(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部の判定結果が、現在の前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、前記操作装置から前記走行装置に対する後進走行の動作指令が入力されると警告を行う警告部をさらに備えた、
請求項1〜6のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
前記判定部の判定結果が、現在の前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、前記操作装置から前記走行装置に対する後進走行の動作指令が入力されても前記走行車輪の後進走行を行わせないよう構成された、
請求項1〜7のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
前記判定部の判定結果が、現在の前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向となるように前記走行装置を制御する制御部をさらに備えた、
請求項1〜6のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
前記判定部の判定結果が、現在の前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、前記操作装置から前記走行装置に対する後進走行の動作指令が入力されると、前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向となるように前記走行装置を制御する制御部をさらに備えた、
請求項1〜6のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような旅客搭乗橋を航空機へ装着する場合および航空機から離脱する場合、現状では、オペレータの操作装置の操作による手動制御によることが多い。通常、旅客搭乗橋を航空機へ装着する場合には、走行車輪を前進走行させて先端部分のキャブを航空機のドア部分へ装着するように操作される。そして、旅客搭乗橋を航空機から離脱する場合には、走行車輪を後進走行させて離脱し、所定の待機位置へ戻るように操作される。
【0007】
このようにオペレータの操作による場合、旅客搭乗橋の航空機への装着状態はオペレータのスキルに依存し、オペレータによっては走行車輪を後進走行させてキャブを航空機へ装着する場合もあり得る。このような場合に、旅客搭乗橋を航空機から離脱するためには走行車輪を前進走行しなければならないが、離脱時に装着時と同じオペレータが操作するとは限らず、また、オペレータが現在の状態(装着時の状態)が把握できていなければ、通常の離脱時の操作と同様に後進走行させてしまい、航空機からの離脱動作に支障が生じる虞が生じる。
【0008】
また、キャブの先端に航空機に装着されたことを検出するリミットスイッチが設けられ、このリミットスイッチによって航空機に装着されていることが検出されているときには、走行車輪の前進走行が不可となるように構成されている場合がある。このような場合において、オペレータが走行車輪を後進走行させてキャブを航空機へ装着したときには、走行車輪を前進走行させることができず、オペレータが操作装置を操作することでは航空機から離脱させることができなくなる。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、走行車輪の後進走行によるキャブの航空機への装着を回避することができる旅客搭乗橋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る旅客搭乗橋は、ターミナルビルに接続され、水平回転自在に支持されたロタンダと、基端が前記ロタンダに接続され、伸縮可能なトンネル部と、前記トンネル部の先端に設けられ、航空機に装着されるキャブと、前記トンネル部を支持するとともに、前進走行及び後進走行が可能な走行車輪を有し、前記走行車輪の前進走行の方向及び後進走行の方向を変更可能に構成された走行装置と、前記走行装置に対する動作指令を入力するために操作される操作装置と、前記操作装置が操作されて前記走行車輪が走行することによって前記キャブが所定位置からの移動を開始してから前記航空機に装着されるまでの間に、現在の前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向であるか否かの判定を繰り返し行う判定部と、を備えている。
【0011】
この構成によれば、キャブが所定位置からの移動を開始してから航空機に装着されるまでの間に、判定部が現在の走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向であるか否かの判定を繰り返し行うようにしている。この判定の結果、現在の走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、例えば、オペレータへの警告、走行車輪の後進走行の制限等を行うことにより、走行車輪の後進走行によるキャブの航空機への装着を回避することが可能になる。
【0012】
前記判定部は、平面視において、前記トンネル部の中心線と直交する直線であるトンネル直交線の前記トンネル部の左側から右側へ向かう方向と、前記走行車輪の前進走行の方向とのなす角度であって、前記トンネル直交線を基準に反時計回りを正の方向として計算される角度をθwとし、平面視において、前記トンネル直交線の前記トンネル部の左側から右側へ向かう方向と、エプロン上の機体誘導ラインの前記航空機の前部から後部に向かう方向とのなす角度であって、前記トンネル直交線を基準に反時計回りを正の方向として計算される角度をθtとした場合、前記θwが、前記θtよりも大きくかつ前記θtに180度を加算した角度未満の範囲内において制約条件に関する情報に基づいて設定される範囲内の角度であるか否かによって、前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向であるか否かの判定を行うよう構成されていてもよい。
【0013】
なお、本明細書及び請求の範囲において、Aの方向とBの方向とのなす角度という場合、その角度は、Aの方向を示す方向ベクトルとBの方向を示す方向ベクトルとのなす角度に相当する。例えば、上記の「トンネル直交線の前記トンネル部の左側から右側へ向かう方向と、前記走行車輪の前進走行の方向とのなす角度」は、「トンネル直交線の前記トンネル部の左側から右側へ向かう方向を示す方向ベクトルと、前記走行車輪の前進走行の方向を示す方向ベクトルとのなす角度」に相当する。
