加して混合することにより、インキ組成物を調製できる。なお、水溶性有機溶媒(例えば、アルコール類、多価アルコール類及/又はピロリドン類)は、前記分散液に添加する場合が多い。また、分散液には、水を添加して濃度を調整してもよく、前記添加剤などを添加してもよい。
【0085】
[印字部又は画像部の形成方法]
本発明のインキ組成物(又はインク組成物)は、インクジェット方式で被印刷体(又は被記録媒体)に印字又は印刷し、印字部又は画像を形成するために有用である。そのため、本発明のインキ組成物は、例えば、インクジェット印刷用インキ組成物ということもできる。前記被印刷体(又は被記録媒体)は、基材と、この基材の少なくとも一方の面に形成されたインキ受容層とを有していてもよい。また、被印刷体は、インク吸収性又は非吸収性であってもよい。
【0086】
基材の種類は、用途に応じて、紙(例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト紙、合成紙などの印刷用紙など)、プラスチックフィルム(ポリオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリイミド系フィルム(ポリアミドイミドフィルムを含む)など)、金属基板(シリコン基板、アルミニウム基板など)、セラミック(ガラスを含む)基板(ガラス基板、アルミナ基板などのセラミックス基板)などであってもよく、複合基板(繊維基材にフェノール樹脂、エポキシ樹脂などが含浸した含浸基板、例えば、紙−フェノール樹脂基板、ガラス−エポキシ樹脂基板など)であってもよい。基材は、紙である場合が多い。
【0087】
インキ受容層は、通常、顔料(白色顔料)およびバインダー樹脂を含んでおり、白色顔料としては、タルク、クレー(カオリン)、酸化チタン、合成シリカ、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、硫酸バリウムなどが例示できる。顔料は、タルク、シリカ、及び/又は酸化チタンを含んでいる場合が多い。
【0088】
バインダー樹脂としては、例えば、デンプン(変性デンプンを含む)、ビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコールなど)、ビニルピロリドン系樹脂(ポリビニルピロリドンなど)、スチレン系樹脂(スチレン−ブタジエン樹脂など)、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂などが例示できる。バインダー樹脂は、デンプン及び/又はポリビニルアルコールを含む場合が多い。
【0089】
前記インキ受容層は、ポリエチレンイミン、カチオン化デンプン、カチオン化ポリウレタン樹脂などの耐水化剤を含んでいてもよい。また、受容層は、種々の助剤、例えば、有色顔料又は染料、顔料分散剤、消泡剤、離型剤、浸透剤、滑剤、安定化剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤など)、防腐剤、架橋剤などを含んでいてもよい。
【0090】
インキ受容層を有する被印刷体は、インクジェット専用紙であってもよい。特に、前記被印刷体(又は被記録媒体)は、光沢紙(例えば、インキ受容層を有する光沢紙)であってもよく、光沢紙としては市販の光沢紙を使用してもよい。光沢紙には、カレンダー加工(スーパカレンダー加工など)が施されていてもよい。本発明では、光沢紙(インキ受容層を有する光沢紙)の種類が異なっていても、高い耐擦過性を有し、金属光沢性(銀光沢性)の印字部又は画像部を高い密着性で形成できる。例えば、布や紙などで印字部又は画像部を激しく擦っても印字部及び画像部が剥離することがない。なお、インキ組成物を被印刷体に印字又は印刷すると、分散剤(又は保護コロイド)及び溶媒は、インク受容層に吸収され、基材表面に銀粒子と水溶性又は水分散性高分子(樹脂成分)とが定着するためか、銀粒子がナノ粒子であるため、少量の水溶性又は水分散性高分子であっても、結着樹脂として有効に機能し、耐擦過性の高い印字部又は画像部を形成できるものと思われる。なお、分散剤のうち高分子分散剤も結着樹脂(樹脂成分)として機能していてもよい。
【0091】
インクジェット方式は、バブルジェット(登録商標)方式(サーマル方式)、ピエゾ(圧電素子)方式のいずれであってもよく、本発明の組成物を水性インキ組成物として用い、インクジェットプロッター、インクジェットプリンター、インクジェットディスペンサーなどのインクジェット印刷方式を利用して印字部又は画像部を形成してもよい。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0093】
[銀ナノ粒子分散液の調製]
特許文献2の実施例1に準じて銀ナノ粒子を含む分散液を調製した。すなわち、硝酸銀66.8g、カルボキシル基を有する高分子分散剤(ビッグケミー製、「ディスパービック190」、溶媒:水、不揮発成分40%、酸価10mgKOH/g、アミン価0)7.2g、及びコール酸(和光純薬工業(株)製)1.8gを、イオン交換水100gに投入し、激しく撹拌し、懸濁液を得た。この懸濁液に対して、ジメチルアミノエタノール(和光純薬工業(株)製)100gを水温が50℃を超えないように徐々に加えたのち、水温50℃のウォーターバス中で4時間加熱撹拌した。得られた反応液を、ガラスフィルタ(ADVANTEC製GC−90、ポアサイズ0.8マイクロメートル)でろ過し、銀を15質量%含む銀ナノ粒子分散液を得た。この分散液について、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製)で銀ナノ粒子の粒径を確認したところ、一次粒子の個数平均粒子径は約20nmであった。
【0094】
[インキ組成物1の調製]
