(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889822
(24)【登録日】2021年5月26日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】高圧容器
(51)【国際特許分類】
F17C 1/00 20060101AFI20210607BHJP
F16J 13/12 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
F17C1/00 Z
F16J13/12 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-89295(P2017-89295)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-189099(P2018-189099A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168676
【氏名又は名称】株式会社コーアツ
(73)【特許権者】
【識別番号】593166462
【氏名又は名称】サムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】井上 康史
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 剛敏
(72)【発明者】
【氏名】藪下 真大
(72)【発明者】
【氏名】鴨 三範
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−332085(JP,A)
【文献】
特開2015−158243(JP,A)
【文献】
特開2003−294144(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0272670(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
F16J13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口金部に封止部材を螺合することによって、容器本体の開口部を封止するようにした高圧容器において、容器本体の口金部に内部側から平行雌ねじ及びテーパー雌ねじをその順に形成するとともに、封止部材に前記平行雌ねじに螺合する平行雄ねじを形成し、該平行雌ねじと平行雄ねじの螺合箇所より内部側にシール部材を配設し、さらに、前記テーパー雌ねじに螺合する、封止部材と別部材で構成した、テーパー雄ねじを形成した軸力付与部を封止部材の外周側に配設し、該軸力付与部の下端面が、封止部材の外周の下部に形成した段部に当接することによって、封止部材に対して軸方向の力を付与するようにしたことを特徴とする高圧容器。
【請求項2】
容器本体の口金部に封止部材を螺合することによって、容器本体の開口部を封止するようにした高圧容器において、容器本体の口金部に内部側から平行雌ねじ及びテーパー雌ねじをその順に、同一ねじピッチ及び位相となるように形成するとともに、封止部材に前記平行雌ねじに螺合する平行雄ねじを形成し、該平行雌ねじと平行雄ねじの螺合箇所より内部側にシール部材を配設し、さらに、前記テーパー雌ねじに螺合する、封止部材と一体に構成した、テーパー雄ねじを形成した軸力付与部を介して、封止部材に対して軸方向の力を付与するようにしたことを特徴とする高圧容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガスや液化ガス等を充填して、保管するために使用される高圧容器に関し、特に、高圧ガスや液化ガス等を充填後、長期間に亘って再充填を行わずに高圧状態のまま保管する高圧容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧ガスや液化ガス等を充填する高圧容器はさまざまな分野で使用されているが、例えば、消火剤ガスの技術分野において、充填圧力を60MPa又はそれ以上に高めて、ガス充填量を増やすことの要請があり、そのために高圧充填に耐え、例えば、15年以上の長期間に亘ってガス漏れが生じない構造の高圧容器が必要になっている。
【0003】
ところで、この種の高圧容器は、容器本体の口金部に、弁機構や封止プラグ等からなる封止部材(本明細書において、「封止部材」という。)を螺合することによって、容器本体の開口部を封止するようにされている。
【0004】
