【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明の橋梁上部構造の支持装置は、橋梁の下部構造の、対向する下部構造側を向いた側面から橋軸方向へ張り出し、上部構造の橋軸方向の端部を支持する支持装置であり、
前記下部構造の前記側面に重なって接合されるベースプレートと、このベースプレートの表面に突設され、前記対向する下部構造側へ張り出し、前記上部構造を直接、もしくは間接的に支持する張出部材とを備え、
前記張出部材は軸方向の全長に亘り、閉鎖断面をなし
、
前記張出部材の、前記対向する下部構造側の端面、もしくは端部に閉塞板が接合され、この下部構造側の端面、もしくは端部が閉塞されていることを構成要件とする。
【0009】
「下部構造の、対向する下部構造側を向いた側面」とは、
図1に示すように下部構造9の側面の内、橋軸方向に対向する(隣接する)下部構造9側を向いた側面91を指す。下部構造9には橋脚と橋台が含まれる。下部構造9の側面91は鉛直面をなす場合と鉛直面に対して傾斜する場合がある。上部構造10の橋軸方向の端部が下部構造9の側面91から張り出した張出部材3に支持されれば、上部構造10の形態(種類)は問われない。図面では上部構造10が水管橋の水管101である場合の例を示しているが、上部構造10は橋桁の場合もある。
【0010】
「張出部材が軸方向の全長に亘り、閉鎖断面をなしている」とは、張出部材4の軸方向全長の、軸(材軸)に直交する方向の断面が閉鎖した形状をしていることを言い、張出部材4の軸方向各部の断面形状は問われない。張出部材4の軸方向は主に橋軸方向である。
【0011】
張出部材4の断面形状は上部構造10を直接、支持する上では図示するような箱形(方形)断面であることが適切であるが、必ずしもその必要はなく、張出部材4の上部に、上部構造10を受ける支持部材6が固定されることもあるため(請求項
3)、円形、もしくは楕円、または多角形断面であることもある。張出部材4の軸に直交する方向の断面積が軸方向に一定である必要もなく、平等強さの梁のようにベースプレート2側から先端側へかけて断面積が次第に減少する形状に形成されることもある。
【0012】
張出部材4が軸方向の全長に亘り、閉鎖断面形状であることで、軸の回りの捩りモーメントに対する捩り剛性が開放断面形状の場合より高まるため、張出部材4の上に載る上部構造10の端部に上部構造10の軸方向(橋軸方向)に直交等、交差する方向に水平力が作用し、張出部材4に軸の回りに捩りモーメントが作用したときの抵抗力が開放断面形状の場合より上昇する。
【0013】
只、張出部材4の先端部である対向する下部構造9側の端面が開放し、閉じていない場合には、端面が捩り変形に対して拘束されていないために、端面の捩り剛性が低い状態にあり、張出部材4が軸回りに捩りモーメントを受けたときに端面付近が捩り変形を生じ易い。
【0014】
そこで、張出部材4の、対向する下部構造9側の端面に閉塞板5を重ねるか、端部の内周側に閉塞板5を配置して接合し、張出部材4の端面、または端部を閉塞させれば(請求項
1)、張出部材4端面の、捩り変形に対する拘束効果が高まる。この結果、張出部材4端面の捩り剛性を開放している場合より上昇させることができるため、捩りモーメントによる張出部材4の端面付近の捩り変形を抑制することが可能になる。閉塞板5は主に溶接により張出部材4の端面、または端部に一体化する。
【0015】
張出部材4が捩りモーメントを受けたとき、捩りモーメントは張出部材4が突設されたベースプレート2を下部構造9に固定するアンカーボルトやアンカー等の定着材3が負担し、下部構造9に伝達する。定着材3は張出部材4に作用する捩りモーメントに対し、軸に直交する方向のせん断力を負担することにより抵抗する。定着材3は張出部材4の軸の周囲に分散して配置されることで、複数本の定着材3がせん断力を分担しながら、捩りモーメントを下部構造9に伝達する。
【0016】
