(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に搭載可能な全ての電装品が搭載されて使用される際に必要十分な電流容量を有する電源ラインと、前記車両に搭載可能な全ての電装品が搭載されて使用される際に必要十分な通信容量を有する通信ラインとを有して車体に配索される幹線と、
前記幹線に沿って分散配置された複数の制御ボックスと、を備える車両用回路体であって、
前記幹線は、前記車体の前後方向に延びるように配置される第1の幹線部と、
前記車体の左右方向に延びるように配置される第2の幹線部と、を有し、
前記複数の制御ボックスには、前記第1の幹線部と前記第2の幹線部とを接続し、前記第1の幹線部および前記第2の幹線部のうち一方の電力を他方に分配する分岐制御ボックスが含まれ、
前記複数の制御ボックスとして、電源に対し前記幹線の上流端に配置される供給側制御ボックスと、前記幹線を分岐する分岐制御ボックスと、前記幹線を分岐することなく中継する中間制御ボックスと、電源に対し前記幹線を分岐及び中継することなく前記幹線の下流端に配置される制御ボックスと、を個別に有し、
前記幹線として、前記車両の左右両端部間を左右方向に延伸する第1幹線と、前記第1幹線の前記左右方向の中央部から前記車両の後方に向けて前記前後方向に延伸する第2幹線と、を有し、
前記供給側制御ボックスは、前記第1幹線の前記左右方向の一端部に設けられ、前記分岐制御ボックスは、前記第1幹線の前記左右方向の中央部に設けられ、前記中間制御ボックスは、前記第2幹線の前記前後方向の途中部分に設けられ、前記下流端に配置される制御ボックスは、前記第1幹線の前記左右方向の他端部及び前記第2幹線の前記前後方向の後端部に設けられる、
車両用回路体。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0025】
<本発明および潜在クレームの記載>
[形態−1]
(1) 所定の電流容量を有する電源ラインと、所定の通信容量を有する通信ラインとを有して車体に配索される幹線と、
補機に直接または間接的に接続される枝線と、
前記幹線に供給される前記電源ラインの電力及び前記通信ラインの信号のうち少なくとも一方を前記幹線に接続される前記枝線へ分配するための制御部を有し、前記幹線に沿って分散配置された複数の制御ボックスと、を備える車両用回路体であって、
前記幹線は、平型導体、丸棒導体及び撚り線のうち少なくとも一種類の導体を有する配索材で構成されることを特徴とする車両用回路体。
【0026】
上記(1)の構成の車両用回路体によれば、所定の電流容量及び所定の通信容量を有して車体に配索される幹線と、この幹線に沿って分散配置された複数の制御ボックスを介して補機を幹線に接続する枝線とによって、単純な構造の車両用回路体を構成することができる。
また、複数の車種、グレード又はオプションに共通して用いられる幹線と、複数の車種、グレード又はオプションの補機によって変更される枝線とに分けて車両用回路体が構成される。そこで、車種、グレード又はオプションの補機が増加したとしても、複数の車種、グレード又はオプションの補機によって配線が異なる枝線のみを準備すればよいため、車両用回路体の製造の容易化およびコストの低減を図ることができる。
なお、幹線の電源ラインは、所定の電流容量を確保するために大きな断面積が必要である。そこで、断面形状が偏平な帯状の平型導体を有する配索材で電源ラインが構成された場合には、厚み方向の折り曲げが容易になり、所定の配索経路に沿って配索するための作業が容易になる。また、汎用性の高い丸棒導体や撚り線を有する配索材で電源ラインが構成される場合には、製造が容易になると共に、曲げ方向が自由となって配索性が高くなる。
【0027】
(2) 前記配索材は、複数種の前記導体が混在して構成されることを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0028】
上記(2)の構成の車両用回路体によれば、平型導体、丸棒導体及び撚り線を適宜混在させて配索材を構成することで、車両の配索経路に応じて配索性がよく、製造が容易な幹線を得ることができる。
【0029】
(3) 複数の前記制御ボックス間における前記幹線が、異なる種類の前記導体を有する配索材で構成されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の車両用回路体。
【0030】
上記(3)の構成の車両用回路体によれば、複数の制御ボックス間における幹線毎に、車両の配索経路に適した導体を有する配索材を用いることができ、配索性が更に向上する。
【0031】
(4) 前記幹線は、前記電源ライン及び前記通信ラインのうち少なくとも一方を分岐する分岐部を有することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載の車両用回路体。
【0032】
上記(4)の構成の車両用回路体によれば、幹線が分岐部で複数の幹線に分岐されることにより、各幹線に分散配置される制御ボックスをそれぞれ車両の各部に配置することができる。そこで、車両の各部に配置された補機には、これら制御ボックスに接続された枝線を介しての電力供給や通信データ(信号)の送受信が容易になり、枝線の短線化も可能となる。
【0033】
(5) 前記幹線には、前記電源ラインの主電源とは別のサブ電源が接続されることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れかに記載の車両用回路体。
【0034】
上記(5)の構成の車両用回路体によれば、幹線の電源ラインに主電源とサブ電源が分散配置される。そこで、各補機の要求電力が高い場合の電圧変動を各電源からの電流供給で抑制できる。また、車両衝突等により一方の電源からの電力供給が遮断されたような場合には、他方の電源から電力供給することができ、切れない電源ラインを構成することができる。
更に、車両に分散配置された主電源とサブ電源が幹線の電源ラインでつながれることで、電気自動車やハイブリッド車における回生エネルギーの回収が容易になり、エネルギー回収率を向上させることができる。
また、複数の電源を持つことで、電源のバックアップ対応が可能となり、電源異常時の影響を小さくできる。
【0035】
(6) 前記幹線が、所定の電流容量を有するアースラインをさらに備えることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れかに記載の車両用回路体。
【0036】
上記(6)の構成の車両用回路体によれば、幹線における電源ラインにアースラインが並走して配索されることで、通信ラインに対する電源ノイズの回り込みを防止することができる。
また、平型導体を有する配索材で電源ライン及びアースラインが構成されて積層配置され、互いに対向する面の表面積を増やし、両者の隙間を小さくすることで、耐ノイズ性能を更に向上させることができる。
【0037】
[電源−1]
車両においては、例えば自動運転技術に対応する必要などにより、ワイヤハーネスの電源系統における信頼性を向上することが求められている。例えば、交通事故などに伴う車両の衝突の際であっても、重要な車載機器に対する電力供給が途絶えることがなく、車両だけで問題を回避できることが望ましい。また、ワイヤハーネスのような車両用回路体は、様々な種類の車両に対して部品を共通化したり、構成を単純化して、部品コストや製造コストを低減したり、部品の品番数を減らすことが求められている。
そこで、以下の(1)〜(7)に示すように構成する。
【0038】
(1) 車両に設置される車両用回路体であって、
少なくとも車両の前後方向に延伸する幹線と、
前記幹線に設置される複数の制御ボックスと、
を備え、
前記幹線は、2系統の電源ラインと、通信ラインとを有する
ことを特徴とする車両用回路体。
【0039】
この構成により、制御ボックス間に2系統の電源ラインが形成されるので、一方の電源ラインをバックアップ用として使用することにより電力供給が途絶える可能性を低減したり、必要に応じて一方の系統の電圧を高めることにより安定した電力を供給することができる。
【0040】
(2) 前記2系統の電源ラインは、互いに同じ電圧の電力を伝送する
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0041】
この構成により、2系統の電源ラインを状況に応じて併用したり、一方をバックアップ用として使用することができる。
【0042】
(3) 前記2系統の電源ラインは、互いに異なる電圧の電力を伝送する
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0043】
この構成により、電力消費が大きい負荷が接続された場合には、大きな電源電流が流れて供給線路における電圧降下が増大するので、高い電源電圧を選択することで、電力損失の増大を抑制できる。
【0044】
(4) 前記複数の制御ボックスは、
第1制御ボックスと、電源に対し前記第1制御ボックスよりも下流側の第2制御ボックスと、を有し、
前記第1制御ボックスは、前記第2制御ボックスに対し前記2系統の電源ラインのうちいずれか1系統のみの電源ラインを用いて電力を伝送する
ことを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の車両用回路体。
【0045】
この構成により、2系統の電源ラインのうちの1系統を予備用として確保しておき、使用中の電源ラインに異常が発生した場合に、当該予備用の電源系統に切り替えることが可能となる。
【0046】
(5) 前記車両に設置された補機に接続される枝線をさらに備える
ことを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の車両用回路体。
【0047】
この構成により、電源から幹線に一括して電力を供給し、この幹線の電力を各補機に分配することが可能となる。
【0048】
(6) 前記枝線の一端は、前記制御ボックスに接続される
ことを特徴とする上記(5)に記載の車両用回路体。
【0049】
この構成により、補機に供給すべき電力を制御ボックスから分配することができる。
【0050】
(7) 前記2系統の電源ラインは、並走するように設置される
ことを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の車両用回路体。
【0051】
この構成により、制御ボックス間を1つの幹線で接続することにより2系統の電源ラインを同時に配設することができる。
【0052】
[電源−2]
車両においては、車種の違い、グレードの違い、仕向地の違い、オプション機器の違い等により、車両毎に異なる数、あるいは異なる種類の電装品(補機)が接続される。また、電装品の数や種類が変わると、ワイヤハーネスの構成が変化する可能性がある。また、車両の設計時に想定していなかった新たな種類の電装品を後で車両に追加する可能性もある。このような場合に、追加する電装品は、車両に既に搭載されている既存のワイヤハーネス等に接続するだけで使えることが望ましい。また、必要に応じて、各電装品を接続する位置を変更できることが望ましい。また、車両の種類や接続する電装品の数や種類が変化しても、共通の部品を用いてワイヤハーネス等を構成できることが望ましい。
そこで、以下の(1)および(2)に示すように構成する。
【0053】
(1) 車両に設置される車両用回路体であって、
少なくとも車両の前後方向に延伸する幹線と、
前記幹線に設置される複数の制御ボックスと、
前記制御ボックスと補機とを接続する枝線と、
を備え、
前記幹線および前記枝線は、それぞれ電源ラインおよび通信ラインを有し、
前記制御ボックスは、前記枝線が接続される枝線用接続部と、制御プログラムにしたがって前記枝線用接続部を制御することにより前記幹線から前記枝線へ電力を分配する枝線用制御部と、を有し、
前記制御プログラムは、前記枝線に接続される補機に応じて外部から変更可能である
ことを特徴とする車両用回路体。
【0054】
この構成により、枝線に接続されている補機の種類にかかわらず、制御プログラムを変更することにより幹線から枝線を介して補機に適切な電力を供給することができる。
【0055】
(2) 前記枝線用接続部は、前記枝線の端部が接続されるコネクタを複数有し、
複数の前記コネクタは、同一形状である
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0056】
この構成により、枝線を接続すべきコネクタを補機により異ならせる必要がなくなり、補機の増加や交換を容易に行うことができる。
【0057】
[通信−1]
車両においては、例えば自動運転技術に対応する必要があるため、例えばワイヤハーネスの通信系統における信頼性を向上することが求められている。例えば、交通事故などに伴う車両の衝突の際であっても、重要な車載機器の制御に用いる通信系統が通信可能な状態を維持でき、車両の制御状態に異常が生じないことが望ましい。また、通信経路として用いるワイヤハーネスのような車両用回路体は、様々な種類の車両に対して部品を共通化したり、構成を単純化して、部品コストや製造コストを低減したり、部品の品番数を減らすことが求められている。
そこで、以下の(1)に示すように構成する。
【0058】
(1) 車両に設置される車両用回路体であって、
少なくとも車両の前後方向に延伸する幹線と、
前記幹線に設置される複数の制御ボックスと、
を備え、
前記幹線は、電源ラインと、通信ラインとを有し、
前記通信ラインは、前記複数の制御ボックスをリング状に接続するように配索される
ことを特徴とする車両用回路体。
【0059】
この構成により、複数の制御ボックス間を接続するいずれかの通信ラインに障害が発生したとしても、障害が発生した箇所と反対方向のルートを用いて通信を継続することができる。したがって、車両用回路体の幹線上における通信の信頼性を向上することができる。
【0060】
[通信−2]
車両のワイヤハーネス等には様々な電装品を接続する可能性がある。また、使用する部品を共通化したり、電装品のコネクタ等の接続位置を自由に変更できることが望ましい。そのため、一般的に用いられる通信規格を採用したり、一般的な形状の多数のコネクタ等を車両のワイヤハーネス上に用意しておくことも想定される。しかし、例えばセキュリティの観点から、特別に許可した場合を除き、一部のコネクタについては車両のユーザや第三者が自由に利用できないようにすることが求められる場合がある。しかし、標準規格の通信方式を採用したり、標準規格のコネクタを採用している場合には、空き状態のコネクタをユーザ等が勝手に使用する可能性があり、セキュリティ等の問題が発生する。
そこで、以下の(1)〜(5)に示すように構成する。
【0061】
(1) 車両に設置される車両用回路体であって、
複数の制御ボックスと、
複数の前記制御ボックスを互いに接続する幹線と、
前記制御ボックスと補機とを直接的又は間接的に接続する枝線と、
を備え、
前記幹線および前記枝線は、それぞれ電源ラインおよび通信ラインを有し、
前記制御ボックスは、前記枝線の通信ラインが着脱可能な複数の枝線接続部を有し、
複数の前記枝線接続部には、前記枝線が接続されていない場合に物理的又は電気的にロック状態となるロック機能部が設置される、
ことを特徴とする車両用回路体。
【0062】
この構成により、将来的に枝線が追加的に接続されることを可能とするよう、現時点で接続される枝線の数よりも多い枝線接続部を制御ボックスに設置したとしても、何も接続されていない枝線接続部に接続されるべきではない枝線が接続されることを防止できる。したがって、例えば制御ボックスの制御部のプログラムを悪意で書き換えることを目的として、何も接続されていない枝線接続部にプログラムの書き換え装置が接続されることを防止できる。
【0063】
(2) 複数の前記枝線接続部それぞれは、前記通信ラインの端部を着脱可能とするコネクタを有し、
前記ロック機能部は、複数の前記コネクタの開口を一括して覆うカバー部材と、ロック状態において前記カバー部材が前記コネクタから離脱することを防止する鍵部と、を有する
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0064】
この構成により、現時点でいずれの枝線接続部にも枝線を接続する必要がない場合には、すべての枝線接続部のコネクタをカバー部材で一括して覆い、鍵部によりカバー部材を取り外し不可能とすることができるので、間違ってあるいは悪意を持って枝線がコネクタに接続されることを防止できる。
【0065】
(3) 複数の前記枝線接続部それぞれは、前記通信ラインの端部を着脱可能とするコネクタを有し、
前記ロック機能部は、いずれか1つの前記コネクタの開口の少なくとも一部を覆うカバー部材と、ロック状態において前記カバー部材が前記コネクタから離脱することを防止する鍵部と、を有する
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0066】
この構成により、複数のコネクタのうち必要な箇所にのみカバー部材を取り付けて取り外し不可能とすることができる。したがって、複数のコネクタのうち一部のコネクタのみ枝線が接続されていない場合、当該コネクタにカバー部材を取り付け、間違ってあるいは悪意を持って枝線が当該コネクタに接続されることを防止できる。
【0067】
(4) 複数の前記枝線接続部それぞれは、前記通信ラインの端部を着脱可能とするコネクタを有し、
前記ロック機能部は、少なくとも1つの前記コネクタの開口を覆うシール部材であり、
前記シール部材は、開封の有無を判別可能な開封表示手段を有する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0068】
この構成により、シール部材が開封表示手段を有しているので、悪意を持ってコネクタに枝線を接続しようとする人物に対する抑止力として機能する。また、コネクタに不正に枝線が接続された場合に、ディーラーなどにおいてその事実を発見しやすくなる。
【0069】
(5) 複数の前記枝線接続部それぞれは、接続された対象物に対し信号を送信し、前記信号に対する前記対象物からの応答に応じて前記対象物との信号の送受信を許可するか否か決定する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0070】
この構成により、枝線接続部に接続されるべきではない枝線が接続されたとしても、枝線に接続されている対象物との通信を不可能とするため、不正な通信が行われ、制御ボックスや枝線に接続されている各補機の機能に悪影響が与えられることを防止することができる。
【0071】
[通信−3]
車両上の通信に関しては、例えばCAN、CXPI、イーサネット(登録商標)などの複数の標準規格のインタフェースが用いられる可能性がある。また、車両の種類毎、車両のグレード毎、あるいは車体上のエリア毎に、接続する電装品が採用している通信規格が異なる場合が考えられる。また、規格が異なる通信機器同士を相互に接続するためには、特別な通信ケーブル、コネクタ、通信インタフェースなどの機器を個別に用意しなければならないので、ワイヤハーネスの構成が複雑化したり、接続作業が繁雑になることが想定される。
そこで、以下の(1)および(2)に示すように構成する。
【0072】
(1) 車両に設置される車両用回路体であって、
少なくとも車両の前後方向に延伸する幹線と、
前記幹線に設置される複数の制御ボックスと、
前記制御ボックスと補機とを直接的又は間接的に接続する枝線と、
を備え、
前記幹線及び前記枝線は、それぞれ電源ラインと、通信ラインとを有し、
前記車両は、複数の領域に区画され、
少なくとも2以上の前記制御ボックスは、互いに異なる前記領域に配置され、前記枝線の通信ラインと前記幹線の通信ラインとの通信方式を変換するゲートウェイを有し、
複数の前記ゲートウェイは、前記幹線の通信ラインを介して互いに通信可能である、
ことを特徴とする車両用回路体。
【0073】
この構成により、幹線の通信ラインとの枝線の通信ラインとの通信方式を変換するゲートウェイが車両の各領域に設置されるので、それぞれの領域に設置された補機をそれらの領域に設置された制御ボックスに枝線を介して接続することにより、これらの補機と幹線との間で信号の送受信が可能となる。
【0074】
(2) 前記ゲートウェイは、前記枝線を介して接続された前記補機が使用する通信方式に対応するよう通信方式を変更する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0075】
この構成により、通信方式にかかわらず様々な種類の補機をその補機が設置されている領域と同じ領域に設置されている制御ボックスに接続することが可能となる。
【0076】
[通信−4]
車両上においては、例えば各種のカメラが撮影した映像信号のように大容量のデータを伝送する機器同士を多数接続できることが望まれている。このような環境においては、高速で大容量の通信ができるように、光通信を採用することが想定される。しかし、車載システム全体を光通信網で接続すると、非常に高価なシステムになるのは避けられない。
そこで、以下の(1)および(2)に示すように構成する。
【0077】
(1) 車両に設置される車両用回路体であって、
少なくとも車両の前後方向に延伸する幹線と、
前記幹線に設置される複数の制御ボックスと、
前記制御ボックスと補機とを直接的又は間接的に接続する枝線と、
を備え、
前記幹線は、電源ラインおよび通信ラインを有し、
前記枝線は、電源ラインおよび通信ラインのうち少なくともいずれか一方を有し、
前記幹線の通信ラインは、光信号用の伝送路を有し、
前記枝線の通信ラインは、電気信号用の伝送路を有する、
ことを特徴とする車両用回路体。
【0078】
この構成により、制御ボックス間を接続する幹線が光信号用の伝送路を有しているので、制御ボックス間の伝送容量を増大させることが可能になる。また、光信号を利用するため、幹線内の電源ラインや外部の機器類から発生する電磁ノイズの影響を受けにくくなり、通信の信頼性を高めることができる。
【0079】
(2) 前記幹線の通信ラインの少なくとも1とは、複数の前記制御ボックスのうちの2つを直接接続する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の車両用回路体。
【0080】
この構成により、2つの制御ボックスが光信号用の伝送路で直接接続されるため、信号の送受信を高速で行うことができる。
【0081】
<実施例の記載>
本発明の車両用回路体に関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0082】
<第1実施形態>
(車両用回路体)
まず、車両用回路体の基本的な構成について説明する。
本発明の第1実施形態における車両用回路体10を車体上に配索した状態における各部のレイアウトおよび接続状態の概要を
図1に示す。
本発明の車両用回路体は、車載バッテリなどの主電源の電力を車体各部の補機(電装品)に対してそれぞれ供給したり、電装品同士の間で信号のやりとりを行うために必要な伝送経路としたりして利用されるものである(
図1参照)。即ち、機能的には車両に搭載される一般的なワイヤハーネスと同様であるが、形状や構造が一般的なワイヤハーネスとは大きく異なる。
【0083】
具体的には、構造を簡素化するために、所定の電流容量を有する電源ラインと、所定の通信容量を有する通信ラインと、アースラインとを有する幹線が、背骨(バックボーン)のような形状が単純な配索材20で構成されている。なお、「所定の電流容量」とは、例えば取付対象車両に搭載可能な全ての電装品が搭載されて使用される際に必要十分な電流容量であり、「所定の通信容量」とは、例えば取付対象車両に搭載可能な全ての電装品が搭載されて使用される際に必要十分な通信容量である。そして、この幹線に沿って分散配置された複数の制御ボックスに接続される枝線を介して様々な補機(電装品)を接続できるように構成している。
【0084】
図1及び
図2に示す本第1実施形態に係る車両用回路体10は、基本的な構成要素として、電源ライン21と通信ライン29とを有して車体1に配索される幹線(バックボーン幹線部15)と、車体各部の電装品に接続される枝線(インパネ枝線サブハーネス31、フロントドア枝線サブハーネス63、リアドア枝線サブハーネス65、センターコンソール枝線サブハーネス66、フロントシート枝線サブハーネス67、リアシート枝線サブハーネス68、ラゲージ枝線サブハーネス69)と、幹線に供給される電源ライン21の電力及び通信ライン29の信号を幹線に接続される枝線へ分配するための制御部を有し、幹線に沿って分散配置された複数の制御ボックス(供給側制御ボックス51、分岐制御ボックス53、中間制御ボックス57、制御ボックス55,59)と、を備える。
【0085】
更に、本第1実施形態に係る車両用回路体10のバックボーン幹線部15は、インパネバックボーン幹線部11と、フロアバックボーン幹線部13とに大別される。
インパネバックボーン幹線部11は、ダッシュパネル50の面に沿った箇所で、図示しないリーンホースの上方の位置にリーンホースとほぼ平行になるように左右方向に向かって直線的に配置されている。なお、インパネバックボーン幹線部11は、リーンホースに固定されてもよい。
また、フロアバックボーン幹線部13は、車室内フロアに沿って車体1の左右方向のほぼ中央部において車体1の前後方向に延びるように配置されており、ダッシュパネル50の面に沿った箇所では上下方向に直線的に延びてインパネバックボーン幹線部11の中間部に先端が接続されている。インパネバックボーン幹線部11とフロアバックボーン幹線部13との接続部は、後述する分岐制御ボックス53における分岐部を経由して互いに電気的に接続可能な状態になっている。つまり、バックボーン幹線部15は、インパネバックボーン幹線部11とフロアバックボーン幹線部13とでT字状に似た形状に構成されている。
【0086】
さらに、上記インパネバックボーン幹線部11には、バックボーン幹線部15の上流である車体1の左側に配置される供給側制御ボックス51を介してエンコパサブハーネス61が接続されている。エンコパサブハーネス61は、エンジンルーム(エンジンコンパートメント)41内に配置された主電源であるメインバッテリ5及びオルタネータ3を互いに電気的に接続する主電源ケーブル81を有している。
【0087】
ここで、エンジンルーム41と車室43との境界にはダッシュパネル50があり、電気接続部材がダッシュパネル50を貫通する箇所については完全にシールすることが求められる。すなわち、ダッシュパネル50は、車室43内の快適性を保つために、エンジンルーム41からの振動の絶縁、サスペンションからの振動や騒音の低減、高熱、騒音、臭い等の遮断の機能を備える必要があり、この機能を損なわないように、電気接続部材の貫通箇所にも十分な配慮が求められる。
【0088】
上述したように、本第1実施形態に係る車両用回路体10は、その主要な構成要素であるインパネバックボーン幹線部11及びフロアバックボーン幹線部13、並びに供給側制御ボックス51、分岐制御ボックス53、中間制御ボックス57及び制御ボックス55,59の全てが車室43側の空間に配置されている。そして、インパネバックボーン幹線部11の左端に設けた供給側制御ボックス51に接続した主電源ケーブル81が、ダッシュパネル50の貫通孔に嵌挿したグロメット85を通過するように配索され、エンジンルーム41内のエンコパサブハーネス61に接続される。これにより、主電源の電力を供給側制御ボックス51に供給することができる。また、主電源ケーブル81については曲げやすい材料を用いたり、断面形状を円形にしたり、断面積がインパネバックボーン幹線部11より小さくなるように構成することが可能であるので、グロメット85によるシールを容易に行うことができ、配索作業を実施する際の作業性の悪化も回避できる。
【0089】
また、車室43内のインパネバックボーン幹線部11にエンジンルーム41内の様々な電装品を接続する場合には、例えば供給側制御ボックス51に接続したサブハーネス71がダッシュパネル50を貫通するように設置したり、制御ボックス55に接続したサブハーネス73がダッシュパネル50を貫通するように設置したりすることで、所望の電気接続経路を実現できる。この場合、サブハーネス71,73等は断面積が小さく、曲げることも容易であるため、ダッシュパネル50を貫通する箇所をシールすることは容易である。
【0090】
また、インパネバックボーン幹線部11には、供給側制御ボックス51及び制御ボックス55を介してインパネ枝線サブハーネス(枝線)31及びフロントドア枝線サブハーネス(枝線)63が接続されている。
インパネ枝線サブハーネス31は、インパネモジュール30に搭載されたメータパネルやエアコン等の電装品の制御部に電気的に接続されているインパネハーネス30aのモジュールドライバ30bに対して、モジュールコネクタCを介して電気的に接続される。
フロントドア枝線サブハーネス63は、フロントドア33に搭載されたドアロックやパワーウインドウ等の電装品の制御部に電気的に接続されているフロントドアサブハーネス33aのモジュールドライバ33bに対して、非接触給電可能及び近接無線通信可能に接続されることが望ましい。
【0091】
更に、フロアバックボーン幹線部13には、中間制御ボックス57を介してリアドア枝線サブハーネス(枝線)65、センターコンソール枝線サブハーネス(枝線)66、フロントシート枝線サブハーネス(枝線)67、リアシート枝線サブハーネス(枝線)68、及びサブバッテリ7が接続されている。
【0092】
リアドア枝線サブハーネス65は、リアドア35に搭載されたドアロックやパワーウインドウ等の電装品の制御部に電気的に接続されているリアドアハーネス35aのモジュールドライバ35bに対して、非接触給電可能及び近接無線通信可能に接続されることが望ましい。
【0093】
センターコンソール枝線サブハーネス66は、センターコンソール39に搭載されたエアコンやオーディオの操作パネル等の電装品の制御部に電気的に接続されているセンターコンソールハーネス39aのモジュールドライバ39bに対して、モジュールコネクタCを介し電気的に接続される。
【0094】
フロントシート枝線サブハーネス67は、フロントシート37に搭載された電動リクライニングやシートヒータ等の電装品の制御部に電気的に接続されているフロントシートハーネス37aのモジュールドライバ37bに対して、モジュールコネクタCを介し電気的に接続される。
【0095】
リアシート枝線サブハーネス68は、リアシート38に搭載された電動リクライニングやシートヒータ等の電装品の制御部に電気的に接続されているリアシートハーネス38aのモジュールドライバ38bに対して、モジュールコネクタCを介し電気的に接続される。
【0096】
更に、フロアバックボーン幹線部13には、幹線の下流である車体1の後方に配置される制御ボックス59を介してラゲージ枝線サブハーネス(枝線)69が接続されている。
ラゲージ枝線サブハーネス69は、ラゲージルーム内の様々な電装品の制御部に電気的に接続されているラゲージハーネスのモジュールドライバ(図示せず)に対して、モジュールコネクタCを介し電気的に接続される。
なお、上記モジュールコネクタCは、バックボーン幹線部15と各補機に電力と信号を効率的に送付することができるように、電源及びアースの電力と信号とをまとめて制御ボックスに接続することができる。
【0097】
(配索材)
本第1実施形態に係る車両用回路体10のバックボーン幹線部15は、電源ライン21と、通信ライン29と、アースライン27とを有しており、それぞれ平型導体100を有する配索材20で構成されている。
また、
図1に示した構成においては、サブバッテリ(サブ電源)7が存在する場合を想定しているので、車両用回路体10のバックボーン幹線部15には、電源ライン21としてメイン電源系(電源ライン)23とサブ電源系(電源ライン)25とが含まれている。
【0098】
本第1実施形態に係る配索材20は、バックボーン幹線部15内の電源ライン21、アースライン27及び通信ライン29については、断面形状が扁平な帯状の金属材料(例えば銅合金やアルミニウム)からなる平型導体100を採用し、周囲が絶縁被覆110で覆われたこれらの平型導体100が厚み方向に積層されて構成されている(
図1参照)。即ち、電源ライン21を構成するサブ電源系25の上にメイン電源系23が積層され、メイン電源系23の上に積層されたアースライン27の上には、例えば一対の平型導体が並設された通信ライン29が積層されている。
【0099】
これにより、配索材20は、大電流の通過を許容可能になり、且つ厚み方向に対する曲げ加工が比較的容易になる。また、配索材20は、電源ライン21とアースライン27を隣同士で並走させたまま配索することができると共に、通信ライン29と電源ライン21との間にアースライン27が積層されることによって、電源ノイズの回り込みを防止できる。
【0100】
また、バックボーン幹線部15の電源ライン21は、所定の電流容量を確保するために大きな断面積が必要であるが、本実施形態の電源ライン21は、断面形状が偏平な帯状の平型導体100を有する配索材20で構成されており、厚み方向の折り曲げが容易になり、所定の配索経路に沿って配索するための作業が容易になる。
【0101】
(制御ボックス)
本第1実施形態に係る車両用回路体10は、バックボーン幹線部15の上流端(インパネバックボーン幹線部11の左端)に配置される供給側制御ボックス51と、バックボーン幹線部15の途中の分岐部(インパネバックボーン幹線部11とフロアバックボーン幹線部13との接続部)に配置される分岐制御ボックス53と、バックボーン幹線部15の途中(フロアバックボーン幹線部13の中間部)に配置される中間制御ボックス57と、バックボーン幹線部15の下流端(インパネバックボーン幹線部11の右端及びフロアバックボーン幹線部13の後端)に配置される制御ボックス55,59とからなる5つの制御ボックスを備えている。
【0102】
供給側制御ボックス51には、
図3(a)に示すように、インパネバックボーン幹線部11に主電源ケーブル81を接続するための主電源接続部120と、フロントドア枝線サブハーネス63やサブハーネス71を接続するための枝線接続部121とが、設けられている。供給側制御ボックス51は、これら主電源ケーブル81、インパネバックボーン幹線部11、フロントドア枝線サブハーネス63及びサブハーネス71の間で各回路の電源系統、アース系統、通信系統を相互に接続することができる。
【0103】
供給側制御ボックス51は、
図3(b)に示すように、ロアケース122とアッパーケース124で画成されたケース内に回路基板125を収容している。回路基板125に実装された3つのメス端子127には、サブ電源系25、メイン電源系23及びアースライン27の各平型導体100に電気的に接続された各オス端子130が、嵌合される。また、枝線接続部121を構成するため回路基板125の一端縁に設けられた複数の基板用コネクタ131には、インパネバックボーン幹線部11におけるサブ電源系25、メイン電源系23、アースライン27及び通信ライン29が、基板上に構成された回路やバスバーを介して電気的に分岐接続されている。
【0104】
主電源接続部120は、主電源ケーブル81の電源ライン82が接続される電源接続部133と、アースライン84が接続されるアース接続部135とを有する。
図4(a)に示すように、ロアケース122に埋設された電源接続部133のスタッドボルト(電力入力端子)141には、メイン電源系23の平型導体100が接続される。また、ロアケース122に埋設されたアース接続部135のスタッドボルト(電力入力端子)143には、アースライン27の平型導体100が接続される。通信ライン29は、例えば基板用コネクタ(図示せず)を介して回路基板125に接続される。
【0105】
そして、
図4(b)に示すように、各メス端子127が各平型導体100に電気的に接続された各オス端子130に嵌合されるようにして、回路基板125がロアケース122に固定される。回路基板125には、電源ライン21の電力及び通信ライン29の信号をエンコパサブハーネス61や、フロントドア枝線サブハーネス63や、サブハーネス71へ分配するための制御部151が実装されている。また、回路基板125には、複数の電装品(補機)および電装品の接続状態を切り替えるために必要な構成要素として、FPGA(field-programmable gate array)デバイスと回路モジュールを有する切換回路153が実装されている。
【0106】
そして、
図4(c)に示すように、電源接続部133におけるメイン電源系23の平型導体100には、主電源ケーブル81の電源ライン82の端部に圧着された端子86がナット締結される。また、アース接続部135におけるアースライン27の平型導体100には、主電源ケーブル81のアースライン84の端部に圧着された端子86がナット締結される。このようにして、インパネバックボーン幹線部11に主電源ケーブル81を接続固定することができる。
また、枝線接続部121の基板用コネクタ131には、インパネ枝線サブハーネス31、フロントドア枝線サブハーネス63、及びサブハーネス71の端部に接続されたモジュールコネクタCがコネクタ接続される。モジュールコネクタCは、電源ライン21及びアースライン27の電力と、通信ライン29の信号とを各電装品に伝送することができる。
【0107】
分岐制御ボックス53は、
図6(a)に示すように、インパネバックボーン幹線部11とフロアバックボーン幹線部13との接続部であるバックボーン幹線部15の途中の分岐部に配置されており、図示しない電装品に接続されたサブハーネス(枝線)を接続するための枝線接続部121を備えている。分岐制御ボックス53は、これらインパネバックボーン幹線部11、フロアバックボーン幹線部13及びサブハーネスの間で各回路の電源系統、アース系統、通信系統を相互に接続することができる。
【0108】
分岐制御ボックス53は、上記供給側制御ボックス51と同様に、ロアケース122とアッパーケース124で画成されたケース内に回路基板125を収容しており、回路基板125の一端縁に設けられた複数の基板用コネクタ131には、インパネバックボーン幹線部11におけるサブ電源系25、メイン電源系23、アースライン27及び通信ライン29が、基板上に構成された回路やバスバーを介して電気的に分岐接続されている。
なお、インパネバックボーン幹線部11及びフロアバックボーン幹線部13におけるサブ電源系25、メイン電源系23及びアースライン27は、例えばそれぞれの平型導体100同士を溶接やボルト締結(
図14参照)等によって電気的に接続固定することができる。また、インパネバックボーン幹線部11及びフロアバックボーン幹線部13における通信ライン29は、例えばコネクタ接続によって電気的に接続固定することができる。
【0109】
制御ボックス55は、
図6(b)に示すように、インパネバックボーン幹線部11の右端であるバックボーン幹線部15の下流端に配置されており、フロントドア枝線サブハーネス63やサブハーネス73を接続するための枝線接続部121を備えている。制御ボックス55は、これらインパネバックボーン幹線部11、フロントドア枝線サブハーネス63及びサブハーネス73の間で各回路の電源系統、アース系統、通信系統を相互に接続することができる。
【0110】
制御ボックス55は、上記供給側制御ボックス51と同様に、ロアケース122とアッパーケース124で画成されたケース内に回路基板125を収容しており、回路基板125に実装された3つのメス端子127には、サブ電源系25、メイン電源系23及びアースライン27の各平型導体100に電気的に接続された各オス端子130が、嵌合される(
図3(b)参照)。また、枝線接続部121を構成するため回路基板125の一端縁に設けられた複数の基板用コネクタ131には、インパネバックボーン幹線部11におけるサブ電源系25、メイン電源系23、アースライン27及び通信ライン29が、基板上に構成された回路やバスバーを介して電気的に分岐接続されている。
なお、フロアバックボーン幹線部13の後端に配置される制御ボックス59は、上記制御ボックス55と同様の構成を有している。