【0014】
前記判定部は、平面視において、前記トンネル部の中心線と直交する直線であるトンネル直交線の前記トンネル部の左側から右側へ向かう方向と、前記走行車輪の前進走行の方向とのなす角度であって、前記トンネル直交線を基準に反時計回りを正の方向として計算される角度をθwとし、平面視において、前記トンネル直交線の前記トンネル部の左側から右側へ向かう方向と、前記航空機の機軸ラインの前記航空機の前部から後部に向かう方向とのなす角度であって、前記トンネル直交線を基準に反時計回りを正の方向として計算される角度をθt1とした場合、前記θwが、前記θt1よりも大きくかつ前記θt1に180度を加算した角度未満の範囲内において制約条件に関する情報に基づいて設定される範囲内の角度であるか否かによって、前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向であるか否かの判定を行うよう構成されていてもよい。
【0015】
前記判定部は、平面視において、前記トンネル部の中心線と直交する直線であるトンネル直交線の前記トンネル部の左側から右側へ向かう方向と、前記走行車輪の前進走行の方向とのなす角度であって、前記トンネル直交線を基準に反時計回りを正の方向として計算される角度をθwとし、平面視において、前記トンネル直交線の前記トンネル部の左側から右側へ向かう方向と、前記航空機の前記キャブが装着される部分の水平方向に延びる接線の前記航空機の前部から後部に向かう方向とのなす角度であって、前記トンネル直交線を基準に反時計回りを正の方向として計算される角度をθt2とした場合、前記θwが、前記θt2よりも大きくかつ前記θt2に180度を加算した角度未満の範囲内において制約条件に関する情報に基づいて設定される範囲内の角度であるか否かによって、前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向であるか否かの判定を行うよう構成されていてもよい。
【0016】
前記前進専用装着可能範囲内の方向は、前記走行車輪が前進走行した場合に、平面視において、前記走行車輪がエプロン上の機体誘導ライン、前記航空機の機軸ライン、または、前記航空機の前記キャブが装着される部分の水平方向に延びる接線に近づく方向であるものとしてもよい。
【0017】
前記判定部は、前記キャブと前記航空機との間の距離が所定距離以内であるときに前記判定を行うよう構成されていてもよい。
【0018】
前記判定部の判定結果が、現在の前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、前記操作装置から前記走行装置に対する後進走行の動作指令が入力されると警告を行う警告部をさらに備えていてもよい。
【0019】
この構成によれば、現在の走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、警告部がオペレータに例えば後進走行または後進装着を注意する旨の警告を行うことにより、走行車輪の後進走行によるキャブの航空機への装着を回避することが可能になる。
【0020】
前記判定部の判定結果が、現在の前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、前記操作装置から前記走行装置に対する後進走行の動作指令が入力されても前記走行車輪の後進走行を行わせないよう構成されていてもよい。
【0021】
この構成によれば、現在の走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、操作装置から走行装置に対する後進走行の動作指令が入力されても走行車輪の後進走行を行わせないことにより、走行車輪の後進走行によるキャブの航空機への装着を回避することが可能になる。
【0022】
前記判定部の判定結果が、現在の前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向となるように前記走行装置を制御する制御部をさらに備えていてもよい。
【0023】
この構成によれば、現在の走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向となるように走行装置が制御されることにより、走行車輪の後進走行によるキャブの航空機への装着を回避することが可能になる。
【0024】
前記判定部の判定結果が、現在の前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、前記操作装置から前記走行装置に対する後進走行の動作指令が入力されると、前記走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向となるように前記走行装置を制御する制御部をさらに備えていてもよい。
【0025】
この構成によれば、現在の走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、操作装置から走行装置に対する後進走行の動作指令が入力されると、走行車輪の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向となるように走行装置が制御されることにより、走行車輪の後進走行によるキャブの航空機への装着を回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、以上に説明した構成を有し、走行車輪の後進走行によるキャブの航空機への装着を回避することができる旅客搭乗橋を提供することができるという効果を奏する。
【0027】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0030】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る旅客搭乗橋の一例を示す概略平面図である。また、
図2は、航空機に装着されるキャブ先端部分を正面(航空機側)から視た図である。
図3は、操作盤等の一例を示す図である。
【0031】
旅客搭乗橋1は、空港のターミナルビル2の乗降口に接続された水平回転自在なロタンダ(基部円形室)4と、基端がロタンダ4に接続されたトンネル部5と、トンネル部5の先端に正逆回転自在に設けられたキャブ(先端部円形室)6とを備えている。なお、トンネル部5のサイドには、例えば、オペレータ等が地上からキャブ6に出入りするのに使用する補助階段(図示せず)が設置されている。
