【実施例】
【0048】
以下、本発明に関し、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
<試験用コークスの作製>
(製造例1:ベース配合A)
複数種の石炭を所定の割合で配合した。配合する際には、粉砕粒度が3mm以下のものが含まれる割合が約80%となるように、ジョークラッシャー、コーヒーミルあるいはハンマーミルで粉砕した上で、配合した。なお、製造例1では、低収縮炭材としての粉コークスを配合していない(粉コークスの配合量をゼロとした)。
【0050】
配合炭を作成後、水分を7.5%±0.2%に調整した。
【0051】
次に、水分調整した試料をL:235mm×W:300mm×H:235mmの缶容器に充填密度735dry−kg/m
3で充填した。
【0052】
次に、乾留温度1050℃で約19時間乾留して試験用コークスを得た。
【0053】
(製造例2)
製造例1の配合から、石炭の含有量を3%(配合炭全体を100%としたときの3%)減らし、代わりに、粉コークスAを3%加えた。つまり、製造例2では、製造例1の配合炭全体のうちの3%の炭を粉コークスAに振り替えた配合とした。それ以外は、製造例1と同様にして試験用コークスを得た。なお、粉コークスAは粒径0.25mm未満であり、平均粒径が、0.125mmである。
【0054】
(製造例3)
製造例1の配合から、石炭の含有量を3%(配合炭全体を100%としたときの3%)減らし、代わりに、粉コークスBを3%加えた。つまり、製造例3では、製造例1の配合炭全体のうちの3%の炭を粉コークスBに振り替えた配合とした。それ以外は、製造例1と同様にして試験用コークスを得た。なお、粉コークスBは、粒径0.25mm以上0.50mm未満であり、平均粒径が、0.375mmである。
【0055】
(製造例4)
製造例1の配合から、石炭の含有量を3%(配合炭全体を100%としたときの3%)減らし、代わりに、粉コークスCを3%加えた。つまり、製造例4では、製造例1の配合炭全体のうちの3%の炭を粉コークスCに振り替えた配合とした。それ以外は、製造例1と同様にして試験用コークスを得た。なお、粉コークスCは、粒径0.50mm以上1.00mm未満であり、平均粒径が、0.75mmである。
【0056】
(製造例5)
製造例1の配合から、石炭の含有量を3%(配合炭全体を100%としたときの3%)減らし、代わりに、粉コークスDを3%加えた。つまり、製造例5では、製造例1の配合炭全体のうちの3%の炭を粉コークスDに振り替えた配合とした。それ以外は、製造例1と同様にして試験用コークスを得た。なお、粉コークスDは、粒径1.00mm以上1.50mm未満であり、平均粒径が、1.25mmである。
【0057】
(製造例6)
製造例1の配合から、石炭の含有量を3%(配合炭全体を100%としたときの3%)減らし、代わりに、粉コークスEを3%加えた。つまり、製造例6では、製造例1の配合炭全体のうちの3%の炭を粉コークスEに振り替えた配合とした。それ以外は、製造例1と同様にして試験用コークスを得た。なお、粉コークスEは、粒径1.50mm以上2.00mm未満であり、平均粒径が、1.75mmである。
【0058】
(ベース配合B)
複数種の石炭を配合炭性状が製造例1相当となるように配合した。
【0059】
(製造例7)
ベース配合Bから、石炭の含有量を1%(配合炭全体を100%としたときの1%)減らし、代わりに、粉コークスAを1%加えた。それ以外は、製造例1と同様にして試験用コークスを得た。
【0060】
(製造例8)
ベース配合Bから、石炭の含有量を3%(配合炭全体を100%としたときの3%)減らし、代わりに、粉コークスAを3%加えた。それ以外は、製造例1と同様にして試験用コークスを得た。
【0061】
(製造例9)
ベース配合Bから、石炭の含有量を6%(配合炭全体を100%としたときの6%)減らし、代わりに、粉コークスAを6%加えた。それ以外は、製造例1と同様にして試験用コークスを得た。
【0062】
(製造例10)
ベース配合Bから、石炭の含有量を1%(配合炭全体を100%としたときの1%)減らし、代わりに、粉コークスCを1%加えた。それ以外は、製造例1と同様にして試験用コークスを得た。
【0063】
(製造例11)
ベース配合Bから、石炭の含有量を3%(配合炭全体を100%としたときの3%)減らし、代わりに、粉コークスCを3%加えた。それ以外は、製造例1と同様にして試験用コークスを得た。
【0064】
製造例1〜製造例11の配合について、表1にまとめた。
【0065】
【表1】
【0066】
<収縮率の測定>
下記条件にて、製造例1の試験用コークスの収縮率を測定したところ、12.8%であった。また、下記条件にて、粉コーコスA〜Eの収縮率を測定したところ、いずれも、0.0%であった。
[収縮率測定条件]
装置:高温ジラトメーター(JIS M 8801膨張性試験方法(ジラトメータ法)準拠)
到達温度:1000℃
昇温速度:3℃/min
