(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、樹脂摺動部の潤滑において、高い潤滑性、特には低摩擦係数を有し、樹脂の耐摩耗性をさらに向上させた樹脂用潤滑剤組成物、又、これを用いた潤滑方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意、研究を進めた結果、樹脂の潤滑において、一つの化合物中に、特定の極性基、すなわち、アミド結合とカルボキシル基の両方を併せ持つ化合物が、著しく摩擦係数を低減することを見出した。
本発明は、かかる知見に基づきなされたもので、次のものからなる。
【0007】
[1]潤滑油基油及びアミド結合とカルボキシル基を同一の化合物内に含むカルボン酸誘導体とを含有する樹脂用潤滑剤組成物。
[2]カルボン酸誘導体が、次の一般式(1)又は一般式(2)で表される上記[1]に記載の樹脂用潤滑剤組成物。
R
1-(C=O)-(N-R
2)-A-(C=O)-OH ・・(1)
R
1-(N-R
2)-(C=O)-A-(C=O)-OH ・・(2)
ここで、R
1は一価の炭化水素基であり、R
2は水素または一価の炭化水素基であり、又Aは二価の炭化水素基であり、これらの炭化水素基は含酸素基を含んでもよい。
[3]一般式(1)又は一般式(2)において、R
1が炭素数4〜24のアルケニル基であり、R
2が水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、又Aが炭素数1〜8のアルキレン基である上記[2]に記載の樹脂用潤滑剤組成物。
[4]一般式(1)又は一般式(2)において、R
1が炭素数4〜24のエステル結合を含む炭化水素基である上記[2]に記載の樹脂用潤滑剤組成物。
[5]ポリアミド樹脂及びポリオキシメチレン樹脂の少なくとも一方を含む樹脂の潤滑に用いられる上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の樹脂用潤滑剤組成物。
[6]潤滑油基油が炭化水素油である上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の樹脂用潤滑剤組成物。
[7]さらに増ちょう剤を含有し、グリースである上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の樹脂用潤滑剤組成物。
[8]カルボン酸誘導体の合計の含有量が、潤滑剤組成物全量基準で0.02〜20質量%である上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の樹脂用潤滑剤組成物。
[9]潤滑油基油およびアミド結合とカルボキシル基を同一の化合物内に含むカルボン酸誘導体とを含有する潤滑剤組成物を、樹脂の表面に介在させる樹脂の潤滑方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の潤滑剤組成物は、樹脂同士或いは樹脂と金属やセラミックなど樹脂以外の摺動部材との潤滑において、長期間、安定的に摩擦係数を低減することが可能となり、樹脂の耐摩耗性が向上し、さらには、耐スティックスリップ性にも優れ、摺動部材である樹脂において、長期間にわたり高い信頼性が可能となるという格別の効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔潤滑油基油〕
本発明の潤滑油基油としては、鉱油系または合成系のいずれも用いることができるが、40℃における動粘度が1〜1000mm
2/sのものが好ましく、20〜300mm
2/sがより好ましい。優れた潤滑性を有する潤滑剤を調製するためには、粘度指数が90以上、特には95〜250、流動点が−10℃以下、特には−15〜−70℃、引火点が150℃以上の物性を有するものが好ましい。
また、潤滑剤がグリースの場合には、この潤滑油基油は、15℃における密度が0.75〜0.95g/cm
3のものが、固体潤滑剤の分散性が高いためより好ましい。
【0010】
鉱油系潤滑油基油としては、原油を常圧蒸留し、あるいはさらに減圧蒸留して得られる留出油を各種の精製プロセスで精製した潤滑油留分が挙げられる。精製プロセスは、水素化精製、溶剤抽出、溶剤脱ろう、水素化脱ろう、硫酸洗浄、白土処理などであり、これらを適宜の順序で組み合わせて処理することにより、本発明の潤滑油基油を得ることができる。異なる原油あるいは留出油を、異なるプロセスの組合せ、順序により得られた、性状の異なる複数の精製油の混合物も有用である。いずれの方法によっても、得られる基油の性状が、前述した物性を満足するように調整することによって好ましく使用することができる。