【0032】
ロタンダ4は、支柱によって回転軸(鉛直軸)CL1の回りに正逆回転自在に支持されている。トンネル部5は、乗客の歩行通路を形成し、筒状体からなる複数のトンネル5a,5bがテレスコピック式(入れ子式)に嵌合されて長手方向に伸縮自在に構成されている。ここでは、2つのトンネル5a,5bによって構成されたトンネル部5が例示されているが、トンネル部5は2つ以上の複数のトンネルによって構成されていればよい。また、トンネル部5の基端部は、ロタンダ4に上下に揺動自在に接続されている。
【0033】
また、トンネル部5の先端寄り部分(最も先端側のトンネル5b)には、支持脚としてドライブコラム7が設けられている。ドライブコラム7には、キャブ6及びトンネル部5を上下移動(昇降)させる昇降装置8が設けられている。この昇降装置8によってトンネル部5を上下移動させることにより、キャブ6及びトンネル部5は、ロタンダ4を基点として上下方向に揺動運動することができる。
【0034】
また、ドライブコラム7には、昇降装置8の下方に、個々に独立して正逆回転駆動可能である2つの走行車輪9(右側走行車輪9R及び左側走行車輪9L)を有する走行装置10が設けられている。走行装置10は、2つの走行車輪9の正回転駆動によって前進走行が可能であり、2つの走行車輪9の逆回転駆動によって後進走行が可能に構成されている。また、走行装置10は、舵角がトンネル部5の伸縮方向(長手方向)に対して、−90度〜+90度の範囲内で変更可能なように、回転軸CL2の回りに正逆回転が自在に構成され、走行方向を変更可能である。例えば、2つの走行車輪9を互いに逆方向に回転させることにより、その場において走行方向(走行車輪9の向き)を変更することもできる。
【0035】
走行装置10(走行車輪9)がエプロン上を走行することにより、トンネル部5をロタンダ4のまわりに回転させるとともにトンネル部5を伸縮させることができる。この際、走行装置10の舵角はトンネル部5の長手方向に対して−90度〜+90度の範囲内で変更可能であるため、走行装置10(走行車輪9)が前進走行することによってのみトンネル部5を伸長させることができ、走行装置10(走行車輪9)が後進走行することによってのみトンネル部5を収縮させることができる。
【0036】
キャブ6は、トンネル部5の先端に設けられており、図示しない回転機構によってキャブ6の床面に垂直な回転軸CL3の回りに正逆回転自在に構成されている。
【0037】
また、
図2に示すように、航空機3に装着されるキャブ6の床61の先端にはバンパー62が設けられ、このバンパー62の左右方向に並んで、キャブ6と航空機3との間の距離を検出する距離センサ23(例えばレーザー距離計)が複数(この例では2つ)取り付けられている。
【0038】
また、
図2に示すように、キャブ6の先端部には、クロージャ63が設けられている。クロージャ63は、前後方向に展開及び収縮可能な蛇腹部を備え、キャブ6を航空機3に装着して、蛇腹部を前方へ展開することにより、蛇腹部の前端部を航空機3の乗降部(ドア3a)の周囲に当接できる。
【0039】
さらに、
図3に示すように、旅客搭乗橋1には、ロタンダ4の回転角度を検出するロタンダ用角度センサ24と、トンネル部5に対するキャブ6の回転角度を検出するキャブ用角度センサ25と、トンネル部5に対する走行装置10の回転角度(走行方向を示す角度)を検出する走行用角度センサ26と、昇降装置8によるトンネル部5の昇降量を測定しトンネル部5の高さを検出する高さセンサ27と、ロタンダ4の中心点(回転軸CL1の位置)からキャブ6の中心点(回転軸CL3の位置)までの距離(この距離を、以下では「距離R」と記載する)を検出するための距離センサ28とが、適宜な位置に設けられている。距離センサ28は、例えば、トンネル部5の長さを測定する距離計等で構成され、その測定値から上記距離Rを算出することができるとともに、ロタンダ4の中心点(回転軸CL1の位置)から一対の走行車輪9の中心点(回転軸CL2の位置)までの距離を算出することができる。
【0040】
そして、キャブ6の内部には、
図3に示すような操作盤31が設けられている。操作盤31には、昇降装置8によるトンネル部5及びキャブ6の昇降や、キャブ6の回転等を操作するための各種操作スイッチ33の他、走行装置10を操作するための操作レバー32及び表示装置34が設けられている。操作レバー32は、多方向の自由度をもったレバー状入力装置(ジョイスティック)によって構成されている。操作レバー32及び各種操作スイッチ33によって操作装置30が構成されている。なお、操作装置30の構成は、適宜変更可能である。
【0041】
また、制御装置50は、操作盤31と相互に電気回路で接続され、操作装置30の操作に基づく動作指令等の情報が入力されるとともに、各センサ23〜28の出力信号等が入力されて、旅客搭乗橋1の動作を制御するとともに、表示装置34に表示される情報等を出力する。
【0042】
なお、制御装置50には、CPU等の演算処理部と、ROM、RAM等の記憶部とを有している。記憶部には、旅客搭乗橋1を動作させるための制御プログラム及び当該動作に必要な情報が予め記憶されており、演算処理部が制御プログラムを実行することにより、旅客搭乗橋1の各部の動作(走行装置10、昇降装置8及びキャブ6の回転機構等の動作)の制御等を行う制御部として機能するとともに、後述の判定部51等として機能する。なお、旅客搭乗橋1の動作中に記憶される情報も記憶部に記憶される。制御装置50は、集中制御する単独の制御装置によって構成されていてもよいし、インターネットやLANを経由して互いに協働して分散制御する複数の制御装置によって構成されていてもよい。制御装置50は、例えば、キャブ6または最も先端側のトンネル5b等に設けられている。
【0043】
次に、旅客搭乗橋1の動作の一例について説明する。この旅客搭乗橋1の動作は、制御装置50の制御によって実現される。
【0044】
航空機3がエプロンに到着していないときには、旅客搭乗橋1は
図1の二点鎖線で示される所定の待機位置で待機している。
【0045】
航空機3の正規の停止位置は、航空機3の機軸が機体誘導ラインAL上で、かつ、機体誘導ラインALの延伸方向において定められた所定の位置である。航空機3は、正規の停止位置を目標にして停止される。航空機3の実際の停止位置は正規の停止位置とはずれが生じる場合があるが、