【0111】
中間制御ボックス57は、
図6(c)に示すように、フロアバックボーン幹線部13の中間部であるバックボーン幹線部15の途中に配置されており、リアドア枝線サブハーネス65、センターコンソール枝線サブハーネス66、フロントシート枝線サブハーネス67、リアシート枝線サブハーネス68、及びサブバッテリ7を接続するための枝線接続部121を備えている。中間制御ボックス57は、これらフロアバックボーン幹線部13、リアドア枝線サブハーネス65、センターコンソール枝線サブハーネス66、フロントシート枝線サブハーネス67、リアシート枝線サブハーネス68、及びサブバッテリ7の間で各回路の電源系統、アース系統、通信系統を相互に接続することができる。
【0112】
中間制御ボックス57は、上記供給側制御ボックス51と同様に、ロアケース122とアッパーケース124で画成されたケース内に回路基板125を収容しており、回路基板125の一端縁に設けられた複数の基板用コネクタ131には、フロアバックボーン幹線部13におけるサブ電源系25、メイン電源系23、アースライン27及び通信ライン29が、基板上に構成された回路やバスバーを介して電気的に分岐接続されている。
【0113】
上述した各制御ボックス(供給側制御ボックス51、分岐制御ボックス53、中間制御ボックス57、及び制御ボックス55,59)は、取付対象車両のグレードや仕向け仕様に応じた枝線接続部121を有する複数種の回路基板125を適宜変更することで、大半の車種に対応することが可能となり、部品を共通化して品番を削減することができる。
例えば、
図5(a)に示す回路基板126は、枝線接続部121を構成する3つの基板用コネクタ131と、制御部151と、1つの切換回路153とを備えている。
これに対し、
図5(b)に示す回路基板125は、枝線接続部121を構成する6つの基板用コネクタ131と、制御部151と、3つの切換回路153とを備えている。
これら回路基板126及び回路基板125は、共通のロアケース122とアッパーケース124で画成されたケース内に収容することができる。
【0114】
(モジュール)
本第1実施形態に係る車両用回路体10は、バックボーン幹線部15に枝線として接続されるインパネ枝線サブハーネス31、フロントドア枝線サブハーネス63、リアドア枝線サブハーネス65、センターコンソール枝線サブハーネス66、フロントシート枝線サブハーネス67、及びリアシート枝線サブハーネス68等が、インパネモジュール30、フロントドア33、リアドア35、センターコンソール39、フロントシート37、及びリアシート38等と一体のモジュールとして構成されている。
【0115】
即ち、インパネ枝線サブハーネス31は、インパネモジュール30に搭載された電装品の制御部に電気的に接続されているインパネハーネス30aのモジュールドライバ30bに接続されることで、インパネモジュール30と一体のモジュールで構成することができる。
また、フロントドア枝線サブハーネス63は、フロントドア33に搭載された電装品の制御部に電気的に接続されているフロントドアサブハーネス33aのモジュールドライバ33bに対して、非接触給電可能及び近接無線通信可能に接続されることで、フロントドア33と一体のモジュールで構成することができる。
【0116】
また、リアドア枝線サブハーネス65は、リアドア35に搭載された電装品の制御部に電気的に接続されているリアドアハーネス35aのモジュールドライバ35bに対して、非接触給電可能及び近接無線通信可能に接続されることで、リアドア35と一体のモジュールで構成することができる。
また、センターコンソール枝線サブハーネス66は、センターコンソール39に搭載された電装品の制御部に電気的に接続されているセンターコンソールハーネス39aのモジュールドライバ39bに接続されることで、インパネモジュール30と一体のモジュールで構成することができる。
【0117】
また、フロントシート枝線サブハーネス67は、フロントシート37に搭載された電装品の制御部に電気的に接続されているフロントシートハーネス37aのモジュールドライバ37bに接続されることで、フロントシート37と一体のモジュールで構成することができる。
また、リアシート枝線サブハーネス68は、リアシート38に搭載された電装品の制御部に電気的に接続されているリアシートハーネス38aのモジュールドライバ38bに接続されることで、リアシート38と一体のモジュールで構成することができる。
【0118】
更に、本実施形態に係るインパネモジュール30は、
図1に示したように、インパネ本体と伴にグローブボックス32、センタークラスタ34、ステアリング36等の複数のインパネサブモジュールにより構成されている。
図7に示すように、グローブボックス32が取付けられるインパネモジュール30の車体1の左側には、インパネバックボーン幹線部11の左側に配置された供給側制御ボックス51が位置している。
そこで、主電源ケーブル81を介してメインバッテリ5に電気的に接続された供給側制御ボックス51の内部に電源分配用のメカリレーやメカヒューズが設けられた場合には、グローブボックス32を外すことで、供給側制御ボックス51内のメカリレーやメカヒューズに容易にアクセスすることができ、これらを交換するためのメンテナンスが容易となる。
【0119】
(分岐ボックス)
本実施形態に係る車両用回路体10は、バックボーン幹線部15の途中(例えば、フロアバックボーン幹線部13の途中)に、
図8に示すように、分岐ボックス161を設けることができる。分岐ボックス161には、例えばサブバッテリ7が接続される。
フロアバックボーン幹線部13の途中に分岐ボックス161を設けるには、先ず、
図9(a)に示すように、サブ電源系25、メイン電源系23、及びアースライン27の所定箇所における絶縁被覆110を剥がして平型導体100をそれぞれ露出させた後、各平型導体100に接続端子171,172,173を溶接等により接続する。
【0120】
次に、
図9(b)に示すように、これら接続端子171,172,173が並設されるようにしてサブ電源系25、メイン電源系23、及びアースライン27が積層される。
そして、
図9(c)に示すように、3本のスタットボルト167が植設されたケース162は、フロアバックボーン幹線部13の絶縁被覆110が剥がされた部分を覆い、スタットボルト167がそれぞれ接続端子171,172,173の貫通孔を貫通するようにして取付けられる。
【0121】
そして、
図8に示したように、サブバッテリ7に接続された電源ケーブル163,164,165の端部に圧着されたLA端子166をそれぞれスタットボルト167に挿通し、ナット固定する。そこで、サブ電源系25及びメイン電源系23には電源ケーブル163,164を介してサブバッテリ7の正極が接続され、アースライン27には電源ケーブル165を介してサブバッテリ7の負極が接続される。
このように、フロアバックボーン幹線部13の途中に分岐ボックス161を設けることで、サブバッテリ7をフロアバックボーン幹線部13に対して確実かつ容易に接続することができる。
【0122】
(車両用回路体態の効果)
上述したように、本第1実施形態の車両用回路体10によれば、所定の電流容量及び所定の通信容量を有して車体1に配索されるバックボーン幹線部15と、このバックボーン幹線部15に沿って分散配置された5つの制御ボックス(供給側制御ボックス51、分岐制御ボックス53、中間制御ボックス57、及び制御ボックス55,59)を介して車体各部の電装品をバックボーン幹線部15に接続する枝線(インパネ枝線サブハーネス31、フロントドア枝線サブハーネス63、リアドア枝線サブハーネス65、センターコンソール枝線サブハーネス66、フロントシート枝線サブハーネス67、リアシート枝線サブハーネス68、ラゲージ枝線サブハーネス69等)とによって、単純な構造の車両用回路体を構成することができる。
【0123】
即ち、車体1の左右方向に延びるインパネバックボーン幹線部11と、車体1のほぼ中央部において車体1の前後方向に延びるフロアバックボーン幹線部13とで構成されたシンプルな全体形状のバックボーン幹線部15は、製造が容易である。なお、バックボーン幹線部15は、各制御ボックス間で分割可能な分割構造とされ、制御ボックスを介して互いに接続される構造とすることもできる。
【0124】
また、バックボーン幹線部15に沿って分散配置される複数の制御ボックス(供給側制御ボックス51、分岐制御ボックス53、中間制御ボックス57、及び制御ボックス55,59)に接続される枝線(インパネ枝線サブハーネス31、フロントドア枝線サブハーネス63、リアドア枝線サブハーネス65、センターコンソール枝線サブハーネス66、フロントシート枝線サブハーネス67、リアシート枝線サブハーネス68、ラゲージ枝線サブハーネス69等)は、車体エリア毎に小分けされることで各エリアの回路仕様差が分散され、電線長を短くすることができる。そこで、生産性の向上を図ることができると共に、小分けされて小型化された枝線は梱包率が向上して輸送費を低減することができる。
【0125】
更に、複数の車種、グレード又はオプションに共通して用いられるバックボーン幹線部15と、複数の車種、グレード又はオプションの補機によって変更される枝線(インパネ枝線サブハーネス31、フロントドア枝線サブハーネス63、リアドア枝線サブハーネス65、センターコンソール枝線サブハーネス66、フロントシート枝線サブハーネス67、リアシート枝線サブハーネス68、ラゲージ枝線サブハーネス69等)とに分けて車両用回路体10が構成される。そこで、車種、グレード又はオプションの補機が増加したとしても、複数の車種、グレード又はオプションの補機によって配線が異なる枝線のみを準備すればよいため、車両用回路体10の製造の容易化およびコストの低減を図ることができる。
【0126】
また、本第1実施形態に係るバックボーン幹線部15は、電源ライン21及び通信ライン29が、分岐制御ボックス53が配置されたインパネバックボーン幹線部11とフロアバックボーン幹線部13との接続部である分岐部で分岐されたT字状に構成されている。そこで、バックボーン幹線部15が分岐部で複数に分岐されることにより、インパネバックボーン幹線部11とフロアバックボーン幹線部13に分散配置される複数の制御ボックス(供給側制御ボックス51、分岐制御ボックス53、中間制御ボックス57、及び制御ボックス55,59)をそれぞれ車体1の各部に配置することができる。そこで、車体1の各部に配置された補機(電装品)には、これら制御ボックスに接続された枝線(インパネ枝線サブハーネス31、フロントドア枝線サブハーネス63、リアドア枝線サブハーネス65、センターコンソール枝線サブハーネス66、フロントシート枝線サブハーネス67、リアシート枝線サブハーネス68、ラゲージ枝線サブハーネス69等)を介しての電力供給や通信データ(信号)の送受信が容易になり、枝線の短線化も可能となる。
なお、本発明の幹線は、インパネバックボーン幹線部11とフロアバックボーン幹線部13とによるT字状にかぎらず、I字状やH字状などの種々の形態を採りうる。
【0127】
また、本第1実施形態の車両用回路体10によれば、バックボーン幹線部15の電源ライン21にメインバッテリ(主電源)5とサブバッテリ(サブ電源)7が分散配置されている。そこで、各補機(電装品)の要求電力が高い場合の電圧変動を各電源からの電流供給で抑制できる。また、車両衝突等により一方の電源からの電力供給が遮断されたような場合には、他方の電源から電力供給することができ、切れない電源ライン21を構成することができる。
更に、車両に分散配置されたメインバッテリ5とサブバッテリ7がバックボーン幹線部15の電源ライン21でつながれることで、電気自動車やハイブリッド車における回生エネルギーの回収が容易になり、エネルギー回収率を向上させることができる。
また、複数の電源を持つことで、電源のバックアップ対応が可能となり、電源異常時の影響を小さくできる。
【0128】
(変形例)
以下、上記第1実施形態に係る車両用回路体10の各構成の変形例について、詳細に説明する。
図10は、本実施形態に係る配索材の変形例を示す分解斜視図である。
バックボーン幹線部を構成する配索材180は、アルミニウム製の平型導体からなる電源ライン181及びアースライン183と、FPC(Flexible Printed Circuits)からなる通信ライン185とで構成されている。
そこで、配索材180は、電源ライン181とアースライン183を隣同士で並走させたまま配索することができると共に、通信ライン185と電源ライン181との間にアースライン183が積層されることによって、電源ノイズの回り込みを防止できる。
また、配索材180における電源ライン181とアースライン183がアルミニウム製の平型導体で形成され、通信ライン185がFPCで形成されることで、軽量で薄いバックボーン幹線部を得ることができる。
【0129】
図11は、本実施形態に係る平型導体の変形例を示す要部斜視図である。
図11に示すように、電源ラインやアースラインを構成するための平型導体190は、長手方向の一部分に薄板部191が適宜形成される。
そこで、平型導体190は、薄板部191で板厚方向へ曲り易くなり、バックボーン幹線部を車体1に配索する際に車体の形状に倣って容易に曲げることができる。そこで、バックボーン幹線部の配索性を向上させることができる。
【0130】
図12は、本実施形態に係る平型導体に構成されたヒューズを説明する斜視図である。
バッテリに接続される電源ライン193は、平型導体からなり、先端部にはバッテリポストに嵌挿される取付孔197が形成されている。
そして、取付孔197の基端側には、ヒューズ195が一体形成されている。ヒューズ195は、平型導体の幅を狭めた細径部に、低融点金属からなる可容体199を設けたものである。更に、ヒューズ195は、透明な蓋部194を有するヒューズハウジング192に覆われている。
このようなヒューズ195を一体に備えた電源ライン193によれば、電源ラインをバッテリに接続する際にヒューズを別途用意する必要がなく、部品数の増加を抑制できる。
【0131】
図13は、本実施形態に係る平型導体で構成された電源ラインとアースラインのバッテリ接続例を説明する斜視図および断面図である。
図13に示すように、バックボーン幹線部における電源ライン201及びアースライン203は、平型導体からなり、先端部には貫通孔が形成されている。
バッテリ210のプラスターミナル213には、内方に屈曲したL字状のバスバー217が電気的に接続固定され、マイナスターミナル211には、内方に屈曲したL字状のバスバー215が電気的に接続固定されている。更に、交差するこれらバスバー215,217の先端にそれぞれ形成された貫通孔は、ボルト221が貫通できるように同心に配置されている。
【0132】
そして、バスバー215,217の先端に穴付きの絶縁シート219を挟み、電源ライン201がバスバー217の上面に重ねられ、アースライン203がバスバー215の下面に重ねられた状態で、これらを貫通したボルト221にナット223が締付固定される。
その結果、複雑な接続構造なしに、電源ライン201はバスバー217を介してバッテリ210のプラスターミナル213に接続され、アースライン203はバスバー215を介してバッテリ210のマイナスターミナル211に接続される。
このようなバッテリ接続構造によれば、平型導体からなる電源ライン201とアースライン203とを平行に配索したままバッテリ210にそれぞれ接続することができるので、耐ノイズ性を向上することができる。
【0133】
図14は、本実施形態に係る平型導体で構成された配索材の接続構造例を説明する斜視図である。
図14に示した接続構造は、例えば、
図6(a)に示した分岐制御ボックス53において、インパネバックボーン幹線部11及びフロアバックボーン幹線部13におけるサブ電源系25、メイン電源系23及びアースライン27のそれぞれの平型導体100同士をボルト締結によって電気的に接続固定するものである。
【0134】
先ず、インパネバックボーン幹線部11におけるサブ電源系25、メイン電源系23及びアースライン27のそれぞれの絶縁被覆110を一部剥がして平型導体100をそれぞれ露出させ、貫通孔を開ける。また、フロアバックボーン幹線部13におけるサブ電源系25、メイン電源系23及びアースライン27の先端の絶縁被覆110をそれぞれ剥がして平型導体100を露出させ、貫通孔を開ける。
【0135】
次に、インパネバックボーン幹線部11におけるサブ電源系25、メイン電源系23及びアースライン27の平型導体100の上に、フロアバックボーン幹線部13におけるサブ電源系25、メイン電源系23及びアースライン27の平型導体100をそれぞれ重ねる。
【0136】
そして、重ねられたサブ電源系25と重ねられたメイン電源系23との間、並びに、重ねられたメイン電源系23と重ねられたアースライン27との間に、穴付き絶縁板237をそれぞれ挟み、これらが重ねられた状態で、これらを貫通した絶縁性ボルト238に絶縁性ナット239が締付固定される。なお、絶縁性ボルト238及び絶縁性ナット239は、電気絶縁性のエンプラやセラミック等により形成されることが望ましい。
その結果、インパネバックボーン幹線部11及びフロアバックボーン幹線部13におけるサブ電源系25、メイン電源系23及びアースライン27のそれぞれの平型導体100同士は、強固にボルト締結される。
【0137】
図15は、本実施形態に係る電源ラインの配列を説明する斜視図である。
図15(a)に示す配索材240は、サブ電源系241と、メイン電源系243と、アースライン245と、通信ライン247とを有しており、それぞれ撚り線を有する電線で構成されている。
配索材240は、汎用性の高い撚り線を有する電線で構成されているので、製造が容易になると共に、曲げ方向が自由となって配索性が高くなる。
【0138】
また、配索材240は、12ボルトと48ボルトのバックボーン幹線部で併用することができる十分な電流容量を有するものとする。そこで、普段は12ボルトがバックボーン幹線部に供給され、補機の消費電力が大きい場合には、DC/DCコンバータ(高圧/低圧コンバータ)で昇圧した48ボルトがバックボーン幹線部により供給される。このようにバックボーン幹線部が12ボルトと48ボルトVを切り替えて使うことで、補機に対する電源電圧の補償をし易くすることができる。
【0139】
図15(b)に示す配索材250は、12ボルトの電源系251と、12ボルトのアースライン255と、48ボルトの電源系253と、48ボルトのアースライン257とが、並設されており、それぞれ撚り線を有する電線で構成されている。
そこで、配索材250を有するバックボーン幹線部も、12ボルトと48ボルトVを切り替えて使うことで、補機に対する電源電圧の補償をし易くすることができる。
【0140】
図15(c)に示す配索材260は、12ボルトの電源系251と、12ボルトと48Vの共用のアースライン259と、48ボルトの電源系253とが、並設されており、それぞれ撚り線を有する電線で構成されている。
そこで、配索材260を有するバックボーン幹線部は、電線数を減らしてスペースの削減や軽量化が可能となる。
【0141】
図16は、本実施形態に係る配索材の配列を説明する斜視図である。
図16(a)に示す配索材270は、サブ電源系271とアースライン273とのツイスト線の上に、メイン電源系272とアースライン274とのツイスト線を重ね、その上に通信ライン275,276のツイスト線を重ねた構成とされている。
そこで、配索材270は、ツイストによる打消しで耐ノイズ性能を向上させることができる。
【0142】
図16(b)に示す配索材280は、平型導体からなるサブ電源系281の上にアースライン283、メイン電源系282、アースライン283、及び通信ライン285が順次積層されて構成されている。
そこで、配索材280は、アースライン283が分散配置されることにより耐ノイズ性能を向上させることができる。
【0143】
図16(c)に示す配索材290は、平型導体からなるサブ電源系291とメイン電源系292の周囲を編組293と編組294とでそれぞれ覆ってから板厚方向に重ねた後、その上に通信ライン285が積層されて構成されている。
そこで、配索材290は、編組293及び編組294がアースとシールドを兼用するので耐ノイズ性能が向上する。
【0144】
図16(d)に示す配索材300は、ノイズを含むサブ電源系301と通信ライン305との間にアースライン303を挟み、メイン電源系302と通信ライン305との間にアースライン304を挟むことにより、通信ライン305をシールドする。
また、通信ライン305の上下にアースライン304,303を配置してシールド性能を向上させる。
更に、サブ電源系301及びメイン電源系302と、アースライン303,304とをそれぞれ平型導体で構成して積層することにより、電源系とアースラインとの対向面積が広く、且つ隙間が狭くなることで、シールド性能が向上する。
【0145】
図17は、本実施形態に係る配索材の配列を説明する斜視図である。
図17(a)〜(d)は、それぞれ撚り線を有する電線で構成されたメイン電源系311及びサブ電源系312と、撚り線を有する電線で構成されたアースライン313と、プラスチック光ファイバで構成された通信ライン314とで構成された配索材310,320,330,340の配索パターンを示す断面図である。
このように、配索材310,320,330,340における通信ライン314に、ノイズに強い光通信を使うことで、バックボーン幹線部の配索パターンの自由度を向上させることができる。
【0146】
図17(e)に示す配索材350は、それぞれアルミニウム製の丸棒導体で構成されたメイン電源系351及びサブ電源系352と、撚り線を有する電線で構成された一対のアースライン313と、プラスチック光ファイバで構成された通信ライン314とを束ねて構成されている。
そこで、丸棒導体で構成されたサブ電源系352と、一対のアースライン313との隙間に配設された通信ライン314は、傷付きが防止され、車体1への配索がし易くなる。
【0147】
図18は、本実施形態に係る配索材の配列を説明する断面図である。
図18(a)に示すように、配索材360は、12ボルトのメイン電源系361及びメインアースライン362と、12ボルトのサブ電源系365及びサブアースライン366と、48ボルトのメインアースライン363及びメイン電源系364と、48ボルトのサブアースライン367及びサブ電源系368とが、それぞれ互い違いに配置される。
そこで、配索材360は、シールド性能が上がり、シールドレスとすることができ、ノイズフィルタの削減も可能となる。
【0148】
図18(b)に示すように、配索材370は、それぞれ撚り線を有する電線で構成されて並設されたメイン電源系371及びサブ電源系373と、メイン電源系371及びサブ電源系373の外周面をそれぞれ覆う編組線からなるアースライン375及び377と、並設されたメイン電源系371とサブ電源系373との間の上下隙間に這わされる一対の通信ライン376、378とが、互いに平行に配置されている。
【0149】
そこで、配索材370は、メイン電源系371及びサブ電源系373の外周面がそれぞれアースライン375,377で覆われことにより、通信ライン376,378へのノイズ影響を抑えることができる。
また、シールドとアースを共用しており、通信ライン376,378が、二本のメイン電源系371とサブ電源系373との間の上下隙間に這わされることで、省スペース化を図ることができる。
【0150】
図19は、本実施形態に係る丸棒導体の基板接続構造を説明する斜視図である。
図19(a)に示すように、例えば丸棒導体403を有する配索材401を制御ボックス内の回路基板411に電気的に接続する際には、先ず、配索材401の接続箇所における絶縁被覆404を剥がして丸棒導体403を露出させる。
銅合金製の圧着端子405は、一対の圧着片407と、回路基板411のスルーホール413に挿入される一対のリード409とを備えている。
【0151】
そして、配索材401の露出した丸棒導体403に圧着端子405の圧着片407を圧着固定した後、
図19(b)に示すように、圧着端子405のリード409を回路基板411のスルーホール413に挿入し、半田付けする。その結果、配索材401の丸棒導体403は、回路基板411の所定回路に電気的に接続される。
【0152】
従って、本実施形態に係る丸棒導体403の基板接続構造によれば、回路基板411に接続するために丸棒導体403を加工する必要がなく、専用のプレス装置やプレス金型等の専用の加工設備が不要となり、加工コストを抑えることができる。即ち、従来は丸棒導体を相手側の端子や電線と接続を行う為には、接続部を平たく加工し、溶接やボルト締めを行う必用があり、加工コストが高くなっていた。
また、配索材401の任意の位置の絶縁被覆404を剥がして丸棒導体403を露出させることで、圧着端子405を丸棒導体403の任意の位置に取り付けることができるので、配索材401のレイアウト自由度を高めることができる。
【0153】
図20は、本実施形態に係る撚り線の端子化構造を説明する斜視図である。
図20に示すように、例えばアルミニウム合金からなる撚り線421を有する電線で構成され配索材420をバッテリターミナル等のスタットボルトに固定する際には、絶縁被覆404を剥がして配索材420の端部に露出させた撚り線421をLA端子形状にプレス加工してLA端子部425を形成する。
そこで、配索材420の端部にLA端子を接続する必要がなくなり、部品点数を削減することができる。
【0154】
図21は、本実施形態に係る電源ラインの端子構造例を説明する要部拡大図である。
本実施形態に係るバックボーン幹線部における電源ラインの接続端子としては、例えば、「1.5端子」と呼ばれるターミナルサイズの接続端子と、「4.8端子」と呼ばれるターミナルサイズの接続端子とが使用される。
図21(a)に示すように、「4.8端子」と呼ばれるオスタブ端子430は、端子幅Wが4.8mmと広く、相手側のメス端子も大型化してしまう。
【0155】
そこで、例えば
図21(b)に示したオス端子431のように、立体的な断面U字状に端子接続部を形成することで、表面積(相手端子との接触面積)を増やして小型でも大電流に対応することができる構造とする。
また、
図21(c)に示したオス端子433のように、立体的な矩形筒状に端子接続部を形成することで、表面積を増やして小型でも大電流に対応することができる構造とする。
また、
図21(d)に示したオス端子435のように、立体的な円筒状に端子接続部を形成することで、表面積を増やして小型でも大電流に対応することができる構造とする。
【0156】
図22は、本実施形態に係る丸棒導体の形成例を説明する斜視図である。
図22に示す配索材401は、アルミ電線の芯線447を製造する際の2次中間体445を用いてアルミニウム製の丸棒導体403が形成されている。
即ち、公知のアルミ電線における芯線447は、例えば、アルミインゴット441から円柱状の1次中間体443を形成した後、1次中間体443を引き延ばして長尺の2次中間体445を形成し、更に2次中間体445を小径に引き伸ばすことで形成されている。
そこで、2次中間体445をそのまま丸棒導体403として周囲に絶縁被覆404を形成するだけで、配索材401を成形することができ、丸棒導体を専用に加工製造する場合に比べて、丸棒導体403の加工費を削減することができる。
【0157】
図23は、従来のワイヤハーネスの被覆断面積と本実施形態に係る配索材の被覆断面積とを比較した説明図である。
図23の左側に図示したように、車体に配索される電源ライン、アースライン、及び通信ラインを備えた従来のワイヤハーネスW/Hは、多数の電線452からなる電線束であり、断面径が大型化する傾向にある。
これに対し、
図23の右側に図示した本実施形態に係る配索材450は、アルミニウム製の丸棒導体403の周囲に絶縁被覆404を形成した電源ライン451及びアースライン453と、プラスチック光ファイバ454で構成された通信ライン456とが、長手方向に沿って所定間隔でモールド成形されたクランプ455で一体的に保持されている。
【0158】
そこで、ワイヤハーネスW/Hにおける絶縁被覆Rと導体Mとの断面積構成と、配索材450における絶縁被覆Rと導体Mとの断面積構成とを比較すると、導体Mの断面積が同一にも関わらず、ワイヤハーネスW/Hの絶縁被覆Rの断面積は配索材450の絶縁被覆Rの断面積よりも大きくなっている。即ち、従来のワイヤハーネスW/Hは、多数の電線452がそれぞれ絶縁被覆を有していたのに対し、配索材450は、電源ライン451、アースライン453、及び通信ライン456をそれぞれ1本化することで絶縁被覆Rの断面積を削減することができ、結果として配索材450を大きくスリム化することができる。
【0159】
配索材450に一体にモールド成形されたクランプ455は、クランプ本体457の両端部に係止クリップ459が突設されている。そこで、これら係止クリップ459を車体パネルなどの貫通孔に挿入して係止させることで、配索材450を車体に容易に配索固定することができる。
【0160】
図24は、本実施形態に係る丸棒導体の端子接続構造を説明する要部斜視図及び断面図である。
例えば丸棒導体403を有する配索材401を制御ボックス内の回路基板に電気的に接続する際には、先ず、配索材401の接続箇所における絶縁被覆404を部分的に剥がして丸棒導体403を露出させる。
銅合金製の接続端子461は、丸棒導体403の外側面に当接する円筒状内面を有する固定部463と、固定部463の外面に突設されたタブ端子部465とを備えている。
【0161】
そして、配索材401の露出した丸棒導体403に接続端子461の固定部463を溶着や超音波により固定する。そこで、回路基板に設けた相手端子にタブ端子部465を嵌合することで、配索材401の丸棒導体403は、回路基板の所定回路に電気的に接続される。固定部463が丸棒導体403の外側面に当接する円筒状内面を有するので、接続端子461は丸棒導体403に対する接地面積を十分に確保し、接続信頼性を確保することができる。
【0162】
図24(a)に示したように、複数の配索材401を並設して構成されたバックボーン幹線部460は、各タブ端子部465が互いに配索材401の径方向外方へ平行に突設した状態で相手端子と嵌合する。そこで、タブ端子部465は、並設された複数の配索材401に対して、配列の間隔を変えることなく相手端子と嵌合することができる。
【0163】
図25は、本実施形態に係る丸棒導体の制御ボックス接続構造を説明する要部斜視図及び断面図である。
図25(a),(b)に示すように、バックボーン幹線部を構成するメイン電源系、サブ電源系、及びアースラインがそれぞれアルミニウム製の丸棒導体473で構成される場合には、各丸棒導体473の先端に小径の端子接続部475を形成し、該端子接続部475に嵌合するアルミ合金製の相手メス端子477を各端子収容室471内に配置する。
【0164】
そして、丸棒導体473の先端部がオス端子として制御ボックス470の各端子収容室471に挿入されると、バックボーン幹線部は制御ボックス470に電気的に接続された状態となる。
そこで、制御ボックス470に電気的に接続される各丸棒導体473の先端には、接続端子を別途付ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。
【0165】
図26は、本実施形態に係る丸棒導体の変形例を説明する要部斜視図である。
図26(a)に示す配索材480は、アルミニウム製の丸棒導体からなる断面円形部481と、アルミニウム製の厚めの平型導体からなる板状部483と、アルミニウム製の薄めの平型導体からなる薄板状部485とが、長手方向に沿ってシームレスに形状が変化するように接続されて形成されている。
板状部483は、板厚方向に曲がり易く、薄板状部485は更に曲り易い。また、断面円形部481は、板状部483や薄板状部485に比べて曲り難いが、曲げ方向が自由である。
そこで、配索材480により構成されたバックボーン幹線部は、車体の配索経路に応じて3次元的な配索が容易となる。
【0166】
図26(b)に示す配索材490は、アルミニウム製の厚めの平型導体からなる板状部493と、アルミニウム製の丸棒導体からなる断面円形部495とが、長手方向に沿ってシームレスに形状が変化するように接続されて形成されている。
板状部493は、断面円形部495よりも高さが低く、高さを抑えて配索する必要がある部分に使われる。
そこで、配索材490を複数本重ねて構成されたバックボーン幹線部は、高さを抑えて配索する必要がある部分に板状部493が使われ、立体的に経路配索し易くする部分に断面円形部495が使われることで、車体の配索経路に応じて3次元的な配索が容易となる。
なお、これら配索材480,490は、アルミ素線を使わずにアルミニウム製の丸棒や矩形棒から形成することができるので、製造コストを削減できる。
【0167】
図27は、本実施形態に係る配索材の変形例を説明する断面図である。
図27に示す配索材500は、中心導体501と、中心導体501の外側に同軸に配置された絶縁層505と、絶縁層505の外周面を覆う編組線からなるアースライン503とを備えた同軸ケーブルである。
【0168】
そして、中心導体501には、電源ラインとして電流が流されると共に、PLC(電力線通信)技術にて信号が流される。
そこで、配索材500は、電源ラインとアースラインと信号ラインの3本機能を中心導体501とアースライン503の2本構成で対応することが可能となり、それを同軸構造で構成し、太い同軸ケーブルとすることで、大電流を流すことが可能となる。
【0169】
図28は、本実施形態に係る配索材の変形例を説明する断面図である。
図28に示す配索材510は、複数のリッツ線(エナメル線)511の撚り線からなる電源ライン515と、電源ライン515の外側を囲む編組線として配置されたアースライン513とで構成されている。
そこで、配索材510は、コンパクトでありながらノイズに強い電線となる。
【0170】
図29は、本実施形態に係る配索材の変形例を説明する断面図である。
図29に示すように、配索材520は、複数の芯線524からなる電源ライン521と、複数の芯線524からなるアースライン522とが、所定間隔で平行に配設された状態で長円形断面の絶縁被覆523により覆われている。
電源ライン521とアースライン522の両端部にはそれぞれ端子525が接続されており、これら端子525はコネクタハウジング527に収容されている。
そこで、配索材520は、電源ライン521とアースライン522とを一つの絶縁被覆523で覆うことができ、複数の芯線をそれぞれ絶縁被覆が覆っていた従来のワイヤハーネスに比べて、配索スペースを削減でき、製造コストを低減することができる。
【0171】
図30は、本実施形態に係る配索材の変形例を説明する断面図である。
図30(a)に示す配索材530は、複数のリッツ線(エナメル線)533からなる電源ライン531と、複数のリッツ線(エナメル線)533からなるアースライン532とが、近接した状態で長円形断面の絶縁被覆534により覆われている。
即ち、電源ライン531とアースライン532は、互いに被覆層はないが、リッツ線533により構成されているので、近接しても互いに短絡することがない。そこで、配索材530は、被覆層がない電源ライン531とアースライン532を近接した状態で絶縁被覆534により覆うことで、コンパクトな構成とすることができる。
【0172】
図30(b)に示す配索材540は、複数のリッツ線533からなる電源ライン531と、複数のリッツ線533からなるアースライン532とが、近接した状態で円形断面の絶縁被覆543により覆われている。
【0173】
図30(c)に示す配索材550は、複数のリッツ線533からなる半円形断面の電源ライン551と、複数のリッツ線533からなる半円形断面のアースライン553とが、円形断面となるように合わせた状態で円形断面の絶縁被覆554により覆われている。
【0174】
図30(d)に示す配索材560は、複数のリッツ線533からなるサブ電源ライン561と、複数のリッツ線533からなるメイン電源ライン562と、複数のリッツ線533からなるアースライン563とが、近接した状態で楕円形断面の絶縁被覆564により覆われている。
【0175】
図31は、本実施形態に係る配索材の変形例を説明する断面図である。
図31に示すように、配索材570は、複数のリッツ線533からなる電源ライン571と、複数のリッツ線533からなるアースライン573とが、ノイズ打消し効果アップのためにツイストされた状態で長円形断面の絶縁被覆574により覆われている。
電源ライン571とアースライン573の両端部にはそれぞれ端子578が接続されており、これら端子578はコネクタハウジング579に収容されている。
そこで、配索材570は、ツイストされた電源ライン571とアースライン573とを一つの絶縁被覆574で覆うことができ、複数の芯線をそれぞれ絶縁被覆が覆っていた従来のツイストケーブルに比べて、配索スペースを削減できる。また、配索材570は、リッツ線533同士を密着することができ、効率よくノイズを抑制できる。また、配索材570は、電源ライン571とアースライン573をツイストしながら絶縁被覆574を形成できるので、1回の電線製作工程で製造することができ、加工費を低減することができる。
【0176】
図32は、本実施形態に係る配索材の変形例を説明する平面図である。
図32に示す配索材580は、複数のリッツ線584からなる電源ライン581と、複数のリッツ線584からなるアースライン583とが、編組線のように互いに編み込まれている。そして、電源ライン581とアースライン583の両端部には、それぞれ半田や超音波で端子585が接続されている。編み込まれている電源ライン581とアースライン583は、リッツ線584同士が導通しないため、それぞれ独立した電流経路を維持することができる。
そこで、配索材580は、リッツ線584同士が密着するように電源ライン581とアースライン583とが編み込まれているので、効率よくノイズを抑制することができる。
【0177】
図33は、本実施形態に係る配索材の配索形態例を説明する部分斜視図及び横断面図である。
図33(a)に示すように、電源ライン線591とアースライン593と通信ライン595とが、断面半円状の絶縁被覆596で覆われた配索材590は、断面半円状のリーンホース597と重ね合わせて一体に配索される。そこで、配索材590は、スペース効率が向上し、小型化することができる。
【0178】
図33(b)に示すように、配索材600は、サブ電源系25とメイン電源系23とアースライン27と通信ライン29とが積層された状態で断面矩形状のリーンホース601内に配索されている。そこで、配索材600は、スペース効率が向上し、小型化することができる。
【0179】
図33(c)に示すように、配索材610は、通信ライン619の上にアースライン617が積層され、アースライン617の上には、電源ライン611を構成するメイン電源系613の上にサブ電源系615が積層されている。そして、これらをまとめるように外皮612が周囲を覆っている。
そこで、配索材610は、アースライン617によってシールドされ、電源ライン611のノイズの回り込みが抑制される。
【0180】
図34は、本実施形態に係る車両用回路体の変形例を説明する部分断面斜視図である。
図34に示すバックボーン幹線部620は、複数の制御ボックス621,623,625間における幹線が、丸棒導体を有する配索材627と、平型導体を有する配索材629で構成されている。
本実施形態のバックボーン幹線部620によれば、複数の制御ボックス621,623,625間における幹線毎に、車両の配索経路に適した導体を有する配索材627,629を用いることができ、配索性が更に向上する。
【0181】
図35は、本実施形態に係る配索材の接合形態例を説明する要部斜視図である。
図35に示すように、配索材630は、薄板状の2つの配索材631,632を対向面同士で突き合わせて連結することでこれらを一体化できるように構成している。具体的には、配索材631の右側端面には突起部634が形成され、配索材632の左側端面には突起部634と相補形状をなす凹部636が形成されている。