より具体的には、高圧容器の容器本体の口金部に平行雌ねじを形成するとともに、封止部材に前記平行雌ねじに螺合する平行雄ねじを形成し、さらに、シール部材を配設する構造にしたり(例えば、特許文献1参照。)、高圧容器の容器本体の口金部にテーパー雌ねじを形成するとともに、封止部材に前記テーパー雌ねじに螺合するテーパー雄ねじを形成する構造が採用されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された、平行ねじによる螺合構造は、高圧充填に耐えるための軸方向の耐力を得やすいという利点を有する反面、温度変化や振動によって、弛みが発生しやすいという問題があり、一方、特許文献2に開示された、テーパーねじによる螺合構造は、螺合構造単独でシールができるという利点を有する反面、高圧充填に耐えるための軸方向の耐力を得にくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−279000号公報
【特許文献2】特開平7−260096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の高圧容器の有する問題点に鑑み、軸方向の耐力を得やすく、高圧充填に耐え、長期間に亘ってガス漏れが生じない構造の高圧容器を提供することを第1の目的とする。
【0008】
また、本発明は、2重のシール構造とすることによって、ガス漏れに対する安全性を向上することができるようにした高圧容器を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するため、本発明の高圧容器は、容器本体の口金部に封止部材を螺合することによって、容器本体の開口部を封止するようにした高圧容器において、容器本体の口金部に平行雌ねじ及びテーパー雌ねじを形成するとともに、封止部材に前記平行雌ねじに螺合する平行雄ねじを形成し、該平行雌ねじと平行雄ねじの螺合箇所より内部側にシール部材を配設し、さらに、前記テーパー雌ねじに螺合するテーパー雄ねじを形成した軸力付与部を介して、封止部材に対して軸方向の力を付与するようにしたことを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記軸力付与部が、封止部材と別部材で構成されてなるようにすることができる。
【0011】
また、上記第2の目的を達成するため、本発明の高圧容器は、前記軸力付与部が、封止部材と一体に構成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高圧容器によれば、高圧容器の容器本体の口金部に平行雌ねじ及びテーパー雌ねじを形成するとともに、封止部材に前記平行雌ねじに螺合する平行雄ねじを形成し、該平行雌ねじと平行雄ねじの螺合箇所より内部側にシール部材を配設し、さらに、前記テーパー雌ねじに螺合するテーパー雄ねじを形成した軸力付与部を介して、封止部材に対して軸方向の力を付与するようにすることにより、平行ねじによる螺合構造によって、高圧充填に耐えるための軸方向の耐力を得るとともに、軸力付与部のテーパーねじによる螺合構造によって、軸方向の耐力をさらに高め、温度変化や振動による弛みの発生を防止することができる。
【0013】
また、前記軸力付与部が、封止部材と別部材で構成されてなるようにすることにより、平行ねじによる螺合構造と、テーパーねじによる螺合構造とを、簡易に併用させることができる。
【0014】
また、前記軸力付与部が、封止部材と一体に構成されてなるようにすることにより、平行ねじによる螺合構造の螺合箇所より内部側に配設したシール部材と、テーパーねじによる螺合構造との2重のシール構造とすることによって、ガス漏れに対する安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の高圧容器の第1実施例を示す断面図である。
【
図2】本発明の高圧容器の第2実施例を示す断面図である。
【
図3】本発明の高圧容器の第3実施例を示す断面図である。
【
図4】本発明の高圧容器の第4実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の高圧容器の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に、本発明の高圧容器の第1実施例を示す。
この高圧容器は、容器本体1の口金部11に封止部材2(ここで、封止部材2には、弁機構や封止プラグを適用することができるが、本実施例においては、上部構造を省略した弁機構を適用した例を示す。)を螺合することによって、容器本体1の開口部を封止するようにしたもので、容器本体1の口金部11に平行雌ねじ41及びテーパー雌ねじ51を形成するとともに、封止部材2に平行雌ねじ41に螺合する平行雄ねじ42を形成し、平行雌ねじ41と平行雄ねじ42の螺合箇所より内部側にシール部材6を配設し、さらに、テーパー雌ねじ51に螺合する、封止部材2と別部材で構成した、テーパー雄ねじ52を形成した軸力付与部3を介して、封止部材2に対して軸方向の力を付与するようにしている。