図1では、航空機3が正規の停止位置に停止し、航空機3の機軸が機体誘導ラインAL上となっている状態が示されている。なお、機体誘導ラインALは、エプロン上に描かれている。
【0046】
まず、旅客搭乗橋1を航空機3に装着する場合、キャブ6に乗り込んだオペレータは、操作盤31の操作装置30(操作レバー32及び各種操作スイッチ33)を操作して、
図1に二点鎖線で示された待機位置で待機している旅客搭乗橋1を移動させてキャブ6を航空機3に装着する(例えば、装着状態を示す
図4を参照)。この際、オペレータは、例えば、航空機3の乗降部であるドア3aから任意の距離(例えば、1mほど)だけ前方の位置を目標位置とする。そして、キャブ6が目標位置に到達するように走行装置10を前進走行させるとともに、目標位置においてキャブ6の先端部分のバンパー62が航空機3のドア3aと対向するように昇降装置8およびキャブ6の回転機構を操作する。キャブ6が目標位置(旅客搭乗橋1が目標位置)になったときの旅客搭乗橋1が
図1に実線で示されている。
【0047】
その後、キャブ6がドア3aに向かって直進するように走行装置10を前進走行させてキャブ6を航空機3に装着する。キャブ6を航空機3に装着した後、オペレータは操作盤31を操作してクロージャ63を展開させる。以上は、基本的な装着動作の一例であり、オペレータ等によっては必ずしも前述のようにしてキャブ6が装着されるとは限らない。
【0048】
なお、キャブ6が航空機3に装着された状態には、キャブ6の先端部分のバンパー62が航空機3に接触した状態の場合もあるし、バンパー62と航空機3との間に歩行に支障がない程度の若干の隙間が設けられている状態の場合もある。
【0049】
次に、旅客搭乗橋1を航空機3から離脱させて待機位置へ戻す場合には、オペレータは、クロージャ63を収縮させてから、キャブ6がドア3a部分から離脱して前述の目標位置付近となるまで、走行装置10をまっすぐに後進走行させる。その後、旅客搭乗橋1が待機位置となるように走行装置10を後進走行させる。
【0050】
なお、制御装置50は、
図1に示すようなXY直交座標を用いて、旅客搭乗橋1の各部の位置(座標)を把握している。ここでは、ロタンダ4の中心点(回転軸CL1の位置)を原点(0,0)にして、
図1に示すようにX軸、Y軸を決めているが、X軸、Y軸は任意に決めることができる。
【0051】
本実施形態では、キャブ6を待機位置から移動させて航空機3に装着するまでの間に、制御装置50は、走行装置10(走行車輪9)の前進方向(前進走行の方向)が前進専用装着可能範囲内の方向であるか否かを判定する前進装着判定処理を繰り返し行う(判定部51の機能)。そして、制御装置50は、走行車輪9の前進方向が前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合には、オペレータへの警告や走行車輪9の後進走行の制限等の処理を行う。
【0052】
以下に、判定部51による前進装着判定処理について、さらに
図4も参照して説明する。
図4は、旅客搭乗橋1を航空機3に装着した状態の一例を示す概略平面図である。この
図4では、走行装置10を透視した状態として実線で図示している。
【0053】
図4に実線で示された旅客搭乗橋1は、基本的な装着動作によって航空機3に装着されている状態(基本装着状態)である。この基本装着状態の場合には、走行車輪9(9L,9R)の走行方向が機体誘導ラインALと垂直になって前進走行によって装着されている。この場合、平面視において、航空機3の機軸ライン(機軸に沿った直線)BLが機体誘導ラインALと一致あるいは平行であり、かつ、航空機3のキャブ6が装着される部分(ドア3a及びその近傍部分)の表面の水平方向に延びる接線TLが航空機3の機軸ラインBLと平行である。矢印Fが走行車輪9の前進方向を示し、矢印Bが後進方向を示す。
【0054】
この
図4では、便宜上、一対の走行車輪9の中心点(回転軸CL2)を通りX軸と平行な平行線Xpと、一対の走行車輪9の中心点を通り機体誘導ラインALと平行な平行線ALpと、一対の走行車輪9の中心点を通り機軸ラインBLと平行な平行線BLpと、一対の走行車輪9の中心点を通り航空機3のキャブ6の装着部分の接線TLと平行な平行線TLpとを記入している。また、一対の走行車輪9の中心点を通りトンネル部5の中心線Edと直交する直線Edvを記入しており、以下、この直線Edvをトンネル直交線Edvという。
【0055】
以下では、前進装着判定処理の例として、第1〜第3例の3つの例について説明する。
なお、以降の説明において、例えば、Aの方向とBの方向とのなす角度という場合、その角度は、Aの方向を示す方向ベクトルとBの方向を示す方向ベクトルとのなす角度に相当する。また、以下では、平面視において(真上から見て)、トンネル直交線Edvのトンネル部5の左側から右側へ向かう方向と、走行車輪9の前進方向とのなす角度であって、トンネル直交線Edvを基準に反時計回りを正の方向として計算される角度θwを、前進方向角度θwという。なお、トンネル部5の左側、右側とは、トンネル部5を真上から見て、トンネル部5のキャブ6側をトンネル部5の前側とし、トンネル部5のロタンダ4側をトンネル部5の後側とした場合の概念である。
【0056】
〔第1例の前進装着判定処理〕
第1例の前進装着判定処理では、判定部51は、平面視において、走行車輪9の前進方向角度θwが、後述の角度範囲θaの範囲内の角度であるか否かによって、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向であるか否かの判定を行う。この場合、前進専用装着可能範囲内の方向は、走行車輪9が前進走行した場合に、平面視において、走行車輪9が機体誘導ラインALに近づく方向である。角度範囲θaは、例えば、トンネル直交線Edvに対して反時計回りに計算される機体誘導ラインALのなす角度θtよりも大きい範囲である。なお、
図4の場合、角度範囲θaの上限値を180度にしている。以下では、角度θtを判定基準角度θtともいう。
【0057】
走行装置10(走行車輪9)の舵角は、トンネル部5の長手方向(中心線Ed)に対して、−90度〜+90度の範囲内で変更可能であるので、走行車輪9の前進方向角度θwは、0度〜180度の範囲内の角度をとりうる(0≦θw≦180)。この前進方向角度θwは、走行用角度センサ26の検出値から求められる。
【0058】
また、トンネル直交線Edvと機体誘導ラインAL(あるいは平行線ALp)とがなす角度である判定基準角度θtは、次式で算出することができる。
