特許第6889596号(P6889596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889596
(24)【登録日】2021年5月25日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】橋梁上部構造の支持装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/02 20060101AFI20210607BHJP
【FI】
   E01D19/02
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-82537(P2017-82537)
(22)【出願日】2017年4月19日
(65)【公開番号】特開2018-178620(P2018-178620A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029012
【氏名又は名称】株式会社エスイー
(73)【特許権者】
【識別番号】500370517
【氏名又は名称】水島鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木部 洋
(72)【発明者】
【氏名】中井 督介
(72)【発明者】
【氏名】藤塚 浩
(72)【発明者】
【氏名】松井 創三
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−115639(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0083695(KR,A)
【文献】 特開2014−091979(JP,A)
【文献】 特開2001−295365(JP,A)
【文献】 特開平11−222818(JP,A)
【文献】 特開2000−096834(JP,A)
【文献】 実開昭54−025982(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の下部構造の、対向する下部構造側を向いた側面から橋軸方向へ張り出し、上部構造の橋軸方向の端部を支持する支持装置であり、
前記下部構造の前記側面に重なって接合されるベースプレートと、このベースプレートの表面に突設され、前記対向する下部構造側へ張り出し、前記上部構造を直接、もしくは間接的に支持する張出部材とを備え、
前記張出部材は軸方向の全長に亘り、閉鎖断面をなし
前記張出部材の、前記対向する下部構造側の端面、もしくは端部に閉塞板が接合され、この下部構造側の端面、もしくは端部が閉塞されていることを特徴とする橋梁上部構造の支持装置。
【請求項2】
前記ベースプレートの面積は前記張出部材の軸に直交する方向の断面積より大きく、前記ベースプレートを前記下部構造の前記側面に固定する定着材は前記張出部材の外周側に配置されていることを特徴とする請求項に記載の橋梁上部構造の支持装置。
【請求項3】
前記張出部材の上部に前記上部構造を受ける支持部材が固定されていることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の橋梁上部構造の支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は橋軸方向の端部が下部構造の側面から張り出した部分に支持される上部構造を下部構造に支持させる橋梁上部構造の支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁の上部構造の橋軸方向端部を下部構造の、対向する下部構造側を向いた側面から張り出した部分に支持させる場合、上部構造の端部は下部構造の側面に突設されたブラケットに支持される形になる(特許文献1〜3参照)。
【0003】
ブラケットは下部構造の側面から張り出した部分で上部構造を支持する役目を果たすため、主には上部構造の自重による曲げモーメントを負担しながら、下部構造に伝達できればよい。この主たる機能が発揮されるよう、ブラケットは基本的に下部構造の側面にアンカーボルトによって固定されるベースプレートと、ベースプレートの表面に突設される、鉛直方向と水平方向を向いた2方向のプレートから構成される(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−115639号公報(段落0022〜0025、図1図2