【0182】
また、電源ライン633、アースライン635、及び信号ライン637の各電極が、配索材631の右側端面に露出するように配置されている。図示しないが、同様に、配索材632の左側端面にも、電源ライン633、アースライン635、及び信号ライン637の各々と接触可能な各電極が配置されている。
【0183】
このように、連結箇所の形状、電極仕様などを事前に標準化した複数の配索材631,632等の種類を選択し、選択した部材同士を組み合わせることにより、様々な仕様に対応する配索材630を構成することが可能である。この場合、標準化した配索材630の種類を減らすことが可能であり、品番数も削減できる。
【0184】
図36は本実施形態に係る配索材の接合形態例を説明する要部斜視図である。
図36に示すように、配索材640は、薄板状の2つの配索材642,646を対向側面同士で突き合わせて連結することでこれらを一体化できるように構成している。具体的には、配索材642の右側面には長手方向に沿って所定間隔で複数の凹部636が形成され、配索材646の左側面には凹部636と相補形状をなす突起部648が長手方向に沿って所定間隔で複数形成されている。
【0185】
さらに、配索材642には、12ボルトのメイン電源系641と、12ボルトのサブ電源系643と、12ボルトのアースライン645と、信号ライン647とが、並設されており、それぞれ撚り線を有する電線で構成されている。
また、配索材646には、48ボルトの電源系651と、48ボルトのアースライン649とが、並設されておりそれぞれ撚り線を有する電線で構成されている。
【0186】
このように、本実施形態によれば、電圧違いの配索材642,646を組み合わせて1つの配索材640とすることができる。また、電圧違いの配索材を後からでも簡便に追加することができる。更に、配索材642,646は、突起部648と凹部636を嵌合する簡単な作業で固定することができる。
【0187】
図37は、本実施形態に係る制御ボックスの変形例を説明する要部分解斜視図である。
図37(a)に示すように、バックボーン幹線部661に沿って配置される制御ボックス650は、バックボーン幹線部661に接続された制御ボックス本体658と、制御ボックス本体658のタブ端子656に着脱自在なカートリッジ653,655とを備える。
カートリッジ653は、図示しない枝線のモジュールコネクタが接続される枝線接続部を構成する4つのコネクタ口652を有している。また、カートリッジ655は、枝線のモジュールコネクタが接続される枝線接続部を構成する6つのコネクタ口652を有している。
【0188】
そこで、制御ボックス650は、カートリッジ653,655を適宜選択し、共通の制御ボックス本体658に装着することで、モジュール接続数のバリエーションをもつことができ、車両装備グレードにあった制御ボックスをバックボーン幹線部661に容易に設定することができる。
【0189】
図37(b)に示すように、バックボーン幹線部661に沿って配置される制御ボックス660は、バックボーン幹線部661に接続された制御ボックス本体658と、制御ボックス本体658に着脱自在なカートリッジ657,659とを備える。
カートリッジ657は、「4.8端子」に対応したコネクタ口654等を有する48ボルト電源に対応した構成を有している。また、カートリッジ659は、「1.5端子」に対応したコネクタ口652等を有する12ボルト電源に対応した構成を有している。
【0190】
そこで、制御ボックス660は、カートリッジ657,659を選択し、共通の制御ボックス本体658に装着することで、12ボルト電源、48ボルト電源、及び双方の電源バリエーションに対応することができる。そこで、制御ボックス660を備えたバックボーン幹線部661は、1つの電圧を昇圧あるいは降圧して異なる電圧の機器に対応することができる。
【0191】
図38は、本実施形態に係る配索材の変形例を説明する部分断面斜視図である。
図38(a)に示すように、配索材670は、平型導体からなるアースライン671と、アースライン671の両側部に配置された丸棒導体からなるメイン電源系673及びサブ電源系675とを備える。アースライン671は、メイン電源系673及びサブ電源系675との対向面に、これらメイン電源系673及びサブ電源系675との対向面積を増やすため、半円筒状の凹面672が形成されている。
【0192】
そこで、配索材670は、メイン電源系673及びサブ電源系675に対向する対向面積が増え、耐ノイズ性が向上する。
なお、アースライン671は、丸棒導体からなるメイン電源系673及びサブ電源系675が対向するので半円筒状の凹面672が形成されたが、メイン電源系673及びサブ電源系675が平型導体からなる場合は、平坦面が形成される。即ち、アースライン671の対向面は、対向するメイン電源系673及びサブ電源系675の形状に応じた相補形状を有する面となる。
【0193】
図38(b)に示すように、配索材674は、それぞれ撚り線を有する電線で構成されて近接して並設されたメイン電源系677及びサブ電源系678と、これらメイン電源系677とサブ電源系678の並設方向と平行にメイン電源系677及びサブ電源系678の上下に配置された平型導体からなる一対のアースライン676,676と、それぞれ撚り線を有する電線で構成されて平板なアースライン676と隣接するメイン電源系677及びサブ電源系678との間の上下隙間に這わされる一対の通信ライン679,679とが、互いに平行に配置されている。
【0194】
そこで、配索材674は、メイン電源系677及びサブ電源系678の上下が平型導体からなる一対のアースライン676で覆われることにより、通信ライン679,679へのノイズ影響を抑えることができる。
また、通信ライン679,679が、平板なアースライン676と隣接するメイン電源系677及びサブ電源系678との間の上下隙間に這わされることで、省スペース化を図ることができる。
【0195】
図39は、本実施形態に係る配索材の配索形態例を説明する斜視図である。
図39(a)に示すように、並行に配設されたメイン電源系681、アースライン683、及びサブ電源系685が絶縁被覆687で覆われた薄板状の配索材680は、厚み方向に曲げることは可能である。しかしながら、車体配索時には、配索材680が弾性反発力により直線状に戻ろうとするため、隅部などへの配索作業は困難である。
そこで、
図39(b)に示すように、配索材680の表裏面に所定角度に屈曲した形状の添え木部材682,684を配置することで、配索材680の配索経路に沿った所望形状の保持を可能とする。これにより、配索材680の配索作業性が向上する。
【0196】
図40は、本実施形態に係る車両用回路体の変形例を説明する概略平面図である。
図40に示すように、電源ライン711とアースライン713を有するバックボーン幹線部700は、電源であるバッテリ706及びオルタネータ707に接続されている。更に、バックボーン幹線部700には、複数の制御ボックス701,703,705が分散配置されている。そして、各制御ボックス701,703,705には、補機715やモータ717が接続されている。
更に、各制御ボックス701,703,705内や、その近傍における電源ライン711及びアースライン713には、複数のサブバッテリ720が接続されている。
【0197】
そこで、バックボーン幹線部700は、サブバッテリ720をノイズ源に近いところへ設定することでノイズを吸収し易くし、ECUへのノイズ回り込みを抑制できる。
また、複数の制御ボックス701,703,705が分散配置されることで、ノイズを出すものやノイズの影響を受けるものがバックボーン幹線部700のどこの位置にあっても問題がなくなり、耐ノイズ性能が向上する。
【0198】
図41は、本実施形態に係る車両用回路体の変形例を説明する概略平面図である。
図41(a)〜(d)に示すバックボーン幹線部730,740,750,760のように、バッテリ732は、車両の条件などによって、バックボーン幹線部のどの位置にも接続することができる。この際、電圧変動やノイズの影響をなくすため、制御ボックス731と制御ボックス733との間に配索されるバックボーン幹線部730,740,750,760の配索材(電源ライン735及びアースライン737)は、低インピーダンスのものを使用することが望ましい。
また、
図41(e)に示すバックボーン幹線部770のように、バッテリ732は、制御ボックス771内に設置することもできる。
【0199】
図42は、本実施形態に係る車両用回路体の変形例を説明する概略構成図である。
図42に示すように、電源ライン782とアースライン784を有するバックボーン幹線部780は、電源であるバッテリ790及びオルタネータ791に接続されている。更に、バックボーン幹線部780には、複数の制御ボックス781,783,785が分散配置されている。そして、各制御ボックス781,783,785には、補機787,788,789が接続されている。バックボーン幹線部780の一番車両後方側に、サブバッテリを繋ぐこともできる。
【0200】
更に、バッテリ790及びオルタネータ791は、車体792にボディアースされている。また、大電流系の補機788,789も、車体792にボディアースされている。補機788は、アース線793を介して車体792にボディアースされ、補機789は、車体792にケースを固定するブラケット794を介して車体792にボディアースされている。
即ち、大電流系の補機788,789がボディアースを経由することで、ノイズの影響を小さくすることができ、アース電圧変動の抑制やオルタネータ791のノイズの抑制が可能となる。
【0201】
図43は、本実施形態に係る車両用回路体の変形例を説明する概略構成図である。
図43に示すように、バックボーン幹線部800は、例えばアルミニウム製の丸棒導体や撚り線からなる電源ライン811とアースライン813とがツイスト化された配索材810を有する。配索材810は、電源であるバッテリ790及びオルタネータ791に接続されている。更に、バックボーン幹線部800には、複数の制御ボックス801,803,805が分散配置されている。
電源ライン811とアースライン813とがツイスト化されることで、ノイズの打消し効果が向上し、外来ノイズの耐性を向上できる。
【0202】
図44は、本実施形態に係る車両用回路体の変形例を説明する概略構成図である。
図44に示すように、電源ライン828とアースライン829を有するバックボーン幹線部820は、電源であるバッテリ790及びオルタネータ791に接続されている。更に、バックボーン幹線部820には、複数の制御ボックス821,823,825,827が分散配置されている。そして、各制御ボックス821,823,825には、補機833が接続されている。
【0203】
更に、制御ボックス821,823,825,827間におけるバックボーン幹線部820には、環状のフェライト830が装着されている。
そこで、各制御ボックス821,823,825,827下流のノイズがバックボーン幹線部820を通じて拡散するのを防止できる。
【0204】
図45は、本実施形態の変形例に係る車両用回路体を車体上に配索した状態における各部のレイアウトおよび接続状態を示す概略斜視図である。
図45に示す車両用回路体900は、基本的な構成要素として、電源ライン931とアースライン933と通信ライン935とを有して車体901に配索される幹線(バックボーン幹線部915)と、車体各部の電装品に接続される枝線(インパネ枝線サブハーネス965、フロントドア枝線サブハーネス963、リアドア枝線サブハーネス977、ラゲージ枝線サブハーネス979)と、幹線に供給される電源ライン931の電力及び通信ライン935の信号を幹線に接続される枝線へ分配するための制御部を有し、幹線に沿って分散配置された複数の制御ボックス(供給側制御ボックス951、分岐制御ボックス953、中間制御ボックス961、制御ボックス955,957,959、966)と、を備える。
【0205】
更に、車両用回路体900のバックボーン幹線部915は、インパネバックボーン幹線部911と、フロアバックボーン幹線部913と、エンコパバックボーン幹線部919とに大別される。
インパネバックボーン幹線部911は、ダッシュパネル950の面に沿った箇所で、図示しないリーンホースの上方の位置にリーンホースとほぼ平行になるように左右方向に向かって直線的に配置されている。なお、インパネバックボーン幹線部911は、リーンホースに固定されてもよい。
【0206】
また、フロアバックボーン幹線部913は、車室内フロアに沿って車体901の左右方向のほぼ中央部において車体901の前後方向に延びるように配置されており、ダッシュパネル950の面に沿った箇所では上下方向に直線的に延びた立ち上がり部917の先端部が、ダッシュパネル950の貫通孔に装着されたジョイントボックス920に接続されている。更に、フロアバックボーン幹線部913に分岐接続された立ち上がり部918の先端が、インパネバックボーン幹線部911の中間部に接続されている。
【0207】
更に、フロアバックボーン幹線部913には、ダッシュパネル950の貫通孔に装着されたジョイントボックス920を介してエンコパバックボーン幹線部919が接続されている。
車両のエンジンルーム41内に配索されたエンコパバックボーン幹線部919は、供給側制御ボックス951に接続された枝線サブハーネス975を介して主電源であるメインバッテリ5に接続されている。供給側制御ボックス951及び制御ボックス959には、枝線サブハーネス971及び973が接続されている。
【0208】
ここで、エンジンルーム41と車室43との境界にはダッシュパネル950があり、電気接続部材がダッシュパネル950を貫通する箇所については完全にシールすることが求められる。すなわち、ダッシュパネル950は、車室43内の快適性を保つために、エンジンルーム41からの振動の絶縁、サスペンションからの振動や騒音の低減、高熱、騒音、臭い等の遮断の機能を備える必要があり、この機能を損なわないように、電気接続部材の貫通箇所にも十分な配慮が求められる。
【0209】
図46に示すように、ジョイントボックス920は、ハウジング921内を貫通する中継端子923,925,927と、ダッシュパネル950との間をシールするパッキン922とを備える。
そして、フロアバックボーン幹線部913の立ち上がり部917における電源ライン931、アースライン933、及び通信ライン935と、エンコパバックボーン幹線部919における電源ライン931、アースライン933、及び通信ライン935とは、中継端子923,925,927の両端部にボルト941によりボルト締結及びコネクタ943によりコネクタ結合することで接続される。
【0210】
そこで、フロアバックボーン幹線部913とエンコパバックボーン幹線部919とは、ダッシュパネル950の貫通孔に装着されたジョイントボックス920を介して液密に接続される。
【0211】
<第2実施形態>
図47は、本発明の第2実施形態に係る車両用回路体を車体上に配索した状態における各部のレイアウトおよび接続状態を示す概略平面図である。
図47に示す車両用回路体1000は、基本的な構成要素として、所謂プラグインハイブリッド車の車体1001に配索される幹線であるバックボーン幹線部1015と、車体各部の電装品に接続される枝線(フロントドア枝線サブハーネス1063、リアドア枝線サブハーネス1065など)と、幹線に供給される電源ラインの電力及び通信ラインの信号を幹線に接続される枝線へ分配するための制御部を有し、幹線に沿って分散配置された複数の制御ボックス(供給側制御ボックス1051、分岐制御ボックス1053、中間制御ボックス1057、制御ボックス1055,1059)と、高圧バッテリパック1110とパワーコントロールユニット1220とを接続するために車体下部に配設された高圧ケーブル1300と、を備える。
【0212】
高圧バッテリパック1110は、高圧J/B1140を介して高圧バッテリ1130の高圧電力を高圧ケーブル1300に送電する。高圧ケーブル1300からパワーコントロールユニット1220に送電された電力は、DC/DCコンバータ1230を介してモータジェネレータ及びエンジン1210に送られる。
高圧J/B1140には、DC/DCコンバータ1120を介してバックボーン幹線部1015のフロアバックボーン幹線部1013及びインパネバックボーン幹線部1011が接続されている。
【0213】
供給側制御ボックス1051に接続された電源ケーブルは、ヒュージブルリンク1020を介してメインバッテリ1005に接続されている。メインバッテリ1005は、ヒュージブルリンク1022を介してパワーコントロールユニット1220のDC/DCコンバータ1230にも接続されている。
車両用回路体1000は、DC/DCコンバータ1230とDC/DCコンバータ1120とが、車両のフロントとリアに配置されることで、電源冗長性を実現することができる。
【0214】
そこで、バックボーン幹線部1015には、高圧バッテリパック1110の電力をDC/DCコンバータ1120で降圧し、サブ電源として供給することができる。
即ち、バックボーン幹線部1015の端部にヒュージブルリンク1020,1022が配置され、フロント又はリアでショートした場合には回路遮断し、DC/DCコンバータ1230又はDC/DCコンバータ1120の一方から電源供給を継続(バックアップ)することができる。
【0215】
従って、上述の車両用回路体10,900,1000によれば、様々な電装品と車両上の電源との間および電装品同士の電気接続のための構造、特に幹線部分の構成を簡素化し、新たな電線の追加も容易にできると共に、小型化及び重量の低減が可能になる。
【0216】
<第3実施形態>
<主要部位の構成例>
本発明の第3実施形態における車両用回路体を含む車載装置の主要部位の構成例を
図48に示す。
【0217】
図48に示した車両用回路体は、車載バッテリなどの主電源の電力を車体各部の補機、すなわち様々な電装品に対してそれぞれ供給したり、電装品同士の間で信号のやり取りを行うために必要な伝送線路として利用されるものである。つまり、機能的には一般的なワイヤハーネスと同様であるが、構造が一般的なワイヤハーネスとは大きく異なる。
【0218】
図48に示した車載装置は、車体のエンジンルーム2011と車室(乗員室)2013とを区画するダッシュパネル2016の近傍における車室内側の構成を表している。
図48に示すように、ダッシュパネル2016の少し後方にあるインパネ部(インストルメントパネルの部位)には、補強材であるリーンホース(不図示)が車体の左右方向に向かって延びるように設置されている。そして、このリーンホースの近傍に、車両用回路体の主要な構成要素が配置されている。なお、この車体の左右方向に延伸する箇所の車両用回路体は、リーンホースに固定されていても、ダッシュパネル2016に固定されていても、あるいは専用の固定具に固定されていてもよい。
【0219】
図48に示した車両用回路体には、複数のバックボーン幹線部2021、2022、2023と、複数のバックボーン制御ボックス2031、2032、2033とが含まれている。バックボーン幹線部2021、2022、2023の各々は、電源ライン、アースライン、通信ライン等の線路を含んでいる。また、各バックボーン幹線部内の電源ラインおよびアースラインについては、断面形状が扁平な帯状の金属材料(例えば銅やアルミニウム)を採用し、これらの金属材料を互いに電気的に絶縁した状態で厚み方向に積層して構成してある。これにより、大電流の通過を許容可能になり、且つ厚み方向に対する曲げ加工が比較的容易になる。
【0220】
バックボーン幹線部2021および2022は、ダッシュパネル2016の面に沿った箇所で、リーンホースの上方の位置にリーンホースとほぼ平行になるように左右方向に向かって直線的に配置されている。また、バックボーン幹線部2023は、車体の左右方向のほぼ中央部に配置されており、ダッシュパネル2016の面に沿った箇所では上下方向に直線的に延びている。また、バックボーン幹線部2023はダッシュパネル2016と車室内フロアとの境界近傍でほぼ90度厚み方向に曲げられて、車室内フロアに沿って車体の前後方向に延びるように配置されている。
【0221】
バックボーン制御ボックス2032は車体の左右方向のほぼ中央部に配置され、バックボーン制御ボックス2031は左右方向の左端近傍に配置され、バックボーン制御ボックス2033は左右方向の右端近傍に配置されている。
【0222】
そして、バックボーン幹線部2021の左端はバックボーン制御ボックス2031の右端と連結され、バックボーン幹線部2021の右端はバックボーン制御ボックス2032の左端と連結されている。また、バックボーン幹線部2022の左端はバックボーン制御ボックス2032の右端と連結され、バックボーン幹線部2022の右端はバックボーン制御ボックス2033の左端と連結されている。また、バックボーン幹線部2023の前方の先端はバックボーン制御ボックス2032の下端と連結されている。
【0223】
つまり、バックボーン幹線部2021〜2023と、バックボーン制御ボックス2031〜2033とで
図48に示すようにT字に似た形状に構成されている。また、バックボーン幹線部2021〜2023の内部回路は、バックボーン制御ボックス2032を経由して互いに電気的に接続可能な状態になっている。
【0224】
<バックボーン制御ボックスの詳細>
車体の左側に配置されているバックボーン制御ボックス2031には、主電源接続部2031a、幹線接続部2031b、および枝線接続部2031cが備わっている。
図48に示すように、バックボーン制御ボックス2031の主電源接続部2031aには主電源ケーブル2041が接続され、幹線接続部2031bにはバックボーン幹線部2021の左端が接続され、枝線接続部2031cには複数の枝線サブハーネス2042がそれぞれ接続される。
【0225】
また、
図48は示されていないが、バックボーン幹線部2021の内部には2系統の電源ライン、アースライン、および通信ラインが含まれている。また、主電源ケーブル2041の電源ラインおよびアースラインと接続するために、主電源接続部2031aには2つの接続端子が設けてある。
【0226】
例えば、バックボーン幹線部2021に含まれる2系統の電源ラインのうち、一方の電源ラインは主電源からの電力を供給する経路として利用される。また、もう一方の電源ラインは、例えば異常発生時にバックアップ用の電源電力を供給するための経路として利用される。
【0227】
また、バックボーン制御ボックス2031の内部には、主電源ケーブル2041、バックボーン幹線部2021、枝線サブハーネス2042の間で各回路の電源系統、アース系統、通信系統を相互に接続するための回路基板が含まれている。
【0228】
主電源ケーブル2041については、電源ラインおよびアースラインの各々の先端に接続した端子を主電源接続部2031aの端子と接続し、ボルトとナットを用いて固定することにより、これらの回路を接続することができる。
【0229】
枝線サブハーネス2042については、各々の先端に設けたコネクタが枝線接続部2031cに対して着脱自在であり、必要に応じて回路を接続することができる。枝線サブハーネス2042の各々は、電源ライン、アースライン、通信ラインの全て、またはそれらの一部分を含むように構成される。なお、
図48に示したバックボーン制御ボックス2031においては、枝線接続部2031cに6個のコネクタが備わっているので、最大で6個の枝線サブハーネス2042を接続可能である。
【0230】
図48に示すように、バックボーン幹線部2021〜2023とバックボーン制御ボックス2031〜2033とを組み合わせ、更にバックボーン制御ボックス2031〜2033に様々な枝線サブハーネス2042〜2044を接続することにより、背骨(バックボーン)と似た単純な構造で、様々な伝送線路の配索を行うことが可能になる。
【0231】
例えば、オプションや追加で車両に搭載される様々な電装品に対しても、バックボーン制御ボックス2031〜2033のいずれかに接続する枝線サブハーネス2042〜2044の追加や変更だけで対応できるので、車両用回路体の幹線の構造に変更を加える必要がない。なお、本実施形態では枝線サブハーネス2042〜2044をバックボーン制御ボックス2031〜2033に接続する場合を想定しているが、例えばバックボーン幹線部2021〜2023上の適当な中継点の箇所に別の枝線サブハーネス(図示せず)を接続してもよい。
【0232】
実際の車載装置においては、例えば
図48に示すように、枝線サブハーネス2042を経由して車両に備わった電子制御ユニット(ECU)2051をバックボーン制御ボックス2031やその他の電装品に接続することができる。また、枝線サブハーネス2043を経由して、バックボーン制御ボックス2032に電子制御ユニット2051、2052、2053やその他の電装品を接続することができる。更に、枝線サブハーネス2044を経由してバックボーン制御ボックス2033に様々な電装品を接続することができる。そして、各電子制御ユニット2051、2052、2053は、枝線サブハーネス2042、2043、2044の通信ライン、およびバックボーン制御ボックス2031〜2033等を経由して車両上の様々な電装品を制御することができる。
【0233】
一方、
図48に示した車両用回路体は、車室2013内部の電装品だけでなく、エンジンルーム2011内の主電源や電装品との間の電気接続も行う必要がある。そして、エンジンルーム2011と車室2013との境界にはダッシュパネル2016があり、電気接続部材がダッシュパネル2016を貫通する箇所については完全にシールすることが求められる。すなわち、ダッシュパネルは、車室内の快適性を保つために、エンジンルームからの振動の絶縁、サスペンションからの振動や騒音の低減、高熱、騒音、臭い等の遮断の機能を備える必要があり、この機能を損なわないように、電気接続部材の貫通箇所にも十分な配慮が求められる。
【0234】
しかし、例えばバックボーン幹線部2021〜2023のように断面積が大きくしかも特定の方向以外には曲げにくいような部品がダッシュパネル2016を貫通するように構成すると、貫通箇所のシールが非常に難しくなり、車両用回路体の配索作業も困難になる。
【0235】
図48に示した車両用回路体においては、その主要な構成要素であるバックボーン幹線部2021〜2023、およびバックボーン制御ボックス2031〜2033の全てが車室2013側の空間に配置されているので、ダッシュパネル2016を貫通する箇所の問題を容易に解決できる。
【0236】
実際には、
図48に示すように、バックボーン制御ボックス2031の左端に接続した主電源ケーブル2041がダッシュパネル2016の貫通孔2016aを通過するように配索し、エンジンルーム2011内の主電源の回路とバックボーン制御ボックス2031の電源回路との間を主電源ケーブル2041を経由して接続する。これにより、主電源の電力をバックボーン制御ボックス2031に供給することができる。また、主電源ケーブル2041については曲げやすい材料を用いたり、断面形状を円形にしたり、断面積が比較的小さくなるように構成することが可能であるので、貫通孔2016aにおけるシールを容易に行うことができ、配索作業を実施する際の作業性の悪化も回避できる。
【0237】
また、車室2013内の車両用回路体にエンジンルーム2011内の様々な電装品を接続する場合には、例えばバックボーン制御ボックス2031に接続した枝線サブハーネス2042の一部分がダッシュパネル2016を貫通するように設置したり、バックボーン制御ボックス2033に接続した枝線サブハーネス2044の一部分がダッシュパネル2016を貫通するように設置することで、所望の電気接続経路を実現できる。この場合、枝線サブハーネス2042、2044等は断面積が小さく、曲げることも容易であるため、ダッシュパネル2016を貫通する箇所をシールすることは容易である。
【0238】
なお、エンジンルーム2011側には主電源が存在するので、ダッシュパネル2016を貫通する箇所に設置する枝線サブハーネスについては、電源ラインやアースラインを省略し、通信ラインだけに限定することもできる。また、このような特別な枝線サブハーネスについては、バックボーンの幹線から分岐した枝線サブハーネス2042〜2044とは別の、通信用の幹線として特別に構成しても良い。
【0239】
本実施形態の車載装置は、上述の
図48に示したような構成を基本としているが、更なる改良のために以下に説明するように、構成や動作について様々な変更や追加を行うことができる。
【0240】
<電力供給に関する特徴的な技術>
<システムの構成例>
図49に示したシステムは、電力供給および通信のための主要な経路を確保するためにバックボーン幹線BB_LMを備えている。また、バックボーン幹線BB_LMの途中には複数の制御ボックスCB(1)、CB(2)が接続されている。バックボーン幹線BB_LMの上流側には、車両側の主電源であるメインバッテリMBおよびオルタネータALTが接続されている。
【0241】
各制御ボックスCB(1)、CB(2)には様々な補機AEを接続するための接続部Cnxが設けてある。各補機AEは、車両上に搭載される様々な負荷、電子制御ユニット(ECU)等の電装品に相当する。
【0242】
図49に示した構成においては、補機AE(1)が枝線サブハーネスLS(1)を介して制御ボックスCB(1)の接続部Cnxにある1つのコネクタと接続されている。また、補機AE(2)が枝線サブハーネスLS(2)を介して制御ボックスCB(1)の接続部Cnxにある1つのコネクタと接続されている。同様に、補機AE(3)およびAE(4)は、それぞれ枝線サブハーネスLS(3)およびLS(4)を介して制御ボックスCB(2)の接続部Cnxにある1つのコネクタと接続されている。
【0243】
また、各制御ボックスCBの接続部Cnxには
図49には示されていない複数のコネクタが装備されているが、これら複数のコネクタは全て共通の形状、大きさ、および構成になっている。したがって、各枝線サブハーネスLSを接続部Cnxのコネクタと接続する場合には、複数のコネクタのいずれを選択しても良い。
【0244】
したがって、主電源等からバックボーン幹線BB_LMに供給される電源電力は、制御ボックスCB(1)またはCB(2)の箇所で分岐され、分岐した箇所に接続した枝線サブハーネスLSを経由して各補機AEに供給される。
【0245】
<幹線の構成例>
バックボーン幹線BB_LMの構成例を
図50(a)および
図50(b)に示す。
図50(a)に示した例では、バックボーン幹線BB_LMは独立した2系統の電源ラインL1、L2と、アースラインL3と、2本の電線で構成される通信ラインL4、L5とを備えている。これらの電源ラインL1、L2、アースラインL3、通信ラインL4、およびL5は、互いに並走するように、すなわち互いに平行な線路として配置されている。なお、各補機AEが車体アースなど、他の経路で電源のアースと接続できる環境であれば、アースラインL3をバックボーン幹線BB_LMの構成要素から除外することもできる。
【0246】
また、
図50(a)に示した例では、2系統の電源ラインL1およびL2は、いずれも共通の12[V]の直流電源電圧を扱うように、構成されている。また、制御ボックスCBは、2系統の電源ラインL1およびL2のいずれか一方のみを選択して下流側に供給する機能を備えている。したがって、例えばバックボーン幹線BB_LMの途中で電源ラインL1、L2のいずれか一方のみが断線したような場合には、残りの正常な経路を用いて、各制御ボックスCBは電力供給を継続することができる。
【0247】
図50(b)に示した例では、バックボーン幹線BB_LMは、独立した2系統の電源ラインL1、L2Bと、アースラインL3と、2本の電線で構成される通信ラインL4、L5とを備えている。2系統の電源ラインL1、L2Bのうち、一方の電源ラインL1は12[V]の直流電源電圧を扱うように構成されている。また、他方の電源ラインL2Bは48[V]の直流電源電圧を扱うように構成されている。
【0248】
したがって、
図50(b)に示した構成においては、制御ボックスCBが2種類の電源電圧のいずれかを選択して配下の補機AEに供給することができる。そのため、例えば負荷の特性や状況に応じて適切な電源電圧を自動的に選択することもできる。例えば、電力消費が大きい負荷の場合には、大きな電源電流が流れて供給線路における電圧降下が増大するので、高い電源電圧を選択することで、電力損失の増大を抑制できる。また、
図50(b)に示した例と同様に、電源ラインL1、L2Bのいずれか一方のみが断線したような場合には、残りの正常な経路を用いて、各制御ボックスCBは電力供給を継続することができる。
【0249】
なお、2種類の電源電圧を使用する場合には、主電源側で、電圧を12[V]から48[V]に昇圧してバックボーン幹線BB_LMに供給することもできるし、いずれかの制御ボックスCBの内部で、バックボーン幹線BB_LMから供給された電圧が12[V]の電力を昇圧して48[V]の電力を生成することもできる。
【0250】
<電源系統の回路構成例>
制御ボックスCB内部の電源系統に関する具体的な構成例を
図51に示す。この構成においては、制御ボックスCBの内部に、マイクロコンピュータ(CPU)CBa、スイッチ回路CBb、およびブリッジ回路CBcが備わっている。
【0251】
また、マイクロコンピュータCBaはFPGA(field-programmable gate array)で構成されているため、外部からのプログラムの書き換え指示(リプログラム)により構成および動作を再構成できる。なお、本明細書におけるFPGAの構成は一例である。
【0252】
また、マイクロコンピュータCBaには通信ラインLxを経由して所定の診断ツールDTが接続される。実際には、車両の工場で調整を行ったりメンテナンスを行う際にのみ、診断ツールDTを接続する場合もあるし、常時診断を行って自動的に問題を回避できるように、診断ツールDTを標準的に車両に搭載しておく場合もある。
【0253】
なお、通信ラインLxについては、バックボーン幹線BB_LM内の通信ラインL4、L5をそのまま利用することもできるし、専用の通信線として別途用意することもできる。所定の管理者が、診断ツールDTを用いて指示を与えることにより、あるいは所定の修復プログラムの実行により、診断ツールDTがマイクロコンピュータCBaの構成および動作に関するプログラムの書き換えを行うことができる。
【0254】
スイッチ回路CBbは、バックボーン幹線BB_LMの電源ラインL1又はL2から供給される直流電源電圧(+B)の電力を、複数の出力系統に分岐すると共に、出力系統毎に通電のオンオフを切り替える複数個のスイッチング素子を備えている。
図51の例では、6個のパワーFET(電界効果トランジスタ)をスイッチング素子として採用している。これらのスイッチング素子の各々は、マイクロコンピュータCBaの出力によりオンオフできるように構成されている。また、これらのスイッチング素子の動作に関しては、単純なオンオフの他に、例えばオンオフのパルス幅制御(PWM)を行うことにより、出力電力調整機能を持たせることも可能である。また、従来は、+B負荷、ACC負荷、IG負荷をそれぞれ決められたところに接続する必要があったが、リプログラムにより、パワーFETにACCリレーやIGリレーと同等の機能を持たせることができるので、+B負荷、ACC負荷、IG負荷をどこにでも接続することが可能になる。
【0255】
ブリッジ回路CBcは、スイッチ回路CBbの出力側にある複数の出力系統の間をブリッジとして相互に接続するための複数個のスイッチング素子を備えている。これらのスイッチング素子も、マイクロコンピュータCBaの出力によりオンオフできるように構成されている。
【0256】
<電力制御機能の構成例>
制御ボックスCBが備える電力制御機能CBxの具体例を
図52に示す。この例では、代表的な電力制御機能として
図52に示した6種類の機能CBx0、CBx1、CBx2、CBx3、CBx4、およびCBx5が制御ボックスCBに備わっている。これらの機能はマイクロコンピュータCBaが実行する処理により実現する。
【0257】
機能CBx0:マイクロコンピュータCBaが様々な状況を検出し、検出した状況に応じて、バックボーン幹線BB_LMから供給される複数系統の電力の全てまたはいずれか一方のみの電力を選択的に下流、すなわち補機AE側に供給する。例えば、バックボーン幹線BB_LMが
図50(a)に示した構成の場合に、電源ラインL1、L2のいずれか一方の断線を検知すると、電源ラインL1、L2のうち正常な経路から供給される電力のみを出力経路に供給する。また、例えば、バックボーン幹線BB_LMが
図50(b)に示した構成の場合に、仕様として、または実際の負荷電流が大きい補機AEが接続されている出力系統に対しては、電源ラインL2Bから供給される電圧が高い(48[V])電力を優先的に選択して出力に供給する。
【0258】
機能CBx1:マイクロコンピュータCBaが枝線毎に、供給すべき電力の種類を識別する。具体的な電力の種類としては、常時電力が供給される「+B」と、アクセサリスイッチのオンオフに連動して電力供給の有無が制御される「ACC」と、イグニッションスイッチのオンオフに連動して電力供給の有無が制御される「IG」などがある。マイクロコンピュータCBaは、その配下に接続されている補機AEの種類を識別することにより、「+B,ACC,IG」の中でより適切な種類の電力を選択的に該当する枝線に供給する。なお、プログラムの定数データにより事前に決定された種類の電力を各枝線に供給してもよいし、実際に接続されている補機AEからIDなどの情報を取得して電力の種類を識別してもよい。
【0259】
機能CBx2:マイクロコンピュータCBaは、車両側に備わっているアクセサリスイッチおよびイグニッションスイッチのオンオフ状態を監視して、種類毎に各出力系統の電力のオンオフを制御する。すなわち、電力の種類として「ACC:アクセサリ」が割り当てられた出力系統の枝線に対しては、アクセサリスイッチがオンの時のみスイッチ回路CBbを導通にして電力を供給し、アクセサリスイッチがオフの時は電力を遮断する。また、電力の種類として「IG:イグニッション」が割り当てられた出力系統の枝線に対しては、イグニッションスイッチがオンの時のみスイッチ回路CBbを導通にして電力を供給し、イグニッションスイッチがオフの時は電力を遮断する。
【0260】
機能CBx3:マイクロコンピュータCBaは、診断ツールDTの指示に従い、各枝線へ供給する電源電力の種類「+B,ACC,IG」を変更(リプログラム)する。例えば、スイッチ回路CBb中の素子「FET4」が出力する電力の種類を標準状態では「IG」に割り当てておく。そして、変更すべき何らかの必要性が生じた時に、マイクロコンピュータCBaのリプログラムを実行し、素子「FET4」が出力する電力の種類を「ACC」に変更する。このような変更は、マイクロコンピュータCBaが素子「FET4」に与える制御信号の制御条件に影響を及ぼす。つまり、電力の種類として「IG」が割り当てられている場合には、イグニッションスイッチの状態に応じて素子「FET4」への制御信号が変化し、電力の種類として「ACC」が割り当てられている場合には、アクセサリスイッチの状態に応じて素子「FET4」への制御信号が変化する。
【0261】
機能CBx4:マイクロコンピュータCBaは、出力側に接続される枝線毎に、該当する電線を保護する。具体的には、出力系統毎に実際の通電電流を計測し、この通電電流から熱量を算出して、所定以上の温度上昇が生じる前に、スイッチ回路CBbの該当する系統を遮断する。
【0262】
機能CBx5:マイクロコンピュータCBaは、スイッチ回路CBbの素子毎に、故障の有無を検出し、故障発生を検知した場合はそれを自動的に回避して機能を維持する。具体的には、ブリッジ回路CBcを用いて隣接する出力系統間を互いに接続し、故障が発生した素子を通らない経路を一時的に利用して出力側への電力供給を継続する。