【0011】
合成系潤滑油基油としては、加水分解安定性に優れる基材を用いることが好ましく、例えばポリ-α-オレフィン、ポリブテンや2種以上の各種オレフィンの共重合体などのポリオレフィン、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどが挙げられる。なかでも、ポリ-α-オレフィンが、入手性、コスト面、粘度特性、酸化安定性、システム部材との適合性の面で好ましい。ポリ-α-オレフィンは、1-ドデセンや1-デセンなどの重合物がコスト面でさらに好ましい。
本発明で用いる潤滑油基油としては、鉱油やポリ-α-オレフィンなどの炭化水素油が好ましい。
【0012】
潤滑油基油は、例示した合成系を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。さらに、前記鉱油系と混合しても使用することもできる。合成系潤滑油基油を含めて、複数の潤滑油基油の混合物を使用する場合、該基油混合物が上記物性を満足するものであれば、混合前の個々の基油がかかる物性の範囲を外れていても使用することができる。したがって、個々の合成油系基油は、上記物性を必ずしも満足する必要はないが、上記物性の範囲内であることが好ましい。
この潤滑油基油の含有量は、潤滑油組成物では、添加剤を除く残部であり、グリース組成物においては、潤滑剤組成物全量基準で、50〜95質量%が好ましく、60〜90質量%とすることがより好ましい。
【0013】
〔カルボン酸誘導体〕
本発明の配合成分となるカルボン酸誘導体は、アミド結合とカルボキシル基を同一の化合物内に含む化合物である。この種の化合物は、本明細書の実施例、比較例及び本発明者らの長年の経験と知見から、アミド結合とカルボキシル基の2つの極性サイトが樹脂表面に水素結合によって強固に化学吸着し、油性効果を向上させて、摩擦係数を低減させているものと推測でき、アミド結合とカルボキシル基を同一の化合物内に含む化合物であれば、何ら支障なく、本発明の効果を発揮できる。
好ましい具体的な化合物としては、次の一般式(1)又は一般式(2)で示すものを挙げることができる。
R
1-(C=O)-(N-R
2)-A-(C=O)-OH ・・(1)
R
1-(N-R
2)-(C=O)-A-(C=O)-OH ・・(2)
なお、上記一般式(1)及び(2)中、R
1は一価の炭化水素基であり、R
2は水素または一価の炭化水素基であり、又Aは二価の炭化水素基であり、これらの炭化水素基は含酸素基を含んでもよい。
【0014】
一般式(1)又は一般式(2)において、R
1が炭素数4〜24のアルケニル基であり、R
2が水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、又Aが炭素数1〜8のアルキレン基であるものがより好ましく、特には、R
1が炭素数12〜20のアルケニル基であり、R
2が水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、又Aが炭素数1〜4のアルキレン基であるものが好ましい。具体的な化合物としては、N-オレイルザルコシン、N-メチル-オレイルザルコシン(R
1:C17、R
2:C1、A:C1)、ステアリルザルコシン(R
1:C17、R
2:H、A:C1)、N-メチル-ステアリルザルコシン(R
1:C17、R
2:C1、A:C1)、N-オクチル-オレイルザルコシン(R
1:C17、R
2:C8、A:C1)、N-ラウリル-オレイルザルコシン(R
1:C17、R
2:C12、A:C1)、N-ラウリル-ステアリルザルコシン(R
1:C17、R
2:C12、A:C1)などが挙げられる。
又は一般式(1)又は一般式(2)において、R
1が炭素数4〜24のエステル結合(炭素数1〜24を更に含む)を含む炭化水素基であることが好ましく、特には、オレイン酸メチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸オレイル、コハク酸ブチル、コハク酸オクチル、コハク酸オレイル、アゼライン酸オクチル、セバシン酸オクチル、セバシン酸オレイル、フタル酸メチル、フタル酸ブチル、フタル酸オクチル、フタル酸オレイル、テレフタル酸オレイルなどから水素1原子を除いてできる基であることがより好ましい。