【特許文献3】特開2010−159568号公報(段落0029〜0030、図3
【特許文献2】特開2014−91979号公報(段落0047〜0062、図4図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブラケットは上部構造に橋軸方向の水平力が作用したときにも、その水平力を負担しながら2方向のプレートとアンカーボルトを通じて下部構造に伝達することができる。しかしながら、上部構造に橋軸方向に直交等、交差する方向の水平力が作用したときの、橋軸方向に平行な軸の回りに生じる捩りモーメントに対しては十分な抵抗力を保有していない可能性がある。
【0006】
例えばブラケットが上記のように鉛直方向と水平方向の2方向を向くプレートからなる場合(特許文献1〜3)、ブラケットは開放断面形状であることで、橋軸方向の回りの捩りモーメントに対する捩り剛性が乏しいため、捩りモーメントの作用方向に変形する可能性がある。
【0007】
本発明は上記背景より、上部構造に橋軸方向に直交等する方向の水平力が作用したときの捩りモーメントによる変形に対する安定性の高い橋梁上部構造の支持装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明の橋梁上部構造の支持装置は、橋梁の下部構造の、対向する下部構造側を向いた側面から橋軸方向へ張り出し、上部構造の橋軸方向の端部を支持する支持装置であり、
前記下部構造の前記側面に重なって接合されるベースプレートと、このベースプレートの表面に突設され、前記対向する下部構造側へ張り出し、前記上部構造を直接、もしくは間接的に支持する張出部材とを備え、
前記張出部材は軸方向の全長に亘り、閉鎖断面をなし
前記張出部材の、前記対向する下部構造側の端面、もしくは端部に閉塞板が接合され、この下部構造側の端面、もしくは端部が閉塞されていることを構成要件とする。
【0009】
「下部構造の、対向する下部構造側を向いた側面」とは、図1に示すように下部構造9の側面の内、橋軸方向に対向する(隣接する)下部構造9側を向いた側面91を指す。下部構造9には橋脚と橋台が含まれる。下部構造9の側面91は鉛直面をなす場合と鉛直面に対して傾斜する場合がある。上部構造10の橋軸方向の端部が下部構造9の側面91から張り出した張出部材3に支持されれば、上部構造10の形態(種類)は問われない。図面では上部構造10が水管橋の水管101である場合の例を示しているが、上部構造10は橋桁の場合もある。
【0010】
「張出部材が軸方向の全長に亘り、閉鎖断面をなしている」とは、張出部材4の軸方向全長の、軸(材軸)に直交する方向の断面が閉鎖した形状をしていることを言い、張出部材4の軸方向各部の断面形状は問われない。張出部材4の軸方向は主に橋軸方向である。
【0011】
張出部材4の断面形状は上部構造10を直接、支持する上では図示するような箱形(方形)断面であることが適切であるが、必ずしもその必要はなく、張出部材4の上部に、上部構造10を受ける支持部材6が固定されることもあるため(請求項)、円形、もしくは楕円、または多角形断面であることもある。張出部材4の軸に直交する方向の断面積が軸方向に一定である必要もなく、平等強さの梁のようにベースプレート2側から先端側へかけて断面積が次第に減少する形状に形成されることもある。
【0012】
張出部材4が軸方向の全長に亘り、閉鎖断面形状であることで、軸の回りの捩りモーメントに対する捩り剛性が開放断面形状の場合より高まるため、張出部材4の上に載る上部構造10の端部に上部構造10の軸方向(橋軸方向)に直交等、交差する方向に水平力が作用し、張出部材4に軸の回りに捩りモーメントが作用したときの抵抗力が開放断面形状の場合より上昇する。
【0013】
只、張出部材4の先端部である対向する下部構造9側の端面が開放し、閉じていない場合には、端面が捩り変形に対して拘束されていないために、端面の捩り剛性が低い状態にあり、張出部材4が軸回りに捩りモーメントを受けたときに端面付近が捩り変形を生じ易い。
【0014】