θt=90−(α−γ)=90−α+γ
上式において、αは、X軸に対して反時計回りに計算されるトンネル部5の中心線Edがなす角度であり、ロタンダ用角度センサ24の検出値から求められる。また、γは、X軸に対して反時計回りに計算される機体誘導ラインAL(あるいはその延伸線)がなす角度であり、所定値として、予め制御装置50の記憶部に記憶されている。
【0059】
判定部51は、前進装着判定処理を行う際、現在の判定基準角度θtを算出し、現在の前進方向角度θwが現在の判定基準角度θt等に基づいて決められる角度範囲θaの範囲内の角度である場合には、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向であると判定する。前進専用装着可能範囲内の方向は、走行車輪9の中心点から角度範囲θa内の方向へ延びる直線の方向である。角度範囲θaは、本実施形態のように走行装置10の舵角が、トンネル部5の長手方向に対して、−90度〜+90度の範囲内で変更可能な場合、判定基準角度θtよりも大きく、180度以下の範囲である。
【0060】
一方、現在の前進方向角度θwが上記角度範囲θaの範囲外の角度である場合には、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向ではない(前進専用装着可能範囲外の方向である)と判定する。前進専用装着可能範囲外の方向は、走行車輪9の中心点から角度範囲θb内の方向へ延びる直線の方向である。角度範囲θbは、0度以上、判定基準角度θt以下の範囲である。
【0061】
なお、本実施形態では、走行装置10の舵角が、トンネル部5の長手方向に対して、−90度〜+90度の範囲内で変更可能としたが、これよりも広い範囲、例えば−180度〜+180度の範囲内で変更可能なように構成されている場合には、角度範囲θaは、判定基準角度θtよりも大きく、θt+180度未満の範囲になる。この場合、角度範囲θbは、−90度以上、判定基準角度θt以下の範囲になる。
【0062】
上記のように、角度範囲θaは、走行装置10の舵角の変更可能範囲に応じて、その範囲が変動するようにしてもよい。走行装置10の舵角の変更可能範囲の情報は、制約条件に関する情報の一例である。また、制約条件に関する情報の他の例として、前進装着されることの確実性等をより高めるために、除外する範囲の情報であってもよい。例えば、制約条件に関する情報として、走行装置10の舵角の変更可能範囲が−90度〜+90度の範囲であって、さらに除外する範囲の情報として、例えば、上限および下限が内側に所定角度狭くなる範囲にするという情報であってもよい。この場合、所定角度を例えば2度とすれば、角度範囲θaは、(θt+2)度よりも大きく、(180−2)度以下の範囲になる。
【0063】
また、制約条件に関する情報として、走行装置10の舵角の変更可能範囲の情報を含めずに、上記の除外する範囲の情報とする場合に、上述のように所定角度を例えば2度とすれば、角度範囲θaは、(θt+2)度よりも大きく、(θt+180−2)度未満の範囲になる。また、旅客搭乗橋1と航空機3との位置関係(例えば、
図4、
図5を参照)等によっては、除外する範囲の情報として、例えば、上限のみ、または下限のみを内側に所定角度狭くなる範囲にするという情報であってもよい。
【0064】
また、制約条件に関する情報は、制約条件が無いという情報が含まれてもよい。この制約条件が無い場合、角度範囲θaは、判定基準角度θtよりも大きく、θt+180度未満の範囲になる。つまり、この範囲内に前進方向角度θwがあれば、走行車輪9が前進走行した場合に走行車輪9が機体誘導ラインALに近づく。この制約条件が無い場合の角度範囲θaは、前述のように、走行装置10の舵角が、−180度〜+180度の範囲内で変更可能なように構成されている場合と同じ範囲であり、この場合の舵角は制約条件にはならない。
【0065】
よって、第1例の場合、角度範囲θaは、現在の判定基準角度θtと制約条件に関する情報とに基づいて設定(算出)される。なお、制約条件に関する情報は、予め制御装置50の記憶部に記憶されている。
図4に示された角度範囲θaの場合、制約条件に関する情報として、走行装置10の舵角の変更可能範囲がトンネル部5の長手方向に対して−90度〜+90度の範囲であるという情報を用いている。
【0066】
図4に示すように、キャブ6を航空機3へ装着した時点において、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向である場合(言い換えれば、走行車輪9の前進方向角度θwが角度範囲θa内の角度である場合)には、走行車輪9の前進走行によってキャブ6が装着されている。
【0067】
本実施形態では、キャブ6を航空機3に装着する際に、走行車輪9(走行装置10)の後進走行によるキャブ6の航空機3への装着を回避することを目的とする。そこで、キャブ6を例えば待機位置から移動させて航空機3に装着するまでの間、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向となる状態を維持すれば、走行車輪9の前進走行によってキャブ6を航空機3に装着することができる。すなわち、走行車輪9の前進方向角度θwが角度範囲θa内の角度である状態を維持してキャブ6が航空機3に装着される場合には、走行車輪9の前進走行によってキャブ6が装着されるので、後進走行によってキャブ6が航空機3に装着されるのを回避できる。
【0068】
一方、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲外の方向となり、その状態でキャブ6が航空機3に装着された場合には、走行車輪9の後進走行によってキャブ6が装着されることになる。すなわち、走行車輪9の前進方向角度θwが角度範囲θb内の角度でキャブ6が装着される場合には、走行車輪9の後進走行によってキャブ6が装着される。
【0069】
〔第2例の前進装着判定処理〕
第2例の前進装着判定処理では、第1例における判定基準角度θtに代えて、判定基準角度θt1を用いる。この判定基準角度θt1は、トンネル直交線Edvに対して反時計回りに計算される航空機3の機軸ラインBLのなす角度として算出する。この場合、航空機3が正規の停止位置に停止されず、航空機3の機軸ラインBLが機体誘導ラインALと交差して航空機3が停止された状態のときに、前進装着判定処理を行う上でより有用な判定基準角度θt1を算出することができる。