【0015】
本発明のカルボン酸誘導体の配合量は、潤滑剤組成物全量基準で0.02〜20質量%、特には0.05〜10質量%、さらには0.1〜5質量%が好ましい。
【0016】
〔増ちょう剤〕
本発明の潤滑剤組成物がグリースである場合の増ちょう剤としては、金属石けん、複合金属石けん等の石けん系増ちょう剤、ベントン、シリカゲル、ウレア系増ちょう剤(ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物等)の非石けん系増ちょう剤などのあらゆる増ちょう剤が使用可能である。これらの中でも、潤滑面の損傷防止効果の点から、石けん系増ちょう剤、ウレア系増ちょう剤を好ましく用いることができる。
【0017】
石けん系増ちょう剤としては、例えば、ナトリウム石けん、カルシウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム石けん等を挙げることができ、これらの中でも、耐水性や熱安定性の点から、リチウム石けんが好ましい。リチウム石けんとしては、例えば、リチウムステアレートやリチウム-12-ヒドロキシステアレート等を挙げることができる。石けんを構成する脂肪酸としては例えば、炭素数6〜24の、飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸もしくはヒドロキシ脂肪酸またはこれらの混合物を用いることができる。
【0018】
ウレア系増ちょう剤としては、例えば、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物等を挙げることができる。より具体的には、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物(ジウレア化合物、トリウレア化合物およびテトラウレア化合物は除く)、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物等を例示できる。これらの中でも、ジウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物から選ばれる1種以上のウレア系増ちょう剤を好ましく用いることができる。ウレア化合物の好ましい例は下記一般式(2)で表すことができる。下記一般式(3)で表される化合物群は、ジウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、及びジウレタン化合物を包含する。
【0019】
B
1-(C=O)(NH)-R
3-(NH)(C=O)-B
2 ・・・(3)
【0020】
一般式(3)中、R
3は2価の有機基を表し、好ましくは炭素数6〜20の2価の炭化水素基(芳香族基も含む)を表す。B
1及びB
2は同一でも異なっていてもよく、それぞれ-NHR
4、-NR
5R
6又は-OR
7で表される基を表す。R
4、R
5、R
6及びR
7は同一でも異なっていてもよく、それぞれ1価の有機基を表し、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれでも良く、またこれらを混合したものでも良く、好ましくは炭素数6〜20の1価の炭化水素基を表す。
【0021】
増ちょう剤の含有量は、組成物全量基準で、好ましくは2〜40重量%である。増ちょう剤の含有量が2質量%未満であると、増ちょう剤の添加効果が不十分となり、組成物を十分にグリース状(半固体状)にすることが困難となる。また増ちょう剤の含有量が40質量%を超えると、グリース組成物が過剰に硬くなって十分な潤滑性能を得ることが困難になるおそれがある。同様の観点から、増ちょう剤の含有量はより好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上であり、またより好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0022】
〔脂肪族アミド化合物〕
さらに配合しうる脂肪族アミド化合物は、アミド基(-NH-CO-)を1個有するモノアミド、2個有するビスアミド、3個有するトリアミドなどである。モノアミドとしては、モノアミンの酸アミドでも、モノ酸の酸アミドのいずれでも良く、また、ビスアミドも、ジアミンの酸アミドでも、ジ酸の酸アミドのいずれでも良い。