そこで、張出部材4の、対向する下部構造9側の端面に閉塞板5を重ねるか、端部の内周側に閉塞板5を配置して接合し、張出部材4の端面、または端部を閉塞させれば(請求項)、張出部材4端面の、捩り変形に対する拘束効果が高まる。この結果、張出部材4端面の捩り剛性を開放している場合より上昇させることができるため、捩りモーメントによる張出部材4の端面付近の捩り変形を抑制することが可能になる。閉塞板5は主に溶接により張出部材4の端面、または端部に一体化する。
【0015】
張出部材4が捩りモーメントを受けたとき、捩りモーメントは張出部材4が突設されたベースプレート2を下部構造9に固定するアンカーボルトやアンカー等の定着材3が負担し、下部構造9に伝達する。定着材3は張出部材4に作用する捩りモーメントに対し、軸に直交する方向のせん断力を負担することにより抵抗する。定着材3は張出部材4の軸の周囲に分散して配置されることで、複数本の定着材3がせん断力を分担しながら、捩りモーメントを下部構造9に伝達する。
【0016】
このとき、張出部材4の軸に関して点対称の位置にある2本の定着材3、3が対になるようにせん断力を負担することにより捩りモーメントに抵抗するが、この抵抗力は張出部材4の軸からの距離(腕の長さ)が大きい程、大きいため、張出部材4の軸から定着材3の軸までの距離をより大きく確保することが有効である。
【0017】
そこで、ベースプレート2の面積を張出部材4の軸に直交する方向の断面積より大きくし、ベースプレート2を下部構造9の側面91に固定する定着材3を張出部材4の外周側に配置すれば(請求項)、張出部材4の軸から定着材3の軸までの距離をより拡大することが可能になる。「ベースプレート2の面積」は張出部材4の軸方向にベースプレート2を見たときの面積を言う。張出部材4の周囲には2本以上の定着材3が分散して配置されるが、張出部材4の軸に関して対称位置の2本の定着材3、3が対になるように抵抗する。
【0018】
この場合、ベースプレート2の面積が張出部材4の断面積より大きいことで、図3に示すようにベースプレート2の面積が張出部材4の断面積内に納まる場合より定着材3の設置本数を増やすことができるため、捩りモーメントに対する定着材3全体での抵抗力を増大させることが可能になる。このことは、張出部材4に作用する軸回りの捩りモーメントが一定であれば、ベースプレート2の面積が張出部材4の断面積内に納まる場合との対比では1本当たりの定着材3の捩りモーメントに対する抵抗力としてのせん断力の負担が低下することでもあるため、定着材3のせん断抵抗力を決める断面積を小さくする、すなわち定着材3の寸法(サイズ)を小さく抑えることも可能になる。
【0019】
張出部材が特許文献1〜3のように2方向を向いたプレートからなり、開放断面である場合、ベースプレートは張出部材の下部構造側の端面を覆う面積を持てばよいことから、ベースプレートの面積を張出部材の断面積より大きくしようとする理由付けがない。結果的にアンカーボルトは張出部材の断面内に配置されることになるため、張出部材の軸からアンカーボルトの軸までの距離は大きくならない。
【0020】
これに対し、本発明では張出部材4が閉鎖断面であることから、ベースプレート2の面積を張出部材4の断面積以下にすることは、ベースプレート2に張出部材4を接合(固定)した状態では定着材3を下部構造9に挿入することができないことを意味するため、張出部材4が閉鎖断面であることの形態上の理由からも、ベースプレート2の面積を張出部材4の断面積より大きくすることが合理的である。
【0021】
この形態上の理由から、本発明ではベースプレート2の面積を張出部材4の断面積より大きくできる自由さがあり、ベースプレート2の面積を張出部材4の断面積より大きくすることで、定着材3を張出部材4の断面の外側に配置することができる。この結果、アンカーボルトが張出部材4の断面内に配置される場合より張出部材4の軸から定着材3の軸までの距離(腕の長さ)をより大きく確保することができ、捩りモーメントに抵抗する腕の長さが大きくなるため、捩りモーメントに対する抵抗力が大きくなる。
【0022】
張出部材4の上側には上部構造10の端部が直接、もしくは間接的に載置され、支持されるが、張出部材4が箱形断面でないような場合、または箱形断面である場合も含め、張出部材4の上部には図1に示すように上部構造10を受けるための支持部材6が固定されることが適切である(請求項)。上部構造10が上記のように図示するような水管橋の水管101である場合、上部構造10の橋軸方向の端部は水管101の端部である。