試料量:5g
試料高さ:100mm
試料粒径:0.25mm未満
【0067】
<係数αの算出>
まず、作製したコークスの初期粒径Dp
0を規定した(手順(b))。製造例1では、初期粒径Dp
0は、300mmであった。
【0068】
次に、前記試験用コークスを高さ2mのところから2回落下させた。その後、ドラム(内径1.5m×胴長1.5m)に入れ、15rpmで2分間回転させた。以上により、試験用コークスを粉砕した。
【0069】
粉砕後のコークスについて、篩目50mm、38mm、25mm、及び、15mmの篩で篩分けをし、各篩目Dp(mm)の篩上に残った重量%D(Dp)を得た(手順(c))。
【0070】
次に、上記手順(b)で得られた初期粒径Dp
0と、上記(c)で得られたDp及びD(Dp)とから、Gaudin−Meloy−Harris粒度分布式を用いて係数αを求めた。
具体的に、まず、式(1)を変形し、以下のようにした。
ln(1−D(Dp))=γln(1−(Dp/Dp
0)
α)
そして、「ln(1−D(Dp))」をx軸、「ln(1−(Dp/Dp
0)
α)」をy軸とし、初期粒径Dp
0、Dp、D(Dp)を代入した値をxy座標上にプロット(4点)した際に、最小二乗法により得られる近似直線が、原点を通る直線で最も相関係数が高くなるように、係数αを得た。結果を表2に示す。なお、参考のため、製造例1についてのみ、係数αを求めるためのグラフを
図1に示す。
【0071】
<試験用コークスの粒度分布>
上記粉砕後の粒度分布を、篩を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0072】
<試験用コークスの平均粒径の算出>
表2に示した各粒度分布の代表粒度と割合から加重平均により算出した。具体的には、下記のようにして算出した。
100mm以上のフラクションの代表粒度を112.5mm、割合をA%、
75mm以上100mm未満のフラクションの代表粒度を87.5mm、割合をB%、
50mm以上75mm未満のフラクションの代表粒度を62.5mm、割合をC%、
38mm以上50mm未満のフラクションの代表粒度を44.0mm、割合をD%、
25mm以上38mm未満のフラクションの代表粒度を31.5mm、割合をE%、
15mm以上25mm未満のフラクションの代表粒度を20.0mm、割合をF%、
15mm未満のフラクションの代表粒度を7.5mmとし、割合をG%とした。
(平均粒径(mm))=(112.5×A+87.5×B+62.5×C+44.0×D+31.5×E+20.0×F+7.5×G)/100
結果を表2に示す。
【0073】
<コークス強度DIの測定>
得られた試験用コークスをシャッター試験2回実施、ドラム試験機で30回転後、ドラム試験機で150回転させ、DI
15015を測定した。なお、DI
15015は、JIS K 2151で規定されたドラム試験機による150回転後の15mm篩上の割合である。結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
<考察1:製造例1〜製造例6について>
図2は、製造例1〜製造例6について、係数αと添加した粉コークスの平均粒径との関係を示すグラフである。
図3は、製造例1〜製造例6について、係数αとコークス強度DIとの関係を示すグラフである。
図4は、製造例1〜製造例6について、係数αと得られるコークスの平均粒径との関係を示すグラフである。
図2〜
図4は、表2の値をもとに作成した。
図2より、低収縮炭材としての粉コークスの添加量が同じである場合、添加する粉コークスの平均粒径が大きくなるにつれて、係数αが低下する(割れ方の異方性が大きくなる)傾向にあることが分かる。
また、
図3より、係数αが小さくなるにつれて、コークス強度DIが低下する傾向にあることが分かる。ただし、係数αが2〜3の範囲内にある場合には、ベース配合(製造例1:粉コークスの配合ナシ)に比較してコークス強度DIの低下の程度が少ないことが分かる。
また、
図4より、係数αが小さくなるについて、得られるコークスの平均粒径が大きくなる傾向にあることが分かる。特に、係数αが2前後に至るまでは、係数αが小さくなるにつれて、得られるコークスの平均粒径が大きくなる傾向にあることが分かる。ただし、係数αが2よりも小さい範囲においては、α値に関わらず、得られるコークスの平均粒径には、大きな変化は見られない。なお、粉コークスの平均粒径が一定よりも大きい場合には、コークスの平均粒径の拡大に寄与しなくなることも分かる(例えば、製造例6)。
以上より、製造例1〜6によれば、粉コークスを添加したコークスは、添加しないコークス比較して、係数αが小さくなることが分かる。また、係数αを特に、2〜3の範囲内(より好ましくは、2.0〜2.5の範囲内)とすれば、コークス強度の低下が抑制される(
図3参照)とともに、得られるコークスの平均粒径の拡大効果も得られる(
図4参照)ことが分かる。
【0076】