【0263】
なお、上記の「+B,ACC,IG」の代わりに、電力の種類の新しい区分として、「+BA」、「IGP」、「IGR」を採用することもできる。「+BA」は、ユーザが車両に近づいた時にオンになる系統の電力を表す。「IGP」は、イグニッションがオンになり、エンジンがフルの状態でオンになる系統の電力を表す。「IGR」は、タイヤが回っているときにオンになる系統の電力を表す。このような新区分の電力種類を採用する場合であっても、制御に必要な情報を取得することにより、
図52に示した各機能CBx1およびCBx2を同様に実現できる。
【0264】
<通信に関する特徴的な技術>
<切れない通信のための技術>
車両上に搭載される通信システムの構成例を
図53に示す。
図53に示した構成では、リング状に形成された通信用幹線BB_LCを採用している。なお、
図53には示してないが、この通信用幹線BB_LCは、電力供給用のワイヤハーネスあるいは、特別に用意された電源ラインを含むバックボーン幹線と一体的に構成される。
【0265】
図53に示した構成では、通信用幹線BB_LCの途中に分散した状態で複数の制御ボックスCB(1)〜CB(4)が接続されている。また、制御ボックスCB(1)〜CB(4)の配下には、それぞれ枝線サブハーネスLS(1)〜LS(4)を介して補機AE(1)〜AE(4)が接続されている。これらの補機AEは、車両上に配置される様々な負荷や、電子制御ユニット(ECU)のような電装品に相当する。
【0266】
複数の制御ボックスCB(1)〜CB(4)の各々は、幹線から分岐した電力を枝線サブハーネスLSを経由して補機AEに供給したり、通信用幹線BB_LCを経由する通信経路の分岐を行うための機能を備えている。各枝線サブハーネスLSは、電源ラインおよび通信ラインを備えている。また、枝線サブハーネスLSがアースラインを含む場合もある。
【0267】
図53に示した構成のシステムにおいて、補機AE(1)と補機AE(2)との間で通信を行う場合を想定する。この場合、リング状の通信用幹線BB_LCのうち、制御ボックスCB(1)と制御ボックスCB(2)との間の経路を利用することにより、最短距離の経路で通信できる。
【0268】
但し、通信用幹線BB_LCの一部分で断線が発生する場合がある。しかし、仮に制御ボックスCB(1)と制御ボックスCB(2)との間の経路で通信用幹線BB_LCが断線したとしても、この経路全体がリング形状であるため、別の経路を利用することができる。すなわち、制御ボックスCB(1)から制御ボックスCB(4)およびCB(3)を順次に経由して制御ボックスCB(2)に至る通信経路を利用できるので、補機AE(1)と補機AE(2)との間の通信経路が途切れることはない。
【0269】
なお、
図49に示したバックボーン幹線BB_LMのように直線的な経路の通信システムであっても、
図53に示したリング形状の通信用幹線BB_LCをそのまま適用することが可能である。例えば、直線的なバックボーン幹線BB_LM上に、往路の通信用幹線BB_LCと、復路の通信用幹線BB_LCとの2つを1組として平行に配置し、往路と復路の通信用幹線BB_LCを端部でそれぞれ接続することにより、リング形状の、すなわち閉ループの通信経路を構成できる。
【0270】
<接続部のセキュリティ技術>
<物理的手段を用いた保護>
各制御ボックスCBの接続部Cnxを物理的に保護するための技術の具体例を
図55(a)、
図55(b)、および
図55(c)にそれぞれ示す。
図55(a)、
図55(b)、および
図55(c)に示した回路基板CBdは、各制御ボックスCBの内部に装備されている。
【0271】
制御ボックスCB(1)〜CB(4)の各々は、枝線サブハーネスLS等を介して様々な補機AEを配下に接続できるように、複数のコネクタを有する接続部Cnxを備えている。これらのコネクタは、例えばUSB(Universal Serial Bus)のような所定の規格に適合するように構成され、同時に複数の機器を接続できるように複数のコネクタを並べた状態で配置してある。
【0272】
しかし、車両の車種の違い、グレードの違い、仕向地の違い、車両を購入したユーザのオプション選択の違いなどにより、特定の制御ボックスCBについては、接続部Cnxのコネクタの全てが使用されない状態になったり、接続部Cnxのコネクタの一部が使用されない状態になる可能性がある。また、車両の車種の違い、グレードの違い、仕向地の違い等を反映するように各制御ボックスCBの構成を変更すると、これらの構成を共通化できないため、制御ボックスCBの品番数が増え、製造コストも増大する。
【0273】
一方、車両出荷時の規定の状態で枝線サブハーネスLS等が何も接続されない空き状態のコネクタが接続部Cnxに存在する場合には、空き状態のコネクタに対してユーザまたは第三者が勝手に何らかの機器を不正に接続する可能性がある。このような不正を防止するために、
図55(a)、
図55(b)、および
図55(c)に示した物理的な構成を用いる。
【0274】
図55(a)に示した構成においては、接続部Cnxの6個全てのコネクタが使用されない場合を想定している。したがって、接続部Cnxのコネクタ全てが勝手に使用されないように、物理的な鍵付きカバーKc1を用いて、全コネクタの開口部等を閉塞する。
【0275】
鍵付きカバーKc1は、接続部Cnxの外側を覆うカバーであり、接続部Cnxにしっかりと固定することができる。また、鍵付きカバーKc1は鍵機構を内蔵しており、事前に用意した特定の物理的な解除キーKkを用いて操作しない限り、鍵付きカバーKc1の固定を解除することはできない構造になっている。したがって、解除キーKkを所持しない人がこの接続部Cnxのコネクタに何らかの機器を不正に接続することはできない。
【0276】
図55(b)に示した構成においては、接続部Cnxの一部のコネクタには所定の枝線サブハーネスLS等が接続され、残りのいくつかのコネクタが空き状態になる場合を想定している。したがって、接続部Cnxのうち、空き状態のコネクタに対しては、勝手に使用されないように、物理的な鍵付きカバーKc2を用いて、コネクタの開口部等を個別に閉塞する。
【0277】
鍵付きカバーKc2は、接続部Cnxにある形状および大きさが同じ6個のコネクタのいずれか1つに装着することにより、該当する1つの開口部を閉塞した状態でコネクタに固定できる構造になっている。また、鍵付きカバーKc1と同様に、鍵機構を内蔵しており、事前に用意した特定の物理的な解除キーKkを用いて操作しない限り、鍵付きカバーKc2の固定を解除することはできない構造になっている。
【0278】
図55(c)に示した構成においては、接続部Cnxの一部のコネクタには所定の枝線サブハーネスLS等が接続され、残りのいくつかのコネクタが空き状態になる場合を想定している。したがって、接続部Cnxのうち、空き状態のコネクタに対しては、勝手に使用されないように、物理的な封印用シールKsを用いて、コネクタの開口部等を個別に閉塞する。なお、複数のコネクタの開口部を1つの封印用シールKsで一括して覆うように構成してもよい。
【0279】
封印用シールKsは、例えば細長く薄いテープ状に形成され、樹脂などで形成されている。また、一般的に市販されている他のシールと明確に区別できるように、例えば表面等に特殊な模様などが印刷等により形成されている。また、封印用シールKsは、その長手方向の両端部が、接着等により接続部Cnxに固定される。
【0280】
封印用シールKsにより使用できないように開口部が覆われた特定のコネクタをユーザ等が不正に使用する場合には、封印用シールKsを破ったり、接着箇所をはがすことになるため、封印を解除した形跡を物理的に残すことができる。つまり、コネクタの不正な使用に関する確認を、所定の管理者等が事後に容易に行うことができる。
【0281】
<制御による保護>
各制御ボックスCBの接続部Cnxを電気的な制御により保護するための技術の具体例を
図56に示す。すなわち、回路基板CBd上に設けられた図示しないマイクロコンピュータが、
図56の制御を実行し、接続部Cnxにおける未使用のコネクタを不正使用から保護する。
【0282】
回路基板CBd上のマイクロコンピュータは、診断ツールなどを利用して事前に書き込まれたプログラムおよび定数データに基づき、マイクロコンピュータが管理している接続部Cnxにおけるコネクタ毎の使用有無を把握している。また、このマイクロコンピュータは、各々のコネクタに設けられた複数の端子の電圧を監視することにより、各々のコネクタに何らかの機器が接続されたか否かを実際に検知できる。
【0283】
このマイクロコンピュータは、ステップS11で、各通信ポート用コネクタの接続の有無を、コネクタ毎に監視する。そして、各コネクタに対する新たな接続を検知すると、ステップS12からステップS13に進む。そして、新たな接続を検知したコネクタが、未使用のコネクタとして登録されている場合には、次のステップS14に進み、不正接続の検知処理を実行する。
【0284】
ステップS14の処理により、例えば、不正使用されたことを表すデータを不揮発性メモリに保存したり、不正使用に関する異常表示を、メータユニットなどのディスプレイを用いて実行する。更に、該当するコネクタの通信を自動的に遮断して、機器の不正使用を防止することもできる。
【0285】
<様々な仕様の通信網および通信機器を相互接続するための技術>
車両に搭載される通信システムの構成例を
図54に示す。
図54に示した通信システムは、通信用幹線BB_LCを備えている。なお、
図54には示してないが、この通信用幹線BB_LCは、電力供給用のワイヤハーネスあるいは、特別に用意された電源ラインを含むバックボーン幹線と一体的に構成される。また、このバックボーン幹線には、アースラインが必要に応じて装備される。
【0286】
図54に示した構成においては、共通の通信用幹線BB_LC上に複数の制御ボックスCB(1)、CB(2)、CB(3)が複数のエリアAR1、AR2、AR3に分散した状態で接続してある。エリアAR1、AR2、AR3等の具体例としては、エンジンルーム、インパネ領域、フロア領域、ラゲッジルームなどが想定される。
【0287】
制御ボックスCB(1)〜CB(3)の各々は、幹線上に供給される電力を分岐して補機AEに供給する機能や、通信線の経路を分岐して接続経路を確保するための機能を有している。更に、
図54に示した構成では、複数の制御ボックスCB(1)、CB(2)、CB(3)の各々は、ゲートウェイGWを備えている。
【0288】
図54に示した複数のゲートウェイGW(1)〜GW(3)の各々は、基本的には通信プロトコル等の仕様が異なるネットワーク同士または機器同士を接続するための機能を提供する。
【0289】
例えば、車両上のシステムにおいては、CAN(Controller Area Network)、CAN_FD(CAN with Flexible Data Rate)、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)、イーサネット(登録商標)、光通信網などのように互いに仕様が異なる様々な規格の通信機器やネットワークが、例えばエリア毎、車種毎等で採用される可能性がある。これらの仕様の違いをゲートウェイGWで吸収することにより、仕様が異なる機器同士を相互に接続し通信することが可能になる。
【0290】
図54に示した構成においては、エリア毎にそれぞれゲートウェイGWが制御ボックスCBに備わっているので、エリア毎に通信仕様が異なる場合であっても、ゲートウェイGWを使用して相互に通信回線を接続することができる。
【0291】
<高速通信を可能にするための技術およびゲートウェイの技術>
光通信機能およびゲートウェイ機能を備えた制御ボックスCBおよびバックボーン幹線BB_LMの通信系の構成例を
図57に示す。また、通信系統に電源電力を供給するための構成例を
図58に示す。
【0292】
図57に示したシステムにおいても、バックボーン幹線BB_LMに制御ボックスCBが接続されている。また、
図57に示したバックボーン幹線BB_LMは、電源ラインL1、L2、アースラインL3、通信ラインL4B、L5Bを備えている。なお、GNDはグランド、すなわちアースを意味している。
【0293】
図57の例では電源ラインL1は車両のメインバッテリ(BATT)と接続され、電源ラインL2はサブバッテリと接続される。また、通信ラインL4BおよびL5Bは、光通信に対応するためにそれぞれ光ファイバで構成されている。幹線で光通信を採用することにより、車両上の様々な箇所で高速通信の実施が可能になる。また、ノイズの影響を受けにくくなる。
【0294】
また、
図57に示した制御ボックスCBは、光通信の他に、イーサネット(登録商標)、CAN_FD、CXPIの各通信機能に対応している。具体的には、8組の通信ポートコネクタCP1〜CP8が制御ボックスCBに備わっている。通信ポートコネクタCP1、CP2はイーサネット(登録商標)専用の通信ポートであり、通信ポートコネクタCP3〜CP8の各々は、CAN_FDおよびCXPIのいずれかの仕様を選択可能な通信ポートである。また、8組の通信ポートコネクタCP1〜CP8の各々は、金属(メタル)の通信線に対応した仕様になっている。分岐線をメタル仕様にすることで、分岐線の部品コストを低減できる。
【0295】
図57に示したように、この制御ボックスCBは、電源回路CB01、ゲートウェイ用制御回路CB02、PHY回路CB03、CB04、CB05、CB06、ネットワークスイッチCB07、CB08、トランシーバCB09、CB10、および切替回路CB11を備えている。
【0296】
電源回路CB01は、電源ラインL1、L2およびアースラインL3と接続されており、バックボーン幹線BB_LMから供給される電源電力に基づいて、ゲートウェイ用制御回路CB02等の各回路が必要とする電源電圧、例えば「+5[V]」を生成する。
【0297】
ゲートウェイ用制御回路CB02は、マイクロコンピュータ(略してマイコン)により構成されており、ゲートウェイ(GW)の機能を実現する。すなわち、規格が異なる通信間のプロトコル変換や、信号切替の制御を実施する。切替回路CB11を切り替えるための制御信号も生成する。
【0298】
PHY回路CB03、CB04、CB05、CB06は、イーサネット(登録商標)における物理層(PHYsical Layer)のインタフェース機能を提供する。また、PHY回路CB03およびCB04の各々は、光信号の2波長に対応し、光信号と電気信号との相互変換を行ったり、デジタル信号とアナログ信号との相互変換を行う機能を有している。また、PHY回路CB05、CB06は、イーサネット(登録商標)のメタル規格の信号に対応し、デジタル信号とアナログ信号との相互変換を行う機能を有している。
【0299】
ネットワークスイッチCB07、CB08は、イーサネット(登録商標)の規格に対応したスイッチ回路であり、受信したデータの宛先を見て、接続された各機器への転送の可否を判断する機能を有している。
【0300】
図57に示した構成においては、ネットワークスイッチCB07は、車両システム上のシャシー系、およびパワートレイン系の制御機能を割り当ててある。また、ネットワークスイッチCB08は、車両システム上のボディ系、エンターテインメント系、運転支援系、および高度運転支援系の制御機能を割り当ててある。ネットワークスイッチCB07は、PHY回路CB03およびCB04と、ゲートウェイ用制御回路CB02との間に接続してある。また、ネットワークスイッチCB08は、PHY回路CB03〜CB06と、ゲートウェイ用制御回路CB02との間に接続してある。
【0301】
トランシーバCB09およびCB10は、ゲートウェイ用制御回路CB02と切替回路CB11との間に接続してある。トランシーバCB09はCAN_FDの規格に対応した信号の送受信を行う機能を有している。また、トランシーバCB10はCXPIの規格に対応した信号の送受信を行う機能を有している。
【0302】
切替回路CB11は、2本の通信線を使用するCAN_FDと、1本の通信線のみを使用するCXPIとを共通の通信ポートコネクタCP3〜CP8で使用可能にするための切り替え機能を有している。具体的には、通信ポートコネクタCP3〜CP8の各々に接続する信号を切り替えるために12個のスイッチング素子を備えている。これらのスイッチング素子のオンオフをゲートウェイ用制御回路CB02が出力する各制御信号で制御することにより、CAN_FDと、CXPIのいずれか一方の仕様に合わせた信号を通信ポートコネクタCP3〜CP8で使用できる。
【0303】
なお、例えばカメラや各種センサの信号のように比較的高い通信速度が必要とされる補機AEを制御ボックスCBの配下に接続する場合には、例えば通信ポートコネクタCP1又はCP2を用いることにより、高速通信の要求仕様を満たすことが可能になる。また、比較的低速の通信を行う補機AEを接続する場合には、通信ポートコネクタCP3〜CP8を使用することにより、必要最小限の通信機能を確保できる。
【0304】
通信ポートコネクタCP1〜CP8の各々に電源電力を供給するための回路構成例を
図58に示す。
図58の構成においては、制御ボックスCBに設けた端子CBz1、CBz2が主電源と接続されている。具体的には、メインバッテリMBに内蔵されたヒュージブルリンクFLを経由して、端子CBz1がメインバッテリMBの正極と接続されている。制御ボックスCBの端子CBz2はメインバッテリMBの負極と接続されている。また、端子CBz1およびCBz2は、それぞれバックボーン幹線BB_LMの電源ラインL1およびアースラインL3と接続されている。なお、バックボーン幹線BB_LMの電源ラインL2は、例えば図示しないサブバッテリの正極と接続される。
【0305】
そして、8系統の通信ポートコネクタCP1〜CP8の各々に電源電力を供給するための電源回路CB01aが制御ボックスCBに内蔵されている。この電源回路CB01aは、通信ポートコネクタの系統毎に、スイッチ回路SW01、SW02、ダイオードD1およびD2をそれぞれ備えている。
【0306】
スイッチ回路SW01およびSW02の各々は、制御ボックスCB内の制御回路がオンオフ制御可能なスイッチング素子と、ヒューズとの直列回路として構成されている。ダイオードD1およびD2は逆流防止の機能を有する。
【0307】
したがって、スイッチ回路SW01、SW02のうち、SW01のみをオンにすることで、主電源からの電力を、通信ポートコネクタCP1〜CP8の各々に供給することができる。また、スイッチ回路SW01、SW02のうち、SW02のみをオンにすることで、サブ電源からの電力を、通信ポートコネクタCP1〜CP8の各々に供給することができる。
【0308】
<特別な光通信技術>
<複数種類の通信経路の組み合わせ>
車載システムの通信系の構成例を
図101に示す。
図101に示した車載システムは、5つの制御ボックスCB(1)〜CB(5)を備えている。また、3つの制御ボックスCB(1)、CB(2)、CB(3)の間はリング形状に構成された通信用幹線BB_LCで接続されている。更に、制御ボックスCB(1)と制御ボックスCB(4)の間がP2P(Peer to Peer)の通信線路LPP1で接続され、制御ボックスCB(1)と制御ボックスCB(5)の間がP2Pの通信線路LPP2で接続されている。そして、通信用幹線BB_LC、通信線路LPP1、およびLPP2のいずれについても、光通信を採用している。
【0309】
光通信を採用する場合、制御ボックスCBに相当する通信経路上の各中継ノードは、受信した光信号を電気信号に変換し、この電気信号を再び光信号に変換してから送信経路に送り出すように処理する。したがって、中継ノード毎に光信号の遅延が発生する。また、システム全体の通信経路をリング形状に構成する場合には、接続した中継ノードの数が増えるに従い、光信号の遅延が増大する。
【0310】
一方、
図101に示した車載システムにおいては、リング形状の通信用幹線BB_LCと、P2Pの通信線路LPP1、LPP2とを組み合わせてあるので、信号の遅延を抑制し、高速通信を行うことができる。すなわち、リング形状の通信用幹線BB_LC上のノード数が3であるため、このリング上で発生する遅延を最小限に抑制できる。
【0311】
したがって、例えば制御ボックスCB(3)と制御ボックスCB(4)との間で光通信を行う場合に、通信経路全体がリング形状である場合と比べて、信号遅延が少なくなり、高速通信が可能になる。
【0312】
また、リング形状の通信用幹線BB_LCを備えているので、通信経路に冗長性があり、通信の信頼性が向上する。すなわち、通信用幹線BB_LC上の1箇所で断線等が発生した場合には、断線していない別の経路を利用して通信を継続できる。なお、幹線を光通信用の伝送路で形成し、枝線を電気信号用の伝送路で形成し、これらを組み合わせてもよい。
【0313】
<複数波長の光信号の同時利用>
図101に示した車載システムにおける通信用幹線BB_LCの断面の構成例を
図102に示す。すなわち、
図101に示した通信用幹線BB_LCは、
図102に示すように、往路を構成する光ファイバケーブルFBC1と、復路を構成する光ファイバケーブルFBC2とを備えている。また、光ファイバケーブルFBC1、FBC2の各々は、2本の光ファイバFB11、FB12を内蔵している。
【0314】
本実施形態では、扱う光信号として特定の波長λ1と、λ1とは波長の異なる波長λ2を同時に利用している。そして、
図102に示すように一方の光ファイバケーブルFBC1は波長λ1の光信号を伝送し、もう一方の光ファイバケーブルFBC2は波長λ2の光信号を伝送するように構成されている。
【0315】
したがって、通信用幹線BB_LC上では2波長の光信号により2つの通信経路を同時に確保することができ、冗長性を持たせることができる。これにより、通信の信頼性を向上できる。
【0316】
具体例として、重要度または優先度に応じて2種類の波長の光信号を使い分ける。例えば、車両上で重要な負荷の制御に利用する信号は波長λ1の光信号に割り当て、重要度が低い負荷の制御に利用する信号は波長λ2の光信号に割り当てる。そして、重要度の高い波長λ1の光信号の通信が途絶えた場合には、送信すべき情報を、自動的に波長λ2の光信号に切り替える。これにより、通信を継続するための経路を確保できる。このような制御は、各制御ボックスCB上でマイクロコンピュータ等を利用して行うことができる。
【0317】
<波長多重化/時分割多重(TDM)の利用>
波長多重および時分割多重を行う光信号の構成例を
図103に示す。また、光波長多重通信を行う車載システムの通信系の構成例を
図104に示す。
【0318】
例えば、波長λ1の光信号と波長λ2の光信号とを同時に利用する場合には、2つの光信号の波長が異なるため、これらを
図103に示すように波長多重化して1本の光ファイバで伝送することができる。
【0319】
したがって、例えば
図102に示した2本の光ファイバFB11、FB12のいずれか一方を削減することができる。また、波長λ1の光信号に高い優先度を割り当て、波長λ2の光信号に低い優先度を割り当てることもできる。更に、光信号を時分割多重化することにより、1つの通信回線で
図103に示すように複数チャネルの光信号ch1、ch2、ch3を順次に伝送することができる。
【0320】
図104に示した車載システムは、3つの制御ボックスCB(1)、CB(2)、およびCB(3)を通信用幹線BB_LCを介して互いに接続してある。
図104に示した通信用幹線BB_LCは、往路と復路の各1本の光ファイバで構成してあり、全体としてリング形状に構成されている。
【0321】
通信用幹線BB_LCの1本の光ファイバ上に、
図103に示したように波長多重化および時分割多重化した光信号を送り込み、制御ボックスCB(1)〜CB(3)の間で光通信を行うことができる。
【0322】
図104に示した制御ボックスCB(1)〜CB(3)の各々は、受信側の回路と送信側の回路とを備えている。受信側の回路には、スプリッタ2057−1、光/電気変換部(O/E)2057−2、2057−3、分岐部(DROP)2057−4、2057−5、および時分割分離部2057−6が備わっている。また、送信側の回路には時分割多重化部2057−7、挿入部(ADD)2057−8、2057−9、電気/光変換部(E/O)2057−10、および2057−11が備わっている。
【0323】
すなわち、制御ボックスCB(1)〜CB(3)においては、通信用幹線BB_LC内の1本の光ファイバから受信側の回路に光信号が入射する。この光信号は、スプリッタ2057−1において、2つの波長λ1、λ2に分離される。分離された波長λ1の光信号は、光/電気変換部2057−2で電気信号に変換され、分岐部2057−4で2系統に分岐される。分岐された一方の電気信号は時分割分離部2057−6に入力され、他方の電気信号は送信側の回路に入力される。
【0324】
同様に、分離された波長λ2の光信号は、光/電気変換部2057−3で電気信号に変換され、分岐部2057−5で2系統に分岐される。分岐された一方の電気信号は時分割分離部2057−6に入力され、他方の電気信号は送信側の回路に入力される。時分割分離部2057−6は、分岐部2057−4、2057−5の出力から入力される電気信号を時間毎に区分して、複数チャネル(ch1、ch2、ch3)の信号にそれぞれ分離される。
【0325】
例えば、制御ボックスCB(1)は、時分割分離部2057−6が出力する1番目のチャネルの受信信号を補機AE11(ADAS ECU)に与える。また、制御ボックスCB(2)は、時分割分離部2057−6が出力する2番目のチャネルの受信信号を利用できる。また、制御ボックスCB(3)は、時分割分離部2057−6が出力する3番目のチャネルの受信信号を補機AE31(リアモニタ)に与える。
【0326】
制御ボックスCB(1)の送信側の回路においては、この制御ボックスCBに割り当てられたチャネル(ch1)を利用し、補機AE12(ridar)の信号を優先度の高い信号として、補機AE13(DVDプレーヤ)の信号を優先度の低い信号として、それぞれ時分割多重化部2057−7に入力する。時分割多重化部2057−7は、入力された2系統の信号のそれぞれを、該当するチャネルのタイミングに割り当てて、時分割多重化した電気信号を生成する。優先度の高い信号および優先度の低い信号は、時分割多重化部2057−7の出力から、それぞれ挿入部2057−8および2057−9に入力される。
【0327】
挿入部2057−8は、優先度の高い信号について、受信信号と、時分割多重化部2057−7の出力とをチャネル毎に合成した信号を生成する。挿入部2057−9は、優先度の低い信号について、受信信号と、時分割多重化部2057−7の出力とをチャネル毎に合成した信号を生成する。
【0328】
挿入部2057−8の出力信号は、電気/光変換部2057−10で波長がλ1の光信号に変換される。また、挿入部2057−9の出力信号は、電気/光変換部2057−11で波長がλ2の光信号に変換される。また、電気/光変換部2057−10から出力される波長がλ1の光信号と、電気/光変換部2057−11から出力される波長がλ2の光信号とが、通信用幹線BB_LC内の共通の1本の光ファイバに同時に供給され、波長多重化された光信号として送信される。
【0329】
同様に、制御ボックスCB(2)の送信側の回路においては、この制御ボックスCBに割り当てられたチャネル(ch2)を利用し、補機AE21(カメラ)の信号を優先度の高い信号として、補機AE22(カメラ)の信号を優先度の低い信号として、それぞれ時分割多重化部2057−7に入力する。また、制御ボックスCB(3)の送信側の回路においては、この制御ボックスCBに割り当てられたチャネル(ch3)を利用し、補機AE32(カメラ)の信号を優先度の高い信号として、時分割多重化部2057−7に入力する。
【0330】
いずれにしても、
図104に示した車載システムの通信系統においては、
図103に示したように波長多重および時分割多重された光信号を、通信用幹線BB_LC上の1本の光ファイバを利用して伝送できる。
【0331】
図104に示した車載システムにおいては、2種類の波長λ1、λ2を同時に利用し、波長毎に個別に信号処理している。また、波長の違いを優先度の違いに対応付けてある。したがって、例えば2種類の波長λ1、λ2のいずれか一方の通信に障害が発生したような場合には、正常な通信回線を優先度の高い信号の伝送に利用できるように切替制御を行うことも可能である。しかも、1本の光ファイバだけで通信経路を確保できる。
【0332】
<その他の特徴的な技術>
<ワイヤハーネスの品番数を削減する技術>
図59は、プリント基板と電線を組み合わせたワイヤハーネスの構成例を示す分解図である。
【0333】
ワイヤハーネスの構造は、車種、グレード、仕向地、オプションなどの違いに応じて様々に変化する可能性がある。そして、構成が変化すると、構成毎に各部品に個別に品番を付ける必要がある。構成の種類が増えると、品番数が増えるため製造コストが上昇する。
【0334】
そこで、ワイヤハーネスの構成要素を、構成の変化が生じないベースと、構成が変化するアディションとに区分する。そして、
図59に示したバックボーン部材2012−1のように、プリント基板(PCB)上に構成された回路をワイヤハーネスのアディション要素として利用し、電線で構成されたサブハーネス2012−2をワイヤハーネスのベース要素として利用し、これらのアディション要素およびベース要素を組み合わせて全体のワイヤハーネスを構成する。
【0335】
ここで、プリント基板上に構成された回路は、電子化することが容易であり、例えばFPGA(field-programmable gate array)デバイスを内蔵してプログラムを書き換えることにより、回路構成を容易に変更できる。そのため、バックボーン部材2012−1については全て共通のハードウェアを採用でき、品番の増加を防ぐことができる。
【0336】
<後付け機器や持ち込み機器の接続に対応するための技術>
図60は、USBポートを備えた制御ボックスの外観の例を示す斜視図である。
【0337】
図60に示した制御ボックス2013−1は、バックボーン幹線2012−0と接続されており、所定の枝線ハーネスと接続するために複数の標準規格通信ポート2013−2を備えている。具体的には、USB(Universal Serial Bus)規格の通信機能を備えた複数のコネクタが標準規格通信ポート2013−2に設けてある。したがって、標準規格の通信ポートを備えた機器であれば、様々な機器を制御ボックス2013−1を経由してバックボーン幹線2012−0と接続することができる。つまり、様々な機器を車両に後付けしたり、ユーザが車両に持ち込んだ機器を接続することが容易になる。
【0338】
<制御ボックス等の機能を多様化するための技術>
図61(a)、
図61(b)、および
図61(c)は、制御ボックス等に内蔵する回路基板の3種類の構成例を示す平面図である。
【0339】
車両のワイヤハーネス等においては、車種、グレード、仕向地、オプションなどの種類に応じて、対応すべき機能が大きく変化する。例えば、バックボーン幹線上の各制御ボックスが対応すべき回路数、電流容量、処理速度、処理数などは、車両のグレード等に応じて変化する。もしも、全ての要求を満たす機能を全てのグレードの制御ボックスに搭載すると、最低コストが上昇するため、低コストの車両を提供できない。しかし、車種、グレード、仕向地、オプションなどの様々な組み合わせのそれぞれについて最適な構成の制御ボックスを用意すると、部品の品番数が大幅に増大するためコストが上昇する。
【0340】
そこで、
図61(a)、
図61(b)、および
図61(c)に示したように、使用する部品を共通化することにより、品番数の増大を抑制する。具体的には、標準化した3種類の回路基板2014−1A、2014−1B、2014−1Cと、FPGAで構成したマイクロコンピュータ2014−2とを組み合わせて必要とされる回路機能を実現する。
【0341】
回路基板2014−1Aは、3種類のうち最もグレードが高いグレードA用の回路基板である。回路基板2014−1Bは、3種類のうち2番目にグレードが高いグレードB用の回路基板である。また、回路基板2014−1Cは、3種類のうち最もグレードが低いグレードC用の回路基板である。3種類の回路基板2014−1A、2014−1B、2014−1Cは互いに基板のサイズ(大、中、小)が異なるため、基板の選択により回路数の変化に対応できる。また、回路数の変化に対応するために、使用するマイクロコンピュータ2014−2の数を変更する。
【0342】
すなわち、グレードの低い車両の場合には対応すべき回路数が少ないので、
図61(c)に示すように小型の回路基板2014−1Cと、1個のマイクロコンピュータ2014−2との組み合わせで必要な機能を実現する。また、グレードが中くらいの車両の場合には対応すべき回路数が中間的なので、
図61(b)に示すように中型の回路基板2014−1Bと、2個のマイクロコンピュータ2014−2との組み合わせで必要な機能を実現する。また、グレードが大の車両の場合には対応すべき回路数が非常に多いので、
図61(a)に示すように大型の回路基板2014−1Aと、3個のマイクロコンピュータ2014−2との組み合わせで必要な機能を実現する。
【0343】
また、各マイクロコンピュータ2014−2はFPGAであり、プログラムの書き換えが容易である。したがって、車両のグレード等の様々な仕様の違いに対応するために、各マイクロコンピュータ2014−2のプログラムを書き換えて対応する。
【0344】
したがって、
図61(a)、
図61(b)、および
図61(c)に示した構成を採用する場合には、3種類の回路基板2014−1A、2014−1B、2014−1Cのいずれかと、1種類のマイクロコンピュータ2014−2のハードウェアとを用意するだけでよく、部品の種類および品番数の増大を抑制できる。
【0345】
<幹線等の部品の品番数を削減するための技術>
図62は、幹線を構成する配索部材の接続箇所の構成例を示す斜視図である。
【0346】
例えば、
図48に示したバックボーン幹線部2021、2022、2023のような比較的大型の配索部材を形成する場合に、構成や形状などの仕様の違いによる部材の種類の増加や品番の増加を抑制するために、共通化した複数の部品を合体して1つの配索部材を構成することが考えられる。
【0347】
図62に示した構成例では、薄板状の2つの配索部材2015−1、2015−2を対向面同士で突き合わせて連結することでこれらを一体化できるように構成してある。具体的には、
図62に示すように、配索部材2015−1の右側端面には突起部2015−1aが形成され、配索部材2015−2の左側端面には突起部2015−1aと相補形状をなす凹部2015−2aが形成されている。
【0348】
また、電源ライン(+12V)、アース(GND)、および所定の信号線とそれぞれ接続された複数の電極2015−3が、配索部材2015−1の右側端面に露出するように配置されている。図示しないが、同様に、配索部材2015−2の左側端面にも、電極2015−3の各々と接触可能な電極が配置されている。
【0349】
このように、連結箇所の形状、電極仕様などを事前に標準化した複数の配索部材2015−1、2015−2等の種類を選択し、選択した部材同士を組み合わせることにより、様々な仕様に対応する配索部材を構成することが可能である。この場合、標準化した配索部材の種類を減らすことが可能であり、品番数も削減できる。
【0350】
<接続仕様の変化に対応するための技術>
図63は、幹線上の制御ボックスと枝線サブハーネスとの接続例を示す平面図である。
【0351】
図63に示した制御ボックス2016−1は、例えば、
図48に示したバックボーン幹線部2021、2022、2023と接続される。また、車両を注文したユーザのオーダに応じて、ワイヤハーネス全体の機能や仕様が決定され、制御ボックス2016−1の各接続部に所定の枝線サブハーネス2016−2A、2016−2B、2016−2C、2016−2Dが接続される。
【0352】
制御ボックス2016−1上には、プログラムの書き換えが容易なマイクロコンピュータが搭載されている。このようなワイヤハーネスを製造する際に、導通チェッカー2016−3を用意して、実際に接続し枝線サブハーネス2016−2A、2016−2B、2016−2C、2016−2Dの各端子と、制御ボックス2016−1上の各端子との間の導通の有無を、検査する。そして、制御ボックス2016−1上のマイクロコンピュータのプログラムを所定のツールで書き換える際に、導通チェッカー2016−3と連動し、実際の導通状態を反映するようにプログラムの内容を書き換える。
【0353】
したがって、実際に作業者が制御ボックス2016−1に組み付けた枝線サブハーネス2016−2A、2016−2B、2016−2C、2016−2Dの種類や、接続位置の違いなどを反映して、プログラムを適切に書き換え、実際の制御ボックス2016−1内の回路接続状態を自動的に切り替えることができる。そのため、ワイヤハーネスの生産性が向上する。
【0354】
<接続仕様の変化に対応するための技術>
図64は、幹線上の制御ボックスと枝線サブハーネスとの接続例を示す平面図である。
【0355】
図64に示した制御ボックス2017−1は、例えば、
図48に示したバックボーン幹線部2021、2022、2023と接続される。また、車両を注文したユーザのオーダに応じて、ワイヤハーネス全体の機能や仕様が決定され、制御ボックス2017−1の各接続部に所定の枝線サブハーネス2017−2A、2017−2B、2017−2C、2017−2Dが接続される。
【0356】
ここで、枝線サブハーネス2017−2A、2017−2B、2017−2C、2017−2Dの各々は通信機能を内蔵しており、それ自身に事前に割り当てられた固有の識別情報(ID)を接続先の制御ボックス2017−1内のマイクロコンピュータに送信する。このマイクロコンピュータは、実際に接続された枝線サブハーネス2017−2A、2017−2B、2017−2C、2017−2Dの各々が送信したIDの組み合わせが、例えば「ABCD」、「ABDC」、「ACDB」等のいずれに該当するのかを識別することにより、各枝線の接続先に適用すべきソフトウェアのパターンを自動的に選択する。
【0357】
したがって、様々な枝線サブハーネス2017−2A、2017−2B、2017−2C、2017−2Dの各々の接続位置を、作業者が自由に選択できるので生産性が向上する。また、何らかの補機を後付けする場合にも、マイクロコンピュータが事前に把握している補機であれば、自動的に対応できる。
【0358】
<接続仕様の変化に対応するための技術>
図65(a)および
図65(b)は、幹線と枝線サブハーネスとの接続例を示す平面図である。
【0359】
図65(a)に示すように、幹線2018−1と複数の制御ボックス2018−2、2018−3とで構成されるバックボーンに様々な枝線サブハーネス2018−4、2018−5を介して様々な補機を接続する場合に、各枝線サブハーネス2018−4、2018−5を接続するコネクタの位置が変化したり、各コネクタ内のピン配置が変化する可能性がある。
【0360】
例えば、
図65(b)に示した例では、制御ボックス2018−2のコネクタ2018−2bに対して、補機であるオートエアコン2018−6Aと、マニュアルエアコン2018−6Bとのいずれかを仕様の変化に応じて選択的に接続する場合を想定している。この場合、オートエアコン2018−6Aにおけるコネクタのピン配置と、マニュアルエアコン2018−6Bにおけるコネクタのピン配置とはそれぞれ異なる。
【0361】
このような変化に対応するために、制御ボックス2018−2上にFPGAで構成されるマイクロコンピュータ2018−2aを搭載し、制御ボックス2018−3上にもFPGAで構成されるマイクロコンピュータ2018−3aを搭載する。また、
図65(b)に示したオートエアコン2018−6A、およびマニュアルエアコン2018−6Bの本体またはコネクタ内にFPGAで構成されるマイクロコンピュータ2018−2aを搭載する。
【0362】