好ましく用いられるアミド化合物は、融点が40〜180℃、特に好ましくは80〜180℃、更に好ましくは100〜170℃、分子量が242〜932、特に好ましくは298〜876のものである。
モノアミド、ビスアミド、及びトリアミドは、下記の一般式(4)、一般式(5)及び(6)、及び一般式(7)でそれぞれ表される。
【0023】
R
11-CO-NH-R
12 ・・・・(4)
R
11-CO-NH-A
1-NH-CO-R
12 ・・・・(5)
R
11-NH-CO-A
1-CO-NH-R
12 ・・・・(6)
R
11-M-A
1-CH(A
2-M-R
13)-A
3-M-R
12 ・・・・(7)
【0024】
上記一般式(4)〜(7)において、R
11、R
12、R
13は、それぞれ独立して、炭素数5〜25の脂肪族炭化水素基である。一般式(4)の場合にはR
12が水素の場合も含む。A
1、A
2、A
3は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基または芳香族炭化水素基、若しくはこれらが組み合わされたかたちの炭素数1〜10の2価の炭化水素基で、Mはアミド基である。
なお、一般式(4)のモノアミドの場合、R
12が水素又は炭素数10〜20の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、一般式(5)のジアミンの酸アミドの場合は、A
1が炭素数1〜4の2価の飽和鎖状炭化水素基のものが好ましい。さらに、式(5)及び(6)において、R
11、R
12、またはA
1で表される炭化水素基は、一部の水素が水酸基(-OH)で置換されていてもよい。
【0025】
モノアミドとしては、具体的には、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド、及びステアリルステアリン酸アミド、オレイルオレイン酸アミド、オレイルステアリン酸アミド、ステアリルオレイン酸アミド等の飽和又は不飽和の長鎖脂肪酸と長鎖アミンによる置換アミド類などが挙げられる。
【0026】
式(5)で表されるジアミンの酸アミドとしては、具体的には、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。式(6)で表されるジ酸のビスアミドとしては、具体的には、N,N'-ビスステアリルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0027】
式(7)で表されるトリアミドは多数あるが、本発明に好適に用いることができる化合物として具体的にはN-アシルアミノ酸ジアミド化合物が挙げられる。この化合物のN‐アシル基は、炭素数1〜30の直鎖又は分枝の飽和又は不飽和の脂肪族アシル基又は芳香族アシル基、特にはカプロイル基、カプリロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、ステアロイル基からなるものが好ましく、またアミノ酸としてはアスパラギン酸、グルタミン酸からなるものが好ましく、また、アミド基のアミンは炭素数1〜30の直鎖又は分枝の飽和又は不飽和の脂肪族アミン、特にはブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、イソステアリルアミン、ステアリルアミン等が好ましい。特には、具体的な化合物としてN-ラウロイル-L-グルタミン酸-α,γ-ジ-n-ブチルアミドが好ましい。
【0028】
上記アミド化合物はそれぞれ単独で用いても、2種以上の割合で組み合わせて用いてもよい。このアミドの含有量は、潤滑剤組成物全量基準で、0.1〜50質量%とすることが好ましく、3〜35質量%が好ましい。
【0029】
〔その他の添加剤〕
本発明の潤滑剤組成物には、上記成分以外に、必要に応じて、一般に潤滑油やグリースに用いられている、例えば、清浄剤、分散剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、極圧剤、防錆剤、腐食防止剤などを適宜添加することができる。
上記以外の添加剤成分は、潤滑剤組成物全量基準で、20質量%以下、特には10質量%以下が好ましい。
【0030】
〔樹脂の潤滑方法〕