【0023】
この場合、張出部材4の上部に支持部材6が固定されることで、張出部材4の断面形状、または張出部材4上部の形状に無関係に上部構造10の支持に適した形状の支持部材6を配置することができる。この結果、上部構造10の支持のために張出部材4の断面形状が制約を受ける必要がなくなるため、上部構造10に作用する水平力に起因し、張出部材4に生じる捩りモーメントに抵抗することに適した、あるいは有利な断面形状に張出部材4を形成することが可能になる。この場合、張出部材4は必ずしも箱形断面形状に形成される必要がないため、上記したように箱形以外の断面形状にも形成し易くなる。
【発明の効果】
【0024】
下部構造の側面に接合されるベースプレートの表面に突設され、上部構造を支持する張出部材が軸方向の全長に亘り、閉鎖断面をなすため、張出部材の軸の回りの捩りモーメントに対する捩り剛性を開放断面形状の場合より高めることができる。この結果、張出部材の上に載る上部構造の端部に上部構造の軸方向に直交等する方向に水平力が作用し、張出部材に軸の回りに捩りモーメントが作用したときの抵抗力が開放断面形状の場合より上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】下部構造の側面に接合されたベースプレートに固定された張出部材が上部構造を支持している状況を示した、上部構造の幅方向に見た縦断面図であり、図2のa−a線断面図である。
図2図1のb−b線矢視図である。
図3図1のc−c線断面図である。
図4図1のd−d線断面図である。
図5】(a)は図1に示す受け部材の内、接続材を示した立面図、(b)は(a)のx−x線断面図である。
図6】(a)は図1に示す受け部材の内、固定材を示した(b)のy−y線断面図、(b)は(a)の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1図2は橋梁の下部構造9の、対向する下部構造9側を向いた側面91から橋軸方向へ張り出し、上部構造10の橋軸方向の端部を支持する支持装置1の構成例を示す。支持装置1は下部構造9の側面91に重なって接合されるベースプレート2と、ベースプレート2の表面に突設され、対向する下部構造91側へ張り出し、上部構造10を直接、もしくは間接的に支持する張出部材4とを備え、張出部材4は軸方向の全長に亘り、閉鎖断面をなしている。
【0027】
図面では橋梁が水管橋の場合の例を示しているが、上部構造10の橋軸方向の端部が下部構造9の側面91から張り出した部分に支持される形態であれば、橋梁(上部構造10)の形態は問われない。また下部構造9と上部構造10は新設で構築される場合と、既設の場合があり、既設の場合、下部構造9の側面91に固定されていた既設の張出部材は撤去され、新たに張出部材4が設置される。橋梁が水管橋の場合、上部構造10は水管101である。
【0028】
ベースプレート2は表面に張出部材4の下部構造9側の端部が突き合わせられ、接合されたときに、少なくとも張出部材4の端部を閉塞できるだけの平面積を持ち、張出部材4が接合された状態で張出部材4の断面との干渉がない位置に配置されるアンカーボルト、アンカー等の定着材3が下部構造9に定着されることにより下部構造9に固定される。下部構造9が既設の場合、定着材3は既設のアンカーが挿入されていた箇所を利用できる場合以外、新たに形成された削孔92内に挿入され、接着剤やモルタル等の充填材によって下部構造9に定着される。
【0029】
張出部材4は軸方向の全長に亘り、閉鎖断面形状をすればよく、軸に直交する断面の断面形状は問われず、軸方向の全長に亘って一様断面である必要もないが、図面では張出部材4が下部構造9の側面91から張り出した状態での上部構造10の支持のし易さから、張出部材4を箱形断面形状に形成している。
【0030】
この場合、張出部材4は幅と高さを自由に決められるよう、基本的に鉛直方向を向き、水平方向に距離を置いて対向する鉛直プレート41、41と、鉛直プレート41の鉛直方向両端部に一体化し、鉛直方向に距離を置いて対向する水平プレート42、42から箱形に組み立てられる。但し、張出部材4が箱形の形状をする場合、2方向のプレートは必ずしも鉛直方向と水平方向を向くとは限らない。
【0031】