そして、接続された枝線サブハーネス2018−4、2018−5の回路1本1本に対して、各々の接続先を、マイクロコンピュータ2018−2a、2018−3aが仕様に合わせたプログラムの書き換えにより適切に選択する。また、
図65(b)に示したように、補機側の枝線サブハーネスまたはそのコネクタに配置したマイクロコンピュータが、コネクタピン配置の違い等の仕様差を吸収するように制御する。これにより、制御ボックス2018−2、2018−3に各補機を接続する場合の接続仕様を補機側で吸収し、バックボーン側の仕様を共通化することが可能になる。
【0363】
<接続仕様の変化に対応するための技術>
図66は、幹線上の制御ボックスと枝線サブハーネスとの接続例を示す斜視図である。
【0364】
図66に示した制御ボックス2019−1上には、様々な枝線および補機を接続するために、サイズや形状が共通の複数のコネクタ2019−1a、2019−1b、2019−1c、2019−1d、2019−1e、2019−1fが並んで配置されている。そして、補機を制御ボックス2019−1に接続する場合には、複数のコネクタ2019−1a〜2019−1fのいずれかを選択して、枝線サブハーネス2019−2A、2019−2B、2019−2Cをそれぞれ接続することになる。
【0365】
ここで、枝線サブハーネス2019−2A、2019−2B、2019−2Cの各々の接続先のコネクタの位置は、必要に応じて作業者が車両の製造時に自由に選択できる。枝線サブハーネス2019−2A、2019−2B、2019−2Cの接続先コネクタの位置の変化に対しては、制御ボックス2019−1に内蔵したFPGAで構成されるマイクロコンピュータがプログラムの書き換えにより、制御ボックス2019−1内の回路接続状態を自動的に変更することにより対応する。
【0366】
したがって、作業者は枝線サブハーネス2019−2A、2019−2B、2019−2Cの各々の接続先のコネクタの位置を自由に選択でき、生産性が向上する。また、機能の共通化により部品の品番数を削減できる。
【0367】
<交流電力を使う技術>
図67は、車体上に配索した幹線および複数の枝線サブハーネスの配置例を示す斜視図である。
【0368】
図67に示した車載システムは、車体の前後方向に向けて直線的に配索したバックボーン幹線2020−1と、これの各部に接続される複数の枝線サブハーネス2020−2A、2020−2B、2020−2Cとを含んでいる。各枝線サブハーネス2020−2A、2020−2B、2020−2Cは、バックボーン幹線2020−1上に設けた制御ボックスに接続される。
【0369】
また、特徴的な事項として、バックボーン幹線2020−1には交流電力を供給する。具体的には、AC200[V]程度の電圧を用いる。そして、各制御ボックスに変圧器および交流/直流変換器を装備し、制御ボックスの内部で交流電力を変圧すると共に所定の直流電圧に変換してから各枝線サブハーネス2020−2A、2020−2B、2020−2Cに供給する。
図67に示した例では、各枝線サブハーネス2020−2A、2020−2B、2020−2Cに、それぞれDC5[V]、DC48[V]、DC12[V]の直流電源電圧を供給している。
【0370】
このように、バックボーン幹線2020−1上に交流電力を流すことで、直流の場合と比べて幹線における電力の損失を低減することが可能である。また、構成がシンプルで安価な変圧器を用いて電圧の変換ができるので、システムのコストを低減できる。電力の損失を低減することにより、車両の燃費が向上する。
【0371】
<多重通信を使う技術>
図68(a)および
図68(b)は、複数の制御ボックスおよびこれらの間を接続する通信用の幹線を示すブロック図である。
【0372】
図68(a)に示した構成では、2つの制御ボックス2021−1、2021−2の間を接続するバックボーン幹線の通信線2021−3が、多数の電線の集合として構成されている。すなわち、伝送する信号の数だけ、個別の通信線を用意して各々の通信経路を確保する必要があるので、信号の数が増えると通信線の数も増える。
【0373】
一方、
図68(b)に示した構成では、2つの制御ボックス2021−1B、2021−2Bの間を接続するバックボーン幹線の通信線2021−3Bが、1本または2本程度の通信線のみで構成されている。
【0374】
すなわち、
図68(b)に示した構成では、時分割多重(TDM)等の技術を採用することにより、複数系統の信号を1本の通信線上に重畳しているので、伝送する信号の数が増えた場合に、通信線の数を大幅に減らすことができる。なお、時分割多重(TDM)の代わりに周波数多重(FDM)の技術を採用してもよい。
【0375】
また、
図68(a)のように通信線の数が多い場合には、幹線の線路の中間部で通信線を分割する必要が生じる場合があるが、通信線の数を減らすことにより、通信線の分割が不要になり、構成を簡略化できる。したがって、回路数および部品数が削減される。
【0376】
<異常発生時のリカバリーのための技術>
図69は、リカバリー機能を備えた制御ボックスの構成例を示す電気回路図である。
バックボーン幹線や制御ボックスの内部等で、回路の断線などの異常が発生する場合がある。このような異常が生じると、枝線サブハーネスや負荷側に所定の電源電力が供給できなくなるので、様々な負荷を含む補機の動作が停止してしまう。これを防止するために、リカバリー機能を設ける。
【0377】
図69に示した構成においては、車両の主電源2022−2から供給される電源電力を、制御ボックス2022−1を経由して2つの負荷2022−3、2022−4にそれぞれ供給する場合を想定している。スイッチ2022−1aを閉じることにより、負荷2022−3に電力を供給することができる。また、スイッチ2022−1bを閉じることにより、負荷2022−4に電力を供給することができる。
【0378】
但し、スイッチ2022−1bと接続されている線路上で断線等の故障が生じると、スイッチ2022−1bを閉じても負荷2022−4に電力が供給されなくない異常な状態になる。そこで、負荷2022−4が非常に重要度の高い負荷である場合を想定し、
図69に示した構成では、スイッチ2022−1bの経路と並列な状態で、バックアップ経路2022−1cが接続されている。また、このバックアップ経路2022−1cにはマイクロコンピュータ2022−1eによりオンオフ制御可能なリレー2022−1dが接続されている。
【0379】
マイクロコンピュータ2022−1eは、スイッチ2022−1bの通電経路に異常が発生したことを検知すると、リレー2022−1dを自動的にオンに切り替えて、バックアップ経路2022−1cを経由して負荷2022−4に電源電力が供給されるようにリカバリー制御を実施する。また、車両のメータユニットに備わっているウォーニング表示部に、故障の発生を表示するように、マイクロコンピュータ2022−1eが制御する。このリカバリー機能により、ワイヤハーネスおよび各種補機の動作に関する信頼性が向上する。
【0380】
<車両上の近接無線通信技術>
図70(a)および
図70(b)は、ワイヤハーネスと負荷との接続例を示すブロック図である。
図71は、車体上の各種構成要素の配置および接続の具体例を示す斜視図である。
【0381】
図70(a)に示すように、車両のドア2023−3内に配置された各種補機をワイヤハーネスを介して車室内側のワイヤハーネス2023−1と接続する場合には、ドアの開閉に伴って屈曲するワイヤハーネスの屈曲部位の電線束を、グロメット2023−2の内部に通し、電線の保護、防水、防塵、防音などの機能を持たせるのが一般的である。しかし、グロメットを採用する場合には、ワイヤハーネスの配索作業が困難になるし、部品コストも増大する。
【0382】
そこで、
図70(b)に示した構成においては、車室内側のバックボーンにある制御ボックス2023−4と、車両のドア2023−7内に配置された各種補機とを接続するために、近接無線通信ユニット2023−5、2023−6を用いている。また、これらの近接無線通信ユニット2023−5、2023−6は、通信だけでなく、電源電力の給電も無線で行う機能を備えている。したがって、
図70(b)に示した構成を採用する場合には、グロメットは不要であり、補機の接続のための配索作業も非常に簡単になる。
【0383】
より現実的な車両上の構成例について説明する。
図71に示した構成においては、バックボーンメインライン2024−1、インパネ部バックボーン2024−2、エンコパ部バックボーン2024−3等が幹線として車体上の各部に配索されている。また、これら幹線の各部に、制御ボックス(制御ボックス)2024−41、2024−42、2024−43、2024−44、2024−45が配置されている。
【0384】
また、
図71に示した構成においては、ステアリングモジュール2024−5と、制御ボックス2024−41との間が、近接無線通信により無線接続されている。また、各制御ボックスとドア内の補機との間も近接無線通信により無線接続されている。また、ラゲージ空間に配置されているセンサ2024−7、アンテナ2024−8等の補機と、制御ボックス2024−45との間も近接無線通信により無線接続されている。
【0385】
<ノイズ対策の技術>
図72(a)、
図72(b)、および
図72(c)は、幹線、制御ボックス、バッテリ等の接続状態の具体例を示すブロック図である。
【0386】
図72(a)に示した構成例では、一般的な車両と同様に1個のメインバッテリ2025−1およびオルタネータ2025−2がワイヤハーネス2025−3の端部近傍に接続されている。また、ワイヤハーネス2025−3の様々な部位には、電子制御ユニット(ECU)2025−4、2025−5、電気モータ2025−6などの補機が接続されている。
【0387】
図72(a)のような構成において、オルタネータ2025−2や電気モータ2025−6などの機器がノイズ源となり、これらが発生する電磁ノイズがその近傍にある電子制御ユニット2025−4、2025−5等に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0388】
そこで、ノイズの影響を減らすために次のように対策を施す。すなわち、複数のバッテリを用意して、バックボーン内で複数のバッテリを分散配置すると共に、ノイズ源に近い位置にバッテリを配置する。これにより、発生したノイズをバッテリで吸収しやすくする。また、各電子制御ユニットへのノイズの回り込みを抑制できる。また、各ノイズ源やノイズの影響を受けやすい機器がバックボー上のどの位置に接続されても、ノイズの問題を解消できる。
【0389】
図72(b)に示した構成例では、メインバッテリ2025−1の他に、2個のサブバッテリ2025−1B、および2025−1Cを分散した状態でワイヤハーネス2025−3のバックボーン上に接続してある。したがって、ノイズ源である電気モータ2025−6が発生したノイズは、その近傍に接続されているサブバッテリ2025−1B、および2025−1Cが吸収する。
【0390】
また、ノイズの影響を受けやすい電子制御ユニット2025−4、および2025−5は、ノイズ源に対して、サブバッテリ2025−1B、および2025−1Cよりも遠い位置に配置されているので、ノイズの影響を受けにくくなる。
【0391】
図72(c)に示した構成例では、メインバッテリ2025−1の他に、6個のサブバッテリ2025−1B、2025−1C、2025−1D、2025−1E、2025−1F、2025−1Gを分散した状態でワイヤハーネス2025−3のバックボーン上に接続してある。また、サブバッテリ2025−1Bは、メインバッテリ2025−1と制御ボックス2025−7Aとの間の幹線2025−3Aと接続してある。サブバッテリ2025−1Cは、制御ボックス2025−7Aの内部回路と接続してある。
【0392】
サブバッテリ2025−1Dは、2つの制御ボックス2025−7A、2025−7Bの間の幹線2025−3Bと接続してある。サブバッテリ2025−1Eは、制御ボックス2025−7Bの内部回路と接続してある。サブバッテリ2025−1Fは、2つの制御ボックス2025−7B、2025−7Cの間の幹線2025−3Cと接続してある。サブバッテリ2025−1Gは、制御ボックス2025−7Cの内部回路と接続してある。
【0393】
図72(c)に示した構成のように、多数のサブバッテリを接続する場合には、各々のサブバッテリはどの場所に接続してもよい。各サブバッテリがノイズフィルタとして機能するので、多数のサブバッテリを接続することにより、電源供給ラインにおいてノイズを吸収する性能が向上する。
【0394】
<ノイズ対策の技術>
図73(a)、
図73(b)、
図73(c)、
図73(d)、および
図73(e)は、幹線および1つ以上のバッテリの接続状態の具体例を示すブロック図である。
【0395】
この技術では、以下の(1)、(2)、(3)の対策を施す。
(1)ノイズを吸収する特性を有するバッテリを、バックボーン幹線のどの位置にでも接続できるように構成する。(2)電圧変動やノイズを影響をなくすため、バックボーン幹線の配索材料については、低インピーダンスのものを採用する。(3)バックボーン幹線の構成を共通化すると共に、車両毎の条件に応じて、バッテリの取り付け位置を変更できるように構成する。
【0396】
図73(a)に示した構成においては、バックボーン幹線2026−3の4箇所の端部のそれぞれに制御ボックス2026−4A、2026−4B、2026−4C、2026−4Dが接続してある。そして、メインバッテリ2026−1は制御ボックス2026−4Aの位置でバックボーン幹線2026−3と接続し、サブバッテリ2026−2は制御ボックス2026−4Dの位置でバックボーン幹線2026−3と接続してある。なお、メインバッテリ2026−1およびサブバッテリ2026−2を、制御ボックス2026−4A、2026−4B、2026−4C、2026−4Dのいずれの位置でバックボーン幹線2026−3と接続する場合であっても、構成が共通のバックボーン幹線2026−3を利用できる。
【0397】
図73(b)に示した構成においては、メインバッテリ2026−1のみが、車両の前側にあるバックボーン幹線2026−3の先端部と、制御ボックス2026−4Aを経由して接続されている。
【0398】
図73(c)に示した構成においては、サブバッテリ2026−2のみが、車両の後ろ側にあるバックボーン幹線2026−3の後端部と、制御ボックス2026−4Dを経由して接続されている。
【0399】
図73(d)に示した構成においては、メインバッテリ2026−1が、車両の前側にあるバックボーン幹線2026−3の先端部と、制御ボックス2026−4Aを経由して接続され、サブバッテリ2026−2が、車両の後ろ側にあるバックボーン幹線2026−3の後端部と、制御ボックス2026−4Dを経由して接続されている。
【0400】
図73(e)に示した構成においては、サブバッテリ2026−2が車両の中央付近に配置され、バックボーン幹線2026−3の中央部に、サブバッテリ2026−2が直接接続されている。
【0401】
<ノイズ対策の技術>
図74は、幹線および複数のバッテリの接続状態の具体例を示すブロック図である。
【0402】
図74に示した構成においては、バックボーン幹線2027−1の4箇所の端部に、それぞれ制御ボックス2027−2、2027−3、2027−4、2027−5が接続されている。そして、複数の制御ボックス2027−2、2027−3、2027−4、2027−5のそれぞれが小型のサブバッテリ(二次電池)を内蔵している。これらのサブバッテリの各々は、バックボーン幹線2027−1の電源ラインと接続されている。また、図示しないメインバッテリ等の主電源もバックボーン幹線2027−1と接続されている。したがって、以下の(1)〜(4)に示す事項が実現する。
【0403】
(1)バックボーン幹線2027−1の各部に対して、複数のバッテリを分散配置することができる。これにより、負荷の要求電圧が高い場合の電圧変動を、各バッテリからの電流供給で抑制できる。
【0404】
(2)バックボーン幹線2027−1の各部には分散配置された複数のバッテリを常時接続しておくことができる。これにより、回生の電気エネルギーがバックボーン幹線2027−1上に現れた場合に、このエネルギーを各部の複数のバッテリで効率よく回収することができる。したがって、回生エネルギーの回収率が向上する。
【0405】
(3)複数のバッテリを備えているので、メインバッテリ等の主電源に異常が発生したような場合には、バックアップ用の電力をサブの複数のバッテリから供給することができる。このような電力のバックアップ制御は、制御ボックス2027−2、2027−3、2027−4、2027−5等に備えたマイクロコンピュータを用いて自動的に行うことができる。
【0406】
(4)車両上のエリア毎にそれぞれバッテリを備えているので、車両の衝突などに伴ってバックボーン幹線2027−1の一部分に断線が生じたような場合であっても、各補機が配置されているエリアの近傍にあるバッテリから電源電力を供給することができ、切れない安全な電源を実現できる。
【0407】
<ノイズ対策の技術>
図75は、車載システムの電源系統の構成例を示す電気回路図である。
【0408】
図75に示した装置は、オルタネータ2028−1、メインバッテリ2028−2、バックボーン幹線2028−3、ボディアース2028−4、補機2028−5A〜2028−5D、および枝線サブハーネス2028−6A〜2028−6Dを備えている。また、バックボーン幹線2028−3は、電源ライン2028−3aと、アース(GND)ライン2028−3bとを備えている。ボディアース2028−4は、車両の車体を構成する金属を利用したアース経路である。
【0409】
図75に示した構成においては、バックボーン幹線2028−3の上流側にオルタネータ2028−1、およびメインバッテリ2028−2が接続されている。また、バックボーン幹線2028−3の各部位に、枝線サブハーネス2028−6A〜2028−6Dを介して、補機2028−5A〜2028−5Dが接続されている。
【0410】
また、オルタネータ2028−1、およびメインバッテリ2028−2の負極側の端子は、バックボーン幹線2028−3のアースライン2028−3bおよびボディアース2028−4の両方とそれぞれ接続されている。また、補機2028−5Aおよび2028−5Bの電源のアース側端子は、それぞれ枝線サブハーネス2028−6Aおよび2028−6Bを経由してバックボーン幹線2028−3のアースライン2028−3bのみと接続されている。また、補機2028−5Cおよび2028−5Dの電源のアース側端子は、それぞれボディアース2028−4のみと、専用のアース線または筐体アースを介して接続されている。
【0411】
なお、ボディアース2028−4を利用する場合の線路の抵抗値は、例えば0.7[mΩ]程度と非常に小さいが、バックボーン幹線2028−3のアースライン2028−3bを利用する場合には抵抗値が比較的大きくなる。
【0412】
バックボーン幹線2028−3のアースライン2028−3bは、抵抗値が比較的大きいので、大きな電流を流すと線路の抵抗により生じる電圧降下によりアース電位の変動をもたらす可能性がある。しかし、ボディアース2028−4を利用すれば、抵抗値が小さいので、アース電位の変動はほとんど生じない。
【0413】
図75に示した構成においては、補機2028−5Aおよび2028−5Bは消費する電源電流が比較的小さい状況を想定しているので、これらのアース端子をバックボーン幹線2028−3のアースライン2028−3bと接続してある。また、補機2028−5Cおよび2028−5Dは消費する電源電流が比較的大きい状況を想定しているので、これらのアース端子はボディアース2028−4と接続してある。このように接続することにより、アース電位の変動を抑制できる。
【0414】
また、オルタネータ2028−1はDC/DCコンバータなどのスイッチング回路を内蔵しているので、スイッチングに伴ってノイズを発生する可能性が高い。しかし、
図75に示したように、オルタネータ2028−1の負極側端子をボディアース2028−4と接続することにより、線路の抵抗が小さいため、発生したノイズをメインバッテリ2028−2等を用いて吸収することができる。
【0415】
<車両と車外とで通信するための技術>
図76(a)は、車載システムの構成例を示すブロック図、
図76(b)は同じ車載システムの外観の例を示す斜視図である。
【0416】
図76(b)に示した車載システムは、複数個の制御ボックス2029−1と、これらの制御ボックスの間を接続するバックボーン幹線2029−4と、制御ボックスを介してバックボーン幹線2029−4に接続した複数の枝線サブハーネス2029−5とを備えている。
【0417】
また、
図76(a)に示したように、枝線サブハーネス2029−5の配下に、補機2029−3A、2029−3B等が接続される。これらの補機2029−3A、2029−3Bの具体例として、例えばオーディオ装置や、電子制御ユニット(ECU)が接続される。また、
図76(b)に示したように、この例では複数個の制御ボックス2029−1の1つの内部に、DCM(Data Communication Module)2029−1aが備わっている。
【0418】
一般的な車両においては、様々な種類の補機が車外との間で無線通信を行うために、各々の補機がDCMと個別に接続されている。そのため、様々な回路の接続箇所がDCMに集中している。多くの回路が集中すると、ワイヤハーネスにおいて電線の加工本数が増え、コネクタのサイズも大きくなり、ワイヤハーネスの生産性が悪化する。
【0419】
そこで、
図76(a)に示した構成のように、1つの制御ボックス2029−1にDCM2029−1aを内蔵し、様々な補機2029−3A、2029−3Bを共通の制御ボックス2029−1に接続する。
【0420】
図76(a)に示した制御ボックス2029−1はバックボーン幹線2029−4と接続されているので、車両上の様々な位置に配置される様々な種類の補機を、バックボーン幹線2029−4と接続することで、この幹線を経由してDCM2029−1aの無線通信機能を容易に利用できる。これにより、ワイヤハーネスの回路数を減らすことができ、ワイヤハーネスの部品コストおよび製造コストを低減できる。
【0421】
<幹線の電圧および消費電流に関する技術>
図77(a)および
図77(b)は、それぞれ異なるバックボーン幹線の構成例を示す縦断面図である。
図78は、特別な電源制御を実施する場合の電源電流と電圧との対応関係の例を示すタイムチャートである。
【0422】
車載システムにおいては、ワイヤハーネスに接続された補機の消費電流が大きくなると、アースラインの抵抗が大きい場合に、電圧降下が増大し、アース電位が変動しやすくなる。そして、補機のアース端子がアースラインから浮いたような状態になる場合がある。また、電源ラインにおける電圧降下により、補機に供給される電源電圧が低下する場合がある。
【0423】
そこで、本実施形態においては、共通のバックボーン幹線において、2種類の電源電圧、例えば+12[V]と+48[V]とを併用できるように構成し、状況に応じて2種類の電源電圧を使い分ける。
【0424】
図77(a)および
図77(b)に示したバックボーン幹線2030−1は、2本の電源ライン2030−1a、および2030−1bと、アースライン2030−1cと、通信線2030−1dとを備えている。そして、本実施形態では、電源ライン2030−1a、および2030−1bの少なくとも一方について、供給する電源電圧を切り替えることができる。すなわち、+12[V]の電源電圧を選択した場合には、
図77(a)に示したように電源ライン2030−1a、または2030−1bに+12[V]の電源電圧を供給し、+48[V]の電源電圧を選択した場合には、
図77(b)に示したように電源ライン2030−1a、または2030−1bに+48[V]の電源電圧を供給する。
【0425】
例えば、メインバッテリ等の主電源から供給される直流電力を、バックボーン幹線2030−1上に配置した制御ボックス内で昇圧または降圧することにより、+12[V]と+48[V]の切替を行うことができる。
また、制御ボックス内にあるマイクロコンピュータで制御を実施することにより、+12[V]と+48[V]の切替を自動的に行うこともできる。例えば、マイクロコンピュータで負荷の要求電流または実際の消費電流を監視すれば、これらの電流の大小に応じて
図78に示した例のように、電圧を自動的に切り替えることができる。
【0426】
つまり、負荷の消費電流が大きい時には、制御ボックスが供給する電圧を+12[V]から+48[V]に切り替えることで、アース電位の変動や、負荷へ供給する電圧の低下の影響を抑制できる。
【0427】
<幹線の構成に関する技術>
図79(a)、
図79(b)、および
図79(c)は、それぞれ異なるバックボーン幹線の構成例を示す縦断面図である。
【0428】
一般的な車両においては、電源電圧として+12[V]を利用している。しかし、負荷の消費電流が大きくなると、ワイヤハーネスにおける電圧降下の問題が発生する。また、電圧降下を減らすためにワイヤハーネスの電線径を大きくすると、ワイヤハーネスが肥大化し、重量も増える。
【0429】
そこで、ワイヤハーネスが扱う電源電圧として、+12[V]以外に、+48[V]も利用できるように構成する。
【0430】
図79(a)に示した構成では、バックボーン幹線を4本の配索材料(電線、バスバーなど)で構成している。そして、4本の配索材料のうち2本を+12[V]の電源ラインおよびアース(GND)ラインとして利用し、残りの2本を+48[V]の電源ラインおよびアースラインとして利用する。
【0431】
図79(b)に示した構成では、バックボーン幹線を3本の配索材料で構成している。そして、3本の配索材料のうち1本を+12[V]の電源ラインとして利用し、もう1本をアース(GND)ラインとして利用し、残りの1本を+48[V]の電源ラインとして利用する。
【0432】
図79(c)に示した構成では、バックボーン幹線を2本の配索材料で構成している。そして、2本の配索材料のうち1本を+12[V]/+48[V]共用の電源ラインとして利用し、もう1本をアース(GND)ラインとして利用する。
図79(c)の構成を利用する場合には、例えばバックボーン幹線上の制御ボックス内で、+12[V]/+48[V]の電圧切替を実施する。
【0433】
<節電制御に関する技術>
例えば、優先度の低い負荷に対する電力供給を減らしたり、優先度の低い負荷の通電を一時的に停止することにより、車両全体の電力消費を抑制することができ、電費の向上、バッテリの小型化に繋がる。しかし、このような節電制御を常時実行すると、優先度の低い負荷をユーザが快適に利用できない場合がある。
【0434】
そこで、ある状況になったときにだけ、通常モードから節電モードに移行し、上記のような節電制御を実行することが想定される。ここで重要な事項は、通常モードから節電モードに移行するかどうかを決めるための判定条件をどのように定めるかである。
【0435】
本実施形態においては、通常モードから節電モードに移行するための判定の材料として、過去のデータDAと、これから一日の予想データDBとを用意する。そして、過去のデータDAと、予想データDBとを比較して、本日の電力使用予測をユーザへ提示しつつ、車両側の制御装置が自動的に節電モードを選択する。
【0436】
過去のデータDAの具体例としては、日別、シーズン別、天候・気温・湿度などの環境条件別などの条件パターンを考慮して、条件パターン毎の電力使用量を計測して記録しデータ化する。また、学習機能を用いてデータを最適化する。
【0437】
予想データDBの具体例としては、本日の天気予想に基づくカーエアコンの使用量予測データ、スマートホンなどに登録されているユーザのスケジュールデータ、カーナビゲーション装置に入力された目的地情報などがある。そして、これらに基づいて特定の条件パターンを抽出することにより適切な予想データDBが得られる。
【0438】
<バッテリ上がりを防止するための技術>
例えば、外部の電源と接続することなく車両を駐車しているような場合には、車両上の補機のほとんどは停止状態であり、バッテリが蓄積している電力はほとんど消費されない。それでも、例えば盗難防止装置のような一部の負荷は駐車中でも電力消費を継続するため、長期間に亘って駐車状態を継続すると、バッテリ上がりが生じ、車両を始動できない状況に陥る。
【0439】
そこで、本実施形態においては、バッテリ上がりを未然に防止するために車両上の制御装置が特別な制御を実施する。すなわち、制御装置はメインバッテリ等の電源における電力の残容量を把握すると共に、バッテリから流出する通電電流や暗電流を計測して把握し、これらの情報に基づいて、バッテリ上がりが生じるまでの残り日数を予測する。そして、残り日数が少なくなった場合には、自動的にバッテリからの電力供給を停止する。なお、供給電力を段階的に削減するように制御してもよい。
【0440】
<断線検知に関する技術>
図80は、車載システムの電源系統の構成例を示す電気回路図である。
【0441】
図80に示した車載システムにおいては、バックボーン幹線2033−4の先端側に主電源であるオルタネータ2033−1およびメインバッテリ2033−2が接続してあり、バックボーン幹線2033−4の後端側に、スイッチ2033−5を経由してサブバッテリ2033−2Bが接続してある。
【0442】
また、バックボーン幹線2033−4の中間部に、複数の制御ボックス2033−3A、2033−3B、2033−3Cが互いに分散した状態で各位置に接続してある。また、バックボーン幹線2033−4の構成要素として、電源ラインおよびアースラインが含まれている。そして、バックボーン幹線2033−4の電源ラインは、電力の供給だけでなく、通信にも利用できるように構成してある。すなわち、既存の電力線通信(PLC)技術を採用することにより、直流の電源電力と、通信用の交流信号とが電源ライン上で重畳した状態で伝送される。
【0443】
したがって、複数の制御ボックス2033−3A、2033−3B、2033−3Cの各々は、PLC通信用のインタフェースを内蔵しており、複数の制御ボックス2033−3A、2033−3B、2033−3Cの間で相互にPLC通信を行うことができる。
【0444】
また、このような構成において、例えば2つの制御ボックス2033−3A、2033−3Bの間でバックボーン幹線2033−4が断線すると、2つの制御ボックス2033−3A、2033−3Bの間でPLC通信ができない状態になる。したがって、PLC通信ができない状態になった場合には、制御ボックス2033−3A、および2033−3Bはバックボーン幹線2033−4が断線したことを認識できる。また、断線が発生した位置を特定することも可能である。また、バックボーン幹線2033−4が断線した場合でも通信ができるように、複数の制御ボックス2033−3A、2033−3B、2033−3Cの各々は、近距離無線通信機能も搭載している。
【0445】
上記のような断線が生じた場合には、これを検知した制御ボックス2033−3A、2033−3B、2033−3Cのいずれかのフェイルセーフ機能により、電力のリカバリー制御を実施する。すなわち、スイッチ2033−5を閉じることにより、メインバッテリ2033−2、およびサブバッテリ2033−2Bの双方から、バックボーン幹線2033−4に対して電源電力を供給する。そして、スイッチ2033−5は閉じた状態を維持する。これにより、断線した位置よりも上流側では、各回路にメインバッテリ2033−2から電力が供給され、断線した位置よりも下流側では、各回路にサブバッテリ2033−2Bから電力が供給される。また、断線が発生した場合には、PLC通信を中止して、機能を限定した無線通信により、制御ボックス2033−3A、2033−3B、2033−3Cの間の通信経路を確保する。
【0446】
<通信系統を共用するための技術>
図81は、通信ケーブルの構成例を示す縦断面図である。
【0447】
車両上の通信に関する標準規格としては、CANやCXPIなど複数の規格が存在している。したがって、車両の仕様の違い、車両上のエリアの違い、グレードの違いなどのために、複数の規格の通信インタフェースが混在する可能性がある。そして、規格毎に構成が異なる通信ケーブルなどの部品を使用することになる。構成が異なるので、複数の規格の部品を共用することができない。
【0448】
図81に示した通信ケーブル2034−1は、CAN規格の通信、およびCXPI規格の通信のどちらでも利用できるように構成してある。この通信ケーブル2034−1は、電源ライン2034−1a、アース(GND)ライン2034−1b、Hi側通信ライン2034−1c、およびLo側通信ライン2034−1dの4本の電線で構成されている。
【0449】
そして、CAN規格の通信を行う場合には、2つのHi側通信ライン2034−1cおよびLo側通信ライン2034−1dの両方を使用し、CXPI規格の通信を行う場合には、Hi側通信ライン2034−1cのみを使用する。これにより、CAN、およびCXPIのいずれの規格の通信インタフェースと接続する場合であっても、構成が共通化された通信ケーブル2034−1を利用できる。このような共通化により、ワイヤハーネスの製造が容易になり、様々な補機の後付けも容易になる。
【0450】
なお、CAN/CXPIの2種類のインタフェース接続を切り替えるための切替回路CB11の構成は、既に説明した
図57の中に示されている。
【0451】
<構成の共通化のための技術>
図82は、車載システムの通信系統の構成例を示すブロック図である。
【0452】
例えば
図48に示したような制御ボックス2031〜2033の配下に、枝線サブハーネスを経由して様々な補機を接続する場合に、大型の制御ボックスを採用することが難しく、枝線サブハーネスを接続するためのコネクタの数が制限されることもある。そのため、1つの制御ボックスに多数の補機を接続しようとする場合に、コネクタの口数が不足する可能性がある。すなわち、制御ボックスの間口が狭いので、多数のコネクタを制御ボックスに用意できない場合がある。
【0453】
そこで、本実施形態においては、
図82に示したモジュラー接続コネクタ(JC)2035−1を用意する。このモジュラー接続コネクタ2035−1は、テーブルタップに似た構成を有しており、上流側には1つの枝線サブハーネス2035−5が接続されており、下流側の接続部2035−1aには複数の機器を接続可能な多数のコネクタが備わっている。
【0454】
モジュラー接続コネクタ2035−1の枝線サブハーネス2035−5は、例えば
図82に示すように、1つの制御ボックス2035−2Cのコネクタに枝線として接続される。
図82に示すように、モジュラー接続コネクタ2035−1の内部には、2つのPHY回路、ネットワークスイッチ(switch)、ゲートウェイ(GW)、処理部、CAN−FD用インタフェース、CXPI用インタフェース、標準機能ドライバなどが備わっている。
【0455】
図82に示した構成においては、モジュラー接続コネクタ2035−1の1つのPHY回路には、通信線2035−8を経由して、カメラ、センサ系の機器2035−7を接続してある。また、標準機能ドライバの配下には、2つの負荷を接続してある。
【0456】
モジュラー接続コネクタ2035−1の下流側の接続部2035−1aには多数のコネクタが備わっているので、多数の補機を必要に応じて接続することができる。例えば、
図82に示すようにDCMおよびアンテナを接続したり、電子制御ユニット(ECU)を介して負荷6を接続することができる。また、ECUの代わりに簡易な通信機能や出力制御機能を内蔵したコネクタ(Eコネ)を介して負荷を接続することもできる。
【0457】
また、モジュラー接続コネクタ2035−1の下流側の接続部2035−1aに、もう1個のモジュラー接続コネクタ2035−1を直列に接続することも可能であるので、接続可能な機器の数を必要に応じて増やすことができる。なお、
図82中に示したECUボックス2035−3等の構成要素については、後で詳細に説明する。
【0458】
<バックボーン幹線に光通信経路を組み込む技術>
前述の
図57に示してあるように、バックボーン幹線BB_LMの2本の通信ラインL4B、L5Bとして、光ファイバケーブルを採用し、光通信機能を制御ボックスCBに組み込む。これにより、幹線を利用して大容量または高速の通信が可能になるため、グレードの高い車両の通信にも利用できる。具体的には、10[Gbps]程度の最大通信速度を保障できるため、高解像度の映像のデータをタイムラグなく流すことが要求される用途にも適用できる。
【0459】
<制御ボックス内で光信号を扱うための技術>
光信号を扱うための機能を制御ボックスに搭載する。例えば、
図57に示した車載システムのように、制御ボックスCBの中に、PHY回路CB03、CB04を組み込むことで、電気信号を光信号に変換して送信したり、受信した光信号を電気信号に変換して受信処理することが可能になる。
【0460】
より具体的には、
図104に示した制御ボックスCB(1)のように、光/電気変換部2057−2、2057−3、および電気/光変換部2057−10、2057−11を組み込んで光信号および電気信号の相互変換を可能にする。
【0461】
<通信系統幹線の接続形態に関する技術>
図83は、通信系統をリング型に接続した車載システムの通信系統の構成例を示すブロック図である。
図84は、通信系統をスター型に接続した車載システムの通信系統の構成例を示すブロック図である。
【0462】
図83に示した車載システムにおいては、4個の制御ボックス2036−1、2036−2、2036−3、および2036−4をバックボーンの通信用幹線2036−5で互いに接続してあり、この接続形態がリング形状に構成されている。
【0463】
すなわち、制御ボックス2036−1が送出する信号は、通信用幹線2036−5を経由して次の制御ボックス2036−2に届き、制御ボックス2036−2の内部で中継された信号が、制御ボックス2036−2から通信用幹線2036−5に送出されて次の制御ボックス2036−3に届く。同様に、制御ボックス2036−3が受信し中継した信号が、通信用幹線2036−5に送出されて、次の制御ボックス2036−4に届く。更に、制御ボックス2036−4が受信し中継した信号が、通信用幹線2036−5に送出されて、次の制御ボックス2036−1に届く。このようにして、通信用幹線2036−5上の信号は、リング形状の経路を中継されながら順次に伝送される。
【0464】
したがって、
図53に示した車載システムと同様の通信機能を果たす。また、通信用幹線2036−5の経路を二重化すれば、一方の通信経路に異常が発生した場合でも、残りの正常な経路を利用して通信経路を確保できるので、信頼性が高まる。また、2つの経路を同時に使用することにより通信速度を2倍にすることもできる。
【0465】
一方、
図84に示した車載システムにおいては、5個の制御ボックス2037−1、2037−2、2037−3、2037−4、および2037−5がバックボーンの通信用幹線2037−5a、2037−5bで互いに接続してあり、この接続形態がスター形状に構成されている。すなわち、1個の制御ボックス2037−1を中心とし、その周囲に他の4個の制御ボックス2037−2〜2037−5がそれぞれ独立した経路で接続されている。
【0466】
また、
図84に示した構成においては、それぞれの通信経路が二重化されている。例えば、制御ボックス2037−1と、制御ボックス2037−3との間は、互いに独立している2本の通信用幹線2037−5a、および2037−5bによりそれぞれ接続されている。
【0467】
二重化された通信経路のそれぞれについては、例えば通信の優先度、重要度、セキュリティレベルの違い等に応じて使い分けることができる。具体的には、車両の走行に関係する通信には優先度の高い通信経路を利用し、そのほかの一般的な通信には優先度の低い通信経路を利用する。また、通信障害が発生したような場合に、二重化された通信経路の一方をバックアップとして利用することも考えられる。セキュリティレベルについては、プライベート、パブリックのように分けることができる。