【0070】
よって、第2例の前進装着判定処理では、判定部51は、現在の走行車輪9の前進方向角度θwが、現在の判定基準角度θt1と制約条件に関する情報とに基づいて決められる角度範囲θaの範囲内の角度であるか否かによって、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向であるか否かの判定を行う。この場合、前進専用装着可能範囲内の方向は、走行車輪9が前進走行した場合に、平面視において、走行車輪9が航空機3の機軸ラインBLに近づく方向である。
【0071】
判定基準角度θt1は、次式で算出することができる。
θt1=90−(α−γ1)=90−α+γ1
上式において、γ1は、X軸に対して反時計回りに計算される航空機3の機軸ラインBLがなす角度である。ここで、制御装置50は、例えば、航空機3の実際の停止位置を測定する機能を備えた外部装置から航空機3の実際の停止位置と機種情報とを受信し、これらの情報も用いて、上記角度γ1を算出するようにしてもよい。上記外部装置としては、例えばVDGS(Visual Docking Guidance System)を用いることができる。
【0072】
また、第2例の変形例として、機体誘導ラインALに対する航空機3の機軸ラインBLの最大のずれ角度(交差角度)の絶対値β(このβは想定値)を予め設定しておいて、判定基準角度θt1aを、次式で算出するようにしてもよい。
【0073】
θt1a=90−{α−(γ+β)}=90−α+γ+β
この場合、X軸に対して機体誘導ラインALがなす角度γと、最大のずれ角度の絶対値βとは、それぞれ予め所定値として制御装置50に記憶されているので、判定基準角度θt1aの計算が容易になる。
【0074】
〔第3例の前進装着判定処理〕
第3例の前進装着判定処理では、第1例における判定基準角度θtに代えて、判定基準角度θt2を用いる。この判定基準角度θt2は、トンネル直交線Edvに対して反時計回りに計算される航空機3のキャブ6の装着部分の接線TLのなす角度として算出する。この場合、航空機3のキャブ6の装着部分の接線TLが、航空機3の機軸ラインBLと平行ではない場合に、前進装着判定処理を行う上でより有用な判定基準角度θt2を算出することができる。
【0075】
よって、第3例の前進装着判定処理では、判定部51は、現在の走行車輪9の前進方向角度θwが、現在の判定基準角度θt2と制約条件に関する情報とに基づいて決められる角度範囲θaの範囲内の角度であるか否かによって、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向であるか否かの判定を行う。この場合、前進専用装着可能範囲内の方向は、走行車輪9が前進走行した場合に、平面視において、走行車輪9が航空機3のキャブ6の装着部分の接線TLに近づく方向である。
【0076】
判定基準角度θt2は、次式で算出することができる。
θt2=90−(α−γ2)=90−α+γ2
上式において、γ2は、X軸に対して反時計回りに計算される航空機3のキャブ6の装着部分の接線TLがなす角度である。ここで、制御装置50は、例えば、航空機3の実際の停止位置を測定する機能を備えた外部装置(例えば、前述のVDGS)から航空機3の実際の停止位置と機種情報とを受信し、これらの情報も用いて、上記角度γ2を算出するようにしてもよい。
【0077】
また、上記角度γ2は、次のようにして算出するようにしてもよい。例えば、キャブ6と航空機3との間の距離を検出する2つの距離センサ23(
図2,
図3)の検出距離と2つの距離センサ23間の距離(所定値)とに基づいて、航空機3のキャブ6の装着部分の接線TLとキャブ6の先端の縁部6aに沿って延びる直線DL(
図1)とのなす角度を算出する。そして、この角度と、キャブ用角度センサ25(
図3)で検出されるトンネル部5の中心線Edに対するキャブ6の回転角度と、角度αとに基づいて、角度γ2を算出することができる。なお、キャブ6の回転角度は、トンネル部5の中心線Edと、キャブ6の先端の縁部6aに沿って延びる直線DLと直交する直線とのなす角度として検出される。
【0078】
上記の第1例の場合、簡易的に判定基準角度θtを算出することができる。また、航空機3は、その機軸が機体誘導ラインALの真上に位置して停止するとは限らないので、第2例の場合には、第1例の場合に比べて、有用な判定基準角度θt1を算出することができる。さらに、第3例の場合には、第1例及び第2例の場合に比べて、より有用な判定基準角度θt2を算出することができる。特に、航空機3のキャブ6の装着部分の接線TLが、航空機3の機軸ラインBLと平行ではない場合等に有用である。
【0079】
図5は、旅客搭乗橋を航空機に装着した状態の他の例を示す概略平面図である。ここでは、
図1,
図4の場合とは、旅客搭乗橋1と航空機3との配置が異なる場合を示している。なお、
図5では、
図4の場合と同様にして図示し、
図4と対応する部分には同一符号を付している。
【0080】
図5の場合も、前述の第1例〜第3例の前進装着判定処理は、
図4の場合の説明と同様である。
【0081】
なお、上記の第1例では、角度γは、X軸に対して反時計回りに計算される機体誘導ラインALがなす角度であると説明したが、正確には、平面視において、X軸正方向と、機体誘導ラインALの航空機3の前部から後部に向かう方向とのなす角度であって、X軸を基準に反時計回りを正の方向として計算される角度である。さらに、角度γは、その絶対値が0度から180度の範囲内となるように決められる。よって、
図5に図示されたγは、マイナスの値である。
【0082】
また、角度θtは、トンネル直交線Edvと機体誘導ラインALとがなす角度であると説明したが、正確には、平面視において、トンネル直交線Edvのトンネル部5の左側から右側へ向かう方向と、機体誘導ラインALの航空機3の前部から後部に向かう方向とのなす角度であって、トンネル直交線Edvを基準に反時計回りを正の方向として計算される角度である。さらに、角度θtは、その絶対値が0度から180度の範囲内となるように決められる。よって、
図5に図示されたθtは、マイナスの値である。
【0083】
図5の場合も、
図4の場合と同様、走行車輪9の前進方向角度θwが角度範囲θa内の角度でキャブ6が装着される場合には、走行車輪9の前進走行によってキャブ6が装着される。