また対向する鉛直プレート41、41間、または水平プレート42、42間に中間のプレートがいずれかに平行に補助的に配置されることもある。張出部材4が箱形の断面形状をする場合、張出部材4には角形鋼管が使用されることもある。箱形以外の断面形状をする場合、張出部材4には(円形)鋼管等が、または複数の形鋼が組み合わせられた鋼材等使用されることもある。
【0032】
鉛直プレート41、41は主に上部構造10の鉛直荷重によるせん断力を、水平プレート42、42は主に上部構造10の鉛直荷重による曲げモーメントを負担するが、互いに接合されて閉鎖断面形状の張出部材4を構成することで、上部構造10に橋軸方向に直交等、交差する方向の水平力が作用したときの、張出部材4の軸の回りに生じる捩りモーメントに抵抗する。
【0033】
鉛直プレート41、41と水平プレート42、42のベースプレート2側の端面は共に、ベースプレート2の表面に溶接等により接合され、互いに直交等、交差する鉛直プレート41、41と水平プレート42、42も溶接等により互いに接合される。図面では上部構造10としての水管101を上方から押さえ込むように保持しながら、張出部材4に支持させる保持材8の脚部81が軸方向の幅方向に並列して形成されることに対応し、張出部材4の幅である水平プレート42の幅を張出部材4の高さである鉛直プレート41の幅より大きくしているが、水平プレート42と鉛直プレート41の幅は任意である。「溶接等により」とは、各プレート41、42がベースプレート2に鋼材とボルトを介して接合される場合がある意味である。
【0034】
張出部材4の先端側である、対向する下部構造9側の端部が開放した状態のままでは、張出部材4に作用する捩りモーメントを受けたときに、開放した先端側の拘束がないために捩り変形を起こす可能性がある。このことから、開放した先端部分の捩り変形を生じにくくする目的で、張出部材4の先端側の端面に図1図2に示すように閉塞板5を張出部材4の軸方向に重ねるか、先端側の端部の内周面に密着(内接)するように配置し、接合することにより張出部材4の端面、または端部が閉塞させられる。閉塞板5は開放している場合の張出部材4の先端側の端面、または端部を閉塞することで、鉛直プレート41と水平プレート42の端部を変形に対して拘束し、張出部材4の先端部分の捩り剛性を高める働きをする。
【0035】
ベースプレート2には張出部材4のベースプレート2側の端面全体が突き当たった状態で張出部材4が接合されればよい。張出部材4はベースプレート2側の端面から先端側の端面までの全長に亘って閉鎖断面形状をするから、ベースプレート2は張出部材4のベースプレート2側の端面を閉塞しながら、張出部材4に接合されることになる。但し、張出部材4が閉鎖断面形状であるから、ベースプレート2の面積が張出部材4の根本側(ベースプレート2側)の端面の断面積と同等程度であれば、張出部材4がベースプレート2に接合された(一体化した)状態では定着材3を用いてベースプレート2を下部構造9に接合することができない。
【0036】
この関係で、ベースプレート2を下部構造9に先行して接合した後にベースプレート2に張出部材4を接合する場合以外、ベースプレート2は図1図3図4に示すように張出部材4の根本側の、軸に直交する方向の断面積より大きい面積が与えられ、ベースプレート2の、張出部材4の外周面から張り出した帯状部分にアンカーボルト等の定着材3が配置される。
【0037】
図面では張出部材4が2枚の鉛直プレート41と2枚の水平プレート42から組み立てられ、軸方向の全長に亘って一様断面に形成されていることから、ベースプレート2は張出部材4の外周面からベースプレート2の縁(外周)までに少なくとも定着材3を挿通させることができるだけの距離(突出幅)を確保できる面積を持つ。このベースプレート2の、張出部材4の外周面から突出し、張出部材4を周回する帯状部分に、複数本の定着材3が張出部材4に作用する捩りモーメントを分担できるよう、張出部材4を周回して定着材3が配置される。ベースプレート2の、張出部材4を周回する帯状部分の幅が、定着材3を挿通させるための挿通孔を形成可能な大きさを持つ。
【0038】
張出部材4に作用する捩りモーメントは張出部材4の外周に位置する複数本の定着材3を張出部材4の軸の回りに回転させようとするから、定着材3は捩りモーメントに対しては軸に直交する方向のせん断力を負担することにより抵抗する。