本発明の潤滑剤組成物は、樹脂の潤滑に用いるものである。樹脂は天然樹脂でも、合成樹脂でもよいが、合成樹脂の汎用プラスチック(ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニールなど)やエンジニアリングプラスチックが良く、特にはエンジニアプラスチックが耐熱性、機械的強度の点で好ましく、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの合成樹脂などが挙げられ、特には、ポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂の潤滑に好ましく用いられる。この潤滑は、少なくとも一方の構成要素が樹脂であれば、他方の要素が金属、セラミックなどでもよい。
このような潤滑方法を用いる用途としては、自動車・鉄道・航空機などの輸送機械、工作機械などの産業機械、洗濯機・冷蔵庫・掃除機などの家庭電化製品、時計・カメラなどの精密機械があり、これら機械に用いられる樹脂材を含む軸受、歯車、摺動面、ベルト、ジョイント、カムなどがある。特に、高面圧の摺動環境となる歯車(平歯車、はすば歯車、ねじ歯車、ハイポイドギヤ、ウォームギヤ、ホイールギヤなど)などの耐摩耗性の向上に有用である。
【実施例】
【0031】
以下の成分を用いて、実施例、比較例を調製し、評価した。
〔成分〕
1.潤滑油基油
(1)PAO:ポリ-α-オレフィン(INEOS社製Durasyn168)
40℃における動粘度;46mm
2/s、15℃における密度:0.83g/cm
3、粘度指数;135
流動点;−60℃以下、引火点;250℃
(2)鉱油:常圧蒸留残渣を減圧蒸留した留出油を溶剤精製して得られた潤滑油基油
40℃における動粘度;46mm
2/s、15℃における密度;0.87g/cm
3、粘度指数;100
流動点;−10℃、引火点;230℃
【0032】
2.添加剤:カルボン酸誘導体
N-オレイルザルコシン
なお、比較のために、オレイン酸、オレイルアルコール、オレイルアミン、オレイン酸
メチルを添加した。
【0033】
3.増ちょう剤
(1)リチウム石けん:ステアリン酸リチウム
(2)コンプレックスリチウム石けん:ステアリン酸とアゼライン酸との混合カルボン酸のリチウム塩
(3)脂肪族ジウレア:オクタデシルアミンとメチレンジフェルニルジイソシアネートからなる脂肪族ジウレア
(4)脂環族ジウレア:シクロヘキシルアミンとメチレンジフェルニルジイソシアネートからなる脂環族ジウレア
(5)芳香族ジウレア:p-トルイジンとメチレンジフェルニルジイソシアネートからなる芳香族ジウレア
4.脂肪族アミド:エチレンビスステアリン酸アミド
【0034】
〔グリースの調製方法〕
潤滑油基油中で、リチウム石けんグリースおよびコンプレックスリチウム石けんグリースは、各脂肪酸と水酸化リチウムを脱水、ケン化し、ウレアグリースは各アミンとメチレンジフェルニルジイソシアネートを反応させ、表1及び表2の成分を配合した。その後、ローラ(3本ロール)で加圧分散処理を行い、グリースを調製した。
〔潤滑油の調製方法〕
各成分を表3及び表4に示す配合量で容器に入れ、攪拌して潤滑油を調製した。なお、配合量は、潤滑剤(グリース又は潤滑油)全量に対する質量%で示す。基油の含有量は、増ちょう剤など記載のある成分の残部である。
【0035】
〔評価試験〕
ボールとディスクの往復動摩擦試験機で評価試験を行った。試験荷重は21.6N、摺動速度は10mm/s、振幅20mmとし、ディスクに潤滑剤1gを塗布し、摺動させ20分後の摩擦係数を室温で測定した。ボール、ディスクの素材としては、鋼(SUJ-2)、ポリアミド樹脂(PA66)、ポリオキシメチレン樹脂(POM)を用い、ボールの直径は1/4インチである。各潤滑剤評価時のボール、ディスクの素材と、摩擦係数の測定結果を表1、表2、表3及び表4に併せて示す。本発明のカルボン酸誘導体を含有する場合には、摩擦係数が低減されることがわかる。
また一往復当たりの静摩擦係数と動摩擦係数の比で耐スティックスリップ性を以下の判断基準で評価した。なお、スティックスリップは、静止摩擦係数と動摩擦係数の差が大きいほど生じやすい。
◎ 耐スティックスリップ性が優れる(静摩擦係数/動摩擦係数=0.9〜1.1)
× 耐スティックスリップ性が劣る(静摩擦係数/動摩擦係数=0.9未満もしくは1.1より大きい)
カルボン酸誘導体を含有する潤滑剤は、静摩擦係数と動摩擦係数の差が小さく、耐スティックスリップ性にも効果があることを確認した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】