<考察2:製造例7〜製造例11について>
図5は、製造例7〜製造例11について、係数αと添加した粉コークスの割合との関係を示すグラフである。
図6は、製造例7〜製造例11について、係数αとコークス強度DIとの関係を示すグラフである。
図7は、製造例7〜製造例11について、係数αと得られるコークスの平均粒径との関係を示すグラフである。
図5〜
図7は、表2の値をもとに作成した。なお、
図5〜
図7には、比較のため、製造例1についても合わせてプロットしている。
図5より、低収縮炭材としての粉コークスが同じ性状である場合(粒度分布、及び、平均粒径が同じである場合)、添加する粉コークスの量が多くなるにつれて、係数αが低下する(割れ方の異方性が大きくなる)傾向にあることが分かる。
また、
図6より、係数αが小さくなるにつれて、コークス強度DIが低下する傾向にあることが分かる。ただし、係数αが2〜3の範囲内にある場合には、ベース配合B(製造例7)に比較してコークス強度DIの低下の程度が少ないことが分かる。
また、
図7より、係数αが小さくなるについて、得られるコークスの平均粒径が大きくなる傾向にあることが分かる。
以上より、製造例7〜11によれば、粉コークスを多く添加したコークスは、添加量が少ないコークスと比較して、係数αが小さくなることが分かる。また、係数αを特に、2〜3の範囲内(より好ましくは、2.0〜2.5の範囲内)とすれば、コークス強度の低下が抑制される(
図6参照)とともに、得られるコークスの平均粒径の拡大効果も得られる(
図7参照)ことが分かる。
【0077】
[係数αと割れ方異方性との相関検証]
<亀裂確認用コークスの作製>
(製造例12)
複数種の石炭を所定の割合で配合した。配合する際には、粉砕粒度が3mm以下のものが含まれる割合が約80%となるように、ジョークラッシャーあるいはコーヒーミルで粉砕した上で、配合した。なお、製造例12では、低収縮炭材としての粉コークスを配合していない(粉コークスの配合量をゼロとした)。
【0078】
配合炭を作成後、水分を7.5%±0.2%に調整した。
【0079】
次に、水分調整した試料をL:1.17m×W:0.41m×H:0.80mの可動壁炉に充填密度735dry−kg/m
3で充填した。
【0080】
次に、乾留温度830℃で8時間、920℃で6時間、960℃で2時間乾留した後、1010℃で保持し、最終的に炭芯温度が950℃に到達してから1.5時間乾留して亀裂確認用コークスを得た。
【0081】
(製造例13)
製造例12の配合から、石炭の含有量を1%(配合炭全体を100%としたときの1%)減らし、代わりに、粉コークスAを1%加えた。つまり、製造例13では、製造例12の配合炭全体のうちの1%の炭を粉コークスAに振り替えた配合とした。それ以外は、製造例12と同様にして亀裂確認用コークスを得た。
【0082】
製造例12〜製造例13の配合について、表3にまとめた。
【0083】
【表3】
【0084】
<亀裂数の測定>
図8は、亀裂確認用コークスを模式的に示した図である。亀裂確認用コークスは、可動壁炉から取り出した後の粉砕処理を行う前の状態である。
図8に示すように、亀裂確認用コークスには、縦亀裂、及び、横亀裂が存在する。縦亀裂は、炉幅方向に延びる亀裂をいい、横亀裂は、炉高方向に延びる亀裂をいう。製造例12、製造例13にて得られた亀裂確認用コークスについて、縦亀裂の数、及び、横亀裂の数を数えた。結果を表4に示す。また、横亀裂数に対する縦亀裂数の比率[(縦亀裂数)/(横亀裂数)]についても合わせて表4に示した。なお、縦亀裂に属するか、横亀裂に属するかは、亀裂確認用コークス塊の一辺に対する亀裂の角度を測り、45°以上であるか否かによりいずれに属するかを決定した。
【0085】
<係数αの算出>
初期粒径Dp
0が410mmであったこと、及び、焼成語のコークスのうち、端部と上部を除く中心部分のコークスを用いたこと以外は、製造例1〜11と同様にして係数αを算出した。結果を表4に示す。
【0086】
<亀裂測定用コークスの粒度分布>
試験用コークス(製造例1〜製造例11)と同様の方法にて、粒度分布を測定した。結果を表4に示す。
【0087】
<亀裂測定用コークスの平均粒径の算出>
表4に示した各粒度分布の代表粒度と割合から加重平均により算出した。具体的には、試験用コークス(製造例1〜製造例11)と同様の方法にて算出した。
【0088】
【表4】
【0089】
<検証結果>
表4より、粉コークスを添加すると、横亀裂に対する縦亀裂の割合が増加している。これにより、粉コークスを添加すると、亀裂の方向性に偏りが生じることがわかる。また、係数αは、亀裂測定用コークスにおいても粉コークスを添加すると小さくなった。以上より、係数αが小さくなると、亀裂の方向性に偏りが生じること、すなわち、割れ方の異方性が大きくなることが確認できた。
また、表4より、亀裂測定用コークスにおいても係数αが小さくなると、得られるコークスの平均粒径が拡大することも確認できた。