ここで、テーパー雌ねじ51とテーパー雄ねじ52からなるテーパーねじのねじ径は、平行雌ねじ41と平行雄ねじ42からなる平行ねじのねじ径より大きく設定するようにする。
【0018】
この場合において、封止部材2と別部材で構成した、テーパー雄ねじ52を形成した軸力付与部3は、容器本体1の口金部11に形成したテーパー雌ねじ51に螺合した状態で、軸力付与部3の端面が、封止部材2に形成した段部に当接することによって、封止部材2に対して軸方向の力を付与するようにしている。
【0019】
また、平行雄ねじ42やテーパー雄ねじ52の表面にシール用テープ等のシール部材やシール剤を施して、平行雌ねじ41やテーパー雌ねじ51に螺合するようにすることができる。
【0020】
また、平行雌ねじ41と平行雄ねじ42の螺合箇所より内部側に配設するシール部材6は、例えば、エラストマー製、フッ素樹脂等の合成樹脂製、ステンレススチール等の金属製のOリングやガスケットを単独で用いたり、バックアップリングと組み合わせて用いる等、従来から汎用されているシール部材(シール構造)を適宜採用することができる。
ここで、シール部材6は、本実施例においては、従来から汎用されているように、封止部材2の周面に配設するようにしているが、
図2の本発明の高圧容器の第2実施例(
図4の本発明の高圧容器の第4実施例も同様。)に示すように、封止部材2の端面が当接する容器本体1の口金部11(又は封止部材2の端面側(図示省略))に配設するようにすることもできる。このように、封止部材2の端面と容器本体1の口金部11とが当接することで隙間が実質的に存在しないか、存在しても極めて小さい箇所にシール部材6を配設することにより、シール部材6に偏った負荷がかかることを防止でき、耐久性等の点で優位性がある。
【0021】
本実施例の高圧容器によれば、平行雌ねじ41と平行雄ねじ42からなる平行ねじによる螺合構造によって、高圧充填に耐えるための軸方向の耐力を得るとともに、軸力付与部3のテーパー雌ねじ51とテーパー雄ねじ52からなるテーパーねじによる螺合構造によって、封止部材2に対して軸方向の力を付与することで軸方向の耐力をさらに高め、平行ねじによる螺合構造の温度変化や振動による弛みの発生を防止することができる。
また、軸力付与部3が、封止部材2と別部材で構成されているため、平行雌ねじ41と平行雄ねじ42からなる平行ねじによる螺合構造と、テーパー雌ねじ51とテーパー雄ねじ52からなるテーパーねじによる螺合構造とを、簡易に併用させることができる。
【0022】
また、必要に応じて、封止部材2と軸力付与部3の当接部や摺接部に、シール部材6と同様のシール部材(図示省略)を設けることができる。
これにより、シール部材及びテーパー雌ねじ51とテーパー雄ねじ52からなるテーパーねじによる螺合構造と、シール部材6との2重のシール構造とすることによって、ガス漏れに対する安全性を向上することができる。
【0023】
ところで、軸力付与部3は、封止部材2と別部材で構成するほか、
図3及び
図4の本発明の高圧容器の第3及び第4実施例に示すように、封止部材2と一体(一体構造)で構成するようにすることもできる。
ここで、平行雌ねじ41と平行雄ねじ42からなる平行ねじのねじピッチ及び位相と、テーパー雌ねじ51とテーパー雄ねじ52からなるテーパーねじのねじピッチ及び位相とは、同一ねじピッチ及び位相となるようにする。
これにより、平行雌ねじ41と平行雄ねじ42からなる平行ねじによる螺合構造の螺合箇所より内部側に配設したシール部材6と、テーパー雌ねじ51とテーパー雄ねじ52からなるテーパーねじによる螺合構造との2重のシール構造とすることによって、ガス漏れに対する安全性を向上することができる。
なお、本実施例の高圧容器のその他の構成及び作用は、上記第1実施例の高圧容器と同様である。
【0024】
以上、本発明の高圧容器について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の高圧容器は、軸方向の耐力を得やすく、高圧充填に耐え、長期間に亘ってガス漏れが生じない構造であり、さらに、2重のシール構造とすることによって、ガス漏れに対する安全性を向上することができることから、消火剤ガスを充填、保管する高圧容器に好適に用いることができるほか、高圧ガスや液化ガス等を充填する、保管する高圧容器に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 容器本体
11 口金部
2 封止部材
3 軸力付与部
41 平行雌ねじ
42 平行雄ねじ
51 テーパー雌ねじ
52 テーパー雄ねじ
6 シール部材