【0468】
スター形状の中心の制御ボックス2037−1は、次に送るパケットの送信先を、4つの制御ボックス2037−2〜2037−5の中から選択的に決定すると共に、2系統の通信経路のどちらに送るのかを決定する。
【0469】
車載システムの通信において、優先度を決定する場合には、一般的には部品毎に事前に決定されるので、例えばエンジン用ECUが扱う情報は常に優先度が高い情報として扱われる。しかし、実際には重要度の低い情報がエンジン用ECUで扱われる場合も多い。
【0470】
そこで、情報毎に重要性を表すIDを与え、このIDに基づいて伝送する情報の重要性を識別し、通信経路を自動的に選択する。すなわち、重要性の高い情報については、二重化されたバックボーンの通信用幹線の通信用幹線2037−5aで伝送し、重要性の低い情報は通信用幹線2037−5bで伝送する。
【0471】
<車両上のシステム内で無線通信を利用する技術>
図85(a)、
図85(b)、および
図85(c)は、それぞれ異なる状況における機器間の通信接続状態を示し、
図85(a)は斜視図、
図85(b)および
図85(c)はブロック図である。
【0472】
例えば、
図85(a)に示したバックボーン幹線2038−1上に通信線が含まれている場合には、バックボーン幹線2038−1上に接続した複数の制御ボックス2038−2、2038−3の間で有線の通信を行うことができる。しかし、車両の衝突などの際に、バックボーン幹線2038−1が被害を受けて通信線が断線する可能性がある。
【0473】
そこで、通信経路に冗長性を持たせるために、近距離の無線通信機能を各制御ボックス2038−2、2038−3に搭載する。これにより、
図85(a)に示す構成において、制御ボックス2038−2、2038−3の間で通信線が断線した場合であっても、無線通信回線を経由して、複数の制御ボックス2038−2、2038−3の間の通信経路を確保できる。また、断線が生じていない箇所では、バックボーン幹線2038−1上の通信線を経由して制御ボックス間の通信経路を確保する。
【0474】
また、
図85(b)に示すように、制御ボックス2038−4、2038−5の間で通信線が断線し、同時に制御ボックス2038−5、2038−6の間でも通信線が断線した場合であっても、それぞれ無線通信により通信経路を確保できる。したがって、
図85(c)に示すように、制御ボックス2038−4、2038−5の間、制御ボックス2038−5、2038−6の間、および制御ボックス2038−4、2038−6の間で通信できる。これにより、通信経路の信頼性を確保できる。
【0475】
<バックボーン幹線の細径化に関する技術>
図86は、車載システムの電源系統の構成例を示す電気回路図である。
【0476】
図86に示した車載システムにおいては、バックボーン幹線2039−3の一方の端部(例えば車体の前方側)にオルタネータ(発電機:ALT)2039−1を接続してあり、バックボーン幹線2039−3の他方の端部(例えば車体の後部側)にメインバッテリ2039−2が接続してある。
【0477】
また、バックボーン幹線2039−3の中間部の各部に、負荷2039−4A、2039−4B、および2039−4Cが所定の枝線サブハーネスを介して接続してある。また、
図86においては負荷2039−4A、2039−4B、および2039−4Cのそれぞれを接続した箇所におけるバックボーン幹線2039−3の電圧を、それぞれV1、V2、およびV3で表してある。
【0478】
通常は、オルタネータ2039−1の直流出力電圧は、メインバッテリ2039−2の端子間電圧よりも高くなる。したがって、
図86に示したように、「V1>V2>V3」の関係になる。ここで、メインバッテリ2039−2の影響がなく、負荷2039−4A、2039−4B、2039−4Cにそれぞれ負荷電流i1、i2、i3が流れる場合を想定する。その場合は、
図86に示すようにオルタネータ2039−1の出力電流Iが、バックボーン幹線2039−3上を右側に向かって流れ、各負荷の接続点で電流が分流する。したがって、バックボーン幹線2039−3上の各位置で
図86に示すように電流「I」、「I−i1」、「I−i1−i2」が流れる。この電流に応じた電圧降下がバックボーン幹線2039−3上で発生し、「V1>V2>V3」の関係になる。そのため、オルタネータ2039−1からの距離が遠い負荷2039−4Cの位置では、電圧降下の影響が大きくなる。そのため、抵抗値を下げるためにバックボーン幹線2039−3を太くする必要がある。なお、一般的なワイヤハーネスを用いて電源ラインを配索する場合には、電源の根元で分岐して複数の電線でそれぞれ独立した負荷まで電源ラインを配索することにより電圧降下を抑制できるが、電線の本数が増えてしまう。
【0479】
しかし、
図86に示した構成においては、バックボーン幹線2039−3の右端側にメインバッテリ2039−2が接続されているので、メインバッテリ2039−2から負荷2039−4Cに対して電流を流すこともできる。また、その場合はメインバッテリ2039−2と負荷2039−4Cとの距離が近いので、大きな電圧降下を生じることなく、メインバッテリ2039−2から負荷2039−4Cに電力を供給することができる。また、負荷2039−4C等が必要とする電力の少なくとも一部をメインバッテリ2039−2側から供給することにより、オルタネータ2039−1からバックボーン幹線2039−3上を右側に向かって流れる電流Iを減らすことができる。これにより、バックボーン幹線2039−3上の各位置で発生する電圧降下を減らすことができ、バックボーン幹線2039−3の細径化が可能になる。
【0480】
また、大きな電流を必要とする負荷に対して、オルタネータ2039−1およびメインバッテリ2039−2の両方から同時に電力を供給する場合であっても、オルタネータ2039−1の電流と、メインバッテリ2039−2の電流とが互いに異なる箇所を通過することになり、バックボーン幹線2039−3上の同じ箇所に電流が集中するのを避けることができる。その結果、バックボーン幹線2039−3の各部を流れる電流の定格最大値が削減され、バックボーン幹線2039−3における電源ラインのバスバー等を細径化することが可能になる。
【0481】
<複数の負荷の配置形態に関する技術>
図87は、車載システムの電源系統の構成例を示す電気回路図である。
【0482】
図87に示した車載システムにおいては、車体のエンコパ(エンジンルーム)領域2040−2から車室内の領域2040−1にかけて直線状にバックボーン幹線2040−3が配索してある。そして、バックボーン幹線2040−3には主電源であるオルタネータ(ALT)2040−4、およびメインバッテリ等で構成される電源2040−5が接続されている。
【0483】
また、バックボーン幹線2040−3の各部には、所定の枝線サブハーネスを介して、車両上に存在する様々な種類の負荷2040−6A、2040−6B、2040−6C、2040−6Dが接続されている。
【0484】
また、この例では負荷2040−6Aは大電力を消費する負荷である。また、負荷2040−6BはECU、スイッチ、センサ、イルミネーションのように、消費する電力が小さい負荷である。負荷2040−6Cは、ランプやボディ系に備わった電気モータのように中程度の電力を消費する負荷である。また、負荷2040−6Dは、シャシー系に備わった電気モータのように大電力を消費する負荷である。
【0485】
図87に示したように、この構成においては、小電力の負荷2040−6Bは、電源2040−5に近い位置に接続してあり、大電力の負荷2040−6Dは電源2040−5からの距離が遠い位置に接続してある。このような位置関係で各負荷を接続することにより、バックボーン幹線2040−3の末端における電圧降下を小さくすることができる。
つまり、
図87に示したように、負荷2040−6A、2040−6D、2040−6C、2040−6Bに流れる電流をそれぞれi1、i2、i3、i4で表すと、「i2>i3>i4」の関係になる。また、
図87のように各負荷2040−6D、2040−6C、2040−6B、および電源、の各区間におけるバックボーン幹線2040−3の電圧降下をそれぞれΔV2、ΔV3、ΔV4で表すと、「ΔV2>ΔV3>ΔV4」の関係になる。
【0486】
<不正機器接続防止に関する技術>
前述の制御ボックスCBなどに様々な機器を接続可能な汎用の接続ポート、例えばUSB規格の接続ポートが必要数以上に存在する場合には、この接続ポートのうち未使用状態の空きポートに、不正な機器が接続される可能性がある。例えば、車両のユーザが知らない間に、第三者が車両に侵入して、不正な機器を空きポートに接続する可能性も考えられる。
【0487】
そこで、侵入者が不正な機器を空きポートに接続するのを防止するための機能を提供する。具体的には、侵入センサを車両に搭載しておき、制御ボックスCB内などに設けられたマイクロコンピュータの制御により、侵入検知時には、不正接続された機器が作動しないように対処する。すなわち、該当する空きポートの電源および通信ラインを自動的に遮断するようにマイクロコンピュータが制御する。
【0488】
マイクロコンピュータは、接続ポート毎に、例えば通電電流を監視することにより、当該ポートが使用中のポートか、空きポートかを識別することができる。また、車両のイグニッションスイッチがオンになる毎に、各接続ポートの接続認証を行い、当該ポートが使用中のポートか否かを識別できる。
【0489】
<電源のバックアップおよびヒューズに関する技術>
図88は、バックアップ電源回路の構成例を示す電気回路図である。
【0490】
図88に示したバックアップ電源回路2041−1は、各制御ボックスCBの内部に装備され、ほとんどの種類の補機に電力を供給するために利用できる。この回路には、
図88に示すように、メイン電源ライン2041−2、サブ電源ライン2041−3、2個のスイッチング素子2041−5、2個のダイオード2041−6、電源出力部2041−7、およびアースライン2041−9が備わっている。また、電源出力部2041−7は、所定の枝線サブハーネスを接続するために設けられた制御ボックスCBのコネクタ2041−8の一部分と接続されている。
【0491】
コネクタ2041−8上には、4個の端子2041−8a、2041−8b、2041−8c、2041−8dが備わっている。端子2041−8a、および2041−8dは、それぞれ電源出力部2041−7のアース(GND)ライン、および電源ラインと接続される。また、端子2041−8b、および2041−8cは、2本の通信ラインと接続される。なお、端子2041−8a、2041−8b、2041−8c、および2041−8dの端子サイズは、それぞれ1.5、0.5、0.5、1.5とする。
【0492】
バックアップ電源回路2041−1のメイン電源ライン2041−2には、車両のメインバッテリ等からの直流電力が、バックボーン幹線を経由して供給される。また、サブ電源ライン2041−3には、所定のサブバッテリ等からの直流電力が、バックボーン幹線等を経由して供給される。なお、バックボーン幹線のサブ電源ライン及びメイン電源ラインの少なくともいずれか一方には、車両駆動等に用いられる高圧バッテリパックの電力をDC/DCで降圧し、サブ電源として供給することができる。
【0493】
2個のスイッチング素子2041−5をオンオフ制御するための制御信号2041−4は、制御ボックスCB内に設けられた図示しないマイクロコンピュータから供給される。このマイクロコンピュータが制御信号2041−4を適切に制御することで、次の(1)、(2)、および(3)に示すような機能を実現できる。
【0494】
(1)電子ヒューズ機能:
負荷電流の大きさを監視して、所定以上の過大電流の通電を検知した場合には、自動的に通電経路を遮断する。また、正常な状態に戻ったことを検知した場合には、通電経路を再接続する。
【0495】
(2)メイン/サブ電源の自動切替機能:
例えば、通常はメイン電源ライン2041−2側の電力のみを負荷側に供給し、メイン電源ライン2041−2の故障などを検知した場合には、サブ電源ライン2041−3側から負荷に電力を供給するように自動的に切り替える。つまり、サブ電源ライン2041−3をバックアップ用の電源供給経路として利用する。また、比較的消費電力の大きな負荷を接続する場合には、メイン電源ライン2041−2およびサブ電源ライン2041−3の両方から同じ負荷に対して同時に電力を供給する。これにより電源側の電力容量の不足を補うことができる。
【0496】
(3)電源種類(+B,+BA,IG等)の切替機能:
このバックアップ電源回路2041−1が電源出力部2041−7に供給する電力の種類をマイクロコンピュータが自動的に切り替える。電力の種類としては、「+B」、「ACC」、「IG」、「+BA」、「IGP」、「IGR」などがある。
【0497】
「+B」は、常時バッテリから電力が供給される系統の電力を表す。「ACC」は、車両のアクセサリー(ACC)スイッチのオンオフに連動して電力が供給される系統の電力を表す。「IG」は、車両のイグニッション(IG)スイッチのオンオフに連動して電力が供給される系統の電力を表す。「+BA」は、ユーザが近づいた時にオンになり電力が供給される系統の電力を表す。「IGP」は、イグニッションがオンになり、エンジンがフルの状態で電力が供給される系統の電力を表す。「IGR」は、緊急時に必要とされる電力を供給する系統を表し、実際にはタイヤが回っているときに電力が供給される。
【0498】
マイクロコンピュータが実行する処理により、2個のスイッチング素子2041−5の各々を状況に応じて適切にオンオフ制御することで、上記のような様々な種類の電力を負荷側に供給することができる。
【0499】
<パワー負荷用電源回路に関する技術>
図89は、パワー負荷用電源回路の構成例を示す電気回路図である。
【0500】
図89に示すパワー負荷用電源回路2042−1は、各制御ボックスCBの内部に装備され、例えば特別に大きな電源電力を必要とする負荷に電力を供給するために利用できる。この回路には、
図89に示すように、メイン電源ライン2042−2、スイッチング素子2042−5、電源出力部2042−6、およびアースライン2042−3が備わっている。また、電源出力部2042−6は、所定の枝線サブハーネスを接続するために設けられた制御ボックスCBのコネクタ2042−7と接続されている。
【0501】
コネクタ2042−7上には、2個の端子2042−7a、2042−7bが備わっている。端子2042−7a、および2042−7bは、それぞれ電源出力部2042−6のアース(GND)ライン、および電源ラインと接続される。なお、端子2042−7a、および2042−7bの端子サイズは、いずれも4.8とする。例えば、車両のブロアモータが所定のパワーケーブルを介して、コネクタ2042−7に接続される。
【0502】
パワー負荷用電源回路2042−1のメイン電源ライン2042−2には、車両のメインバッテリ等からの直流電力が、バックボーン幹線を経由して供給される。アースライン2042−3は、バックボーン幹線のアースライン、あるいは車両のボディアースと接続される。
【0503】
スイッチング素子2042−5をオンオフ制御するための制御信号2042−4は、制御ボックスCB内に設けられた図示しないマイクロコンピュータから供給される。このマイクロコンピュータが制御信号2042−4を適切に制御することで、上記の「電子ヒューズ」の機能を実現することができる。また、負荷に電力を供給するタイミングを適切に制御することができる。例えば、メインバッテリの電力残容量を反映して制御タイミングを決定したり、節電のためのタイミング制御を行うことができる。
【0504】
<複数の通信プロトコルに対応するための技術>
図91は、複数の通信プロトコルを切り替え可能な制御ボックスの構成例を示すブロック図である。
【0505】
車両上の通信システムにおいては、例えばCAN(Controller Area Network )や、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)の標準規格に適合した複数種類の通信インタフェースが利用される可能性がある。そして、通信相手の通信インタフェースが採用している規格が違うと、通信仕様や通信プロトコルが異なるため、相互に通信することができない。したがって、同じ規格の通信インタフェース同士を接続するように、通信システムを構成する必要がある。
【0506】
そのため、通信インタフェースだけでなく、コネクタや接続ケーブルについても、通信規格毎に異なる部品を用意しなければならず、部品の品番数が増加したり、製造コストの上昇に繋がる。
【0507】
そこで、
図91に示した制御ボックス2044−1、2044−2は、CANおよびCXPIの両方の規格のプロトコルに対応し、部品の共通化、およびプロトコルの自動切り替えを可能にしている。
【0508】
図91に示した制御ボックス2044−1は、マイクロコンピュータによって制御される4つのPHY回路、2つのネットワークスイッチ(Switch)、ゲートウェイ(GW)の機能を内蔵している。このゲートウェイは、CAN−FD規格、およびCXPI規格の両方の通信プロトコルに対応している。
【0509】
また、制御ボックス2044−1の内部には、CAN−FD規格の通信インタフェースと、CXPI規格の通信インタフェースとが内蔵され、制御ボックス2044−1の接続部2044−1aには4個の独立したコネクタが備わっている。また、もう一方の制御ボックス2044−1は、無線PHY回路を更に備えている。
【0510】
接続部2044−1aの各コネクタは、切替回路2044−4を内蔵している。この切替回路2044−4のCAN接続部2044−4aは、CAN−FD規格の通信インタフェースと接続され、CAN−FD規格の「+側」および「−側」の1組の通信信号を扱うことができる。また、切替回路2044−4のCXPI接続部2044−4bは、CXPI規格の通信インタフェースと接続され、CXPI規格の1つの通信信号を扱うことができる。切替回路2044−4のCAN接続部2044−4a、およびCXPI接続部2044−4bの信号経路は、内部の制御可能なスイッチを経由して共通接続部2044−4cの2つの端子と接続されている。このスイッチは、内部のゲートウェイ(GW)により制御される。
【0511】
また、共通接続部2044−4cの2つの端子と、電源ライン、アースラインとの4つの端子を含む共通のコネクタが、各制御ボックス2044−1、2044−2に備わっている。
【0512】
図91中に示したモジュラーケーブル2044−5は、CAN規格の信号に対応するために、「GND」、「CAN FD−」、「CAN FD+」、および「電源」の4つの端子および4本の電線を備えている。また、モジュラーケーブル2044−6は、CXPI規格の信号に対応するために、「GND」、「CXPI」、「GND」、および「電源」の4つの端子および4本の電線を備えている。つまり、2つのモジュラーケーブル2044−5、2044−6は同じ数の端子および電線を有しているので、共通の部品として使用できる。
【0513】
構成が共通のモジュラーケーブル2044−5、または2044−6を制御ボックス2044−1の共通のコネクタと接続することにより、CAN−FD規格およびCXPI規格のいずれの通信にも対応できる。
【0514】
実際には、制御ボックス2044−1内のマイクロコンピュータの制御により、初期状態ではCAN−FD規格の通信を選択し、CXPI規格の通信機器が相手側に接続された場合には自動的にCXPI規格の通信に切り替える。具体的には、モジュラーケーブル2044−5、又は2044−6を経由して相手側の通信機器が接続されたときに、マイクロコンピュータが信号のスキャニングを行い、相手が何を要求しているのかを把握する。そして、CAN規格のプロトコルにより通信を確立できない場合には、CXPI規格のプロトコルに切り替えて通信の確立を試みる。この時、マイクロコンピュータが切替回路2044−4のスイッチを切り替えることにより、切替回路2044−4内で信号経路を切り替えて、コネクタの各端子に流す信号の形式を、CAN形式(2本の信号線)から、CXPI形式(1本の信号線)に変更できる。
【0515】
<制御ボックスおよびECUの配置に関する技術>
図90は、車載システムの構成例を示すブロック図である。
【0516】
図90に示した車載システムにおいては、2つの制御ボックス2043−1、2043−2の間がバックボーン幹線2043−4を介して接続されている。また、ECUボックス2043−3がバックボーン幹線2043−5を経由して制御ボックス2043−1と接続されている。
【0517】
ECUボックス2043−3の内部には、エアコン制御用のECU(電子制御ユニット)と、その他の複数のECUが内蔵されている。制御ボックス2043−1は例えば車両のインパネ部に配置される。
【0518】
制御ボックス2043−2の配下には、枝線である2つのモジュラーケーブル2043−8を介して、ECU2043−6およびコネクタ2043−7が接続されている。また、他の枝線を経由して、PTCヒータ2043−9も制御ボックス2043−2の配下に接続されている。ECU2043−6の出力には、複数の負荷2043−10が接続されている。また、コネクタ2043−7は電子回路を内蔵し、制御ボックス2043−2との間で通信する機能や負荷の通電を制御する機能を内蔵している。
【0519】
図90に示した車載システムにおいては、制御ボックス2043−2の配下に負荷2043−10としてエアコンが接続された場合に、制御ボックス2043−2内のマイクロコンピュータが、ECUボックス2043−3内のエアコン制御用のECUの代わりに、エアコンの制御を実施することもできる。その場合には、ECUボックス2043−3内のエアコン制御用のECUを削減することができる。
【0520】
一方、
図82に示した車載システムにおいては、制御ボックス2035−2Aに、イーサネット(登録商標)規格の通信線2035−6を経由して、ECUボックス2035−3が接続されている。ECUボックス2035−3の内部には、例えば10個程度の互いに独立したECUを内蔵することができる。したがって、多数のECUを一箇所に集中的に配置することができる。ECUボックス2035−3内の各ECUの配下には、様々な負荷を接続することができる。
【0521】
また、ECUボックス2035−3の内部にはCAN FD規格の通信インタフェース、ゲートウェイ(GW)、およびPHY回路が備わっている。したがって、ECUボックス2035−3内の各ECUは、制御ボックス2035−2A〜2035−2Eを経由して、車両上の様々な機器との間で通信することができる。なお、ECUボックス2035−3に内蔵される各ECUは着脱自在であり、必要に応じて交換することができる。また、各ECUの装着位置を変更することもできる。
【0522】
<通信系統の2重化に関する技術>
図93(a)および
図93(b)は、車載システムの構成例を示すブロック図である。
故障が生じた場合や、車両の衝突に伴って通信線が断線したような場合には、機器間で通信できない状態になる。しかし、例えば車両に自動運転などの技術を搭載する場合には、通信システムにより高い信頼性が要求されるので、通信経路が途絶えないように配慮する必要がある。
【0523】
そこで、
図93(a)および
図93(b)に示した車載システムにおいては、信頼性を高めるために、少なくとも重要度の高い箇所については、電源供給経路および通信経路を2重化するように構成してある。
【0524】
図93(a)に示した構成においては、制御ボックス2046−1と、制御ボックス2046−2との間がバックボーン幹線2046−4を介して互いに接続され、制御ボックス2046−1と、制御ボックス2046−3との間がバックボーン幹線2046−5を介して互いに接続されている。また、
図93には示されていないが、バックボーン幹線2046−4、および2046−5の各々は、電源ライン、アースライン、および通信ラインを含み、電源ライン、および通信ラインはそれぞれ独立した2系統の線路を備えている。
【0525】
また、制御ボックス2046−2の配下には、枝線であるモジュールケーブル2046−7を経由して、制御ユニット2046−6が接続されている。また、制御ボックス2046−3の配下には、枝線であるモジュールケーブル2046−8を経由して、制御ユニット2046−6が接続されている。制御ユニット2046−6の配下には、枝線サブハーネス2046−10を介して複数の負荷2046−9が接続されている。
【0526】
また、モジュールケーブル2046−7および2046−8の各々は、2系統の電源ラインと、アースラインと、2系統の通信ラインとを備えている。なお、アースラインを2系統にすることもできる。
【0527】
したがって、例えば制御ボックス2046−1から、バックボーン幹線2046−4、制御ボックス2046−2、およびモジュールケーブル2046−7を経由して制御ユニット2046−6に指示を与える場合の通信経路および電力供給経路は全て2重化されている。また、制御ボックス2046−1から、バックボーン幹線2046−5、制御ボックス2046−3、およびモジュールケーブル2046−8を経由して制御ユニット2046−6に指示を与える場合の通信経路および電力供給経路も全て2重化されている。
【0528】
そのため、例えばバックボーン幹線2046−4、2046−5、モジュールケーブル2046−7、2046−8のいずれかにおいて、1系統の通信ラインが断線した場合であっても、断線していないもう一方の系統の通信ラインを用いて通信経路を確保できる。
【0529】
また、例えばバックボーン幹線2046−4、またはモジュールケーブル2046−7において、2系統の通信ラインが同時に断線したような場合であっても、制御ボックス2046−1から、バックボーン幹線2046−5、制御ボックス2046−3、およびモジュールケーブル2046−8を経由する通信経路に切り替えることにより、制御ユニット2046−6の制御に必要な通信経路を確保できる。
【0530】
一方、
図93(b)に示した車載システムにおいては、中央の制御ボックス2046−12と、複数の制御ボックス2046−11、2046−13、2046−14、2046−15等が、それぞれ独立したバックボーン幹線2046−17、2046−16、2046−18等を介して相互に接続されている。また、各制御ボックスの配下には、枝線を経由して制御ユニット又は負荷が接続されている。
【0531】
また、例えば制御ユニット2046−21Aは、枝線2046−22を経由して中央の制御ボックス2046−12と接続されており、更に、制御ユニット2046−21Aは、枝線2046−23を経由して制御ボックス2046−14と接続されている。
【0532】
したがって、制御ボックス2046−12が制御ユニット2046−21Aに対して指示を与える場合には、枝線2046−22を経由して通信する経路と、バックボーン幹線2046−18、制御ボックス2046−14、および枝線2046−23を経由して通信する経路とのどちらでも使うことができる。つまり、複数の経路の一方で断線が生じた場合であっても、残りの正常な通信線を用いて必要な通信経路を確保できる。
【0533】
<モジュール化した機器の接続形態に関する技術>
図94は、運転席ドアパネルに設置される回路モジュールの構成例を示すブロック図である。
【0534】
図94に示した回路モジュール2047−4は、運転席ドアパネルに配置されており、車体側に設置されている制御ボックス2047−1と、枝線サブハーネス2047−2および2047−3を介して接続されている。枝線サブハーネス2047−2および2047−3は、車体と運転席ドアとを連結する箇所の隔壁を貫通するように配索される。
【0535】
枝線サブハーネス2047−2の通信線は、標準の通信インタフェース(CXPI等)に接続され、枝線サブハーネス2047−3の通信線は、イーサネット(登録商標)の通信インタフェースに接続されている。
【0536】
回路モジュール2047−4上には、モジュラー接続コネクタ2047−8の他に、標準インタフェースを備える補機として、複数の電子制御ユニット(ECU)2047−10、2047−11、サイドテレビジョン2047−9等が備わっている。また、アンテナ2047−5、スピーカ2047−6、センサ2047−7、汎用通信コネクタ2047−12等も備わっている。
【0537】
モジュラー接続コネクタ2047−8は、CXPI規格の3個の標準通信インタフェースと、標準(STD)駆動回路とを内蔵している。なお、モジュラー接続コネクタ2047−8内の各標準通信インタフェースは、単に受け取った信号をそのまま通過させて出力側に送り出す機能を有している。
【0538】
電子制御ユニット2047−10、2047−11、および汎用通信コネクタ2047−12は、それぞれ、モジュラー接続コネクタ2047−8の標準通信インタフェースと接続されている。汎用通信コネクタ2047−12は、電子回路を内蔵しており、この電子回路により通信、負荷の制御、および信号の入力を行うことができる。また、モジュラー接続コネクタ2047−8の標準駆動回路の出力に、ドアロックモータ2047−17や、ドア内の各種イルミネーション機器2047−18が接続されている。
【0539】
電子制御ユニット2047−10は、パワーウインドウの制御に必要な処理を実行するマイクロコンピュータを内蔵しており、その出力には、パワーウインドウの電気モータ(P/W MTR)が接続されている。
また、電子制御ユニット2047−11は、ドアに設置されたアウターミラーを制御する機能を有するマイクロコンピュータを内蔵している。電子制御ユニット2047−11の出力にミラーの構成要素2047−14、および2047−15が接続されている。汎用通信コネクタ2047−12の出力には、ミラーヒータ2047−16、メモリスイッチ等2047−19が接続されている。
【0540】
図95は助手席ドアパネルに設置される回路モジュールの構成例を示すブロック図である。
図95に示した回路モジュール2048−4は、助手席ドアパネルに配置されており、車体側に設置されている制御ボックス2048−1と、枝線サブハーネス2048−2および2048−3を介して接続されている。枝線サブハーネス2048−2および2048−3は、車体と助手席ドアとを連結する箇所の隔壁を貫通するように配索される。
【0541】
枝線サブハーネス2048−2の通信線は、標準の通信インタフェース(CXPI等)に接続され、枝線サブハーネス2048−3の通信線は、イーサネット(登録商標)の通信インタフェースに接続されている。
【0542】
回路モジュール2048−4上には、モジュラー接続コネクタ2048−8の他に、標準インタフェースを備える補機として、複数の電子制御ユニット(ECU)2048−10、2048−11、サイドテレビジョン2048−9等が備わっている。また、アンテナ2048−5、スピーカ2048−6、センサ2048−7、汎用通信コネクタ2048−12等も備わっている。
【0543】
モジュラー接続コネクタ2048−8は、CXPI規格の3個の標準通信インタフェースと、標準(STD)駆動回路とを内蔵している。電子制御ユニット2048−10、2048−11、および汎用通信コネクタ2048−12は、それぞれ、モジュラー接続コネクタ2048−8の標準通信インタフェースと接続されている。汎用通信コネクタ2048−12は、電子回路を内蔵しており、この電子回路により通信、負荷の制御、および信号の入力を行うことができる。また、モジュラー接続コネクタ2048−8の標準駆動回路の出力に、ドアロックモータ2048−17や、ドア内の各種イルミネーション機器2048−18が接続されている。
【0544】
電子制御ユニット2048−10は、パワーウインドウの制御に必要な処理を実行するマイクロコンピュータを内蔵しており、その出力には、パワーウインドウの電気モータ(P/W MTR)が接続されている。
また、電子制御ユニット2048−11は、ドアに設置されたアウターミラーを制御する機能を有するマイクロコンピュータを内蔵している。電子制御ユニット2048−11の出力にミラーの構成要素2048−14、および2048−15が接続されている。汎用通信コネクタ2048−12の出力には、ミラーヒータ2048−16、およびランプ2048−19が接続されている。
【0545】
図96は、リア席ドアパネルに設置される回路モジュールの構成例を示すブロック図である。なお、リア席ドアパネルについては左右で同一の構成である。
【0546】
図96に示した回路モジュール2049−3は、リア席(左右の各々)ドアパネルに配置されており、車体側に設置されている制御ボックス2049−1と、枝線サブハーネス2049−2を介して接続されている。枝線サブハーネス2049−2は、車体とリア席ドアとを連結する箇所の隔壁を貫通するように配索される。枝線サブハーネス2049−2の通信線は、標準の通信インタフェース(CXPI等)に接続されている。
【0547】
回路モジュール2049−3上には、モジュラー接続コネクタ2049−4の他に、標準インタフェースを備える補機として、電子制御ユニット(ECU)2049−5等が備わっている。モジュラー接続コネクタ2049−4は、CXPI規格の3個の標準通信インタフェースと、標準(STD)駆動回路とを内蔵している。電子制御ユニット2049−5は、モジュラー接続コネクタ2049−4の標準通信インタフェースと接続されている。
【0548】
また、モジュラー接続コネクタ2049−4の標準駆動回路の出力に、ドアロックモータ2049−7や、ドア内の各種イルミネーション機器2049−8、2049−9、2049−10が接続されている。
【0549】
電子制御ユニット2049−5は、パワーウインドウの制御に必要な処理を実行するマイクロコンピュータを内蔵しており、その出力には、パワーウインドウの電気モータ(P/W MTR)2049−6が接続されている。
【0550】
図97は、車両のルーフに設置される回路モジュールの構成例を示すブロック図である。
図97に示した回路モジュール2050−3は、車体のルーフ部に配置されており、車室内側に設置されている制御ボックス2050−1と、枝線サブハーネス2050−2を介して接続されている。枝線サブハーネス2050−2は、車体とルーフを連結する箇所の隔壁を貫通するように配索される。枝線サブハーネス2050−2の通信線は、標準の通信インタフェース(CXPI等)に接続されている。
【0551】
回路モジュール2050−3上には、モジュラー接続コネクタ2050−4の他に、標準インタフェースを備える補機として、電子制御ユニット(ECU)2050−6、レインセンサ2050−14等が備わっている。また、マイク2050−5、汎用通信コネクタ2050−7等も備わっている。
【0552】
モジュラー接続コネクタ2050−4は、CXPI規格の3個の標準通信インタフェースと、標準(STD)駆動回路とを内蔵している。なお、モジュラー接続コネクタ2050−4内の各標準通信インタフェースは、単に受け取った信号をそのまま通過させて出力側に送り出す機能を有している。
【0553】
電子制御ユニット2050−6、レインセンサ2050−14、および汎用通信コネクタ2050−7は、それぞれ、モジュラー接続コネクタ2050−4の標準通信インタフェースと接続されている。汎用通信コネクタ2050−7は、電子回路を内蔵しており、この電子回路により通信、負荷の制御、および信号の入力を行うことができる。また、モジュラー接続コネクタ2050−4の標準駆動回路の出力に、各種のランプ負荷2050−12、2050−13が接続されている。
【0554】
電子制御ユニット2050−6は、スライディングルーフの開閉等の駆動制御に必要な処理を実行するマイクロコンピュータを内蔵しており、その出力には、スライディングルーフスイッチ2050−8、および駆動用の電気モータ2050−9が接続されている。汎用通信コネクタ2050−7の出力には、メーデースイッチ2050−10、およびインナーリアビューミラー2050−11が接続されている。
【0555】
図98は、スマート接続コネクタの構成例を示すブロック図である。
図98に示したスマート接続コネクタ2051−3は、車両上の様々な箇所で汎用的に使えるジョイント機能を提供する要素であり、枝線サブハーネス2051−2、および標準インタフェース2051−1を介して、所望の制御ボックスと接続することができる。
【0556】
また、スマート接続コネクタ2051−3の出力側コネクタ2051−7に、例えば
図98に示すように、ドアロックモータスイッチ2051−8、各種イルミネーション機器2051−9、2051−10、2051−11、ドアロックモータ2051−12等を接続することができる。
【0557】
また、スマート接続コネクタ2051−3の内部には、制御回路2051−4が設けてある。制御回路2051−4は、標準通信インタフェース2051−4a、電源回路2051−4b、マイクロコンピュータ(CPU)2051−4c、信号処理回路(STRB)2051−4d、入力回路2051−4e、IPD (Intelligent Power Device)2051−4f、およびモータドライバ2051−4gを備えている。
【0558】
スマート接続コネクタ2051−3の出力側コネクタ2051−7には、各種の電源電力を出力する端子と、通信用の端子と、入力回路2051−4eに入力する信号のための端子と、IPD2051−4fで駆動する負荷を接続するための端子と、電気モータを接続するための端子とが備わっている。
【0559】
出力側コネクタ2051−7に出力する電源電力については、マイクロコンピュータ2051−4cの処理によって電子ヒューズを作動させたり、電力の種類(+B、+BA、IG等)を切り替えることができる。この制御を行うために、出力側コネクタ2051−7の各端子と、入力側電源ラインとの間にスイッチング素子が接続されている。このスイッチング素子のオンオフをマイクロコンピュータ2051−4cが制御する。
【0560】
<新たなユニットを追加して機能を追加するための技術>
本実施形態では、車載システムの共通インタフェースに対して、新規のユニットを接続し、機能追加を行う場合のシステム側の制御を想定している。例えば、
図49に示したシステムにおいて、各制御ボックスCBの接続部Cnxのコネクタに、枝線サブハーネスLSを介して新規の補機AEを接続する場合が想定される。但し、新たに接続する新規のユニットが必ずしも正規のユニットであるとは限らないので、システム全体のセキュリティを確保するために特別な制御を実施する必要がある。
【0561】
図示しないが、この場合に実行する手順の具体例は次の通りである。
ステップS50:車両のディーラー等において、作業者等が該当する新規のユニット(補機)を枝線サブハーネスLSを介して制御ボックスCBの接続部Cnxに接続する。
【0562】
ステップS51:車両のディーラー等において、車両メーカ等が提供する車両専用の診断ツール(例えば「タスキャン」)を作業者等が車両上のシステムに接続し、接続したユニットを診断のためにスキャンするための命令を実行する。
【0563】
ステップS52:前記診断ツールからの命令に従い、制御ボックスCB内のマイクロコンピュータがスキャン処理を開始する。そして、まず最初に接続部Cnxに繋がる1つめの標準インタフェースに電源を投入し、この標準インタフェースを利用する通信について、CAN通信の通信可否をマイクロコンピュータが自動的に識別する。
【0564】
ステップS53:ステップS52でCAN通信が成立しない場合には、マイクロコンピュータが通信仕様をCANからCXPIに切り替えて、CXPI通信で通信可否を識別する。
【0565】
ステップS54:ステップS52,S53において、CAN通信、CXPI通信のいずれも成立しない場合には、マイクロコンピュータが、該当する標準インタフェースの電源を遮断する。
【0566】