このとき、張出部材4の軸に関して点対称の位置にある2本の定着材3、3が対になるようにせん断力を負担することにより捩りモーメントに抵抗するが、この抵抗力は張出部材4の軸からの距離(腕の長さ)が大きい程、大きいため、張出部材4の軸から定着材3の軸までの距離をより大きく確保することが有効である。
【0017】
そこで、ベースプレート2の面積を張出部材4の軸に直交する方向の断面積より大きくし、ベースプレート2を下部構造9の側面91に固定する定着材3を張出部材4の外周側に配置すれば(請求項
2)、張出部材4の軸から定着材3の軸までの距離をより拡大することが可能になる。「ベースプレート2の面積」は張出部材4の軸方向にベースプレート2を見たときの面積を言う。張出部材4の周囲には2本以上の定着材3が分散して配置されるが、張出部材4の軸に関して対称位置の2本の定着材3、3が対になるように抵抗する。
【0018】
この場合、ベースプレート2の面積が張出部材4の断面積より大きいことで、
図3に示すようにベースプレート2の面積が張出部材4の断面積内に納まる場合より定着材3の設置本数を増やすことができるため、捩りモーメントに対する定着材3全体での抵抗力を増大させることが可能になる。このことは、張出部材4に作用する軸回りの捩りモーメントが一定であれば、ベースプレート2の面積が張出部材4の断面積内に納まる場合との対比では1本当たりの定着材3の捩りモーメントに対する抵抗力としてのせん断力の負担が低下することでもあるため、定着材3のせん断抵抗力を決める断面積を小さくする、すなわち定着材3の寸法(サイズ)を小さく抑えることも可能になる。
【0019】
張出部材が特許文献1〜3のように2方向を向いたプレートからなり、開放断面である場合、ベースプレートは張出部材の下部構造側の端面を覆う面積を持てばよいことから、ベースプレートの面積を張出部材の断面積より大きくしようとする理由付けがない。結果的にアンカーボルトは張出部材の断面内に配置されることになるため、張出部材の軸からアンカーボルトの軸までの距離は大きくならない。
【0020】
これに対し、本発明では張出部材4が閉鎖断面であることから、ベースプレート2の面積を張出部材4の断面積以下にすることは、ベースプレート2に張出部材4を接合(固定)した状態では定着材3を下部構造9に挿入することができないことを意味するため、張出部材4が閉鎖断面であることの形態上の理由からも、ベースプレート2の面積を張出部材4の断面積より大きくすることが合理的である。
【0021】
この形態上の理由から、本発明ではベースプレート2の面積を張出部材4の断面積より大きくできる自由さがあり、ベースプレート2の面積を張出部材4の断面積より大きくすることで、定着材3を張出部材4の断面の外側に配置することができる。この結果、アンカーボルトが張出部材4の断面内に配置される場合より張出部材4の軸から定着材3の軸までの距離(腕の長さ)をより大きく確保することができ、捩りモーメントに抵抗する腕の長さが大きくなるため、捩りモーメントに対する抵抗力が大きくなる。
【0022】
張出部材4の上側には上部構造10の端部が直接、もしくは間接的に載置され、支持されるが、張出部材4が箱形断面でないような場合、または箱形断面である場合も含め、張出部材4の上部には
図1に示すように上部構造10を受けるための支持部材6が固定されることが適切である(請求項
3)。上部構造10が上記のように図示するような水管橋の水管101である場合、上部構造10の橋軸方向の端部は水管101の端部である。
【0023】
この場合、張出部材4の上部に支持部材6が固定されることで、張出部材4の断面形状、または張出部材4上部の形状に無関係に上部構造10の支持に適した形状の支持部材6を配置することができる。この結果、上部構造10の支持のために張出部材4の断面形状が制約を受ける必要がなくなるため、上部構造10に作用する水平力に起因し、張出部材4に生じる捩りモーメントに抵抗することに適した、あるいは有利な断面形状に張出部材4を形成することが可能になる。この場合、張出部材4は必ずしも箱形断面形状に形成される必要がないため、上記したように箱形以外の断面形状にも形成し易くなる。