【0039】
ベースプレート2の、定着材3の配置位置以外の部分には、張出部材4が上部構造の鉛直荷重を受けることにより張出部材4とベースプレート2に作用する曲げモーメントによる曲げ変形に対する補剛のために、必要によりリブプレート21が突設される。
【0040】
張出部材4の上には上部構造10の軸方向の端部が直接、もしくは間接的に載り、張出部材4に支持されるため、図面では上部構造10を直接、もしくは間接的に受けるための支持部材6を張出部材4の上面に載置し、溶接等により固定している。上記のように図面では水管101を保持する保持材8の脚部81を受ける必要から、支持部材6に、上部構造10の幅方向に2本の脚部81、81を支持可能な幅を持たせている。張出部材4が図示するように箱形断面の場合、支持部材6は上部の水平プレート42の上面に重なって接合されるため、支持部材6の安定性を確保し易い。「上部構造10の幅方向」は主に橋軸直角方向であるが、橋軸に垂直な方向でないこともある。
【0041】
支持部材6の形態も任意であるが、図面では図1図2に示すように張出部材4の上側の水平プレート42上に水平2方向を向いて配置され、水平プレート42に接合等により一体化する鉛直プレート61とその上に固定され、後述の受け部材7を支持する水平プレート62から支持部材6を組み立てている。図面ではまた、張出部材4を構成する一部の鉛直プレート41を支持部材6側へ延長(連続)させ、その鉛直プレート41を支持部材6の鉛直プレート61として兼用している。
【0042】
支持部材6の上には保持材8の脚部81を直接、受ける受け部材7、7が上部構造10の幅方向に並列して配置され、固定される。図面では図1図2に示すように水平プレート62の上に受け部材7を配置し、受け部材7の内、後述の固定材72を水平プレート62にボルトにより接合している。
【0043】
受け部材7は保持材8が上部構造10としての水管101を保持している状態で、水管101に生じる熱による軸方向の伸縮に追従可能な構造をしている。具体的には受け部材7は図5図6に示すように例えば保持材8の脚部81に接続、または接合(固定)される接続材71と、支持部材6に固定されながら、接続材71を水管101の軸方向に相対移動自在に支持する固定材72から構成される。
【0044】
この場合、接続材71の底面(下面)が固定材72の上面に摩擦係数の小さい四フッ化エチレン樹脂、MCナイロン等の低摩擦材73を介して接触することにより、互いの接触面には水管101の鉛直荷重が圧力として作用しながらも、接続材71が固定材72に対して相対移動可能になっている。低摩擦材73は図5−(a)に示すように接続材71の底面と固定材72の上面の少なくともいずれか一方に貼着、埋設等により露出した状態で固定される。
【0045】
接続材71の底面には図1図2に示すように接続材71の、固定材72に対する相対移動時に固定材72に沿って移動するためのガイドとなる案内部71aが一体化し、固定材72側へ張り出しており、図6に示すように案内部71aが固定材72に厚さ方向に貫通して形成された長孔状の案内溝72aを挿通する。案内溝72aは固定材72を厚さ方向に貫通するため、底面側は開放し、案内溝72aは支持部材6の上面には接触しない。
【0046】
案内部71aが案内溝72aを挿通し、接続材71の底面が固定材72の上面に接触したとき、案内部71aの底面は支持部材6の上面には接触せずに浮いた状態になる。案内部71aの下部には接続材71が固定材72から浮き上がろうとするときに案内溝72aから抜け出さないよう、案内溝72aの周囲に底面側から係止し得る係止部71bが形成される。
【符号の説明】
【0047】
1……支持装置、
2……ベースプレート、21……リブプレート、3……定着材、
4……張出部材、41……鉛直プレート、42……水平プレート、
5……閉塞板、
6……支持部材、61……鉛直プレート、62……水平プレート、
7……受け部材、71……接続材、71a……案内部、71b……係止部、72……固定材、72a……案内溝、73……低摩擦材、
8……保持材、81……脚部、
9……下部構造、91……側面、92……削孔、
10……上部構造、101……水管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6