図5の場合、走行装置10の舵角が、トンネル部5の長手方向に対して、−90度〜+90度の範囲内で変更可能であり、走行装置10の舵角の変更可能範囲のみを制約条件に関する情報とした場合、角度範囲θaは、0度以上、θt+180度未満の範囲である。なお、制約条件が無い場合、角度範囲θaは、
図4の場合と同様、判定基準角度θtよりも大きく、θt+180度未満の範囲になり、この範囲内に前進方向角度θwがあれば、走行車輪9が前進走行した場合に走行車輪9が機体誘導ラインALに近づく。
【0084】
また、走行車輪9の前進方向角度θwが角度範囲θb内の角度でキャブ6が装着される場合には、走行車輪9の後進走行によってキャブ6が装着される。
図5の場合、角度範囲θbは、θt+180度以上、180度以下の範囲である。
【0085】
なお、本実施形態では、走行装置10の舵角が、トンネル部5の長手方向に対して、−90度〜+90度の範囲内で変更可能としたが、これよりも広い範囲、例えば−180度〜+180度の範囲内で変更可能なように構成されている場合には、
図4の場合と同様、
図5の場合も、角度範囲θaは、判定基準角度θtよりも大きく、θt+180度未満の範囲になる。一方、角度範囲θbは、θt+180度以上、270度以下の範囲になる。
【0086】
また、第2例の場合、角度γ1は、正確には、平面視において、X軸正方向と、航空機3の機軸ラインBLの航空機3の前部から後部に向かう方向とのなす角度であって、X軸を基準に反時計回りを正の方向として計算される角度である。さらに、角度γ1は、その絶対値が0度から180度の範囲内となるように決められる。
【0087】
また、角度θt1は、正確には、平面視において、トンネル直交線Edvのトンネル部5の左側から右側へ向かう方向と、航空機3の機軸ラインBLの航空機3の前部から後部に向かう方向とのなす角度であって、トンネル直交線Edvを基準に反時計回りを正の方向として計算される角度である。さらに、角度θt1は、その絶対値が0度から180度の範囲内となるように決められる。
【0088】
また、第3例の場合、角度γ2は、正確には、平面視において、X軸正方向と、航空機3のキャブ6の装着部分の接線TLの航空機3の前部から後部に向かう方向とのなす角度であって、X軸を基準に反時計回りを正の方向として計算される角度である。さらに、角度γ2は、その絶対値が0度から180度の範囲内となるように決められる。
【0089】
また、角度θt2は、正確には、平面視において、トンネル直交線Edvのトンネル部5の左側から右側へ向かう方向と、航空機3のキャブ6の装着部分の接線TLの航空機3の前部から後部に向かう方向とのなす角度であって、トンネル直交線Edvを基準に反時計回りを正の方向として計算される角度である。さらに、角度θt2は、その絶対値が0度から180度の範囲内となるように決められる。
【0090】
〔第1動作例〕
図6は、第1動作例において旅客搭乗橋1を航空機3へ装着するときに制御装置50が前進装着判定処理およびそれに関連する処理を行う際の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートで示される処理は、旅客搭乗橋1(キャブ6)が待機位置からの移動を開始してから航空機3に装着されるまでの間に、行われる。なお、このフローチャートで示される処理は、旅客搭乗橋1が待機位置からの移動を開始してから航空機3に装着されるまでの間の全ての期間行われるようにしてもよいし、待機位置からの移動を開始してから航空機3に装着されるまでの間の後半の期間に行われるようにしてもよい。ここで、後半の期間とは、例えば、キャブ6が待機位置からの移動を開始後、所定時間経過してから航空機3に装着されるまでの間の期間であってもよい。また、後半の期間は、キャブ6が待機位置からの移動を開始後、航空機3に装着されるまでの間に、前半の移動が自動制御による運転が行われ、後半の移動がオペレータの操作による手動制御による運転が行われる場合において、手動制御による運転が行われる期間であってもよい。
【0091】
オペレータが、操作盤31の操作装置30を用いて、待機位置で待機している旅客搭乗橋1を移動させてキャブ6を航空機3に装着するための操作を開始すると、制御装置50は、キャブ6(キャブ6の先端部分)と航空機3との間の距離が所定距離(例えば、1m)以内であるか否かを判定する(ステップS1)。
【0092】
このステップS1において、制御装置50は、キャブ6と航空機3との間の距離を、例えばキャブ6の先端に設けられた2つの距離センサ23の検出値に基づいて求める。この場合、2つの距離センサ23の検出距離の平均として求めてもよいし、2つの距離センサ23の検出距離のうちの小さい方の検出距離を用いるようにしてもよい。また、キャブ6の先端に、前方の物体(航空機3)との間の距離が上記所定距離になったことを検出するセンサ(例えば、距離設定型光電センサ)を設けておいて、制御装置50は上記センサの出力信号に基づいて、キャブ6と航空機3との間の距離が所定距離以内であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0093】
制御装置50は、キャブ6と航空機3との間の距離が所定距離以内になると(ステップS1でYes)、前述の前進装着判定処理を行い、その判定処理の結果、現在の走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向であるとき(ステップS2でYes)には、ステップS1へ戻って処理を繰り返す。ステップS2で行う前進装着判定処理は、前述の第1例〜第3例のうちのいずれか1つであればよい。
【0094】
一方、制御装置50は、前進装着判定処理の結果、現在の走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向ではないとき(ステップS2でNo)、すなわち前進専用装着可能範囲外の方向であるときには、操作装置30から後進走行指令を入力しているか否かを判定し(ステップS3)、後進走行指令を入力していないとき(ステップS3でNo)には、ステップS1へ戻って処理を繰り返す。
【0095】
一方、制御装置50は、操作装置30から後進走行指令を入力しているとき(ステップS3でYes)には、警告メッセージを操作盤31の表示装置34に表示させるとともに、後進走行指令を無効にして後進走行を不可とする(ステップS4)。警告メッセージとしては、後進走行または後進装着を注意する旨のメッセージ、例えば、「後進走行はできません。」とか、「後進装着はできません。」というようなメッセージでもよい。この警告メッセージは、操作盤31等に設けられたスピーカ(図示せず)から音声出力させるようにしてもよい。また、このとき、操作盤31等に設けられたブザー(図示せず)で警告音を鳴らすようにしてもよい。この場合、オペレータは、走行車輪9を前進走行させる操作を行うか、または、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向となるように走行車輪9をその場で回転させてから走行させる操作を行うことになる。