得られた銀ナノ粒子を含む分散液に、表1に示す割合で、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、イソプロパノール(IPA)、イオン交換水、水溶性高分子としてポリビニルアルコール(平均重合度1,500以上、けん化度72〜82モル%、和光純薬工業(株)製)を撹拌混合し、インキ組成物1を調製した。
【0095】
[インキ組成物2〜10の調製]
表1に示す割合で、添加剤の種類を用いる以外、インキ組成物1と同様にして、インキ組成物2〜10を調製した。なお、水溶性高分子として、インキ組成物2、6、7、9及び10ではインキ組成物1と同様のポリビニルアルコールを用い、インキ組成物3ではゼラチン(和光純薬工業(株)製)を用い、インキ組成物4では水溶性アクリル樹脂(アクリセットARL−453 (株)日本触媒製)を用いた。また、インキ組成物5では、水分散性高分子として、アクリル樹脂エマルション(ユーダブルEF−002 (株)日本触媒製)を用いた。なお、インキ組成物8では水溶性高分子を添加することなく調製した。
【0096】
インキ組成物1〜10の組成を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
なお、水溶性高分子及び水分散性高分子の量は、固形分換算の含有量である。
【0099】
[実施例1]
インキ組成物1を用いて、バブルジェット(登録商標)方式インクジェットプリンター(キヤノン(株)製「PIXUS iP2700」)を用いて印刷した。すなわち、インクジェットプリンターに対応する空のインクジェットカートリッジに、インキ組成物1を注入して、プリンターにセットし、被記録媒体としてのインク受容層を含む光沢紙(キヤノン(株)製プロフェッショナルフォトペーパー)の上に印刷した。
【0100】
[実施例2]
被記録媒体として、キヤノン(株)製写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]を用いる以外、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0101】
[実施例3]
被記録媒体として、セイコーエプソン(株)製写真用紙 エントリー<光沢>を用いる以外、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0102】
[実施例4]
インキ組成物2を用いる以外、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0103】
[実施例5]
インキ組成物2を用い、被記録媒体としてキヤノン(株)製写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]を用いた以外、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0104】
[実施例6]
インキ組成物2を用い、被記録媒体としてセイコーエプソン(株)製写真用紙 エントリー<光沢>を用いた以外、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0105】
[実施例7〜11]
インキ組成物3(実施例7)、インキ組成物4(実施例8)、インキ組成物5(実施例9)、インキ組成物6(実施例10)及びインキ組成物7(実施例11)を用いた以外、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0106】
[比較例1]
インキ組成物8を用いた以外、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0107】
[比較例2]
インキ組成物8を用い、被記録媒体としてキヤノン(株)製写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]を用いた以外、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0108】
[比較例3]
インキ組成物8を用い、被記録媒体としてセイコーエプソン(株)製写真用紙 エントリー<光沢>を用いた以外、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0109】
[比較例4及び5]
インキ組成物9(比較例4)及びインキ組成物10(比較例5)を用いた以外、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0110】
(印刷物の評価方法)
得られた印刷物について、以下のような特性を評価した。
【0111】
(1)光沢度
各実施例および比較例で印刷したベタ画像を光沢計(日本電色工業(株)製VG2000)を用い、20°光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。
【0112】
A:光沢度が900以上
B:光沢度が900未満。
【0113】
(2)耐擦過性
各実施例および比較例で印刷したベタ画像に対し、摩擦摩耗試験機を用い、乾いた木綿で、荷重500g及び10往復する摩擦試験を行なった。そして、摩擦試験後のベタ画像を、以下に示す基準にしたがって画像の耐擦過性を評価した。
【0114】
耐擦性試験後の印刷物の20°光沢度を測定し、耐擦性試験前後での光沢度の低下率を求め、以下の基準に従い評価した。
【0115】
A:光沢度の低下率が10%未満
B:光沢度の低下率が10%以上、50%未満
C:光沢度の低下率が50%以上。
【0116】
これらの評価結果を表2及び表3に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
表2及び表3から明らかなように、実施例では、安定に印刷できるとともに、高い金属光沢を有し、かつ耐擦過性の高い画像を形成できた。なお、比較例4では、インクジェットプリンターからのインキ組成物9の吐出性が不安定であり、印刷できなかった。