ステップS55:ステップS52,S53において、CANまたはCXPIの通信が成立した場合には、前記診断ツールと、制御ボックスCB内のマイクロコンピュータと、接続先の補機(新規のユニット等)との間で通信を行い、前記診断ツールが所定の処理を実行することにより、該当する補機についての認証処理を行う。認証処理の内容については、事前に規格化しておく。
【0567】
ステップS56:ステップS55で認証に成功した場合には、制御ボックスCB内のマイクロコンピュータが、該当する標準インタフェースの補機について、電源電力の供給条件をマイクロコンピュータ自身の記憶装置内に登録する。例えば、認証により判明した補機の種類、あるいはID情報に基づき、供給すべき電力の種類が、「+B,+BA,IG,IGP」等のいずれに該当するのかを自動的に識別し、その識別結果を登録する。
【0568】
ステップS57:2つめ以降の各標準インタフェースについても、上記のステップS52〜S56の処理を順次に繰り返す。
【0569】
ステップS58:全ての標準インタフェースについて上記のスキャン処理が終了した後で、前記診断ツールまたは制御ボックスCB内のマイクロコンピュータは、新規に追加されたユニットについて、該当する機能を追加することについて、ユーザ(又は作業者)が確認できるようにメッセージ等を表示する。この表示は、例えば車両上のメータユニットの表示部などを用いて表示する。
【0570】
ステップS59:ステップS58でユーザが確認した機能について、該当する機能を実際に使用できる環境に移行するための情報を、制御ボックスCB内のマイクロコンピュータがそれ自身の記憶装置上に記憶する。
【0571】
したがって、例えば車両メーカ等が許可していない不正な機器をユーザや第三者が車載システムに接続しようとしても、不正な機器は正規の車載システムとの間で通信を行うことができないし、通信用のコネクタを経由して電力供給を受けることもできないので、不正な機器は全く動作しない。
【0572】
<車載システムの通信系の接続形態に関する技術>
図99(a)、
図99(b)、および
図100は、それぞれ異なる車載システムの通信系の構成例を示すブロック図である。
【0573】
図99(a)に示した車載システムは、3系統の通信網V2−CAN、V1−CAN、MS−CANを備えており、これらの間はゲートウェイで相互に接続されている。また、通信網V2−CANは、エンコパ(エンジンルーム)系の機器に割り当てられ、通信網V1−CANは、エンジン系の機器(メータユニットを含む)に割り当てられ、通信網MS−CANはボディ系の機器(ドア、パワーシート等)に割り当てられている。
【0574】
また、通信網MS−CANはドメインとして車両全体に配置され、通信網V1−CANおよびV2−CANのそれぞれは、車体上のエリア毎に区分されている。各通信網MS−CAN、V1−CAN、V2−CANの配下に様々な補機が接続される。
【0575】
図99(b)に示した車載システムは、運転支援系、パワートレイン系、シャーシ系、ボディ系、マルチメディア系の各々に割り当てられた複数のドメインのそれぞれを担当する複数の通信網が相互に接続されている。各通信網は、CAN規格の通信インタフェースを採用している。これら複数組の通信網は、車内全体の領域で、互いに並走するように配索されている。
【0576】
図100に示した車載システムは、「エリア1」、「エリア2」、「エリア3」、「エリア4」、「エリア5」のエリア毎に、ドメイン分けされており、エリア毎にそれぞれ通信網が形成されている。また、各エリア間を接続する幹線については、高速通信を可能にするために光通信網が用いられている。
【0577】
光通信網を用いることにより、例えば1[Gbps]程度の高速通信がエリア間で可能になる。光通信網の通信容量は、各エリア内の通信網において複数系統に分配され、様々な補機の通信にそれぞれ割り当てられる。また、通信の優先度については、補機等の機器の各々に事前に割り当てられた固有のID情報に基づいて決定される。
【0578】
<制御ボックス内部の構成に関する技術>
図92は、制御ボックスの構成例を示すブロック図である。
【0579】
図92に示した車載システムは、バックボーン幹線2045−7、2045−8を介して互いに接続された5つの制御ボックス2045−1、2045−2、2045−3、2045−4、2045−5、およびECUボックス2045−6を備えている。
【0580】
図92に示すように、バックボーン幹線2045−7は、2系統の電源ラインと、アースラインとを備えている。また、バックボーン幹線2045−8は、2系統の通信ラインを備えている。
【0581】
制御ボックス2045−1の内部には、2系統の電源部2045−10、2組のネットワーク(イーサネット:登録商標)ハブ2045−11、2045−12、ゲートウェイ(GW)の通信制御部2045−13、WiFi通信モジュール2045−14、ネットワーク(イーサネット:登録商標)ハブ2045−15、電力制御部2045−16、スイッチング回路2045−17A、2045−17B、2045−17C、コネクタ2045−21、2045−22、2045−23、および2045−24が備わっている。
【0582】
バックボーン幹線2045−8に含まれる2系統の通信ラインのうち、一方の通信ラインがネットワークハブ2045−11と接続され、もう一方の通信ラインがネットワークハブ2045−12と接続されている。なお、ネットワークハブ2045−11側の通信系統は、車両のパワートレイン系およびシャシー系用に割り当ててあり、ネットワークハブ2045−12側の通信系統は、車両のボディ系およびマルチメディア系用に割り当ててある。
【0583】
ゲートウェイ(GW)の通信制御部2045−13は、制御ボックス2045−1内に設けられたマイクロコンピュータ(図示せず)の制御により実現する機能であり、次に示す各機能を含んでいる。
【0584】
(1)プロトコル等の規格が異なる複数ネットワーク間の相互接続
(2)関係パケットの受信
(3)信号の送信
(4)制御系の通信、運転支援系通信の分類
(5)高ランク情報の迂回通信
【0585】
WiFi通信モジュール2045−14は、制御ボックス2045−1を車上に搭載された他の機器やユーザが所持している機器との間で無線接続するために利用される。
【0586】
ネットワークハブ2045−15は、通信制御部2045−13の1つの通信経路を分岐して、コネクタ2045−21、2045−22、2045−23のいずれかの通信経路と接続する機能を有している。
【0587】
電力制御部2045−16は、制御ボックス2045−1内に設けられたマイクロコンピュータ(図示せず)の制御により実現する機能であり、次に示すような電源電力の制御機能を備えている。
【0588】
(1)過大な電流が流れたときに経路を遮断する電子ヒューズ機能。
(2)「+B,+BA,IGP,IGR」等の電力の種類を制御する機能。
(3)電源に異常が発生した時に、2系統の電源ラインを使い分けて重要な系統の電源をバックアップする機能。
(4)S&S(stop&start)切替機能。
【0589】
スイッチング回路2045−17A、2045−17B、2045−17Cは、2系統の電源ラインの各々をそれぞれコネクタ2045−21、2045−22、および2045−23の電源ラインと接続するための制御可能な2個のスイッチング素子を備えている。これらのスイッチング素子は、電力制御部2045−16の各機能を実現するマイクロコンピュータが出力する制御信号により個別にオンオフ制御される。
【0590】
コネクタ2045−21、2045−22、および2045−23の各々は、電源ラインの端子、アースラインの端子、および2本の通信ラインの各端子の4つを備えている。これらのコネクタ2045−21、2045−22、および2045−23の配下には、所定の枝線サブハーネスを経由して様々な種類の補機を接続可能である。
【0591】
以上のように、本発明に係る車両用回路体は、様々な電装品と車両上の電源との間および電装品同士の電気接続のための構造、特に幹線部分の構成を簡素化し、新たな電線の追加も容易にできる。
【0592】
<制御ボックスの構成例>
制御ボックスの内部の構成例を
図105に示す。なお、
図105に示した構成は、
図57および
図58に示した構成の変形例であり、
図105において、共通の構成要素には同一の符号を付けて示してある。既に説明した共通の構成要素については、以下の説明を省略する。
【0593】
図105に示した制御ボックスCBは、バックボーン幹線BB_LM2に接続されている。このバックボーン幹線BB_LM2は、1系統の電源ラインL1と、アースラインL3、通信ラインL4BおよびL5Bにより構成されている。電源ラインL1およびアースラインL3の各々は、例えばバスバーのような長尺の導電体であり、通信ラインL4BおよびL5Bは光ファイバである。
【0594】
図105に示した制御ボックスCBの内部には、電源制御部2101、および通信制御部2102が備わっている。また、制御ボックスCBの出力には、2系統の電源コネクタCP11およびCP12と、8系統の通信ポートコネクタCP13〜CP20とが設けてある。
【0595】
通信制御部2102は、6系統の通信ポートコネクタCP13〜CP18の各々に対して、2種類の通信規格CAN_FD、およびCXPIのそれぞれに対応した通信機能を提供することができる。実際には、各コネクタに接続される機器の仕様に合わせて2種類の通信規格CAN_FD、CXPIを選択的に使用することができる。また、通信制御部2102は、2系統の通信ポートコネクタCP19およびCP20の各々に対して、イーサネット(登録商標)規格の通信機能を提供することができる。また、通信制御部2102はバックボーン幹線BB_LM2の通信ラインL4BおよびL5Bに対しても、イーサネット(登録商標)規格の光通信機能を提供することができる。
【0596】
電源コネクタCP11およびCP12の各々は、電力供給用の2つの端子、すなわち電源端子およびアース端子を備えている。また、比較的大きな電力を供給できるように、電源コネクタCP11およびCP12の2つの端子は十分に大きい断面積を有している。また、8系統の通信ポートコネクタCP13〜CP20の各々は、電力供給用の電源端子およびアース端子と、通信用の2つの端子とを備えている。
【0597】
電源制御部2101の内部には、ゲートウェイ用制御回路2111、電源回路2112、電圧監視回路2113、バッテリ逆接保護回路2114、制御回路モニタ2115、および電源出力回路部2116が備わっている。
【0598】
ゲートウェイ用制御回路2111は、マイクロコンピュータを主体とする電気回路により構成されており、マイクロコンピュータの制御により、制御ボックスCB内のゲートウェイとして必要な各種制御機能を果たす。
【0599】
電源回路2112は、電源ラインL1の直流電力(+12[V])に基づき、ゲートウェイ用制御回路2111等の回路が動作するために必要な安定した5[V]の直流電力を生成する。
【0600】
電圧監視回路2113は、電源回路2112の電圧を監視して、電源投入時や電圧の異常時にゲートウェイ用制御回路2111の動作をリセットするための信号を生成する。バッテリ逆接保護回路2114は、作業ミス等に起因して車両上のバッテリが逆極性で接続された場合に、ゲートウェイ用制御回路2111等の回路を保護するための機能を有している。制御回路モニタ2115は、ゲートウェイ用制御回路2111のマイクロコンピュータにおける暴走などの誤動作を監視するための機能を有している。
【0601】
電源出力回路部2116は、電源コネクタCP11、CP12、および通信ポートコネクタCP13〜CP20の10系統の電源端子の各々への電源電力の供給を系統毎に個別にオンオフ制御可能な10個の出力回路を備えている。これらの出力回路は、ゲートウェイ用制御回路2111が出力する制御信号に従い、電源ラインL1の電源電力を各電源端子に供給する。したがって、電源コネクタCP11、CP12、および通信ポートコネクタCP13〜CP20の各々に実際に接続した機器に合わせて、必要な系統にだけ電源電力を供給することができる。
【0602】
<電源失陥時にユーザが必要とする機器に電力を供給するための機能>
電源失陥時に表示する画面の具体例を
図106に示す。また、電源失陥時に使用する機器をユーザが選択するための処理の例を
図107に示す。
【0603】
車両においては、様々な状況において、電源失陥が発生する可能性が考えられる。例えば、発電系統の出力停止、メインバッテリの故障、サブバッテリの故障、電源ラインの断線などが生じる場合がある。そのような場合に、通常と同じ制御を実施すると、車両上の全ての機器が動作を停止してしまったり、供給可能な限られた電力を短時間で全て消耗してしまうことが考えられる。
【0604】
しかし、車両の走行中に電源失陥が発生した場合には、少なくとも安全に停車するまでは、操舵系統、制動系統などの機能を維持するために電源電力を確保する必要がある。また、緊急通報を行う機器を作動させるための電源電力を確保する必要がある。また、例えば真夜中に街路灯がない田舎道などでこのような故障が発生した場合には、車両上の各種照明機能が作動しなくなるため、他車両から自車両が見えにくい状態になり、追突等の交通事故に遭遇しやすい。
【0605】
そこで、本実施形態では、車両上で何らかの電源失陥が発生した場合に、車両の走行中であれば、少なくとも安全に停車できるまでの間は、操舵系統、制動系統などの機器に対して必要な電力をサブバッテリなどから供給する。また、緊急通報を行う機器を作動させるための電源電力も確保する。また、故障して車両が停車した状態において、車両上で残存している電源電力をユーザが必要とする機器に対して選択的に供給するためのユーザ選択機能を備えている。
【0606】
制御ボックスCBを含む車載システムが
図107に示した処理を実行することにより、上記ユーザ選択機能が実現する。また、このユーザ選択機能においては、ユーザの入力操作を容易にするために、
図106に示したような画面を表示する。
図106に示したディスプレイ画面2200は、例えば車両上に標準的に装備されるメータユニット内のディスプレイ、あるいは車両のセンターコンソール等に配置されるディスプレイを利用して表示することができる。
【0607】
メータユニット内のディスプレイを利用する場合には、メータユニット内の制御部(マイクロコンピュータ)と、制御ボックスCB内の制御部(例えば
図105のゲートウェイ用制御回路2111)との間で通信を行う。そして、メータユニット内の制御部および制御ボックスCB内の制御部のいずれか一方、または両方の動作により
図107に示した処理が実行される。
【0608】
図106に示した例では、ディスプレイ画面2200上に、対象機器一覧表示部2201、カーソル表示部2202、動作リミット表示部2203、操作案内表示部2204、および残存バッテリ容量表示部2205が表示されている。
【0609】
対象機器一覧表示部2201は、動作のオンオフをユーザが個別に指定可能な機器の一覧と、各機器の現在の動作状態(ON/OFFの区別)とを表す情報を表示する領域である。
図106に示した例では、ヘッドランプ、テールランプ、エアコン、オーディオ・ナビ、ACCソケット、および室内照明が、ユーザの指定可能な機器の一覧として表示されている。また、ヘッドランプ、およびテールランプの動作状態は「ON」に指定され、エアコン、オーディオ・ナビ、ACCソケット、および室内照明の動作状態は「OFF」に指定されている。
【0610】
カーソル表示部2202は、対象機器一覧表示部2201に表示された機器の一覧の中で、ユーザが現在選択している機器の位置を手を模擬したマークで示している。
図106に示した例では、対象機器として「テールランプ」を選択していることがカーソル表示部2202の表示位置により示されている。
【0611】
動作リミット表示部2203は、対象機器一覧表示部2201に表示されている現在のユーザ指定状態において、各機器の動作を継続可能な残り時間の限界を表している。
図106に示した例では、残存している電源容量により、ヘッドランプ、およびテールランプを、この時点から約35分間だけ動作させることができる。
【0612】
操作案内表示部2204は、対象機器一覧表示部2201の指定を変更するためにユーザが操作すべき操作箇所を模擬したグラフィック画像により操作案内を表示している。この例では、車両のステアリングホイールの近傍に配置されたステアスイッチを利用する場合を想定しているので、このステアスイッチの外観を示す画像と、文字列による説明とが操作案内表示部2204に表示されている。このステアスイッチには、選択位置を上下方向に移動するスイッチと、選択した機器のON/OFFを交互に切り替えるためのスイッチとが含まれている。
【0613】
残存バッテリ容量表示部2205は、車両上の電源システム全体における現在のバッテリの残存電力容量を、基準値(100%)に対する割合(65%)で示している。したがって、この車両を運転するユーザは、故障が発生した場合に、ディスプレイ画面2200に表示される動作リミット表示部2203および残存バッテリ容量表示部2205の内容を確認しながら、自分が必要とする最小限の機器だけは十分に利用できるように、各機器の動作を選択することができる。
【0614】
なお、残存バッテリ容量が非常に少ないような場合には、消費電流の大きい機器を選択できないように制御するか、または対象機器一覧表示部2201の表示対象から予め除外するように制御する場合もある。これにより、ユーザの誤った判断および選択操作による短時間での電源電力の消耗を避けることができる。
【0615】
図107に示したステップS21では、制御ボックスCB内の制御部またはメータユニット内の制御部が、電源失陥の有無を識別する。そして、電源失陥を検知すると次のステップS22に進む。
【0616】
ステップS22では、制御ボックスCB内の制御部またはメータユニット内の制御部が、電源失陥異常を表示すると共に、
図106に示したような内容のディスプレイ画面2200を表示する。
図106に示したディスプレイ画面2200が表示されている状態では、ユーザは上記ステアスイッチを操作することができる。
【0617】
制御ボックスCB内の制御部またはメータユニット内の制御部は、上記ステアスイッチに対するユーザの入力操作をステップS23で検知し、検知した入力操作に応じてディスプレイ画面2200の表示内容を更新する。すなわち、カーソル表示部2202の表示位置を上または下に移動したり、対象機器一覧表示部2201における選択位置の機器の状態のON/OFFを交互に切り替える。また、機器選択入力の完了を示すユーザ操作を検知した場合には、ステップS24からS25に進む。
【0618】
ステップS25では、対象機器一覧表示部2201に対して行われたユーザの入力操作を、制御ボックスCB内の制御部およびメータユニット内の制御部が、実際の制御に反映する。すなわち、対象機器一覧表示部2201の中で動作を「ON」に指定された機器に対しては電源電力を供給し、動作を「OFF」に指定された機器に対しては電源電力を供給しないように、選択的に電力の供給を実施する。
【0619】
例えば、
図105に示した制御ボックスCBにおいては、コネクタCP11〜CP20の各々に対する電力供給を電源出力回路部2116において系統毎に個別にオンオフできる。したがって、ユーザの選択状態を反映するように、ゲートウェイ用制御回路2111が電源出力回路部2116を系統毎にオンオフ制御して、ユーザが必要とする機器に対してのみ電源電力を供給するように制御する。
【0620】
<バックボーン幹線の構成例>
互いに異なるグレードに対応した3種類のバックボーン幹線の構成を
図108(a)、
図108(b)、および
図108(c)にそれぞれ示す。
【0621】
図108(a)、
図108(b)、および
図108(c)に示した車両用回路体は、それぞれ電源容量150[Ah]、300[Ah]、および500[Ah]の仕様を満たすように構成されている。
【0622】
図108(a)に示した車両用回路体は、3つのバックボーン幹線BB_LM(1)−A、BB_LM(2)−A、BB_LM(3)−Aと、これらの間を接続する制御ボックスCB(1)、CB(2)とで構成されている。また、
図108(b)に示した車両用回路体は、3つのバックボーン幹線BB_LM(1)−B、BB_LM(2)−B、BB_LM(3)−Bと、これらの間を接続する制御ボックスCB(1)、CB(2)とで構成されている。また、
図108(c)に示した車両用回路体は、3つのバックボーン幹線BB_LM(1)−C、BB_LM(2)−C、BB_LM(3)−Cと、これらの間を接続する制御ボックスCB(1)、CB(2)とで構成されている。
【0623】
バックボーン幹線BB_LM(1)−A、BB_LM(2)−A、およびBB_LM(3)−Aは、電源容量150[Ah]に対応した太さの電源ライン(L1)およびアースライン(L3)を含んでいる。また、バックボーン幹線BB_LM(1)−B、BB_LM(2)−B、およびBB_LM(3)−Bは、電源容量300[Ah]に対応した太さの電源ライン(L1)およびアースライン(L3)を含んでいる。また、バックボーン幹線BB_LM(1)−C、BB_LM(2)−C、およびBB_LM(3)−Cは、電源容量500[Ah]に対応した太さの電源ライン(L1)およびアースライン(L3)を含んでいる。
【0624】
つまり、
図108(a)、
図108(b)、および
図108(c)に示した3種類の車両用回路体は、形状や構成は同じであるが、バックボーン幹線BB_LMの電源ラインおよびアースラインの太さのみが異なっている。したがって、バックボーン幹線BB_LMの電源ラインおよびアースラインの太さが異なる3種類のバックボーン幹線BB_LMを予め用意しておき、太さのみを選択的に変更することにより、グレードの異なる複数種類の車両、または複数の車種のそれぞれに採用可能な車両用回路体を構成できる。
【0625】
例えば、基本グレードの車両の場合には接続する電装品の数が少なく、各電装品の消費電力も小さいので、
図108(a)に示したように電源容量150[Ah]の車両用回路体で十分に要求仕様を満たすことができる。また、中級グレードの車両の場合には、接続する電装品の数が増え、各電装品の消費電力も少し増えるので、
図108(b)に示したように電源容量300[Ah]の車両用回路体を採用することで要求仕様を満たすことができる。
【0626】
また、上級グレードの車両の場合には、接続する電装品の数が更に増え、各電装品の消費電力も増加し、更に自動運転システムのように新たに開発した電装品を追加する可能性もある。したがって、
図108(c)に示したように電源容量500[Ah]の車両用回路体を採用することで要求仕様を満たすことができる。
【0627】
なお、
図108(a)、
図108(b)、および
図108(c)に示した例ではグレードの違いに応じてバックボーン幹線BB_LMの電源ラインおよびアースラインの太さのみを変更し、制御ボックスCBは1種類のみの場合を想定している。
【0628】
しかし、制御ボックスCBについても、複数の種類を予め用意しておき、グレードの違いに応じて複数種類の中から選択できるようにしてもよい。その場合には、例えば
図61に示した技術を採用することにより、制御ボックスCBの部品の共通化が可能になる。また、電源容量の仕様が変化しない場合には、バックボーン幹線BB_LMの太さは変更せずに、制御ボックスCBの種類を変更するだけで対応してもよい。これにより、車両に搭載する電装品の数の変化や通信仕様(伝送速度)の変化に対応できる。
【0629】
<安定した電圧を供給する電源システム>
<構成の説明>
2種類の車載システムの構成例を、
図109(a)および
図109(b)にそれぞれ示す。
図109(a)に示した車載システムは、電源として低圧系のみを有する一般的な車両に適する構成を有している。また、
図109(b)に示した車載システムは、電源として低圧系と高圧系とを有するハイブリッド車などに適する構成を有している。
【0630】
図109(a)に示した車載システムにおいては、前述のバックボーン幹線BB_LMに含まれる電源ラインL1の一端L1aにオルタネータALT、およびメインバッテリMBが接続されている。また、電源ラインL1の他端L1bにDC/DCコンバータDC1の出力が接続されている。DC/DCコンバータDC1の入力には、回生電力を蓄積するサブバッテリSBが接続されている。
【0631】
オルタネータALTは、発電機であり、電源ラインL1の一端L1aに出力する直流電圧を自動的に調整することができる。また、DC/DCコンバータDC1は、サブバッテリSBから供給される直流電力の電圧を変換して、電源ラインL1の他端L1bに出力することができる。また、DC/DCコンバータDC1は、出力する直流電圧を自動的に調整することができる。
【0632】
図109(a)に示した例では、電源ラインL1の一端L1aと他端L1bとの間の中間部には、複数の負荷が互いに分散した状態で接続されている。これらの負荷の各々が必要とする電源電力は、オルタネータALTから電源ラインL1を経由して供給することもできるし、DC/DCコンバータDC1から電源ラインL1を経由して供給することもできる。
【0633】
一方、
図109(b)に示した車載システムにおいては、前述のバックボーン幹線BB_LMに含まれる電源ラインL1の一端L1aにDC/DCコンバータDC2の出力、およびメインバッテリMBが接続されている。DC/DCコンバータDC2の入力側は高圧電源系と接続されている。また、電源ラインL1の他端L1bにDC/DCコンバータDC3の出力が接続されている。DC/DCコンバータDC3の入力には、高圧電源系のバッテリHBが接続されている。
【0634】
DC/DCコンバータDC2は、高圧電源系から供給される高電圧を例えば12[V]程度の低電圧に変換して、電源ラインL1の一端L1aおよびメインバッテリMBに供給する。DC/DCコンバータDC3は、バッテリHBから供給される高電圧を例えば12[V]程度の低電圧に変換して、電源ラインL1の他端L1bに供給する。また、DC/DCコンバータDC2およびDC3の各々は、出力する電圧を自動的に調整する機能を有している。
【0635】
図109(b)に示した例では、電源ラインL1の一端L1aと他端L1bとの間の中間部には、複数の負荷が互いに分散した状態で接続されている。これらの負荷の各々が必要とする電源電力は、DC/DCコンバータDC2の出力から電源ラインL1を経由して供給することもできるし、DC/DCコンバータDC3の出力から電源ラインL1を経由して供給することもできる。
【0636】
<基本的な動作の説明>
図109(a)、
図109(b)のいずれの車載システムにおいても、電源ラインL1の一端L1aおよび他端L1bにそれぞれ異なる電源が接続されている。したがって、一端L1a側の電源から各負荷に流れる電源電流と、他端L1b側の電源から各負荷に流れる電源電流との配分を適度に調整することにより、電源ラインL1の各部に流れる電流の増大を抑制し、電源ラインL1における電圧降下を低減することができる。そのため、電源ラインL1の断面積を小さくすることも可能になる。
【0637】
しかし、電源ラインL1に接続されている各負荷の作動状態の変化に伴って各負荷の消費電流が変動すると、一端L1a側の電源から各負荷に流れる電源電流と、他端L1b側の電源から各負荷に流れる電源電流との配分も変化する。そして、比較的大きい電流を供給する電源と、大きい電流を消費する負荷との距離が大きくなると、電源ラインL1の該当部位における電圧降下が増大してしまう。これを防止するために、以下に示す特徴的な制御を実施する。
【0638】
<電源システムの特徴的な制御>
図109(a)、
図109(b)のいずれの車載システムにおいても、電源ラインL1の中央に近い特定の位置に制御基準点L1rを設けてある。
【0639】
図109(a)の車載システムにおいては、オルタネータALTの出力する電力によって電源ラインL1上の制御基準点L1rに現れる電圧Vxrと、DC/DCコンバータDC1の出力する電力によって電源ラインL1上の制御基準点L1rに現れる電圧Vyrとが同一になるように、つまり平衡状態になるように自動的に制御する。この制御は、オルタネータALTの出力電圧の調整、およびDC/DCコンバータDC1の出力電圧の調整のいずれか、又は両方の同時調整により実現できる。
【0640】
実際には、オルタネータALTの出力電圧、制御基準点L1rの位置、各負荷の接続位置、各負荷の作動状態などに基づき、計算により電圧Vxrを推定することができる。また、DC/DCコンバータDC1の出力電圧、制御基準点L1rの位置、各負荷の接続位置、各負荷の作動状態(消費電流)などに基づき、計算により電圧Vyrを推定することができる。したがって、推定した電圧Vxrと電圧Vyrとが平衡状態になるように、オルタネータALTの出力電圧、またはDC/DCコンバータDC1の出力電圧を自動的に調整する。
【0641】
図109(b)の車載システムにおいては、DC/DCコンバータDC2の出力する電力によって電源ラインL1上の制御基準点L1rに現れる電圧Vxrと、DC/DCコンバータDC3の出力する電力によって電源ラインL1上の制御基準点L1rに現れる電圧Vyrとが同一になるように、つまり平衡状態になるように自動的に制御する。この制御は、DC/DCコンバータDC2の出力電圧の調整、およびDC/DCコンバータDC3の出力電圧の調整のいずれか、又は両方の同時調整により実現できる。
【0642】
実際には、DC/DCコンバータDC2の出力電圧、制御基準点L1rの位置、各負荷の接続位置、各負荷の作動状態などに基づき、計算により電圧Vxrを推定することができる。また、DC/DCコンバータDC3の出力電圧、制御基準点L1rの位置、各負荷の接続位置、各負荷の作動状態などに基づき、計算により電圧Vyrを推定することができる。したがって、推定した電圧Vxrと電圧Vyrとが平衡状態になるように、DC/DCコンバータDC2の出力電圧、またはDC/DCコンバータDC3の出力電圧を自動的に調整する。
【0643】
上記のような特徴的な制御を実施することにより、電源ラインL1の各部における電圧降下を抑制できるので、様々な種類の負荷を接続する場合であっても、電源ラインL1を含むバックボーン幹線BB_LMを細径化することが可能になる。
【0644】
<幹線化電源のバックアップ制御>
車載システムの構成例を
図110に示す。
図110に示した車載システムの電源幹線は、複数の制御ボックスCB(1)〜CB(5)と、これらの間を接続するバックボーン幹線BB_LMとで構成されている。
【0645】
また、
図110に示すように、オルタネータALTおよびメインバッテリMBを含む主電源部2213の出力が、車両の前方側に配置された制御ボックスCB(1)と接続されている。また、車両の後部に配置されているサブバッテリSBが、制御ボックスCB(5)と接続されている。
【0646】
制御ボックスCB(1)の内部には、主電源部2213の電源失陥、すなわち短絡、断線等に起因する電圧等の異常を検知する電源異常検知部2211が設けてある。また、制御ボックスCB(5)の内部には、サブバッテリSBの電源失陥の異常を検知する電源異常検知部2211が設けてある。
【0647】
また、
図110に示した構成においては、制御ボックスCB(3)の出力に、一般負荷2214、およびバックアップ負荷2215がそれぞれ接続してある。制御ボックスCB(3)は、一般負荷2214に対する電源電力供給のオンオフを切り替え可能なスイッチと、バックアップ負荷2215に対する電源電力供給のオンオフを切り替え可能なスイッチとを備えている。
【0648】
一般負荷2214は、システム全体が正常に作動している状況で利用できるように事前に定められた負荷である。また、バックアップ負荷2215は、システムに何らかの電源失陥が発生した場合に、動作に必要な電源電力を優先的に確保できるように事前に定められた負荷である。
【0649】
図110に示した車載システムにおいて、例えば制御ボックスCB(1)内の電源異常検知部2211が主電源部2213の電源失陥を検知すると、制御ボックスCB(1)が他の全ての制御ボックスCB(2)〜CB(5)に対して所定の制御信号2212を送信する。この制御信号2212により、例えば制御ボックスCB(3)は、一般負荷2214への電力供給を遮断し、バックボーン幹線BB_LMから供給される電源電力を、バックアップ負荷2215のみに対して分配する。他の制御ボックスCB(2)、CB(4)、CB(5)においても、同様に配下に接続されたバックアップ負荷のみに対して電力を分配する。
【0650】
また、例えば制御ボックスCB(5)内の電源異常検知部2211がサブバッテリSBの電源失陥を検知すると、制御ボックスCB(5)が他の全ての制御ボックスCB(1)〜CB(4)に対して所定の制御信号2212を送信する。したがって、この場合も各制御ボックスCBは、配下に接続されている一般負荷2214への電力供給を遮断し、バックボーン幹線BB_LMから供給される電源電力を、バックアップ負荷2215のみに対して分配する。
【0651】
例えば、主電源部2213で電源失陥が発生した場合には、サブバッテリSBの電源電力を利用できるが、電源システム全体の電力供給能力は通常と比べて大幅に低下する。同様に、サブバッテリSBで電源失陥が発生した場合には、主電源部2213の電源電力を利用できるが、サブバッテリSBを利用することを前提としている場合には、電源システム全体の電力供給能力が低下する。このような場合に、上記の制御により一般負荷2214への電力供給を遮断し、バックアップ負荷2215のみに電力を供給することにより、限られた電源電力を有効に活用し、必要な機能だけは維持することができる。
【0652】
<分岐毎に幹線径を変更する技術>
バックボーン幹線に含まれる電源ラインの構成および各機器の接続状態の例を
図111示す。
図111示した構成においては、バックボーン幹線BB_LMに含まれる電源ライン21の太さ(断面積)が、バックボーン幹線BB_LM上の場所の違いに応じて段階的に変化するように構成してある。
【0653】
具体的には、複数の薄板状配索材料(導電材料)21a、21b、21c、および21dを厚み方向に積層して電源ライン21を構成すると共に、バックボーン幹線BB_LM上で分岐する場所毎に、薄板状配索材料21a〜21dの積層枚数が変化するように構成してある。
【0654】
図111示した構成においては、電源ライン21の上流側の端部に設けた接続点P0をオルタネータALTおよびメインバッテリMBと接続してある。また電源ライン21上の接続点P1、P2、P3、およびP4の各々の位置から分岐するように、それぞれ枝線サブハーネスLSを介して負荷を接続してある。
【0655】
最も上流の接続点P0と次の接続点P1との間では、4枚の薄板状配索材料21a、21b、21c、および21dを積層して電源ライン21を構成してある。また、接続点P1と次の接続点P2との間では、3枚の薄板状配索材料21b、21c、および21dを積層して電源ライン21を構成してある。また、接続点P2と次の接続点P3との間では、2枚の薄板状配索材料21c、および21dを積層して電源ライン21を構成してある。接続点P3と下流端の接続点P4との間では、1枚の薄板状配索材料のみで電源ライン21を構成してある。
【0656】
図111示した構成においては、接続点P0と接続点P1の間の区間では4個の負荷全ての電流が流れる。また、接続点P1と接続点P2の間の区間では3個の負荷の電流が流れ、接続点P2と接続点P3の間の区間では2個の負荷の電流が流れ、接続点P3と接続点P4の間の区間では、1個の負荷の電流のみが流れる。
【0657】
つまり、オルタネータALTおよびメインバッテリMBに近い上流側の位置では電流が集中的に流れることになる。また、各区間において発生する電圧降下は、流れる電流の大きさに比例するので、電源ライン21の上流に近づくにつれて電圧降下が生じやすくなる。しかし、
図111示したように電源ライン21の太さを上流側で大きくすることにより、単位長あたりの抵抗率が下がるため、電圧降下を抑制できる。また、電源ライン21の下流側では電流値が相対的に小さくなるので、電源ライン21の太さが小さくなっても電圧降下は増大しない。
【0658】
このように、流れる電流の大きさを考慮して、電源ライン21の太さを場所の違いに応じて変化させることにより、電圧降下を増大させることなく、バックボーン幹線BB_LM全体として太さや重量を低減することができる。なお、図示しないが、バックボーン幹線BB_LM内のアースラインについても、電源ライン21と同様に太さが場所に応じて変化するように構成することが望ましい。
【0659】
<安定した通信のための無線通信技術>
車載システムの構成例を
図112に示す。
図112に示した車載システムにおいては、車体の各部に分散した状態で配置した7個の制御ボックスCB−1、CB−2、CB−3、CB−4、CB−5、CB−6、CB−7の間が、バックボーン幹線BB_LMを経由して互いに有線接続されている。このバックボーン幹線BB_LMは、前述のように電源ライン、アースライン、および通信ラインを含んでいる。
【0660】
また、
図112に示した制御ボックスCB−1〜CB−7の各々は、無線通信機能を搭載している。また、車体の4つのドアの各部位、および車体のラゲッジルーム後部の左右には、それぞれ通信端末2221、2222、2223、2224、2225、および2226が設置してある。また、ラゲッジルーム後部には、複数の中継機能付通信端末2231、2232、および2233が設置してある。
【0661】
また、通信端末2221〜2226の各々と、制御ボックスCB−1、CB−3、CB−4、CB−6、およびCB−7の各々は、近接無線技術を採用した電気回路を搭載し、非接触で給電および通信を行うことができる。また、中継機能付通信端末2231〜2233の各々は、無線通信機能を備え、中継機能も搭載している。
【0662】
図112に示した車載システムにおいて、制御ボックスCB−1〜CB−7の間の通信は、通常はバックボーン幹線BB_LMの通信ラインを経由して行われる。
【0663】
例えば、制御ボックスCB−7と中継機能付通信端末2232との間の無線通信経路が荷物2241で遮断された場合であっても、中継機能付通信端末2232とその左右の近傍に配置されている中継機能付通信端末2231および2233との間では無線通信が可能である。そこで、例えば
図112中に点線で示すように、中継機能付通信端末2232、2231の間、および中継機能付通信端末2231、制御ボックスCB−7の間でそれぞれ無線通信回線を確立し、中継機能付通信端末2231を無線中継局として利用する。つまり、中継機能付通信端末2232から中継機能付通信端末2231を経由する経路で、制御ボックスCB−7との間に無線通信回線を確立する。
【0664】
実際には、各端末のコストの違い、端末の種類の違い、端末のメーカの違い、端末の個体差等の影響により、通信の能力にばらつきがあり、本来直接または間接的に通信すべき相手への通信状態に差が発生する可能性がある。例えば、
図112中の中継機能付通信端末2232から制御ボックスCB−2へ無線にて通信を行いたいにも関わらず、端末の能力差により通信が難しい場合には、中継機能付通信端末2232から一旦、制御ボックスCB−5へ通信し、その後、制御ボックスCB−5から制御ボックスCB−2へ有線または無線にて通信を行う。したがって、例えば事前に定めた優先順位に基づき利用可能な通信回線の経路のそれぞれについて実際に通信が可能か否かを順番に調べ、最適な経路を自動的に選択する。また、途中で通信が遮断された場合には、通信の欠陥を検知して、中継の有無や通信の経路を自動的に変更する。
【0665】
また、例えば
図112に示すように、制御ボックスCB−2、CB−5の間でバックボーン幹線BB_LMが断線する可能性がある(通信経路のみの断線も含む。)。このような有線経路の断線により通信できなくなった場合には、制御ボックスCB−1〜CB−7の各々が搭載している無線通信機能を利用して必要な通信回線を確保する。例えば、制御ボックスCB−2、CB−5の間でバックボーン幹線BB_LMが断線した場合には、