【0096】
このステップS4の処理により、走行車輪9の後進走行による航空機3への装着を回避することができる。
【0097】
なお、
図6において、ステップS1で「Yes」と判定され、かつ、ステップS2で「No」と判定されたときに、上記の警告メッセージ等の警告を行うようにしてもよい。また、ステップS1とステップS2とは順序が逆になってもよい。しかし、ステップS1の処理の方がステップS2の処理よりも演算量が少なく、ステップS1でYesと判定されてからステップS2の処理を行う方が演算処理の負担が小さくなる。
【0098】
また、ステップS1の処理を省略してもよい。しかし、上記動作例のように、キャブ6と航空機3との間の距離が所定距離以内になり、かつ、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、ステップS4のように後進走行を制限する方が、オペレータが旅客搭乗橋1の操作を行いやすい。よって、ステップS1の処理を省略する場合には、ステップS4では、警告メッセージ等の警告のみを行うようにしてもよい。
【0099】
また、キャブ6と航空機3との間の距離が所定距離より大きいときに、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合には、警告メッセージ等の警告のみを行うようにし、キャブ6と航空機3との間の距離が所定距離以内になり、かつ、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、ステップS4のように警告及び後進走行の制限を行うようにしてもよい。
【0100】
〔第2動作例〕
図7は、第2動作例において旅客搭乗橋1を航空機3へ装着するときに制御装置50が前進装着判定処理およびそれに関連する処理を行う際の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートで示される処理は、旅客搭乗橋1(キャブ6)が待機位置からの移動を開始してから航空機3に装着されるまでの間に、行われる。なお、このフローチャートで示される処理は、旅客搭乗橋1が待機位置からの移動を開始してから航空機3に装着されるまでの間の全ての期間行われるようにしてもよいし、待機位置からの移動を開始してから航空機3に装着されるまでの間の後半の期間に行われるようにしてもよい。ここで、後半の期間とは、例えば、キャブ6が待機位置からの移動を開始後、所定時間経過してから航空機3に装着されるまでの間の期間であってもよい。また、後半の期間は、キャブ6が待機位置からの移動を開始後、航空機3に装着されるまでの間に、前半の移動が自動制御による運転が行われ、後半の移動がオペレータの操作による手動制御による運転が行われる場合において、手動制御による運転が行われる期間であってもよい。
【0101】
ステップS11,S12は、
図6のステップS1,S2と同様である。制御装置50は、キャブ6と航空機3との間の距離が所定距離以内になり(ステップS11でYes)、かつ、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向ではない(ステップS12でNо)場合に、ステップS13の処理を行う。
【0102】
制御装置50は、ステップS13では、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向となるように走行装置10を制御する。例えば、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向となるように、2つの走行車輪9を逆回転させる。
【0103】
これにより、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲外の方向となってもすぐに前進専用装着可能範囲内の方向に戻されるので、走行車輪9の後進走行による航空機3への装着を回避することができる。
【0104】
なお、ステップS12とステップ13との間に、
図6のステップS3の処理を行うようにしてもよい。この場合、ステップS12で、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向ではないとき(ステップS12でNо)、すなわち前進専用装着可能範囲外の方向であるときには、操作装置30から後進走行指令を入力しているか否かを判定し(ステップS3)、後進走行指令を入力していないとき(ステップS3でNo)には、ステップS11へ戻って処理を繰り返し、後進走行指令を入力しているとき(ステップS3でYes)には、ステップ13の処理を行う。
【0105】
また、ステップS11の処理を省略してもよい。しかし、上記動作例のように、キャブ6と航空機3との間の距離が所定距離以内になり、かつ、走行車輪9の前進方向Fが前進専用装着可能範囲内の方向ではない場合に、ステップS13のように走行車輪9の前進方向Fが制御される方が、オペレータが旅客搭乗橋1の操作を行いやすい。
【0106】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
走行車輪の後進走行によるキャブの航空機への装着を回避できる旅客搭乗橋を提供する。本発明の旅客搭乗橋の一例は、ターミナルビルに接続され、水平回転自在に支持されたロタンダ(4)と、基端がロタンダ(4)に接続され、伸縮可能なトンネル部(5)と、トンネル部(5)の先端に設けられ、航空機に装着されるキャブ(6)と、トンネル部(5)を支持するとともに、前進走行及び後進走行が可能な走行車輪(9)を有し、走行車輪(9)の前進走行の方向及び後進走行の方向を変更可能に構成された走行装置(10)と、走行装置に対する動作指令を入力するために操作される操作装置と、操作装置が操作されて走行車輪(9)が走行することによってキャブ(6)が所定位置からの移動を開始してから航空機に装着されるまでの間に、現在の走行車輪(9)の前進走行の方向が前進専用装着可能範囲内の方向であるか否かの判定を繰り返し行う判定部と、を備えている。