図112中に点線で示すように、制御ボックスCB−3、CB−5の間で無線通信回線を確保し、制御ボックスCB−3、CB−2の間は有線回線を利用して、制御ボックスCB−2、CB−5の間で通信可能な状態を維持する。
【0666】
一方、例えば車両のドアは開閉するので、ドア内に配置された電装品と車体の車室内とを接続する場合にワイヤハーネスなどを利用する場合には、ドアの開閉に伴う変形等の影響によりワイヤハーネスの断線が生じやすい。
【0667】
図112に示した車載システムにおいては、制御ボックスCB−1と通信端末2221との間が近接無線技術により接続されている。同様に、制御ボックスCB−3と通信端末2222との間、制御ボックスCB−4と通信端末2223との間、制御ボックスCB−6と通信端末2224との間、制御ボックスCB−7と通信端末2225および2226との間も、それぞれ近接無線技術で接続されている。したがって、可動部位にワイヤハーネスを敷設する必要がなく、断線の心配がないため、電力の供給および通信について高い信頼性が得られる。
【0668】
ところで、車体のラゲッジルーム内に荷物2241を配置した場合には、電波等が荷物2241で遮蔽される場合があり、その近傍で無線通信を行っている場合には無線通信ができなくなる可能性がある。
【0669】
例えば、
図112に示した車載システムにおいては、制御ボックスCB−7と、中継機能付通信端末2231、2232、及び2233との間を、それぞれ無線通信回線により接続し通信することを想定しているが、荷物2241、あるいは乗員の影響で無線通信回線が遮断される場合がある。しかし、中継機能付通信端末2231〜2233の各々は、無線通信による中継機能を搭載しているので、別の無線通信回線を確保して通信を継続することが可能である。
【0670】
上述のように、
図112に示した車載システムにおいては、無線通信が可能な制御ボックスCB−1〜CB−7や、中継機能付通信端末2231〜2233が車体の様々な箇所に配置されているので、無線通信機能を搭載した様々な機器を、後付けで車載システムに接続することが容易である。また、制御ボックスCB−1〜CB−7の間を接続する有線の通信経路に断線等の故障が発生した場合であっても、無線通信を利用することにより、必要な通信回線を確保できる。また、ドアのような可動部位においては、近接無線技術を利用するので、ワイヤハーネスを利用する必要がなく、断線の心配がないため安定した無線通信および電力供給が可能になる。
【0671】
<第4実施形態>
図113は、本発明の第4実施形態の車両用回路体に係るバックボーン幹線部のレイアウト示す概略平面図である。
【0672】
本第4実施形態の車両用回路体は、上記第1実施形態の車両用回路体10と同様に、基本的な構成要素として、電源ライン1421、アースライン1427および通信ライン1429を有して車体に配索される幹線(バックボーン幹線部1415)と、車体各部の電装品に接続される枝線(図示せず)と、幹線に供給される電源ライン1421の電力及び通信ライン1429の信号を幹線に接続される枝線へ分配するための制御部を有し、幹線に沿って分散配置された複数の制御ボックス(供給側制御ボックス1451、分岐制御ボックス1453、中間制御ボックス1457、制御ボックス1455,1459)と、を備える。
【0673】
(バックボーン幹線部)
図113に示すバックボーン幹線部1415は、電源ライン1421、アースライン1427および通信ライン1429を有して車体に配索される幹線であり、図示しない車体のリーンホースとほぼ平行になるように左右方向に向かって直線的に配置されるインパネバックボーン幹線部1411と、車室内フロアに沿って車体の左右方向のほぼ中央部において車体の前後方向に延びるように配置されるフロアバックボーン幹線部1413とに大別される。
【0674】
フロアバックボーン幹線部1413は、ダッシュパネル50(
図1参照)の面に沿った箇所では上下方向に直線的に延びてインパネバックボーン幹線部1411の中間部に先端が接続されている。インパネバックボーン幹線部1411とフロアバックボーン幹線部1413との接続部は、後述する分岐制御ボックス1453におけるコネクタ部1500と、フロアバックボーン幹線部1413におけるマルチコネクタ1600とにより着脱可能な状態になっている。
【0675】
そして、バックボーン幹線部1415は、インパネバックボーン幹線部1411とフロアバックボーン幹線部1413とでT字状に似た形状に構成されている。
さらに、上記インパネバックボーン幹線部1411には、バックボーン幹線部1415の上流である車体の左側に配置される供給側制御ボックス1451を介してエンコパサブハーネス61(
図1参照)の主電源ケーブル1481に接続されている。
【0676】
上記第1実施形態の車両用回路体10と同様に、本第4実施形態に係る車両用回路体の主要な構成要素であるインパネバックボーン幹線部1411及びフロアバックボーン幹線部1413、並びに供給側制御ボックス1451、分岐制御ボックス1453、中間制御ボックス1457及び制御ボックス1455,1459の全てが車室43側の空間に配置されている。そして、インパネバックボーン幹線部1411の左端に設けた供給側制御ボックス1451に接続した主電源ケーブル1481が、エンジンルーム41内のエンコパサブハーネス61に接続される。これにより、主電源の電力を供給側制御ボックス1451に供給することができる。
【0677】
供給側制御ボックス1451に供給された主電源の電力は、バックボーン幹線部1415を介して分岐制御ボックス1453、中間制御ボックス1457及び制御ボックス1455,1459に供給される。そして、各制御ボックスの枝線接続部1521に接続されたモジュールコネクタMC(
図116(a)参照)を介して車体各部の電装品(補機)に接続された各種サブハーネス(枝線)に電力が供給される。
なお、上記モジュールコネクタMCは、バックボーン幹線部1415と各補機に電力と信号を効率的に送付することができるように、電源及びアースの電力と信号とをまとめて制御ボックスに接続することができる。
【0678】
(配索材)
本第4実施形態の車両用回路体に係るバックボーン幹線部1415は、
図113及び
図114に示すように、電源ライン1421と、アースライン1427と、通信ライン1429と、を有する配索材1420で構成されている。電源ライン1421及びアースライン1427については、断面形状が円形の金属材料(例えば銅合金やアルミニウム)からなる丸棒導体403を採用し、周囲が絶縁被覆110で覆われている。通信ライン1429については、往路と復路を構成する2本のプラスチック光ファイバを採用している。そして、これら電源ライン1421、アースライン1427および通信ライン1429とで構成された配索材1420は、例えば長手方向に沿って所定間隔でモールド成形されたクランプ455(
図23参照)によって一体的に保持される。
これにより、配索材1420は、大電流の通過を許容可能になり、且つノイズに強い通信が可能となる。
【0679】
また、バックボーン幹線部1415の電源ライン1421は、所定の電流容量を確保するために大きな断面積が必要であるが、本実施形態の電源ライン1421は、断面形状が円形の丸棒導体403を有する配索材1420で構成されており、曲げ方向が自由となり、所定の配索経路に沿って配索するための作業が容易になる。
【0680】
(制御ボックス)
本第4実施形態に係る車両用回路体は、
図114に示すように、バックボーン幹線部1415の上流端(インパネバックボーン幹線部1411の左端)に配置される供給側制御ボックス1451と、バックボーン幹線部1415の途中の分岐部(インパネバックボーン幹線部1411とフロアバックボーン幹線部1413との接続部)に配置される分岐制御ボックス1453と、バックボーン幹線部1415の途中(フロアバックボーン幹線部1413の中間部)に配置される中間制御ボックス1457と、バックボーン幹線部1415の下流端(インパネバックボーン幹線部1411の右端及びフロアバックボーン幹線部1413の後端)に配置される制御ボックス1455,1459とからなる5つの制御ボックスを備えている。
【0681】
供給側制御ボックス1451には、
図115(a)〜(c)に示すように、インパネバックボーン幹線部1411に主電源ケーブル1481を接続するための主電源接続部1520と、フロントドア枝線サブハーネス63やサブハーネス71(
図1参照)を接続するための枝線接続部1521と、メータパネル等のインパネに搭載された複数の補機に電力と信号を送付するためのインパネ接続部1510とが、設けられている。供給側制御ボックス1451は、これら主電源ケーブル1481、インパネバックボーン幹線部1411、フロントドア枝線サブハーネス63、サブハーネス71及びメータパネル等の間で各回路の電源系統、アース系統、通信系統を相互に接続することができる。
【0682】
供給側制御ボックス1451は、ロアケース1522とアッパーケース1524で画成されたケース内に回路基板(図示略)を収容している。枝線接続部1521を構成するため回路基板の一端縁に設けられた複数の基板用コネクタ1531やインパネ接続部1510のコネクタには、インパネバックボーン幹線部1411における電源ライン1421、アースライン1427および通信ライン1429が、基板上に構成された回路やバスバーを介して電気的に分岐接続されている。
【0683】
主電源接続部1520は、主電源ケーブル1481の電源ライン1482が接続される端子接続部1511と、アースライン1484が接続される端子接続部1513とを有する。
図113に示すように、電源ライン1421における丸棒導体403の先端に形成された端子接続部1511には、電源ライン1482の端部に設けられた丸端子1486が嵌合接続される。また、アースライン1427における丸棒導体403の先端に形成された端子接続部1513には、アースライン1484の端部に設けられた丸端子1486が嵌合接続される。このようにして、インパネバックボーン幹線部1411に主電源ケーブル1481を接続固定することができる。通信ライン1429は、例えば基板用コネクタ(図示せず)を介して回路基板に接続される。
【0684】
供給側制御ボックス1451の回路基板には、上記第1実施形態に係る供給側制御ボックス51の回路基板125と同様に、電源ライン1421の電力及び通信ライン1429の信号をエンコパサブハーネス61や、フロントドア枝線サブハーネス63や、サブハーネス71等の枝線へ分配するための制御部が実装されている。また、回路基板には、複数の電装品(補機)および電装品の接続状態を切り替えるために必要な構成要素として、FPGAデバイスと回路モジュールを有する切換回路が実装されている。
【0685】
そして、枝線接続部1521の基板用コネクタ1531には、インパネ枝線サブハーネス31、フロントドア枝線サブハーネス63、及びサブハーネス71の端部に接続されたモジュールコネクタMC(
図116参照)がコネクタ接続される。モジュールコネクタMCは、電源ライン1421及びアースライン1427の電力と、通信ライン1429の信号とを各電装品に伝送することができる。
【0686】
分岐制御ボックス1453は、
図113に示したように、インパネバックボーン幹線部1411とフロアバックボーン幹線部1413との接続部であるバックボーン幹線部1415の途中の分岐部に配置されている。分岐制御ボックス1453には、
図116(a),(b)に示すように、図示しない電装品に接続されたサブハーネス(枝線)を接続するための枝線接続部1521と、フロアバックボーン幹線部1413を接続するためのコネクタ部1500とが、設けられている。分岐制御ボックス1453は、これらサブハーネス、インパネバックボーン幹線部1411及びフロアバックボーン幹線部1413の間で各回路の電源系統、アース系統、通信系統を相互に接続することができる。
【0687】
分岐制御ボックス1453は、上記供給側制御ボックス1451と同様に、ロアケース1522とアッパーケース1524で画成されたケース内に回路基板1525を収容している。
図117及び
図118(a),(b)に示すように、回路基板1525に実装された幹線接続用コネクタ1541には、インパネバックボーン幹線部1411における電源ライン1421、アースライン1427および通信ライン1429に接続された基板接続用コネクタ1441が、嵌合される。
【0688】
そして、枝線接続部1521を構成するため回路基板1525の一端縁に設けられた複数の基板用コネクタ1531には、インパネバックボーン幹線部1411における電源ライン1421、アースライン1427および通信ライン1429が、幹線接続用コネクタ1541及び基板上に構成された回路やバスバーを介して電気的に分岐接続されている。また、枝線接続部1521を構成する基板用コネクタ1533は、例えば特別に大きな電源電力を必要とする電装品に電力を供給するためのパワー負荷用のサブハーネスを接続するためのコネクタであり、インパネバックボーン幹線部1411における電源ライン1421およびアースライン1427が、幹線接続用コネクタ1541及び基板上に構成されたバスバー1550を介して電気的に分岐接続されている。
【0689】
また、コネクタ部1500を構成するため回路基板1525の一端縁に設けられた光コネクタ部1535は、フロアバックボーン幹線部1413の通信ライン1429に光接続される一対のFOT(Fiber Optic Transceiver)1544(
図118(b)参照)が回路基板1525に実装されている。
【0690】
更に、回路基板1525には、電源ライン1421の電力及び通信ライン1429の信号を複数の電装品(補機)に分配するための制御部1551が実装されている。また、回路基板1525には、複数の電装品および電装品の接続状態を切り替えるために必要な構成要素として、FPGA(field-programmable gate array)デバイスと回路モジュールを有する切換回路1552が実装されている。
【0691】
幹線接続用コネクタ1541は、電源ライン1421及びアースライン1427にそれぞれ電気的に接続される一対のメス端子1527(
図118(a)参照)が回路基板1525に実装されたメスコネクタ部1547と、上流側及び下流側の通信ライン1429にそれぞれ光接続される一対のFOT1542(
図118(b)参照)が回路基板1525に実装された光コネクタ部1543,1545と、を備える。
上記FOT1542,1544は、電気信号と光信号を相互変換し、送受信するためのものである。従って、FOT1542,1544で受信された光信号は、電気信号に変換されて回路基板1525の回路を介して電気的に分岐され、FOT1542,1544に入力された電気信号は、光信号に変換されて通信ライン1429に送信される。
【0692】
ロアケース1522に固定される基板接続用コネクタ1441は、ハウジング本体1440内に、電源ライン1421及びアースライン1427にそれぞれ電気的に接続される一対のバスバー1534と、上流側及び下流側の通信ライン1429にそれぞれ光接続される二組の光プラグコネクタ1443,1445と、を備える。
ハウジング本体1440の長手方向に沿った一側面には、一対のアーム部1442が突設されており、電源ライン1421及びアースライン1427を平行に保持している。ハウジング本体1440の長手方向両端面には、光コネクタ固定部1446が設けられており、上流側及び下流側の各通信ライン1429の端部に接続された光コネクタが固定され、各組の光プラグコネクタ1443,1445に光接続される。
【0693】
バスバー1534は、
図118(a)に示すように、電源ライン1421及びアースライン1427と直交する方向に延在する導体接触部1532と、導体接触部1532の一端に垂設されたオス端子1530とを有する。そして、各導体接触部1532は、電源ライン1421及びアースライン1427の所定箇所における絶縁被覆404を剥がして露出させた丸棒導体403にそれぞれ溶接等により電気的に接続される。
【0694】
光コネクタ部1535が設けられた回路基板1525の一端縁に対応するロアケース1522の一側面には、
図120(a),(b)に示すように、コネクタ部1500を構成する一対の端子接続部1561,1563がハウジング1560を介して固定される。フロアバックボーン幹線部1413の電源ライン1421及びアースライン1427に先端が接続される各端子接続部1561,1563の基端1562,1564は、インパネバックボーン幹線部1411の電源ライン1421及びアースライン1427の丸棒導体403にそれぞれ溶接等により電気的に接続されている。
【0695】
そして、
図118(a),(b)に示すように、基板接続用コネクタ1441におけるオス端子1530及び光プラグコネクタ1443,1445が、幹線接続用コネクタ1541におけるメス端子1527及び光コネクタ部1543,1545にそれぞれ嵌合されるようにして、回路基板1525がロアケース1522に固定される。
【0696】
図119(a),(b)に示すように、フロアバックボーン幹線部1413の端部には、マルチコネクタ1600が接続されている。マルチコネクタ1600は、電源ライン1421及びアースライン1427の端部に接続された丸端子1620をそれぞれ端子収容室に収容するハウジング1610を有する(
図120(a)参照)。ハウジング1610は、通信ライン1429の端部に接続された光コネクタ1630を一体に保持している。
【0697】
そこで、
図121に示すように、分岐制御ボックス1453のコネクタ部1500に対して、マルチコネクタ1600が嵌合されると、各端子接続部1561,1563の先端が丸端子1620に挿入されて電気的に接続されると共に、光コネクタ部1535に光コネクタ1630が挿入されて光接続される。このように、マルチコネクタ1600は、分岐制御ボックス1453のコネクタ部1500に対して、電源ライン1421、アースライン1427及び通信ライン1429を一括接続することができる。
【0698】
この結果、分岐制御ボックス1453は、インパネバックボーン幹線部1411における電源ライン1421、アースライン1427及び通信ライン1429の電力及び信号を、フロアバックボーン幹線部1413における電源ライン1421、アースライン1427及び通信ライン1429に分岐して相互に接続すると共に、枝線接続部1521に接続されたモジュールコネクタCを介して各電装品に電力及び信号を供給することができる。
更に、インパネバックボーン幹線部1411とフロアバックボーン幹線部1413とは、上記コネクタ部1500及びマルチコネクタ1600により、接続部が着脱可能となることで、車体配索時の作業性が大幅に向上する。
【0699】
制御ボックス1455は、
図122(a),(b)に示すように、インパネバックボーン幹線部1411の右端であるバックボーン幹線部1415の下流端に配置されており、フロントドア枝線サブハーネス63やサブハーネス73(
図1参照)を接続するための枝線接続部1521と、メータパネル等のインパネに搭載された複数の補機に電力と信号を送付するためのインパネ接続部1510とを備えている。制御ボックス1455は、これらインパネバックボーン幹線部1411、フロントドア枝線サブハーネス63及びサブハーネス73の間で各回路の電源系統、アース系統、通信系統を相互に接続することができる。
【0700】
制御ボックス1455は、上記供給側制御ボックス1451と同様に、ロアケース1522とアッパーケース1524で画成されたケース内に回路基板(図示略)を収容している。枝線接続部1521を構成するため回路基板の一端縁に設けられた複数の基板用コネクタ1531やインパネ接続部1510のコネクタには、インパネバックボーン幹線部1411における電源ライン1421、アースライン1427および通信ライン1429が、基板上に構成された回路やバスバーを介して電気的に分岐接続されている。
【0701】
中間制御ボックス1457は、
図123に示すように、フロアバックボーン幹線部1413の中間部であるバックボーン幹線部1415の途中に配置されており、リアドア枝線サブハーネス65、センターコンソール枝線サブハーネス66、フロントシート枝線サブハーネス67及びリアシート枝線サブハーネス68(
図1参照)を接続するための枝線接続部1521を備えている。中間制御ボックス1457は、これらフロアバックボーン幹線部1413、リアドア枝線サブハーネス65、センターコンソール枝線サブハーネス66、フロントシート枝線サブハーネス67及びリアシート枝線サブハーネス68の間で各回路の電源系統、アース系統、通信系統を相互に接続することができる。
【0702】
中間制御ボックス1457は、上記分岐制御ボックス1453と同様に、ロアケース1522とアッパーケース1524で画成されたケース内に回路基板1725を収容している。
図124及び
図125に示すように、回路基板1725に実装された幹線接続用コネクタ1741には、フロアバックボーン幹線部1413における電源ライン1421、アースライン1427および通信ライン1429に接続された基板接続用コネクタ1841が、嵌合される。
【0703】
そして、枝線接続部1521を構成するため回路基板1725の両端縁に設けられた複数の基板用コネクタ1531には、フロアバックボーン幹線部1413における電源ライン1421、アースライン1427および通信ライン1429が、幹線接続用コネクタ1741及び基板上に構成された回路やバスバーを介して電気的に分岐接続されている。
更に、回路基板1725には、上記回路基板1525と同様に、制御部1551及び切換回路1553が実装されている。
【0704】
幹線接続用コネクタ1741は、電源ライン1421及びアースライン1427にそれぞれ電気的に接続される一対のメス端子1527(
図125参照)が回路基板1725に実装されたメスコネクタ部1547と、上流側及び下流側の通信ライン1429にそれぞれ光接続される一対のFOT1542(
図125参照)が回路基板1725に実装された光コネクタ部1543,1545と、を備える。
【0705】
ロアケース1522に固定される基板接続用コネクタ1841は、ハウジング本体1840内に、電源ライン1421及びアースライン1427にそれぞれ電気的に接続される一対のバスバー1534と、上流側及び下流側の通信ライン1429にそれぞれ光接続される二組の光プラグコネクタ1443,1445と、を備える。
ハウジング本体1840の長手方向に沿った一側面には、一対のアーム部1842が突設されており、電源ライン1421及びアースライン1427を平行に保持している。ハウジング本体1840の長手方向両端面には、光コネクタ固定部1846が設けられており、上流側及び下流側の各通信ライン1429の端部に接続された光コネクタが固定され、各組の光プラグコネクタ1443,1445に光接続される。
【0706】
バスバー1534は、
図125に示すように、電源ライン1421及びアースライン1427と直交する方向に延在する導体接触部1532と、導体接触部1532の一端に垂設されたオス端子1530とを有する。そして、各導体接触部1532は、電源ライン1421及びアースライン1427の所定箇所における絶縁被覆404を剥がして露出させた丸棒導体403にそれぞれ溶接等により電気的に接続される。
【0707】
そして、
図126(a),(b)に示すように、基板接続用コネクタ1841におけるオス端子1530及び光プラグコネクタ1443,1445が、幹線接続用コネクタ1741におけるメス端子1527及び光コネクタ部1543,1545にそれぞれ嵌合されるようにして、回路基板1725がロアケース1522に固定される。
この結果、中間制御ボックス1457は、フロアバックボーン幹線部1413における電源ライン1421、アースライン1427及び通信ライン1429の電力及び信号を、枝線接続部1521に接続されたモジュールコネクタCを介して各電装品に電力及び信号を供給することができる。
【0708】
なお、上記中間制御ボックス1457においては、フロアバックボーン幹線部1413における電源ライン1421及びアースライン1427が貫通しているが、電源ライン1421及びアースライン1427を中間制御ボックス1457内において分断し、回路基板1525に設けたバスバーを介して電気的に接続する構成とすることもできる。これにより、中間制御ボックス1457の上下流側の各フロアバックボーン幹線部1413が短くなり、中間制御ボックス1457に各端部が着脱可能となることで、車体配索時の作業性が更に向上する。
【0709】
図114に示したように、フロアバックボーン幹線部1413の後端に配置される制御ボックス1459は、インパネ接続部1510を有していない点以外は上記制御ボックス1455と実質的に略同様の構成を有している。
【0710】
上述したフロアバックボーン幹線部1413における通信ライン1429は、往路と復路を構成する2本のプラスチック光ファイバが、分岐制御ボックス1453と中間制御ボックス1457との間、並びに中間制御ボックス1457と制御ボックス1459との間に、それぞれ平行に接続されている。これに対し、一方のプラスチック光ファイバが中間制御ボックス1457を貫通する構成とし、通信ライン1429が分岐制御ボックス1453と中間制御ボックス1457と制御ボックス1459との間でループ状となるように接続することもできる。
【0711】
上述した各制御ボックス(供給側制御ボックス1451、分岐制御ボックス1453、中間制御ボックス1457、及び制御ボックス1455,1459)は、取付対象車両のグレードや仕向け仕様に応じた枝線接続部1521を有する複数種の回路基板1525,1725を適宜変更することで、大半の車種に対応することが可能となり、部品を共通化して品番を削減することができる。
これら回路基板1525,1725は、共通のロアケース122とアッパーケース124で画成されたケース内に収容することができる。
【0712】
(車両用回路体態の効果)
上述したように、本第4実施形態に係る車両用回路体によれば、所定の電流容量及び所定の通信容量を有して車体に配索されるバックボーン幹線部1415と、このバックボーン幹線部1415に沿って分散配置された5つの制御ボックス(供給側制御ボックス1451、分岐制御ボックス1453、中間制御ボックス1457、及び制御ボックス1455,1459)を介して車体各部の電装品をバックボーン幹線部1415に接続する枝線(インパネ枝線サブハーネス31、フロントドア枝線サブハーネス63、リアドア枝線サブハーネス65、センターコンソール枝線サブハーネス66、フロントシート枝線サブハーネス67、リアシート枝線サブハーネス68、ラゲージ枝線サブハーネス69等)とによって、単純な構造の車両用回路体を構成することができる。
【0713】
更に、車体の左右方向に延びるインパネバックボーン幹線部1411と、車体のほぼ中央部において車体の前後方向に延びるフロアバックボーン幹線部1413との接続部が着脱可能に構成されたシンプルな全体形状のバックボーン幹線部1415は、製造が容易となる。
【0714】
バックボーン制御ボックス2332およびその近傍の別の構成を
図127に示す。
図127に示すように、バックボーン制御ボックス2332には、左端側に設けた幹線接続部2332aと、右端側に設けた幹線接続部2332bと、下端側に設けた幹線接続部2332cとが備わっている。また、幹線接続部2332aにはバックボーン幹線部2321の右端を接続することができ、幹線接続部2332bにはバックボーン幹線部2322の左端を接続することができ、幹線接続部2332cにはバックボーン幹線部2323の先端を接続することができる。
【0715】
具体的には、幹線接続部2332aに設けたコネクタCN11と、バックボーン幹線部2321の右端に設けたコネクタCN12とが着脱自在に構成されている。同様に、幹線接続部2332bに設けたコネクタCN21と、バックボーン幹線部2322の左端に設けたコネクタCN22とが着脱自在に構成されている。更に、幹線接続部2332cに設けたコネクタCN31と、バックボーン幹線部2323の先端に設けたコネクタCN32とが着脱自在に構成されている。
【0716】
バックボーン幹線部2321、2322、2323の各々には、2系統の電源ラインと、アースラインと、2本の信号線を含む通信ラインとが、備わっている。
【0717】
そして、コネクタCN12の内部の互いに隣接する位置に並べて配置した5個の端子T12a〜T12eの各々に、バックボーン幹線部2321の2系統の電源ラインと、アースラインと、通信ラインの2本の信号線とがそれぞれ接続されている。同様に、コネクタCN22の内部の互いに隣接する位置に並べて配置した5個の端子T22a〜T22eの各々に、バックボーン幹線部2322の2系統の電源ラインと、アースラインと、通信ラインの2本の信号線とがそれぞれ接続されている。また、コネクタCN32の内部の互いに隣接する位置に並べて配置した5個の端子T32a〜T32eの各々に、バックボーン幹線部2323の2系統の電源ラインと、アースラインと、通信ラインの2本の信号線とがそれぞれ接続されている。
【0718】
また、バックボーン制御ボックス2332のコネクタCN11の内部には、コネクタCN12内の端子T12a〜T12eの各々と雄/雌の関係で係合可能な5個の端子T11a〜T11eが互いに隣接する位置に並べて配置されている。同様に、コネクタCN21の内部には、コネクタCN22内の端子T22a〜T22eの各々と係合可能な5個の端子T21a〜T21eが互いに隣接する位置に並べて配置されている。また、コネクタCN31の内部には、コネクタCN32内の端子T32a〜T32eの各々と係合可能な5個の端子T31a〜T31eが互いに隣接する位置に並べて配置されている。
【0719】
また、バックボーン制御ボックス2332の内部には、中継回路2332dを構成するプリント基板が備わっている。そして、バックボーン制御ボックス2332内のコネクタCN11の各端子T11a〜T11e、コネクタCN21の各端子T21a〜T21e、およびコネクタCN31の各端子T31a〜T31eは、中継回路2332dとそれぞれ接続されている。
中継回路2332dは、バックボーン制御ボックス2332に接続されたバックボーン幹線部2321、2322、2323の電源ライン、アースライン、通信ラインを相互に接続するための回路を有している。また、必要に応じて回路の接続を遮断する機能、供給電力を制限する機能などが中継回路2332dに搭載される場合もある。なお、
図127には示されていないが、枝線サブハーネスを接続するための枝線接続部がバックボーン制御ボックス2332に備わっている。
【0720】
図127に示すように、コネクタCN11、CN12、CN21、CN22、CN31、CN32を設けることで、バックボーン幹線部2321、2322、2323、およびバックボーン制御ボックス2332の着脱が容易になる。したがって、これらを互いに連結した状態では車体上で所望の経路に沿って配索する設置作業が困難になる場合には、一例として、
図127のように各コネクタの部位を外してバックボーン幹線部2321、2322、2323、およびバックボーン制御ボックス2332を互いに分離した状態にすることにより、各部材の移動、位置決め等の作業が比較的容易になる。
【0721】
また、コネクタCN11の端子T11a〜T11e、コネクタCN12の端子T12a〜T12e、コネクタCN21の端子T21a〜T21e、コネクタCN22の端子T22a〜T22e、コネクタCN31の端子T31a〜T31e、コネクタCN32の端子T32a〜T32eは、互いに隣接する位置に並べて配置されている。つまり、着脱可能な様々な接続部位(各端子)が、比較的狭い空間に集約されるように配置してある。
【0722】
このため、バックボーン幹線部2321、2322、2323、およびバックボーン制御ボックス2332を一体化するための取り付け作業、これらを分解するための取り外し作業、各接続部位の点検作業、部品の交換作業などを行う際に、比較的狭い空間だけで作業を行うことができる。したがって、例えばメンテナンスを行う場合に、様々な点検箇所を探すために作業者が動き回る必要もなく、バックボーン制御ボックス2332の近傍など、特定の接続箇所だけで作業を行うことができる。また、作業対象箇所を覆うカバーの一部分を開放するだけで作業ができるので、開閉可能なカバーを小型化することもできる。
【0723】
車両用回路体を含む車載装置の主要部位の別の構成例を
図128に示す。
図128に示したように、この車両の車体2310は、エンジンルーム2311、車室2313、ラゲージルーム2314の3区画で構成されている。そして、エンジンルーム2311と車室2313との境界箇所にダッシュパネル2316が設置されている。
【0724】
エンジンルーム2311内には、エンジンE/G、メインバッテリ2317、オルタネータ(ALT)2318、スタータ(ST)2319、電装品2320、2320B等が装備されている。メインバッテリ2317、オルタネータ2318等がこの車両の主電源に相当する。また、この主電源のバックアップとして、サブバッテリ2326が車室2313内に装備されている。
【0725】
図128に示した構成においても、車室2313内のインパネ部2312に、バックボーン制御ボックス2331、2332、2333と、バックボーン幹線部2321、2322、2323とが設置され、これらは互いに電気的に接続されている。更に、バックボーン幹線部2323の後端はラゲージルーム2314まで延び、バックボーン制御ボックス2335と接続されている。また、バックボーン幹線部2323の中間部位にバックボーン制御ボックス2334が設置され、バックボーン制御ボックス2334から分岐した幹線にバックボーン制御ボックス2336およびサブバッテリ2326が接続されている。ラゲージルーム2314内の様々な電装品は、枝線サブハーネス2345を経由してバックボーン制御ボックス2335と接続される。
【0726】
また、
図128に示した構成においてはサブバッテリ2326が存在する場合を想定しているので、バックボーン幹線部2321、2322、2323の各々の内部には、電源ラインとして、メイン電源系とサブ(バックアップ)電源系とが含まれている。つまり、2系統の電源ラインがバックボーン幹線部2321、2322、2323の各々に備わっている。
【0727】
したがって、何らかのトラブルが発生し、主電源からの電力供給が停止したような場合には、サブバッテリ2326の電力を、バックボーン幹線部2321、2322、2323を経由して重要度の高い電装品に供給することができる。このため、異常発生時に様々な車載機器の動作が停止するのを最小限に抑制でき、例えば自動運転機能を搭載した車両などにおいて要求される高い信頼性を実現できる。
【0728】
図128に示した構成においても、車室2313内のバックボーン制御ボックス2331と、エンジンルーム2311内の主電源であるメインバッテリ2317、オルタネータ2318との間は、主電源ケーブル2341を経由して接続されている。したがって、主電源ケーブル2341がダッシュパネル2316を貫通するように配索されている。
【0729】
また、車室2313内に配置されたバックボーン制御ボックス2331と接続された一部分の枝線サブハーネス2342がダッシュパネル2316を貫通し、電装品2320と接続されている。また、車室2313内に配置されたバックボーン制御ボックス2333と接続された一部分の枝線サブハーネス2344がダッシュパネル2316を貫通し、電装品(負荷)2320Bと接続されている。
【0730】
<車両用回路体の利点>
図127に示したように、バックボーン制御ボックス2332と、バックボーン幹線部2321、2322、2323との各接続部位においては、端子T11a〜T11e、T12a〜T12e、T21a〜T21e、T22a〜T22e、T31a〜T31e、T32a〜T32eが互いに隣接した状態で並べて配置してある。したがって、作業者が接続作業、分解作業、点検作業、部品交換作業などを行う際に、作業部位として集約された特定の空間だけで作業を行うことができる。
【0731】
また、
図127に示したように接続箇所にコネクタCN11、CN12、CN21、CN22、CN31、CN32を用いているので、各部の着脱が容易である。そのため、例えば車両用回路体を車体に組み付ける際に、バックボーン制御ボックス2332、およびバックボーン幹線部2321、2322、2323の各々を互いに分離した独立した部品としてそれぞれ個別に移動して位置決めすることができる。したがって、バックボーン制御ボックス2332、バックボーン幹線部2321、2322、2323が事前に一体化されている場合と比べて良好な作業性が得られる。
【0732】
また、背骨のような単純化した構造の車両用回路体を用いることにより、装置の製造コストや配索作業のコストを低減することができる。しかも、オプション電装品の有無や追加される新たな電装品に対しても、車両用回路体の基本的な構成を変更する必要がないので、部品および構成の共通化が容易になる。
【0733】
なお、
図128に示す構成は、バックボーン幹線部をT型に構成した一例を示したものであり、他の形状に構成してもよい。例えば、バックボーン制御ボックス2332、2335と、バックボーン幹線部2323のみによってI型に構成してもよい。
【0734】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る車両用回路体の特徴をそれぞれ以下[1]〜[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 所定の電流容量を有する電源ライン(1421)と、所定の通信容量を有する通信ライン(1429)とを有して車体に配索される幹線(バックボーン幹線部1415)と、
前記幹線に沿って分散配置された複数の制御ボックス(供給側制御ボックス1451、分岐制御ボックス1453、中間制御ボックス1457、制御ボックス1455,1459)と、を備える車両用回路体であって、
前記幹線は、前記車体の前後方向に延びるように配置される第1の幹線部(フロアバックボーン幹線部1413)と、
前記車体の左右方向に延びるように配置される第2の幹線部(インパネバックボーン幹線部1411)と、を有し、
前記複数の制御ボックスには、前記第1の幹線部と前記第2の幹線部とを接続し、前記第1の幹線部および前記第2の幹線部のうち一方の電力を他方に分配する分岐制御ボックス(1453)が含まれる、
車両用回路体。
【0735】
[2] 前記第1の幹線部は、車両の車室内フロアに沿って配置され、
前記第2の幹線部は、前記車両のインストルメントパネル内に配置される、
上記[1]に記載の車両用回路体。
【0736】
[3] 一端が前記複数の制御ボックスのうちのいずれかに接続され、他端が補機に直接または間接的に接続される枝線をさらに備える、
上記[1]又は[2]に記載の車両用回路体。
【0737】
[4] 前記幹線は、平型導体、丸棒導体及び撚り線のうち少なくとも一種類の導体を有する配索材により構成される、
上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の車両用回路体。
【0738】
[5] 前記幹線が、所定の電流容量を有するアースライン(1427)をさらに備える、
上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の車両用回路体。
【0739】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0740】
本出願は、2016年6月24日出願の日本特許出願(特願2016−125287)、2016年6月24日出願の日本特許出願(特願2016−125896)、2016年6月30日出願の日本特許出願(特願2016−131167)、2016年9月26日出願の日本特許出願(特願2016−187627)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。